JP3710059B2 - 圧延材の熱間渦流探傷方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧延材の熱間渦流探傷方法に関するものである。特に、探傷コイル周辺の設備から発せられるノイズの影響を低減できる熱間渦流探傷方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、圧延材の熱間渦流探傷が行われている。この探傷方法には、コンベアで搬送される圧延材の表面に一定のギャップをもって配置した探傷コイルを用いる。探傷コイルに高周波電流を流し、圧延材の表面に渦電流を発生させる。圧延材に表面があると、この部分を流れる渦電流に変化が起こり、コイルのインピーダンスやコイルに誘起される電圧に変化が生じるため、この変化から表面の存在とその程度を判断する。この様な探傷を行う渦流探傷装置は、圧延工程の仕上げ圧延機(例えばNTM)の直後に設置されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の探傷技術では、微小表面を探傷できるように探傷コイルの感度を上げると、外来のノイズの影響を受けて結果的に探傷の信頼性が低下すると言う問題があった。
【0004】
微小表面欠陥を探傷するためには渦電流の微少な乱れを感知できるように探傷コイルの感度を上げなければならない。探傷コイルの探傷精度を上げるために感度を上げると、探傷コイル周辺の設備から発せられる外来ノイズを拾いやすくなる。一方、これら外来ノイズの影響を防止するためには、コネクタ部・ケーブル部およびその周辺の機器にノイズ対策を施さなければならない。
【0005】
従って、本発明の主目的は、探傷コイルの感度を上げなくても外来ノイズの影響を少なくでき、高精度に探傷を行うことができる圧延材の熱間渦流探傷方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、圧延材を探傷前に一旦冷却することで上記の目的を達成する。
【0007】
すなわち、本発明圧延材の熱間渦流探傷方法は、金属材を圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延工程で圧延された圧延材表面のを探傷する熱間渦流探傷工程と、前記圧延工程と前記熱間渦流探傷工程との間に介在される圧延材の冷却工程とを具えることを特徴とする。
【0008】
圧延材は、温度が低下すると透磁率が変化し、の検出が行いやすくなる。そのため、熱間渦流探傷を行う探傷コイルの感度を上げなくても十分に高精度な探傷を行うことができる。また、探傷コイルの感度を上げなくても良いため、外来ノイズの影響を受けにくく、結果として高精度で信頼性の高い探傷を行うことができる。
【0009】
さらに、探傷コイルの感度が低くても良いため、探傷コイルの巻き数の低減、探傷機本体から励磁コイルへの出力低減、プリアンプやアッテネータの出力低減など、探傷器周辺機器の簡略化ができる。
【0010】
冷却工程の冷却手段は、特に限定されない。空冷、水冷のいずれでも良い。冷却はキューリー点以下の温度にまで行うことが好ましい。
【0011】
前記探傷工程は、冷却工程により冷却された圧延材が復熱するまでの間に行うことが好適である。圧延材の冷却を行うと、まず表面部が冷却され中心部が高温の状態となる。その状態から時間が経過すると、復熱により徐々に圧延材の断面全体が同一温度に戻る。その際、疵部分は、他の部分と同一温度に復熱するのが遅れるため、一時的に他の部分よりも低温の状態になる。このように部分のみ低温とすることで、より一層の検知を行いやすくする。つまり、圧延材の部が他の部分よりも低温となっている間に探傷工程を行うことが好適である。
【0012】
本発明での探傷の対象は、金属材全般を含む。特に、鋼線材の表面を検知することに好適である。線材の径は特に限定されない。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明熱間渦流探傷方法の工程図である。本発明では、鋼材の熱間圧延工程の後、圧延材の冷却工程を行い、その後、熱間渦流探傷工程を行う。この探傷工程での有無を検知して、探傷後の圧延材を巻き取りまたは次圧延工程に導入する。
【0014】
熱間圧延工程は、通常の圧延機により行う。冷却工程では、冷却装置を仕上げ圧延機の下流に設置した。冷却装置は、ノズルから水をジェット噴射する水冷式のものと、エアーを噴射する空冷式のもの2通りを用いた。
【0015】
熱間渦流探傷工程は公知の渦流探傷装置を用いる。渦流探傷装置は冷却装置の下流に設置した。この探傷装置は、冷却後の圧延材の表面に一定のギャップをもって配置した探傷コイルを具える。探傷コイルに高周波電流を流し、圧延材の表面に渦電流を発生させる。圧延材に表面があると、この部分を流れる渦電流に変化が起こり、コイルのインピーダンスやコイルに誘起される電圧に変化が生じるため、この変化から表面の存在とその程度を判断する。
【0016】
冷却を行った際の圧延材断面の温度分布を説明する。
図2(A)に示すように、30μm程度のソゲが突出した断面円形の圧延線材を冷却すると、表面部が冷却されて低温部となり、中心部は高温部のままとなる。次に、図2(B)に示すように、復熱により表面部の温度が上昇して、ソゲ以外の部分はほぼ均等な温度となる。この状態の場合、ソゲのみが低温部となって最も検知しやすい状態となる。さらに時間が経過すると、図2(C)のように、ソゲとそれ以外の部分も全て同一温度となり、検知することが難しくなる。
【0017】
実際に、上記の工程に基づいて探傷を行った。探傷条件および冷却条件は次の通りである。
渦流探傷機:フェルスター熱間貫通型渦流探傷機:ディフェクトマートCS+T-60型トランスミッターシステムHOT WIRE ECT
線種 :SWRH 82B相当の硬鋼線材
(C=0.82質量%、Si=0.18質量%、Mn=0.65質量%)
線径 :8.0mmφ
線速 :50m/s
冷却条件 :冷却帯にて過冷された線材表面が直接熱処理プロセスに至る間に約870℃まで復熱するような冷却条件
冷却前の圧延材の温度:約1000℃
探傷時の圧延材の温度:約620℃(線材表面をハンディ放射温度計で計測)
【0018】
実施例▲1▼熱間渦流探傷コイルの上流に水冷の線材表面冷却装置を設置。
▲2▼熱間渦流探傷コイルの上流に空冷の線材表面冷却装置を設置。
比較例 熱間渦流探傷コイルの上流に線材表面冷却装置を設置しない。
【0019】
試験は、人工疵を10箇所付けたビレット(深さ20mm、幅10mmの疵を等間隔形成)を圧延し、探傷機がその疵を捉える個数で判定した。但し、探傷感度、探傷周波数等はすべて同条件にて判定を行う。判定結果を以下に示す。
【0020】
実施例 ▲1▼人工疵10個中9個→◎
▲2▼人工疵10個中8個→◎
比較例 人工疵10個中3個→×
【0021】
以上の結果から、熱間渦流探傷コイルの前に線材冷却設備を設置することが有効であることがわかった。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明熱間渦流探傷方法によれば、圧延工程後に冷却工程を行ってから探傷工程を行うことで、探傷コイルの感度を下げても高精度の探傷を行うことができる。特に、探傷コイルの感度を下げることで、外来ノイズの影響を極力抑えられるため、信頼性の高い探傷を行うことができる。
【0023】
また、探傷コイルの感度が下げられることにより、探傷コイルのコイル巻数の低減、探傷機本体から励磁コイルへの出力低減、プリアンプやアッテネータの出力低減といった探傷装置周辺機器の簡略化ができる。そして、探傷装置の簡略化によりコストダウンができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の工程図である。
【図2】冷却してから復熱するまでの圧延材の断面における熱分布を示す説明図である。
【符号の説明】
1 圧延材
2 ソゲ

Claims (2)

  1. 金属材を圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延工程で圧延された圧延材表面のを探傷する熱間渦流探傷工程と、前記圧延工程と前記熱間渦流探傷工程との間に介在される圧延材の冷却工程とを具え、前記冷却工程により冷却された圧延材の復熱過程において、前記疵がキュリー点以下の温度であり、前記疵以外の圧延材表面がキュリー点を超える温度である間に、前記熱間渦流探傷工程を行うことを特徴とする圧延材の熱間渦流探傷方法。
  2. 冷却工程が水冷または空冷により行われることを特徴とする請求項1に記載の圧延材の熱間渦流探傷方法。
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