JP3709778B2 - 燃料改質装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、炭化水素を含む改質用燃料を改質することにより、水素を含む改質ガスを生成する燃料改質装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、燃料改質装置においては改質原燃料(例えばメタノールと水)と空気から水素を主成分とする改質ガスを生成する改質反応器が備えられている。
【0003】
改質反応器では改質ガスを生成する改質反応と、メタノールと酸化剤(例えば、空気)とを反応させて生じる部分酸化反応とが発生している。改質反応のメタノールと水の反応は吸熱反応であるため、改質反応を維持するためには熱量を供給し、改質反応器内の温度を所定温度に維持する必要がある。
【0004】
この熱量を確保するために部分酸化反応を発生させて、その発熱によって改質反応器の温度を維持する。このように吸熱反応で失われた熱量と、発熱反応で発生した熱量をバランスさせることによって、改質反応器内の温度を反応に必要な最適温度に維持し、外部からの熱量の供給を不要としている。
【0005】
特開2000−53403号公報には、このような外部熱源を用いることなしに改質反応器を所定の温度に維持する技術が開示されている。
【0006】
これは改質反応に必要な空気の流量を、改質反応の理論吸熱量と部分酸化反応の理論発熱量とに基づいて決定し、改質反応器の温度を一定にするようにしたものである。また改質反応器内の温度を測定し、測定温度が所定の温度になるように改質反応器に導入する目標空気流量を補正する温度フィードバック制御を開示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
改質反応器内で生じる改質反応と部分酸化反応ではその反応速度が異なり、部分酸化反応の反応速度の方が改質反応の反応速度よりも速い。このため改質ガス生成用のメタノールと水の目標流量値と、空気の目標流量値とを算出して改質反応器内に導入すると、まず空気導入口近傍で部分酸化反応が優先的に生じ、その付近の温度が上昇し、この温度上昇を受けて改質反応が発生することになる。この結果として空気導入口付近の温度が他の部分より高く、改質反応器内で温度差を生じることになる。また、改質反応器内の最も高温となる部位は供給する燃料流量とその温度、酸化剤流量とその温度に依存して変化する。
【0008】
しかしながら、特開2000−53403号公報に記載の技術では、部分酸化反応(発熱反応)が吸熱反応より空気導入口付近で優先的に行われ、温度が上昇し、改質反応器内に温度差が生じ、さらに改質反応器内のピーク温度部位が変化するという状態を考慮しておらず、改質反応器内で均一な反応が生じると仮定してフィードフォワード目標空気流量を算出してフィードフォワード制御するとともに、適当な位置に取り付けた改質反応器内の温度を検出する温度センサの検出値に基づいてフィードバック制御を行っている。
【0009】
このような制御に基づいて改質反応器内に空気を導入するとフィードフォワード目標空気流量が多めに算出され、改質反応器内の最も部分酸化反応が生じる部位の温度が異常に高温となることがある。さらには改質反応器に設けた温度センサの検出値は必ずしも改質反応器のピーク温度を検出しているとは限らないので、改質反応器のピーク温度測定精度が不正確で、改質反応器内のピーク温度が許容温度を超える恐れもある。
【0010】
そこで本発明は、このような問題を解決する、改質反応器の温度を改質反応に要求される目標温度に維持することのできる燃料改質装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、図4に示すように、吸熱を伴う改質反応と発熱を伴う部分酸化反応とを併用し、改質原燃料と酸化剤を反応させて水素を含む改質ガスを生成する改質反応器(1)と、改質反応器(1)に備えられ、改質反応器内の温度を検出する温度検出手段(9)と、改質反応器に酸化剤を供給する酸化剤供給器(2)とを備えた燃料改質装置において、改質反応器内での温度を推定する温度分布推定手段(ステップSa2)と、この推定された温度分布に基づいて最も高温となる部位の温度を推定するピーク温度推定手段(ステップSa2)と、同じく温度検出手段が設置された箇所の改質反応器内の温度を推定する温度検出部温度推定手段(ステップSa3)と、温度検出手段の検出値と温度検出部温度推定手段の推定値との偏差に基づき、ピーク温度推定手段の推定最高温度を補正するピーク温度補正手段(ステップSa4〜5)と、を備える。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記温度分布推定手段(ステップSa2)は、改質原燃料および酸化剤の供給量とその温度に基づいて改質反応器内の温度分布を推定する。
【0013】
第3の発明は、第1の発明において、前記温度分布推定手段(ステップSa2)は、改質原燃料流量とその温度、酸化剤流量とその温度のパターンから予め改質反応器内のピーク温度が検出される領域を求め、これに基づき設定されたデータテーブルである。
【0014】
第4の発明は、第1から3のいずれか一つの発明において、図5に示すように前記改質反応器内の温度の目標温度を設定する目標値制御手段(C2)と、前記ピーク温度補正手段が補正した推定値と目標温度とを比較し、推定値が目標温度に維持されていない場合に、改質原燃料の流量を増量時または減量時に制限するピーク温度制御手段(C5)とを備える。
【0015】
第5の発明は、第4の発明において、前記ピーク温度推定手段(ステップSa2)が演算毎に推定した最高温度のデータ中から最高値をピーク温度とするピーク温度決定手段(ステップSa6)を備える。
【0016】
第6の発明は、第1から5のいずれか一つの発明において、温度分布推定手段(ステップSa2)は、改質反応器内の所定箇所での改質原燃料の流量と温度、及び同じく酸化剤の流量と温度に基づいて求まる改質反応器内に入る熱エネルギと、改質反応器で生じる熱エネルギと、改質反応器外に放熱する熱エネルギと、改質ガスが改質反応器外に持ち出すエネルギとに基づいて改質反応器内の温度を推定する。
【0017】
第7の発明は、第1から6のいずれか一つの発明において、前記ピーク温度補正手段(ステップSa4〜5)が補正した推定値が目標温度となるように前記酸化剤供給器を制御する改質反応器温度制御手段(C4)を備える。
【0018】
【発明の効果】
第1、2の発明では、改質反応器内で最も高温となる部位の温度と、温度検出手段が設置された箇所の改質反応器内の温度とを推定し、改質反応器の実測温度と推定値との偏差に基づき、ピーク温度推定値を補正するので、推定値のバラツキを補正し、精度を向上できる。
【0019】
第3の発明では、改質反応器に供給する改質原燃料の流量とその温度、及び同じく酸化材の流量とその温度とに基づいて改質反応器内の最高温度領域を設定し、最高温度領域で最高温度を推定するので、良好な演算精度を維持したまま、演算時間を短縮することができる。
【0020】
第4の発明では、改質反応器内の温度の目標温度を設定し、補正したピーク温度推定値と目標温度とを比較し、推定値が目標温度に維持されていない場合に、改質原燃料の流量を増量時または減量時に制限するので、例えば上限温度を越えた場合には、改質原燃料が減少するのを制限し、下限温度に達しない場合には、改質原燃料が増加するのを制限するので、改質器内の温度変化時のオーバーシュートやアンダーシュートが未然に防止され、且つ目標の温度範囲から逸脱することを防止する。
【0021】
第5の発明では、ピーク温度を推定する演算毎の最高温度のデータ中から最高値をピーク温度としたので、不適当なピーク温度が出力された場合でもその影響を除外することができる。
【0022】
第6の発明は、温度分布推定手段は、改質反応器内の所定箇所での改質原燃料の流量と温度、及び同じく酸化剤の流量と温度に基づいて求まる改質反応器内に入る熱エネルギと、改質反応器で生じる熱エネルギと、改質反応器外に放熱する熱エネルギと、改質ガスが改質反応器外に持ち出すエネルギとに基づいて改質反応器内の温度を推定するので、精度よく改質反応器内の温度を推定できる。
【0023】
第7の発明は、補正したピーク温度推定値が目標温度となるように酸化剤供給器を制御するので、確実に改質反応器内の温度を目標温度に制御できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の実施形態の燃料改質装置を備えた燃料電池システムの構成を示す。
【0025】
燃料電池システムは改質原燃料(例えば、メタノールなどの炭化水素系燃料と水)を反応させて水素を含んだ改質ガスを生成する改質反応器1と、改質反応器1に酸化剤としての空気を供給する空気供給機(例えば、コンプレッサ)2と、改質反応器1で生成された改質ガス中の一酸化炭素濃度を所定濃度まで低減する一酸化炭素除去器8と、改質ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池12と、燃料電池12から排出された空気と改質ガスを燃焼する燃焼器17と、燃焼器17の熱を受けて改質反応器1に導入する燃料を気化する蒸発器3を備える。
【0026】
改質反応器1にはコンプレッサ2が接続されており、コンプレッサ2から排出された空気は空気の流量を調整する流量制御弁6を介して、改質反応器1に導入される。なお25は空気流量を検出する流量センサ、同じく4は温度を検出する温度センサ4、5は空気流量調整後の流量を検出する流量センサ5である。さらに改質反応器1には改質反応器1内の温度を検出する温度センサ9が備えられる。
【0027】
改質反応器1内では改質原燃料と酸化剤が導入されると改質反応が生じ、改質ガスが生成され、この改質ガスが一酸化炭素除去器8に導入される。一酸化炭素除去器8には改質ガスとともにコンプレッサ2からの空気が供給される。コンプレッサ2からの空気は前記流量制御弁6の上流から分岐して流量制御弁10で制御される。なお24は流量制御弁10下流の空気流量を検出する流量センサである。
【0028】
一酸化炭素除去器8に導入された改質ガスは、燃料電池12の許容する一酸化炭素濃度まで一酸化炭素濃度を低下させて、燃料電池12に送られる。一酸化炭素除去器8と燃料電池12との間には改質ガスの温度を検出する温度センサ11と燃料電池12の水素極側の圧力を検出する圧力センサ16が備えられる。燃料電池12に供給される改質ガスは、所定温度となるように冷却水の流量を制御する図示しない冷却装置によって温度を制御される。
【0029】
さらに燃料電池12にはコンプレッサ2から空気が直接導入される。コンプレッサ2と燃料電池12との間には前述の流量センサ25、前述の温度センサ4、燃料電池12の空気極側の圧力を検出する圧力センサ15が設置される。
【0030】
燃料電池12には下流に燃焼器17が接続され、燃料電池12で改質ガスと空気を用いて発電が行われる。
【0031】
燃料電池12で発電された電気は負荷26と充電器27とに供給されており、例えば負荷としてバッテリを備え、発電した電気を充電したり、または負荷としてインバータを設けて、インバータにモータを接続して、車両の動力源としたりすることができる。また充電器27には充電器の充電状態を検出する充電状態検出装置28(例えば電圧計)が備えられる。
【0032】
燃料電池12での発電に寄与しなかった余剰空気は圧力制御弁13で調圧されて燃焼器17に供給され、同様に余剰改質ガスは圧力制御弁14で調圧されて燃焼器17に供給される。燃焼器17に供給されたこれら余剰改質ガスと余剰空気は、燃焼器17で原料タンク23から供給されたメタノールと混合された上で、燃焼される。原料タンク23から供給されるメタノールの流量はメタノール流量制御装置19(例えば、インジェクタ)によって制御される。
【0033】
燃焼器17で生成された燃焼ガスは蒸発器3に送られる。なお送られる燃焼ガスは温度センサ18で温度を検出される。
【0034】
蒸発器3には、メタノールと水がそれぞれ原料タンク21、23から供給され、これらメタノールと水は流量制御装置20、22によって流量を制御される。これらメタノールと水は燃焼ガスの熱量に応じ蒸発器3で気化し、この気化した燃料蒸気が改質反応器1に供給される。その温度は温度センサ7によって検出される。
【0035】
改質反応器1には前述のようにコンプレッサ2からの空気とこの燃料蒸気とが供給されて、改質反応を生じて改質ガスを生成する。
【0036】
次に燃料電池システムの制御の構成について説明する。図1に示すように、本実施形態においてシステム制御は、燃焼器温度制御手段C1、目標値制御手段C2、非干渉制御手段C3、改質反応器温度制御手段C4、ピーク温度制御手段C5によってなされる。ただし、これらの制御手段C1からC5は実在するものではなく、CPUと周辺インターフェースを有するマイクロコンピュータによって行われる制御内容を解り易くするために用いたものである。
【0037】
燃焼器温度制御手段C1は、燃焼器17の出口ガス温度が目標ガス温度となるように目標空気流量と要求燃焼器用燃料流量を算出するもので、燃焼ガスの温度を検出する温度センサ18からの出力信号と、後述する目標値制御手段C2の燃焼器出口目標温度算出手段で算出される燃焼器目標温度とに基づいて、目標空気流量と要求燃焼器用燃料流量を算出する。目標空気流量は目標値制御手段C2に出力されるとともに、要求燃焼器用燃料流量はメタノール流量制御装置19に出力されて、燃焼器17に供給されるメタノール流量をコントロールする。
【0038】
目標値制御手段C2は、要求発電量を入力し、前述の燃焼器出口目標温度算出手段のほか、一酸化炭素除去器8に供給する空気流量の目標空気流量を算出する空気流量目標値算出手段と、燃料電池12の水素極側入口圧力の目標値を算出する水素極側入口圧力目標値算出手段と、燃料電池12の空気極側入口圧力の目標値を算出する空気極側入口圧力目標値算出手段と、燃焼器温度制御手段C1で算出した目標空気流量に基づき燃料電池システムで要求される総空気流量を算出する総空気流量算出手段とを構成し、これらの出力値は非干渉制御手段C3に出力される。
【0039】
なお要求発電量は、例えば燃料電池システムを車両に適用した場合にはアクセルの踏込み量に基づいて算出される。
【0040】
さらに目標値制御手段C2は、改質反応器1に供給する空気流量の目標値を算出する空気流量目標値算出手段と、後述するピーク温度制御手段C5のメタノール流量制限及び補正指令に基づき蒸発器3へのメタノールの目標流量を算出するメタノール目標流量算出手段と、後述するピーク温度制御手段C5の水流量制限及び補正指令に基づき蒸発器3への水の目標流量を算出する水目標流量算出手段と、後述するピーク温度制御手段C5の改質反応器の目標管理温度の変更指令に基づき改質反応器1の目標管理温度を算出する改質反応器目標管理温度算出手段とを備えており、空気流量目標値算出手段と改質反応器目標管理温度算出手段の出力値は改質反応器温度制御手段C4に出力され、メタノール目標流量算出手段の出力値は流量制御装置22へ、また水目標流量算出手段の出力値は流量制御装置20へ出力される。これら流量制御装置20、22によって蒸発器3W介して改質反応器1に供給される改質原燃料の流量が目標流量となるように制御される。なお流量制御装置20、22は例えばインジェクタによって構成される。
【0041】
改質反応器温度制御手段C4には前述の目標値制御手段C2から出力された信号の一部が入力され、目標値制御手段C2からの信号のほかに、ピーク温度制御手段C5から改質反応器内のピーク温度及び改質反応器1に供給される空気補正量の出力信号が入力される。
【0042】
改質反応器温度制御手段C4では改質反応器1で要求される最終的な目標空気流量を算出する。目標値制御手段C2で算出される空気流量目標値と改質反応器温度制御手段C4内に備えられた温度フィードバック制御手段の補正量とを加算する(加算したものを空気流量要求値と呼ぶ)。
【0043】
この補正した空気流量要求値を非干渉制御手段C3に出力し、この空気流量要求値に基づいて非干渉制御手段C3が流量制御弁6の開度を制御することで改質反応器1に供給する空気流量を制御できる。
【0044】
本実施形態では水の流量とメタノールの流量とを測定する流量センサを取付けていないため、目標値制御手段C2で求めたメタノール及び水の目標流量に基づいて制御を行ったが、それぞれの流量を検出する流量センサを設け、このセンサの検出値に基づいて制御を行うようにしてもよい。
【0045】
非干渉制御手段C3には空気流量要求値のほか、一酸化炭素除去器8に供給する空気流量の目標空気流量値と、燃料電池12の水素極側入口圧力目標値と、燃料電池12の空気極側入口圧力目標値と、燃焼器温度制御手段C1から出力された目標空気流量に基づいて燃料電池システムで要求される総空気流量が目標値制御手段C2から入力され、さらに圧力センサ15、16、流量センサ5、24、25の検出値が入力される。非干渉制御手段C3はこれらの目標値をそれぞれ圧力と空気流量との間の干渉なしに制御する。つまり非干渉制御手段C3はこれら目標値のうちの一つの圧力あるいは空気流量を変更しても他の圧力、空気流量の制御に影響を及ぼさないように制御する。
【0046】
具体的には非干渉制御手段C3は、空気総流量を制御するためにコンプレッサ2の回転速度を制御し、一酸化炭素除去器8への空気流量を制御するために流量制御弁10の開度を制御する。さらに改質反応器1への空気流量を制御するために流量制御弁6の開度を制御する。さらにまた燃料電池12の空気極側圧力を制御するために圧力制御弁13の開度を制御し、一方、水素極側圧力を制御するために圧力制御弁14の開度を制御する。
【0047】
図2は改質反応器1での反応ピーク温度を制御するためのピーク温度制御手段C5の制御内容を示すフローチャートである。
【0048】
まずステップSa1で改質反応器1に供給される改質原燃料流量と温度、及び空気の流量と温度を各センサ4、5、7、9を用いて検出する。これらの検出値に基づいて改質反応器1内での最高温度が発生されるピーク温度領域をピーク温度制御手段C5で算出する。
【0049】
本実施形態の場合、改質原燃料が増加するとピーク温度領域は下流側に移動し(燃料の流速が増加し、入り口付近だけの触媒だけでは反応しきれなくなって、下流側の触媒も反応するため)、改質原燃料の温度と空気の温度が上昇するとピーク温度領域は上流側に移動する(触媒は改質原燃料や空気の温度が高い方が活性が高くなり、改質反応のピークが上流側に移動するため)傾向がある。
【0050】
したがって改質原燃料の流量と温度、空気の流量と温度の組合せからピーク温度領域を予め設定しておくことが可能であり、これをデータテーブルあるいは関数として表すことができる。
【0051】
また本実施形態では、メタノールと水の流量を測定するセンサ等を設置していないので、目標値制御手段C2で設定した目標値を用いたが、メタノールと水の流量を検出するセンサ等を用いて、これらの検出値を使用してもよい。さらにメタノールと水の温度は改質反応器1に供給される燃料改質蒸気の温度を検出する温度センサ7の検出値を用いている。空気流量は流量センサ5、空気温度は温度センサ4の検出値を用いている。
【0052】
ステップSa2では、改質反応器1内の温度を推定し、その中からピーク温度領域の温度を推定する。推定は目標値制御手段C2で算出したメタノールと水の目標流量と、燃料改質蒸気の温度(温度センサ7の検出値)と、コンプレッサ2から供給される空気の温度(温度センサ4の検出値)と流量(流量センサ5の検出値)を入力として、改質反応器内のピーク温度を算出する関数を作成し行う。
【0053】
ここで空気流量が増加すれば部分酸化反応が活発になり改質反応器内の温度は上昇し、減少すれば温度は下がる。空気温度が上昇すれば空気の持ち込む熱量が増加するので、改質反応器内の温度も上昇し、空気温度が下がれば改質反応器内の温度も低下する。
【0054】
改質原燃料(メタノールと水の比率は一定とする)の流量を増加すると吸熱反応である改質反応が活発となり、改質反応器内の温度は低下し、流量を減らすと改質反応器内の温度は上昇する。改質原燃料の温度が上昇すれば改質原燃料の持ち込む熱量が増加するので、改質反応器内の温度も上昇し、改質原燃料の温度が下がれば改質反応器内の温度も低下する。
【0055】
このように改質反応器内の温度は、改質原燃料および空気の流量、温度と密接な関係にあり、改質反応器内の温度は予め実験で得たデータテーブルあるいは多変量解析に基づく関数として求めることができる。
【0056】
また次のようにエネルギーバランス式から求めることもできる。
【0057】
【数1】
ここで、Tは改質反応器内の温度[K]であり、
u1は空気流速[m/s]で、流量センサ5の出力[m3/s]/流路断面積[m2]で算出される。
【0058】
u2はメタノールの流速[m/s]であり、u1と同様に求めることができる。
【0059】
u3は水の流速[m/s]であり、u1と同様に求めることができる。なお、メタノール、水の流量センサは本実施形態では使用していないので、目標値を用いる。
【0060】
H1は水とメタノールの反応熱量(吸熱)であり、−49500[J/mol]とする。
【0061】
H2は酸素とメタノールの反応熱量(発熱)であり、189600[J/mol]とする。
【0062】
pは平均密度[kg/m3]であり、
Cpは平均熱容量[J/kg*K]である。
【0063】
ここで、k1とk2は下式で求められる。
【0064】
k1=A1*EXP(−E1/RT)*(CH3OH)*(H2O)
k2=A2*EXP(−E2/RT)*(CH3OH)*(O2)0.5
E1、E2は活性化エネルギー定数であり、A1、A2は頻度係数と呼ぶ適当な定数である。
【0065】
(CH3OH)、(H2O)、(O2)は濃度[mol/m3]を表す。
【0066】
Rはガス定数であり、8.314[J/(mol*K)]とする。
【0067】
Uは熱伝達率[J/(K*s*m2)]である。
【0068】
Aは壁の伝熱面積[m2]である。
【0069】
Twは改質反応器の外気温[K]であり、本実施形態では測定していないので、固定値とした。
【0070】
zは空間を表し、tは時間を表す。
【0071】
なお式(1)は下式より求めることができる。
【0072】
【数2】
上式においてsは面積、v=u1+u2+u3でsを一定とすると式(1)が求まる。
【0073】
式(1)からマイクロコンピュータで計算するために空間微分を消去する。そのため本実施形態では1次後退差分を用いる。また改質反応器1の全長をL(m)として、これを適当なN個のサブ領域に分割すると、Δzは式(3)で求まる。
【0074】
【数3】
1次後退差分は、次式で示される。
【0075】
【数4】
nはn番目のサブ領域であることを表す。
【0076】
式(3)を使って式(1)を表すと以下となる。
【0077】
【数5】
本実施形態の場合、n=1のとき、T0は水、メタノール、空気の平均温度である。なお空気の温度は温度センサ4の測定値を、水とメタノールの温度はこれらが混合されて蒸気となっているので、温度センサ7の測定値を用いる。
【0078】
式(5)は改質反応器1内のエネルギーバランスを表す式であり、これは積分すれば熱量変化を表す式として利用できる。なお式(5)に示されるように熱量変化は指数関数を含んでおり、温度に関して非線形性を有することがわかる。
【0079】
なお式(5)中の定数k1、k2は濃度から算出でき、濃度は下式で求められる。
【0080】
【数6】
本実施形態では水とメタノールの流量を検出する流量センサを設置していないので、目標値制御手段C2で算出した目標値を用いる。流量センサを設置している場合には流量センサの検出値を用いればよい。
【0081】
ピーク温度制御手段C5で設定した領域が改質反応器入口に近い場合には式(5)、(6)の演算回数は多くなく、問題とはならないが、ピーク温度の領域が入口より遠くにある場合には、演算回数が多くなり時間が掛かることになる。
【0082】
このような場合にはまず、Δzの分割数を小さくしてピーク温度領域を算出し、次に算出したピーク温度領域をさらに分割してピーク温度領域を算出すれば、精度よくピーク温度領域を算出するとともに、演算時間の短縮を図ることができる。
【0083】
ステップSa3では、ステップSa2と同様の手法を用いて改質反応器1に設けた温度センサ9の位置での改質反応器内温度を推定する。
【0084】
ステップSa4では、ステップSa3で算出(推定)した温度センサ位置での温度と温度センサ9が検出した実際の温度との偏差を算出する。
【0085】
ステップSa5で偏差分を補正する。ステップSa2で算出したピーク温度推定値にステップSa4で求めた偏差を加算し補正する。本実施形態ではピーク温度推定値に偏差をそのまま加算したが、偏差に補正パラメータを乗じて加算してもよい。
【0086】
ステップSa6では、ステップSa5で補正されたピーク温度推定値を所定時間、複数個保存するようにするとともに、新しい推定値を算出する毎に最も古い推定値と置き換えるようにする。
【0087】
たとえば3回分の推定値を保存するようにすると、次の推定値を算出したら、保存されていた3回分の推定値のうち最も古い推定値と置き換えて、データ上は常に3回分のピーク温度推定値を保存しておく。
【0088】
これらのピーク温度推定値のうち最も高温の推定値をピーク温度として決定する。このような判定をすることにより、ピーク温度制御手段C5が明らかに不適切な推定値を出力した場合でも、その影響を受けないようにしている。
【0089】
ステップSa7では、ステップSa6で決定したピーク温度を改質反応器温度制御手段C4に出力する。改質反応器温度制御手段C4は入力されたピーク温度と目標温度との偏差を求め、この偏差に基づいて改質反応器1に供給すべき空気流量を算出して、非干渉制御手段C3に出力する。非干渉制御手段C3ではこの空気流量となるように、空気流量を制御する流量制御弁6の開度を制御する。
【0090】
ステップSa8では、ステップSa6で算出されたピーク温度に基づいて改質原燃料の流量を制限する。この制御については図3のフローチャートを用いて詳しく説明する。
【0091】
このようにして改質反応器8内の温度を目標管理温度範囲に維持することができ、たとえば改質反応器内で異常に高温となる部位が生じることによって損傷するようなことがない。
【0092】
図3はピーク温度制御手段C5が行う改質原燃料の流量制限を説明するフローチャートである。
【0093】
ステップSb1では、目標値制御手段C2が設定した改質反応器目標管理温度をステップSa6で算出されたピーク温度が超えているかどうかを判定する。越えている場合にはステップSb2へ、越えていない場合にはステップSb4へ進む。
【0094】
ステップSb2では、改質反応器内の温度が限界であると解釈し、改質原燃料のメタノールと水の流量を現在値より減少しないように制御する。この流量制限の信号は目標値制御手段C2に送られる。目標値制御手段C2ではメタノールと水の目標流量を算出する際に、この信号の有無を確認し、信号が入力されている場合には、メタノールと水の流量を現在の流量より減少させないようにする。
【0095】
次に、ステップSb3ではピーク温度が目標管理温度内に収まるように空気流量補正量を算出する。
【0096】
本実施形態では空気流量補正量を−Δ1 1としている。これは予め空気流量変化に対してどの程度変化するかを調べるステップ応答試験から決定したものである。なお、より正確な制御のためにステップ応答試験のデータから作成するダイナミックモデル(時系列モデル)を使ったモデル予測制御手法を使って計算するようにしてもよい。
【0097】
空気流量補正量を改質反応器温度制御手段C4に出力する。一方、ステップSa6で求めたピーク温度と目標値制御手段C2で算出した目標値との偏差を求め、この偏差に基づき、改質反応器1に供給すべき空気流量を改質反応器温度制御手段C4で算出する。この空気流量と空気流量補正量を加算する。さらにこの値に目標値制御手段C2で算出した改質反応器1に供給する空気流量目標値をフィードフォワード項として加算し、この値を非干渉制御手段C3に出力する。
【0098】
一方、ピーク温度が上限温度以下の場合にはステップSb4に進み、ピーク温度が目標管理温度の下限を下回っているかどうかを判定する。下回っている場合にはステップSb5に進み、下回っていない場合には制御を終了する。
【0099】
ステップSb5では、改質反応器内の温度が限界であると解釈し、改質原燃料のメタノールと水の流量を現在値より増加しないように制御する。この流量制限の信号は目標値制御手段C2に送られる。目標値制御手段C2ではメタノールと水の目標流量を算出する際に、この信号の有無を確認し、信号が入力されている場合には、メタノールと水の流量を現在の流量より増加させないようにする。
【0100】
続いてステップSb6ではピーク温度が目標管理温度内に収まるように空気流量補正量を算出する。
【0101】
本実施形態では空気流量補正量を+Δ1 2としている。これは予め空気流量変化に対してどの程度変化するかを調べるステップ応答試験から決定したものであるのはステップSb3の場合と同様である。
【0102】
空気流量補正量を改質反応器温度制御手段C4に出力する。一方、ステップSa6で求めたピーク温度と目標値制御手段C2で算出した目標値との偏差を求め、この偏差に基づき、改質反応器1に供給すべき空気流量を改質反応器温度制御手段C4で算出する。この空気流量と空気流量補正量を加算する。さらにこの値に目標値制御手段C2で算出した改質反応器1に供給する空気流量目標値をフィードフォワード項として加算し、この値を非干渉制御手段C3に出力する。
【0103】
このようにして改質原燃料の流量を制限でき、改質反応器8内の温度を目標管理温度に維持し、温度変化のオーバーシュートやアンダーシュートが未然に防止された状態で改質反応器8を運転することが可能となる。
【0104】
なお本実施形態は本発明を改質反応器1に適用したものであるが、これに限定されるものではなく、一酸化炭素除去器8に適用することもできる。たとえば一酸化炭素除去器8内で部位によって温度差が生じた場合、一酸化炭素除去器8を破損しないように温度を目標管理温度内に制御する必要がある。その場合には吸熱は熱交換器によってなされる。よって本実施形態に熱交換器を追加して、一酸化炭素除去器8に本発明を適用することで、一酸化炭素除去器8の温度を目標管理温度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の全体構成図である。
【図2】 同じく反応ピーク温度の制御を説明するフローチャートである。
【図3】 同じく改質原燃料の流量制限を説明するフローチャートである。
【図4】 本発明の請求項1を説明する図である。
【図5】 本発明の請求項3を説明する図である。
【図6】 本発明の請求項7を説明する図である。
【符号の説明】
1 改質反応器
2 コンプレッサ
3 蒸発器
8 一酸化炭素除去器
12 燃料電池
17 燃焼器
26 負荷
【数1】 【数2】 【数3】 【数4】 【数5】 【数6】
Claims (7)
- 吸熱を伴う改質反応と発熱を伴う部分酸化反応とを併用し、改質原燃料と酸化剤を反応させて水素を含む改質ガスを生成する改質反応器と、
改質反応器に備えられ、改質反応器内の温度を検出する温度検出手段と、
改質反応器に酸化剤を供給する酸化剤供給器と、
を備えた燃料改質装置において、
改質反応器内での温度を推定する温度分布推定手段と、
この推定された温度分布に基づいて最も高温となる部位の温度を推定するピーク温度推定手段と、
同じく温度検出手段が設置された箇所の改質反応器内の温度を推定する温度検出部温度推定手段と、
温度検出手段の検出値と温度検出部温度推定手段の推定値との偏差に基づき、ピーク温度推定手段の推定値を補正するピーク温度補正手段と、
を備えたことを特徴とする燃料改質装置。 - 前記温度分布推定手段は、改質原燃料および酸化剤の供給量とその温度に基づいて改質反応器内の温度分布を推定することを特徴とする請求項1に記載の燃料改質装置。
- 前記温度分布推定手段は、改質原燃料流量とその温度、酸化剤流量とその温度のパターンから予め改質反応器内のピーク温度が検出される領域を求め、これに基づき設定されたデータテーブルであることを特徴とする請求項1に記載の燃料改質装置。
- 前記改質反応器内の温度の目標温度を設定する目標温度制御手段と、
前記ピーク温度補正手段が補正した推定値と目標温度とを比較し、推定値が目標温度に維持されていない場合に、改質原燃料の流量を増量時又は減量時に制限するピーク温度制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の燃料改質装置。 - 前記ピーク温度推定手段が演算毎に推定した最高温度のデータ中から最高値をピーク温度とするピーク温度決定手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料改質装置。
- 温度分布推定手段は、改質反応器内の所定箇所での改質原燃料の流量と温度、及び同じく酸化剤の流量と温度に基づいて求まる改質反応器内に入る熱エネルギと、改質反応器で生じる熱エネルギと、改質反応器外に放熱する熱エネルギと、改質ガスが改質反応器外に持ち出すエネルギとに基づいて改質反応器内の温度を推定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の燃料改質装置。
- 前記ピーク温度補正手段が補正した推定値が目標温度となるように前記酸化剤供給器を制御する改質反応器温度制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の燃料改質装置。
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