JP3711152B2 - 液状/固形状廃棄物の微生物処理用反応促進剤 および該反応促進剤を含む反応材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は食品工業、厨房、食堂等から排出される汚水、汚泥又は生ゴミ等の液状/固形状廃棄物中の迅速な消化および分解のための微生物処理用反応促進剤および該反応促進剤を含む反応媒体に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決すべき課題】
一般にこの様な各種廃棄物を投棄可能な形態に処理する方法としては、従来から酸化・燃焼等の物理・化学的な処理に加え、近年微生物の活性を利用した嫌気消化、好気消化等の生物化学処理方法が注目され、各分野で開発実用化されている。しかしこれらの処理方法については、関連する工程、すなわち濃縮や脱水等について、その適用性の優劣や操作上の諸問題並びに最終的な処分までの経費等に多くの難点が残されている。
【0003】
この様な汚水、汚泥処理における処理方法として本発明者等はスギ材の木質部分を破砕して得られる所定粒度の微細な木質細片中に各種の被処理汚水・汚泥を注入するというきわめて簡単な処理によって汚水・汚泥が完全に分解および濾過され、しかもかかる木質細片を透過した後の排水はss、BOD等の規制基準の点で直接放流もしくは地中への浸透を許容される程度にまで処理できることを発見してこれらの処理方法および装置等をすでに提案しており(特公平2−30760同2−36479号および実公平5−005155号)、またこのような微生物処理のための改善された装置およびシステムについてもその後種々の技術を提案している(特願平5−34128号および実願平5ー5155号等)。
【0004】
これらの処理方法および装置によれば、前記のように汚水や汚泥等を比較的短時間でかつ効率良く分解・消化することができるが、それでも前記微生物が処理媒体中に自然に発生して廃棄物を栄養源として繁殖し、所期の消化および分解作用を安定して示すまでには通常24〜48時間程度の時間を要し、特に冬期等の低温条件下では実質的な消化・分解作用が開始されるまでには相当の時間を要する。このため、前記微生物処理装置を稼動させる際には種菌(元菌)として予め用意しておいたこれらの微生物を加えることが好ましい。
【0005】
また前記微生物による廃棄物の消化・分解は、たとえば有機成分としてのタン白質の場合にはタン白質→ポリペプチド→アミノ酸、アンモニヤ、硝酸、窒素等のように順次低分子化および無機化され、これら夫々の段階毎の分解に固有の菌種が関与し、これは炭水化物および脂質の消化・分解についても同様である。このように一般の汚泥や生ごみ等の廃棄物の微生物処理は夫々の段階での生成物質に対して多様な菌種が作用する結果として総合的に行われるが、市販の種菌は必ずしもこのような広汎な菌スペクトルを全くカバーしているとはいえない。したがって、前記有機廃棄物の処理には、たとえば特に初期段階の比較的高分子量の成分の分解のために夫々の成分の分解に対して特異性を有する酵素を積極的に添加することが好ましい。
【0006】
しかし、前記種菌および各種酵素を廃棄物処理に際して夫々の対象に即用できるような形態で保存し処理対象によってこれらを選択して用いることはユーザにとって容易ではない。またこれら菌類や酵素は処理対象としての廃棄物に対して極めて少量で用いられるので、使用時に均一に分散させて有効に用いることが困難である。
【0007】
本発明者等は近年幼児用もしくは衛生用物品の吸収体として用いられているある種の高吸水性ポリマが大量の水を吸水して粒状球体に膨潤しかつこの状態でそれ自体は流動しやすい顆粒状となって取り扱い易い性状を呈することに着目し、かゝる高吸水性ポリマを微生物ないしは酵素の担体として用い、微生物処理の際の反応処理媒体としてのスギ材の粉砕物に混入することにより処理装置の稼動直後から充分な量を存在させかつ必要に応じて酵素を併用することにより効果的にかつ迅速に消化・分解処理が開始されることを発見して本発明を完成するに到った。
【0008】
【課題を解決するための技術的手段】
すなわち前記従来技術の課題は含水して粒状球体に膨潤する高吸水性ポリマ粉末に土壌菌を含む水又は土壌菌と分解酵素を混入して含む水を含浸させて得られる液状/固形状廃棄物の微生物処理用反応促進剤を粒径が0.15mmないし5mmの範囲のスギ材の粉砕物に混合して用いることによって達成される。
【0009】
【作用】
本発明においては土壌菌を含む水又は土壌菌と分解酵素を混合して含む水を高吸水性ポリマ粉末に含浸させることによりこのポリマ粉末が粒状球体に膨潤させた際に土壌菌がその内部に水と共に封入の固定される。この状態の粒状球体をたとえば5〜18℃の温度で保存すれば、土壌菌等は長期間にわたって安定に保持される。この粒状球体は大量の水を吸水しているにもかゝわらずほとんど表面に水分が滲出せずさらさらした良好な流動性を示すため極めて取り扱いやすい。また土壌菌自体の使用量は微量であるがこれを吸水状態で含む反応促進剤ポリマ粒子は比較的嵩高になって正確な計量が可能となりかつ撹拌により容易に均質に分散される。すなわち、この反応促進剤をスギ材の木質細片からなる反応処理媒体に加える際には、いわゆる種菌としての土壌菌および各種分解酵素は夫々数十ppm(3〜4g/100L)程度で充分であるが、このような微量の土壌菌等を正確に計量し、かつ大量の木質処理媒体に均一に混合する処理は実際上は極めて困難である。本発明ではこの土壌菌(及び酵素)を0.1〜1g/L濃度の水溶液として吸水性ポリマに吸収させた形態で混入するので、実際の作業においてはたとえば500L(容)のスギ材処理媒体に対して数十gのオーダで反応処理剤を混入することになり、必要な処理剤の正確な計量および攪拌による処理媒体への均一な混合、保持が確実かつ容易になる。
【0010】
前記高吸水性ポリマーとしてはたとえば通常おむつや生理用品等において吸水剤として用いられているいわゆる高吸水性ポリマ等を用いることができ、吸水時に粒状球体に膨潤するポリマの好ましい例としては一般式:(CH2=CHCOONa)n で表されるポリソジウムアクリレートが挙げられる。
【0011】
前記ポリソジウムアクリレートは具体的には、平均値で吸水能(脱イオン水)約70〜300倍、吸水速度3秒〜145秒、膨張倍率2〜5倍、および粒度20μm〜1000μm程度のものがあり、たとえば大阪有機化学工業からPQポリマとして市販されている下記表1に示すグレードのものを用いることができる。
【0012】
【表1】
【0013】
これらの高吸水性ポリマに対して通常約20〜100倍量の水を吸収させることが好ましく、吸水量が20倍量以下では微生物の吸収・固定量が少なすぎ、また100倍量以上では吸水後の膨潤粒子の表面に湿気を帯びるために凝塊が生じて取扱い上好ましくない。実用上は約25〜50倍量の水を吸収させることが好ましい。
【0014】
前記吸水性ポリマに吸収される水に溶解又は懸濁させる土壌菌としては通常の土壌中に棲息しているものを簡単に利用することができる。本発明者は前記特公平2−30760号等に記載された排水処理媒体としての木質細片中に交替的に発生して汚泥等の消化・分解に寄与してる微生物が主として土壌菌と総称される下記好気性菌類および嫌気性菌類等であることを確認した。
【0015】
(A)好気性菌: Psudomonas aeroginosa(緑膿菌)、Serratia marcescens (レイ菌)、Luminous bacteria (発光菌類)、Azotobacter (窒素菌類)、 Bacillus (カン菌属)、Escherichia coli(大腸菌)、Mycobacterium (糸状菌)、Bacillus subtilis (枯草菌)、Bacillus megatherium(巨大菌)、Micrococcus (小球菌属)、Saccharomyces (酵母菌属)Neurospora sp および( アカパンカビ類) 。
(B)嫌気性菌:(1) 炭水化物分解菌: Clostridium属、Basillus属、Stahyloccus 属、(2) たん白質分解菌:Clostridum属、Proteus 属、Bacterium 属、Bacillus属、(3) 脂肪分解菌:Clostridum属および(4) メタン細菌:Methanobacterium(桿菌)、Methanococus(球菌)、Melhanosaricina (サリチナ球菌) 。
【0016】
また前記土壌菌の他にこの種廃棄物の微生物処理のために(種菌)元菌として市販されている消化菌たとえばEM菌等を用いることもできる。
【0017】
本願発明においてはまた前記土壌菌と共に各種分解酵素が予め水中に溶解ないしは懸濁させて用いられる。この場合の酵素としては特に食品工業からの廃棄物の主成分としてのタン白質、炭水化物および脂質類に作用してこれらを分解するプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ等が用いられる。
【0018】
これら酵素は処理対象に応じて単独で又は適宜な組合せで用いられ、また土壌菌と酵素とは混合して同時に用いてもよく又は夫々別々に高吸水性ポリマ中に吸液させた後、得られた膨潤ポリマ粒子を混合して用いてもよい。
【0019】
いずれの場合にも水溶液の土壌菌および酵素の全体としての濃度は約0.1〜1g/リットルとすることが好ましい。濃度が高すぎると高吸水性ポリマ粉末中への吸水率が低下し、また低すぎると水溶液の所要量、したがってポリマの使用量が増大する。
【0020】
本発明においては前記のようにして得られた土壌菌および各種酵素を含有するポリマ粒状球体からなる反応促進剤を適宜な反応媒体と混合して用いることが好ましい。このような反応媒体としては前記特公平2−30760号等に記載された木質細片が用いられる。この木質細片はスギ材の木質部を粉砕して粒径が0.15mm〜5mmの範囲に分布するように篩分することによって得られ、かゝる木質細片に対して前記反応促進剤を混合して廃棄物の微生物処理に用いる。
【0021】
処理媒体としての木質細片に対する反応促進剤の混合量は水溶液等の使用濃度およびポリマ吸水率によっても異なるが、通常の条件下では木質細片100リットルにたいして反応促進剤3〜4g程度で充分である。またこの木質細片媒体により廃棄物を処理する際には、液状廃棄物の場合には処理媒体に対して1/5量程度の処理液を間欠的に通液し、また固形状廃棄物の場合には、たとえばこれを粉砕し水を加えて液状化したものを前記と同様な量で間欠的に通水する。
【0022】
尚処理媒体としては前記木質細片の他にピートモス等を用いることもできる。ピートモス(草炭)は主として草本植物が地表近くで半炭素化された堆積物であって、たとえば表2に示すような組成(乾物%)および特性を有する。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
前記ピートモスは0.14〜5mmの粒径の範囲のものが用いられ、ピートモスに対する前記反応促進剤の混合量、および廃棄物の処理量は前記木質細片の場合と同様である。
【0026】
【実施例】
以下本発明を実施例によってさらに説明する。
【0027】
実施例1
山の雑木林の表土から深さ25cmまでの土壌5Kgをとり、これを水15リットルに浸漬してよく攪拌した後、この上澄液を濾過して得られた微生物を含有する水100mlをと前記表1に示す高吸水性ポリマーBL−151を3g添加して2分間攪拌することにより嫌気性菌および好気性菌を含有する含水球体状の反応促進剤を得た。
【0028】
実施例2
実施例1と同様の土壌菌を含有する水70mlにEM−1菌(財団法人自然農法国際研究センタよりの市販品)入り水溶液30mlをとりこれに高吸水性ポリマーBL−151を3g添加して25分間攪拌することにより嫌気性菌および好気性菌を含有する含水球体状の反応促進剤を得た。
【0029】
実施例3
実施例1で調製した土壌菌を含有する水100mlをとりこれに市販アミラーゼ(商品名グルワザイルAF6)0.5g、プロテアーゼ(商品名フロレザー)0.5gリパーゼ0.5g(21000cal/mol)を添加し、攪拌しながらこれに実施例1と同じ高吸水性ポリマー4gを添加して約3分間攪拌することにより嫌気性菌、好気性菌、澱粉分解酵素、蛋白分解酵素、脂質分解酵素を含有する含水球体状の反応促進剤を得た。
【0030】
実験例1
図1に示す600mm(ψ)x2000mm(h)の円筒状処理槽1に対して前記木質細片500リットルを充填し、充填層M中に埋設した周面に透孔2を有する拡散パイプ3に対して、下記表3に示す食品工場からの廃液を擬似した処理原液をタンク4からポンプ5によって100リットル/150〜180分で間欠的に4回に分けて給送し、充填層M中で処理した後下方の排出口(図示せず)より連続的に排出させた。
【0031】
原液組成
ドッグフード50g、酵母エキス5g、でんぷん30g、砂糖30g、 リン酸水素カリウム3g、硫安6g、実施例1および実施例2で得られた反応促進剤各20g、水100リットル。
各回処理による排液中の平均成分および性状は表4に示す通りである。
【0032】
【表4】
【0033】
実験例2
図2に示すの生ごみ処理装置(実願平5−5155号)において固体状の生ごみを処理した。図2中、台車6に載置された処理タンク7には処理廃棄物と反応処理媒体Mを攪拌する攪拌翼8がモータ9によって回転可能に設けられている。処理タンク7の側方にはモータ10で回転される切断刃(図示せず)を備えたディスポーザ11が設けられ、上方の生ごみホッパ12から投入される生ごみを粉砕してポンプ13により水と共に管14を通してタンク7の上方に供給する。処理後の廃液はタンク底部の排水溜15等を介して循環ポンプ16により管17を通してタンク7の上方に循環される。その他図中、18は温度センサ、19はセンサの感知にしたがって作動して処理タンク7を定温に維持するヒータである。
【0034】
処理タンク2中に一般のオガクズ、実験例1の反応促進剤の調製に用いたスギ材の木質細片単独、ピートモス(北海道産:粒径0.15〜5mm)と実施例3で用いた反応促進剤との混合物を夫々500リットル充填し、処理排水を連続的に循環させながら26〜27℃付近の温度で処理した。処理廃液のBODが実験例1の比較例に示す値に低減するまで処理を継続したところ、処理に要した時間は一般のおが屑で160時間、スギ材のおが屑の場合で36時間、本発明の処理媒体の場合で10〜24時間であった。
【0035】
前記の実施例によれば食品工場からの廃液を擬似した原液および固体状廃棄物としての生ごみが簡単な設備により微生物処理により直接放流可能なBOD、CDD値にまで迅速に低下させることができる。尚高吸水性ポリマとしては前記ソジウムポリアクリレートを用いたが、大量の水を吸収して流動しやすい粉末状の粒子に膨潤するものであれば任意の高吸水性ポリマを用いることができる。
【0036】
また前記反応促進剤を用いて処理装置を一旦稼動させれば、以降反応媒体中に増殖する消化・分解菌によって引き続き処理を継続することができ、特に長期間にわたって稼動を停止させた場合等に適宜反応促進剤を補給添加するだけてよい。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば液状/固形状の廃棄物を簡単な設備によって迅速に微生物処理するこができ、かつ稼動中の設備についてはほとんど保守を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実験に用いた処理槽の概要を示す断面図である。
【図2】本発明の反応促進剤および反応媒体による廃棄物の処理に用いる装置の一部断面正面図である。
【符号の説明】
1 … 処理タンク
2 … 透孔
3 … 拡散パイプ
4 … タンク
5 … パイプ
6 … 基台
7 … 処理タンク
8 … 攪拌翼
9 … モータ
10… モータ
11… ディスポーザ
12… 生ごみホッパ−
13… ポンプ
14… 管
15… 排水液溜
16… 循環ポンプ
17… 管
18… 温度センサ
19… ヒータ
M … 反応材充填層
Claims (3)
- 含水して粒状球体に膨潤する高吸水性ポリマ粉末に土壌菌を含む水又は土壌菌と分解酵素を混合して含む水を含浸させて得られる液状/固形状廃棄物の微生物処理用反応促進剤と粒径0.15mmないし5mmのスギ材の粉砕物とを混合してなる液状/固形状廃棄物の微生物処理用反応材。
- 前記高吸水性ポリマ粉末が一般式:(CH2=CHCOONa)n で表されるポリソジウムアクリレートからなる請求項2記載の液状/固形状廃棄物の微生物処理用反応材。
- 前記分解酵素が炭水化物分解酵素、蛋白質分解酵素および脂質分解酵素の少なくとも一種以上を含有する請求項1記載の液状/固形状廃棄物の微生物処理用反応材。
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JP30940394A JP3711152B2 (ja) | 1994-11-21 | 1994-11-21 | 液状/固形状廃棄物の微生物処理用反応促進剤 および該反応促進剤を含む反応材 |
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JP30940394A JP3711152B2 (ja) | 1994-11-21 | 1994-11-21 | 液状/固形状廃棄物の微生物処理用反応促進剤 および該反応促進剤を含む反応材 |
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- 1994-11-21 JP JP30940394A patent/JP3711152B2/ja not_active Expired - Fee Related
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