JP3707992B2 - 感光材料処理方法および感光材料処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光材料の処理方法及び処理装置に関する。詳しくは、スロットダイを用いて処理液を塗布する処理方法及び処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フィルム、印画紙、印刷版等の感光材料は画像が記録された後に、現像液、定着液、安定化液、水洗水等の処理液によって処理される。このような処理を行なう感光材料の処理装置としては、複数の搬送ローラー対等により構成される搬送手段により、処理液を貯留した処理槽中に感光材料を搬送し、感光材料を処理液中に浸漬することにより処理を行なう浸漬型の処理装置が知られている。
【0003】
このような浸漬型の処理装置においては、感光材料の処理に伴う処理疲労、あるいは大気中の炭酸ガスや酸素による経時疲労等により処理液が劣化するため、処理液に補充液を補充することにより処理液の劣化を回復させている。このため、処理開始時の処理液の成分と、その後も処理を継続した場合の処理液の成分とは異なることになり、厳密に均一な処理を行なうことは不可能である。また、このような浸漬型の処理装置は、処理液の使用量および廃液量が多くランニングコストが高い、また、装置のメンテナンス性が悪いという問題もある。
【0004】
このような問題点を解消するための感光材料処理装置として、例えば、特開昭62−237455号公報に記載されているように、感光材料を処理液中に浸漬するかわりに、感光材料の処理に必要なだけの処理液を感光材料の感光面に塗布して処理を行なう塗布方式の処理装置も使用されている。例えば、特開昭62−237455号公報においては、このような塗布方式の処理装置として、複数の処理液吐出孔を有する処理液供給ノズルから、その表面に溝を形成すること等によりその表面を粗面化したローラー(以下「粗面化ローラー」と呼称する)に処理液を吐出するとともに、この粗面化ローラーを介して感光材料に当接して回転させることにより、処理液を塗布する処理装置が開示されている。
【0005】
しかしながら上記特開昭62−237455号公報に記載された処理装置においては、感光材料の感光膜に傷がつくという問題点があった。また処理に要するランニングコストの観点や環境問題等の観点から処理液の使用量を極力少量とすることが好ましいが上記の処理装置においては、処理液供給ノズルに供給される処理液の量を少量とした場合には、複数の処理液孔から粗面化ローラーに吐出される処理液の供給量を均一とすることが困難となり、これに伴って処理液の量が不均一となるという問題点もある。
【0006】
この問題を改善すべく実開平6−8956号公報、特開平6−27677号公報に、上方に処理液供給部を有し下端がスリット状開口となっており該開口部を経て処理液を塗布する処理装置が開示された。この処理装置によって原理的には所望する目的は達せられるものの、塗布器としての性能と安定性に問題がある。すなわち、供給口とスリットが直結されているので処理液が塗布器の全幅にわたって均一に広がりにくいこと、スリット先端と感光材料面が接触しているので安定したメニスカスが形成されにくいという原理的な問題がある。これによって、感光材料の塗布幅方向と流れ方向の塗布量不均一、また塗布面質においても縦筋状のムラや液割れ(塗布工学上のいわゆるリビュレット)が発生しやすい。該問題は処理液の流量(換言すれば湿潤塗布量)を増大させれば解消の方向となるものの、必要以上に塗布量を増やすと後工程などで余剰分を排除する必要が生じて結果的には廃液が生じることとなる。
【0007】
上記した問題に鑑み、本発明者らは、スロットダイを用いて少ない処理液量でも安定に均一に塗布でき、さらに実質的に廃液が生じない処理装置を特願平11−361027にて提案した。しかしながら、感光材料のなかには、端部から均一な現像処理が要求されるものがあり、特に極先端部(例えば先端1cm以内)の処理むらが問題になる場合があった。この現象は特に塗布量を少なくすると起こりやすかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記の特願平11−361027の更なる改良を行なうもので、感光材料端部の塗布開始部分における塗布不均一とそれによる処理ムラが解消された処理方法及び処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、少なくともスリットとマニホールドからなるスロットダイを用いて、前記スリットより落下する処理液を感光材料に塗布する処理方法であって、前記スリットの先端部と対向し離間する位置に、塗布幅と同等もしくはそれ以上の長さを有する部材を設置し、前記感光材料が前記スリット部に到達するに先立ち、前記スリット先端部と前記部材の間に、静止状態の処理液の膜あるいは静止していない処理液の膜を形成させることを特徴とする感光材料の処理方法によって達成された。
【0010】
また、上記した本発明の処理方法を実施するのには、少なくともスリットとマニホールドからなるスロットダイを用いて感光材料に処理液を塗布する感光材料用処理装置であって、前記スリットの先端部と対向する位置に、塗布幅と同等もしくはそれ以上の長さを有する部材を、前記スリット先端部から3mm以内に離間設置せしめたことを特徴とする感光材料用処理装置が好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下添付図面にしたがって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら図面の態様に何ら限定されるものではない。図1に本発明の好ましい態様を断面図で示す。
【0012】
1はスロットダイである。材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性と機械的精度を満足できればよく、例えばステンレス鋼が好ましい。その他にも一般構造鋼にクロムメッキしたものやプラスチック類等が使用可能である。なお、金属で製作する場合は機械加工時の応力歪を排除するため、予め焼鈍処理を施してもよい。
【0013】
スロットダイ1の構造を説明する。8は処理液供給口でマニホールド9と連結されている。該マニホールド9は流入した処理液を幅方向に広げるためのものであり、前出の実開平6−8956号公報、特開平6−27677号公報には具備しない要素である。該マニホールドで処理液を一旦幅方向に充満させた後、スリット部10に供給する作用を行なう結果、スリット部10からの流出流量を幅方向に均一化させることが可能となる。処理液供給口8は通常スロットダイの幅方向の中心に1箇所設けることでよいが、スロットダイの幅方向の複数箇所に設けてもよい。マニホールド9の断面形状は、本態様では円形となっているがこれに限らず任意の形状でよい。またマニホールド9の断面積はスロットダイの幅方向に亘り一定でなくてもよく、例えば流出する処理液の幅方向の流量均一性をさらに向上せしめるために端部に至るに従って断面積を漸減させてもよい。
【0014】
図1には便宜上図示しないが、スロットダイ1のマニホールド部の塗布幅方向両端部とスリット部の同両端部は、処理液が流出しないように栓をして用いる。この場合、処理しようとする感光材料の塗布幅に対しスリット部の幅方向有効長さが同じか多少大きくなるように前述の栓を施す。
【0015】
2は感光材料で、図示しない駆動装置により図の左から右方向に搬送される。搬送中の感光材料2の先頭端部を感材検出器7で検出し、その信号によりポンプ5を駆動しバルブ6を開にしてスロットダイ1に処理液4を供給し、感光材料の終端部を検出してポンプ5を停止しバルブ6を閉止するというのが基本的な制御フローとなるが、感光材料2の搬送速度と、感材検出器7からスロットダイ1のスリット部に至るまでの距離を演算(演算装置は図示せず)して、ポンプ5を駆動/停止するタイミングを適宜制御することにより処理液4のロスを実質的に無くすことが可能である。
【0016】
本発明に用いるポンプとしては特に限定するものではないが、ポンプの構造上の回転数(ギアポンプ等の場合)やストロ−ク数(ダイヤフラム式等の振動式ポンプの場合)などが可変式なものすなわち定量ポンプが好ましい。また、処理液の塗布を均一なものとするため脈動と称する流量の不均一の少ないポンプが好ましい。場合によってはポンプ以降の配管道中に例えばエアーダンパー式の脈動防止器を設置してもよい。また、シリンジ式の液供給装置も好ましく使用できる。
【0017】
本態様では、処理液の供給にポンプを使用する例を示したが、その他にも例えば処理液をスロットダイより高位置に配して水頭によって自然落下させる方式でもよい。この場合はポンプが不要となり、バルブの開閉のみで処理液の供給が可能である。なおこの場合、前記バルブを定量式とすることや、流路に例えばニードルバルブ付きのフローメータを配して予め所望する流量となるように開度調節しておくことで流量制御が可能である。自然落下方式であっても、感材検出器7の信号によるバルブの開閉タイミングを前述のポンプ式の場合と同様な制御を行なうことによって、処理液のロスを実質的に無くすことが可能である。
【0018】
感光材料への塗布量に極めて精度を要する場合は、処理液配管の道中に流量計を配置して該流量計の信号を基準にして前述のポンプや定量バルブをフィードバック制御する構成をとることができる。
【0019】
処理液のスロットダイへの供給流量は、所望する処理液の湿潤塗布量と感光材料の塗布幅と感光材料の搬送速度をそれぞれ乗ずることにより決定することができる。
【0020】
搬送ローラー3は駆動・非駆動のいずれでもよく、またローラーの材質としても特に限定するものではなく従来の感材処理装置で採用されているもので差し支えない。なお、処理液の塗布安定性を考慮して感光材料がほぼ水平に搬送されるようにローラーを配することが好ましい。
【0021】
本態様には図示しないが、処理液塗布時に微量の余剰分が発生する可能性を考慮して、スロットダイの下方に液受け皿等を配してこれを回収してもよい。
【0022】
本発明の特徴は、スロットダイ1のスリット10の鉛直下方の離間した位置に、塗布幅と同等かもしくはそれ以上の長さを有する部材11を配したことにあり、スリット10の先端部と部材11の間に処理液の膜13を形成させることである。以降、部材11を液膜形成部材と称す。上下装置12は液膜形成部材11の上下方向の位置決めを行なうものであり、本発明の実施にあたって具備させておけば好ましい作用効果を発揮する。例えば処理する感光材料の種々の厚みに対応できたり、処理液の塗布条件(湿潤塗布量や処理速度)に対する液膜形成部材11の最適位置への位置決めが可能となる。また処理装置が休止しているときには、液膜形成部材11をスロットダイの先端部に密着させて処理液の漏れ防止を図ることもできる。図1ではシリンダー式アクチュエーターを例示したが、上下運動が可能であればこれに限定されるものではない。
【0023】
液膜形成部材11は塗布幅方向にはスロットダイの塗布幅以上とし、スリット10の先端部に対向する部分は平面からなることが好ましい。即ち、感光材料の流れ方向(図1のL)には1mm以上の長さの平面を有することが好ましく、更に好ましくは2mm以上であるが、上限は10mm程度あれば充分でこれ以上大きくする必要はない。材質は処理液に対する耐食性があれば特に制限されず、例えばステンレス鋼、プラスチック類、フッソ系樹脂(テフロン等)などを用いることができる。
【0024】
液膜形成部材11とスリット10の先端部(スロットダイ1の先端部)の距離Hについて詳述する。少ない塗布量で全幅方向に均一な処理液膜13を形成させるためのは、上記距離Hは3mm以内が好ましく、より好ましくは2mm以内で、更に好ましくは1.5mm以内で、特に好ましくは1.0mm以内である。距離Hの下限は、感光材料2の感光面がスリット10の先端部(スロットダイ1の先端部)に接触しない距離である。また、液膜形成部材11の上面すなわち処理液接液面は感光材料2の下面レベルと同等ないしは感光材料が衝突しない程度に下側にオフセットさせておくのが好ましい。加えて、前記処理液接液面は水平面であることが好ましい。これにより、処理液膜13がスロットダイ先端部に充分接触した状態すなわち本発明の効果を発揮しやすい状態で形成し維持することが可能となる。
【0025】
本発明は、処理液の塗布量を極力少なくして、廃液を実質的に生じない処理方法を目指しており、その意味において処理液の塗布量は1平方メートル当たり50ミリリットル以下が好ましく、より好ましくは40〜20ミリリットル程度である。このように塗布量を少なくすると感光材料先端部の均一な処理が難しくなる。これは、塗布量が少ないと塗布開始時においてはスリットから流出し落下する処理液が液滴状ないしはスダレ状となるがゆえに、塗布不均一を来していたと考えられる。この問題を解決するために、本発明は、塗布に先立ち、あらかじめスリット10(スロットダイ1)の先端部に液膜形成部材11とともに全幅方向に処理液膜を形成するというものである。
【0026】
本発明においては、感光材料が塗布されるに先立ちスロットダイ先端部と液膜形成部材11の間に処理液膜13を生成させておく。処理液膜13は、前述のHに関する記述、液膜形成部材11に関する記述に従ったうえで処理液を供給して生成させる。例えば感光材料2の通過を感材検出器7が検出した信号をきっかけとしてポンプ5の駆動時間をタイマー(図示せず)で制御する方法がある。また、ポンプのかわりに前述のシリンジ式液供給装置を用いる場合は、上記の信号をきっかけとして一定量の処理液を押し出すという方法もある。前述のいずれの方法においても、ポンプやシリンジ式液供給装置が駆動状態から停止状態になったタイミングでバルブ6を閉止することにより、処理液膜13を静止状態で安定して維持することができる。また、処理液の若干の廃液が許容される場合については、処理液膜13が生成した状態でポンプ5を停止せずにそのまま感光材料2に塗布する方法でもよい。
【0027】
本発明者らは、処理液膜13を生成させた状態で感光材料2に塗布することにより、感光材料端部の塗布開始部分において塗布が不均一となり、それによる現像ムラが発生しやすいという従来の懸案点を解消できることを見出した。スロットダイを用いた処理方法や処理装置においては、塗布開始時においてはスリットから流出し落下する処理液は液滴状ないしはスダレ状となるがゆえに、塗布不均一を来していたと考えられるが、本発明によれば全幅にわたる完全な液膜状態から塗布が始まるので前述の塗布不均一は生じない。さらに、スロットダイ方式を用いてシート状物に塗布する際にはその開始点において、スリット10から流出する処理液の幅方向の流量分布が定常状態に達していないこと、さらにポンプ等の液供給装置の駆動開始時点での流量が所望する量に達していないことに起因した塗布不均一に対しても本発明ではこれを補完することができる。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明する。
感光材料として0.25mm厚のアルミニウム板を支持体とする、銀錯塩拡散転写法を利用したアルミニウム平版印刷版(菊全サイズ)をレーザーを光源とする出力機で画像出力したものを用いた。前記の印刷版を処理する処理液の組成を下記に示す。
【0029】
本発明にしたがって上記処理液の塗布テストを行なった。このときスリット10の先端部と液膜形成部材11の距離Hは、0.95mmとした。また、液膜形成部材11の上面は感光材料2の下面レベルより下側に0.2mmとした。液膜形成部材11の上面は、長さLが3mmの平面である。感光材料の搬送速度(塗布速度)は毎秒1.5cm、処理液の湿潤塗布量は1平方メートルあたり30ミリリットルから90ミリリットルまで10ミリリットルステップで変化させた。
【0030】
比較例として、液膜形成部材11を取り外して前述と同様の条件で塗布テストを行なった。
【0031】
本発明の実施例と比較例を表1にまとめた。表1では現像液の塗布量に対する感光材料の特に塗布開始端の塗布面質(現像ムラを眼視)を評価した。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
表1に示すように、本発明により特に処理液の湿潤塗布量として好ましい範囲範(50ミリリットル以下)において、感光材料端部の塗布開始部分における塗布が不均一となりやすかった従来の懸案点を解決することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示す断面図
【符号の説明】
1 スロットダイ
2 感光材料
3 搬送ローラー
4 処理液
5 ポンプ
6 バルブ
7 感材検出器
8 処理液供給口
9 マニホールド
10 スリット部
11 部材(液膜形成部材)
12 上下装置
13 処理液膜
Claims (1)
- 少なくともスリットとマニホールドからなるスロットダイを用いて、前記スリットより落下する処理液を感光材料に塗布する処理方法であって、前記スリットの先端部と対向し離間する位置に、塗布幅と同等もしくはそれ以上の長さを有する部材を設置し、前記感光材料が前記スリット部に到達するに先立ち、前記スリット先端部と前記部材の間に、静止状態の処理液の膜あるいは静止していない処理液の膜を形成させることを特徴とする感光材料の処理方法。
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