JP3713499B2 - 防水シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ふっ素樹脂を用いた防水シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、防水シートとしては、加硫、非加硫のゴムシート、塩化ビニルやエチレン酢酸ビニルなどの樹脂系シートが知られている。
樹脂系のシートは、寸法安定性、強度保持のため、補強用のメッシュ織布が、内部や裏面に設置されている(例えば、特許文献1参照)。
なお、シート自体の耐久性は、ゴムや樹脂の耐久性によるところが大きく、耐用年数は最大でも20年程度であり、より耐用年数を高めるためには、構成材料自体の耐用年数を高める必要がある。
【0003】
また、これらの防水シート同士の接合は、いずれも接着剤による常温接着が一般的である(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
ふっ素樹脂の一つであるパーフルオロ樹脂は、恒久膜構造物用の膜材料のコーティング材として使用されており、樹脂自体の耐久性は、100年以上と想定される。
【0004】
パーフルオロ樹脂を使用した膜材料は、PTFEのディスパージョンにガラス繊維織布を浸漬し、焼付けを繰り返して製造される。ガラス繊維織布とPTFEデイスパージョンの密着性を確保するために、ガラス繊維織布には、表面処理が施されている。また、最終焼付け工程では、メルトフローに優れるFEPをディップコーティングする。
【0005】
パーフルオロ樹脂により構成された膜材料同士の接合は、膜材間に、コーティングされた樹脂と同じFEPのフィルムを挟み、350℃以上に熱した熱盤を加圧することで、FEPを溶かし融着させる方法が取られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】
特開平7−48853号公報
【特許文献2】
特開平5−106312号公報
【特許文献3】
特開平5−269943号公報
【特許文献4】
特開平6−246873号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、樹脂系の防水シートは、薄い樹脂のシートを織布の上に何層もラミネートして製造されるが、ふっ素樹脂のラミネート製造においては、樹脂の濡れ性が低く、シート間の密着度が不良となる場合が多い。
パーフルオロ樹脂により構成された膜材料同士の接合は、膜材間にFEPのフィルムを挟むこと、350℃以上に熱した熱盤で加圧することなどの方法が取られているが、現場での作業の場合、熱盤の温度管理や圧力管理、フィルムの敷き込み作業など、煩雑な作業と管理項目が多く、溶着の信頼性が十分とはいい難い。
【0007】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、耐久性および作業性に優れ、かつ接合の信頼性を高めた防水シートを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、金属材料から成る基材の両面を、パーフルオロ樹脂から成る防水シート層で被覆することによって構成された防水シートであって、前記防水シート層は、前記金属材料から成る基材を保護する基盤層と、前記金属材料から成る基材と前記基盤層との密着性を保つ密着層と、前記防水シート同士の熱溶着を可能とする表層とで構成され、前記基盤層は、PTFE(テトラフルオロエチレン樹脂)またはその変性樹脂から成り、前記密着層は、PFA(テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)またはその変性樹脂から成り、前記表層は、FEP(テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂)またはその変性樹脂から成ることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の防水シートにおいて、前記密着層と前記基盤層との総厚は、500μm以上であることを特徴とする。
本発明に係る防水シートにおいては、金属材料から成る基材をシート内に配するので、防水シート同士を接合する際に、金属材料から成る基材を発熱源とする電磁誘導加熱溶着を可能にする。
【0010】
金属材料としては、基材を保護する両面のパーフルオロ樹脂層から成る密着層間の一体化を考えて、孔が開いている形態が望ましく、メッシュ状織物、エキスパンドメタル、パンチングメタルなどが適用できる。また、耐久性上の問題から、腐食を避けるために、ステンレス製やチタン製が望ましい。
パーフルオロ樹脂から成る防水シート層の各層の目的として、防水シート自体を構成する金属材料から成る基材の両側に設ける基盤層の他、金属材料から成る基材の表面処理をすることなく両面の基盤層の密着性を高めるためフローして基材上下面を一体化する密着層を設け、他のシートとの接合を可能にするために、最外層には加熱によりフローしやすい表層を積層して防水シートを構成する。
【0011】
基盤層は、防水シートの根幹をなす層であり、加熱溶融時にもフローせず、形状を保つ。しかし、そのために、金属材料から成る基材の両面に配置してラミネート製造を行っても、金属材料から成る基材の孔を通じて両面が一体化する程度が小さく、加熱溶融時に剥離を生じやすい。
そのため、基盤層同士および基盤層と金属材料から成る基材の接着を確実にするためにラミネート製造時に溶融フローして基盤層の密着度を高める層を基盤層の内側に設けることが必要である。各層の融点は、基盤層が最も高く、次いで密着層、表層となり、電磁誘導加熱時に、密着層、基盤層は溶融することなく、表層のみ溶融して溶着が可能となるように加熱温度を調整する。
【0012】
なお、防水として適用する際、磨耗、衝撃などにより防水シート自体が損傷して漏水する危険性があるが、溶着時に熱で溶融せず、金属材料から成る基材を保護できる基盤層や密着層にある程度の厚さが確保されていれば、外的負荷に耐えることができる。耐磨耗、耐衝撃性試験の結果、総厚で500μm以上あれば、一般的な性能は確保できることが判明した。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る防水シート10を示す。
ふっ素樹脂の内、ラミネートによる密着性を確保しにくいパーフルオロ樹脂を使用して、防水シートを製造する場合の断面構成を以下のように設定する。
金属材料から成る基材(以下、金属製基材)1は、例えば、ステンレスメッシュから成り、シートの強度、剛性を出すために使用される。電磁誘導加熱の際、熱源となる。
【0014】
金属製基材1の両面に配されるパーフルオロ樹脂製の基盤層3,3は、耐久性を確保するフローしない、例えば、PTFE(融点約327℃、粘度1010〜1011ポイズ)などのパーフルオロ樹脂によって構成されている。基盤層3は、金属製基材1とともに防水シートの骨格を作り、加熱時にも溶融せず、形状を保つ。
【0015】
金属製基材1と基盤層3,3との密着性を高めるために配される密着層2,2は、フローしやすい、例えば、PFAなどのパーフルオロ樹脂によって形成される。表層4より高温で溶融するため、他の防水シ−トと密着する際は、溶融しないで金属製基材1と基盤層3,3の一体化を保つ。
表層4は、防水シート10同士の密着度を高めるために、フローしやすい、例えば、FEP(融点約260℃、粘度104〜105ポイズ)などのパーフルオロ樹脂によって構成される。
【0016】
図2は、本実施形態に係る防水シート10を電磁誘導加熱により接合する時の状態を示す。
2枚の防水シート10,10を重ね、電磁誘導加熱装置5を用いて電磁誘導による金属製基材1への加熱操作を行う。
この際、基盤層3,3、密着層2,2は、溶融しない温度まで加熱し、表層4,4のみ溶融させて熱融着する。
【0017】
【実施例】
実施例1
各層の構成を表1に示すように設定した防水シートを製作し、同種の防水シート2枚を重ねて100V、550W、38kHzの電磁誘導加熱装置を用い、加圧力0.05N/mm2で15秒接合した。
密着層の効果により、加熱による防水シートの形態変化なく、他の防水シートとの電磁誘導加熱による接合を可能とした。
【0018】
【表1】
実施例2
各層の構成を表2に示すように設定した防水シートを製作し、JIS K 7240に従ったH22−9.8Nの磨耗輪を使用したテーバー磨耗試験、JISA 1408に従った500gナス形錘を1m高さから落下させる落球衝撃験を実施した。
【0019】
樹脂層の厚さの効果により、衝撃や磨耗による金属製基材の露出は無かった。他の防水シートとの溶着時に表層の厚さは変化してしまうため、基盤層と密着層を併せた総厚のみ設定することとした。
【表2】
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、パーフルオロ樹脂の高耐久性を生かし、施工性に優れる防水シートを提供することができる。このことによって、防水に関わる維持管理費の低減や資源エネルギーの節約等の地球環境問題への貢献も大いに期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る防水シートの断面図である。
【図2】図1の実施形態に係る防水シート同士の接合状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 金属材料から成る基材
2 密着層
3 基盤層
4 表層
10 防水シート
Claims (2)
- 金属材料から成る基材の両面を、パーフルオロ樹脂から成る防水シート層で被覆することによって構成された防水シートであって、
前記防水シート層は、
前記金属材料から成る基材を保護する基盤層と、
前記金属材料から成る基材と前記基盤層との密着性を保つ密着層と、
前記防水シート同士の熱溶着を可能とする表層と
で構成され、
前記基盤層は、PTFE(テトラフルオロエチレン樹脂)またはその変性樹脂から成り、
前記密着層は、PFA(テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)またはその変性樹脂から成り、
前記表層は、FEP(テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂)またはその変性樹脂から成る
ことを特徴とする防水シート。 - 請求項1記載の防水シートにおいて、
前記密着層と前記基盤層との総厚は、500μm以上である
ことを特徴とする防水シート。
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2003
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