JP3713170B2 - 光学接続部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光素子、光回路パッケージ、光回路装置等の光通信、光情報処理に用いられる光素子、部品、装置間を相互に接続するための光学接続部品(光配線板)に関する。
【0002】
【従来の技術】
光回路パッケージ内の複数の光素子の接続や、複数の光回路パッケージ相互間、或いは光回路パッケージを搭載する光回路装置の光学接続では、一般的に光素子や光回路パッケージ、光回路装置等の端部に光コネクタを配置して、光ファイバによって相互に接続している。その場合、光ファイバは余長を持って配置する必要があるために、例えば、光回路パッケージ上や光回路装置の内部および/または背面では、光ファイバによる複雑な配線が鳥の巣状に、または輻輳して張り巡らされ、そのために大きな空間を占めているのが現状である。このような複雑な配線のために多大な場所と接続の労力を必要とする光学接続方法に対して、光ファイバを二次元平面上に任意に配線することにより、これらの問題を解決する簡便な方法が提案されている。例えば、特許第2574611号公報に開示されているように、粘着剤の塗布してあるシートまたは基板を用い、それによって光ファイバを固定する光学接続部品が提案されている。
【0003】
ところで、特許第2574611号公報に記載の光学接続部品は、その作製に際して、基材(ベース層)上またはファイバジャケット上の粘着剤により光ファイバを敷設して配線パターンを形成し、その上を、基材で用いた材料と同様な材料を用いて被覆して保護層を形成し、光学接続部品を得ている。しかしながら、この方法では、敷設した光ファイバの数が多くなって、形成された配線パターンにおける光ファイバの重なり部分(交差配線)が増加するに伴い、光ファイバ配線層の厚みが増加し、また、光ファイバの重なり部分において、光ファイバが接する粘着面が減少することから、保護層を均質に設けることができないという問題があった。また、配線パターンにおける光ファイバの重なり部分において、粘着剤による固定力が弱くなって、光ファイバが動いて、配線パターンにおける光ファイバが位置ずれ(配線パターンの崩れ)を引き起こすという問題があった。さらにまた、通常の光ファイバは直径125〜250μmであり、例えば3本の重なり部分では375〜750μmの厚さになり、配線パターンにおける光ファイバの重なり部分が多くなると、保護層の下の光ファイバ周囲に保護層の浮き部分(空気層)が生じ、温度及び湿度に対する信頼性などに問題が生じるほか、光配線板の屈曲等の変形による破壊に対して著しく弱くなる。
【0004】
これらの問題を解決するために、接着剤層上に配線された光ファイバ上に樹脂保護層を形成することによって輻輳して配線された光ファイバを固定することが検討されているが、この場合において、接着剤層として最も一般的に使用されているアクリル系粘着剤(感圧接着剤)を用い、半導体業界等で封止材料として一般的に使用されているシリコーン系材料を樹脂保護層に用いる組み合わせでは、それらの材料の特徴から、信頼性・応力緩和性・耐熱性・耐寒性・耐湿性、耐薬品性・防塵性・電気絶縁性に優れているものの、シリコーン材料の良好な離型性故に、プラスチック材料であるアクリル系粘着剤材料との接着性に問題があり、光配線板の屈曲等の変形における剥離等の破壊が起こり易く、結果として光ファイバの固定に問題が発生し、配線パターンにおける光ファイバが位置ずれ(配線パターンの崩れ)を引き起こしたりする問題が発生する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記のような問題点を解決することを目的としてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、上記のように輻輳した光ファイバ配線に対して、配線された光ファイバの配線パターンを崩さずに、配線された光ファイバを外力(引っ張り、曲げ、引っかき等)に対して固定し、保護し、かつ簡単に光学接続ができる新規な光学接続部品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学接続部品の第1のものは、二次元平面的に配線された、端部に光学接続するための終端部分を有する複数の光ファイバ、および該光ファイバを固定している少なくとも1つの樹脂保護層を有するものであって、その樹脂保護層が脱アルコールによる縮合反応が進行して硬化するシリコーン系材料より形成され、かつ、該樹脂保護層中に接着付与剤を含有し、接着剤層を介して基材または他の樹脂保護層と接合しており、そして上記接着剤層がアクリル系粘着剤よりなることを特徴とする。
【0007】
本発明の光学接続部品において、上記光ファイバを固定している樹脂保護層は、基材の両面に、それぞれ接着剤層を介して接合していてもよい。また、基材の裏面には、他の樹脂保護層が設けられていてもよい。さらに、光ファイバを固定している複数の樹脂保護層が、接着剤層を介して接合していてもよい。
【0008】
本発明の光学接続部品の第2のものは、上記の複数の光学接続部品が、シリコーン系粘着剤よりなる接着剤層を介して接合して積層体を形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明の光学接続部品の第1のものは、二次元平面を有する可撓性の基材の一面に、アクリル系粘着剤を塗布して接着剤層を形成した後、その上に、光ファイバ端部に光学接続するための終端部分を有するように複数の光ファイバを配線し、配線された光ファイバが固定されるように、脱アルコールによる縮合反応が進行して硬化するシリコーン系材料を塗布し、硬化させて樹脂保護層を形成することによって作製することができる。基材の他の面には、上記シリコーン系材料を塗布して樹脂保護層を形成してもよい。また、基材の両面に上記の接着剤層を形成し、光ファイバの配線、樹脂保護層の形成を行ってもよい。
【0010】
基材が存在しない光学接続部品は、剥離性フィルムを用いることによって作製することができる。すなわち、剥離性フィルムの一面に、上記のようにしてアクリル系粘着剤よりなる接着剤層を形成し、光ファイバを配線し、上記のようにして樹脂保護層を形成した後、剥離性フィルムを除去し、露出した接着剤層の上に、必要に応じて上記のようにして光ファイバを配線し、樹脂保護層を形成すればよい。さらに形成された樹脂保護層の上に、同様に接着剤層を形成し、光ファイバを配線し、樹脂保護層を形成してもよい。この操作を繰り返すことによって、光ファイバを固定した多数の樹脂保護層が接着剤層を介して接合した光学接続部品を作製することができる。
【0011】
また、基材が複数存在する光学接続部品は、上記のようにして作成された基材が1つ存在する光学接続部品を、その樹脂保護層同士をシリコーン系粘着剤を用いて貼着し、積層体を形成することによっても作製することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の光学接続部品の一例の一部破砕した平面図であり、図2はその断面図である。図3ないし図5は、それぞれフィルム状基材を用いた場合の他の例の断面図であり、図6ないし図8は、それぞれフィルム状基材が存在しない光学接続部品の一例の断面図である。図1および2において、二次元平面を有する可撓性のフィルム状基材1の一面に接着剤層3を介して複数の光ファイバ4が二次元平面的に配線されており、これら光ファイバ4は、可撓性を有する樹脂保護層2によって固定されている。光ファイバ4の端部は光学接続するための終端部分5になっていて、光学部品6、例えば光コネクタが接続されている。なお、終端部分5と光学部品6とは一体になっていてもよい。7は、樹脂保護層を形成するために設けた堰状物である。
【0013】
図3の光学接続部品は、図2のフィルム状基材1の他面に、樹脂保護層の樹脂材料と同一材質または異種材質よりなる可撓性を有する樹脂保護層2aが設けられて形成された場合を示している。図4においては、図2のフィルム状基材1の他面に、他の接着剤層3′を介して複数の光ファイバ4′が二次元平面的に配線されており、これら光ファイバ4′は、可撓性を有する樹脂保護層2′によって固定されている。また、図5の光学接続部品は、図4の光学接続部品8および8が、接着剤層3aによって接合された構造のものであり、4つの樹脂保護層と2つのフィルム状基材を有する積層構造体を形成している。
【0014】
図6の光学接続部品は、光ファイバを固定している樹脂保護層2が、他の樹脂保護層2aと接着剤層3を介して接合した構造のものを示している。また、図7の場合は、光ファイバ4を固定している樹脂保護層2と、光ファイバ4′を固定している樹脂保護層2′とが接着剤層3を介して接合した構造のものであり、図8の場合は、図7の光学接続部品8に、光ファイバ4″を固定している樹脂保護層2″が接着剤層3aを介してさらに接合された構造のものであり、3つの樹脂保護層よりなる積層体を形成している。図9の光学接続部品は、図2の樹脂保護層上に、光ファイバを配線したフィルム状基材1が設けられて形成された場合を示している。さらに図10は、図9のフィルム状基材1の他面に樹脂保護層2aが設けられて形成された場合を示している。
【0015】
本発明の光学接続部品において、配線された光ファイバを支持するための基材は、一般的には二次元平面を有する可撓性のフィルム状基材が使用されるが、特に限定されるものではない。基材としては、例えば、ガラス−エポキシ樹脂複合基板、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、シリコーンまたはウレタンゴムまたはフォーム等の有機材料のゲル状物、ゴム状物、およびフォーム状物等があげられ、通常の電子部品、電気部品で使用される基材であれば如何なるものでも使用することが可能である。また、本発明の光学接続部品は、使用目的によっては可撓性である必要はなく、剛直なものでもよい。例えば、剛直な高分子材料よりなる基板、セラミック基板等を使用することができ、その形状も如何なるものでもよい。
【0016】
本発明で配線される光ファイバは、光学接続部品の適用目的に応じて適宜選択して使用され、例えば、石英またはプラスチック製のシングルモード光ファイバ、マルチモード光ファイバ等が好ましく使用される。また、光ファイバは、カーボンコート光ファイバであるのが好ましい。一般に光ファイバの寿命を決める大きな要因としては、雰囲気の水、水素の侵入があげられるが、カーボンコート光ファイバは、水および水素の侵入が抑えられるため、高い信頼性と寿命が得られるからである。また、本発明の光学接続部品では、通常の光ケーブルのごとき耐環境性能を付与するケーブル外皮を設けないため、信頼性の高いカーボンコート光ファイバを用いるのがより有効である。
【0017】
本発明における光ファイバを二次元平面的に配線する方法としては、フィルム状基材上に接着剤層を設けて配線する方法が最も簡便であるが、フィルム状基材の存在しない光学接続部品を作製する場合には、剥離性フィルムを一時的にフィルム状基材として用いればよい。
【0018】
光ファイバを配線するための接着剤層を構成する接着剤としては、アクリル系粘着剤が使用されるが、配線される光ファイバの曲げで生じる張力に対応して光ファイバの形状を維持する接着力を有するものであれば、如何なるアクリル系粘着剤を使用してもよい。一般的には、アクリル系粘着剤は、アクリル系樹脂で構成され、その構成成分は、アクリルモノマー主成分、他のコモノマー成分および少量の官能基含有モノマー成分より構成された共重合体が使用され、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等の有機溶剤中でラジカル重合させたり、または乳化剤の存在下で乳化水分散体を乳化重合させることによって合成することができる。合成されたアクリル系粘着剤は、単独でも使用することができるが、必要に応じて硬化剤を併用してもよい。また、使用目的に応じて、ロジンエステルやC9 系石油樹脂等の粘着付与剤や、酸化チタン等の顔料を充填剤として添加してもよい。
【0019】
アクリル系粘着剤を構成する主モノマー成分としては、例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸の炭素数2以上のアルキルエステル類、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸の炭素数4以上のアルキルエステル類があげられる。
【0020】
また、これらのアルキルアクリレート類およびアルキルメタクリレート類と共重合可能なコモノマーとしては、メチルアクリレートや、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート等のメタクリル酸の炭素数3以下のアルキルエステル類、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン等があげられる。
【0021】
官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸等の多価カルボン酸、およびこれらの酸無水物等のカルボキシル基含有モノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド等のアミノ基含有モノマー等があげられる。
【0022】
硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネートアダクト等のイソシアネート系化合物、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、ホルムアルデヒド等のアルデヒド系化合物、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン化合物、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、錫、チタン、ニッケル等の多価金属の塩化物や、その他の金属塩、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、錫、チタン、ニッケル等の多価金属のアセチルアセトンまたはアセト酢酸エステル配位化合物等の金属キレート化合物があげられる。
【0023】
本発明の光学接続部品において、光ファイバを固定している樹脂保護層は、可撓性を有する脱アルコールによる縮合反応が進行して硬化するシリコーン系材料(以下、「縮合型のアルコール型シリコーン系材料」という。)が使用される。縮合型のアルコール型シリコーン系材料は、脱アルコールによる縮合反応が進行し、硬化するものであれば特に限定されるものではないが、作業性の面から、一液型の流動性を有する液状シリコーンゴムが好適であり、特にカール等の平面性の面から縮合型RTVシリコーンゴムが好ましい。なお、縮合型RTVシリコーンゴムは、硬化機構により、酢酸型、アルコール型、オキシム型、アセトン型等に分類されるが、本発明においては、プラスチックあるいは金属を侵さない点または臭いの少ない点、安全性の点、及びアクリル系粘着剤との接着性の点から、アルコール型のものが使用される。また、アクリル系粘着剤とのさらに良好な接着性を得るために、本発明においては、樹脂保護層中に接着付与剤を含有させる。
【0024】
本発明において用いられる接着付与剤としては、下記一般式(I)で示される化合物があげられる。
【化2】
(式中、Xは、塩素原子、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基またはメルカプト基を表し、Rはハロゲン原子または炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、Yは炭素数1〜4の炭化水素基を表し、nは1〜10の整数を表し、mは1〜3の整数を表す。)
【0025】
具体的には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等があげられる。
なお、本発明において、上記縮合型のアルコール型シリコーン系材料の硬化機能等を考慮にいれて、アクリル系接着剤層との接着性を一層向上させるためには、上記の接着付与剤の中でも、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基またはアミノ基を有するものが好ましく使用され、特にアミノ基を有するものがより好ましく使用される。
【0026】
本発明において、上記接着付与剤の添加割合は、目的に応じて適宜選択すればよいが、一般的には、縮合型のアルコール型シリコーン系材料に対して、0.01〜50重量%、好ましくは0.01〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%の範囲である。
【0027】
本発明においては、フィルム状基材の裏面に光ファイバを配線せずに直接樹脂保護層を設けてもよいが、その場合、その樹脂保護層を構成する樹脂としては、可撓性を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ゲル状またはゴム状の有機材料、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂で可撓性を有するもの、可撓性を有する熱可塑性樹脂等が使用される。より具体的には、ゲル状の有機材料としては、シリコーン系ゲル、アクリル系樹脂ゲル、フッ素樹脂系ゲル等があげられ、ゴム状の有機材料としては、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム、フッ素系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン−アクリル系ゴム、SBR、BR、NBR、クロロプレン系ゴム等があげられる。可撓性のある硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化性接着剤、シリコーン樹脂等があげられる。可撓性を有する熱可塑性樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂等のホットメルト型接着剤を構成する樹脂があげられる。
【0028】
なお、必要に応じて、光学接続部品の表面となる樹脂保護層の上に、保護層を設けてもよい。可撓性をあまり要求しない場合には、光ファイバを配線する上記基材と同一のものでもよく、有機高分子材料およびセラミック等のシートおよび板状体を用いることができる。さらに、光学接続部品が可撓性であることが要求される場合には、その可撓性を損なわない程度の保護層として、例えばシリコーン系ハードコート材料等を用いればよい。
【0029】
本発明の光学接続部品においては、通常、光コネクタとの接続のために、光学接続部品端面の所望の位置(ポート)から光ファイバが伸びて終端部分を形成しており、そこに光コネクタが接続されるか、または光コネクタに接続された光ファイバと融着接続される。本発明の光学接続部品に接続される光コネクタは特に限定されないが、好適には単心または多心の小型光コネクタが選択される。例えば、MPO光コネクタ、MT光コネクタ、MU光コネクタ、FPC光コネクタ(NTT R&D,Vol.45 No.6,589頁)、或いは光学接続に用いられるV溝部品等が挙げられる。なお、光コネクタ接続の方法は何等限定されず、終端部分と光コネクタが一体となっていてもよい。
【0030】
本発明において、基材が1つ存在する光学接続部品は、次のようにして作製される。例えば、まず、二次元平面を有する基材の一面に前記のアクリル系粘着剤よりなる接着剤層を設け、その上に光ファイバを所望のパターンに配線する。その際、光ファイバの端部は、光コネクタ等と光学接続するための終端部分となるように、引き出された状態にする。なお、接着剤層を設ける方法としては、上記基材上に、アクリル系粘着剤を直接、または溶剤に溶解して塗布液とした状態で、ロールコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、キャスティング、ディスペンサーコーティング、スプレーコーティング、スクリーン印刷等の方法で塗布し、接着剤層を設ける方法、および、予め剥離性フィルム上に粘着剤層を形成している粘着シートを上記基材に貼着し、その後、剥離性フィルムを除去することによって転写する方法等が採用される。また、剥離性フィルム上に粘着剤層を形成している粘着シートをそのまま基材として使用することも可能である。接着剤層の膜厚は、配線する光ファイバの径により適宜選択して使用すればよいが、通常1μm〜1mm、好ましくは5〜500μm、さらに好ましくは10〜300μmの範囲に設定される。
【0031】
上記のようにして配線された光ファイバの上に、上記の縮合型のアルコール型シリコーン材料を用い、配線された光ファイバが埋没した状態で固定されるように樹脂保護層を形成することによって、本発明の光学接続部品を作製することができる。
【0032】
ここで、光ファイバが配線された場合の樹脂保護層の厚みは、配線される光ファイバの径とその重なりの本数によって適宜選択して、光ファイバが保護、固定されるようにすればよい。通常は、(光ファイバの径)×(重なり本数)以上の厚みが必要となる。また、光ファイバが配線されない場合の樹脂保護層の厚みは、光学接続部品を使用する目的に応じて、フィルム状基材の剛直性を緩和させる程度の膜厚で適宜選択して使用すればよいが、通常は1μm〜数cm程度、好ましくは10μm〜10mm、さらに好ましくは30μm〜1mmの範囲に設定される。
【0033】
光ファイバが配線された基材上、または基材裏面に樹脂保護層を設ける最も簡単な方法としては、上記基材の周縁または周縁近傍に堰状物を設け、形成された堰状物の内側部分に樹脂材料を満たし、固化すればよい。例えば、縮合型のアルコール型シリコーン系材料を適当な溶剤に溶解して塗布液とし、それを滴下し、乾燥させる方法、液体状態の縮合型のアルコール型シリコーン系材料を滴下し、常温において湿気を与えることによって硬化させる方法によって樹脂保護層を形成することができる。
【0034】
堰状物は、通常は基材の周縁または周縁近傍にその全周にわたって設ければよい。しかしながら、基材の周縁近傍に光コネクタ、光モジュール、光デバイス等の光学部品を載置する場合には、それら光学部品が堰状物としての役割を果たす場合もあり、その場合には、その光学部品が載置された部分には堰状物を設ける必要はない。
【0035】
堰状物を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、好適には、光学接続部品の適用目的に応じて適宜選択すればよいが、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等の有機繊維よりなる不織布、ガラス繊維の不織布、およびシリコーン系、エポキシ系、ウレタン系またはアクリル系樹脂よりなるシーリング剤(充填剤)等が好適に使用される。堰状物は、その内側に満たされる樹脂材料が外側に流れ出ないようにする限り、そのサイズおよび形状は限定されるものではない。
【0036】
前記の光学接続部品のフィルム状基材の裏面に樹脂保護層を設ける場合において、基材裏面にアクリル系粘着剤よりなる接着剤層を設けていない場合には、樹脂保護層形成用の材料としては、前記したものが使用でき、例えば、ゲル状またはゴム状の有機材料、紫外線硬化、電子線硬化または熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂で可撓性を有するもの、可撓性を有する熱可塑性樹脂等が使用でき、前記の堰状物を設置して、その内側に上記の材料を充填し、作製すればよい。
【0037】
フィルム状基材の裏面にアクリル系粘着剤よりなる接着剤層を設け、所望のパターンに光ファイバを配線した場合には、前記のように、縮合型のアルコール型シリコーン系材料を用いて、樹脂保護層を作製すればよい。
【0038】
また、フィルム状基材を有しないで、樹脂保護層に光ファイバーを埋没した状態で固定する光学接続部品の場合は、例えば、剥離性フィルム上にアクリル系粘着剤よりなる接着剤層を設け、その上に複数の光ファイバを配線した後、上記のようにして縮合型のアルコール型シリコーン系材料を用いて樹脂保護層を形成し、剥離性フィルムを除去した後、露出した接着剤層の上に、上記と同様にして縮合型のアルコール型シリコーン系材料を用いて樹脂保護層を形成すればよい。その場合、露出した接着剤層の上に、複数の光ファイバを配線し、その上に縮合型のアルコール型シリコーン系材料を用いて樹脂保護層を形成してもよい。
【0039】
さらに、予め前記の方法で光学接続部品を複数個作製し、その樹脂保護層表面に接着剤層を直接設けるか、または予め接着剤層を設けた接着シートから接着剤層を樹脂保護層表面に転写することにより接着層を設け、これら複数の光学接続部品を貼着して、多層構造の積層体よりなる光学接続部品を作製することも可能である。
【0040】
上記のようにして作製された本発明の光学接続部品において、引き出された光ファイバの終端部分には、光コネクタまたは光モジュール等の光学接続部品を接合させる。例えば、光コネクタと接続させるために端面処理された光ファイバの終端部を光コネクタに接続するか、或いは光コネクタに固定された光ファイバ端面と、光ファイバ配線部材から引き出された各光ファイバの端面とを融着接続させる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
試験例
n−ブチルアクリレート/メチルアクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(=82/15/2.7/0.3)からなるアクリル系樹脂の30%酢酸エチル溶液100部に、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト)1.0部を配合して混合した。得られたアクリル系粘着剤塗布液を、厚さ25μmのポリイミドフィルムの一面に、乾燥後の膜厚が50μmになるように塗工してアクリル系粘着剤層を製膜し、シートを作製した。
【0042】
このシートの上に、下記表1に示す材料よりなる縮合型のアルコール型シリコーン系材料と粘着付与剤を混合して得られた塗布液を、ロールコーティング法により、厚さ500μmになるように塗布し、25℃で72時間の条件で固化させた。その後、カッターナイフで十字に切り込みを入れ、その部分で十字に折り曲げ、ポリイミドフィルムとの剥がれの程度を評価した。その結果、アクリル系粘着剤との剥がれは発生せず、良好な接着性を示すことが確認された。
【0043】
また、上記と同様のサンプルを作製し、75℃、90%RHの条件下で5000時間放置する高温多湿試験、および−40℃から75℃、500回の温度サイクル試験を行った後に、上記と同様にカッターナイフで十字に切り込みを入れ、その部分で十字に折り曲げ、ポリイミドフィルムとの剥がれの程度を評価した。その結果、アクリル系粘着剤との剥がれは認められず、良好な接着性を示すことが確認された。
【0044】
【表1】
【0045】
参考例1
n−ブチルアクリレート/メチルアクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(=82/15/2.7/0.3)からなるアクリル系樹脂の30%酢酸エチル溶液100部に、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト)1.0部を配合して混合した。得られたアクリル系粘着剤塗布液を、厚さ125μmのポリイミドフィルムの一面に、乾燥後の膜厚が100μmになるように塗工してアクリル系粘着剤層を製膜し、シート(サイズ210mm×297mm)を作製した。これに、ポート(光学接続部材からの光ファイバ取り出し部分)当り光ファイバ心線(古河電工社製、カーボンコート光ファイバ、250μm径)を次のように配線した。すなわち、光ファイバ16本を300μmピッチで並列し、ポリイミドフィルムの短辺の両側に各8ポート(各ポートは光ファイバ16本で構成)を25mmピッチで作製した。各光ファイバはポリイミドフィルムの一方の短辺から他方の短辺に配線し、両側の各ポートへの配線は、設計により各光ファイバ毎に所望のフリーアクセス配線(128本)とし、光ファイバの配線を調整して最大の重なり数が3本となるようにした。
【0046】
その後、光ファイバを配線したポリイミドフィルムの周縁部に、シリコーン系の充填剤(コニシ社製、バスボンド)を塗布して、幅1.5mm、厚さ1mmの堰状物を形成した。次いで、その内側にシリコーンゴム塗布液(東レ・ダウコーニング社製、SE9187L)を滴下し、25℃で72時間の条件下でシリコーンゴムを硬化させて樹脂保護層を形成し、光ファイバをその樹脂保護層によって固定して厚さ1.2mmの光配線板を作製した。その後、引き出された光ファイバの端部にMUコネクタを接続して最終製品の光配線板を得た。
【0052】
実施例1
参考例1において、厚さ125μmのポリイミドフィルムの両面に、参考例1で用いたアクリル系粘着剤を厚さ100μmになるように塗工し、片面に剥離性フィルムを貼着してフィルム状基材(サイズ210mm×297mm)を用意した。このポリイミドフィルムの片面に、参考例1と同様にして光ファイバを配線し、次いでシリコーン系の充填剤の代わりに、シリコーンゴム塗布液(東芝シリコーン社製、TSE3925)を用いて、ポリイミドフィルムの周縁に幅1.5mm、厚さ1mmの堰状物を作製し、その内側に表1のNo.1の処方の接着付与剤を添加した縮合型のアルコール型シリコーンゴム塗布液を滴下し、25℃で72時間の条件下でシリコーンゴムを硬化させて第1の樹脂保護層を形成し、光ファイバを埋没した状態で固定した。
【0053】
その後、ポリイミドフィルムの裏面にある剥離性フィルムを除去し、粘着剤層上に、光ファイバの総数が64本であり、かつ光ファイバの最大の重なり数が2本になるように64本のフリーアクセスの配線を行った。その後、光ファイバを配線したポリイミドフィルムの周縁部にシリコーンゴム塗布液(東芝シリコーン社製、TSE3925)を用いて、幅1.5mm、厚さ500μmの堰状物を形成した。次いで、その内側に表1のNo.3の処方の接着付与剤を添加した縮合型のアルコール型シリコーンゴム塗布液を滴下し、25℃で72時間の条件下でシリコーンゴムを硬化させて第2の樹脂保護層を形成し、光ファイバを埋没した状態で固定して、厚さ1.8mmの光配線板を作製した。その後、引き出された光ファイバの端部にMUコネクタを接続して最終製品の光配線板を作製した。
【0054】
作製した光配線板は、アクリル系粘着剤と樹脂保護層の接着性が良好で、光ファイバも十分固定され、配線パターンにおける光ファイバが位置ずれ(配線パターンの崩れ)もなく、光配線板の屈曲等の変形による破壊に対しても問題がなかった。
【0055】
なお、接続した全ての光ファイバの損失を測定したところ、光コネクタの接続損失も含めて、0.7dB以下であった。また、作製した光配線板について、75℃、90%RHで5000時間放置の高温多湿試験、および−40℃から75℃、500回の温度サイクル試験を行ったところ、光損失の変化、変動ともに0.5dB以下であり、光学接続部品として十分使用可能なことが分かった。
【0056】
実施例2
参考例1で用いたアクリル系粘着剤塗布液を、厚さ75μmのシリコーン系剥離性フィルムの一面に、乾燥後の膜厚が100μmになるように塗工して、アクリル系粘着層を製膜し、シート(サイズ210mm×297mm)を作製した。これに参考例1と同様にして光ファイバを配線した。
【0057】
その後、光ファイバを配線した剥離性フィルムの周縁部に、参考例1と同様にして、シリコーン系の充填剤(コニシ社製、バスボンド)の堰状物を形成し、その内側に表1のNo.5の処方の接着付与剤を添加した縮合型のアルコール型シリコーンゴム塗布液を滴下し、25℃で72時間の条件下でシリコーンゴムを硬化させて第1の樹脂保護層を形成した。
【0058】
次いで、シリコーン系剥離性フィルムを剥離し、露出した裏面の粘着剤層上に、第2の樹脂保護層を形成した。すなわち、裏面の粘着剤層の周縁部に、シリコーン系の充填剤(コニシ社製、バスボンド)を塗布して、幅1.5mm、高さ500μmの堰状物を形成し、その内側に表1のNo.6の処方の接着付与剤を添加した縮合型のアルコール型シリコーンゴム塗布液を滴下し、25℃で72時間の条件下でシリコーンゴムを硬化させて第2の樹脂保護層を形成し、厚さ1.6mmの光配線板を作製した。その後、引き出された光ファイバの端部にMUコネクタを接続して最終製品の光配線板を得た。
【0059】
作製した光配線板は、アクリル系粘着剤と樹脂保護層の接着性が良好で、光ファイバも十分固定され、配線パターンにおける光ファイバが位置ずれ(配線パターンの崩れ)もなく、光配線板の屈曲等の変形による破壊に対しても問題がなかった。
【0060】
なお、接続した全ての光ファイバの損失を測定したところ、光コネクタの接続損失も含めて、0.4dB以下であった。また、作製した光配線板について、75℃、90%RHで5000時間放置の高温多湿試験、および−40℃から75℃、500回の温度サイクル試験を行ったところ、光損失の変化、変動ともに0.5dB以下であり、光学接続部品として十分使用可能なことが分かった。
【0061】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明の光学接続部品は、接着剤として最も一般的に使用されているアクリル系粘着剤(感圧接着剤)を用いることにより、汎用性と応力緩和性があるという特徴を持ち、また、半導体封止材料として、実績のあるシリコーン系材料を樹脂保護層に用いることにより、信頼性、応力緩和性、耐熱性、耐寒性、耐湿性、耐薬品性、防塵性、電気絶縁性に優れているという特徴を持つ。また、樹脂保護層に特定のシリコーン材料である縮合型のアルコール型シリコーン系材料を用い、接着付与剤が含有されているので、樹脂保護層とアクリル系粘着剤よりなる接着剤層との接着性が改良され、配線パターンにおける光ファイバの位置ずれ(配線パターンの崩れ)がなく、光配線板の屈曲等の変形による破壊に対しても強靭なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光学接続部品の一例の一部破砕した平面図である。
【図2】 図1の光学接続部品の断面図である。
【図3】 本発明の光学接続部品の他の一例の断面図である。
【図4】 本発明の光学接続部品の他の一例の断面図である。
【図5】 本発明の光学接続部品の他の一例の断面図である。
【図6】 本発明の光学接続部品の他の一例の断面図である。
【図7】 本発明の光学接続部品の他の一例の断面図である。
【図8】 本発明の光学接続部品の他の一例の断面図である。
【図9】 本発明の光学接続部品の他の一例の断面図である。
【図10】 本発明の光学接続部品の他の一例の断面図である。
【符号の説明】
1…フィルム状基材、2,2′,2″,2a…樹脂保護層、3,3′,3a…接着剤層、4,4′,4″…光ファイバ、5…終端部分、6…光コネクタおよび光モジュール等の光学部品、7…堰状物、8…光学接続部品。
Claims (5)
- 二次元平面的に配線された、端部に光学接続するための終端部分を有する複数の光ファイバ、および該光ファイバを固定している少なくとも1つの樹脂保護層を有する光学接続部品において、該樹脂保護層が脱アルコールによる縮合反応が進行して硬化するシリコーン系材料より形成され、かつ、該樹脂保護層中に接着付与剤を含有し、接着剤層を介して基材または他の樹脂保護層と接合しており、該接着剤層がアクリル系粘着剤よりなることを特徴とする光学接続部品。
- 光ファイバを固定している樹脂保護層が、基材の両面にそれぞれ接着剤層を介して接合している請求項1記載の光学接続部品。
- 光ファイバを固定している複数の樹脂保護層が、接着剤層を介して接合している請求項1記載の光学接続部品。
- 請求項1記載の複数の光学接続部品が、シリコーン系粘着剤よりなる接着剤層を介して接合して積層体を形成したことを特徴とする光学接続部品。
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