JP3711020B2 - 発光素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電効果を有する材料により形成される発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
GaN、GaInN、AlGaN、AlGaInN等のIII 族窒化物半導体(以下、窒化物系半導体と呼ぶ。)を用いた半導体レーザ素子、発光ダイオード等の半導体発光素子は、可視から紫外にわたる領域の光を発生する発光素子として応用が期待されている。
【0003】
これらの応用の中で、GaInN量子井戸層を発光層とする半導体発光素子の実用化に向けて開発が盛んに行われている。このような半導体発光素子は、サファイア、炭化ケイ素(SiC)等の基板の(0001)面上に、MOVPE法(有機金属気相成長法)やMBE法(分子線エピタキシャル成長法)により作製されている。
【0004】
図42は従来のGaN系半導体発光素子の構成を示す模式的断面図である。図42の半導体発光素子は、特開平6−268257号公報に開示されている。
【0005】
図42において、サファイア基板61上に、GaNからなるバッファ層62、n−GaNからなるn−コンタクト層63、多重量子井戸(MQW)構造を有する発光層64、およびp−GaNからなるp−キャップ層65が順に形成されている。発光層64は、組成の異なるGaInNからなる複数の障壁層64aおよび量子井戸層64bが交互に積層されてなる。
【0006】
このような従来の半導体発光素子の製造方法では、通常、ほぼ(0001)面を主面とするサファイア基板61を用い、例えばMOVPE法により、サファイア基板上にバッファ層62からp−キャップ層65までの各層を順次形成する。この際、n−コンタクト層63からp−キャップ層65までの各層は、窒化物系半導体の[0001]方向に結晶成長する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般的に閃亜鉛鉱構造、ウルツ鉱構造等の対称中心を持たない結晶では、歪により圧電効果が発生することがある。例えば、閃亜鉛鉱構造では、[111]軸に関して圧縮または伸張する歪において圧電効果が最も大きくなる。また、ウルツ鉱構造では、[0001]軸に関して圧縮または伸張する歪において圧電効果が最も大きくなる。
【0008】
上記の従来の半導体発光素子において、GaInNからなる発光層64は、(0001)面を主面とする量子井戸構造を有する。GaInNからなる量子井戸層64bの格子定数は、n−GaNからなるn−コンタクト層63の格子定数よりも大きいので、量子井戸層64bには量子井戸の面内方向(界面に平行な方向)に圧縮歪が加わり、量子井戸の閉じ込め方向(界面に垂直な方向)には引張り歪が加わる。その結果、圧電効果に伴う電位勾配が量子井戸層64b中に発生し、[0001]方向側の電位が低く、[000-1]方向側の電位が高くなる。この場合の量子井戸構造の発光層64のエネルギーバンドを図43に示す。なお、図43には、5層の障壁層64aおよび4層の量子井戸層64bが示される。
【0009】
図43に示すように、発光層64内の量子井戸層64bに電位勾配が発生するため、図44に示すように、注入された電流による電子と正孔とが空間的に分離する。その結果、半導体発光素子において、発光効率が低下する。特に、半導体レーザ素子においては、しきい値電流が高くなる。
【0010】
発光層64の量子井戸層64bに不純物を添加すると、キャリアの移動により電位勾配が減少する効果が現れる。しかし、量子井戸層64bにp型不純物およびn型不純物の両方が添加されると、キャリアが補償され、キャリア濃度が低下する。それにより、キャリアの移動により電位勾配が減少する効果が小さくなる。特に、量子井戸層64bに添加されたp型不純物の濃度とn型不純物の濃度とがほぼ等しい場合には、キャリアの移動により電位勾配が減少する効果がさらに小さくなる。
【0011】
このような現象は、閃亜鉛鉱構造やウルツ鉱構造等の他のIII −V族化合物半導体(例えばGaInP系半導体、GaAs系半導体またはInP系半導体)、II−VI族半導体、I−VII 族半導体においても発生する。特に、窒化物系半導体では圧電効果が大きいため、圧電効果により発生する電位勾配が大きくなり、発光効率の低下やしきい値電流および動作電流の上昇が顕著に現れる。
【0012】
本発明の目的は、発光効率が高く動作電流またはしきい値電流が低い発光素子を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明に係る発光素子は、圧電効果の発生を伴う歪を有する発光層が第1のn型層と第1のp型層とに挟まれるように配置された発光素子であって、発光層は、圧電効果の発生を伴う歪を有する1つ以上の井戸層と、井戸層を挟むように配置された2つ以上の障壁層とから構成される量子井戸構造を有し、圧電効果の結果として発生する電位勾配のため発光層の電位は第1のn型層側が第1のp型層側に比べて高く、少なくとも発光層と第1のp型層との間に発光層よりも大きい禁制帯幅を有する第2のn型層を有し、第2のn型層が光ガイド層であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る発光素子においては、第2のn型層が発光層と第1のp型層との間に形成されたことにより、発光層の界面に垂直な方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離され、界面に垂直な方向に圧電効果のために発生する電位勾配が低減される。それにより、電流として注入される電子と正孔との分離が抑制されるので、利得が得られやすくなり、発光効率の低下および動作電流またはしきい値電流の上昇が抑制される。
【0015】
また、第1のp型層は第1のクラッド層を含み、第2のn型層の禁制帯幅が第1のクラッド層よりも小さくてもよい。この場合、第2のn型層の屈折率が第1のクラッド層よりも大きくなるため、第2のn型層が光ガイド層としての機能を有する。
【0016】
本発明に係る発光素子は、圧電効果の発生を伴う歪を有する発光層が第1のn型層と第1のp型層とに挟まれるように配置された発光素子であって、発光層は、圧電効果の発生を伴う歪を有する1つ以上の井戸層と、前記井戸層を挟むように配置された2つ以上の障壁層とから構成される量子井戸構造を有し、圧電効果の結果として発生する電位勾配のため発光層の電位は第1のn型層側が第1のp型層側に比べて高く、少なくとも発光層と第1のn型層との間に発光層よりも大きい禁制帯幅を有する第2のp型層を有し、第2のp型層が光ガイド層であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係る発光素子においては、第2のp型層が発光層と第1のn型層との間に形成されることにより、発光層の界面に垂直な方向に正孔の移動が生じ、正孔とイオン化したアクセプタ準位とが空間的に分離され、界面に垂直な方向に圧電効果のために発生する電位勾配が低減される。それにより、電流として注入される電子と正孔との分離が抑制されるので、利得が得られやすくなり、発光効率の低下および動作電流またはしきい値電流の上昇が抑制される。
【0018】
また、第1のn型層が第2のクラッド層を含み、第2のp型層の禁制帯幅が第2のクラッド層よりも小さくてもよい。この場合、第2のp型層の屈折率が第2のクラッド層よりも大きくなるため、第2のp型層が光ガイド層としての機能を有する。
【0019】
発光層を構成する材料の構造はウルツ鉱構造であってもよい。ウルツ鉱構造の結晶においては、歪により圧電効果が発生する。したがって、発光層と第1のp型層との間に第2のn型層を設けるか、あるいは発光層と第1のn型層との間に第2のp型層を設けることにより、圧電効果のために発生した発光層の電位勾配が減少する。
【0020】
発光層の主面はほぼ<0001>方向であってもよい。ウルツ鉱構造の結晶では<0001>軸に関して圧縮または伸張する歪による圧電効果が最も大きくなるので、第2のn型層または第2のp型層を形成することによる電位勾配の減少の効果が顕著に現れる。
【0021】
発光層を構成する材料の構造は閃亜鉛鉱構造であってもよい。閃亜鉛鉱構造の結晶においては、歪により圧電効果が発生する。したがって、発光層と第1のp型層との間に第2のn型層を設けるかまたは発光層と第1のn型層との間に第2のp型層を設けることにより、圧電効果のために発生した発光層の電位勾配が減少する。
【0022】
また、発光層の主面はほぼ<111>方向であってもよい。閃亜鉛鉱構造の結晶では、<111>軸方向に関して圧縮または伸張する歪による圧電効果が最も大きくなるので、第2のn型層または第2のp型層を形成することによる電位勾配の減少の効果が顕著に現れる。
【0023】
圧電効果の発生を伴う歪は、発光層の面内方向に発光層を圧縮する歪を含んでもよい。この場合には、発光層の面内方向に発光を圧縮する歪により圧電効果が発生する。したがって、発光層と第1のp型層との間に第2のn型層を形成するかあるいは発光層と第1のn型層との間に第2のp型層を形成することにより、圧電効果のために発生する電位勾配が低減される。
【0024】
圧電効果の発生を伴う歪は、発光層の面内方向に発光層を伸張する歪を含んでもよい。この場合には、発光層の面内方向に発光層を伸張する歪により圧電効果が発生する。したがって、発光層と第1のp型層との間に第2のn型層を形成するかあるいは発光層と第1のn型層との間に第2のp型層を形成することにより、圧電効果のために発生する電位勾配が低減される。
【0025】
発光層を構成する材料はIII −V族化合物半導体であってもよい。また、III −V族化合物半導体は、ホウ素、ガリウム、アルミニウムおよびインジウムの少なくとも1つを含む窒化物系半導体であってもよい。特に、窒化物系半導体では圧電効果が大きいため、圧電効果により発生する電位勾配が大きくなる。したがって、発光層と第1のp型層との間に第2のn型層を形成するかあるいは発光層と第1のn型層との間に第2のp型層を形成することによる電位勾配の減少の効果が顕著に現れる。
【0026】
発光層を構成する材料はII−VI族化合物半導体であってもよい。この場合にも、発光層と第1のp型層との間に第2のn型層を形成するかあるいは発光層と第1のn型層との間に第2のp型層を形成することにより、圧電効果のために発生する電位勾配を低減することができる。
【0028】
また、量子井戸構造の発光層中にアクセプタ準位およびドナー準位のうち少なくとも一方の準位が量子井戸構造の閉じ込め方向に圧電効果の結果として発生する電位勾配を低減するように不均一に形成されてもよい。
【0029】
この場合、量子井戸構造の発光層中にアクセプタ準位およびドナー準位のうち少なくとも一方の準位が不均一に形成されることにより、量子井戸構造の閉じ込め方向に圧電効果のために発生する電位勾配がさらに低減される。それにより、電流として注入される電子と正孔との分離がさらに抑制されるので、利得が得られやすくなり、発光効率の低下および動作電流またはしきい値電流の上昇がさらに抑制される。
【0030】
発光層は、2つ以上の井戸層と、井戸層を挟む3つ以上の障壁層とにより構成される多重量子井戸構造を有してもよい。また、発光層は、1つの井戸層と、井戸層を挟む2つの障壁層とにより構成される単一量子井戸構造を有してもよい。
【0031】
井戸層内において、圧電効果の結果として発生する電位の高い側に電位の低い側に比べてアクセプタ準位が多く形成されてもよい。
【0032】
この場合、量子井戸構造の閉じ込め方向に正孔の移動が生じ、正孔とイオン化したアクセプタ準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した井戸層の電位勾配が減少する。
【0033】
井戸層内において、圧電効果の結果として発生する電位の低い側に電位の高い側に比べてドナー準位が多く形成されてもよい。
【0034】
この場合、量子井戸構造の閉じ込め方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した井戸層の電位勾配がさらに減少する。
【0035】
障壁層内において、圧電効果の結果として発生する電位の高い側の井戸層の界面と接する部分に電位の低い側の井戸層の界面と接する部分に比べてアクセプタ準位が多く形成されてもよい。
【0036】
この場合、量子井戸構造の閉じ込め方向に正孔の移動が生じ、正孔とイオン化したアクセプタ準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した井戸層の電位勾配がさらに減少する。
【0037】
障壁層内において、圧電効果の結果として発生する電位の低い側の井戸層の界面と接する部分に電位の高い側の井戸層の界面と接する部分に比べてドナー準位が多く形成されてもよい。
【0038】
この場合、量子井戸構造の閉じ込め方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した井戸層の電位勾配がさらに減少する。
【0039】
量子井戸層構造の発光層中にアクセプタ準位およびドナー準位の両方が形成されてもよい。この場合、電子と正孔とが補償され、アクセプタ準位およびドナー準位の形成によるキャリアはほとんど発生しないが、イオン化したアクセプタ準位とイオン化したドナー準位とにより圧電効果のために発生した電位勾配が減少する。
【0040】
アクセプタ準位の濃度とドナー準位の濃度とがほぼ等しくてもよい。この場合には、キャリアが補償されやすいが、電位勾配が減少する効果は大きい。
【0041】
【発明の実施の形態】
(A)第1の実施の形態
第1の実施の形態の発光素子は、(0001)面を主面とするウルツ鉱構造の発光層を有する。この発光層は、発光層の面に垂直な方向(界面に垂直な方向)に歪を有する。このような発光層中には、圧電効果により電位勾配が形成される。
【0042】
ここで、歪みを有する発光層は、1つの量子井戸層が2つの障壁層の間に挟まれた単一量子井戸構造(SQW構造)であってもよく。また2つ以上の井戸層と3つ以上の障壁層とが交互に積層されてなる多重量子井戸構造(MQW構造)であってもよい。SQW構造およびMQW構造のような量子井戸構造を有する発光層においては、井戸層が歪みを有しており、井戸層内に圧電効果により電位勾配が形成される。
【0043】
発光層はp型層とn型層とに挟まれるように配置される。p型層にはp電極が形成されており、p電極からp型層に正孔が注入される。n型層にはn電極が形成されており、n電極からn型層に電子が注入される。
【0044】
III −V族化合物半導体において、発光層が面内方向(界面に平行な方向)に圧縮歪を有し、発光層の界面に垂直な方向に伸張する歪を有する場合、圧電効果により発生した発光層中の電位勾配において、[000-1]方向側の電位が高く、[0001]方向側の電位が低い。このような歪を発光層に有し、[0001]方向側にp型層を有し、[000-1]方向側にn型層を有している発光素子において、発光層における電位は、n型層側の方がp型層側に比べて高い。なお、発光層が量子井戸構造を有する場合において、量子井戸層内における電位は、n型層側の方がp型層側に比べて高い。圧電効果のために発生した電位勾配を減少させるためには、p型層と発光層との間に、発光層に比べて大きな禁制帯幅を有するn型の逆導電型層を形成する。あるいは、n型層と発光層との間に、発光層に比べて大きな禁制帯幅を有するp型の逆導電型層を形成する。このような方法により、発光層が単層構造を有する場合、および量子井戸構造を有する場合のいずれにおいても、同様の効果が得られる。
【0045】
さらに、発光層が量子井戸構造を有する場合においては、量子井戸層にアクセプタ準位またはドナー準位を不均一に形成することで、圧電効果のために発生した発光層の電位勾配をさらに低減することができる。この場合、アクセプタ準位を量子井戸層中の[000-1]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[000-1]方向側の界面と接する部分に多く形成する。あるいは、ドナー準位を量子井戸層中の[0001]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[0001]方向側の界面と接する部分に多く形成する。
【0046】
一方、III −V族化合物半導体において、発光層が面内方向(界面に平行な方向)に伸張する歪を有し、発光層の界面に垂直な方向に圧縮歪を有する場合、圧電効果により発生した発光層中の電位勾配において、[0001]方向側の電位が高く、[000-1]方向側の電位が低い。このような歪を発光層に有し、[0001]方向側にn型層を有し、[000-1]方向側にp型層を有している発光素子において、発光層における電位は、n型層側の方がp型層側に比べて高い。なお、発光層が量子井戸構造を有する場合において、量子井戸層内における電位は、n型層側の方がp型層側に比べて高い。圧電効果のために発生した電位勾配を減少させるためには、p型層と発光層との間に、発光層に比べて大きな禁制帯幅を有するn型の逆導電型層を形成する。あるいは、n型層と発光層との間に、発光層に比べて大きな禁制帯幅を有するp型の逆導電型層を形成する。このような方法により、発光層が単層構造を有する場合、および量子井戸構造を有する場合のいずれにおいても、同様の効果が得られる。
【0047】
さらに、発光層が量子井戸構造を有する場合においては、量子井戸層にアクセプタ準位またはドナー準位を不均一に形成することで、圧電効果のために発生した発光層の電位勾配をさらに低減することができる。この場合、アクセプタ準位を量子井戸層中の[0001]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[0001]方向側の界面と接する部分に多く形成する。あるいは、ドナー準位を量子井戸層中の[000-1]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[000-1]方向側の界面と接する部分に多く形成する。
【0048】
図1は本発明の第1〜第8の実施例における半導体レーザ素子の構成を示す模式的斜視図である。
【0049】
図1において、サファイア基板1の(0001)面上に厚さ15nm程度のAlGaNからなるバッファ層2が形成されている。このバッファ層2上に、厚さ0.5μm程度のアンドープGaN層3、厚さ4μm程度のn−GaNからなるn−コンタクト層4、厚さ0.1μm程度のn−GaInNからなるn−クラック防止層5、厚さ0.45μm程度のn−AlGaNからなるn−クラッド層6、厚さ50nm程度のn−GaNからなるn−クラッド層7、および厚さ50nm程度のGaInNからなる発光層8が順に形成されている。この場合においては、n−クラッド層7が光ガイド層としての機能も兼ね備えている。
【0050】
なお、後述するように、第1の実施例の半導体レーザ素子の発光層8は、単層構造を有する。また、第2〜第8の実施例の半導体レーザ素子の発光層8は、多重量子井戸構造を有する。
【0051】
発光層8上に、厚さ40nm程度のn−GaNからなるn−逆導電型層9、厚さ0.45μm程度のp−AlGaNからなるp−クラッド層10および厚さ50nm程度のp−GaNからなるp−キャップ層11が順に形成されている。
【0052】
p−キャップ層11上には、厚さ0.2μm程度のシリコン窒化物からなる電流狭窄層(電流ブロック層)14が形成されている。電流狭窄層14は、幅2μm程度のストライプ状開口部を有し、このストライプ状開口部が電流通路13となる。
【0053】
電流狭窄層14のストライプ状開口部内およびp−キャップ層11上および電流狭窄層14上には、厚さ3〜5μmのp−GaNからなるp−コンタクト層12が形成されている。アンドープGaN層3からp−コンタクト層12までの各層はウルツ鉱構造を有し、これらの窒化物系半導体の[0001]方向に成長している。
【0054】
p−コンタクト層12からn−コンタクト層4までの一部領域が除去され、n−コンタクト層4の表面が露出している。それにより、幅約10μmのメサ形状が形成されている。p−コンタクト層12上にp電極15が形成され、n−コンタクト層4の露出した表面上にn電極16が形成されている。
【0055】
上記の半導体レーザ素子は、InGaNからなり(0001)面を主面とする発光層8を有するとともに、発光層8の[0001]方向にp−クラッド層10を有し、発光層8の[000-1]方向側にn−クラッド層7を有する。この場合、発光層8の面内方向(界面に平行な方向)に圧縮歪が発生し、発光層8の界面に垂直な方向に伸張する歪が発生する。その結果、発光層8内に圧電効果に伴う電位勾配が形成される。この電位勾配において、n−クラッド層7が形成された[000-1]方向側の電位が高く、p−クラッド層10が形成された[0001]側の電位が低い。
【0056】
以下の第1〜第8の実施例では、発光層8に形成される電位勾配を低減するために、p−クラッド層10と発光層8との間に、発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するn−GaNからなるn−逆導電型層9が形成されている。なお、n−逆導電型層9の厚さは1〜100nm程度であることが好ましく、例えばこの場合においては40nm程度である。また、n−逆導電型層9のドナー準位の濃度は1×1017〜3×1018cm-3程度であることが好ましい。さらに、後述のように、n−逆導電型層9は、p−クラッド層10に比べて屈折率が高いため、光ガイド層としての機能も兼ね備えている。
【0057】
(1)第1の実施例
図2および図3は第1の実施例の半導体レーザ素子におけるn−クラッド層7、発光層8、n−逆導電型層9およびp−クラッド層10のエネルギーバンド図である。なお、実施例1の半導体レーザ素子において、発光層8は単層構造を有する。
【0058】
ここで、厚さ0.5μm程度のアンドープGaN層3および厚さ4μm程度のn−GaNからなるn−コンタクト層4の格子定数に比べて、InGaNからなる発光層8の格子定数が大きいので、発光層8の面内方向(界面に平行な方向)に圧縮歪が発生し、発光層8の界面に垂直な方向に伸張する歪が発生する。
【0059】
図2に示すように、発光層8には圧電効果に伴う電位勾配が形成されているため、発光層8の禁制帯(エネルギーバンド)は勾配を有する。発光層8のエネルギーバンドにおいて、[0001]方向側つまりp−クラッド層10側が、[000-1]方向側つまりn−クラッド層7側に比べて高い。
【0060】
発光層8の[0001]方向側つまりエネルギーバンドのエネルギーの高い側に、ドナー準位が形成されるとともに発光層8に比べて大きな禁制帯幅(エネルギーバンドギャップ)を有するn−GaNからなるn−逆導電型層9が形成されている。このn−逆導電型層9の禁制帯幅は、p−AlGaNからなるp−クラッド層10に比べて小さいので、n−逆導電型層9の屈折率はp−クラッド層10に比べ大きい。したがって、n−逆導電型層9は光ガイド層としての機能も有している。
【0061】
本実施例では、図2に示すように発光層8の[0001]方向側、すなわちエネルギーバンドのエネルギーの高い側に発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するn−逆導電型層9が形成されているので、図3に示すように[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した発光層8の電位勾配が減少し、エネルギーバンドの勾配も減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離が抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇が抑制される。
【0062】
上記の実施例1においては、発光層8が単層構造を有する場合について説明したが、以下の実施例2〜8においては、発光層8が多重量子井戸構造(MQW構造)を有する場合について説明する。
【0063】
図4はMQW構造を有する発光層8(以下、MQW発光層8と呼ぶ)のエネルギーバンド図である。
【0064】
図4に示すようにMQW発光層8は、厚さ4nm程度のGaNからなる障壁層8aと厚さ4nm程度のGaInNからなる量子井戸層8bとが交互に積層されてなる多重量子井戸構造を有する。例えば、GaNからなる障壁層8aの数は5であり、GaInNからなる量子井戸層8bの数は4である。
【0065】
ここで、厚さ0.5μm程度のアンドープGaN層3および厚さ4μm程度のn−GaNからなるn−コンタクト層4の格子定数に比べて、GaInNからなる量子井戸層8bの格子定数が大きいので、量子井戸の面内方向(界面に平行な方向)に圧縮歪が発生し、量子井戸の閉じ込め方向(界面に垂直な方向)に伸張する歪が発生する。その結果、MQW発光層8内の量子井戸層8bに圧電効果に伴う電位勾配が形成され、MQW発光層8内のエネルギーバンドは図4に示す構造となる。
【0066】
図4に示すように、MQW発光層8のエネルギーバンドにおいては、[0001]方向側つまりp−クラッド層10側が、[000-1]方向側つまりn−クラッド層7側に比べて高い。
【0067】
以下の第2〜第8の実施例では、量子井戸層8bに形成される電位勾配を低減するために、MQW発光層8とp−クラッド層10との間にn−GaNからなるn−逆導電型層9が形成されるとともに、MQW発光層8中にp型不純物およびn型不純物の少なくとも一方が不均一に添加される。
【0068】
(2)第2の実施例
図5および図6は第2の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層8のエネルギーバンド図である。
【0069】
図5に示すように、MQW発光層8の[0001]方向側つまりエネルギーバンドの高い側に、MQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有し、ドナー準位が形成されたGaNからなるn−逆導電型層9が形成されている。このn−逆導電型層9の禁制帯幅は、p−AlGaNからなるp−クラッド層10の禁制帯幅に比べて小さいので、n−逆導電型層9の屈折率はp−クラッド層10の屈折率に比べて大きくなる。したがって、n−逆導電型層9は光ガイド層としての機能も有している。
【0070】
なお、MQW発光層に比べて大きな禁制帯幅を有する逆導電型層は、MQWの電子に対する基底状態のエネルギーより逆導電型層の伝導帯のバンド下端のエネルギーが高く、かつMQWの正孔に対する基底状態のエネルギーより、逆導電型層の価電子帯のバンド上端のエネルギーが低い半導体から構成される。
【0071】
さらに、p型不純物として例えばMgが量子井戸層8b中の[000-1]方向側つまりn−クラッド層7側に多くドープされている。具体的には、量子井戸層8b中のn−クラッド層7側の厚さ約2nmの部分にのみMgがドープされ、量子井戸層8b中のp−クラッド層9側の厚さ約2nmの部分にMgはドープされていない。
【0072】
Mgのドープ量としては、1×1017〜1×1021cm-3が好ましい。p型不純物の不均一なドーピングの方法としては、これ以外の方法を用いてもよい。例えば、量子井戸層8b中のn−クラッド層7側の界面から深さ約1nmの部分に2×1010〜2×1014cm-2程度の濃度にp型不純物をデルタドーピングしてもよい。p型不純物として、Mg以外にBe、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Hg等を用いてもよい。
【0073】
本実施例では、図5に示すように、量子井戸層8bの[0001]方向側つまりエネルギーバンドの高い側にMQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するn−逆導電型層9が形成されているので、図6に示すように、[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配が減少し、エネルギーバンドの勾配も減少する。
【0074】
さらに、本実施例では、図5に示すようにp型不純物として例えばMgが量子井戸層8b中の[000-1]方向側つまりn−クラッド層7側に多くドープされているので、図6に示すように[0001]方向に正孔の移動が生じ、正孔とイオン化したp型不純物とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配がさらに減少し、エネルギーバンドの勾配もさらに減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離がさらに抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇がさらに抑制される。
【0075】
(3)第3の実施例
図7および図8は第3の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層8のエネルギーバンド図である。
【0076】
図7に示すように、MQW発光層8の[0001]方向側つまりエネルギーバンドの高い側に、MQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有し、ドナー準位が形成されたGaNからなるn−逆導電型層9が形成されている。このn−逆導電型層9の禁制帯幅は、p−AlGaNからなるp−クラッド層10の禁制帯幅に比べて小さいので、n−逆導電型層9の屈折率はp−クラッド層10の屈折率に比べて大きくなる。したがって、n−逆導電型層9は光ガイド層としての機能も有している。
【0077】
なお、MQW発光層に比べて大きな禁制帯幅を有する逆導電型層は、MQWの電子に対する基底状態のエネルギーより逆導電型層の伝導帯のバンド下端のエネルギーが高く、かつMQWの正孔に対する基底状態のエネルギーより、逆導電型層の価電子帯のバンド上端のエネルギーが低い半導体から構成される。
【0078】
さらに、n型不純物として例えばSiが量子井戸層8b中の[0001]方向側つまりp−クラッド層10側に多くドープされている。具体的には、量子井戸層8b中のp−クラッド層10側の厚さ約2nmの部分にのみSiがドープされ、量子井戸層8b中のn−クラッド層7側の厚さ約2nmの部分にSiはドープされていない。
【0079】
Siのドープ量としては、1×1017〜1×1021cm-3が好ましい。n型不純物の不均一なドーピングの方法としては、これ以外の方法を用いてもよい。例えば、量子井戸層8b中のp−クラッド層10側の界面から深さ約1nmの部分に2×1010〜2×1014cm-2程度の濃度にn型不純物をデルタドーピングしてもよい。n型不純物として、Si以外にGe、Pb、S、Se、Te等を用いてもよい。
【0080】
本実施例では、図7に示すように、量子井戸層8bの[0001]方向側つまりエネルギーバンドの高い側にMQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するn−逆導電型層9が形成されているので、図8に示すように、[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配が減少し、エネルギーバンドの勾配も減少する。
【0081】
さらに、本実施例では、図7に示すようにn型不純物として例えばSiが量子井戸層8b中の[0001]方向側つまりp−クラッド層10側に多くドープされているので、図8に示すように[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したn型不純物とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配がさらに減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離がさらに抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流のさらに上昇が抑制される。
【0082】
(4)第4の実施例
図9および図10は第4の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層8のエネルギーバンド図である。
【0083】
図9に示すように、MQW発光層8の[0001]方向側つまりエネルギーバンドの高い側に、MQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有し、ドナー準位が形成されたGaNからなるn−逆導電型層9が形成されている。このn−逆導電型層9の禁制帯幅は、p−AlGaNからなるp−クラッド層10の禁制帯幅に比べて小さいので、n−逆導電型層9の屈折率はp−クラッド層10の屈折率に比べて大きくなる。したがって、n−逆導電型層9は光ガイド層としての機能も有している。
【0084】
なお、MQW発光層に比べて大きな禁制帯幅を有する逆導電型層は、MQWの電子に対する基底状態のエネルギーより逆導電型層の伝導帯のバンド下端のエネルギーが高く、かつMQWの正孔に対する基底状態のエネルギーより、逆導電型層の価電子帯のバンド上端のエネルギーが低い半導体から構成される。
【0085】
さらに、p型不純物として例えばMgが障壁層8a中で量子井戸層8bの[000-1]方向側つまりn−クラッド層7側の界面と接する部分に多くドープされている。具体的には、障壁層8a中で量子井戸層8bのn−クラッド層7側の界面と接する厚さ約2nmの部分にのみMgがドープされ、障壁層8a中で量子井戸層8bのp−クラッド層10側の界面と接する厚さ約2nmの部分にMgはドープされていない。
【0086】
Mgのドープ量としては、1×1017〜1×1021cm-3が好ましい。p型不純物の不均一なドーピングの方法としては、これ以外の方法を用いてもよい。例えば、障壁層8a中で量子井戸層8bのn−クラッド層7側の界面から深さ約1nmの部分に2×1010〜2×1014cm-2程度の濃度にp型不純物をデルタドーピングしてもよい。p型不純物として、Mg以外にBe、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Hg等を用いてもよい。
【0087】
本実施例では、図9に示すように、量子井戸層8bの[0001]方向側つまりエネルギーバンドの高い側にMQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するn−逆導電型層9が形成されているので、図10に示すように、[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配が減少し、エネルギーバンドの勾配も減少する。
【0088】
さらに、本実施例では、図9に示すようにp型不純物として例えばMgが障壁層8a中で量子井戸層8bの[000-1]方向側つまりn−クラッド層7側の界面と接する部分に多くドープされているので、図10に示すように[0001]方向に正孔の移動が生じ、正孔とイオン化したp型不純物とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配がさらに減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離がさらに抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇がさらに抑制される。
【0089】
(5)第5の実施例
図11および図12は第5の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層8のエネルギーバンド図である。
【0090】
図11に示すように、MQW発光層8の[0001]方向側つまりエネルギーバンドの高い側に、MQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有し、ドナー準位が形成されたGaNからなるn−逆導電型層9が形成されている。このn−逆導電型層9の禁制帯幅は、p−AlGaNからなるp−クラッド層10の禁制帯幅に比べて小さいので、n−逆導電型層9の屈折率はp−クラッド層10の屈折率に比べて大きくなる。したがって、n−逆導電型層9は光ガイド層としての機能も有している。
【0091】
なお、MQW発光層に比べて大きな禁制帯幅を有する逆導電型層は、MQWの電子に対する基底状態のエネルギーより逆導電型層の伝導帯のバンド下端のエネルギーが高く、かつMQWの正孔に対する基底状態のエネルギーより、逆導電型層の価電子帯のバンド上端のエネルギーが低い半導体から構成される。
【0092】
さらに、n型不純物として例えばSiが障壁層8a中で量子井戸層8bの[0001]方向側つまりp−クラッド層10側の界面と接する部分に多くドープされている。具体的には、障壁層8a中で量子井戸層8bのp−クラッド層10側の界面と接する厚さ約2nmの部分にのみSiがドープされ、障壁層8a中で量子井戸層8bのn−クラッド層7側の界面と接する厚さ約2nmの部分にSiはドープされていない。
【0093】
Siのドープ量としては、1×1017〜1×1021cm-3が好ましい。n型不純物の不均一なドーピングの方法としては、これ以外の方法を用いてもよい。例えば、障壁層8a中で量子井戸層8bのp−クラッド層10側の界面から深さ約1nmの部分に2×1010〜2×1014cm-2程度の濃度にn型不純物をデルタドーピングしてもよい。n型不純物として、Si以外にGe、Pb、S、Se、Te等を用いてもよい。
【0094】
本実施例では、図11に示すように、量子井戸層8bの[0001]方向側つまりエネルギーバンドの高い側にMQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するn−逆導電型層9が形成されているので、図12に示すように、[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配が減少し、エネルギーバンドの勾配も減少する。
【0095】
さらに、本実施例では、図11に示すようにn型不純物として例えばSiが障壁層8a中で量子井戸層8bの[0001]方向側つまりp−クラッド層10側の界面と接する部分に多くドープされているので、図12に示すように[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したn型不純物とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配がさらに減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離がさらに抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇がさらに抑制される。
【0096】
上記第2〜第5の実施例におけるドーピング方法は、それぞれ単独で用いても効果が得られるが、2つ以上の実施例のドーピング方法を組み合わせてもよい。例えば、第2および第3の実施例を組み合わせてもよく、第2、第3および第4の実施例を組み合わせてもよく、第2、第3、第4および第5の実施例を組み合わせてもよい。これらの場合について以下に説明する。
【0097】
(6)第6の実施例
図13および図14は第6の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層8のエネルギーバンド図である。
【0098】
第6の実施例は、図13に示すように、第2の実施例と第3の実施例とを組み合わせたものである。本実施例では、MQW発光層8の[0001]方向側つまりエネルギーバンドの高い側に、MQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有し、ドナー準位が形成されたGaNからなるn−逆導電型層9が形成されている。
【0099】
さらに、本実施例では、p型不純物であるMgが量子井戸層8b中の[000-1]方向側つまりn−クラッド層7側に多くドープされるとともに、n型不純物であるSiが量子井戸層8b中の[0001]方向側つまりp−クラッド層10側に多くドープされている。なお、本実施例では、p型不純物であるMgおよびn型不純物であるSiのドーピング濃度がほぼ等しい場合について示している。
【0100】
本実施例では、図13に示すように、量子井戸層8bの[0001]方向側つまりエネルギーバンドのエネルギーの高い側にMQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するn−逆導電型層9が形成されているので、図14に示すように、[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配が減少し、エネルギーバンドの勾配も減少する。
【0101】
さらに、本実施例では、量子井戸層8bにおけるp型不純物およびn型不純物のドーピングにより、図14に示すように、電子と正孔とが補償され、ドーピングによるキャリアはほとんど発生しないが、イオン化したp型不純物とイオン化したn型不純物とにより、圧電効果のために発生した電位勾配がさらに減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離がさらに抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇がさらに抑制される。
【0102】
したがって、特に、MQW発光層8中にp型不純物およびn型不純物の両方を添加する場合に、それらのp型不純物およびn型不純物を不均一に添加することにより、キャリアが補償されても、電位勾配が減少する効果は大きい。また、MQW発光層8中に添加されたp型不純物の濃度とn型不純物の濃度とがほぼ等しい場合には、さらにキャリアが補償されやすいが、電位勾配が減少する効果は大きい。
【0103】
なお、例えば第2および第5の実施例を組み合わせた場合、第3および第4の実施例を組み合わせた場合においても、第6の実施例と同等の効果が生じる。
【0104】
(7)第7の実施例
図15および図16は第7の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層8のエネルギーバンド図である。
【0105】
第7の実施例は、図15に示すように、第4の実施例と第5の実施例とを組み合わせたものである。本実施例では、MQW発光層8の[0001]方向側つまりエネルギーバンドのエネルギーの高い側に、MQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有し、ドナー準位が形成されたGaNからなるn−逆導電型層9が形成されている。
【0106】
さらに、本実施例では、p型不純物であるMgが障壁層8a中で量子井戸層8bの[000-1]方向側つまりn−クラッド層7側の界面と接する部分に多くドープされるとともに、n型不純物であるSiが障壁層8a中で量子井戸層8bの[0001]方向側つまりp−クラッド層10側の界面と接する側に多くドープされている。なお、本実施例では、p型不純物であるMgおよびn型不純物であるSiのドーピング濃度がほぼ等しい場合について示している。
【0107】
本実施例では、図15に示すように、量子井戸層8bの[0001]方向側つまりエネルギーバンドのエネルギーの高い側にMQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するn−逆導電型層9が形成されているので、図16に示すように、[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配が減少し、エネルギーバンドの勾配も減少する。
【0108】
さらに、本実施例では、障壁層中におけるp型不純物およびn型不純物のドーピングにより、図16に示すように、電子と正孔とが補償され、ドーピングによるキャリアはほとんど発生しないが、イオン化したp型不純物とイオン化したn型不純物とにより、圧電効果のために発生した電位勾配がさらに減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離がさらに抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇がさらに抑制される。
【0109】
第4の実施例、第5の実施例および第7の実施例では、量子井戸層8b中にp型不純物およびn型不純物がドープされていない。したがって、量子井戸層8b中にアクセプタ準位、ドナー準位が存在しないので、アクセプタ準位、ドナー準位または発光センターによる発光を低減できるという効果も得られる。それにより、本実施例のMQW発光層8を発光ダイオードに適用した場合には、発光スペクトル幅を狭くすることができる。その結果、色純度を向上させることが可能となる。
【0110】
(8)第8の実施例
図17および図18は第8の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層8のエネルギーバンド図である。
【0111】
第8の実施例では、図17に示すように、第2の実施例と同様、MQW発光層8の[0001]方向側つまりエネルギーバンドのエネルギーの高い側に、MQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有し、ドナー準位が形成されたGaNからなるn−逆導電型層9が形成されている。
【0112】
さらに、p型不純物として例えばMgが不均一にドープされた第2の実施例の量子井戸層8b中に、n型不純物として例えばSiが均一にドープされている。Siのドーピング濃度は、5×1016〜5×1020cm-3が好ましい。
【0113】
本実施例では、図17に示すように、量子井戸層8bの[0001]方向側つまりエネルギーバンドのエネルギーの高い側にMQW発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するn−逆導電型層9が形成されているので、図18に示すように、[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した量子井戸層8bの電位勾配が減少し、エネルギーバンドの勾配も減少する。
【0114】
さらに、本実施例では、図17に示すようにp型不純物として例えばMgが量子井戸層8b中の[000-1]方向側つまりn−クラッド層7側に多くドープされ、n型不純物として例えばSiが量子井戸層8b中に均一にドープされているので、図18に示すように電子および正孔は補償され、ドーピングによるキャリアはほとんど発生しないが、イオン化したp型不純物およびn型不純物により圧電効果のために発生した電位勾配がさらに減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離がさらに抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇がさらに抑制される。
【0115】
なお、例えば第4の実施例の量子井戸層8b中にn型不純物を均一にドープした場合、第3または第5の実施例の量子井戸層8b中にp型不純物を均一にドープした場合においても、第8の実施例と同等の効果が生じる。
【0116】
○図1の半導体レーザ素子の製造方法
図19〜図23は図1の半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【0117】
図1の半導体レーザ素子の各窒化物系半導体層は、MOVPE法によりサファイア基板1上に形成される。原料ガスとしては、例えばトリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、NH3 、SiH4 、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2 Mg)を用いる。
【0118】
まず、図19に示すように、基板温度を600℃に保ち、サファイア基板1上に厚さ15nm程度のバッファ層2を形成する。次に、基板温度を1150℃に保ち、厚さ0.5μm程度のアンドープGaN層3、厚さ4μm程度のSiドープGaNからなるn−コンタクト層4を形成する。さらに、基板温度を880℃に保ち、厚さ0.1μm程度のSiドープGa0.95In0.05Nからなるn−クラック防止層5を形成する。次に、基板温度を1150℃に保ち、厚さ0.45μm程度のSiドープAl0.15Ga0.85Nからなるn−クラッド層6、および厚さ50nm程度のSiドープGaNからなるn−クラッド層7を形成する。
【0119】
ここで、第1の実施例においては、基板温度を880℃に保ち、厚さ50nmのInGaNからなる単層構造を有する発光層8をn−クラッド層7上に形成する。
【0120】
一方、第2〜第8の実施例においては、基板温度を880℃に保ち、厚さ4nm程度のアンドープGaNからなる5層の障壁層8aと厚さ4nm程度のアンドープのGa0.85In0.15nNからなる4層の量子井戸層8bを交互に積層し、GaInNからなり、多重量子井戸構造(MQW構造)を有する発光層8を形成する。この際、第2〜第8の実施例に従って、MQW構造を有する発光層8中にp型不純物またはn型不純物をドープする。
【0121】
上記のようにして単層構造を有する発光層8またはMQW構造を有する発光層8を形成した後、基板温度を880℃に保ち、厚さ40nm程度のn−GaNからなるn−逆導電型層9を形成し、その後基板温度を1150℃に保ち、厚さ0.45μm程度のMgドープAlGaNからなるp−クラッド層10、厚さ50nm程度のMgドープGaNからなるp−キャップ層11を形成する。上記のバッファ層2からp−キャップ層11までの各層は、大気圧のMOVPE法により形成する。なお、n−逆導電型層9として基板温度を1150℃で例えばSiがドープされたGaNを形成しもてもよい。
【0122】
その後、図20に示すように、p−キャップ層11上の全面に、例えばECR(電子サイクロトロン共鳴)プラズマCVD法(化学気相蒸着法)により、厚さ0.2μm程度のSi3 4 等のシリコン窒化物からなる電流狭窄層14を形成する。次に、フォトリソグラフィおよびBHF(緩衝フッ酸)によるウェットエッチングで、幅2μm程度のストライプ状の領域のシリコン窒化物を除去し、p−キャップ層11を露出させる。それにより、ストライプ状の電流通路13が形成される。
【0123】
次に、図21に示すように、例えば76Torrの減圧MOVPE法により、n−電流狭窄層14上およびストライプ状開口部内のp−キャップ層11上に厚さ3〜5μmのMgドープGaNからなるp−コンタクト層12を形成する。この際、p−キャップ層11の露出した部分に選択的にp−GaNが成長するように、成長条件を適切に調整する。例えば、基板温度を約100℃上昇させ、NH3 の流量を約3倍に増加させる。
【0124】
このような条件下で成長を行うと、まずp−キャップ層11の露出した部分にp−GaNが成長し、電流通路13にあたる部分が形成される。一方、電流狭窄層14上にはp−GaNは結晶成長しない。引き続き結晶成長を継続すると、p−GaNが電流通路13上に成長するとともに、電流通路13上に成長したp−GaNの側面から横方向に結晶成長が開始し、電流狭窄層14上にp−GaNからなるp−コンタクト層12が形成される。例えば、電流通路13にあたる部分を中心として幅約8μmでp−コンタクト層12が形成される。
【0125】
この結果、p−キャップ層11とp−コンタクト層12とは幅2μm程度のストライプ状の電流通路13で接続され、p−キャップ層11とp−コンタクト層12との間には、電流通路13の部分を除いて、厚さ0.2μm程度のSi3 4 からなる電流狭窄層14が形成される。
【0126】
次に、図22に示すように、メタルマスクおよびEB(電子ビーム)蒸着法を用いて、p−コンタクト層12を含む領域に、例えば幅10μm程度のストライプ形状で厚さ3〜5μmNi膜を蒸着する。このNi膜をマスクとして用い、例えばCF4 をエッチングガスとして用い、反応性イオンエッチング(RIE)法により、n−コンタクト層4が露出するまで、p−コンタクト層12からn−クラック防止層5までをメサ状にエッチングする。その後、マスクとして用いたNi膜を塩酸等を用いて除去する。
【0127】
さらに、図23に示すように、Si3 4 等の絶縁膜17をECRプラズマCVD法、フォトリソグラフィおよびエッチングによりp−コンタクト層12からn−クラック防止層5までの側面および電極形成領域を除いたn−コンタクト層4の上面に形成する。そして、n−コンタクト層4の露出した表面上に、例えばAu/Tiからなるn電極16を形成し、p−コンタクト層12上に、Au/Pdからなるp電極15を形成する。
【0128】
最後に、例えばへき開により、ストライプ状の電流通路13に沿った方向に共振器長300μmの共振器構造を形成する。それにより、図1の構造を有する半導体レーザ素子が作製される。
【0129】
なお、半導体レーザ素子の共振器面にSi3 4 、SiO2 、Al2 3 、TiO2 等を積層した誘電体多層膜等の端面高反射膜や低反射膜を形成してもよい。
【0130】
(9)第9の実施例
第9の実施例の半導体レーザ素子は、図1の半導体レーザ素子と同じ構造を有し、以下に示すように窒化物系半導体層の結晶成長方法が異なる。
【0131】
図1の半導体レーザ素子の構造において、サファイア基板1の(0001)面上に、MOVPE法により、少なくともバッファ層2を低温でかつアンドープGaN層3を高温で結晶成長させた後、他の層4〜12,14を例えばMBE法やHVPE法(ハライド気相成長法)等のMOVPE法以外の結晶成長方法で結晶成長させる。なお、本実施例における発光層8は、上記の第1〜第8の実施例と同様、単層構造またはMWQ構造を有する。
【0132】
本実施例において、アンドープGaN層3〜p−コンタクト層12までの各層はウルツ鉱構造であり、窒化物系半導体の[0001]方向に成長している。したがって、第1〜第8の実施例と同じ効果が得られる。
【0133】
このように、サファイア基板1の(0001)面上に、MOVPE法により低温でバッファ層2を成長させた後に、引き続いて高温で窒化物系半導体層を結晶成長させると、窒化物系半導体層は[0001]方向に成長し、その後、結晶成長方法を変えても結晶成長の方位は変化せず、[0001]方向に成長し続ける。
【0134】
上記の第1〜第9の実施例のように、n−逆導電型層9が光ガイド層としての機能も有する場合においては、発光層8とn−逆導電型層9との間に、n−逆導電型層9に比べて大きな禁制帯幅を有する層を形成してもよい。この場合について以下で説明する。
【0135】
(10)第10の実施例
図24は本発明の第10の実施例における半導体レーザ素子の構成を示す模式的斜視図である。
【0136】
第10の実施例の半導体レーザ素子は、発光層8とn−逆導電型層9との間に、n−逆導電型層9に比べて大きなバンドギャップを有するAlGaNからなるクラッド層18が形成された点を除いて、図1の半導体レーザ素子と同じ構造を有する。なお、本実施例の半導体レーザ素子は、第1の実施例の半導体レーザ素子と同様、厚さ50nmのInGaNからなる単層構造を有する発光層8を有する。
【0137】
例えば、クラッド層18としては、厚さ1〜100nmのAlx Ga1-x Nを用いる。この場合、0≦X≦0.1であることが好ましい。なお、クラッド層18の導電型は、絶縁性であってもよく、n型またはp型であってもよい。なお、p型のクラッド層18を形成する場合は、クラッド層18に形成さたアクセプタ準位の濃度を、n−逆導電型層9に形成されたドナー準位の濃度より低くする必要がある。
【0138】
図25および図26は、図24の半導体レーザ素子におけるn−クラッド層7、発光層8、クラッド層18、n−逆導電型層9およびp−クラッド層10のエネルギーバンド図である。
【0139】
図25に示すように、実施例1と同様、発光層8の[0001]方向側つまりエネルギーバンドのエネルギーの高い側に、発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有し、ドナー準位が形成されたGaNからなるn−逆導電型層9が形成されている。このn−逆導電型層9の禁制帯幅は、p−AlGaNからなるp−クラッド層10の禁制帯幅に比べて小さいので、n−逆導電型層9の屈折率はp−クラッド層10の屈折率に比べて大きくなる。したがって、n−逆導電型層9は光ガイド層としての機能も有している。
【0140】
さらに、本実施例においては、上記のn−逆導電型層9と発光層との間に、AlGaNからなるクラッド層18が形成されている。このクラッド層18は、n−逆導電型層9に比べて大きな禁制帯幅を有する。したがって、このクラッド層18により、発光層8から光ガイド層(n−逆導電型層9)を分離した構造が可能となる。
【0141】
本実施例では、第1の実施例と同様、図25に示すように発光層8の[0001]方向側すなわちエネルギーバンドのエネルギーの高い側に発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するn−逆導電型層9が形成されているので、図26に示すように[000-1]方向に電子の移動が生じ、電子とイオン化したドナー準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した発光層8の電位勾配が減少し、エネルギーバンドの勾配も減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離が抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇が抑制される。
【0142】
なお、本実施例においては、発光層8が単層構造を有する場合について説明したが、第2〜第8の実施例のように発光層8がMQW構造を有する場合においても、発光層8とn−逆導電型層9との間にn−逆導電型層9に比べて大きな禁制帯幅を有するクラッド層を形成することができる。この場合においても、第2〜第9の実施例と同じ効果が得られる。
【0143】
上記の第1〜第10の実施例においては、n−逆導電型層9がp−クラッド層10に比べて小さな禁制帯幅を有する場合について説明したが、n−逆導電型層9の禁制帯幅はp−クラッド層10の禁制帯幅と同じであってもよい。また、n−逆導電型層9の禁制帯幅はp−クラッド層10の禁制帯幅に比べて大きくてもよい。なお、これらの場合においては、n−逆導電型層9は光ガイド層としての機能を有さない。
【0144】
上記の第1〜第10の実施例においては、発光層8に形成される電位勾配を低減するために、発光層8とp型の半導体層との間にn型の逆導電型層を形成する場合について説明したが、発光層8とn型の半導体層との間に発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するp型の逆導電型層を形成してもよい。この場合においても発光層8に形成される電位勾配を低減することが可能となる。この場合について以下に説明する。
【0145】
(11)第11の実施例
図27は本発明の第11の実施例における半導体レーザ素子の構成を示す模式的斜視図である。
【0146】
第11の実施例の半導体レーザ素子は、以下の点を除いて、第1〜第8の実施例における図1の半導体レーザ素子と同様の構造を有する。なお、本実施例の半導体レーザ素子は、第1の実施例の半導体レーザ素子と同様、厚さ50nmのInGaNからなる単層構造を有する発光層8を備える。
【0147】
図27に示すように、第11の実施例における半導体レーザ素子においては、n−AlGaNからなるn−クラッド層6上に、アクセプタ準位が形成されたGaNからなるp−逆導電型層19が形成されている。p−逆導電型層19の厚さは1〜100nm程度であることが好ましく、本実施例においては40nm程度である。また、p−逆導電型層19に形成されたアクセプタ準位の濃度は1×1017〜3×1018cm-3程度が好ましく、例えばMgを3×1018cm-3程度ドープする。このp−逆導電型層19上に発光層8が形成され、さらに厚さ40nm程度のp−GaNからなるp−クラッド層10bが形成されている。このp−クラッド層10b上にp−AlGaNからなるp−クラッド層10が形成されている。
【0148】
図28および図29は第11の実施例の半導体レーザ素子におけるn−クラッド層6、p−逆導電型層19、発光層8およびp−クラッド層10bのエネルギーバンド図である。
【0149】
図28に示すように、発光層8の[000-1]方向側、すなわちエネルギーバンドのエネルギーの低い側に、発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するp−逆導電型層19が形成されている。このp−逆導電型層19は、n−クラッド層6に比べて禁制帯幅が小さい。このため、p−逆導電型層19はn−クラッド層6に比べて屈折率が大きくなる。したがって、p−逆導電型層19は光ガイド層の機能も合わせて有する。
【0150】
本実施例では、図28に示すように発光層8の[000-1]方向側つまりエネルギーバンドのエネルギーの低い側に発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するp−逆導電型層19が形成されているので、図29に示すように、[0001]方向に正孔の移動が生じ、正孔とイオン化したアクセプタ準位とが空間的に分離する。それにより、圧電効果のために発生した発光層8の電位勾配が減少し、エネルギーバンドの勾配も減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離が抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇が抑制される。
【0151】
本実施例においては、発光層8が単層構造を有する場合について説明したが、発光層8が多重量子井戸構造(MQW構造)を有してもよい。さらに、MQW構造を有する発光層8中にp型不純物およびn型不純物の少なくとも一方が不均一にドーピングされてもよい。この場合においては、発光層8の電位勾配をさらに低減することができる。
【0152】
また、本実施例において、n−クラッド層6とp−逆導電型層19との間に、AlGaNからなりp−逆導電型層19に比べて大きな禁制帯幅を有するクラッド層を形成してもよい。このクラッド層により、光ガイド層としての機能を有するp−逆導電型層19を発光層8から分離した構造が可能となる。このようなp−逆導電型層19に比べて大きな禁制帯幅を有するクラッド層としては、例えば厚さ1〜100nmのAlX Ga1-x Nを用いる。この場合、0≦X≦0.1であることが好ましい。なお、このようなクラッド層の導電型は、絶縁性であってもよく、n型またはp型であってもよい。なお、n型のクラッド層を形成する場合には、このクラッド層に形成されたドナー準位の濃度を、p−逆導電型層19に形成されたアクセプタ準位の濃度より低くする必要がある。
【0153】
さらに、本実施例においては、p−逆導電型層19がn−クラッド層6に比べて小さな禁制帯幅を有する場合について説明したが、p−逆導電型層19の禁制帯幅はn−クラッド層6の禁制帯幅と同じであってもよい。また、p−逆導電型層19の幅はn−クラッド層6の禁制帯幅に比べて大きくてもよい。なお、これらの場合においては、p−逆導電型層19が光ガイド層としての機能を有さない。
【0154】
上記の第1〜第11の実施例においては半導体レーザ素子がn型の逆導電型層またはp型の逆導電型層を有する場合について説明したが、n型の逆導電型層とp型の逆導電型層とを同時に形成してもよい。例えば、第1の実施例と第11の実施例とを組み合わせてもよい。この場合においては、発光効率の低下を抑制する効果がより大きくなる。
【0155】
上記の第1〜第11の実施例においては、n−逆導電型層9およびp−逆導電型層19がGaNから構成される場合について説明したが、n型の逆導電型層およびp型の逆導電型層の構成はこれに限定されるものではない。n型の逆導電型層およびp型の逆導電型層は、発光層8に比べて大きな禁制帯幅を有するInGaN、AlGaInN、AlGaN等から構成されてもよい。このような構成を有するn型の逆導電型層およびp型の逆導電型層を形成する場合においても、n型の逆導電型層およびp型の逆導電型層の厚さは1〜100nm程度であり、アクセプタ準位あるいはドナー準位の濃度は1×1017〜3×1018cm-3程度であることが好ましい。
【0156】
例えば、第1〜第10の実施例において、n型の逆導電型層として、発光層8より禁制帯幅が大きくかつp−AlGaNからなるp−クラッド層10と禁制帯幅が同じかまたはp−クラッド層10に比べて禁制帯幅が大きなn−InGaN層、n−AlGaInN層またはn−AlGaN層を形成してもよい。
【0157】
あるいは、n型の逆導電型層として、発光層8より禁制帯幅が大きくかつp−AlGaNからなるp−クラッド層10に比べて禁制帯幅が小さなn−InGaN層、n−AlGaInN層またはn−AlGaN層を形成してもよい。この場合、n型の逆導電型層の屈折率がp−クラッド層10の屈折率に比べて大きくなるので、n型の逆導電型層は光ガイド層としての機能も備える。
【0158】
一方、第11の実施例において、p型の逆導電型層として、発光層8より禁制帯幅が大きくかつn−AlGaNからなるn−クラッド層6と禁制帯幅が同じかまたはn−クラッド層6に比べて禁制帯幅が大きなp−InGaN層、p−AlGaInN層またはp−AlGaN層を形成してもよい。
【0159】
あるいは、p型の逆導電型層として、発光層8より禁制帯幅が大きくかつn−AlGaNからなるn−クラッド層6に比べて禁制帯幅が小さなp−InGaN層、p−AlGaInN層またはp−AlGaN層を形成してもよい。この場合、p型の逆導電型層の屈折率がn−クラッド層6の屈折率に比べて大きくなるので、p型の逆導電型層は光ガイド層としての機能を備える。
【0160】
上記第1〜第11の実施例では、基板としてサファイア基板1を用いているが、窒化物系半導体層がウルツ鉱構造であれば、スピネル、SiC、Si、GaAs、GaP、InP、GaN等の基板を用いてもよい。
【0161】
また、上記第1〜第11の実施例では、面内方向に圧縮歪を有するとともに界面に垂直な方向に伸張する歪を有するウルツ鉱構造の発光層8について説明したが、面内方向に伸張する歪を有するとともに界面に垂直な方向に圧縮歪を有するウルツ鉱構造の発光層8を有し、[0001]方向側にn型層を有し、[000-1]方向側にp型層を有している発光素子の場合、n型の逆導電型層またはp型の逆導電型層を形成する位置を発光層の中心における(0001)面に関して第1〜第11の実施例と反対にすればよい。さらに、MQW構造を有する発光層にn型不純物およびp型不純物の少なくとも一方を不均一に添加する場合においては、p型不純物またはn型不純物のドーピングの分布位置を量子井戸層の中心における(0001)面に関して第2〜第8の実施例と反対にすればよい。
【0162】
さらに、ウルツ鉱型のZnSeを代表とするII−VI族化合物半導体を始めとするウルツ鉱構造または六方晶構造を有する半導体であれば同じ効果が得られる。ただし、II−VI族化合物半導体およびCuClを代表とするI−VII 族化合物半導体の場合には、電位勾配が逆になる。
【0163】
加えて、発光層における界面に垂直な方向としては、歪により電位勾配の発生する方向であれば、発光層の面方位は(0001)面に限られるものではない。wurtzite構造の結晶の対称性から、歪発光層の面方位が[0001]軸を面内に含む面方位以外であれば、いかなる面方位でも、歪により電位勾配が発光層に垂直な方向に発生することが示される。すなわち、歪発光層の面方位が一般式(HKL0)面で表される面方位以外であれば、いかなる面方位でも、圧電効果が発生する。ここで、H、KおよびLは、H+K+L=0を満足し、かつH=K=L=0を除く任意の数である。上記の(HKL0)面は、例えば(1-100)面および(11-20)面である。特に、(0001)面を主面とする歪発光層において、界面に垂直な方向に電位勾配を発生させる圧電効果が最も大きい。ただし、材料によっては圧電係数の値により、偶然圧電効果が発生しない特定の面方位がある。なお、歪により電位勾配の発生する発光層の面方位については後述する。
【0164】
(B)第2の実施の形態
第2の実施の形態の発光素子は、(111)面を主面とする閃亜鉛鉱構造の発光層を有する。この発光層は、発光層の面に垂直な方向(界面に垂直な方向)に歪を有する。このような発光層中には、圧電効果により電位勾配が形成される。
【0165】
ここで、歪を有する発光層は、単層構造であってもよい。あるいは、1つの量子井戸層が2つの障壁層の間に挟まれた単一量子井戸構造(SQW構造)であってもよく、また2つ以上の井戸層と3つ以上の障壁層とが交互に積層されてなる多重量子井戸構造(MQW構造)であってもよい。SQW構造およびMQW構造のような量子井戸構造を有する発光層においては、井戸層が歪を有しており、井戸層内に圧電効果により電位勾配が形成される。
【0166】
発光層はp型層とn型層とに挟まれるように配置される。p型層にはp電極が形成されており、p電極からp型層に正孔が注入される。n型層にはn電極が形成されており、n電極からn型層に電子が注入される。
【0167】
III −V族化合物半導体において、発光層の面内方向(界面に平行な方向)に伸張する歪を有し、発光層の界面に垂直な方向に圧縮歪を有する場合、圧電効果により発生した発光層中の電位勾配において、[111]方向側の電位が高く、[-1-1-1]側の電位が低い。このような歪を発光層に有し、[-1-1-1]方向側にp型層を有し、[111]方向側にn型層を有している発光素子において、発光層における電位はn型層側の方がp型層側に比べて低い。なお、発光層は量子井戸構造を有する場合においては、量子井戸層内における電位がn型層側の方がp型層側に比べて低い。圧電効果のために発生した電位勾配を減少させるためには、p型層と発光層との間に、発光層に比べて大きな禁制帯幅を有するn型の逆導電型層を形成する。あるいは、n型層と発光層との間に、発光層に比べて禁制帯幅を有するp型の逆導電型層を形成する。このような方法により、発光層が単層構造を有する場合および量子井戸構造を有する場合のいずれにおいても同様の効果が得られる。
【0168】
さらに、発光層が量子井戸構造を有する場合においては、量子井戸層にアクセプタ準位あるいはドナー準位を不均一に形成することで、圧電効果のために発生した発光層の電位勾配をさらに低減することができる。この場合、アクセプタ準位を量子井戸層中の[111]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[111]方向側の界面と接する部分に多く形成する。あるいは、ドナー準位を量子井戸層中の[-1-1-1]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[-1-1-1]方向側の界面と接する部分に多く形成する。
【0169】
逆に、III −V族化合物半導体において、発光層の面内方向(界面に平行な方向)に圧縮歪を有し、発光層の界面に垂直な方向に伸張する歪を有する場合、圧電効果により発生した発光層中の電位勾配において、[-1-1-1]方向側の電位が高く、[111]側の電位が低い。このような歪を発光層に有し、[111]方向側にp型層を有し、[-1-1-1]方向側にn型層を有している発光素子においては、発光層における電位はn型層側の方がp型層側に比べて低い。なお、発光層は量子井戸構造を有する場合においては、量子井戸層内における電位がn型層側の方がp型層側に比べて低い。圧電効果のために発生した電位勾配を減少させるためには、p型層と発光層との間に、発光層に比べて大きな禁制帯幅を有するn型の逆導電型層を形成する。あるいは、n型層と発光層との間に、発光層に比べて大きな禁制帯幅を有するp型の逆導電型層を形成する。このような方法により、発光層が単層構造を有する場合および量子井戸構造を有する場合のいずれにおいても同様の効果が得られる。
【0170】
さらに、発光層が量子井戸構造を有する場合においては、量子井戸層にアクセプタ準位あるいはドナー準位を不均一に形成することで、圧電効果のために発生した発光層の電位勾配をさらに低減することができる。この場合、アクセプタ準位を量子井戸層中の[-1-1-1]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[-1-1-1]方向側の界面と接する部分に多く形成する。あるいは、ドナー準位を量子井戸層中の[111]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[111]方向側の界面と接する部分に多く形成する。
【0171】
一方、II−VI族化合物半導体およびI-VII 族化合物半導体において、発光層の面内方向(界面に平行な方向)に伸張する歪を有し、発光層の界面に垂直な方向に圧縮歪を有する場合、圧電効果により発光層中に発生した電位勾配において、[-1-1-1]方向側の電位が高く、[111]側の電位が低い。このような歪を発光素子に有し、[111]方向側にp型層を有し、[-1-1-1]方向側にn型層を有している発光素子において、圧電効果のために発生した電位勾配を減少させるためには、p型層と発光層との間に、発光層より大きな禁制帯幅を有するn型の逆導電型層を形成する。あるいは、n型層と発光層との間に、発光層に比べて大きな禁制帯幅を有するp型の逆導電型層を形成する。このような方法により、発光層が単層構造を有する場合および量子井戸構造を有する場合のいずれにおいても同様の効果が得られる。
【0172】
さらに、発光層が量子井戸構造を有する場合においては、量子井戸層にアクセプタ準位あるいはドナー準位を不均一に形成することで、圧電効果のために発生した発光層の電位勾配をさらに低減することができる。この場合、アクセプタ準位を量子井戸層中の[-1-1-1]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[-1-1-1]方向側の界面と接する部分に多く形成する。あるいは、ドナー準位を量子井戸層中の[111]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[111]方向側の界面と接する部分に多く形成する。
【0173】
逆に、II−VI族化合物半導体およびI-VII 族化合物半導体において、発光層の面内方向(界面に平行な方向)に圧縮歪を有し、発光層の界面に垂直な方向に伸張する歪を有する場合、圧電効果により発光層中に発生した電位勾配において、[111]方向側の電位が高く、[-1-1-1]側の電位が低い。このような歪を発光層に有し、[-1-1-1]方向側にp型層を有し、[111]方向側にn型層を有している発光素子においては、発光層における電位はn型層側の方がp型層側に比べて低い。なお、発光層は量子井戸構造を有する場合においては、量子井戸層内における電位がn型層側の方がp型層側に比べて低い。圧電効果のために発生した電位勾配を減少させるためには、p型層と発光層との間に、発光層より禁制帯幅の広いn型の逆導電型層を形成する。あるいは、n型層と発光層との間に、発光層より禁制帯幅の広いp型の逆導電型層を形成する。このような方法により、発光層が単層構造を有する場合および量子井戸構造を有する場合のいずれにおいても同様の効果が得られる。
【0174】
さらに、発光層が量子井戸構造を有する場合においては、量子井戸層にアクセプタ準位またはドナー準位を不均一に形成することで、圧電効果のために発生した発光層の電位勾配をさらに低減することができる。この場合、アクセプタ準位を量子井戸層中の[111]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[111]方向側の界面と接する部分に多く形成する。あるいは、ドナー準位を量子井戸層中の[-1-1-1]方向側の部分に多く形成し、または障壁層中で量子井戸層の[-1-1-1]方向側の界面と接する部分に多く形成する。
【0175】
発光層における界面に垂直な方向としては、歪により電位勾配の発生する方向であれば、発光層の面方位は(111)面と等価な面方位に限られるものではない。歪発光層の面方位が[100]軸を面内に含む面方位およびこれと等価な面方位以外であれば、いかなる面方位でも、歪により電位勾配が発光層の界面に垂直な方向に発生する。すなわち、歪発光層の面方位が一般式(0MN)面で表される面方位およびこれと等価な面方位以外であれば、いかなる面方位でも、圧電効果が発生する。ここで、MおよびNは、M=N=0を除く任意の数である。上記の(0MN)面は、例えば(001)面および(011)面である。特に、(111)面を主面とする歪発光層において、発光層の界面に垂直な方向に電位勾配を発生させる圧電効果が最も大きい。なお、歪により電位勾配の発生する発光層の面方位については後述する。
【0176】
(12)第12の実施例
図30は本発明の第12の実施例における埋め込みリッジ構造のAlGaInP系半導体レーザ素子の構造を示す断面図である。第12の実施例の半導体レーザ素子は、多重量子井戸構造(MQW構造)を有するMQW発光層を有する。図31および図32は第12の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【0177】
図30において、n−GaAs基板21は、面方位が(111)Bの結晶成長面を有する。n−GaAs基板21上にn−Ga0.51In0.49Pからなるn−バッファ層22、n−(Al0.7 Ga0.3 0.51In0.49Pからなるn−クラッド層23、およびMQW発光層24が順に形成されている。
【0178】
MQW発光層24は、図31に示すように、p−(Al0.5 Ga0.5 0.51In0.49Pからなる光ガイド層24c上に(Al0.5 Ga0.5 0.45In0.55Pからなる5層の圧縮歪障壁層24aおよびGa0.6 In0.4 Pからなる4層の引張り歪井戸層24bが交互に積層されてなる。本実施例においては、この光ガイド層24cがp型の逆導電型層に相当する。
【0179】
MQW発光層24上には、n−(Al0.57Ga0.430.51In0.49Pからなる光ガイド層25が形成されている。本実施例においては、この光ガイド層25がn型の逆導電型層に相当する。光ガイド層25上には多重量子障壁層26が形成されている。多重量子障壁層26は、Ga0.51In0.49Pからなる10層の井戸層および(Al0.7 Ga0.3 0.51In0.49Pからなる10層の障壁層が交互に積層されてなる。この多重量子障壁層26は、温度特性の改善のために設けられている。
【0180】
多重量子障壁層26上には、p−(Al0.7 Ga0.3 0.51In0.49Pからなるp−クラッド層27が形成されている。p−クラッド層27の上部領域はメサエッチング等によりストライプ状のリッジ部に形成されている。リッジ部の幅は5μmである。p−クラッド層27のリッジ部上にはp−Ga0.51In0.49Pからなるp−コンタクト層28が形成されている。
【0181】
p−クラッド層27の両側には、n−GaAsからなるn−電流ブロック層29が形成され、p−コンタクト層28上およびn−電流ブロック層29上にはp−GaAsからなるp−キャップ層30が形成されている。n−GaAs基板21の下面にn電極32が形成され、p−キャップ層30の上面にp電極31が形成されている。
【0182】
表1に図30の半導体レーザ素子における各層の材料および膜厚を示す。
【0183】
【表1】
Figure 0003711020
【0184】
この半導体レーザ素子において、n−GaAs基板21上の各層22〜30はMOVPE法等により形成される。
【0185】
圧縮歪障壁層24aの格子定数はn−GaAs基板21の格子定数よりも大きく設定されている。それにより、圧縮歪障壁層24aはn−GaAs基板21に対して圧縮歪を有する。引張り歪井戸層24bの格子定数はn−GaAs基板21の格子定数よりも小さく設定されている。それにより、引張り歪井戸層24bはn−GaAs基板21に対して引張り歪を有する。
【0186】
図31に示すように、本実施例においては、p型の逆導電型層として、n−クラッド層23に比べて禁制帯幅が小さくかつ圧縮歪障壁層24aおよび引張り歪井戸層24bに比べて禁制帯幅の大きいp−光ガイド層24cが形成されている。また、n型の逆導電型層として、圧縮歪障壁層24aおよび引張り歪井戸層24bに比べて禁制帯幅が大きく多重量子障壁層26に比べて禁制帯幅が小さなn−光ガイド層25が形成されている。
【0187】
さらに、n型不純物として例えばSeが圧縮歪障壁層24a中で引張り歪井戸層24bの[-1-1-1]方向側つまり光ガイド層25側の界面と接する部分に多くドープされ、p型不純物として例えばZnが圧縮歪障壁層24a中で引張り歪井戸層24bの[111]方向側つまり光ガイド層24c側の界面と接する部分に多くドープされ、変調ドーピング構造となっている。本実施例では、n型不純物およびp型不純物のドーピング濃度がほぼ等しい場合について示している。
【0188】
なお、本実施例では、MQW発光層24中の量子井戸面内に関して井戸層24bが引張り歪を有し、障壁層24aが圧縮歪を有するため、障壁層24aには井戸層24bとは反対の電位勾配が発生する。それにより、MQW発光層24のエネルギーバンドにおいて、障壁層24aのエネルギーバンドが[111]方向側が[-1-1-1]方向側に比べて高くなり、井戸層24bのエネルギーバンド勾配は、[-1-1-1]方向側が[111]方向側に比べて高くなる。
【0189】
本実施例では、図32に示すように、電子および正孔が補償され、ドーピングによるキャリアはほとんど発生しないが、イオン化したp型不純物とイオン化したn型不純物とにより引張り歪井戸層24bの電位勾配が減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離が抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇が抑制される。
【0190】
(13)第13の実施例
図33は本発明の第13の実施例におけるZnSe系半導体レーザ素子の構造を示す断面図である。第13の実施例の半導体レーザ素子は、多重量子井戸構造(MQW構造)を有するMQW発光層を有する。図34および図35は第13の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【0191】
図33において、n−GaAs基板41の(111)B面上に、n−GaAsからなるn−第1バッッファ層42、n−ZnSeからなるn−第2バッファ層43、n−Zn0.9 Mg0.1 0.15Se0.85からなるn−クラッド層44、p−ZnS0.15Se0.85からなるp−逆導電型層45およびMQW発光層46が順に形成されている。
【0192】
MQW発光層46は、図34に示すように、ZnS0.1 Se0.9 からなる5層の引張り歪障壁層46aおよびZn0.7 Cd0.3 Seからなる4層の圧縮歪井戸層46bが交互に積層されてなる。
【0193】
MQW発光層46上には、n−ZnS0.15Se0.85からなるn−逆導電型層47およびp−Zn0.9 Mg0.1 0.15Se0.85からなるp−クラッド層48が形成されている。p−クラッド層48の上部領域はストライプ状のリッジ部となっている。
【0194】
p−クラッド層48のリッジ部上には、p−ZnSeからなるp−コンタクト層49が形成され、p−クラッド層48のリッジ部およびp−コンタクト層49の両側にはSiO2 膜50が形成されている。n−GaAs基板41の下面にn電極51が形成され、p−コンタクト層49上およびSiO2 層50上にp電極52が形成されている。
【0195】
表2に図33の半導体レーザ素子における各層の材料および膜厚を示す。
【0196】
【表2】
Figure 0003711020
【0197】
図34に示すように、本実施例においては、n−クラッド層44に比べて禁制帯幅が小さくかつ引張り歪障壁層46aおよび圧縮歪井戸層46bに比べて禁制帯幅の大きなp−逆導電型層45が形成されるとともに、p−クラッド層48に比べて禁制帯幅が小さくかつ引張り歪障壁層46aおよび圧縮歪井戸層46bに比べて禁制帯幅の大きなn−逆導電型層47が形成されている。また、n型不純物として例えばClが引張り歪障壁層46a中で圧縮歪井戸層46bの[-1-1-1]方向側つまりp−クラッド層48側の界面と接する部分に多くドープされ、p型不純物として例えば窒素が引張り歪障壁層46a中で圧縮歪井戸層46bの[111]方向側つまりn−クラッド層44側の界面と接する部分に多くドープされ、変調ドーピング構造となっている。本実施例では、n型不純物およびp型不純物のドーピング濃度がほぼ等しい場合について示している。
【0198】
なお、本実施例では、MQW発光層46中の量子井戸面内に関して井戸層46bが圧縮歪を有し、障壁層46aが引張り歪を有するため、障壁層46aには井戸層46bとは反対の電位勾配が発生する。それにより、MQW発光層46のエネルギーバンドにおいて、障壁層46aのエネルギーバンドは、[111]方向側が[-1-1-1]方向側に比べて高くなり、井戸層46bのエネルギーバンドの勾配は[-1-1-1]方向側が[111]方向側に比べて高くなる。
【0199】
本実施例では、図35に示すように、電子および正孔が補償され、ドーピングによるキャリアがほとんど発生しないが、イオン化したp型不純物とイオン化したn型不純物とにより圧縮歪井戸層46bの電位勾配が減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離が抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇が抑制される。
【0200】
(C)第3の実施の形態
第3の実施の形態の発光素子は、量子細線構造のMQW発光層を有する。
【0201】
(14)第14の実施例
図36〜図40は第14の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示し、図36は模式的工程断面図、図37はMQW発光層の拡大断面図、図38(a),(b)は量子細線が形成されたMQW発光層のそれぞれ拡大断面図および模式的平面図、図39は量子細線構造のMQW発光層の拡大断面図、図40の模式的工程断面図である。
【0202】
まず、図36に示すように、図19の工程と同様にして、サファイア基板1の(0001)面上に、MOVPE法により、バッファ層2、アンドープGaN層3、n−コンタクト層4、n−クラック防止層5、n−クラッド層6、n−クラッド層7およびMQW発光層8を成長させる。
【0203】
図37に示すように、MQW発光層8は、複数の障壁層8aと複数の量子井戸層8bとが交互に積層されてなる。MQW発光層8への不純物のドーピング方法は、第2〜第8の実施例と同様である。
【0204】
次に、図38に示すように、集束イオンビーム(FIB)等により、MQW発光層8の一部をn−クラッド層7に達するまで線状に削り、MQW発光層8を線状に加工する。MQW発光層8の残存する部分の幅は例えば5nm程度であり、FIBにより削った部分の幅は例えば20nm程度とする。
【0205】
その後、図39に示すように、MQW発光層8をアンドープGaN層8cで埋め込む。それにより、量子細線構造を有するMQW発光層80が形成される。
【0206】
さらに、図40に示すように、MQW発光層80上に、図19の工程と同様にして、MOVPE法により、n−逆導電型層9、p−クラッド層10およびp−キャップ層11を順に成長させる。以後の工程は、図20〜図23に示した工程と同様である。
【0207】
本実施例の半導体レーザ素子では、量子細線構造を有するMQW発光層80において、基板上の結晶成長方向に電位勾配が発生する。そこで、第2〜第8の実施例と同様に、MQW発光層80とp−クラッド層10との間にn−逆導電型層9を形成するとともに、基板上の結晶成長方向に関して不純物を不均一にドープする。それにより、量子細線構造のMQW発光層80において発生した電位勾配が減少する。その結果、電流として注入された電子と正孔との分離が抑制されるので、発光効率の低下およびしきい値電流の上昇が抑制される。
【0208】
なお、量子細線構造の発光層80において、電位勾配の発生する方向は、基板上の結晶成長方向に限らない。基板の面方位、量子細線の方位、量子細線の形状等により、基板の面内方向に電位勾配が発生する場合がある。このような場合には、イオン注入等の方法で、基板の面内方向に関してドーピングを不均一にすればよい。
【0209】
なお、上記第1〜第14の実施例では、本発明を半導体レーザ素子に適用した場合について説明したが、本発明は、発光ダイオード等の他の発光素子にも適用することができる。
【0210】
第1〜第3の実施の形態において、アクセプタ準位あるいはドナー準位を形成する方法として不純物をドープする方法の他に、空格子等の格子欠陥によりアクセプタ準位あるいはドナー準位を形成する方法でも、同様の効果を有する。
【0211】
○歪により電位勾配の発生する発光層の面方位
発光層の界面に垂直な方向の分極は、PIEZOELECTRICITY Vol. 1(New Revised Edition) by W.G.CADY Dover Publications, Inc. New York 1964 等の文献にしたがって、計算することができる。
【0212】
図41において、z軸を界面に垂直な方向とする。XYZ座標系をZ軸を回転軸として角度α回転させる。回転後の座標軸は、X軸がξ軸に移り、Y軸がy軸に移る。
【0213】
ξyZ座標系をy軸を回転軸として角度β回転させる。回転後の座標軸は、ξ軸がx軸に移り、Z軸がz軸に移る。
【0214】
ウルツ鉱型結晶では、X軸を結晶の[2-1-10]軸とし、Y軸を[01-10]軸とし、Z軸を[0001]軸とする。また、閃亜鉛鉱型結晶では、X軸を結晶の[100]軸とし、Y軸を[010]軸とし、Z軸を[001]軸とする。
【0215】
ここで、z軸方向の分極をPz とし、歪テンソルをεxx、εyy、εyz、εxz、εxyとし、圧電係数(piezoelectric stress coefficients )をe31、e33、e15、e14とする。
【0216】
第1〜第13の実施例のような通常の単層構造および量子井戸構造では電位勾配はz軸方向の分極Pz に比例し、εxx=εyy、εyz=εxz=εxy=0であり、εxxとεzzの符号が異なる。
【0217】
ウルツ鉱型結晶では、z軸方向の分極Pz は次式で表される。
z =εxxcosβ(e31cos2 β+e33sin2 β−e15sin2 β)+εyy31cosβ+εzzcosβ(e31sin2 β+e33cos2 β+e15sin2 β)+εxzsinβ(2e31cos2 β−2e33cos2 β+e15sin2 β)・・・(1)
z軸方向の分極Pz はαに無関係である。上式(1)から、ウルツ鉱型結晶では、例えば角度βが90°となる場合に、z軸方向の分極Pz が0となる。すなわち、図36のz軸がXY平面上にある場合に界面に垂直な方向に歪による電位勾配が発生しない。したがって、前述したように、一般式(HKL0)面(H、KおよびLは、H+K+L=0を満足し、かつH=K=L=0を除く任意の数)で表される面方位では、界面に垂直な方向に電位勾配が発生せず、それ以外の面方位では界面に垂直な方向に電位勾配が発生する。
【0218】
ただし、材料によっては圧電係数の値により、偶然圧電効果が発生しない特定の面方位がある。例えば、wurtzite構造のCdSではe31=−0.262C/m2 、e33=0.385C/m2 、e15=−0.183C/m2 、wurtzite構造のCdSeではe31=−0.160C/m2 、e33=0.347C/m2 、e15=−0.138C/m2 という値が報告されている。したがって、β=50°付近で、分極Pz が0となり、圧電効果の発生しない面方位がある。
【0219】
また、閃亜鉛鉱型結晶では、z軸方向の分極Pz は次式で表される。
z =εxx14sinαcosαcosβ(cos2 β−sin2 β)−εyy14sinαcosαcosβ+3εzz14sinαcosαsin2 βcosβ+2εyz14(cos2 α−sin2 α)sinβcosβ+2εxz14sinαcosαsinβ(2cos2 β−sin2 β)+2εxy14(cos2 α−sin2 α)(cos2 β−sin2 β)・・・(2)
上式(2)から、閃亜鉛鉱型結晶では、例えば角度αが0°または90°となる場合または角度βが0°または90°となる場合に、z方向の分極Pz が0となる。したがって、前述したように、一般式(0MN)面(MおよびNは、M=N=0を除く任意の数)で表される面方位およびこれと等価な面方位では、界面に垂直な方向に電位勾配が発生せず、それ以外の面方位では、界面に垂直な方向に電位勾配が発生する。
【0220】
圧電係数の値は、LANDOLT-BORNSTEIN Numerical Data and Functional Relationships in Science and Technology New Series Group III; Crystal and Solid State Physics Vol. 17, Edited by O. Madelung, springer-Verlag Berlin-Heidelberg 1982 等に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1〜第8の実施例における半導体レーザ素子の構成を示す模式的斜視図である。
【図2】第1の実施例の半導体レーザ素子における発光層のエネルギーバンド図である。
【図3】第1の実施例の半導体レーザ素子における発光層のエネルギーバンド図である。
【図4】第2〜8の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図5】第2の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図6】第2の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図7】第3の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図8】第3の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図9】第4の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図10】第4の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図11】第5の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図12】第5の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図13】第6の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図14】第6の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図15】第7の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図16】第7の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図17】第8の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図18】第8の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図19】図1の半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図20】図1の半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図21】図1の半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図22】図1の半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図23】図1の半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図24】第10の実施例における半導体レーザ素子の構成を示す模式的斜視図である。
【図25】第10の実施例の半導体レーザ素子における発光層のエネルギーバンド図である。
【図26】第10の実施例の半導体レーザ素子における発光層のエネルギーバンド図である。
【図27】第11の実施例における半導体レーザ素子の構成を示す模式的斜視図である。
【図28】第11の実施例の半導体レーザ素子における発光層のエネルギーバンド図である。
【図29】第11の実施例の半導体レーザ素子における発光層のエネルギーバンド図である。
【図30】本発明の第12の実施例における埋め込みリッジ構造のAlGaInP系半導体レーザ素子の構造を示す模式的断面図である。
【図31】第12の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図32】第12の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図33】本発明の第13の実施例におけるZnSe系半導体レーザ素子の構造を示す模式的断面図である。
【図34】第13の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図35】第13の実施例の半導体レーザ素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図36】第14の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図37】第14の実施例における半導体レーザ素子のMQW発光層の拡大断面図である。
【図38】第14の実施例における半導体レーザ素子の量子細線構造が形成されたMQW発光層の拡大断面図および模式的平面図である。
【図39】第14の実施例における半導体レーザ素子の量子細線構造のMQW発光層の拡大断面図である。
【図40】第14の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図41】歪により電位勾配が発生する量子井戸層の面方位を説明するための図である。
【図42】従来のGaN系半導体発光素子の構成を示す模式的断面図である。
【図43】従来の半導体発光素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【図44】従来の半導体発光素子におけるMQW発光層のエネルギーバンド図である。
【符号の説明】
1 サファイア基板
6,7 n−クラッド層
8,24,46,80 発光層
8a,24a,46a 障壁層
8b 量子井戸層
9,47 n−逆導電型層
10 p−クラッド層
19,45 p−逆導電型層
23,44 n−クラッド層
24b,46b 井戸層
27,48 p−クラッド層

Claims (20)

  1. 圧電効果の発生を伴う歪を有する発光層が第1のn型層と第1のp型層とに挟まれるように配置された発光素子であって、
    前記発光層は、圧電効果の発生を伴う歪を有する1つ以上の井戸層と、前記井戸層を挟むように配置された2つ以上の障壁層とから構成される量子井戸構造を有し、
    前記圧電効果の結果として発生する電位勾配のため前記発光層の電位は前記第1のn型層側が前記第1のp型層側に比べて高く、
    少なくとも前記発光層と前記第1のp型層との間に前記発光層よりも大きい禁制帯幅を有する第2のn型層を有し、
    該第2のn型層が光ガイド層であることを特徴とする発光素子。
  2. 前記第1のp型層は第1のクラッド層を含み、前記第2のn型層の禁制帯幅が前記第1のクラッド層よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の発光素子。
  3. 圧電効果の発生を伴う歪を有する発光層が第1のn型層と第1のp型層とに挟まれるように配置された発光素子であって、
    前記発光層は、圧電効果の発生を伴う歪を有する1つ以上の井戸層と、前記井戸層を挟むように配置された2つ以上の障壁層とから構成される量子井戸構造を有し、
    前記圧電効果の結果として発生する電位勾配のため前記発光層の電位は前記第1のn型層側が前記第1のp型層側に比べて高く、
    少なくとも前記発光層と前記第1のn型層との間に前記発光層よりも大きい禁制帯幅を有する第2のp型層を有し、
    該第2のp型層が光ガイド層であることを特徴とする発光素子。
  4. 前記第1のn型層は第2のクラッド層を含み、前記第2のp型層の禁制帯幅が前記第2のクラッド層よりも小さいことを特徴とする請求項3記載の発光素子。
  5. 前記発光層を構成する材料の構造はウルツ鉱構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発光素子。
  6. 前記発光層の主面はほぼ〈0001〉方向であることを特徴とする請求項5記載の発光素子。
  7. 前記発光層を構成する材料の構造は閃亜鉛鉱構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発光素子。
  8. 前記発光層の主面はほぼ〈111〉方向であることを特徴とする請求項7記載の発光素子。
  9. 前記圧電効果の発生を伴う歪は、前記発光層の面内方向に前記発光層を圧縮する歪を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の発光素子。
  10. 前記圧電効果の発生を伴う歪は、前記発光層の面内方向に前記発光層を伸張する歪を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の発光素子。
  11. 前記発光層を構成する材料はIII −V族化合物半導体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の発光素子。
  12. 前記III −V族化合物半導体は、ホウ素、ガリウム、アルミニウムおよびインジウムの少なくとも1つを含む窒化物系半導体であることを特徴とする請求項11記載の発光素子。
  13. 前記発光層を構成する材料はII−VI族化合物半導体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の発光素子。
  14. 前記量子井戸構造の発光層中にアクセプタ準位およびドナー準位のうち少なくとも一方の準位が前記量子井戸構造の閉じ込め方向に圧電効果の結果として発生する電位勾配を低減するように不均一に形成されたことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の発光素子。
  15. 前記井戸層内において、圧電効果の結果として発生する電位の高い前記第1のn型層側に電位の低い前記第1のp型層側に比べてアクセプタ準位が多く形成されたことを特徴とする請求項14記載の発光素子。
  16. 前記井戸層内において、圧電効果の結果として発生する電位の低い前記第1のp型層側に電位の高い前記第1のn型層側に比べてドナー準位が多く形成されたことを特徴とする請求項14または15記載の発光素子。
  17. 前記障壁層内において、圧電効果の結果として発生する電位の高い前記第1のn型層側の前記井戸層の界面と接する部分に電位の低い前記第1のp型層側の前記井戸層の界面と接する部分に比べてアクセプタ準位が多く形成されたことを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の発光素子。
  18. 前記障壁層内において、圧電効果の結果として発生する電位の低い前記第1のp型層側の前記井戸層の界面と接する部分に電位の高い前記第1のn型層側の前記井戸層の界面と接する部分に比べてドナー準位が多く形成されたことを特徴とする請求項14〜17のいずれかに記載の発光素子。
  19. 前記量子井戸構造の発光層中にアクセプタ準位およびドナー準位の両方が形成されたことを特徴とする請求項14〜18のいずれかに記載の発光素子。
  20. 前記アクセプタ準位の濃度と前記ドナー準位の濃度とがほぼ等しいことを特徴とする請求項19記載の発光素子。
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