JP3711101B2 - パラ系芳香族ポリアミド紙とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パラ系芳香族ポリアミドパルプ及び/又はパラ系芳香族ポリアミド繊維をバインダーで結合しているパラ系芳香族ポリアミド紙とその製造方法に関し、とくに、航空機用のハニカム材等として最適なパラ系芳香族ポリアミド紙とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の航空機用ハニカム材として、メタ系芳香族ポリアミド繊維50〜100重量%をシート状にして高温高圧処理した紙が知られている。この紙は、航空機用のハニカム材としての強度を実現するために、シート状に集合しているメタ系芳香族ポリアミド繊維を高温高圧処理して、その交点を融着している。ただ、航空機用のハニカム材として使用する紙は、さらに強度を向上する必要があり、強度向上の目的でフェノール樹脂を含浸している。しかしながら、メタ系芳香族ポリアミド繊維を高温高圧処理して製造される紙は、高温高圧処理する工程で、繊維が融着して高密度に集合した状態となっているので、フェノール樹脂を内部まで均一に含浸するのが難しい欠点がある。このため、フェノール樹脂を含浸しようとしても、内部まで均一には浸透せず、ほとんが紙の表面に付着するので強度を向上するのが難しい欠点がある。
【0003】
また、メタ系芳香族ポリアミド繊維がパラ系芳香族ポリアミドと比べて弾性率に限界があるため、この繊維を使用しているメタ系芳香族ポリアミド紙は引張強度と耐圧強度に限界がある。
【0004】
【発明が解決しようとする技術】
メタ系芳香族ポリアミド紙の欠点を解消する、パラ系芳香族ポリアミド紙の製造方法が、特許第2891071号、特開平8−74195号公報、特開平10−54000号公報に記載される。特許第2891071号に記載される製造方法は、水で膨潤にしたパラ系芳香族ポリアミド繊維を混合して抄紙するので、製造コストが高くなる欠点がある。また、特開平8−74195号に記載される製造方法は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を0.5〜10重量%と、固有粘度が1.0〜2.5dl/gであるパラ系芳香族ポリアミドを0.5〜10重量%含む極性アラミド系溶液からなる溶液をバインダーとして用いられるものであるが、バインダーの調整と含浸、凝固のためにコストは高くなる。さらにまた、特開平10−54000号等に記載される製造方法は、繊維状の架橋性フェノール樹脂を混合して抄紙し、フェノール樹脂を硬化させるものであるが、フェノール樹脂を繊維状とするためにコストがかかる。
【0005】
本発明はこのような欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の大切な目的は、低コストなパラ系芳香族ポリアミド紙とその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、フェノール樹脂を含浸して硬化させることにより、飛躍的に物性を向上できるパラ系芳香族ポリアミド紙とその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1のパラ系芳香族ポリアミド紙は、パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維をバインダーで結合している。パラ系芳香族ポリアミド紙は、バインダーを、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂とし、このバインダーを、パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維に対して1〜25重量%含み、さらに、カチオン系定着補強剤をパラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維に対して1〜5重量%含むようにしている。さらに、パラ系芳香族ポリアミド紙は、フェノール樹脂を含浸又はコートしている。
【0007】
本発明の請求項2に記載しているパラ系芳香族ポリアミド紙は、パラ系芳香族ポリアミドパルプをバインダーで結合している。このパラ系芳香族ポリアミド紙は、バインダーを、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂とし、しかもこのバインダーをパラ系芳香族ポリアミドパルプに対して1〜25重量%含み、さらに、カチオン系定着補強剤をパラ系芳香族ポリアミドパルプに対して1〜5重量%含むようにしている。さらに、パラ系芳香族ポリアミド紙は、フェノール樹脂を含浸又はコートしている。
【0008】
パラ系芳香族ポリアミド紙は、カレンダー加工して厚みを薄くして均一化することもできる。
【0009】
本発明の請求項4の製造方法は、パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維をバインダーで結合してパラ系芳香族ポリアミド紙を製造する。パラ系芳香族ポリアミドパルプ及びパラ系芳香族ポリアミド繊維を結合するバインダーとして、パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維を水に分散しているスラリーに、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂を、パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維に対して1〜25重量%添加し、さらに、カチオン系定着補強剤をパラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維に対して1〜5重量%添加してスラリーとし、このスラリーを抄紙、脱水、乾燥して原紙とし、この原紙にフェノール樹脂を含浸又はコートして硬化させてパラ系芳香族ポリアミド紙を製造する。
【0010】
本発明の請求項5の製造方法は、パラ系芳香族ポリアミドパルプをバインダーで結合してパラ系芳香族ポリアミド紙を製造する。パラ系芳香族ポリアミドパルプを結合するバインダーとして、パラ系芳香族ポリアミドパルプを水に分散しているスラリーに、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂を、パラ系芳香族ポリアミドパルプに対して1〜25重量%添加し、さらに、カチオン系定着補強剤をパラ系芳香族ポリアミドパルプに対して1〜5重量%添加してスラリーとし、このスラリーを抄紙、脱水、乾燥して原紙とし、この原紙にフェノール樹脂を含浸又はコートして硬化させてパラ系芳香族ポリアミド紙を製造する。
【0011】
本発明の製造方法は、カレンダー加工することもできる。また、スラリーの水分散濃度は、好ましくは0.001〜0.5%とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのパラ系芳香族ポリアミド紙とその製造方法を例示するものであって、本発明はパラ系芳香族ポリアミド紙とその製造方法を下記のものに特定しない。
【0013】
パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維のみを抄紙した紙は強度が低く、フェノール樹脂含浸及びコート工程で必要強度を保持できない。本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙は、パラ系芳香族ポリアミドパルプやパラ系芳香族ポリアミド繊維を使用しながら、バインダーとして、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂、もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂を使用し、さらにカチオン系定着補強剤により定着させることにより、樹脂含浸や樹脂コートする硬化プロセスに必要強度を保持し、含浸硬化後飛躍的に強度を向上する。バインダーとして使用しているスチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂、もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂は、フェノール樹脂との馴染みが極めて良く、フェノール樹脂を紙層の内部まで均一に浸透させて、引張強度と耐圧強度を飛躍的に向上できる特長を実現する。
【0014】
本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙は、パラ系芳香族ポリアミドパルプのみを水に分散して水分散体であるスラリーとし、あるいはパラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維を水に分散させて水分散体のスラリーとし、このスラリーに、バインダーとして、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂を、パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維に対して1〜25重量%添加し、さらに、カチオン系定着補強剤をパラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維に対して1〜5重量%添加してスラリーとし、このスラリーを抄紙して製作される。スラリーにはフェノール樹脂を内添して、製造されるパラ系芳香族ポリアミド紙の強度を向上できる。ただ、フェノール樹脂を内添するパラ系芳香族ポリアミド紙を製造すると、排水やスラッジにフェノール誘導体が含まれて廃棄処理に問題があって環境面で好ましくない。本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙は製造された後に、フェノール樹脂を含浸して強度を向上できるので、スラリーにはフェノール樹脂を添加しないで、優れた物性のフェノール樹脂含浸紙とすることができる。
【0015】
パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維の配合比率は、目的に応じて選択される。例えば、高強度のパラ系芳香族ポリアミド紙を目的とするならば、パラ系芳香族ポリアミド繊維を多く配合し、また、地合を優先するならば、パラ系芳香族ポリアミドパルプの配合量を増量することが好ましい。これ等の繊維の水分散体であるスラリーの抄紙方法は特に限定されず、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜金網抄紙機等で抄紙できる。
【0016】
さらに、抄紙されたシートは、カレンダ―加工することができる。このようにして製作されたパラ系芳香族ポリアミド紙は、厚みを薄くして、ハニカム成形時のセルを均一にして、成形後の強度を向上できる。
【0017】
本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙は、以下に記す方法で製造できる。
(1) パラ系芳香族ポリアミドパルプの水分散体を調製する工程
パラ系芳香族ポリアミドパルプを分散槽において水で分散する。このときのパルプの濃度は5%以下で行う。
(2) パラ系芳香族ポリアミド繊維の水分散体を調製する工程
別の分散槽で、パラ系芳香族ポリアミド繊維を水で分散する。このときの繊維の濃度は3%以下で行う。
(3) 撹拌工程
上記(1)、(2)で得られた水分散体を攪拌槽に送り、均一に混ざるまで攪拌する。
(4) バインダー添加工程
以上のようにして(3)で得られた水分散体に、バインダーとして、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂、もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂を添加する。ただし、バインダーには、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂とスチレンメタアクリル酸アルキル共重合体樹脂の両方を使用することもできる。バインダーは水中に分散している状態であるが、さらにカチオン系定着補強剤、例えば、水溶性の熱硬化樹脂を添加することで定着させる。
(5) 抄紙工程
以上の(4)で得られたスラリーを傾斜金網抄紙、長網抄紙、丸網抄紙方法により抄紙する。このときスラリーの好ましい原料濃度は0.001〜0.5%である。
(6) 乾燥工程
抄紙された紙を乾燥する。乾燥には、サーフェイスドライヤーが好ましく、タッチ圧をかけることで、より良い表面性を得られる。このときの乾燥温度は100℃以上が好ましい。
【0018】
以上のようにして得られたパラ系芳香族ポリアミド紙は、所望の厚みに応じて、温度200〜250℃、線圧10〜200kg/cmでカレンダー加工を行うことが可能である。
【0019】
以上の方法で製造されたパラ系芳香族ポリアミド紙は、フェノール樹脂を含浸して硬化させることにより強度を向上して航空機用のハニカム材として使用できる。以上の方法で得られるパラ系芳香族ポリアミド紙は、バインダーとして使用しているスチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂、もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂がフェノール樹脂と馴染みが良いため、フェノール樹脂を含浸又はコートする工程で、フェノール樹脂を紙層の内部まで浸透できる。このため、硬化後における引張強度、耐圧強度、耐熱性に富み、航空機用ハニカム材等として有用である。
【0020】
【実施例】
[実施例1]
以下の工程でパラ系芳香族ポリアミド紙を製作する。
分散槽Aに、水を9m3張り、水温45℃以下でパラ系芳香族ポリアミドパルプを300kg投入し分散する。これを攪拌槽に送り、バインダーとして、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂を45kgを添加し、さらにカチオン系定着補強剤としてポリアミドエピクロロヒドリンを6kg添加してスラリーとし、このスラリーを傾斜金網抄紙機で抄紙する。
【0021】
[実施例2]
以下の工程でパラ系芳香族ポリアミド紙を製作する。
分散槽Aに水を9m3張り、水温45℃以下でパラ系芳香族ポリアミドパルプを275kg投入し、分散する。
分散槽Bに水15m3張り、パラ系芳香族ポリアミド繊維(繊維長6mm)を25kg投入し、分散する。
分散槽AとBの水分散体を攪拌槽に送り、均一に混合した後、バインダーとしてスチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂を30kg添加する。さらに、カチオン系定着補強剤としてポリアミドエピクロロヒドリンを6kg添加してスラリーとし、このスラリーを傾斜金網抄紙機で抄紙する。
【0022】
[実施例3]
以下の工程でパラ系芳香族ポリアミド紙を製作する。
分散槽Aに水を7m3張り、水温45℃以下でパラ系芳香族ポリアミドパルプを225kg投入し、分散する。
分散槽Bに水25m3張り、パラ系芳香族ポリアミド繊維(繊維長6mm)を75kg投入し、分散する。
分散槽AとBの水分散体を攪拌槽に送り、均一に混合した後、バインダーとして、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂を30kgを添加する。さらに、カチオン系定着補強剤としてポリアミドエピクロロヒドリンを6kg添加してスラリーとし、このスラリーを傾斜金網抄紙機で抄紙する。
【0023】
[実施例4]
以下の工程でパラ系芳香族ポリアミド紙を製作する。
分散槽Aに水を7m3張り、水温45℃以下でパラ系芳香族ポリアミドパルプを180kg投入し、分散する。
分散槽Bに水25m3張り、パラ系芳香族ポリアミド繊維(繊維長6mm)を120kg投入し、分散する。
分散槽AとBの水分散体を攪拌槽に送り、均一に混合した後、バインダーとしてスチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂を30kg添加する。さらに、カチオン系定着補強剤としてポリアミドエピクロロヒドリンを6kg添加してスラリーとし、このスラリーを傾斜金網抄紙機で抄紙する。
【0024】
上記実施例1〜4で製作されるパラ系芳香族ポリアミド紙の物性値を表1に記す。また、従来品であるメタ系芳香族ポリアミド紙を比較のため表中に記している。ただし、従来品であるメタ系芳香族ポリアミド紙は、メタ系芳香族ポリアミド繊維100%を湿式抄紙法で抄造し、この紙をカレンダー機を用いて、ロール温度は250℃以上、線圧は150kg/cm以上で処理することで製作する。
【0025】
【表1】
ただし、引張強度の測定方法は「JIS P8113」に準ずる方法とし、耐圧強度(リンク゛クラッシュ)の測定方法は「JIS P8126」に準ずる方法とする。
【0026】
[実施例5]
以下の工程でパラ系芳香族ポリアミド紙を製作する。
分散槽Aに水を15m3張り、水温45℃以下でパラ系芳香族ポリアミドパルプを150kg投入し、分散する。
分散槽Bに水25m3張り、パラ系芳香族ポリアミド繊維(繊維長6mm)を100kg投入し、分散する。
分散槽AとBの水分散体を攪拌槽に送り、均一に混合した後、バインダーとして、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂を25kg添加する。さらに、カチオン系定着補強剤としてポリアミドエピクロロヒドリンを5kg添加してスラリーとし、このスラリーを傾斜金網抄紙機で抄紙する。
【0027】
[実施例6]
実施例5で抄紙したパラ系芳香族ポリアミド紙を、温度200℃、線圧200kg/cmの条件下でカレンダー加工を行う。したがって、この実施例のパラ系芳香族ポリアミド紙は、実施例5のパラ系芳香族ポリアミド紙をカレンダー加工したものである。
【0028】
実施例5で得られたパラ系芳香族ポリアミド紙と、これをカレンダー加工した実施例6のパラ系芳香族ポリアミド紙の物性を測定すると、表2に示すようになる。この表から、実施例5のパラ系芳香族ポリアミド紙をカレンダー加工すると、厚さが132μmから50μmと半分以下となり、密度は0.265g/cm3から0.720g/cm3に増加する。さらにこの表から明かなように、実施例5のパラ系芳香族ポリアミド紙は、カレンダー加工して厚さが半分になっても、引張強度はほとんど低下しない。
【0029】
【表2】
この表における引張強度の測定方法は、「JIS P8113」に準ずる方法で行い、耐圧強度(リンク゛クラッシュ)の測定方法は、「JIS P8126」に準ずる方法とした。
【0030】
さらに、以上の実施例1〜6で得られた本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙と、従来品のメタ系芳香族ポリアミド紙とに、フェノール樹脂を含浸、硬化させて、フェノール樹脂含浸紙の強度が向上する特性を測定すると、以下の表3に示すようになる。
ただし、フェノール樹脂含浸紙は、実施例1〜6で得られたパラ系芳香族ポリアミド紙と、従来品のメタ系芳香族ポリアミド紙は以下のようにして製作する。
(1) 実施例1〜6のパラ系芳香族ポリアミド紙と、従来品のメタ系芳香族ポリアミド紙を、11%濃度のフェノール樹脂を含浸した後、1時間風乾する。
(2) その後、100℃のオーブンに入れて、さらに10分乾燥させる。
(3) 最後に180℃のオーブンでフェノール樹脂を硬化させる。
以上の(1)〜(3)の工程で、フェノール樹脂を手加工で含浸、硬化させたフェノール樹脂含浸紙を作成して、その物性を測定すると、その物性は表3に示すように変化する。ただしこの表において、実施例5で得られたパラ系芳香族ポリアミド紙は、フェノール樹脂の含浸量を30重量%とするフェノール樹脂含浸紙と、フェノール樹脂の含浸量を15重量%とするフェノール樹脂含浸紙の物性を測定している。実施例5の測定結果から、本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙は、フェノール樹脂含浸量を増加して引張強度を向上できることがわかる。
【0031】
さらに、フェノール樹脂含浸紙の引張強度がいかに向上する特性をわかりやすくするために、フェノール樹脂を含浸、硬化させない加工前と、フェノール樹脂を含浸、硬化させた加工後の引張強度のグラフを図1に示している。この図から、本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙は、フェノール加工を行うことにより、従来品のメタ系芳香族ポリアミド紙に比較して、著しく強度が向上することが明白となる。
【0032】
【表3】
この表の作成においても、引張強度の測定方法は「JIS P8113」に準ずる方法とし、耐圧強度(リンク゛クラッシュ)の測定方法は「JIS P8126」に準ずる方法とする。
【0033】
さらに、本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙が、特定のバインダーを使用することにより、フェノール樹脂含浸紙の引張強度をいかに向上できるかを確認するために、種々のバインダーを使用してパラ系芳香族ポリアミド紙を製作し、これにフェノール樹脂を含浸させてフェノール樹脂含浸紙とする。フェノール樹脂含浸紙の物性は以下のようになる。
ただし、パルプと繊維には、長さを6mmとするパラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維とを3:2の割合で混合したものを使用し、カチオン系定着補強剤としてポリアミドエピクロロヒドリンを使用する。実施例1〜5のパラ系芳香族ポリアミド紙を抄紙する傾斜金網抄紙機に代わって、手すきの抄紙機を使用してパラ系芳香族ポリアミド紙を抄紙して製作する。手すきで抄紙して得られるパラ系芳香族ポリアミド紙は、傾斜金網抄紙機のように縦横の方向による引張強度の差がない。傾斜金網抄紙機は、連続して移動する網材の上に繊維を載せて抄紙するので、網材の移動方向と、これ直交する方向で繊維の方向性を完全になくすることが難しい。このため、現実に傾斜金網抄紙機で製造された紙の縦横の引張強度を測定すると、縦横の引張強度に差ができる場合と、できない場合とがある。これに対して、手すきで抄紙されたパラ系芳香族ポリアミド紙は、パルプと繊維が方向性なく集合されるので、縦横の引張強度の差がほとんどなくなる。図4は、手すきで製作されるパラ系芳香族ポリアミド紙の強度を示すので、縦横の引張を別々には表示しない。
【0034】
[実施例7]
この実施例は、バインダーとして、10重量%のスチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂を使用し、カチオン系定着補強剤として2重量%のポリアミドエピクロロヒドリンを使用する。製作されたパラ系芳香族ポリアミド紙にフェノール樹脂を含浸、硬化させてフェノール樹脂含浸紙を製作する。
【0035】
[比較例1]
バインダーとして、10重量%のスチレンブタジエン共重合樹脂を使用する以外、実施例7と同様にして、フェノール樹脂を含浸硬化させてパラ系芳香族ポリアミド紙を製作する。
[比較例2]
バインダーとして、10重量%のニトリルブタジエン共重合樹脂を使用する以外、実施例7と同様にして、フェノール樹脂を含浸硬化させてパラ系芳香族ポリアミド紙を製作する。
[比較例3]
バインダーとして、10重量%のエポキシ樹脂を使用する以外、実施例7と同様にして、フェノール樹脂を含浸硬化させてパラ系芳香族ポリアミド紙を製作する。
【0036】
【表4】
【0037】
以上の結果より、バインダーにスチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂を使用する本発明の実施例7にかかるパラ系芳香族ポリアミド紙のフェノール樹脂含浸紙は、引張強度が4.4KN/mとなってハニカム強度が大幅に向上する。バインダーとして使用しているスチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂と、フェノール樹脂との馴染みが極めて良く、フェノール樹脂を紙層の内部まで均一に浸透させるからである。これに対してバインダーに、スチレンブタジエン共重合樹脂を使用する比較例1、ニトリルブタジエン共重合樹脂を使用する比較例2、エポキシ樹脂を使用する比較例3のパラ系芳香族ポリアミド紙のフェノール樹脂含浸紙は、引張強度が2.3〜3.1KN/mとなって、充分な強度を実現できない。すなわち、本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙はバインダーを特定することにより、ハニカム材等として特に優れた特性を示す。
【0038】
【発明の効果】
本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙とその製造方法は、要求コスト、強度、厚みに応じて、配合量を決めることができ、さらに樹脂を含浸又はコートして硬化させるとで大幅な強度の向上が可能になる。
さらに、本発明のパラ系芳香族ポリアミド紙とその製造方法は、バインダーとフェノール樹脂との馴染みが極めて良くて、フェノール樹脂が浸透しやすいことから、含浸作業回数が少なく目的の付着量に加工できるため作業面でも効率的である。このことから、フェノール樹脂の含浸及びコート性向上も確認でき、航空機用ハニカム紙等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例のパラ系芳香族ポリアミド紙と従来品におけるフェノール加工による強度向上の比較を示すグラフ
Claims (7)
- パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維をバインダーで結合してなるパラ系芳香族ポリアミド紙であって、
バインダーがスチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂で、このバインダーをパラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維に対して1〜25重量%含み、かつ、カチオン系定着補強剤をパラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維に対して1〜5重量%を含み、なおかつフェノール樹脂を含浸又はコートしてなるパラ系芳香族ポリアミド紙。 - パラ系芳香族ポリアミドパルプをバインダーで結合してなるパラ系芳香族ポリアミド紙であって、
バインダーがスチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂で、このバインダーをパラ系芳香族ポリアミドパルプに対して1〜25重量%含み、かつ、カチオン系定着補強剤をパラ系芳香族ポリアミドパルプに対して1〜5重量%含み、なおかつフェノール樹脂を含浸又はコートしてなるパラ系芳香族ポリアミド紙。 - カレンダー加工して厚みを薄くして均一化している請求項1から2のいずれかに記載されるパラ系芳香族ポリアミド紙。
- パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維をバインダーで結合してなるパラ系芳香族ポリアミド紙を製造する方法であって、
パラ系芳香族ポリアミドパルプ及びパラ系芳香族ポリアミド繊維を結合するバインダーとして、パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維を水に分散しているスラリーに、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂を、パラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維に対して1〜25重量%添加し、さらに、カチオン系定着補強剤をパラ系芳香族ポリアミドパルプとパラ系芳香族ポリアミド繊維に対して1〜5重量%添加してスラリーとし、このスラリーを抄紙、脱水、乾燥して原紙とし、この原紙にフェノール樹脂を含浸又はコートして硬化させるパラ系芳香族ポリアミド紙の製造方法。 - パラ系芳香族ポリアミドパルプをバインダーで結合してなるパラ系芳香族ポリアミド紙を製造する方法であって、
パラ系芳香族ポリアミドパルプを結合するバインダーとして、パラ系芳香族ポリアミドパルプを水に分散しているスラリーに、スチレンアクリル酸アルキル共重合体樹脂もしくはスチレンメタクリル酸アルキルアクリル酸アルキル共重合体樹脂を、パラ系芳香族ポリアミドパルプに対して1〜25重量%添加し、さらに、カチオン系定着補強剤をパラ系芳香族ポリアミドパルプに対して1〜5重量%添加してスラリーとし、このスラリーを抄紙、脱水、乾燥して原紙とし、この原紙にフェノール樹脂を含浸又はコートして硬化させるパラ系芳香族ポリアミド紙の製造方法。 - スラリーを、抄紙、脱水、乾燥してなる原紙をカレンダー加工する請求項4または5に記載されるパラ系芳香族ポリアミド紙の製造方法。
- スラリーの水分散濃度を0.001〜0.5%として抄紙する請求項4から6のいずれかに記載されるパラ系芳香族ポリアミド紙の製造方法。
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