JP3713448B2 - 緩衝機能付き自動閉扉機構及びその蝶番 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば玄関ドア等の開閉扉に用いる蝶番など、閉扉動作を自動的に行わせると共に、閉扉時の衝撃を緩衝する手段を備えた自動閉扉機構に係り、特に空気を利用した緩衝手段を用いる緩衝機能付き自動閉扉機構及びその蝶番に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、玄関ドア等の開閉扉に用いる蝶番などにおいて、開閉扉を開いた時には前記扉を自動的に閉じる方向に回動させる自動閉扉手段と、閉扉時の衝撃を緩和する緩衝手段を備えたものが知られている。前記自動閉扉手段としてはコイルばねの復元力を利用したものが多く、また前記緩衝手段としては油圧ピストンシリンダーを利用したものが多く用いられており、更に近年では緩衝手段として空気を利用したものが提案されている。
【0003】
特開平9−184354号には、各葉板の筒継手が軸の外周面でそれぞれ滑合する蝶番において、第1葉板を一方向へ回動したとき、第1筒継手と軸の間に形成したカム手段を介して軸が軸線方向に移動し、筒継手内に内蔵するバネを圧縮し、筒継手内の弁装置によって遮閉された空気室内の空気を放出し、更に第1葉板に与えている回動力を解除したとき、バネの復元力により軸が他方向に移動し、軸の移動によりカム手段を介して第1葉板を他方向に回動させると共に、空気室内に弁装置を介して空気を低速吸入し、バネを低速で復元させる構造のダンパー付蝶番構造が開示されている。
【0004】
また、特開平11−050738号には、捻りコイルばねで付勢された回転軸に一体的に螺旋状カムを設け、それに相対する螺旋状カムに一体的にピストン部を設けると共にばねで付勢し、シリンダー部に微細な穴を設けて、そこを流出する空気の抵抗によってダンパー機能を持たせることにより、又は、捻りコイルばねを用いず、ピストン部を有するカムを付勢するばねのみで、回転力とダンパー機能を併せ持つ蝶番が開示されている。
【0005】
また、特開2000−136669号には、蝶番を構成する一対の羽根板の一方に筒状のシリンダを一体的に設け、そのシリンダ内に他方の羽根板の回動動作に連動して進退するピストンを設けると共に、開扉時のピストンの前進動作によって収縮する圧縮コイルばねを上記シリンダ内に収容配置し、その圧縮コイルばねの復元力によるピストンの戻し動作に連動して上記他方の羽根板を閉扉方向に回動させると共に、上記ピストンの戻り動作によるシリンダ内のエアクッション作用で閉扉時の衝撃を緩衝する自動閉扉機構が開示されている。
【0006】
上記のような空気のエアクッション作用を利用した緩衝機能付き自動閉扉機構は、簡単な構造で容易且つ低コストで製造することが可能であり、又小型化や小スペース化を図ることが可能であり、更には油漏れが生じて周囲を汚すことが無い等の有利性を有するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記したような緩衝機能付き自動閉扉機構は、扉の開動作や緩衝されながら閉動作のスムーズさに欠け、実際に顧客に受け入れられる製品として、未だ十分なものではなかった。即ち、エアクッション作用を利用した自動閉扉機構の有利性を生かしつつ、扉の開動作や緩衝されながら閉動作をよりスムーズに行うことができる自動閉扉機構が切望されていた。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、簡単な構造で容易且つ低コストで製造することができ、小型化・軽量化や小スペース化を図ることができると共に、油漏れが生じて周囲を汚すことが無い等のエアクッション作用を利用した自動閉扉機構の有利性を生かしつつ、扉の開動作や緩衝されながらの閉動作をよりスムーズに行うことができる緩衝機能付き自動閉扉機構及びその蝶番を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構は、一対の羽根板の一方に設けられたシリンダー内にピストンを収容配置し、他方の羽根板に略上部を固定されている操作ロッドの略下部を該シリンダー内に配置し、該操作ロッドの略下部の外周に形成された傾斜部を有するカム溝に、該ピストンの所定位置に転動可能に配設された内周で突出する球体を係合し、該カム溝の傾斜部に対する該球体の移動に対応して該ピストンが進退し、閉扉時の該ピストンの戻り動作による該シリンダー内のエアクッション作用で衝撃を緩衝する蝶番を備えることを特徴とする。例えばピストンにカム溝を形成して操作ロッドと係合する場合にはピストンが肉薄になる或いはピストン等の強度が低下するのに対し、前記蝶番或いは自動閉扉機構では操作ロッドにカム溝を形成してピストンの球体と係合することにより、ピストンやカム溝と球体の係合機構の強度や耐久性を向上することができる。また、例えば操作ロッドにカム溝を形成し、ピストンの所定位置に貫通孔或いは内周面に凹部を形成して前記貫通孔或いは前記凹部に球体を配置し、球体とカム溝とを係合するものであるから、簡単に加工或いは製造することが可能であり、その加工コスト或いは製造コストは安価となる。
【0010】
さらに、本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構は、上記自動閉扉機構に於いて、前記蝶番のシリンダー内に開扉時の前記ピストンの動作によって収縮されるバネを配設し、該バネの復元力による該ピストンの戻り動作に連動して他方の羽根板が閉扉方向に回動することを特徴とする。エアクッション作用で衝撃を緩衝する蝶番に、その復元力で自動的に閉扉方向へ羽根板を回動する圧縮コイルバネなどのバネを設け、自動閉扉機能と閉扉時の衝撃緩衝機能の双方を有する単独の蝶番とするものである。
【0011】
また、本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構は、上記自動閉扉機構に於いて、一対の羽根板の一方に設けられたシリンダー内にピストンを収容配置し、他方の羽根板に略上部を固定されている操作ロッドの略下部に直接的に若しくは間接的に該ピストンを係合し、他方の羽根板の回転動作と該ピストンの進退とを該操作ロッドを介して連動している別の蝶番を備え、該別の蝶番のシリンダー内に開扉時の前記ピストンの動作によって収縮されるバネを配設し、該バネの復元力による該ピストンの戻り動作に連動して他方の羽根板が閉扉方向に回動することを特徴とする。エアクッション作用による閉扉時の衝撃緩衝機能を有する蝶番とは別の蝶番に、その復元力で自動的に閉扉方向へ羽根板を回動する圧縮コイルバネなどのバネを設け、前記別の蝶番に自動閉扉機能を担わせるものである。尚、自動閉扉機能を有する蝶番と、衝撃緩衝機能を有する蝶番と、自動閉扉機能及び衝撃緩衝機能の双方を有する蝶番を適宜組み合わせた自動閉扉機構としてもよい。
【0012】
さらに、本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構は、上記自動閉扉機構に於いて、前記蝶番若しくは前記別の蝶番は、前記シリンダー内に長手方向へ凹溝が形成されていると共に、前記ピストンの所定位置に第二の球体が外周に突出して転動可能に配設されており、該凹溝に沿って該第二球体が転動することにより該ピストンが該シリンダー内を滑動することを特徴とする。例えばピストンの所定位置に貫通孔或いは内周面に凹部を形成して前記貫通孔或いは前記凹部に球体を配置し、シリンダー内の長手方向に伸びる凹溝に沿って球体が転動してピストンが滑動するようにすることで、シリンダー内での移動をより滑らかにして扉の開動作や緩衝されながらの閉動作をよりスムーズに行うことができる。
【0013】
さらに、本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構は、上記自動閉扉機構に於いて、前記蝶番若しくは前記別の蝶番は、前記シリンダー内の所定位置の周方向に前記凹溝に接続された第二の凹溝が形成されており、前記第二球体の該第二凹溝への係合によって前記ピストンの進退が停止状態となることを特徴とする。例えばシリンダー内の所定位置の周方向にリング状凹溝を長手方向に伸びる凹溝に接続して設け、長手方向に伸びる凹溝に沿って移動する球体がリング状凹溝に係合してリング状凹溝に沿って回動することによりピストンの上昇など移動が停止し、他方で球体がリング状凹溝の係合から外れて長手方向に伸びる凹溝に沿って移動することによりピストンの下降など移動が開始することにより、ピストンの移動を所定位置までに制御することができると共に、球体がリング状凹溝などの周方向の凹溝内を空転している場合には開扉状態を維持することができ、扉を閉扉方向に回動して球体を長手方向凹溝の位置にして長手方向凹溝内の移動を開始させることにより自動閉扉動作を行わせることができる。
【0014】
さらに、本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構は、上記自動閉扉機構に於いて、前記蝶番若しくは前記別の蝶番は、前記カム溝の傾斜部の傾斜が開扉時のピストンの動作方向へ向かって漸次緩やかになっていることを特徴とする。前記のようにカム溝の傾斜を漸次緩やかにする或いはピッチを可変的に短くすることによって、圧縮コイルバネなどのバネが収縮するに従って圧縮に強い力を必要とすることに適応でき、開扉動作に要する力とバネの圧縮に要する力のバランスを図って開扉動作に要する力を開扉動作全体を通じて略平準化することができる。従って、開扉動作を進めて行くのに対して大きな力を必要とするようなことがなく、全体として略均一で且つ少ない力で開扉動作をすることができる。また、前記可変ピッチによりシリンダー内のエアの圧縮力を高めることができる。
【0015】
さらに、本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構は、上記自動閉扉機構に於いて、前記蝶番若しくは前記別の蝶番は、前記カム溝の略一方の端部及びその近傍が略水平に形成されており、前記球体を該略水平部分に位置して開扉状態を維持することを特徴とする。カム溝の上部などに略水平部分を形成することにより、球体が前記略水平部分に位置する場合には開扉状態を維持することができ、扉を閉扉方向に回動して球体をカム溝の略水平部分から傾斜部に移動することにより自動閉扉動作を行わせることができる。
【0016】
さらに、本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構は、上記自動閉扉機構に於いて、前記蝶番若しくは前記別の蝶番は、前記カム溝及び該カム溝に係合する球体が二組以上設けられていることを特徴とする。カム溝及びカム溝に係合する球体は一組としてもよいが、二組或いは、三組や四組など少なくとも二組以上とすると、耐久性や強度をより向上することができると共に、よりスムーズなカム溝に沿った球体の移動やピストン移動や扉の開閉動作等が可能になって好適である。尚、ピストンに形成した貫通孔若しくは凹部に球体を設ける場合には、これに応じて前記貫通孔若しくは凹部の数も増加させる。
【0017】
また、本発明の蝶番は、緩衝機能付き自動閉扉機構で用いる蝶番であって、一対の羽根板の一方に設けられたシリンダー内にピストンを収容配置し、他方の羽根板に略上部を固定されている操作ロッドの略下部を該シリンダー内に配置し、該操作ロッドの略下部の外周に形成された傾斜部を有するカム溝に、該ピストンの所定位置に転動可能に配設された内周で突出する球体を係合し、該カム溝の傾斜部に対する該球体の移動に対応して該ピストンが進退し、閉扉時の該ピストンの戻り動作による該シリンダー内のエアクッション作用で衝撃を緩衝することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の蝶番は、エアクッション作用による緩衝機能付き自動閉扉機構で用いる蝶番であって、一対の羽根板の一方に設けられたシリンダー内にピストンを収容配置し、他方の羽根板に略上部を固定されている操作ロッドの略下部に直接的に若しくは間接的に該ピストンを係合して、他方の羽根板の回転動作と該ピストンの進退を該操作ロッドを介して連動しており、該ピストンの所定位置に外周に突出して転動可能に配設された球体が該シリンダー内に長手方向へ形成した凹溝に沿って転動することにより、該ピストンが該シリンダー内を滑動することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の蝶番は、上記蝶番に於いて、前記シリンダー内に開扉時の前記ピストンの動作によって収縮されるバネを配設し、該バネの復元力による該ピストンの戻り動作に連動して他方の羽根板が閉扉方向に回動すると共に、該シリンダー内の所定位置の周方向に前記凹溝に接続された第二の凹溝が形成されており、前記球体の該第二凹溝への係合によって該ピストンの進退が停止状態となることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の蝶番は、エアクッション作用による緩衝機能付き自動閉扉機構で用いる蝶番であって、一対の羽根板の一方に設けられたシリンダー内にピストンを収容配置し、他方の羽根板に略上部を固定されている操作ロッドの略下部に直接的に若しくは間接的に該ピストンを係合して、他方の羽根板の回転動作と該ピストンの進退とを該操作ロッドを介して連動しており、該シリンダーの横断面形状が円形から突出した突出部を少なくとも一つ有する形状であることを特徴とする。シリンダーの横断面形状は通常と同様に円形としてもよいが、例えば一つ若しくは二つ若しくは三つなど少なくとも一つ以上の突出部が設けられた略円形とし、その突出部の横断面形状に於ける位置は適宜であり、また四角形若しくは六角形など多角形としてもよく、また楕円形等としてもよい。
【0021】
さらに、本発明の蝶番は、上記蝶番に於いて、前記シリンダー内に長手方向に沿って突出部が少なくとも一つ設けられ、前記ピストンの所定位置に外周に突出して転動可能に配設された球体を該突出部の少なくとも一つに沿って転動することにより、該ピストンが該シリンダー内を滑動することを特徴とする。前記突出部を長手方向に球体を転動するための凹溝の代わりに用いることにより、凹溝を別途加工する必要が無くなると共に、シリンダー内のピストンの移動をよりスムーズにすることができる。
【0022】
また、本発明の運動伝達機構は、ロッドの外周に傾斜部を有するカム溝を形成し、円筒部の所定位置に内周で突出する転動可能な球体を配設し、該ロッドを該円筒部に挿入して該球体と該カム溝とを係合しており、該カム溝の傾斜部に対する該球体の移動により、該ロッドの軸方向を中心にする回転動作を該円筒部の該ロッド軸方向への進退動作へと変換して運動を伝達し、若しくは該円筒部の該ロッド軸方向への進退動作を該ロッドの軸方向を中心にする回転動作へと変換して運動を伝達することを特徴とする。円筒部は例えばピストンなどの有底円筒体や円筒とすることができ、また球体は本発明の蝶番と同様の方式で円筒部の所定位置に配設することが可能である。
【0023】
尚、本発明には、上記或いは明細書に開示された各発明の特定事項の一部を適宜他の発明の特定事項の一部或いは全部に変更したものや、前記各発明の特定事項に適宜他の発明の特定事項の一部或いは全部を追加したものや、前記各発明の特定事項の一部を必要に応じて適宜削除したものも含まれる。例えば、本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構の特定事項として記載した事項の一部を適宜本発明の蝶番の特定事項の一部若しくは運動伝達機構の特定事項の一部にすること等が可能である。
【0024】
また、本発明に於けるカム溝及び前記カム溝と係合する球体の特徴以外の特徴は、本明細書に開示された他の特定事項と適宜組み合わせたものも本発明に含まれ、また、操作ロッドの略下部とピストンとの直接的に若しくは間接的な係合には、操作ロッドのカム溝とピストンに設けた球体とによる係合の他、ピストンに形成したカム溝と操作ロッドに設けた係合部若しくはローラとによる係合、ピストンの内周に形成した雌ねじ部と操作ロッドの外周に形成した雄ねじ部とによる係合等が含まれる。また、操作ロッドのカム溝と係合してカム溝に対して移動可能なピストンの係合手段は上記球体以外の係合手段とすることも可能であり、例えば前記係合手段としてピストンの所定位置に内周で突出して回動可能なローラを設けてもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の蝶番及びその蝶番を備える自動閉扉機構等について図に於ける具体的な実施形態に基づいて説明する。図1(a)及び同図(b)は本発明に於ける第1実施形態の蝶番を示す平面図、縦断面図である。
【0026】
第1実施形態の蝶番1は、図1に示すように、金属やプラスチック等からなる一方の羽根板2と他方の羽根板3との一対を有し、各羽根板2・3に形成された取付孔21・31に例えば皿ねじ等を挿通して、一方の羽根板2を扉枠等に、他方の羽根板3を開閉扉等に取り付けるようになっている。
【0027】
一方の羽根板2には円筒状のシリンダー4が一体的に設けられ、シリンダー部4の上端及び下端にはそれぞれネジ溝が形成されており、その上端には略リング状のキャップ5が螺合して設けられ、その下端には略リング状のキャップ6が螺合して設けられている。前記下端に螺合した状態のキャップ6のネジ溝の下端位置にはオーリング61が嵌め込まれており、シリンダー4とキャップ6の螺合部分からシリンダー4内のエアが流出しないようになっている。
【0028】
前記キャップ6中心の中空部の略下端にはネジ溝が形成され、前記ネジ溝と螺合することで略円筒形の内装部62が取り付けられている。前記内装部62の内側には先窄まりになって径が小さいエア流入孔621が形成され、エア流入孔621の下方には防塵等のためのフィルター622が配設され、エア流入孔621上にはバルブ板623が載置されており、内装部62の下端のエア吸入口から吸入されたエアがフィルター622を介してエア流入孔621に導入され、バルブ板623がシリンダー4内の減圧で浮き上がり、キャップ6の中空部上端からシリンダー4内にエアが流入するようになっている。
【0029】
螺合された内装部62の上端には、バルブ板623の外径より小さい内径の穴を有するリング63が載置され、リング63によりバルブ板623はリング63とエア流入孔621の間に配置されるようになっており、内装部62の上端で中空部へ突出している部分とリング63の上面との間にはオーリング64が設けられている。エアの流出時にはシリンダー4内の加圧により、バルブ板623がエア流入孔621に押し付けられて塞がれるので、キャップ6の中空部上端及びリング63近傍及び内装部62とキャップ6とが螺合されているネジ溝を通ってエアが流出量を抑制されながら徐々に流出するようになっている。従って、内装部62はネジ溝を通ってエアが流出可能な程度の強さに調整してキャップ6に螺合されている。なおシリンダー4内へ外部からエアを流入させ、シリンダー4内から外部へのエアを抑制しながら流出させる弁手段は、本実施形態の構造に限定されるものではない。
【0030】
シリンダー4内には、略有底円筒形のピストン7が上下方向に摺動可能に収容配置されており、ピストン7の略上端には平面視で垂直方向に対向している2つの貫通孔71・71が形成されていると共に、平面視で水平方向に対向している2つの貫通孔72・72が形成されている。貫通孔72の直径はピストン7の周側壁の肉厚より若干長く形成され、また貫通孔71は貫通孔72より若干上方に位置し、その直径は貫通孔72より長く形成されている。
【0031】
ピストン7の略下端は上部より若干大径で形成されており、その略下端の円周状の凹部にはパッキンリング73が嵌め込まれ、シリンダー4内でピストン7の下面とキャップ6の上部間に流入したエアがピストン7の下面より上方へ流入することを防止して気密性を保持している。尚、シリンダー4の内面でピストン7の下面がスライドする部分に、薄膜樹脂をコーティングする或いは略同形状の樹脂製の筒を嵌め込むと、ピストン7の下面とキャップ6の上部間のエアの気密性が向上して好適である。
【0032】
ピストン7の貫通孔71には、貫通孔71の径と略同一径で鋼製等の球体74が転動可能に配設され、ピストン7の内周で突出しており、また貫通孔72には、貫通孔72の径と略同一径で鋼製等の球体75が転動可能に配設され、ピストン7の外周で突出している。また、シリンダー4の内周の径は、ピストン7の略下端がスライドする下部の径よりも上部の径が若干小径になっており、前記上部でピストン7の貫通孔72に対応する位置には、シリンダー4の長手方向に凹溝41がそれぞれ形成されている。そして、ピストン7の外周で突出している貫通孔72の球体75が、貫通孔72で所定位置に保持された状態で、凹溝41に係合して凹溝41に沿って上下方向に転動することにより、球体75と凹溝41の係合が回り止めになってピストン7を周方向に回転不能な状態とし、且つピストン7をシリンダー4内でスムーズに上下に滑動させる構成である。
【0033】
また、操作ロッド8は、略上部の短径部81と略下部の長径部82を有し、短径部82はキャップ5の中空部に挿通されて長径部82の上面がキャップ5の下面に当接した状態になっており、短径部81は他方の羽根板3に一体的に形成された筒部32に嵌挿され他方の羽根板3に係止ピン33で固定されており、長径部82はシリンダー4内に収容配置されている。尚、筒部32の下端位置に於ける短径部81の外周にはスナップリング34が配設されている。
【0034】
シリンダー4内に収容された長径部82の外周には、二条のカム溝9が対置して形成されており、各カム溝9はその下端から略上部にかけて形成された傾斜部91と傾斜部91に連続して略水平に形成された水平部92とからなり、傾斜部91の下端がピストン7が最下端に下降した場合の貫通孔71の高さに位置するように設けられ、傾斜部91の傾斜は上方に行くに従って漸次緩やかになっている。尚、カム溝9は180度以下の所定角度の扉の回動に対応できるように所定角度で形成されており、カム溝9は二条に限定されず、一条、三条、四条等にすることも可能である。
【0035】
各カム溝9にはピストン7の内周で突出する球体74が係合されており、球体74はカム溝9に沿って転動し、球体74は貫通孔71で所定位置に保持された状態でカム溝9に対して移動する。カム溝9の傾斜部91を球体74が移動している間は、他方の羽根板3及び操作ロッド8の回転動作とピストン7がシリンダー4内を上下に移動する進退動作とが連動し、カム溝9の水平部92を球体74が移動している間は、他方の羽根板3及び操作ロッド8の回転動作に対してピストン7は最も上の位置で停止している構成である。従って、カム溝9の水平部92は開扉状態を維持するストッパーの機能を有する。
【0036】
また、シリンダー4内で、ピストン7の周側壁の上端面とキャップ5の下面間には圧縮コイルバネ10が収容配置されている。弾装された圧縮コイルバネ10は、他方の羽根板3及び操作ロッド8を回動する開扉動作時に、球体74がカム溝9の傾斜部91に沿って上方へ移動することによるピストン7の上昇動作によって収縮され、球体74が水平部92に位置することにより収縮状態を維持されて、開扉状態となる。そして、開扉状態を解放する場合には、他方の羽根板3及び操作ロッド8を若干閉扉方向に回動し、球体74を水平部92から傾斜部91に移動して圧縮コイルバネ10の復元力を解放することにより、前記復元力で圧縮コイルバネ10がピストン7を下降すると共に前記下降動作に伴って球体74が傾斜部92に沿って下方に移動し、他方の羽根板3及び操作ロッド8が回動することによって自動的に閉扉動作が生起される。
【0037】
第1実施形態の蝶番1を使用する際には、例えば二つの蝶番1・1を一組として用い、各蝶番1の一方の羽根板2を扉枠に、他方の羽根板3を扉に取り付けて自動閉扉機構を構成する。取り付けた各蝶番1は、扉が閉じた状態のときに、シリンダー4内に於いて球体74はカム溝9の最下端に位置し、ピストン7はその下面がキャップ6の上面近傍に位置する位置になっている。尚、自動閉扉機構で使用する蝶番1の個数は適宜である。
【0038】
そして、扉を開けると開扉動作によって扉に固定された他方の羽根板3及び操作ロッド8が回転し、カム溝9が回転することによって球体74がカム溝9の傾斜部91に沿って上方へ移動し、ピストン7は圧縮コイルバネ10を収縮しながら上昇する。この際に、球体75が凹溝41に沿って転動してピストン7の上昇動作をスムーズにし、更にはピストン7の上昇動作に伴ってシリンダー4内のキャップ6の上面とピストン7の下面間が減圧され、減圧に伴ってバルブ板623が浮き上がり、シリンダー4内のキャップ6の上面とピストン7の下面間にエア流入孔621からエアが流入していきエア溜まりが増加し或いは形成される。
【0039】
扉を例えば90度など所定角度以上回動すると、他方の羽根板3及び操作ロッド8も前記所定角度以上回転し、球体74がカム溝9の傾斜部91から水平部92に移動してピストン7の上昇が停止してエアの流入も停止すると共に、その停止した位置でピストン7の位置が保持され、開扉状態が維持される。また、ピストン7の位置が所定位置に保持されることにより、圧縮コイルバネ10も収縮状態で保持される。
【0040】
開扉状態を解放する場合には、扉を若干閉扉方向に回動して他方の羽根板3及び操作ロッド8を閉扉方向に回動することにより、球体74をカム溝9の水平部92から傾斜部91の位置に移動し、収縮状態の圧縮コイルバネ10の復元力を解放する。そして、前記復元力により圧縮コイルバネ10がピストン7を押圧し、ピストン7はエア溜まりのエアを圧縮して徐々に流出しながら下降すると共に、ピストン7の下降動作に伴い球体74が傾斜部91に沿って徐々に下方に移動し、他方の羽根板3及び操作ロッド8が回動する。従って、エアを抑制しながら流出してエアクッション作用で緩衝されながら扉が自動的に閉められて行き、エア溜まりが減少或いは消滅して扉が閉状態となる。尚、傾斜部91を移動する球体74が水平部92に到達する前の所定角度で開扉動作を止めた場合には開扉状態は維持されず、その止めた時点から収縮された圧縮コイルバネ10の復元力が解放され、前記と同様にエアクッション作用で緩衝されながら扉が自動的に閉められて行くことになる。
【0041】
次に、本発明の蝶番及びその蝶番を備える自動閉扉機構等の第2実施形態について第1実施形態と異なる箇所を中心に説明する。図2は第2実施形態の第一蝶番を示す縦断面図、図3は第2実施形態の第二蝶番を示す縦断面図である。
【0042】
第2実施形態に於ける自動閉扉機構は、閉扉動作時の緩衝機能を担う第一蝶番1aと、自動閉扉動作を担う第二蝶番1bを有し、本実施形態では一つの第一蝶番1aと一つの第二蝶番1bを一組として用いている。尚、自動閉扉機構で使用する第一蝶番1a、第二蝶番1bの各個数は必要に応じて適宜である。第一蝶番1aは、第1実施形態の蝶番1から圧縮コイルバネ10を取り除いた自動閉扉機能を有しない構成であり、他の構成は第1実施形態の蝶番1と同一である。図2に於いて、第1実施形態の蝶番1の各部に対応する第一蝶番1aの各部は、対応する第1実施形態の蝶番1の各部の符号にaを付したものを符号としている。また、図3に於いて、第1実施形態の蝶番1の各部に対応する第二蝶番1bの各部には、対応する第1実施形態の蝶番1の各部の符号にbを付したものを符号としている。
【0043】
第二蝶番1bの操作ロッド8bは、その上部の短径部81bを他方の羽根板3bの筒部32bに固定され、シリンダー4b上端のキャップ5bに挿通されており、シリンダー4b内に収容されている操作ロッド8bの略下端には長径部82bが設けられ、長径部82bの外周には2つのカム溝9bが対置して形成されている。更に操作ロッド8bの長径部82bより下方にも短径部83bが突設しており、短径部83bはシリンダー4b下端に取り付けられたキャップ6b中央の中空部に挿通され、キャップ6bの下方でカラー11bを環装された短径部83bはカラー11bに係止ピン12bで固定されている。
【0044】
シリンダー4b内には、円筒形のピストン7bが上下方向に摺動可能に収容され、ピストン7bは第1実施形態の蝶番1と同様に、貫通孔71b、72bを有し、貫通孔71bには球体74bが転動可能に配設されピストン7bの内周で突出しており、また貫通孔72bには球体75bが転動可能に配設されピストン7bの外周で突出している。球体75bが、貫通孔72bで所定位置に保持された状態で、シリンダー4内の長手方向に形成された凹溝41bに係合して転動することにより、ピストン7bが周方向に回転不能な状態でシリンダー4b内を上下方向へスムーズに滑動する。
【0045】
球体74bはカム溝9bに係合して転動し、貫通孔71bで所定位置に保持された状態でカム溝9bに沿って移動し、カム溝9bの傾斜部91bを球体74bが移動している間は、他方の羽根板3b及び操作ロッド8bの回転動作とピストン7bがシリンダー4b内を上下に移動する進退動作とが連動し、カム溝9bの水平部92bを球体74bが移動している間は、他方の羽根板3b及び操作ロッド8bの回転動作に対してピストン7bは上下方向の進退を停止する。カム溝9bの傾斜部91b及び水平部92bは、傾斜角度などで、第一蝶番1aのピストン7aに於けるカム溝9aの傾斜部91a及び水平部92bと対応して形成されている。
【0046】
ピストン7bの周側壁の上端面とキャップ5bの下面間には圧縮コイルバネ10bが収容配置されている。弾装された圧縮コイルバネ10bは、他方の羽根板3b及び操作ロッド8bを回動する開扉動作時に、球体74bがカム溝9bの傾斜部91bに沿って上方へ移動することによるピストン7bの上昇動作によって収縮され、球体74bが水平部92bに位置することにより収縮状態を維持される。そして、他方の羽根板3b及び操作ロッド8bを若干閉扉方向に回動し、球体74bを水平部92bから傾斜部91bに移動して圧縮コイルバネ10bの復元力を解放することにより、圧縮コイルバネ10bがピストン7bを下降すると共に前記下降動作に伴って球体74bが傾斜部92bに沿って下方に移動し、他方の羽根板3b及び操作ロッド8bが回動することによって自動的に閉扉動作が生起される。
【0047】
例えば一つの第一蝶番1aと一つの第二蝶番1bを一組とする自動閉扉機構を使用する場合、蝶番1a、1bの各々の一方の羽根板2a、2bを扉枠に、他方の羽根板3a、3bを扉に取り付けて自動閉扉機構を構成する。そして、扉を開けると他方の羽根板3a、3b及び操作ロッド8a、8bが回転し、カム溝9a、9bが回転して球体74a、74bがそれぞれ傾斜部91a、91bに沿って上方へ移動し、第二蝶番1bのピストン7bは圧縮コイルバネ10bを収縮しながら上昇する。また、ピストン7aの上昇に伴ってシリンダー4a内が減圧され、減圧に伴ってバルブ板623aが浮き上がり、第一蝶番1aのシリンダー4a内のキャップ6a上面とピストン7a下面と間に、エア流入孔621からエアが流入してエア溜まりが形成される。
【0048】
扉を例えば90度など所定角度以上回動すると、球体74a、74bが傾斜部91a、71bから水平部92a、92bにそれぞれ移動してピストン7a、7bの上昇が停止してその位置で保持され、開扉状態が維持される。この際、第一蝶番1aではシリンダー4a内へのエアの流入が停止し、他方で第二蝶番1bでは圧縮コイルバネ10bが収縮状態で保持される。
【0049】
そして、扉を閉扉方向へ若干回動して他方の羽根板3a、3b及び操作ロッド8a、8bを閉扉方向に回動すると、球体74a、74bがカム溝9a、9bの水平部92a、92bから傾斜部91a、91bの位置にそれぞれ移動し、開扉が維持された状態から解放され、第二蝶番1bでは収縮状態の圧縮コイルバネ10bの復元力が解放される。前記復元力により、第二蝶番1bでは圧縮コイルバネ10bがピストン7bを押圧して下降し、ピストン7bの下降に伴って球体74bが傾斜部91bに沿って下方に移動し、他方の羽根板3b及び操作ロッド8bが回動して扉が閉扉方向に自動的に回動される。
【0050】
前記閉扉動作に伴って第一蝶番1aでは、他方の羽根板3a及び操作ロッド8aが閉扉方向に回動され、球体74aはカム溝9aの傾斜部91aに沿って下方へ移動し、ピストン7aはエア溜まりのエアを圧縮して徐々に流出しながら下降する。従って、エアを抑制しながら流出してエアクッション作用で緩衝されながら扉が自動的に閉められて行き、エア溜まりが減少或いは消滅して扉が閉状態となる。尚、傾斜部91a、91bを移動する球体74a、74bが水平部92a、92bに到達する前の所定角度で開扉動作を止めた場合には開扉状態は維持されず、その止めた時点から収縮された圧縮コイルバネ10bの復元力が解放され、前記と同様にエアクッション作用で緩衝されながら扉が自動的に閉められて行くことになる。
【0051】
次に、本発明の蝶番及びその蝶番を備える自動閉扉機構等の第3実施形態について第1実施形態、第2実施形態と異なる箇所を中心に説明する。図4(a)及び同図(b)は第3実施形態の蝶番を示す平面図、縦断面図、図5は図4(b)のX−X横断面図である。
【0052】
第3実施形態に於ける蝶番1cは、第1実施形態の蝶番1と概略同一の構成であるが、一方の羽根板2cに設けられたシリンダー4cの平面視或いは横断面視の形状が略正方形に形成されており、他方の羽根板3cに設けられた筒部32cの平面視或いは横断面視の形状が略正方形を半分にしたコ字形部分の両端と前記略正方形の一辺とほぼ同じ長さの直径を有する略半円部分の両端とを突合した形状或いは略舌状に形成されている。尚、図4及び図5に於いて、第1実施形態の蝶番1の各部に対応する蝶番1cの各部は、対応する第1実施形態の蝶番1の各部の符号にcを付したものを符号としている。
【0053】
シリンダー4c内の略下部には円柱形の空間が形成され、その略上部には直方体形の空間が形成されており、前記円柱形空間に嵌挿して有底円筒形のピストン7cが設けられている。ピストン7cの略上部の所定高さの位置には平面視で垂直方向に2つの貫通孔71c・71cが形成され、貫通孔71cには球体74cが転動可能に保持されて配設されており、球体74cはピストン7cの周側壁の内周から突出し、操作ロッド8cの長径部82の外周に対置して形成された傾斜部91cと水平部92cを有するカム溝9cに各球体74cが係合している。カム溝9cの傾斜部91cに沿って球体74cが移動し、他方の羽根板3c及び操作ロッド8cの回転動作とピストン7cの進退動作が連動する構成は上記実施形態と同様である。
【0054】
貫通孔71cとほぼ同一か若干低い高さの位置でシリンダー4cの四隅に対応する位置には4つの凹部76cが形成され、各凹部76cにはピストン7cの外周から突出して球体75cがそれぞれ転動可能に配設されており、且つ球体75cはシリンダー4cの隅部と凹部76c間に狭持されて周方向に移動不能になっている。そして、ピストン7cが上下方向に進退する場合には、シリンダー4cの隅部の長手方向に沿って球体75cが転動して移動し、隅部に係合する球体75cが回り止めになってピストン7cを周方向に回転不能とし、且つピストン7cを上下にスムーズに滑動するようになっている。前記隅部のような円形からの突出部を、ピストン7cを滑動するための球体75cが移動する空間として利用することにより、球体75cをシリンダー4cの長手方向に移動させ且つピストン7cを回転不能にするための凹溝を別途形成する必要が無くなり、加工を容易化することができる。尚、シリンダーの長手方向へ球体が移動しやすくするために、前記隅部など突出部に横断面が略球体と同形の溝部をシリンダー長手方向に沿って形成してもよい。
【0055】
また、シリンダー4c内には、ピストン7cの周側壁の上端面とキャップ5cの下面間に圧縮コイルバネ10cを弾装して収容配置している。上記実施形態と同様に、圧縮コイルバネ10cは、開扉動作時に球体74cがカム溝9cの傾斜部91cに沿って上方へ移動することによるピストン7cの上昇で収縮され、球体74cが水平部92cに位置することにより収縮状態を維持される。また、球体74cを水平部92cから傾斜部91cに移動して圧縮コイルバネ10cの復元力を解放することにより、圧縮コイルバネ10cがピストン7cを下降し、前記下降動作で球体74cが傾斜部91cを下方に移動して他方の羽根板3及び操作ロッド8が回動し、自動的に閉扉動作が生起される。
【0056】
尚、本実施形態の蝶番1cの使用及び動作の仕方は、基本的に第1実施形態の蝶番1と同様である。また、本実施形態の蝶番1cはシリンダー4c内に圧縮コイルバネ10cが内設されているものであるが、圧縮コイルバネ10cが内設されていない蝶番としてもよく、この場合には前記蝶番を閉扉時に於ける緩衝機能を担う蝶番とし、上記第2実施形態と同様に、別の蝶番に圧縮コイルバネを内設して、前記別の蝶番に前記バネの収縮及び復元を利用した自動閉扉機能を担わせ、前記蝶番と前記別の蝶番の両者を用いて緩衝機能付き自動閉扉機構を構成するとよい。
【0057】
次に、本発明に於ける蝶番のシリンダーの変形例について説明する。図6はシリンダーの第1変形例を示す横断面図、図7はシリンダーの第2変形例を示す横断面図、図8はシリンダーの第3変形例を示す横断面図である。尚、図6乃至図8に於いて、第1実施形態の蝶番1の各部に対応する蝶番の各部は、対応する第1実施形態の蝶番1の各部の符号にそれぞれd、e、fを付したものを符号としている。
【0058】
第1変形例のシリンダー4dの横断面形状は、図6に示すように、略正方形を半分にしたコ字形部分の両端と前記略正方形の一辺とほぼ同じ長さの短軸を有する略半楕円形部分の両端とを突合した形状或いは略舌形状に形成されている。ピストン7dには水平方向に対置して2つの貫通孔71d・71dが設けられ、各貫通孔71dには球体74dが内周に突出して転動可能に配設され、球体74dは操作ロッド8dのカム溝9dに係合して移動可能になっている。また、前記略半楕円部分の中心の内側位置とコ字形部分の二隅の内側位置には、ピストン7dの回り止めをして周方向の回転を不能にし、且つシリンダー4dの長手方向へのピストン7dの滑動をスムーズにする3つの球体75dが、それぞれピストン7dの凹部76dに転動可能に配設されている。
【0059】
また、第2変形例のシリンダー4eの横断面形状は、図7に示すように、略正方形を半分にしたコ字形部分の両端と前記略正方形の一辺とほぼ同じ長さの直径を有する略半円形部分の両端とを突合した形状或いは略舌形状に形成され、上記と同様に、ピストン7eに水平方向に対置して2つの貫通孔71e・71eが設けられ、各貫通孔71eに球体74eが内周に突出して転動可能に配設され、球体74eは操作ロッド8eのカム溝9eに係合して移動可能である。そして、コ字形部分の二隅の内側位置には、ピストン7eの回り止めをして周方向の回転を不能にし、且つシリンダー4eの長手方向へのピストン7eの滑動をスムーズにする2つの球体75eが、凹部76eに転動可能に配設されている。
【0060】
上記第1、第2変形例に於けるシリンダー4d、4eの前記略舌形状の方向は適宜であり、上記例では横断面視で水平方向の羽根板2d、2eに対し、右側の下に位置するシリンダー4d、4eの略半楕円形部分若しくは略半円形部分の中心が垂直方向で下に位置し、これと対置する底辺が垂直方向で上に位置するように形成したが、例えば前記上下を逆にして形成してもよく、また、水平方向の羽根板2d、2eに対し、右側に位置するシリンダー4d、4eの略半楕円形部分の中心若しくは略半円形部分の中心が水平方向で右に位置し、これと対置する底辺が水平方向で左に位置するように形成する、或いはこれと左右逆に形成する等適宜であり、また横断面視で水平方向の羽根板2d、2eに対してシリンダー4d、4eを左側の下に設けるなど、横断面視で羽根板に対してシリンダーを設ける位置は本発明に於いて適宜である。
【0061】
また、第3変形例のシリンダー4fの横断面形状は、図8に示すように、略正方形の一隅が略90度の略円形部分で置換された形状或いは略扇形状に形成されている。ピストン7fには水平方向に対置して2つの貫通孔71f・71fが設けられ、各貫通孔71fには球体74fがそれぞれ内周に突出して転動可能に配設され、球体74fは操作ロッド8fのカム溝9fに係合して移動可能になっている。また、略90度の略円形部分以外の略正方形の三隅の内側位置には、ピストン7fの回り止めをして周方向の回転を不能にし、且つシリンダー4fの長手方向へのピストン7fの滑動をスムーズにする3つの球体75fが、それぞれピストン7fの凹部76fに転動可能に配設されている。
【0062】
シリンダー4fの前記略扇形状の方向は適宜であり、上記例では水平方向の羽根板2fに対し、右側の下に位置するシリンダー4d、4eの横断面形状で略円形部分が右下方に位置するように形成したが、略円形部分が右上方若しくは左上方若しくは左下方に位置するように形成してもよい。また、他の変形例としてシリンダーの横断面形状が略270度の円形部分の両端と略90度のくの字形部分の両端を突合したような形状であったもよく、この場合には前記くの字形部分の隅が突出部となり、前記突出部にシリンダー長手方向に移動する球体が設けられる。前記形状も形成する位置や方向は適宜である。
【0063】
上記実施形態や第1、第2、第3変形例のシリンダーの形状以外にもシリンダーの形状は適宜であり、円形以外の形状とする場合には、シリンダーの横断面形状を円形から突出した突出部を少なくとも一つ有する形状とし、前記突出部をシリンダー内に長手方向に沿って設け、全ての或いは適宜の突出部に沿ってピストンの球体が移動して、ピストンを周方向に回転不能な状態にし、且つピストンがシリンダー内をスムーズに滑動する構成とすると好適である。また、シリンダーの横断面形状が六角形、楕円形など様々な形状の蝶番とすることができるので、デザインの高度化や多様化を図ることが可能になる。
【0064】
尚、本発明に於いて、カム溝と係合する球体やシリンダーの長手方向に移動する球体の個数、配設位置や、カム溝の形状、個数、形成位置等は、本発明に於ける作用効果或いは機能が得られる限度で適宜である。また、ロッドに形成した傾斜を有するカム溝とピストンの球体の係合により、ロッドの回転動作とピストンの進退動作を連動させる運動伝達機構は、本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構或いはその蝶番での使用に限定されず独立して使用可能であり、その場合に、本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構或いはその蝶番の各特定事項を、使用可能で且つその作用効果或いは機能が得られる限度で必要に応じて適宜付加すること等が可能である。
【0065】
また、上記各蝶番に於いて、シリンダー内の長手方向に形成した凹溝と接続されたリング状凹溝など周方向の凹溝をシリンダー内の所定位置に形成し、前記長手方向を移動する球体が所定位置で周方向の凹溝に係合して移動することによって、ピストンの進退を停止状態にして開扉状態を維持するようにしてもよく、上記のカム溝の水平部によるストッパーの替わりに或いは併用して使用することが可能である。また、前記周方向の凹溝によるストッパーは、ピストンの内周に形成した雌ねじ部と操作ロッドの外周に形成した雄ねじ部とによる係合により、操作ロッドの回転動作とピストンの進退動作の全部或いは一部を連動するエアクッション作用を有する緩衝機能付き自動閉扉機構或いはその蝶番に用いると好適である。
【0066】
【発明の効果】
本発明の緩衝機能付き自動閉扉機構或いはその蝶番は上記構成であるから、簡単な構造で容易且つ低コストで製造することができ、小型化・軽量化や小スペース化を図ることができると共に、油漏れが生じて周囲を汚すことが無い等のエアクッション作用を利用した自動閉扉機構の有利性を生かしつつ、扉の開動作や緩衝されながらの閉動作をよりスムーズに行うことができるという効果を奏する。
【0067】
また、本発明に於いて、操作ロッドの外周に形成したカム溝とピストンに形成した貫通孔若しくは凹部に配設した球体とを係合する構成とする場合、例えばピストン部分の加工は筒体を形成して穴を開けることで済むなど、ピストンに雌ねじを形成する場合等に比し、加工や製造が容易となる。また、カム溝に係合して移動するのが球体であるから、カム溝の傾斜やピッチを自由に設定することができ、更にはカム溝に沿った球体の進行が少ない摩擦抵抗でスムーズに行われ、ピストンのスムーズな進退が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明に於ける第1実施形態の蝶番を示す平面図。
(b)本発明に於ける第1実施形態の蝶番を示す縦断面図。
【図2】本発明に於ける第2実施形態の第一蝶番を示す縦断面図。
【図3】本発明に於ける第2実施形態の第二蝶番を示す縦断面図。
【図4】(a)本発明に於ける第3実施形態の蝶番を示す平面図。
(b)本発明に於ける第3実施形態の蝶番を示す縦断面図。
【図5】図4(b)のX−X横断面図。
【図6】本発明に於けるシリンダーの第1変形例を示す横断面図。
【図7】本発明に於けるシリンダーの第2変形例を示す横断面図。
【図8】本発明に於けるシリンダーの第3変形例を示す横断面図。
【符号の説明】
1 蝶番
2、3 羽根板
21、31 取付孔
4 シリンダー
41 凹溝
5、6 キャップ
61、64 オーリング
62 内装部
621 エア流入孔
622 フィルター
523 バルブ板
7 ピストン
71、72 貫通孔
73 パッキンリング
74、75 球体
8 操作ロッド
9 カム溝
91 傾斜部
92 水平部
10 圧縮コイルバネ

Claims (6)

  1. エアクッション作用による緩衝機能付き自動閉扉機構で用いる蝶番であって、一対の羽根板の一方に設けられたシリンダー内にピストンを収容配置し、他方の羽根板に略上部を固定されている操作ロッドの略下部に直接的に若しくは間接的に該ピストンを係合して、他方の羽根板の回転動作と該ピストンの進退を該操作ロッドを介して連動しており、該ピストンの所定位置に外周に突出して転動可能に配設された球体が該シリンダー内に長手方向へ形成した凹溝に沿って転動することにより、該ピストンが該シリンダー内を滑動することを特徴とする蝶番。
  2. 前記シリンダー内に開扉時の前記ピストンの動作によって収縮されるバネを配設し、該バネの復元力による該ピストンの戻り動作に連動して他方の羽根板が閉扉方向に回動すると共に、該シリンダー内の所定位置の周方向に前記凹溝に接続された第二の凹溝が形成されており、前記球体の該第二凹溝への係合によって該ピストンの進退が停止状態となることを特徴とする請求項1記載の蝶番。
  3. エアクッション作用による緩衝機能付き自動閉扉機構で用いる蝶番であって、一対の羽根板の一方に設けられたシリンダー内にピストンを収容配置し、他方の羽根板に略上部を固定されている操作ロッドの略下部に直接的に若しくは間接的に該ピストンを係合して、他方の羽根板の回転動作と該ピストンの進退とを該操作ロッドを介して連動しており、該シリンダーの横断面形状が円形から突出した突出部を少なくとも一つ有する形状であると共に、該突出部が該シリンダー内に長手方向に沿って設けられ、該ピストンの所定位置に外周に突出して転動可能に配設された球体を該突出部に沿って転動することにより、該ピストンが該シリンダー内を滑動することを特徴とする蝶番。
  4. 一対の羽根板の一方に設けられたシリンダー内にピストンを収容配置し、他方の羽根板に略上部を固定されている操作ロッドの略下部を該シリンダー内に配置し、該操作ロッドの略下部の外周に形成された傾斜部を有するカム溝に、該ピストンの所定位置に転動可能に配設された内周で突出する球体を係合し、該カム溝の傾斜部に対する該球体の移動に対応して該ピストンが進退し、閉扉時の該ピストンの戻り動作による該シリンダー内のエアクッション作用で衝撃を緩衝すると共に、該シリンダー内に長手方向へ凹溝を形成し、該ピストンの所定位置に第二の球体を外周に突出して転動可能に配設し、該凹溝に沿って該第二の球体が転動することにより該ピストンが該シリンダー内を滑動することを特徴とする蝶番。
  5. 一対の羽根板の一方に設けられたシリンダー内にピストンを収容配置し、他方の羽根板に略上部を固定されている操作ロッドの略下部を該シリンダー内に配置し、該操作ロッドの略下部の外周に形成された傾斜部を有するカム溝に、該ピストンの所定位置に転動可能に配設された内周で突出する球体を係合し、該カム溝の傾斜部に対する該球体の移動に対応して該ピストンが進退し、閉扉時の該ピストンの戻り動作による該シリンダー内のエアクッション作用で衝撃を緩衝する蝶番と、
    一対の羽根板の一方に設けられたシリンダー内にピストンを収容配置し、他方の羽根板に略上部を固定されている操作ロッドの略下部に直接的に若しくは間接的に該ピストンを係合し、他方の羽根板の回転動作と該ピストンの進退とを該操作ロッドを介して連動し、且つ該シリンダー内に長手方向へ凹溝を形成し、該ピストンの所定位置に第二の球体を外周に突出して転動可能に配設し、該凹溝に沿って該第二の球体が転動することにより該ピストンが該シリンダー内を滑動すると共に、該シリンダーに内設された圧縮コイルバネで自動閉扉機能を担う別の蝶番と、
    を備えることを特徴とする緩衝機能付き自動閉扉機構。
  6. 前記蝶番若しくは前記別の蝶番に、前記シリンダー内の所定位置の周方向に前記凹溝に接続された第二の凹溝が形成されており、前記第二球体の該第二凹溝への係合によって前記ピストンの進退が停止状態となることを特徴とする請求項4記載の蝶番又は請求項5記載の緩衝機能付き自動閉扉機構。
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