JP3710704B2 - 画像パターンの回転角度検出誤差低減方法及びこの方法の実行プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents

画像パターンの回転角度検出誤差低減方法及びこの方法の実行プログラムを記録した記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パターン認識の分野に属し、計測・計算誤差の統計的性質に基づいてパターンの回転角度を高精度に検出するための回転角度検出誤差低減方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、パターンの回転角度を検出する技術としては、特開平10−63851号公報の画像間の相関値を用いる手法や、画像の各回転角度方向における空間周波数情報を利用する手法があった。
【0003】
前者の手法では、基準パターンのフーリエ回転画像データから1パターンずつ基準パターンのフーリエ画像データ(基準フーリエ画像データ)を読み出し、この読み出した基準フーリエ画像データと対象パターンのフーリエ画像データ(対象フーリエ画像データ)とを合成し、この合成フーリエ画像データに対して振幅抑制処理を行った上、2次元離散フーリエ逆変換(DFT)を施し、このDFTの施された合成フーリエ画像データに出現する相関成分エリアの各画素の相関成分強度に基づいて1回転パターン毎の相関値を求め、この求めた相関値の中で最も相関値が高い回転パターンの回転角度を基準パターンと対象パターンとの回転ずれ(対象パターンの回転角度)として検出していた。
【0004】
後者の画像の空間周波数情報を利用する手法では、画像に2次元フーリエ変換を施し、各回転角度方向毎の空間周波数振幅値(パワースペクトル)を累積し、最大累積振幅値が得られた回転角度を対象パターンの回転角度として検出していた。例えば対象パターンが掌形の場合、指の並び方向に高い空間周波数を有するため、掌の回転角度を検出することができた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、画像間の相関値を用いる上記の手法では、相関値や積分値の計算を画素単位で行うため、原画像の画素数(解像度)によって決まる回転角度検出分解能以上の回転角度検出精度は得られなかった。従って、画像間の相関を用いる手法の回転角度検出精度は、原画像の画素数に大きく依存するので、画素数の少ない原画像からは精度良く回転角度を検出することができなかった。
【0006】
また、画像の空間周波数を用いて回転角度を検出する上記の手法では、対象とするパターンの有する空間周波数帯域によって、回転角度検出に有効な原画像の画素数の上限が決まるので、指の並びのように低い空間周波数帯域に振幅強度が集中するようなパターンの場合、原画像の解像度を幾等高くしても回転角度を精度良く検出することができなかった。
【0007】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点や技術的な背景に鑑みてなされたものであって、原画像の解像度等によって定まる理論的な角度検出分解能を越えた高精度な回転角度検出が実現でき、画像解像度の低い原画像パターンの回転角度検出や、画像パターンの有する空間周波数が低周波帯域に限られるような画像パターンの回転角度検出を高精度に行うことができる回転角度検出誤差低減方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明は、パターン認識のための画像パターンの回転角度検出において、原画像を任意回転角度回転するステップと、前記回転させた原画像から回転角度検出対象の画像パターンの回転角度を検出するステップと、前記検出した回転角度から前記任意回転角度を差し引いて回転角度検出誤差をともなう前記原画像の画像パターンの回転角度を算出するステップと、前記任意回転角度を変更して同操作を複数回繰り返し、算出した複数の回転角度を平均して前記原画像の画像パターンの回転角度を求めるステップとを、有することを特徴とする。
【0009】
あるいは、上記の画像パターンの回転角度検出誤差低減方法において、前記画像パターンの回転角度を検出するステップでは、回転角度検出対象の画像パターンを2次元フーリエ変換するステップと、前記変換によって得られた画像のパワースペクトルを回転角度方向毎に周波数積分するステップと、前記積分結果に最大の累積強度値が得られた回転角度を検出対象の画像パターンの回転角度として検出するステップとを、有することを特徴とする。
【0010】
あるいは、上記の画像パターンの回転角度誤差低減方法におけるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを、前記コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録したことを特徴とする。
【0011】
本発明では、原画像を任意回転角度回転し、回転させた画像から従来の回転角度検出手法を含む種々の回転角度検出手法を用いて回転角度検出対象パターンの回転角度を検出し、検出した回転角度から任意回転角度を差し引いて回転角度検出誤差をともなった原画像のパターンの回転角度を算出する。さらに、任意回転角度を変更して同操作を複数回繰り返し、算出した複数の回転角度を平均することで、回転角度検出誤差を打ち消し、精度良く原画像のパターンの回転角度を求める。
【0012】
本発明は、従来手法を含む種々の回転角度検出手法を用いて、任意に回転させた対象パターンの回転角度を検出したときに含まれる角度検出誤差の平均値が、0を含む一定値に収束するという統計的性質を用いて、原画像の回転角度を精度良く検出する手法である。本発明を用いれば、画像解像度の低い原画像から高精度にパターンの回転角度を検出したり、回転角度検出対象パターンに含まれる空間周波数が低周波帯域に限られるようなパターンの回転角度を高精度に検出したりすることができる。
【0013】
本発明で用いる種々の回転角度検出手法の一例として、検出対象の画像パターンを2次元フーリエ変換し、この変換で得られた画像のパワースペクトルを回転角度方向毎に周波数積分し、この積分結果で最大の累積強度値が得られた回転角度を回転角度検出対象の画像パターンの回転角度として検出する手法がある。
【0014】
この手法を本発明での回転角度の検出ステップに用いれば、上記したように原画像の画像パターンの回転角度を精度良く検出できることに加えて、画像の空間周波数を基に検出対象の画像パターンの回転角度を検出するため、曲線で形成されるような画像パターンに対しても有効となる。また、検出対象の画像パターンそのものから、直接にその回転角度を検出することができるので、空間周波数に偏りのある画像パターンであれば、全く新規な画像パターンに対しても角度検出が可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
本実施の形態では、掌形(手)を用いたバイオメトリクス本人認証を想定した際の、掌形の回転角度検出について説明する。
【0017】
CCDカメラなどにより撮影された掌形は通常回転角度ずれを伴う。そこで、パターンマッチングなどの照合処理を行う前に、撮影した掌の回転角度などを補正して規格化された画像にしなければならない。回転角度を補正するためには、撮影した掌の正確な回転角度を検出する必要がある。
【0018】
図1のフロー図に、本実施形態例における回転角度検出の流れを示す。図2に、図1で示した処理の具体化例を示す。
【0019】
図2の原画像は、CCDカメラで撮影した掌形である。原画像は、登録した際の掌形角度に対して、未知の回転角度ずれx°を伴っている。ここで図2では、理解を助けるために参考値としてx゜=3.1゜とした。
【0020】
本発明では、まず、原画像を任意回転角度a°回転し、回転させた画像から掌形の回転角度b°を検出する。回転角度b°の検出には、登録画像と検出画像との相関を用いる手法や、画像の回転角度毎の空間周波数を解析する手法などの従来手法を用いるか、あるいは、後記に例示する図3による回転角度検出手法を用いる。これらの手法を用いて検出した掌形の回転角度b°には、検出する角度分解能や原画像の解像度などの影響によって、未知の角度検出誤差e°を伴う。例えば、256×256画素の原画像を二次元フーリエ変換して得た振幅画像を用いて回転角度を検出する場合、180°の回転角度を256ステップ以上の密度で評価しても、一般に計算コストの割に角度検出誤差は小さくならない。180°を256ステップで評価した場合、180°/256=0.7°毎しか回転角度を検出することができず、検出した回転角度z°には−0.35°〜0.35°の誤差を伴う(誤差の絶対値の平均値は0.175°)。
【0021】
次に、従来手法や図3による手法で検出した回転角度値b°から、任意回転角度a°を差し引くことによって、原画像の未知の回転角度x°に誤差e°を含む角度を得ることができる。
【0022】
さらに、任意回転角度a°を変更して上記操作を繰り返し、原画像の未知の回転角度x°に任意回転角度b°毎に異なる誤差e°を含む回転角度を複数得る。
【0023】
最後に、得られた複数の回転角度値の平均値を計算すると、誤差e°の平均値が0°に収束し、原画像の未知の回転角度x°が精度良く得られる。
【0024】
なお、図2の参考値を示した例では10°おきに5つの回転角度値の平均から原画像の回転角度x°を計算しているが、一般にサンプル数が多いほど統計的性質が確かになるので、より正確な回転角度x°を得るためには、多くの繰り返し処理が必要となる。
【0025】
また、任意回転角度の範囲と設定値は、検出角度ステップや、角度検出アルゴリズムなどの処理を考慮して適切な誤差e°が得られるよう、最適値を選ぶ。
【0026】
回転角度が既知の256×256画素のパターンを用いて回転角度検出精度を評価したところ、従来手法による回転角度検誤差の絶対値の平均値は、回転角度検出ステップ0.7°(180°/256)でほぼ理論値に等しい0.1838°であった。それに対して本発明による回転角度検出誤差は、同条件において0.0156°と10倍以上の角度検出精度が得られた。
【0027】
また、従来手法において、回転角度検出ステップを0.0070°(180°/25000)まで細かくしても、検出される回転角度検出誤差は0.1287°より小さくならなかったので、本発明は原画像の解像度によって定まる角度検出分解能の限界を超えた回転角度検出を実現する、高精度な回転角度検出手法であるといえる。
【0028】
次に、本発明で用いる回転角度b°の検出手法の一例を詳細に説明する。図3のフロー図に、本例による回転角度検出手法の具体的な流れを示す。
【0029】
本例では、まず、カメラで撮影したRGB256階調の検出画像からR(赤色)成分を抽出し、その濃淡値によるグレースケール画像に変換する。これは背景画像から指部分のみを効率良く抽出するためである。
【0030】
次に、グレースケール画像を2値化する。これは手のしわや背景の影響などを避け、指の並んでいる方向成分のみを強調するためである。
【0031】
次に、2値化した画像に2次元フーリエ変換を施し、直流成分を中心とした強度(パワースペクトル)画像を得る(位相情報を使用しない)。これは、掌の位置ずれや照明環境の変化に関わらず、画像の空間周波数を基に掌の回転角度を検出するためである。
【0032】
次に、強度画像を極座標変換し、横軸角度、縦軸周波数の直交座標形の画像を得る。これは画像の空間周波数を回転角度毎に評価するためである。
【0033】
本例では、各回転角度毎に強度値を累積(パワースペクトルを周波数積分)して、最大強度累積値が得られた回転角度を掌の回転角度(指が並んでいる角度)として検出する。
【0034】
以上が回転角度b°を検出する処理手順である。本例で示した処理手順以外に、フーリエ変換時における窓関数の適用や、2値化時におけるインパルス性雑音の除去など、信号理論的立場から必要な処理を施すことによって実用上の精度の向上や応用範囲を広げることができる。
【0035】
なお、図1、図3で示した処理手順をコンピュータに実行させることができることは言うまでもなく、コンピュータにその処理手順を実行させるためのプログラムを、そのコンピュータが読み取り可能な記録媒体、例えば、FD(フロッピーディスク:登録商標)や、MO、ROM、メモリカード、CD、DVD、リムーバブルディスクなどに記録して、保存したり、提供したり、配布したりすることが可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の画像パターンの回転角度検出誤差低減方法を用いれば、従来の回転角度検出手法では不可能であった、原画像の解像度などによって定まる理論的な角度検出分解能を越えた高精度な回転角度検出が実現できる。
【0037】
よって、画像解像度の低い原画像パターンの回転角度検出や、パターンの有する空間周波数が低周波帯域に限られるようなパターンの回転角度検出を高精度に行うことができる。
【0038】
また、本発明における画像の回転角度の検出ステップに、検出対象の画像パターンを2次元フーリエ変換し、この変換で得られた画像のパワースペクトルを回転角度方向毎に周波数積分し、この積分結果で最大の累積強度値が得られた回転角度を回転角度検出対象の画像パターンの回転角度として検出する手法を用いた場合には、上記の高精度な回転角度検出に加えて、指紋や、掌形といった曲線で形作られるような画像パターンに対しても計算量を少なくしてその回転角度を検出することができる。
【0039】
以上のことから本発明を、バイオメトリクス本人認証システムなどに導入することによって、高精度な本人認証を図ることができるとともに、本発明における画像の回転角度の検出ステップに、上記の回転角度検出手法を用いた場合には、さらに本人認証時間の短縮や、登録情報量の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例における回転角度検出誤差低減処理の手順を示すフロー図である。
【図2】本発明の一実施形態例における回転角度検出誤差低減処理の具体例を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態例で用いられる回転角度検出の処理手順の一例を示すフロー図である。

Claims (3)

  1. パターン認識のための画像パターンの回転角度検出において、
    原画像を任意回転角度回転するステップと、
    前記回転させた原画像から回転角度検出対象の画像パターンの回転角度を検出するステップと、
    前記検出した回転角度から前記任意回転角度を差し引いて回転角度検出誤差をともなう前記原画像の画像パターンの回転角度を算出するステップと、
    前記任意回転角度を変更して同操作を複数回繰り返し、算出した複数の回転角度を平均して前記原画像の画像パターンの回転角度を求めるステップとを、有する
    ことを特徴とする画像パターンの回転角度検出誤差低減方法。
  2. 前記画像パターンの回転角度を検出するステップでは、
    回転角度検出対象の画像パターンを2次元フーリエ変換するステップと、
    前記変換によって得られた画像のパワースペクトルを回転角度方向毎に周波数積分するステップと、
    前記積分結果に最大の累積強度値が得られた回転角度を検出対象の画像パターンの回転角度として検出するステップとを、有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の画像パターンの回転角度誤差低減方法。
  3. 請求項1または2に記載の画像パターンの回転角度誤差低減方法におけるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを、
    前記コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録した
    ことを特徴とする画像パターンの回転角度誤差低減方法の実行プログラムを記録した記録媒体。
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