JP3985427B2 - 燃料電池システムおよび改質器の温度制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池システムおよび改質器の温度制御方法に関し、特に改質器の温度制御の応答性が良好な燃料電池システムおよび応答性に優れた改質器の温度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池発電装置では、メタノールなどの炭化水素原料を改質反応させて水素濃度の高い改質ガスを生成する改質器と、改質器で生成された改質ガスと、これとは別にコンプレッサなどの空気供給装置から供給される空気中の酸素ガスとを反応させて発電する燃料電池本体と、メタノールなどの炭化水素原料を加熱して蒸発させるための熱を原料蒸発部へ供給する燃焼器と、が主な構成要素とされる。そして、原料蒸発部にて蒸発した原燃料は、改質器内部に設けられた改質反応を行う触媒に導かれ、これにより水素濃度の高い改質ガスが生成される。
【0003】
また、いわゆるオートサーマル式改質器では、水素濃度の高い改質ガスを生成する水蒸気改質反応(吸熱反応)と、この水蒸気改質反応に必要な熱量を賄うための部分酸化反応(発熱反応)との両方の反応が進行するが、このとき、改質反応全体の温度を高くするためには、発熱反応である部分酸化反応を促進させる。すなわち、改質器内部の触媒において、改質ガスを生成する水蒸気改質反応が占める割合を相対的に小さくする。
【0004】
逆に、改質反応全体の温度を低くするためには、吸熱反応である水蒸気改質反応を促進させて部分酸化反応が改質器内部の触媒上で占める割合を相対的に小さくする。
【0005】
ここで、部分酸化反応が改質器内部の触媒上で占める割合は、改質器に供給する酸化剤の量によって変化させることができる。酸化剤は、改質器とは別に設けられた空気供給装置から供給される空気中の酸素ガスが一般的に使用されるため、この空気の流量を制御することで改質器の温度を制御することができる。
【0006】
従来の改質器の温度制御方法として、温度センサにより測定した改質器の温度が目標とする温度になるように、空気供給装置の操作量を算出して、空気供給装置を制御するものが、たとえば特開平7−296834号公報にて報告されている。
【0007】
また、改質器の入口に空気流量を調節するためのバルブを設け、温度センサにより測定した改質器の温度が目標とする温度になるように、バルブ開度を制御するものが、たとえば特開平11−130403号公報にて報告されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、改質器は圧力をかけて運転されるため、上述した従来の制御方法では、改質器へ流入する空気流量が目標空気流量に到達するまでに時間がかかり、改質器の温度制御の応答性が悪いという問題がある。
【0009】
すなわち、通常改質器の圧力は別途設置された圧力調整バルブによって制御されるが、空気供給装置あるいは空気流量調整バルブの開度を調整して空気の流量を増減させると、改質器内部の圧力も変化することになる。これを受けて改質器内部の圧力を一定に保つために、圧力調整バルブを再調整する必要が生じ、さらにこのことでまた改質器内部の圧力が変化するので、改質器へ流入する空気流量を再び変化させる必要が生じる。つまり、こうした制御が延々と繰り返されるため、改質器へ流入する空気流量が目標空気流量に到達するまでに時間がかかり、改質器の温度制御応答が遅いという問題が生じる。
【0010】
また、燃料電池システムでは、改質器にて生成された改質ガス中に含まれる一酸化炭素濃度が高いと燃料電池本体の触媒が被毒することから、改質器と燃料電池本体との間に選択酸化反応により一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去器も設けられているが、上述した空気供給装置はこの一酸化炭素除去器へも空気を供給しているので、空気流量を制御する場合には改質器だけでなく燃料電池システム全体の影響も考慮しなければならない。
【0011】
そこで、燃料電池システム全体の影響を考慮しながら改質器への空気流量を素早く目標値に追従させて改質器の温度制御応答性能を向上させる方法として、燃料電池システム全体の複数の圧力と流量とを非干渉化して制御する方法が考えられる。
【0012】
ところが、燃料電池システム全体の全ての圧力と流量とを非干渉化の対象とすると、非干渉化制御ゲイン行列が大きくなり過ぎ、その結果、演算時間が著しく長くなるという問題がある。このことは、実際のリアルタイムマイコンでは制御が実行できないことを意味する。
【0013】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、制御演算時間が短縮でき改質器の温度制御の応答性が良好な燃料電池システムおよび応答性に優れた改質器の温度制御方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明の第1の観点によれば、燃料電池本体と、前記燃料電池本体に改質ガスを供給する改質器と、前記燃料電池本体および前記改質器の間に設けられ前記改質器により生成された改質ガス中の一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去手段と、前記燃料電池本体、前記改質器および前記一酸化炭素除去手段に酸化剤を供給する酸化剤供給手段とを有する燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池本体の負荷電力の要求値に基づいて、前記酸化剤供給手段から供給される総酸化剤量の目標値、前記酸化剤供給手段から前記改質器へ供給される酸化剤流量の目標値、前記酸化剤供給手段から前記一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤流量の目標値、前記燃料電池本体のアノード側入口圧力の目標値および前記燃料電池本体のカソード側入口圧力の目標値を算出する目標値算出手段と、
酸化剤の総流量、改質器へ供給される酸化剤流量、アノード側圧力およびカソード側圧力の実際の値が、前記目標値算出手段で算出されたそれぞれの目標値になるように、これら酸化剤の総流量、改質器へ供給される酸化剤流量、アノード側圧力およびカソード側圧力を制御する第1の制御手段と、
前記第1の制御手段で算出されたそれぞれの操作量で制御した場合に、その影響が、酸化剤の総流量、改質器へ供給される酸化剤流量、アノード側圧力およびカソード側圧力に対して互いに干渉しないように、それぞれの操作量を非干渉化した操作量に変換する非干渉制御手段と、
前記一酸化炭素除去手段へ供給される実際の酸化剤流量が前記目標値算出手段で算出された目標値になるように、一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤流量を制御する第2の制御手段と、
前記一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤流量に応じて総酸化剤流量をフィードフォワード補償する外乱補償手段と、を有することを特徴とする燃料電池システムが提供される(請求項1参照)。
【0015】
上記発明をより具体化すれば、酸化剤を燃料電池システムに供給する酸化剤供給手段と、
前記酸化剤供給手段より供給される酸化剤を改質器へ供給する第1の酸化剤供給系と、
前記酸化剤供給手段より供給される酸化剤を燃料電池本体のカソード側へ供給する第2の酸化剤供給系と、
原燃料を蒸発させた原料ガスを前記改質器へ供給する原料ガス供給手段と、
前記原料ガス供給手段より供給される原料ガスを内部に設けられた触媒層で改質反応させて水素含有改質ガスを生成し、前記酸化剤供給手段より供給される酸化剤を内部に設けられた触媒層で部分酸化反応させて前記改質反応に必要な熱量を得る改質器と、
前記改質器の後段に設けられた一酸化炭素除去手段と、
前記酸化剤供給手段より前記一酸化炭素除去手段に酸化剤を供給する第3の酸化剤供給系と、
前記一酸化炭素除去手段を通過した改質ガスがアノード側に供給され、前記酸化剤供給手段からの酸化剤がカソード側に供給されて、発電する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体のアノード側出口の排改質ガス系に設けられ、アノード側の圧力を調整するアノード側圧力調整用バルブと、
前記燃料電池本体のカソード側出口の排酸化剤系に設けられ、カソード側の圧力を調整するカソード側圧力調整用バルブと、
前記第1の酸化剤供給系の酸化剤流量を調整する流量調整用バルブと、
前記第3の酸化剤供給系の酸化剤流量を調整する流量調整用バルブと、を有する燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池本体の負荷電力の要求値に基づいて、前記酸化剤供給手段から供給される酸化剤の総流量の目標値、前記酸化剤供給手段から前記改質器へ供給される酸化剤流量の目標値、前記酸化剤供給手段から前記一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤流量の目標値、前記燃料電池本体のアノード側入口圧力の目標値および前記燃料電池本体のカソード側入口圧力の目標値を算出する目標値算出手段と、
前記酸化剤供給手段から供給される酸化剤の総流量を検出する酸化剤総流量検出手段と、
前記改質器へ供給される酸化剤流量を検出する改質器酸化剤流量検出手段と、
前記燃料電池本体のアノード側入口の圧力を検出するアノード側圧力検出手段と、
前記燃料電池本体のカソード側入口の圧力を検出するカソード側圧力検出手段と、
これら酸化剤総流量検出手段、改質器酸化剤流量検出手段、アノード側圧力検出手段およびカソード側圧力検出手段により検出された実際の検出値が、前記目標値算出手段で算出されたそれぞれの目標値になるように、前記酸化剤供給手段、前記第1の酸化剤供給系の流量調整用バルブ、アノード側圧力調整用バルブおよび前記カソード側圧力調整用バルブをそれぞれ制御する第1の制御手段と、
前記第1の制御手段で算出されたそれぞれの操作量で、前記酸化剤供給手段、前記第1の酸化剤供給系の流量調整用バルブ、アノード側圧力調整用バルブおよび前記カソード側圧力調整用バルブをそれぞれ制御した場合において、その影響が、酸化剤の総流量、改質器へ供給される酸化剤流量、アノード側圧力およびカソード側圧力に対して互いに干渉しないように、非干渉化した酸化剤供給手段の操作量と、第1の酸化剤供給系の流量調整用バルブの操作量と、アノード側圧力調整用バルブの操作量と、カソード側圧力調整用バルブの操作量とのそれぞれに変換する非干渉制御手段と、
前記一酸化炭素除去手段へ供給される実際の酸化剤流量が前記目標値算出手段で算出された目標値になるように、前記第3の酸化剤供給系の流量調整用バルブを制御する第2の制御手段と、
前記一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤流量に応じて酸化剤の総流量をフィードフォワード補償する外乱補償手段と、を有することを特徴とする燃料電池システムが提供される(請求項2参照)。
【0016】
又、上記目的を達成するために、本発明の第2の観点によれば、燃料電池本体と、前記燃料電池本体に改質ガスを供給するオートサーマル式改質器と、前記燃料電池本体および前記改質器の間に設けられ前記改質器により生成された改質ガス中の一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去手段と、前記燃料電池本体、前記改質器および前記一酸化炭素除去手段に酸化剤を供給する酸化剤供給手段とを有する燃料電池システムにおける前記改質器の温度制御方法であって、前記酸化剤供給手段から供給される酸化剤の総流量、前記改質器へ供給される酸化剤流量、前記燃料電池本体のアノード側圧力および前記燃料電池本体のカソード側圧力の制御要因を非干渉制御するとともに、前記一酸化炭素除去手段への酸化剤流量の変化の影響が前記改質器へ及ぶ前に、前記一酸化炭素除去手段への酸化剤流量を酸化剤の総流量に対して外乱補償することを特徴とする改質器の温度制御方法が提供される(請求項4参照)。
【0017】
本発明の燃料電池システムおよび改質器の温度制御方法では、非干渉化の対象として、1酸化剤供給手段から供給される酸化剤の総流量、2改質器へ供給される酸化剤流量、3燃料電池本体のアノード側圧力、4燃料電池本体のカソード側圧力、という4つの制御要因を選択し、これら4つを非干渉制御するとともに、一酸化炭素除去手段への酸化剤流量の変化の影響が改質器へ及ぶ前に、この一酸化炭素除去手段への酸化剤流量を酸化剤の総流量に対して外乱補償する。ちなみに、燃料電池本体のカソード側へ供給される酸化剤流量は、酸化剤供給手段から供給される酸化剤の総流量と改質器へ供給される酸化剤流量とを制御すれば、自動的に制御することができる。
【0018】
このように非干渉化対象を4つに限定することで、非干渉化制御ゲイン行列の大きさを小さくでき、さらに外乱補償器をシンプルに構成することができる。この結果、マイクロコンピュータでの演算時間が著しく短縮できるので、改質器への酸化剤流量を目標値へ素早く追従させて改質器温度制御応答を向上させることができる。
【0019】
(2)上記発明においては特に限定されないが、前記外乱補償手段は、前記一酸化炭素除去手段へ供給される実際の酸化剤流量と前記目標値算出手段により算出された目標値との差に応じて外乱補償することがより好ましい(請求項3参照)。
【0020】
一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤の目標値と実際に一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤の流量の差分を補正流量として算出し、これで外乱補償することで、燃料電池システムが安定運転できるように算出された目標値とのズレを修正しながら制御できるので、燃料電池システムを安定に制御することができる。なお、一酸化炭素除去手段に供給される酸化剤の流量は、燃料電池システムの運転状態に応じて酸化剤流量を算出する関数でも良いし、酸化剤流量を検出するセンサでも良い。
【0021】
【発明の効果】
請求項1、2および4記載の発明によれば、非干渉化対象を4つに限定することで、燃料電池システムの全ての圧力と流量とを非干渉化制御するのに比較して、非干渉化制御ゲイン行列の大きさを小さくでき、さらに外乱補償器をシンプルに構成することができる。この結果、マイクロコンピュータでの演算時間が著しく短縮できるので、改質器への酸化剤流量を目標値へ素早く追従させて改質器温度制御応答を向上させることができる。
【0022】
これに加えて、請求項3記載の発明によれば、一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤の目標値と実際に一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤の流量の差分を補正流量として算出し、これで外乱補償することで、燃料電池システムが安定運転できるように算出された目標値とのズレを修正しながら制御できるので、燃料電池システムを安定に制御することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の燃料電池システムを示すブロック図(クレーム対応図)、図2は本発明の燃料電池システムの第1実施形態を示すブロック図、図3は本発明の第1実施形態に係る制御手段の制御内容を説明するためのブロック図、図4は本発明に係る一酸化炭素除去手段で要求される空気流量を算出する関数を示すグラフである。以下では、図1に示す上位概念の構成と、図2に示す下位概念の構成とを対比しながら説明する。
【0024】
本実施形態の燃料電池システムは、図1に示すように酸化剤を燃料電池システムに供給する酸化剤供給手段51(図2において空気供給装置4)と、この酸化剤供給手段51より供給される酸化剤を改質器52(図2において改質器1,2)へ供給する第1の酸化剤供給系53と、酸化剤供給手段51より供給される酸化剤を燃料電池本体54(図2において燃料電池本体3)のカソード側へ供給する第2の酸化剤供給系55と、原燃料を蒸発させた原料ガスを改質器52へ供給する原料ガス供給手段56(図2において流量制御弁11,12、水原料タンク15、メタノール原料タンク16、流量制御器17,18)と、原料ガス供給手段56より供給される原料ガスを内部に設けられた触媒層で改質反応させて水素含有改質ガスを生成し、また酸化剤供給手段51より供給される酸化剤を内部に設けられた触媒層で部分酸化反応させて改質反応に必要な熱量を得る改質器52と、改質器52にて生成された改質ガスに含まれた一酸化炭素を選択酸化反応させることで除去する一酸化炭素除去手段57(図2において一酸化炭素除去装置24)と、一酸化炭素除去手段57を通過した改質ガスがアノード側に供給されるとともに酸化剤供給手段51からの酸化剤がカソード側に供給されて、発電する燃料電池本体54と、燃料電池本体54のアノード側出口の排改質ガス系58に設けられ、アノード側の圧力を調整するアノード側圧力調整用バルブ60(図2においてアノード圧力調整弁7)と、燃料電池本体54のカソード側出口の排酸化剤系59に設けられ、カソード側の圧力を調整するカソード側圧力調整用バルブ61(図2においてカソード圧力調整弁6)とを有する。
【0025】
図2に示すように、改質器は原料を改質して改質ガスを生成する蒸発部1と改質触媒部2とを含み、蒸発部1では、当該蒸発部1に供給された原料を燃焼器8から供給される熱を使って蒸発させる。この蒸発部1で蒸気となった原料は改質器の改質触媒部2へ導かれて改質される。本実施形態では、蒸発部1と改質触媒部2を合わせて改質器と称する。
【0026】
改質触媒部2では、改質器の蒸発部1で蒸発させた原料と、空気供給装置4からの空気中の酸素とを反応させて、発熱反応である部分酸化反応と、水素濃度の高い改質ガスを生成する水蒸気改質反応を行う。この改質器はいわゆるオートサーマル型改質器であって、部分酸化反応による発熱の一部または全部は、水蒸気改質反応の吸熱分を賄うために使われる。
【0027】
改質器1へ供給する原料には水とメタノールとが使用され、それぞれ流量制弁11,12を通して改質器の蒸発部1へ供給される。水の流量は流量制御弁11で調整され、原料となる水は水原料タンク15から供給される。同様にメタノール流量は流量制御弁12で調整され、原料であるメタノールはメタノール原料タンク16から供給される。目標値算出器30は、燃料電池本体3に対して要求される電力から必要なメタノールと水の流量をそれぞれ算出する装置であり、ここで算出された水とメタノールの流量はそれぞれ水とメタノールの目標流量として流量制御器17,18に入力される。そして、流量制御器17,18ではそれぞれの目標流量から流量制御弁11,12の目標開度を算出し、それぞれの弁開度を制御する。
【0028】
改質器の改質触媒部2にて生成された水素ガス中には燃料電池本体3の触媒を被毒させる一酸化炭素が含まれていることもあるため、これを一酸化炭素除去装置24に導くとともに、選択酸化反応のための空気を空気供給装置4から流量制御弁25を介して当該一酸化炭素除去装置24へ導く。このときの空気量は、空気流量制御手段13から流量制御弁25への制御信号により制御されるが、燃料電池本体3の負荷電力の要求値に応じて一酸化炭素除去装置24への目標空気流量の目標値を目標値算出器30にて算出し、空気流量制御手段13にて、負荷電力の要求値と目標値算出器30の出力値とから流量制御弁25の目標開度を算出する。そして、この目標開度と弁開度検出装置29の出力値との間に偏差が生じないように、流量制御弁25の開度を制御する。なお、一酸化炭素除去装置24の入口に空気流量を計測するセンサがある場合には、このセンサ出力と一酸化炭素除去装置24への目標空気流量との間に偏差が生じないように流量制御弁25の開度を制御するようにしても良い。
【0029】
この一酸化炭素除去装置4を通過した水素リッチな改質ガスは、燃料電池本体3のアノードへ導かれる。また、燃料電池3のカソードには空気供給装置4から空気中の酸素が供給され、この酸素成分とアノードに供給された改質ガス中の水素成分とが反応することにより発電する。なお、本実施形態の空気供給装置4はコンプレッサである。
【0030】
燃料電池本体3で発電された電流は負荷26で消費されるが、燃料電池本体3で消費されなかった改質ガスと空気とはそれぞれ排ガスとして排出される。すなわち、排改質ガスはアノード圧力調整弁7を通して排出され、排空気はカソード圧力調整弁6を通して排出される。このアノード圧力調整弁7は、改質器1,2から燃料電池本体3までの改質ガス系の圧力を調整する機能を有する。このアノード圧力調整弁7の開度は、燃料電池システムの制御手段5の出力によって制御される。
【0031】
これに対して、カソード圧力調整弁6は空気供給装置4から燃料電池本体3までの空気系の圧力を調整する機能を有する。このカソード圧力調整弁6の開度も、燃料電池システムの制御手段5の出力によって制御される。
【0032】
燃料電池本体3からの排空気と排改質ガスは、排ガス供給系27を通って燃焼器8で燃焼され、この燃焼器8で生じた燃焼熱は改質器の蒸発部1で利用される。図2において「14」は燃焼器8の出口温度を目標温度に制御する燃焼器温度制御器であり、燃焼器出口ガス温度検出装置19の出力が目標温度となるように空気供給装置4を制御して排空気から燃焼器8へ送られる空気流量を調整する。
【0033】
なお、図2において「30」は目標値算出器で、燃料電池システムに要求される電力量に応じて、燃料電池システム全体の温度、流量、圧力の目標値を算出する。
【0034】
次に図3および図4を参照しながら本実施形態の制御系を説明する。
図2において「A1」は改質器1,2へ流入する空気流量を制御するフィードバック制御手段であり、改質器1,2の入口に設けられた空気流量検出装置28の出力が、目標値算出器30で算出された目標流量になるように、改質器1,2の入口に設けられた流量調整弁23の開度操作量を算出する。
【0035】
「A2」は燃料電池本体3のアノード側の圧力を制御するフィードバック制御手段であり、燃料電池本体3のアノード側入口の圧力検出装置20の出力が、目標値算出器30で算出された目標圧力になるように、燃料電池本体3の出口側に設けられた圧力調整弁7の開度操作量を算出する。
【0036】
「A3」は燃料電池本体3のカソード側の圧力を制御するフィードバック制御手段であり、燃料電池本体3のカソード側入口の圧力検出装置22の出力が、目標値算出器30で算出された目標圧力になるように、燃料電池本体3の出口側に設けられた圧力調整弁6の開度操作量を算出する。
【0037】
「A4」は空気供給装置4から供給される総空気流量を制御するフィードバック制御手段であり、空気供給装置4の出口に設けられた空気流量検出装置21の出力が、目標値算出器30で算出された目標流量になるように、空気供給装置4の操作量を算出する。本実施形態は空気供給装置はコンプレッサであるので、A4はコンプレッサの回転数の操作量を算出する。
【0038】
「A7」は非干渉化制御手段であり、上述したA1,A2,A3,A4で算出したそれぞれの出力を非干渉化する機能を有する。たとえば、A1の制御手段は、改質器1,2へ流れる空気流量を制御対象とし、改質器1,2の入口に設けられた流量調整弁23の開度を操作する。このとき、流量調整弁23の開度操作の影響が改質器1,2に流れる空気流量にのみに影響するようにして、他の制御対象であるアノード圧力、カソード圧力および総空気流量に影響を及ぼさないようにする。すなわち、見かけ上、流量調整弁23の開度操作から改質器1,2に流れる空気流量までの関係が1対1になるようにしている。
【0039】
非干渉化制御手段A7では、A1,A2,A3,A4で算出したそれぞれのアクチュエータの操作量を非干渉化制御ゲインで交換して、互いに干渉のない新しい操作量に変換する。このような非干渉化制御ゲインは、現代制御理論を適用することで得ることができる。
【0040】
「A6」は一酸化炭素除去装置24へ供給される空気流量の変化の影響を補償する外乱補償器であり、本例では総空気流量に対して外乱補償を行う。すなわち、外乱補償手段A6の出力とA4の出力とは、加算器A5にて加算される。外乱補償手段A6において、流量制御弁25の開度は、流量制御弁25の開度検出装置29の出力と、燃料電池本体3のアノード圧力検出装置20の出力と、カソード圧力検出装置22の出力とに基づいて、目標値算出手段30で算出された一酸化炭素除去装置24へ供給する空気流量の目標値と、一酸化炭素除去装置24で必要とされる補正空気流量を算出する。
【0041】
そして、この算出された補正空気流量を補償できるように、総空気流量に対して外乱補償が実行される。このようにすることで、一酸化炭素除去装置24へ供給される空気量の変化の影響が、改質器に流れる空気流量、燃料電池本体3のアノード側圧力およびカソード側圧力に影響する前に、その影響を除去することができる。
【0042】
ちなみに、外乱補償手段A6において一酸化炭素除去装置24で必要とされる補正空気流量を算出する場合、たとえば図4に示すような特性関数を用いて次のように算出する。すなわち、流量制御弁25の開度検出装置29の出力と、カソード圧力検出装置22の出力および燃料電池本体3のアノード圧力検出装置20の出力の差を決めて、一酸化炭素除去装置24へ流入している空気流量を算出する。そして、この空気流量が目標値算出器30で算出された目標空気流量の目標値と差がある場合には、その差を空気流量補正値として算出する。
【0043】
また、動的な外乱補償を実現するために、一酸化炭素除去装置24で必要とされる補正空気流量を次のような時系列モデル関数を使っても良い。
【0044】
【数1】
y=−Σak*y(t−k)+Σbk*u(t−k)
ここで、k=1〜n
y:一酸化炭素除去装置へ流入している空気流量の予測値
u:一酸化炭素除去装置の入口に設けられた空気流量調整弁の開度
a、b:パラメータ
y(t−k):kサンプル時間前の空気流量の予測値
u(t−k):kサンプル時間前の空気流量調整弁開度データ
このような形式のモデルは、実験データにシステム固定理論を適用すれば得ることができる。一酸化炭素除去装置24へ流入している空気流量の予測値と、目標値算出器30で算出された空気流量の目標値との間に差がある場合には、その差を空気流量補正値として算出する。
【0045】
第2実施形態
図5は本発明の燃料電池システムの第2実施形態を示すブロック図、図6は本実施形態に係る制御手段の制御内容を説明するためのブロック図であり、第1実施形態では、一酸化炭素除去装置24の入口の空気流量を測定するセンサがない場合の例を示したが、本例では、一酸化炭素除去装置24の入口の空気流量を測定するセンサ10がある場合の例を示す。
【0046】
図5において「10」がC一酸化炭素除去装置24の入口の空気流量を測定するセンサであり、その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0047】
本例の燃料電池システムの制御手段5の動作を図6で説明すると、外乱補償手段A10には一酸化炭素除去装置24の入口の空気流量を測定するセンサ10の出力が入力される。そして、この空気流量センサ10の出力と、目標値算出器30で算出された目標空気流量の目標値に差がある場合には、その差を空気流量補正値として算出する。その他は上述した第1実施形態と同じである。
【0048】
第3実施形態
燃料電池本体3が一酸化炭素に被毒されるのを防止する目的で、燃料電池本体3のカソード極側にパージ用空気を供給する場合があり、このような場合にも本発明は適用できる。図7は本発明の燃料電池システムの第3実施形態を示すブロック図、図8は本実施形態に係る制御手段の制御内容を説明するためのブロック図である。
【0049】
本例では、パージ用空気の流量調整バルブ31と、パージ用空気の流量調整バルブ31の開度を検出するバルブ開度検出装置32が付加されている。その他の構成は上述した第1実施形態と同じである。
【0050】
燃料電池本体3に空気パージが必要ときは、パージ用空気流量調整バルブ31を開いて、燃料電池本体3のカソード極側にパージ空気を送り込むが、このとき、図8に示すようにパージ空気用の外乱補償手段A8を新しく構成して、上述した第1実施形態と同様に、総空気流量のフィードバック制御器A4に外乱補償する。この外乱補償手段A8では、パージ用空気流量調整バルブ31の開度を検出するバルブ開度検出装置32の出力信号と、燃料電池本体3のカソード圧力検出装置22の出力およびアノード圧力検出装置20の出力を用いて、第1実施形態と同様にしてパージ用空気流量を算出する。この流量と目標値算出器30で算出されたパージ用空気流量の目標値との間に差がある場合には、その差をパージ空気流量補正値として算出して外乱補償を行う。
【0051】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池システムを示すブロック図(クレーム対応図)である。
【図2】本発明の燃料電池システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る制御手段の制御内容を説明するためのブロック図である。
【図4】本発明に係る一酸化炭素除去手段で要求される空気流量を算出する関数を示すグラフである。
【図5】本発明の燃料電池システムの第2実施形態を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る制御手段の制御内容を説明するためのブロック図である。
【図7】本発明の燃料電池システムの第3実施形態を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る制御手段の制御内容を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
1,2,52…改質器
3,54…燃料電池本体
4,51…酸化剤供給手段
6,61…カソード側圧力調整用バルブ
7,60…アノード側圧力調整用バルブ
20…アノード側入口圧力検出手段
22…カソード側入口圧力検出手段
Claims (4)
- 燃料電池本体と、前記燃料電池本体に改質ガスを供給する改質器と、前記燃料電池本体および前記改質器の間に設けられ前記改質器により生成された改質ガス中の一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去手段と、前記燃料電池本体、前記改質器および前記一酸化炭素除去手段に酸化剤を供給する酸化剤供給手段とを有する燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池本体の負荷電力の要求値に基づいて、前記酸化剤供給手段から供給される総酸化剤量の目標値、前記酸化剤供給手段から前記改質器へ供給される酸化剤流量の目標値、前記酸化剤供給手段から前記一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤流量の目標値、前記燃料電池本体のアノード側入口圧力の目標値および前記燃料電池本体のカソード側入口圧力の目標値を算出する目標値算出手段と、
酸化剤の総流量、改質器へ供給される酸化剤流量、アノード側圧力およびカソード側圧力の実際の値が、前記目標値算出手段で算出されたそれぞれの目標値になるように、これら酸化剤の総流量、改質器へ供給される酸化剤流量、アノード側圧力およびカソード側圧力を制御する第1の制御手段と、
前記第1の制御手段で算出されたそれぞれの操作量で制御した場合に、その影響が、酸化剤の総流量、改質器へ供給される酸化剤流量、アノード側圧力およびカソード側圧力に対して互いに干渉しないように、それぞれの操作量を非干渉化した操作量に変換する非干渉制御手段と、
前記一酸化炭素除去手段へ供給される実際の酸化剤流量が前記目標値算出手段で算出された目標値になるように、一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤流量を制御する第2の制御手段と、
前記一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤流量に応じて総酸化剤流量をフィードフォワード補償する外乱補償手段と、を有することを特徴とする燃料電池システム。 - 酸化剤を燃料電池システムに供給する酸化剤供給手段と、
前記酸化剤供給手段より供給される酸化剤を改質器へ供給する第1の酸化剤供給系と、
前記酸化剤供給手段より供給される酸化剤を燃料電池本体のカソード側へ供給する第2の酸化剤供給系と、
原燃料を蒸発させた原料ガスを前記改質器へ供給する原料ガス供給手段と、
前記原料ガス供給手段より供給される原料ガスを内部に設けられた触媒層で改質反応させて水素含有改質ガスを生成し、前記酸化剤供給手段より供給される酸化剤を内部に設けられた触媒層で部分酸化反応させて前記改質反応に必要な熱量を得る改質器と、
前記改質器の後段に設けられた一酸化炭素除去手段と、
前記酸化剤供給手段より前記一酸化炭素除去手段に酸化剤を供給する第3の酸化剤供給系と、
前記一酸化炭素除去手段を通過した改質ガスがアノード側に供給され、前記酸化剤供給手段からの酸化剤がカソード側に供給されて、発電する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体のアノード側出口の排改質ガス系に設けられ、アノード側の圧力を調整するアノード側圧力調整用バルブと、
前記燃料電池本体のカソード側出口の排酸化剤系に設けられ、カソード側の圧力を調整するカソード側圧力調整用バルブと、
前記第1の酸化剤供給系の酸化剤流量を調整する流量調整用バルブと、
前記第3の酸化剤供給系の酸化剤流量を調整する流量調整用バルブと、を有する燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池本体の負荷電力の要求値に基づいて、前記酸化剤供給手段から供給される酸化剤の総流量の目標値、前記酸化剤供給手段から前記改質器へ供給される酸化剤流量の目標値、前記酸化剤供給手段から前記一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤流量の目標値、前記燃料電池本体のアノード側入口圧力の目標値および前記燃料電池本体のカソード側入口圧力の目標値を算出する目標値算出手段と、
前記酸化剤供給手段から供給される酸化剤の総流量を検出する酸化剤総流量検出手段と、
前記改質器へ供給される酸化剤流量を検出する改質器酸化剤流量検出手段と、
前記燃料電池本体のアノード側入口の圧力を検出するアノード側圧力検出手段と、
前記燃料電池本体のカソード側入口の圧力を検出するカソード側圧力検出手段と、
これら酸化剤総流量検出手段、改質器酸化剤流量検出手段、アノード側圧力検出手段およびカソード側圧力検出手段により検出された実際の検出値が、前記目標値算出手段で算出されたそれぞれの目標値になるように、前記酸化剤供給手段、前記第1の酸化剤供給系の流量調整用バルブ、アノード側圧力調整用バルブおよび前記カソード側圧力調整用バルブをそれぞれ制御する第1の制御手段と、
前記第1の制御手段で算出されたそれぞれの操作量で、前記酸化剤供給手段、前記第1の酸化剤供給系の流量調整用バルブ、アノード側圧力調整用バルブおよび前記カソード側圧力調整用バルブをそれぞれ制御した場合において、その影響が、酸化剤の総流量、改質器へ供給される酸化剤流量、アノード側圧力およびカソード側圧力に対して互いに干渉しないように、非干渉化した酸化剤供給手段の操作量と、第1の酸化剤供給系の流量調整用バルブの操作量と、アノード側圧力調整用バルブの操作量と、カソード側圧力調整用バルブの操作量とのそれぞれに変換する非干渉制御手段と、
前記一酸化炭素除去手段へ供給される実際の酸化剤流量が前記目標値算出手段で算出された目標値になるように、前記第3の酸化剤供給系の流量調整用バルブを制御する第2の制御手段と、
前記一酸化炭素除去手段へ供給される酸化剤流量に応じて酸化剤の総流量をフィードフォワード補償する外乱補償手段と、を有することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記外乱補償手段は、前記一酸化炭素除去手段へ供給される実際の酸化剤流量と前記目標値算出手段により算出された目標値との差に応じて外乱補償することを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池システム。
- 燃料電池本体と、
前記燃料電池本体に改質ガスを供給するオートサーマル式改質器と、
前記燃料電池本体および前記改質器の間に設けられ前記改質器により生成された改質ガス中の一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去手段と、
前記燃料電池本体、前記改質器および前記一酸化炭素除去手段に酸化剤を供給する酸化剤供給手段とを有する燃料電池システムにおける前記改質器の温度制御方法であって、
前記酸化剤供給手段から供給される酸化剤の総流量、前記改質器へ供給される酸化剤流量、前記燃料電池本体のアノード側圧力および前記燃料電池本体のカソード側圧力の制御要因を非干渉制御するとともに、
前記一酸化炭素除去手段への酸化剤流量の変化の影響が前記改質器へ及ぶ前に、前記一酸化炭素除去手段への酸化剤流量を酸化剤の総流量に対して外乱補償することを特徴とする改質器の温度制御方法。
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