JP3711803B2 - ディスプレイ装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
内蔵照明と外光照明双方の照明光で観察可能なディスプレイに関し、特にその照明光を拡散させる一部もしくは全部が回折要素からなる拡散体を設け、外光照明での輝度を低下することなく内蔵照明も可能なディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶パネルの背面に反射体を有する構成で、バックライトを要さず観察者側からの周辺環境光(室内照明や日光などの外光)によるパターン状の反射光を視覚するタイプの反射型液晶表示装置が公知であり、近年では、前記表示装置において、既存の拡散反射板に代えて、反射角度などを制御できるように、ホログラムを採用することが試みられている。
ホログラムを反射板として用いた反射型液晶表示装置に係る提案として、特開昭56−51772号公報に例示されるものが公知である。 特開昭56−51772号公報には表面レリーフ型ホログラムを液晶の反射板に用いた例が上げられているが、これは非常に安価に反射板を作れる特徴を持っている。しかしながら、このレリーフ面にアルミニウムなどの金属や誘電体などの反射層を設けているが、バックライトの内蔵照明を利用するためには、この反射層をハーフミラー構造とする必要があり、内蔵照明および外光照明の双方ともその利用効率が低減する原因となっていた。
【0003】
従来、エンボス型ホログラムを液晶の反射面に用いる液晶表示装置が考案されている。しかしながら、レーザー光で記録されたエンボスホログラムでは、照明光に対して回折される回折光の効率がせいぜい20%程度であり、その明るさは決して十分なものではなかった。さらに、バックライトなど内蔵光源を利用できないため、暗い場所では利用できないなどの問題も生じていた。エンボス型ホログラムをバックライト内蔵の液晶ディスプレイで利用するためには、レリーフ面に用いている反射層がハーフミラーのように透過も反射もするような構造にする必要があり、その場合さらに、ディスプレイの輝度が低下する問題があった。
【0004】
図2に示すように、周辺環境光25は、レリーフホログラム22上の反射面24で回折反射した光26が、液晶21を照明することにより、パターンの表示を行う。内蔵光源を用いる場合は、バックライト23から出射した光が、レリーフホログラム22および反射面24を透過後、液晶21を照明することにより、パターンの表示を行う。このように、反射面24は、周辺光25は反射し、バックライト23からの光は透過する性質が必要なため、反射光の利用効率は低下してしまう。例えば、反射層の透過率を20%、反射率を80%とし、反射面が完全反射面であった場合のホログラムの回折効率を20%とすると、実際の周辺環境光を利用できる効率は、16%となってしまう。この例では、拡散体22が回折効果をもつ例を上げたが、拡散体がマット面による通常の拡散板の場合でも同様の欠点が生じる。
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、内蔵照明と外光照明双方の照明光で観察可能なディスプレイに関し、外光照明での輝度を低下することなく内蔵照明も可能なディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、
内蔵照明と外光照明双方の照明光で観察可能なディスプレイであって、
その照明光を拡散させる一部もしくは全部がレリーフ構造の回折要素からなる反射拡散体を、液晶ディスプレイに対して観察者と反対側に設けており、
前記内蔵照明は、ディスプレイの上方もしくは下方もしくは双方の側面から、前記拡散体を照明する構成であり、
前記内蔵照明の拡散には、前記拡散体による回折要素の2次以上もしくは−2次以下の回折光を用い、
前記外光照明の拡散には、前記拡散体による回折要素の1次もしくは−1次の回折光を用いることを特徴とするディスプレイ装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載のディスプレイ装置の前記拡散体が、凹凸構造の回折格子からなり、回折格子の断面形状の凹凸の傾きが内蔵照明側が大きいことを特徴とするディスプレイ装置である。これにより、より明るいディスプレイが実現できる。
【0010】
請求項3記載の発明は、
請求項1記載のディスプレイ装置の前記拡散体が、凹凸構造の回折格子からなり、回折格子の断面形状の凹凸の傾きが、ディスプレイの上下方向において、下方側に比較して、上方側がなだらかなことを特徴とするディスプレイ装置である。これにより、より明るいディスプレイが実現できる。
【0011】
請求項4記載の発明は、
請求項1記載のディスプレイ装置の前記拡散体が、凹凸構造の回折格子からなり、回折格子の断面形状の凹凸を形成する2つの斜面の角度を各々α1とα2と表したとき、角度α1およびα2の斜面で回折する次数(整数)を、各々m1およびm2と表したとき、m1<m2の関係を満たし、かつm2/m1=sin(2×α2)/sin(2×α1)の関係を満たすことを特徴とするディスプレイ装置である。これにより、様々な照明光に対応する拡散体が実現できる。
【0012】
請求項5記載の発明は、
請求項2〜4の何れかに記載の前記拡散体が、凹凸構造の回折格子からなり、回折格子の断面形状の凹凸を形成する2つの斜面のうち斜面の角度が小さい方の角度α1が、22.5度以下であること特徴とするディスプレイ装置である。これにより、より照明光を有効に利用可能になる。
【0013】
請求項6記載の発明は、
請求項1〜5の何れかに記載の前記拡散体の回折要素のピッチが、0.8μm以上あることを特徴とするディスプレイ装置である。これにより、光の利用効率の良い拡散体が実現できる。
【0014】
請求項7記載の発明は、
請求項1〜6の何れかに記載の前記拡散体を、反射型液晶ディスプレイの反射電極の反射面に設けた反射型液晶ディスプレイ装置であることを特徴とするディスプレイ装置である。これにより、周辺環境光と内蔵照明とも明るいディスプレイが実現可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図に基づいて詳細に説明する。
図1は、拡散体が回折格子によって構成され、異なる入射角による周辺環境光と内蔵照明光が同一の回折格子によって回折されディスプレイを照明する本発明の一形態を示す説明図である。
なお、ここで説明する角度は、全て絶対値で記述してあり、角度の向きが異なる場合でも、符号は全て正で示している。
周辺環境光などの外光15は、液晶ディスプレイ11を透過後、回折格子による反射拡散体12に角度θ1で入射する。拡散体12で回折拡散した光線16は、液晶ディスプレイ11を透過照明し、この光を観察者は観察することになる。内蔵照明18から照射された光線19は、液晶ディスプレイ11を透過後、回折格子による反射拡散体12に角度θ2で入射する。拡散体12で回折拡散した光線17は、液晶ディスプレイ11を透過照明し、この光を観察者は観察することになる。周辺環境光15と内蔵照明光19それぞれの入射角θ1およびθ2は、θ1<θ2であり、回折する光の波長をλ、回折格子のピッチをdとすると、
d=m1・λ/sin(θ1)
d=m2・λ/sin(θ2)
の関係になる。なお、m1およびm2は回折の次数を示す。
θ1<θ2<90度の関係から、m1<m2となる。
波長λは、可視光である必要から、0.4μmから0.8μm程度であり、m1とm2は整数である必要がある。
【0016】
例えば、λ=530nmとし、θ2=85度、m1が1、m2を2とすると、d=1.064μmとなり、このとき周辺環境光の入射角θ1は、29.87度となる。同じ条件で、m2のみが3となったとき、d=1.596μmとなり、周辺環境光は、m1が1のときはθ1=19.4度、m1が2のときはθ1=41.6度となり、周辺環境光が19.4度付近および41.6度付近と周辺光を利用できる角度が複数となり、より広い範囲の環境光を利用できることになる。周辺環境光での照明で、特定の範囲で明るく観察したい場合は、2次の回折光を内蔵照明に利用するのが良く、さまざまな照明条件で広い範囲で観察したい場合は、3次以上の回折光を内蔵照明用に利用した方がよい。周辺環境光と内蔵照明との拡散に同一の回折格子の異なる次数の回折光を利用するためには、周辺環境光と内蔵照明そして観察領域が同一平面近辺に存在することが望ましい。一般に周辺環境光は、ディスプレイに対して上方から入射する場合が多いため、内蔵照明は、ディスプレイの上方もしくは下方から照明する構造が望ましい。
θ2はサイドライトであるため一般には80度以上90度以下であり、m2は2以上であり、可視光は、400nmから800nmの範囲に入るため、ディスプレイ正面から観察する場合、回折格子のピッチdは、0.8μm以上あることが望ましい。
上述の説明では、簡便に説明するために単純な回折格子として説明を進めたが、単純な格子線のあつまりによる回折格子である必要はなく、ホログラムのように、複雑な構造をもつ回折素子であってもよい。この場合、回折素子のピッチdは、その回折素子の空間周波数の逆数として考えればよい。
【0017】
レリーフ構造の回折格子による回折次数とその回折効率は、その回折格子の断面形状に大きく依存する。レリーフ構造の回折格子では、格子を構成する面での正反射方向と回折方向が一致すると高い回折効率を持つことが知られている。先に記述したように、本発明では、内蔵照明の方が周辺環境光より高い次数の回折光を用いて照明を行っている。そのため、図3に示すように、内蔵照明を周辺環境光の照明とは反対方向から光を入れ、内臓照明側の回折格子の凹凸の傾きα2を、周辺環境光側の凹凸の傾きα1よりも大きくとるようにすれば、内蔵照明の回折光も、周辺環境光の回折光双方とも高い回折効率で利用することが可能になる。
【0018】
例えば、λ=530nmとし、θ2=85度、m1が1、m2を2とすると、d=1.064μmとなり、このとき周辺環境光の入射角θ1は、29.87度となる。レリーフの凹凸面で、回折方向に正反射するためには、
α1=θ1÷2
α2=θ2÷2
の関係が成り立てば良いので、
α1=14.94度、α2=42.5度の角度の凹凸のレリーフを構成するともっとも高い光の利用効率が得られる。この例では、周辺環境光の入射角と波長を一定にしたが、実際は、ディスプレイを観察する環境において変化が生じるため、この角度の関係は厳密ではなく、α1<α2の関係が成り立っていればその効果が生じ、周辺環境光の入射角は、一般には60度以下と考えられ、内蔵照明の入射角度は80度以上と考えられるため、
α1×1.3<α2の関係があれば、その効果はより高くなる。
また、上式を変形すればm2/m1=sin(2×α2)/sin(2×α1)の関係が成り立ち、またm1とm2は整数でm2>m1の関係がある。さらに、図3に示すように、周辺環境光がα2の角度をもつ斜面によってけられが生じないためには、θ1<α2の関係があればよい。よってθ1<45度、言い換えればα1<22.5度以下であることが望ましい。
【0019】
この例では、回折格子の凹凸が鋸波状の例を示したが、図4に示すように、階段状やなだらかに変化した凹凸形状でも良い。特に、階段形状のものは、深さ方向の分解能が低くて良いため、製造しやすい利点がある。
また、回折格子を構成する回折格子線は、直線、曲線のいずれでも本発明の効果を損なうものではない。
【0020】
また、上述では拡散作用が回折格子のみによって引き起こされていたが、図7に示すように回折格子14と一般の拡散層34を組み合わせ、回折格子で光の方向を変化させ、拡散層によって光を拡散させても良い。
【0021】
近年、液晶ディスプレイのの開口率を向上させるため、液晶ディスプレイの電極を反射電極とするタイプの液晶ディスプレイが開発されている。このタイプの液晶ディスプレイは、周辺環境光を効率良く利用できる利点があるが、内蔵照明の利用が難しいなどの欠点があった。内蔵照明を利用するために、液晶表面にプリズムシートを張った例も報告されているが、液晶表面に張ることによってコントラストが低下する問題も生じている。そこで、本発明の回折格子を利用した拡散体を反射電極上に形成することによって、周辺環境光と内蔵照明双方とも明るく、コントラストの良いディスプレイを得ることができる。
【0022】
本発明に示すような回折格子を精密に成形するためには、半導体の製造工程に用いられるパターニング装置を用いれば良い。これらの装置は、電子ビームやレーザービームを集束させ、これを走査する事によってパターンを形成している。別の方法では、レーザー光による干渉縞を記録しても良い。
【0023】
また、鋸歯状や階段状の回折格子を作製するには、以下の方法がある。
図5は、電子ビームでのブレーズド型格子の描画の際、電子ビームの照射領域毎のエネルギー量を変化させて、深さを制御しながらブレーズド型回折格子を描画する方法を概念的に示す説明図である。同図では、矢印の太さがエネルギー量を表し、エネルギー量の大きい領域は、格子が深く形成される。
電子ビームの照射強度を変調する方法としては、ドーズ量を直接制御する方法,走査スピード(時間)を変化させる方法,走査ピッチを変化させる方法,同一箇所を複数回走査する中で、走査回数を変化させる方法などがある。
上記は、電子ビームでのブレーズド型回折格子の描画についての説明であったが、階段状型回折格子の描画に応用することも可能である。
【0024】
図6は、イオンビームによるエッチングで、4段階のレベルの階段状型回折格子を作製する方法を概念的に示す説明図である。
本実施形態では、2種類のマスクパターンを用いたエッチングを行う。
図6のAで、第1のマスクパターンを用いて、前記マスクの開口を通過したイオンビームにより基材(感光材料)を選択的にエッチングすると、同図Bのように矩形状の凹部が形成される。
同図Cでは、第2のマスクパターンを用いて、上記基材を選択的にエッチングする。
以上によって、同図Dに示す断面形状を有する階段状型回折格子が作製されることになる。
上記の作製工程で、マスクの枚数とエッチングの回数を増やすことによって、レベル数のさらに増加した階段状型回折格子が作製される。
感光材料を現像して原版を得た後、前記原版を基に、メッキなどにより原版のレリーフ形状が再現されたスタンパ(複製用版)が得られ、前記スタンパにより熱可塑性樹脂にエンボス成型したりUV硬化樹脂へ複製することで、回折格子パターンが大量複製される。
【0025】
【発明の効果】
本発明によって、周辺環境光による照明でも、内蔵光源による照明でも明るいディスプレイの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のディスプレイ装置において、拡散体が回折格子によって構成され、異なる入射角による周辺環境光と内蔵照明光が同一の回折格子によって回折されディスプレイを照明する一実施例を示す説明図。
【図2】従来の回折素子の反射回折面が半透明反射面である拡散体の一実施例を示す説明図。
【図3】本発明のディスプレイ装置において、回折格子が鋸歯状の断面構造をもつ一実施例を示す説明図。
【図4】本発明のディスプレイ装置において、回折格子が曲線による山状および階段状の断面構造をもつ一実施例を示す説明図。
【図5】本発明のディスプレイ装置の拡散体において、電子線描画装置による鋸歯状格子の成形法の説明図。
【図6】本発明のディスプレイ装置の拡散体において、エッチング法による階段状格子の成形法の説明図。
【図7】本発明のディスプレイ装置において、回折格子と拡散層をもつ一実施例を示す説明図。
【符号の説明】
11・・・液晶ディスプレイ
12・・・回折格子による拡散体
14・・・回折反射面
15・・・周辺環境光
16・・・周辺環境光による拡散照明光
17・・・内蔵照明による拡散照明光
18・・・内蔵照明光源
19・・・内蔵照明による照明光
21・・・液晶ディスプレイ
22・・・拡散体
24・・・回折反射面
25・・・周辺環境光
26・・・周辺環境光による拡散照明光
27・・・内蔵照明による拡散照明光
23・・・内蔵照明光源
34・・・拡散層
Claims (7)
- 内蔵照明と外光照明双方の照明光で観察可能なディスプレイであって、
その照明光を拡散させる一部もしくは全部がレリーフ構造の回折要素からなる反射拡散体を、液晶ディスプレイに対して観察者と反対側に設けており、
前記内蔵照明は、ディスプレイの上方もしくは下方もしくは双方の側面から、前記拡散体を照明する構成であり、
前記内蔵照明の拡散には、前記拡散体による回折要素の2次以上もしくは−2次以下の回折光を用い、
前記外光照明の拡散には、前記拡散体による回折要素の1次もしくは−1次の回折光を用いることを特徴とするディスプレイ装置。 - 請求項1記載のディスプレイ装置の前記拡散体が、凹凸構造の回折格子からなり、回折格子の断面形状の凹凸の傾きが、外光照明側よりも内蔵照明側が大きいことを特徴とするディスプレイ装置。
- 請求項1記載のディスプレイ装置の前記拡散体が、凹凸構造の回折格子からなり、回折格子の断面形状の凹凸の傾きが、ディスプレイの上下方向において、下方側よりも上方側が小さいとを特徴とするディスプレイ装置。
- 請求項1記載のディスプレイ装置の前記拡散体が、凹凸構造の回折格子からなり、回折格子の断面形状の凹凸を形成する2つの斜面のうち、斜面の角度の小さい方の角度をα1、斜面の角度の大きい方の角度をα2と表し、また角度α1およびα2の斜面で回折する回折光の次数(整数)を各々m1およびm2と表したとき、
m1<m2の関係を満たし、かつm2/m1=sin(2×α2)/sin(2×α1)の関係を満たすことを特徴とするディスプレイ装置。 - 請求項2〜4の何れかに記載の前記拡散体が、凹凸構造の断面をもつ回折格子であり、回折格子の断面形状の凹凸を形成する2つの斜面のうち斜面の角度が小さい方の角度α1が、22.5度以下であること特徴とするディスプレイ装置。
- 請求項1〜5の何れかに記載の前記拡散体の回折要素のピッチが、0.8μm以上あることを特徴とするディスプレイ装置。
- 請求項1〜6の何れかに記載の前記拡散体を、反射型液晶ディスプレイの反射電極の反射面に設けた反射型液晶ディスプレイ装置であることを特徴とするディスプレイ装置。
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