JP3713402B2 - 無細胞抽出液及び糖蛋白質合成系 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞抽出液を用いて細胞外で蛋白質を合成させるインビトロ翻訳系に関し、特に、細胞抽出液により蛋白質合成とその後の糖鎖修飾とを共に実行させ糖蛋白質を合成し得る系に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内の機能情報は核酸上に記録され、この核酸を鋳型として機能分子である蛋白質が翻訳されたり、機能的RNA分子(例えばリボザイム)が転写されたりする。近年、こうした生体機能を担持した核酸、蛋白質の解析が盛んに進められ、また、その一方で、これら核酸、蛋白質の解析方法、解析手段の開発も進められている。
【0003】
核酸の解析方法は、特に、ポリメラーゼ鎖増幅方法(PCR)等の開発により目覚ましく発展した。このPCRによれば、ポリメラーゼ酵素を含む無細胞の反応液中にプライマーと鋳型DNAを添加することにより、この鋳型DNAに対するDNA断片を自在に増幅させることが可能となる。すなわち、核酸については、細胞外で自在に合成、増幅させることが可能となっている。そして、ここで合成された核酸は、例えば、一次構造(塩基配列)の決定などに供され、これによって、ゲノム解析などの核酸解析の進行を加速化させるに至っている。
【0004】
一方、蛋白質の解析方法においても、A.S.Spirinら(Science,242,1162-1164(1988))により大腸菌抽出液を利用した生体外蛋白質合成系が開発されて以来、種々の無細胞翻訳系が開発されている。このような無細胞翻訳系としては、例えば、上記大腸菌の系の他、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球などから調製した細胞抽出液を利用したものがある。
【0005】
このうちより一般的な小麦胚芽由来の無細胞翻訳系は、小麦胚芽をガラスビーズとともに乳鉢などを用いてすりつぶし、このすりつぶされた小麦胚芽から得た細胞抽出液を用いてmRNAから蛋白質を合成させるものである。すなわち、この小麦胚芽中に存在する蛋白質合成(翻訳)活性を保持しつつ、小麦胚芽から細胞抽出液を回収し、これを用いて細胞外で自在に蛋白質を合成させることが可能となっている。
【0006】
このように細胞外で蛋白質を自在に合成させることができれば、細胞で蛋白質を合成させる際の複雑な要因や煩雑さを排除して、簡便に所望の蛋白質を得ることが可能となり、蛋白質の解析等を行う上で有利となる。このような観点から、従来より、無細胞翻訳系の改良などがなされており、こうした技術が、例えば、特表平1−503119号公報、特開平4−200390号公報、特開平7−203984号公報などに開示されている。また、このような無細胞翻訳系はキットとしても市販され(Amasham社など)、広く入手可能となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の無細胞翻訳系では、蛋白質への翻訳を行うことは可能であるが、翻訳された蛋白質の翻訳後修飾を行うことができないという問題がある。すなわち、細胞内において、蛋白質の多くは、鋳型核酸から転写されたmRNAに基づいて、蛋白質として翻訳され、この翻訳後に修飾を受けることが知られている。この翻訳後の修飾の一つとして、糖鎖修飾がある。
【0008】
この翻訳後の糖鎖修飾により付加される糖鎖は、物質間や細胞間の認識や接着に関与するシグナルやリガンドとして、蛋白質自身の機能調節因子として、又は蛋白質の保護や安定化因子として機能していると考えられている。そのため、糖鎖修飾を受ける蛋白質について生体内の機能を解析するためには、糖鎖修飾を受けた蛋白質を取得することが必要となる。
【0009】
この糖鎖修飾は、蛋白質の特定のアミノ酸に糖鎖を付加させるものであるが、その糖鎖修飾反応は種々異なり、複雑なものであるため、上記無細胞翻訳系で合成された蛋白質に化学的に糖鎖を付加させることは容易なことではない。
【0010】
このような問題から生化学的な方法、すなわち、無細胞翻訳系のように細胞抽出液を用いて細胞内の糖鎖修飾活性を利用して蛋白質に糖鎖を付加させる方法が検討され、イヌ組織由来の糖鎖修飾活性を有する抽出液が取得されている。これは、イヌの組織をホモジナイザーで破砕し超遠心分離によりゴルジ体を含むミクロソーム画分を回収することにより調製される。
【0011】
このイヌ組織の抽出液は、従来の無細胞翻訳系とは別に使用される。具体的には無細胞翻訳系により蛋白質を合成し、この合成した蛋白質を回収した後に、前記イヌ組織の抽出液内に合成蛋白質を移して糖鎖修飾が行われる。このようにイヌ組織の抽出液が取得されたことから、細胞外で生物学的に糖蛋白質の合成が可能となった。そして、ここで合成された糖蛋白質を蛋白質の機能解析などに使用することにより、従来の無細胞翻訳系で合成された糖鎖修飾が行われていない蛋白質に比して、より細胞内における反応を反映させた解析を行うことが期待できる。
【0012】
しかしながら、従来のイヌ組織抽出液を用いた糖蛋白質の合成では、無細胞翻訳系で蛋白質を合成させた蛋白質を回収し、その後に糖鎖修飾されることになる。このように、無細胞翻訳系と糖鎖修飾系を別々に用いて糖蛋白質を合成することは、一般的に変性し易い蛋白質には好ましくなく、このような複数の過程を経ることにより基礎となる蛋白質が変性し、活性低下をもたらすことも考えられる。また、蛋白質への物理的な影響に加えて、糖蛋白質を合成するに当たり、上記のような2段階の系を準備し、これを用いて2段階で糖蛋白質を合成させることは、
変性し易い蛋白質を操作する操作者にとっても高度な注意力などが要求され煩雑な作業となる。
【0013】
また、糖鎖修飾を行い得る細胞抽出液に関しても、現在のところイヌ組織のように限定した組織由来のものが使用可能となっているにすぎず、普遍的な組織細胞から糖鎖修飾活性を回収するには至っていない。糖鎖の種類は、細胞種により異なり、このことから細胞種により糖鎖修飾反応が異なることが予想されている。そのため、種々の細胞から糖鎖修飾活性を回収することが可能となれば、蛋白質の糖鎖修飾を自在にデザインすることも可能となる。
【0014】
さらに、近年では、医薬の分野において、種々の蛋白製剤が開発されているが、この蛋白製剤の効果については、その成分となる蛋白質の糖鎖の有無、種類などに影響されることが知られている。そのため、種々細胞からの糖鎖修飾活性を回収することができれば、このような蛋白製剤の開発、改良などにも大きく貢献することが期待される。
【0015】
そこで、本願発明者らは、上記課題に鑑み、蛋白質合成から糖鎖修飾までの一連の過程を一つの系内で行えるような細胞抽出液の調製について鋭意研究を行い、この研究を通して、従来の無細胞翻訳系の調製とは異なる新規な無細胞抽出液の調製を可能にし、この抽出液を利用して蛋白質合成から糖鎖修飾までの一連の過程を一つの系内で行うことを可能にした。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の通り、本願発明者らは、細胞抽出液の調製について検討した結果、以下のような細胞抽出液の調製を可能にした。本発明の細胞抽出液の調製は、具体的には、細胞を取り巻く環境の圧力を加圧から減圧へと変化させるという緩和な手段で細胞を破砕させ、少なくとも細胞が有する蛋白質合成活性をさらには糖鎖修飾活性をも細胞抽出液中に回収させる。
【0017】
すなわち、本発明の無細胞抽出液は、細胞を破砕して調製され、鋳型核酸から蛋白質を合成させる活性を有する無細胞抽出液であって、不活性ガスの雰囲気中、加圧下の前記細胞を減圧させて、前記細胞が破砕されることを特徴とする。
【0018】
上記発明によれば、従来のようなホモジナイザーのように細胞をすりつぶさず、圧力変化により細胞を破砕又は破裂させて調製される。このように圧力変化により細胞を破砕させることにより、従来のホモジナイザーのような破砕方法に比して、緩和な条件で細胞を破砕させることが可能となり、細胞内の器官などへの影響を低減させることが可能となる。
【0019】
また、本発明の無細胞抽出液は、蛋白質合成活性と合成された蛋白質に糖鎖を付加する糖鎖修飾活性とを有する細胞を破砕して調製され、鋳型核酸から糖蛋白質を合成し得る無細胞抽出液であって、前記細胞が有する蛋白質合成活性と糖修飾活性とが保存されるように不活性ガスの雰囲気中、加圧下の前記細胞を減圧させて、前記細胞が破砕されることを特徴とする。
【0020】
このように本発明によれば、蛋白質合成(翻訳)活性と糖鎖修飾活性とを有する細胞をこれら両活性を破壊しないような圧力変化により破砕させることにより両活性を保持した細胞抽出液が調製される。これにより、従来、別に調製されていた無細胞翻訳系と糖鎖修飾系とを合わせ持つ系として作り出すことができ、この系を利用することにより、蛋白質合成と糖鎖修飾とを一つの細胞抽出液で実行させることが可能となる。
【0021】
さらに、本発明は無細胞糖蛋白質合成用組成物を提供する。この無細胞糖蛋白質合成用組成物は、蛋白質合成活性を有する細胞抽出液に上記糖鎖修飾活性を有する細胞抽出液を添加して構成される。このように糖鎖修飾活性を有する細胞抽出液を、それ自身では蛋白質合成活性のみを有する細胞抽出液に添加することにより、糖鎖修飾活性を補足して、蛋白質合成活性とともに糖鎖修飾活性をも有する組成物を構成させることができる。
【0022】
また、本発明は、糖蛋白質合成システムを提供する。この糖蛋白質合成システムは、糖鎖修飾され得る蛋白質をコードしたDNAからmRNAを転写させるmRNA合成手段と、上記蛋白質合成活性と糖鎖活性とを有する無細胞抽出液又は組成物によりmRNA合成手段により合成されたmRNAから糖蛋白質を合成し得る糖蛋白質合成手段と、を備え、前記mRNA合成手段によりDNAから転写されたmRNAに基づいて、前記糖蛋白質合成手段により糖鎖修飾された糖蛋白質が合成されることを特徴とする。
【0023】
本システムによれば、鋳型DNAさえ準備すれば、この鋳型DNAからmRNAを介して簡便に糖蛋白質を合成させることが可能となる。
【0024】
また、上記糖蛋白質合成システムには、さらに前記糖鎖修飾され得る蛋白質をコードしたDNAをプロモータの下流に挿入させ、前記DNAからmRNAを発現させる発現ベクターを備えることができる。このように、さらに発現ベクターを備えることにより、例えば、ゲノム中の興味のある遺伝子を切り出し、本発現ベクターに接続することにより、糖蛋白質を簡便に合成させることが可能となる。
【0025】
上記発現ベクターには、前記プロモータからの発現により合成されるmRNAに非翻訳領域を付加させる配列であって、前記無細胞抽出液の調製に使用された細胞内で糖鎖修飾され得る蛋白質の遺伝子由来である非翻訳領域配列が備えられていることを特徴とする。このように当該細胞内で糖蛋白質を生成する遺伝子の非翻訳領域を備えることにより、合成蛋白質への糖鎖修飾の効率を向上させることが可能となる。
【0026】
また、上記本発明による無細胞抽出液、組成物、糖蛋白質合成システムを用いれば簡便に糖蛋白質が生成できることから、糖蛋白質を用いた細胞内の機能解析を容易に行うことが可能となる。
【0027】
さらに本発明は、無細胞抽出液製造装置を提供する。この無細胞抽出液製造装置は、蛋白質合成活性を有する細胞を破砕して、鋳型核酸から蛋白質を合成し得る無細胞抽出液を製造するための装置であって、前記細胞を収容する容器と、前記容器内に不活性ガスを充填するガス供給部と、前記細胞が有する蛋白質合成活性を保持した状態で前記容器内の細胞を破砕し得るように、前記容器内の圧力を加圧後、減圧させる圧力制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
また、上記無細胞抽出液製造装置は、前記細胞がさらに合成された蛋白質に糖鎖を付加させる糖鎖修飾活性を有し、前記圧力制御部が、前記細胞が有する蛋白質合成活性及び糖鎖修飾活性を保持した状態で前記容器内の細胞を破砕し得るように、前記容器内の圧力を加圧状態から減圧状態へと変化させることを特徴とする。
【0029】
これら無細胞抽出液製造装置を用いれば、蛋白質合成活性を有する細胞抽出液又はさらに糖鎖修飾活性をも有する細胞抽出液を簡便に製造することが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を用いて説明する。
【0031】
[無細胞抽出液の調製]
無細胞抽出液は、不活性ガスの雰囲気中、加圧下の細胞の圧力を減圧することにより、細胞を破砕して調製される。
【0032】
上記無細胞抽出液の調製に使用できる細胞は、鋳型核酸から蛋白質を合成させる翻訳活性と、翻訳後の糖鎖修飾を実行する糖鎖修飾活性を有する細胞であれば、いかなる細胞でもよく、原核細胞から真核細胞まで広く含めることができる。例えば、ほ乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚類、植物、微生物等の細胞が挙げられる。そして、こうした幅広い細胞のうち翻訳活性を回収し得る細胞は好適には哺乳動物細胞、昆虫細胞などを採用することができる。また、翻訳活性と糖鎖修飾活性を回収する場合には、昆虫細胞などを好適に使用することができる。なお、これらの細胞は、組織中の又は組織から採取した細胞でもよく、また培養細胞であってもよい。
【0033】
上記細胞は、破砕を行う間中、不活性ガスの雰囲気中に配置される。この不活性ガスは、細胞破砕後の抽出液が空気と接触して翻訳活性等に影響を与えないように用いられる。従って、この目的が達成できるものであれば、不活性ガスの種類に限定はなく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどを使用することができる。
【0034】
上記細胞を破砕する際の加圧時の圧力は、細胞種により適宜決定することができる。この圧力は、用いる細胞の外周を覆う膜や壁などの強度、内部の翻訳、翻訳後の修飾に関与する因子の耐圧性などを考慮して、最終的に採取される抽出液の翻訳活性を指標として決定することができる。例えば、昆虫由来の細胞の場合には、2〜14kgf/cm2とすることができ、より好ましくは、5〜8kgf/cm2とすることができ、さらに好ましくは8kgf/cm2とすることができる。また、CHO細胞の場合には、昆虫細胞よりも比較的高い圧力であることが好適であり、具体的には2〜32kgf/cm2とすることができる。
【0035】
また、加圧時間も各細胞種等により適宜決定することができる。この決定に当たっても、用いる細胞の外周を覆う膜や壁などの強度、内部の翻訳、翻訳後の修飾に関与する因子の耐圧性などを考慮して、最終的に調製される抽出液の翻訳活性を指標とすることができる。例えば、昆虫由来の細胞の場合には、3〜120分間、好ましくは、30から120分間、さらに好ましくは60〜90分間とすることができる。
【0036】
また、加圧後の減圧は、細胞を破砕し得るように急激に圧力を減少させればよく、減圧後際の圧力は、常圧程度あるいは圧力を機械的に引き常圧よりもさらに低い圧力とすることもできる。
【0037】
上記加圧状態から減圧状態への圧力変化は、細胞が収容された雰囲気内へのガスの供給及び排出により、又は細胞が収容される体積の縮減、拡張により行うことができる。ここで前者のガスの供給及び排出による場合には、このガスとして上記不活性ガスを好適に用いることができる。
【0038】
最終的に、細胞破砕後の抽出液を回収することにより無細胞抽出液が調製される。この無細胞抽出液とは、主として、生存細胞内の細胞液と区別する意味で用いられ、上記破砕後の細胞残渣の混在の有無は問わない。従って、上記の破砕後の細胞抽出液は、残渣が存在する状態として、又、必要に応じて破砕された細胞の残さを遠心分離などにより除去した上で、無細胞抽出液とすることができる。
【0039】
また、ここで調製された無細胞抽出液は、特定の細胞由来のものを単独で使用することもできるが、特定の細胞由来の抽出液の単独使用によっては蛋白質合成活性は有するが糖鎖修飾活性が低い又は発揮しない場合には、糖鎖修飾活性を有する他の細胞由来の無細胞抽出液を適当な割合で添加して糖鎖修飾活性を補足させることができる。例えば、CHO細胞由来の無細胞抽出液のように、単独使用によっては蛋白質合成活性は有するが糖鎖修飾活性を発揮しない場合に、昆虫細胞由来の糖鎖修飾活性をも有する無細胞抽出液などを適宜添加して、糖鎖修飾活性を補足させることもできる。
【0040】
[糖蛋白質合成システム]
次に、上記無細胞抽出液を用いて、翻訳、糖鎖修飾を行ための基質となる鋳型核酸について説明する。
【0041】
1、発現ベクター
蛋白質合成(翻訳)に当たっては、その鋳型としてmRNAが必要となり、また、このmRNA生成(転写)には、その鋳型としてDNAが必要となる。ここでは、このmRNA合成の基礎となる鋳型DNAを含む発現ベクターについて説明する。
【0042】
発現ベクターには、蛋白質合成の基礎となるmRNAを合成するために、蛋白質をコードした所望の配列が挿入される。この蛋白質コード配列は、特に限定はないが、上記無細胞抽出液が蛋白質合成後の糖鎖修飾も行い得るため、この蛋白質コード配列としては、糖鎖修飾され得る蛋白質をコードした配列を好適に用いることができる。
【0043】
上記発現ベクターにおいて、上記蛋白質をコードした配列の上流には転写を開始させるプロモータが備えられる。このプロモータとしては、特に限定はないが、一本鎖のmRNAを合成するためには、種々のRNAポリメラーゼプロモータを好適に用いることができる。その例として、T7RNAポリメラーゼプロモータ、T3RNAポリメラーゼ,SP6RNAポリメラーゼ等が挙げられる。
【0044】
また、発現ベクターには、上記蛋白質コード配列を挟むように、その両端に隣接して5’,3’非翻訳領域(UTR)配列が備えられ、これら配列は、mRNAとして合成された際にmRNAの両端にUTRとして付加され翻訳の制御を行う。このUTR配列は、無細胞抽出液を用いて翻訳を行わせる際に制御配列として機能するため、この配列は無細胞抽出液の調製に使用された細胞に応じて選択することが好ましく、例えば、当該細胞由来のUTR又はこのような細胞に感染するウイルス、ファージなどに由来するUTRを用いることができる。
【0045】
例えば、上記無細胞抽出液の調製に昆虫細胞を用いた場合には、このUTRとしては昆虫細胞由来のUTR又は昆虫細胞に感染能を有するウイルス、例えばバキュロウイルスなどに由来するUTRを用いることができる。
【0046】
また、上記発現ベクターには、自己複製能を保持させることが好ましい。このような自己複製能は種々のプラスミド、ウイルスDNAなどが有する自己複製能を利用することができる。これらは、この発現ベクターを増幅させるための宿主又は本ベクターによる発現を行わせるための宿主に応じて適宜選択することができる。例えば、宿主として大腸菌を選択する場合には、発現ベクターとしてpUC系、pBR系プラスミドを用いることができる。また、哺乳動物細胞を宿主とする場合には、SV40等のウイルスDNA等を好適に利用することができる。必要であれば、複数の自己複製能を備えさえ、異なる宿主において自己複製能を有するシャトルベクターとして構成することもできる。
【0047】
2、mRNAの合成
上記発現ベクターを用いてmRNAを合成させるには、RNAポリメラーゼなどの転写因子が必要となる。このような転写因子は、生存細胞が保持する転写因子を利用することができる。すなわち、この生存細胞内に上記発現ベクターを導入し、細胞内の転写因子を利用してmRNAを合成させることができる。ここで合成されたmRNAは、既知の方法に従って細胞内の他のmRNAから分離精製することにより、目的のmRNAが調製される。
【0048】
上記のように細胞内の転写因子を利用した場合には、細胞内の無数のmRNAから目的のmRNAを精製することが必要となるが、このようなmRNA精製操作を簡略化するためには、この転写因子は、細胞から採取した転写活性を有する抽出液、インビトロ転写系を利用することができる。インビトロ転写系としては、例えば、T7ファージ由来の転写反応系、大腸菌由来の転写反応系等を例示できる。この系を用いたmRNA合成は、市販のキット、例えばMEGAscriptTM(Ambion社)、RiboMAXTM(Promega社)などを利用して実施することができる。
【0049】
このようにmRNAの合成(転写工程)をインビトロで行った場合には、mRNA合成(転写)工程から後述する蛋白質合成(翻訳)及びその後の糖鎖修飾工程までの一連の工程を細胞外、すなわちインビトロで実行させることが可能となる。
【0050】
3、蛋白質の翻訳、糖鎖修飾
インビトロ翻訳及び糖鎖修飾反応は、基本的に上記蛋白質合成活性並びに糖鎖修飾活性を有する無細胞抽出液に、上記mRNAを添加することにより実行することができる。すなわち、上記無細胞抽出系には、蛋白質合成する翻訳活性と、この翻訳後の糖鎖修飾活性とを有しているため、上記無細胞抽出系へのmRNAの添加により、当該mRNAから蛋白質が合成され、その後、この蛋白質に対する糖鎖修飾が行われて糖蛋白質が合成される。
【0051】
また、上記において糖蛋白質を合成するに当たっては、細胞抽出液に酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、スペルミジン、GTP、ATP、クレアチンキナーゼ、バッファなどを添加して、細胞抽出液を調製することができる。一例として、昆虫細胞の細胞抽出液においては、最終濃度を10.6mM HEPES-KOH(pH7.95)、1.3mM酢酸マグネシウム、100mM 酢酸カリウム、2.5mM DTT、0.25mMスペルミジン、444μg/mlクレアチンキナーゼ、8.0mMリン酸クレアチン、1.2mM ATP、0.25mM GTPに調製し、翻訳反応に供することができる。また、細胞抽出液に、アミノ酸混合液を添加することが好適である。この混合液は、例えば、終濃度が25μM程度になるように添加することができる。
【0052】
また、蛋白質合成に当たっては、mRNAを細胞抽出液に添加する必要があるが、この添加量は、従来のインビトロ翻訳系と同様な添加量とすることができ、例えば、細胞抽出液に対して終濃度200μg/mlとなるように添加することができる。このような方法で合成された蛋白質は、必要に応じて細胞抽出液から単離された後、種々の目的にこの合成蛋白質(又は糖蛋白質)を利用することができる。
【0053】
[翻訳装置]
上記細胞抽出液の調製から、蛋白質(糖蚕白質)の合成までを自動化してもよい。このような装置は次のように構成することができる。
【0054】
翻訳装置10は、細胞から無細胞抽出液を調製するための抽出液調製部12と、この抽出液を用いて蛋白質合成を行わせる翻訳部14とが設けられる。
【0055】
この抽出液調製部12は、内部に細胞が収容され、この内部で細胞が破砕され、抽出液が調製される。この細胞の破砕は、抽出液調製部12の内部の圧力変化により実行される。この圧力変化を実行するために、抽出液調製部12には、不活性ガスを収容し、前記抽出液調製部に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給部16が設けられている。すなわち、この不活性ガス供給部16は、不活性ガスを抽出液調製部12へ送り込むことにより、調製部12の内部の圧力を上昇させ、収容された細胞に圧力を加える。また、この不活性ガス供給部16から供給された不活性ガスは、細胞破砕後の抽出液が空気(酸素)と接触することを防止し、抽出液中の種々の活性低下を防止する。
【0056】
また、上記抽出液調製部12には、送り込まれた不活性ガスを排出し、調製部12の内部の圧力を減圧させ、細胞を破砕(破裂)させるための排出口18が設けられる。
【0057】
これら抽出液調製部12への不活性ガスの送込み、その排出により圧力変化を制御するために、抽出液調製部12には、制御部20が備えられる。この制御部20は、細胞を被覆する膜、壁の強度などに応じた制御を可能とし、細胞破砕後の細胞抽出液中に蛋白質合成活性、糖鎖修飾活性を回収させる。
【0058】
一方、翻訳部14は、上記抽出液調製部において調製された抽出液が供給可能となるように前記抽出液調製部12に接続される。この翻訳部14の内部に、図1には示していないが反応容器が備えられ、この反応容器に前記抽出液が注入される。また、この翻訳部14には、試料注入部が備えられ、この試料注入部により蛋白質合成の基質となるmRNAが反応容器に注入される。
【0059】
上記翻訳装置10によれば、細胞を抽出液調製部12に供給することにより、抽出液調製部12において細胞が破砕され、細胞抽出液が調製される。そして、ここで調製された細胞抽出液は、翻訳部14において、反応容器内に供給され、これにmRNAが添加されて、糖蛋白質の合成が行われる。
【0060】
なお、上記翻訳装置において、必要であれば、発現ベクターからmRNAを生成させる転写部を備え、この転写部において翻訳装置に供給するmRNAを生成させてもよい。このように、転写部を備えた場合には、発現ベクターからmRNAを介して糖蛋白質の合成までの一連の工程を自動化させることが可能となる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
[実施例1] 発現ベクターの調製
糖鎖修飾されることが知られている蛋白質として、HIV(ヒト免疫不全症ウイルス)のGP120を用い、この糖蛋白質のインビトロの合成を試みた。この糖蛋白質の合成に当たり、このgp120mRNAを発現させる発現ベクターを以下の通り構築した。なお、図2に発現ベクターの構築方法を模式的に、図3には、発現べクターから発現されるポリヘドリンUTRを備えたgp120mRNAの構成を示した。また、このポリヘドリン5’−UTRの塩基配列を配列番号1に、3’−UTRの塩基配列を配列番号2に示す(Robert, D.ら、Virology 185, 229-241 (1991))。
【0063】
図2において、まず、pVL1393−gp120プラスミドをPCRにより、点変異を挿入し、gp120の両端にEcoRIとSalIの認識部位を形成させた。この変異挿入後のプラスミドをEcoRIとSalI制限酵素で切断し、若干両端が欠けているgp120’断片を単離した。一方、発現ベクターの骨格となるプラスミドpUC18も同様にEcoRIとSalI制限酵素で切断し、そこに上記gp120’断片を挿入し、pUC18−1とした。
【0064】
次に、XhoI又はSalIを末端に有する2つのプライマーを用いて、PCRによりpVL1393−gp120プラスミドからgp120の3’端の残りの配列と3’UTR配列を増幅させ、この増幅断片をpUC18−1のSalI部位に挿入し、これをpUC18−2とした。
【0065】
gp120の5’端の残りの配列及び5’UTR配列は、合成により生成し、この合成の際に、5’UTRの上流にT7RNAポリメラーゼプロモータ配列番号3を付加した。さらに、この合成断片はPCRにその両端にEcoRI部位が挿入され、この断片をpUC18−2のEcoRI部位に挿入させた。これにより、T7RNAポリメラーゼプロモータ配列の下流にUTR配列を含むgp120発現カセットが挿入されたpUC18−gp120プラスミドが生成された。
【0066】
このpUC18−gp120プラスミドを、MEGAscriptTM(Ambion社)を用いてインビトロにて転写させ、図3に示すgp120mRNAを調製した。以下、このgp120mRNAを鋳型として糖蛋白質の合成における種々の検討を行った。
【0067】
(1)細胞数の影響
細胞抽出液の調製には、昆虫細胞Sf21細胞(J. L. Vaughn, R. H. Goodwin, G. L. Tompkins, and P.McCawley, In Vitro, 13, 213-217 (1977))を用いて行った。Sf21細胞の異なる細胞濃度の細胞懸濁液をミニボンベ(MINI-BOMB CELL DISRUPTION CHAMBER(KONTES社製))内にそれぞれ入れ、窒素ガス圧8kgf/cm2で、30分間処理した。この処理後の各細胞液を遠心分離(BECKMAN社製L7Ultracentrifuge 55型、ローターSW40Tiロータ、14000rpmx15min)により、細胞抽出液を得た。
【0068】
上記で調製された細胞抽出液を用いて翻訳能を調べた。翻訳能の解析を行うために、上記gp120mRNAを最終濃度200μg/mlとなるように細胞抽出液に添加し、翻訳反応を実行させた。反応後の蛋白質を2つの方法で定量した。一つは、ビオチン標識リジンtRNAの翻訳産物への取込み量をアビジンにより検出する方法である。他の方法は、GP120の抗体を用いたウエスタンブロッティング法により翻訳産物を検出し、検出した産物をDensitrometer(FastScan、Molecular Dynamics社製)で定量する方法を採用した。これら定量法により翻訳能を評価した。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
表1に示すように、細胞抽出液が翻訳能を維持するために好ましい細胞数は0.25〜2.5×108個/mlの範囲で、特に1.0×108個/mlの細胞数が最適であった。
【0070】
(2)窒素ガス圧の影響
ミニボンベ中の窒素ガス圧を2〜14kgf/cm2の範囲で翻訳能に及ぼす影響を上記と同様に検討した。細胞数は上記において好適であった細胞数1.0×108個/mlとし、窒素ガス処理時間は30分間に設定して細胞を破砕した。得られた細胞抽出液にgp120mRNAを最終濃度200μg/mlとなるように添加し、翻訳反応を実行させた。各ガス圧条件下での蛋白質合成量から翻訳能を比較した。その結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
表2に示すように、窒素ガス圧は、2〜14kgf/cm2の範囲とすることができ、好ましくは、5〜8kgf/cm2の範囲とすることができる。最適には、窒素ガス圧は、8kgf/cm2であった。
【0072】
また、図4には、5、8、14kgf/cm2の加圧条件で調製したSf細胞抽出液を用いて、gp120mRNAから蛋白質を合成し、ここで合成された蛋白質を分画した際の分画パターンを示す。図4のレーン2、4、6に示すように、5〜14kgf/cm2の加圧条件により調製された細胞抽出液において、mRNAから特異的に糖蛋白質(図4において、矢印1として示す)が合成されていることが示され、特に、8、14kgf/cm2の加圧条件による細胞抽出液において良好な糖蛋白質合成が検出された。
【0073】
(3) 窒素ガス加圧時間の影響
細胞数を1.0×108個/ml、窒素ガス圧を8kgf/cm2とし、細胞抽出液を調製するための窒素ガス加圧時間を検討した。
【0074】
【表3】
表3に示すように、3分間以上の加圧時間であればよく、特に30〜60分間の加圧時間が好適であった。
【0075】
(4) 噴出速度の影響
ミニボンベ内から細胞破砕液を噴出させる速度を15〜200ml/secの範囲で検討した。噴出速度は翻訳能に影響を及ぼさなかった。
【0076】
[実施例3] 翻訳反応条件の検討
(1)mRNA濃度の至適化
翻訳反応の際における細胞抽出液へのmRNA添加量の検討を行った。上記Sf細胞抽出液にgp120mRNAを3.125μg/mlから400μg/mlまで順次2倍濃度となるようにそれぞれ添加し、翻訳能、糖鎖修飾能を測定した。その結果を図5に示す。なお、図5において、丸印は、糖鎖がついていないGP120を、菱形印は、糖鎖が付加されていないGP120を示す。
【0077】
図5に示すように、200μg/mlにおいてGP120(糖鎖未付加)の生成が高く翻訳能を効率的に利用することができることが示された。一方、糖蛋白質は、50μg/ml以上であれば、ほぼ一定の高い値を示した。
【0078】
(2)反応温度及び反応時間の影響
翻訳反応時の温度条件を検討した。細胞抽出液にgp120mRNAを最終濃度200μg/mlとなるように添加し、15℃〜45℃の温度下で、30、60、90分間反応を行わせ、その際の翻訳産物の生成量を測定した。なお、ここでは細胞数1.0×108個/mlとし、窒素ガス処理時間は30分間に設定して細胞を破砕して調製された細胞抽出液を用いた。
【0079】
相対生成量をグラフ化したものを図6に示す。図6に示すように、反応温度25℃において、翻訳及び糖鎖修飾活性が示され、特に、糖鎖修飾活性においては反応時間60分の周辺に活性のピークが存在し、また翻訳活性においては、30分から60分のあたりにピークが存在することが推測された。
【0080】
一方、37℃では、25℃に比して、翻訳及び糖鎖修飾活性が半分程度に低下し、45℃では著しく両活性が低下した。また、15℃では、両活性とも低いが、糖蛋白質については時間に比例して生成量が上昇するパターンが示された。
【0081】
なお、図7には、紫蚕の細胞を上記Sf細胞と同様の条件で細胞破砕を行い調製した紫蚕細胞抽出液を用いて、同様に反応温度、反応時間によるGP120の生成率を比較したグラフを示す。紫蚕においても、25℃の反応温度で良好な翻訳及び糖鎖修飾活性が示された。
【0082】
(2)試薬などの添加の影響
細胞抽出液に種々の試薬を添加した際の翻訳能への影響を調べた。ここでは、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、スペルミジン、GTP、ATP、クレアチンキナーゼについて、それぞれ細胞抽出液に一定の範囲の濃度で添加し、gp120mRNAからの蛋白質又は糖蛋白質の生成量を相対的に定量し、翻訳能、糖鎖修飾能を検討した。
【0083】
図8に酢酸マグネシウム濃度を検討した結果を示す。なお、図8において、丸印は、糖鎖がついていないGP120を、菱形印は、糖鎖が付加されたGP120を示す。
【0084】
図8に示すように、酢酸マグネシウムについては、1.5mMにおいて良好な翻訳活性が示され、また、糖鎖修飾活性については、2mMにおいて良好な結果が示された。
【0085】
図9に酢酸カリウム濃度を検討した結果を示す。酢酸カリウムについては、100mMにおいて、翻訳活性及び糖鎖修飾活性が高いことが示された。なお、図9において、図8と同様に丸印は、糖鎖がついていないGP120を、菱形印は、糖鎖が付加されたGP120を示す。
【0086】
図10には、スペルミジン濃度を検討した結果を示す。スペルミジンについては、0.25mMにおいて、蛋白生成量(糖非付加)がもっとも高く、0.25mMが好適であることが示された。なお、図10(以下、図11、12、13においても同様)において、実線は、糖鎖がついていないGP120を、点線は、糖鎖が付加されたGP120を示す。
【0087】
図11には、GTP濃度を検討した結果を示す。GTPについては、0.25mMにおいて、蛋白生成量(糖非付加)がもっとも高く、この濃度範囲において効率良く翻訳が行われることが示された。一方、糖蛋白質の生成はGTP濃度に大きく影響されないことが示された。
【0088】
図12には、ATP濃度を検討した結果を示す。ATPについては、1〜1.5mMにおいて、蛋白生成量(糖非付加)がもっとも高く、この濃度範囲において効率良く翻訳が行われることが示された。一方、糖蛋白質の生成は0.5において若干高い値が示されているが、ATP濃度に大きく影響されないことが示された。
【0089】
図13(a)(b)において、クレアチンキナーゼ濃度を検討した結果を示す。図13(a)(b)に示すように、2回の実験を通して、翻訳活性は400μg/mlでもっとも良好な結果が示された。一方、糖鎖修飾活性については、400μg/ml以上において良好な結果が示された。
【0090】
これら結果を総合して、以下に示す実施例においては細胞抽出液を次の組成に調製して、25℃にて翻訳反応を行った。
【0091】
虫細胞抽出液 A260=30.4
HEPES-KOH(pH7.95) 終濃度10.6mM
酢酸マグネシウム 終濃度1.3mM
酢酸カリウム 終濃度100mM
DTT 終濃度2.5mM
スペルミジン 終濃度0.25mM
クレアチンキナーゼ 終濃度444μg/ml
リン酸クレアチン 終濃度8.0mM
ATP 終濃度1.2mM
GTP 終濃度0.25mM
アミノ酸混液 終濃度25μM
mRNA 終濃度200μg/ml
[実施例4] 昆虫細胞抽出液を利用した翻訳産物の同定
HIV患者抗血清を用いたウエスタンブロッティングにより、上記昆虫細胞抽出液を用いて合成された翻訳産物GP120を解析した。解析結果を図14、図15に示す。
【0092】
図14に示すように、GP120は、SDS-PAGE上で90kDaと56kDaに相当する位置に検出された(レーン2、3)。一方、バキュロウイルス−昆虫細胞系でSf21細胞により発現したGR120は糖蛋白質で、90kDaの位置に非常に強いバンドとして検出される(レーン5、6)。このことはSf細胞抽出液を用いて合成された翻訳産物に糖鎖が付加されている可能性を示唆する。
【0093】
一方、ウサギ網状赤血球と小麦胚芽から調製したコントロールの細胞抽出液において、得られた翻訳産物は56kDaの位置に強くバンドが検出され(図15、レーン4、6)、昆虫細胞抽出液(レーン2)を用いて合成された翻訳産物のように90kDaの位置に相当するバンドは検出されなかった。このことは、昆虫細胞抽出液で合成されたGP120においてのみ糖鎖付加などの翻訳後修飾が行われた可能性が強く示唆された。
【0094】
[実施例5] 翻訳反応産物の脱糖鎖
実施例4によりSf21細胞抽出液を用いて翻訳反応により合成された翻訳産物GP120が糖鎖修飾された糖蛋白質であることを確認するために、糖分解酵素を用いて翻訳産物GP120を処理した。ここでは糖分解酵素として、N-glycosidaseF、endoglycosidaseFあるいはendoglycosidaseHなどのN型糖鎖分解酵素を用いた。分解反応の結果を図16に示す。
【0095】
図16に示すように、GP120を上記N型糖分解酵素で処理した結果、無処理の画分に存在する90kDaのバンドが消失し、それに変わって、無処理のサンプルでは認められない位置(矢印で示す位置)に新たな蛋白質のバンドが検出された。これは、脱糖鎖により生じたバンドシフトであることを示し、翻訳反応産物GP120にN型糖鎖が付加されていることを強く示唆した。なお、同様にO-glycosidaseでも処理を行ったが、O型糖鎖の付加は認められなかった(図示せず)。
【0096】
また、翻訳産物が糖鎖を有するかを他の方法により検討した。上記GP120蛋白質をレクチン−セファロースカラムに供し、メチル−α−D−マンノピラノシドにより溶出させて分画を行った。そして、ここで得られた素通り画分と、メチル−α−D−マンノピラノシドによる溶出画分とを、HIV患者抗血清を用いてウエスタンブロッティングを行った。その結果、メチル−α−D−マンノピラノシドによる溶出画分にのみ、上記90kDaに相当する位置にgp120のバンドが検出された(図示せず)。このことからも、翻訳産物GP120が、糖鎖を有する糖蛋白質であることを強く示唆した。
【0097】
[実施例6] 種々のmRNAを用いた糖蛋白合成解析
UTR、シグナル配列などの制御配列、および糖鎖修飾され得る蛋白質をコードしたコード配列について、上記実施例とは異なるmRNAを調製して、翻訳、糖鎖修飾が行われるかを調べた。なお、ここで用いたUTRは、バキュロウイルスのポリヘドリン由来、ウシ成長ホルモン(BGH)由来のものを用いた。またシグナル配列としては、インターロイキン6(IL6)由来(配列番号5)、ニワトリリゾチーム(cL)由来(配列番号4)を用いた。また、コード配列は、共通してインターロイキン6(IL6)コード配列を用いた。これらは実施例1と同様にpUC18を用いて発現プラスミドとして構築され、これを用いてmRNAを生成し、以下の翻訳、糖鎖修飾活性を調べた。その結果の一覧を表4に示す。
【0098】
【表4】
実施例1に示したSF162gp120のmRNAを用いた解析では、昆虫Sf細胞及び紫蚕由来の抽出液において、翻訳、糖鎖修飾活性が確認されたが、コントロールのウサギ網状赤血球、小麦胚芽由来の細胞抽出液においては、翻訳活性は認められたが、昆虫細胞などのように糖鎖修飾活性は検出されなかった。
【0099】
また、種々制御配列が異なるmRNAを用いた解析から(第5〜12欄)、昆虫細胞抽出液においては、5’UTRにポリヘドリン由来の5’UTRを、シグナル配列としてcL由来の配列を用いた場合に翻訳、糖鎖修飾が行われることが示された(第6、11欄)。また、3’UTRは、ポリヘドリン由来であるか、ウシ成長ホルモン由来であるかを問わず、糖鎖修飾が行われた。
【0100】
一方、昆虫細胞抽出液において、5’UTRにBGH由来のものを用いた場合、及び、シグナル配列として、IL6シグナルを用いた場合には、翻訳のみ行われ、糖鎖修飾は行われなかった。このことから、5’UTR、シグナル配列が、糖鎖修飾の実行に重要であることが示された。
【0101】
なお、コントロールのウサギ網状赤血球、小麦胚芽由来の細胞抽出液においては、用いたmRNAでは、糖鎖修飾は全く観察されなかった。
【0102】
[実施例7] CHO細胞を用いた検討
哺乳動物細胞の細胞抽出液において、上記昆虫細胞と同様に、翻訳及び糖鎖修飾活性を有するかを検討した。ここでは、哺乳動物細胞としてCHO細胞を用いて、上記昆虫細胞の細胞抽出液の調製条件と同様の方法で、CHO細胞抽出液を調製した。また、このCHO細胞の細胞抽出液の翻訳能などの解析にあたり、3種のmRNAを調製した。これらmRNAは、以下の表5に示す通り、(1)gp120(HIV−1SF162由来)コード配列、ポリヘドリンUTR、gp120シグナル配列を有する第一のmRNA、(2)IL6コード配列、ポリヘドリンUTR、cLシグナル配列を備えた第二のmRNA、(3)IL6コード配列、哺乳動物用発現ベクターpRc/CMVのUTR、IL6のシグナル配列を備えた第三のmRNAである。
【0103】
これら3種のmRNAを用いてCHO細胞抽出液の翻訳活性、糖鎖修飾活性を調べた。その結果を表5に示す。なお、陽性コントロールとして、翻訳、糖鎖修飾活性が確認された昆虫細胞(Sf細胞)の細胞抽出液における結果も同様に示す。
【0104】
【表5】
表5に示すように、CHO細胞抽出液では、いずれのmRNAにおいても翻訳活性が検出されたが、糖鎖修飾活性を確認することはできなかった。このようにCHO細胞の細胞抽出液では、糖鎖修飾活性を確認することはできなかったが、一方、上記ガス圧の変化による細胞破砕方法は、少なくとも哺乳動物細胞から翻訳活性を有する細胞抽出液を回収することができることは示された。
【0105】
また、翻訳能を比較すると、pRc/CMVのUTRを用いた場合に、翻訳能が上昇していることが示された。このことは、細胞を調製した細胞の種類と、UTRが由来する細胞種とを対応させることが、翻訳能の向上に重要であることが示された。
【0106】
一方、陽性コントロールとして用いた昆虫細胞抽出液では、いずれのmRNAにおいても翻訳活性、糖鎖修飾活性が確認された。特に、ポリヘドリンUTRを用いた場合に、翻訳活性、糖鎖修飾活性を向上させることが示された。このことから、細胞抽出液を調製した細胞に感染能を有し、生育することができる生物由来のUTRは、その細胞抽出液を用いた翻訳及び糖鎖修飾を行わせるための制御配列として好適に利用することができることが示された。
【0107】
[実施例8] CHO細胞抽出液と昆虫細胞(Sf細胞)抽出液との混合組成液
上述した通り、CHO細胞抽出液では、翻訳活性が検出されたが、糖鎖修飾活性については検出することができなかった。この糖鎖修飾活性を補足するためにCHO細胞抽出液と昆虫細胞抽出液とを種々の混合割合で混合した組成液を調製し、この組成液により翻訳活性、糖鎖修飾活性を検討した。
【0108】
具体的には、上記検討に当たって、mRNAは、IL6由来又はニワトリリゾチーム(cL)由来するシグナル配列を備えたIL6mRNA(実施例6におけるppILIL6p,ppILIL6B又はppCLIL6BからのmRNA)を使用した。これらmRNAを各組成液に添加し、この組成液の一部を電気泳動により分画し、分画後、抗IL6抗体を用いたウエスタンブロティングによりIL6蛋白質の同定及びのその生成量を比較した。ウエスタンブロッティングの結果を図17に示し、デンシトメータでバンド強度を定量化した値を表6に示す。
【0109】
【表6】
図17及び表6に示すように、CHO−昆虫(9.9:0.1)組成液では、IL6蛋白質は検出されたが、糖鎖修飾されたIL6蛋白質は検出されず、糖鎖修飾活性が補足されていないことが示された。
【0110】
一方、CHO−昆虫(9:1)組成液及びCHO−昆虫(5:5)組成液では、コントロールの昆虫細胞抽出液単独の場合に検出される糖鎖が付加されたIL6蛋白質バンドに対応した位置にバンドが検出され、糖鎖修飾が行われることが示された。
【0111】
以上より、翻訳活性のみを有する細胞抽出液であっても、他の糖鎖修飾能を有する細胞抽出液を混合することにより、糖鎖修飾活性を補足することが可能となる。この結果は、ガス圧の変化により緩和な条件でCHO細胞の細胞抽出液を調製しているものの、この細胞抽出液中において、細胞が本来有する糖鎖修飾活性を担ういずれかの因子が不足し糖鎖修飾活性を奏しないが、この因子が昆虫細胞抽出液により補われ糖鎖修飾活性が補足されているという可能性が示唆される。
【0112】
[実施例9] 応用
上述した実施例に示した昆虫細胞の抽出液及びこれを含む組成液では、翻訳及び糖鎖修飾さらにはプロセッシングをもインビトロで行えることが示された。また、この糖鎖修飾の効率を向上させ得る制御配列をも明らかになった。こうした細胞抽出液及び制御配列を備えた発現ベクターをパッケージ化することにより、インビトロの糖蛋白質合成キットを構成することができ、簡便にインビトロで糖蛋白質、プロセッシングされた蛋白質を合成させることが可能となる。
【0113】
また、上記CHO−昆虫組成液では、プロセシングをも行わせることができたことから、この組成液は、翻訳後の蛋白質のプロセッシングを解析するためのモデル系としても役立つことが期待される。すなわち、不活性ガスを用いた穏和な条件下で細胞破砕を行うことにより、糖鎖修飾などに関与する膜組織が保存された状態で無細胞抽出液が回収されたことが示唆された。従って、この細胞抽出液は、糖蛋白質などを合成する際に役立つだけでなく、翻訳により合成された蛋白質(又は先駆体)が翻訳後にいかにプロセッシング等されるかを解析する際のモデル系としても役立ち得る。
【0114】
【配列表】
【0115】
【発明の効果】
以上の通り、本発明により、新たな細胞抽出液の調製が提供され、これにより細胞から翻訳及び糖修飾能を有する無細胞抽出液を簡便に回収することが可能となった。また、本発明の無細胞抽出液を使用することにより、例えば組み換え体蛋白質に、生物界に存在する所望の糖鎖を付加することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態における翻訳装置の構成図である。
【図2】 実施例1におけるmRNA発現ベクターの構築方法を示す図である。
【図3】 実施例1における発現ベクターにより発現されるmRNAの構成図である。
【図4】 実施例4における細胞抽出液調製時のガス圧条件を検討した結果を図である。
【図5】 実施例4におけるmRNA添加量を検討した結果を示す図である。
【図6】 実施例4における好適な翻訳反応時間を検討した結果を示す図である。
【図7】 実施例4における好適な翻訳反応温度を検討した結果を示す図である。
【図8】 実施例4における酢酸マグネシウム濃度を検討した結果を示す図である。
【図9】 実施例4における酢酸カリウム濃度を検討した結果を示す図である。
【図10】 実施例4におけるスペルミジン濃度を検討した結果を示す図である。
【図11】 実施例4におけるGTP濃度を検討した結果を示す図である。
【図12】 実施例4におけるATP濃度を検討した結果を示す図である。
【図13】 実施例4におけるクレアチンキナーゼ濃度を検討した結果を示す図である。
【図14】 実施例4における昆虫細胞抽出液を利用した翻訳産物をウエスタンブロッティングにより同定した結果を示す図である。
【図15】 実施例4における昆虫細胞、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽の細胞抽出液による翻訳産物をウエスタンブロッティングにより検出した際の図である。
【図16】 実施例5における昆虫細胞抽出液による翻訳反応産物の脱糖鎖処理が行われた結果を示す図である。
【図17】 実施例8におけるCHO−昆虫組成液の翻訳、糖鎖修飾活性を解析した際のウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【符号の説明】
10 翻訳装置、12 抽出液調製部、14 翻訳部、16 不活性ガス供給部、18 排出口、20 制御部。
Claims (13)
- 昆虫細胞に由来し、RNAからタンパク質を合成する翻訳活性および合成されたタンパク質に糖鎖を付加する糖鎖修飾活性を保持し、以下の(1)〜(5)の生化学的性質を有する、細胞抽出液。
(1)翻訳および糖鎖修飾反応時温度が15度から37度である
(2)翻訳および糖鎖修飾反応における酢酸マグネシウムの至適濃度が1.5〜2.5mMである
(3)翻訳および糖鎖修飾反応における酢酸カリウムの至適濃度が50〜200mMである
(4)翻訳反応時におけるGTP濃度の至適濃度が1mM以下である
(5)翻訳反応時におけるATP濃度の至適濃度が0.5〜2.0mMである - 翻訳後のプロセッシング活性をさらに有する、請求項1記載の細胞抽出液。
- 下記(1)および(2)の工程を含む、昆虫細胞から翻訳活性および糖鎖修飾活性とを保持したまま細胞抽出液を調製する方法。
(1)不活性ガスの雰囲気中、所定時間、細胞を加圧する工程
(2)加圧状態から急激に減圧する工程 - 加圧が雰囲気中に不活性ガス気流が供給されて実行され、
減圧が前記不活性ガスを雰囲気中から排出することにより行われる、
請求項3記載の方法。 - 前記不活性ガスが窒素である、請求項3又は4に記載の方法。
- 前記加圧時の圧力が、2〜14kgf/cm2である、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
- (1)の工程における細胞が0.25〜1.5×108個/mlの細胞懸濁液として調整された細胞である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
- 加圧時間が30〜90分である、請求項3〜7のいずれかに記載の方法。
- 転写活性を有する溶液と、請求項1又は2に記載の細胞抽出液とを含み、鋳型核酸から糖蛋白質を合成し得ることを特徴とする無細胞糖蛋白合成用組成物。
- 糖鎖修飾され得る蛋白質をコードしたDNAと、
前記DNAからmRNAを合成するmRNA合成手段と、
請求項1又は2に記載の細胞抽出液を含み、mRNA合成手段により合成されたmRNAから糖蛋白質を合成し得る糖蛋白質合成手段と、を備え、
前記mRNA合成手段によりDNAから転写されたmRNAに基づいて、前記糖蛋白質合成手段により糖鎖修飾された糖蛋白質が合成される、糖蛋白質合成システム。 - DNAがその上流にプロモータが配置されるように発現ベクターに保持され、
前記発現ベクターには、前記プロモータからのDNAの発現により合成されるmRNAに非翻訳領域を付加させる非翻訳領域配列が備えられ、
前記非翻訳領域配列が、昆虫細胞において糖鎖修飾され得るいずれかの蛋白質の遺伝子由来である、
請求項10に記載の糖蛋白質合成システム。 - 発現ベクター内のプロモータ、非翻訳領域が、昆虫細胞を宿主とするウイルス由来である、請求項11に記載の糖蛋白質合成システム。
- ウイルスがバキュロウイルスであり、
プロモータ、非翻訳領域配列がバキュロウイルスのポリヘドリン由来であることを特徴とする請求項12に記載の無細胞糖蛋白質合成システム。
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