JP3707108B2 - 液晶デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大面積になし得る液晶デバイスに関し、更に詳しくは、基板上にマトリックス状に配置した二端子スイッチング素子又は三端子スイッチング素子により形成された各画素における液晶分子の配向を電気的に変化させる液晶デバイスに関し、より詳しくは、電気的に液晶分子の配向を変化させることにより、光の散乱能及び透過を制御して、文字、図形及び映像等のデジタル画像及びテレビ画像等を表示する液晶デバイスであって、高速応答性を以って電気的に表示を切り換えることによって、OA機材やテレビ等のハイインフォメーション表示体等の表示用デバイスとして利用される光散乱型液晶デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
偏光板や配向処理を必要とせず、明るく、コントラストに優れた液晶デバイスとして、特表昭58−501631号公報、米国特許第4435047号明細書に、液晶のカプセル化により、ポリマー中に液晶滴を分散させ、そのポリマーをフィルム化した調光層を有する液晶デバイスが知られている。この液晶デバイスに用いるカプセル化物質としては、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール等が提案されている。
【0003】
上記明細書で開示された技術においては、ポリビニルアルコールでカプセル化された液晶分子は、それが薄層中で正の誘電異方性を有するものであれば、電界の存在下その液晶分子が電界方向に配列し、液晶の屈折率no とポリマーの屈折率np が等しいときには、透明性を発現する。電界が除かれると、液晶分子はランダム配列に戻り、液晶の屈折率がno よりずれるため、液晶滴は、その境界面で光を散乱し、光の直進透過を遮断するので、薄層体は白濁する。
【0004】
このように、液晶を液滴状に分散包蔵したポリマーを薄膜としている技術は、上記のもの以外にも知られており、例えば、特表昭61−502128号公報には、液晶エポキシ樹脂中に分散したもの、特開昭62−2231号公報には、特殊な紫外線硬化ポリマー中に液晶が分散したもの、特開昭63−271233号公報には、光硬化性ビニル系化合物と液晶との溶解物において、上記光硬化性ビニル系化合物の光硬化に伴う液晶物質の相分離を利用し調光層を形成させた技術等が開示されている。
【0005】
一方、液晶デバイスの実用化に要求される重要な特性である低電圧駆動特性、高コントラスト、時分割駆動を可能にするために、特開平1−198725号公報には、液晶材料の連続層中に透明性高分子物質を三次元網目状構造に形成せしめ、液晶デバイスの低電圧駆動を可能にした技術が開示されている。
【0006】
これらの液晶デバイスをアクティブマトリクッス駆動に応用するために、電圧保持率を向上させる試みがなされている。例えば、”NCAP Display: Optical Switching and Dielectric Properties”,Society for Information Display International Symposium Digest of Technical papers,第21巻、第220頁(1990年)には、ポリビニルアルコールで液晶材料をカプセル化した調光層を有する液晶デバイスでは、精製したポリビニルアルコールを用いることにより、ポリビニルアルコールが高抵抗を示すことに伴う時定数の増加により、保持率が改善されることが報告されている。また、「日本化学会第67春季年会講演予稿集2」[第644頁の演題番号1B351(1994年)]には、紫外線硬化させたポリマー中に液晶材料を液滴状に分散包蔵させた調光層を有する液晶デバイスにおいて、ポリマーの誘電分散が200〜300Hz付近に近いほど電圧保持率が低下することが報告されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
液晶材料の連続層中に三次元網目状構造を有する透明性高分子物質を形成して成る調光層を有する液晶デバイス、液晶材料を高分子物質中に液滴状に分散して成る調光層を有する液晶デバイスの如き液晶材料と高分子物質から成る調光層を有する液晶デバイスにおいて、基板上にマトリックス状に配置された二端子スイッチング素子又は三端子スイッチング素子の半導体能動素子を用いて各画素の液晶分子の配向を電気的に変化させて情報等を表示させるには、調光層の電圧保持率を少なくとも98%以上にする必要があり、また、温度に対して安定動作を補償する必要がある。
【0008】
しかしながら、従来の技術によって得られる液晶デバイスは、使用する高分子物質の種類や温度変化によって電圧保持率が大きく変化して所望の値から外れてしまう結果、基板上にマトリックス状に配置した半導体能動素子を用いた駆動による動作が温度に対して不安定になることがあった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、基板上にマトリックス状に配置した半導体能動素子で駆動可能で、電圧保持率が高く、偏光板が不要で、コントラストが高く、ハイインフォメーション表示体等に有用な液晶デバイスを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は上記課題を解決するために、電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板と、これらの基板間に支持された調光層とを有し、前記調光層が液晶材料及び透明性高分子物質を含有する液晶デバイスに於いて、前記透明性高分子物質の周波数1kHzの誘電損率が0.0001〜0.15の範囲にあることを特徴とする液晶デバイスを提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶デバイスは、例えば、次のようにして製造することができる。即ち、電極層を有する少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板間に、(1)液晶材料、(2)重合性化合物及び重合開始剤を含有する重合性組成物を含有する調光層形成材料を挟持した後、紫外線を照射することにより重合性化合物を重合させることによって、透明性高分子物質中に液晶材料を分散させた構造を有する調光層、又は、液晶材料の連続層中に三次元網目状構造を有する透明性高分子物質から成る調光層を有する液晶デバイスを製造することができる。
【0013】
前記調光層中に形成されている透明性高分子物質は、その中に液晶材料を分散する構造のものでもよいが、三次元網目構造を有するものがより好ましい。この透明性高分子物質の三次元網目状部分には液晶材料が充填され、かつ、液晶材料が連続層を形成することが好ましく、液晶材料の無秩序な状態を形成することにより、光学境界面を形成し、光の散乱を発現させる。
【0014】
本発明で使用する基板は、堅固な材料、例えば、ガラス、金属等であっても良く、柔軟性を有する材料、例えば、プラスチックフィルムの如きものであっても良い。そして、基板は2枚が対向して適当な間隔を隔て得るものであり、その少なくとも一方は透明性を有し、その2枚の間に挟持される調光層を外界から視覚させるものでなければならない。但し、完全な透明性を必須とするものではない。2枚の基板間には、通常、周知の液晶デバイスと同様、間隔保持用のスペーサーを介在させることもできる。スペーサーとしては、例えば、マイラー、アルミナ、ロッドタイプのガラスファイバー、ガラスビーズ、ポリマービーズ等種々の液晶セル用のものを用いることができる。
【0015】
本発明で使用する液晶材料は、単一の液晶性化合物であることを要していないのは勿論で、2種以上の液晶化合物や液晶化合物以外の物質も含んだ混合物であっても良く、そのうちの正の誘電率異方性を有するものが好ましい。用いる液晶としては、ネマチック液晶、スメチック液晶、コレステリック液晶、カイラルネマチック液晶、カイラルスメチック液晶等やカイラル化合物が適宜含まれていても良い。
【0016】
本発明で使用する液晶材料は、以下に示した化合物群から選ばれる1種以上の化合物から成る配合組成物が好ましく、液晶材料の特性、即ち、等方性液体と液晶の相転移温度、融点、粘度、屈折率異方性(Δn)、誘電率異方性(Δε)及び重合性組成物等との溶解性を改善することを目的として適宜選択、配合して用いることができる。
【0017】
液晶材料としては、安息香酸エステル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ピリジン系、トラン系、アルケニル系等の各種液晶化合物が使用されている。そのような液晶材料としては、例えば、4−置換安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−置換シクロヘキシルカルボン酸4’−置換ビフェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキサンカルボニルオキシ)安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4’−置換シクロヘキシルエステル、4−置換4’−置換ビフェニル、4−置換フェニル4’−置換シクロヘキサン、4−置換4”−置換ターフェニル、4−置換ビフェニル4’−置換シクロヘキサン、2−(4−置換フェニル)5−置換ピリミジン等を挙げることができる。これらの液晶化合物を用いた組成物の比抵抗が1013Ωcm以上であることが本発明に対しては好ましい。
【0018】
調光層形成材料中の液晶材料の含有量は、60〜98重量%の範囲が好ましく、70〜90重量%の範囲が特に好ましい。
【0019】
調光層形成材料を構成する重合性組成物は、例えば、
(1)単官能型モノマー、又は、オリゴマー
(2)多官能型モノマー、多官能型オリゴマーの如き多官能型化合物
を含有することがより好ましく、更に、任意成分として、これらの他の重合体形成性モノマー若しくはオリゴマー等を含有してもよい。
【0020】
調光層形成材料を構成する重合性組成物のみを重合させて得られる透明性高分子物質の誘電損率ε”は、一般に、二枚の平行電極板間の重合体の静電容量Cp と並列等価抵抗Rp を測定して式(1)より計算で求められる。
【0021】
【数1】
ε”=1/(ωCoRp) ……(1)
【0022】
[式中、ω=2πf(f:測定時に印加されるサイン波の周波数)、 Coは二枚の電極板間の空の静電容量を表わし、誘電率ε'はε'=Cp/Coで表わされる。]
【0023】
式(1)より、誘電損率ε”は電界の周波数に依存する。このことは、アクティブマトリックス駆動で印加される数十μ秒の高速パルス幅に対して透明性高分子物質の電圧保持率は透明性高分子物質の双極子分極の応答性による要因に大きく影響されるものと考えられる。実際、保持率が低い透明性高分子物質を調べると、このパルス幅時間の影響が強く、パルス幅時間を64μ秒から1ミリ秒に変えると保持率は20%近く増加する。一方、誘電損率を比較すると、高周波数側の誘電損率の影響が大きく、特に、透明性高分子物質の電圧保持率は、1kHz以上の周波数での誘電損率に対して相関が強くなることが観察される。
【0024】
また、透明性高分子物質の誘電損率は、透明性高分子物質の双極子の運動性に依存するので、温度により大きく変化し、その透明性高分子物質の分子構造の差による双極子の熱運動性に大きく影響されるから、ガラス転移点とも関係付けられ、凍結されていた双極子が温度上昇に伴いガラス転移点より高い温度で動き始めるに伴って誘電損率が増加し、ある温度で極大値を示すことが知られている。そこで、本発明で使用する透明性高分子物質における温度変化に対する電圧保持率と1kHzの誘電損率を比較した結果の一例を図1に示す。図1において、比較に供した透明性高分子物質は、重合性化合物Aとして日本化薬社製の「HX−620」を、重合性化合物Bとして日本化薬社製の「HX−220」を使用し、それぞれに重合開始剤を添加して重合させたものを使用した。
【0025】
図1に示した結果から、誘電損率は、温度により変化し、透明性高分子物質の分子構造の違いにより誘電吸収(誘電損率の極大値)及び極大値温度が異なることが理解できる。また、透明性高分子物質の電圧保持率は、誘電損率に反比例し、誘電損率が小さい温度領域で電圧保持率は高い値を示していることが理解できる。即ち、透明性高分子物質の電圧保持率は、誘電損率との相関が強く、誘電損率極大温度で保持率が最小になる傾向が示されている。
【0026】
次に、同一温度で、異なる透明性高分子物質の誘電損率と電圧保持率を比較してみた。表1に、透明性高分子物質を構成する重合性化合物と25℃における透明性高分子物質の誘電損率と電圧保持率を示した。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示した値から、誘電損率が小さい値の透明性高分子物質ほど、その電圧保持率が高くなる傾向を示している。誘電損率が0.01以下の透明性高分子物質の電圧保持率は、98%以上になることが示唆される。即ち、高い電圧保持率を有する液晶デバイスを得るためには、誘電損率が小さい透明性高分子物質を用いることが好ましい。
【0029】
しかしながら、液晶材料及び透明性高分子物質から成る調光層を有する液晶デバイスにおいて、電圧保持率が98%以上の液晶材料を使用し、調光層中の液晶材料の割合が50重量%以上の場合、調光層中の液晶材料の割合が増加すると、透明性高分子物質の誘電損率の影響は、減少する傾向にあることから、透明性高分子物質の誘電損率の受容される範囲は変化し、調光層中の液晶材料の割合が高い場合は、透明性高分子物質の誘電損率が0.15以下であることが好ましく、少なくとも誘電損率が0.0001以上0.15以下であれば所望の電圧保持率を得ることができる。また、必要に応じて、重合性組成物の組成を調整することにより、当該重合性組成物からなる透明性高分子物質の誘電損率及び誘電損率が極大値を示す温度を所望の値にすることができる。上記の結果から、液晶デバイスの動作範囲で誘電損率が小さい透明性高分子物質を提供可能な重合性組成物を本発明の液晶デバイスの調光層形成材料として使用することにより、当該液晶デバイスの電圧保持率を大幅に向上させ得ることが判明した。
【0030】
前項で述べたように、透明性高分子物質のガラス転移点(Tg)は、温度変化で現れる誘電損率のピークと関連があり、本発明で使用する透明性高分子物質の誘電損率の極大値を示す温度より低温側に透明性高分子物質のTgが存在することが知られており、Tgが液晶デバイスの動作温度範囲よりも低い透明性高分子物質を本発明の液晶デバイスの調光層に使用することにより、少なくとも室温以上で誘電損率の値が小さくなりので、本発明の液晶デバイスの電圧保持率を改善することができる。例えば、15℃以上の液晶デバイスの実用動作温度領域の調光層の電圧保持率を向上させるためには、調光層を構成する透明性高分子物質のTgは0℃以下であることが好ましく、少なくとも15℃以上での誘電損率が0.0001以上0.15以下の透明性高分子物質を用いることにより、本発明の液晶デバイスの実用動作温度領域における電圧保持率が向上するので、より好ましくなる。即ち、本発明の液晶デバイスの実用動作温度領域が変われば、必要に応じて、調光層に使用する透明性高分子物質のTgを変化させて使用することが好ましい。
【0031】
炭素原子数16以下の直鎖アルコキシル基を有する単官能型(メタ)アクリレート誘導体の場合、それを重合して成る透明性高分子物質のTgは低く、誘電損率の極大値を示す温度が0℃以下で、0℃以上では0.05以下の低い誘電損率を示す。そのため、このような材料を調光層形成材料として用いることにより、本発明の液晶デバイスの電圧保持率を向上させることができる。また、分岐アルコキシル基を有する単官能型(メタ)アクリレート誘導体の場合であっても、液晶デバイスの実用動作温度領域内で低い誘電損率を示す透明性高分子物質を提供する材料で有れば、使用することができる。
【0032】
本発明の液晶デバイスを製造する際に使用する調光層形成材料に構成する重合性組成物として多官能型(メタ)アクリレート誘導体を使用する場合、液晶デバイスの実用動作温度領域外に、透明性高分子物質の誘電損率が極大を示す温度があればよいことから、多官能型(メタ)アクリレート誘導体から成る透明性高分子物質のTgが液晶デバイスの実用動作温度領域より低いもの、又は、当該Tgが液晶デバイスの実用動作温度領域より高温のものが好ましい。多官能型(メタ)アクリレート誘導体から成る透明性高分子物質のTgが液晶デバイスの実用動作温度領域内の場合、多官能型(メタ)アクリレート誘導体に、低いTgを示す透明性高分子物質を構成する単官能型(メタ)アクリレート誘導体を併用することにより、透明性高分子物質の架橋度を変化させて、透明性高分子物質のTgを実用動作温度領域より低くすることにより、実用動作温度領域の誘電損率を0.0001以上0.15以下に調整することができる。また、多官能型(メタ)アクリレート誘導体から成る透明性高分子物質のTgが液晶デバイスの実用動作温度領域内の場合、当該多官能型(メタ)アクリレート誘導体に、Tgが低い透明性高分子物質を構成する他の多官能型(メタ)アクリレート誘導体を併用することによって、透明性高分子物質のTgを液晶デバイスの実用動作温度領域より低くすることにより、液晶デバイスの実用動作温度領域での誘電損率を0.0001以上0.15以下にさせることもできる。
【0033】
重合により、15℃以上80℃未満での誘電損率が0.15以下の透明性高分子物質を提供可能な多官能型(メタ)アクリレート誘導体としては、主鎖が炭素鎖で換算して少なくとも10以上の材料が挙げられ、例えば、カプロラクトン変性ヒドロキシビバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬社製の「HX−620」)、ヒドロキシビバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬社製の「MANDA」)、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート(新中村化学社製の「NKエステルA−NPG」、「NKエステルNPG」)、直鎖又は分岐アルキル鎖のジ(メタ)アクリレート誘導体(共栄油脂社製の「1.9NDA」、「1.6HX」、第一工業製薬社製の「C9A」、「L−C9A」)、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート誘導体(サートマー社製の「C−2000」、「C−2100」)、ダイマー酸ジ(メタ)アクリレート(荒川化学社製の「KU−760」)、トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬社製の「TMPTA」)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬社製の「PET−40」)、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(日本化薬社製の「HDDA」、新中村化学社製の「NKエステルHD」)、大日本インキ化学工業(株)製の「TD−1582A」、共栄油脂社製の「ライトエステルDCP−A」等が挙げられる。誘電損率が低い透明性高分子物質としては、ポリイミドが挙げられる。
【0034】
重合により、15℃以上80℃未満での誘電損率が0.15より大きくTgが高い透明性高分子物質を提供可能な多官能型(メタ)アクリレート誘導体としては、エーテル結合基やエステル結合基を多く有するジ(メタ)アクリレート誘導体が挙げられ、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレン(メタ)アクリレート(共栄油脂社製の「041MA」、「MTG」、「40EM」、「EC−A」、「MTG−A」、「3EG−A」、新中村化学社製の「M−20G」、「M−40G」、「M−90G」、「M−230G」、「1G」、「3G」、「23G」、「A−200」、長瀬産業の「DA−851」、東亜合成社製の「M−245」)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(サンノアコ社製の「フォトマー4061SN」、新中村化学社製の「APG−400」)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、また、カプロラクトン変性ヒドロキシビバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬社製の「HX220」)、プロピレンオキサイド付加ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(サンノアコ社製の「フォトマー4127」)等が挙げられる。環構造を有するジ(メタ)アクリレート誘導体は、これを重合して得られる透明性高分子物質のTgが15℃以上80℃未満の範囲にあるものが多く、例えば、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート誘導体(共栄油脂社製の「3002A」、「3002M」、「BP−4PA」、新中村化学社製の「A−BPE−4」、日本化薬社製の「R551」、「R−526」、大日本インキ化学社製の「VE−8200」)、脂環式ジ(メタ)アクリレート誘導体では(日本化薬社製の「HBA−024E」、「HBA−240P」)等が挙げられる。
【0035】
これらの重合性化合物ないし重合性組成物がイオン性の不純物を含有する場合、本発明の液晶デバイスの電圧保持率を低下させる原因になる。その場合には、重合性化合物ないし重合性組成物を超純水洗浄等で精製することによって、使用する高電圧保持率を示す液晶の比抵抗と同等にすることがより好ましい。また、極性の低い各種誘導体を重合性組成物に用いることが好ましい。
【0036】
調光層形成材料として使用する光開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−1オン(メルク社製の「ダロキュア1173」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ガイギー社製の「イルガキュア184」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製の「ダロキュア1116」)、ベンギルメチルケタール(チバ・ガイギー社製の「イルガキュア651」)、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパノン−1(チバ・ガイギー社製の「イルガキュア907」)、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製の「カヤキュアDETX」)とp−ジメチル安息香酸エチル(日本化薬社製の「カヤキュア−EPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワードプレキンソップ社製の「カンタキュアITX」)とp−ジメチル安息香酸エチルとの混合物等が挙げられる。
【0037】
光重合開始剤の使用割合は、重合性組成物に対して0.1〜10.0重量%の範囲が好ましい。
【0038】
調光層形成材料を2枚の基板間に介在させるには、調光層形成材料を基板間に注入しても良く、一方の基板上に適当な溶液塗布機やスピンコーター等を用いて均一に調光層形成材料を塗布した後、他方の基板を重ね合わせ圧着させても良い。
【0039】
また、一方の基板上に調光層形成材料を均一な厚さに塗布し、重合用エネルギーを供給することによって重合性組成物を重合硬化させて調光層を形成した後、他方の基板を貼り合わせる液晶デバイスの製造方法も、また有効である。
【0040】
重合用エネルギーとしては、透明性高分子物質が適切に重合できるものであればよく、例えば、紫外線、可視光線、電子線等や熱等が挙げられる。特に、紫外線による光重合方法は好適である。
【0041】
調光層は、調光層形成材料が等方性液体状態を示す温度に保持しながら紫外線を照射することにより、液晶材料の連続層と該連続層中に均一な3次元網目状の透明性高分子物質から成る調光層が得られるので、この方法で作製することが好ましい。
【0042】
液晶材料中で光重合性組成物を重合させる場合は、一定の強さ以上の光照射強度及び照射量を必要とするが、それは光重合性組成物の反応性及び光重合開始剤の種類、濃度によって左右され、適切な光強度等の重合条件の選択により三次元網目状構造の形成、及びその網目の大きさを均一にすることができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において「%」は「重量%」を表わす。
【0044】
また、以下の実施例において、重合性組成物は超純水洗浄による精製品を用いた。
【0045】
さらにまた、以下の実施例における電圧保持率及び誘電損率は以下の方法で測定した。
【0046】
電圧保持率:極性を交互に変えて電圧10ボルト64μ秒のパルスを液晶デバイス又は平行平板電極間に形成された透明性高分子物質に印加して、16ミリ秒間の2枚の電極間の電圧の変化をフローティング状態で16ミリ秒間測定して電圧変化の積分値を求め、この値を電圧が変化しない場合の積分値で除算して百分率を求め、それぞれの電圧保持率とした。
【0047】
誘電損率:温度−20℃〜100℃の周波数1kHzに於ける2枚の平行平板電極間の透明性高分子物質の並列等価回路の静電容量Cp及び電気抵抗Rpをインピーダンス測定器により測定して、誘電損率を算出した。
【0048】
【0049】
上記組成から成る調光層形成材料を、11.0μmのガラスファイバー製スペーサーが散布された2枚の超純水超音波洗浄済みのITO電極ガラス基板に挟み込み、基板全体を均一溶液状態に保ちながら、40mW/cm2 の紫外線を30秒間照射して重合性組成物を硬化させて液晶材料及び透明性高分子物質から成る厚さ11.0μmの調光層を有する液晶デバイスを得た。
【0050】
このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察したところ、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0051】
上記重合性組成物から成る透明性高分子物質の誘電損率が極大値を示す温度及び25℃における誘電損率、並びに液晶デバイスの電圧保持率を測定した結果を以下に示した。
【0052】
透明性高分子物質の誘電損率が極大値を示す温度 :−1℃
透明性高分子物質の誘電損率(1kHz): 0.09
液晶デバイスの電圧保持率 : 98.5(%)
【0053】
液晶組成物(A)の組成:
【化1】
【0054】
【0055】
(比較例1)
<液晶材料>
実施例1で使用した液晶組成物(A) 80.0%
<重合性組成物>
「HX−220」 19.6%
<重合開始剤>
「イルガキュア651」 0.4%
【0056】
上記組成から成る調光層形成材料を、用いた以外は、実施例1と同様にして、液晶材料及び透明性高分子物質から成る調光層を有する厚さ11.0μmの調光層の液晶デバイスを得た。
【0057】
このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察したところ、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0058】
上記重合性組成物から成る透明性高分子物質の誘電損率が極大値を示す温度及び25℃における誘電損率、並びに液晶デバイスの電圧保持率を測定した結果を以下に示した。
【0059】
透明性高分子物質の誘電損率が極大値を示す温度 :36℃
透明性高分子物質の誘電損率(1kHz): 0.19
液晶デバイスの電圧保持率 : 91.7(%)
【0060】
多官能アクリレート誘導体「HX−220」のみから成る比較例1の透明性高分子物質は、誘電損率が極大値を示す温度が36℃であり、透明性高分子物質の誘電損率が0.19と、0.15よりも大きいため、液晶デバイスの電圧保持率が91.7%と低い結果となっている。
【0061】
これに対し、多官能アクリレート誘導体「HX−220」に単官能アクリレート誘導体であるラウリルアクリレートを併用した重合性組成物から成る実施例1の透明性高分子物質は、誘電損率が極大値を示す温度が−1℃であり、温度25℃における透明性固体物質の誘電損率が0.09と、0.15以下に減少させ、電圧保持率を98%以上に改善することができる。
【0062】
【0063】
上記組成から成る調光層形成材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、液晶材料及び透明性高分子物質から成る調光層を有する厚さ11.0μmの調光層の液晶デバイスを得た。
【0064】
このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察したところ、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0065】
上記重合性組成物から成る透明性高分子物質の誘電損率が極大値を示す温度及び25℃における誘電損率、並びに液晶デバイスの電圧保持率を測定した結果を以下に示した。
【0066】
透明性高分子物質の誘電損率が極大値を示す温度 :−10℃
透明性高分子物質の誘電損率(1kHz): 0.05
液晶デバイスの電圧保持率 : 99.2(%)
【0067】
多官能アクリレート誘導体「KU−760」に単官能アクリレート誘導体であるラウリルアクリレートを併用した重合性組成物から成る実施例2の透明性高分子物質は、誘電損率が極大値を示す温度が−10℃であり、温度25℃における透明性固体物質の誘電損率が0.05と、0.15以下に減少させ、電圧保持率を98%以上に改善することができる。
【0068】
【0069】
上記組成から成る調光層形成材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、液晶材料及び透明性高分子物質から成る調光層を有する厚さ11.0μmの調光層の液晶デバイスを得た。
【0070】
このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察したところ、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0071】
上記重合性組成物から成る透明性高分子物質の誘電損率が極大値を示す温度及び25℃における誘電損率、並びに液晶デバイスの電圧保持率を測定した結果を以下に示した。
【0072】
透明性高分子物質の誘電損率が極大値を示す温度 :100℃
透明性高分子物質の誘電損率(1kHz): 0.1
液晶デバイスの電圧保持率 : 98.3(%)
【0073】
多官能アクリレート誘導体「1.9NDA」から成る実施例3の透明性高分子物質は、誘電損率が極大値を示す温度が100℃であり、温度25℃における透明性固体物質の誘電損率が0.1と、0.15以下であり、電圧保持率を98%以上に改善することができる。
【0074】
【0075】
上記組成から成る調光層形成材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、液晶材料及び透明性高分子物質から成る調光層を有する厚さ11.0μmの調光層の液晶デバイスを得た。
【0076】
このようにして得た液晶デバイスの調光層を電子顕微鏡で観察したところ、三次元網目状の透明性高分子物質を確認することができた。
【0077】
上記重合性組成物から成る透明性高分子物質の誘電損率が極大値を示す温度及び25℃における誘電損率、並びに液晶デバイスの電圧保持率を測定した結果を以下に示した。
【0078】
透明性高分子物質の誘電損率が極大値を示す温度 : 45℃
透明性高分子物質の誘電損率(1kHz): 0.06
液晶デバイスの電圧保持率 : 99.1(%)
【0079】
多官能アクリレート誘導体「C−2000」から成る実施例4の透明性高分子物質は、誘電損率が低いので、高い電圧保持率が得られた。
【0080】
以上、実施例1〜3及び比較例1の結果を下記の表2にまとめて示した。
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
高い電圧保持率の効果により、基板上のマトリックス状に配置した二端子スイッチング素子又は三端子スイッチング素子で各画素の液晶分子の配向を電気的に変化させてハイインホメーション表示が可能な信頼性の良い高品質画像表示の光散乱型液晶デバイスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】透明性高分子物質の誘電損率と電圧保持率の温度依存性を示す図表である。
【符号の説明】
■ 重合性組成物Aから成る透明性高分子物質
● 重合性組成物Bから成る透明性高分子物質
Claims (3)
- 電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板と、これらの基板間に支持された調光層とを有し、前記調光層が液晶材料及び透明性高分子物質を含有する液晶デバイスの製造方法であって、該液晶デバイスの実用動作温度領域における周波数1KHzの誘電損率が0.0001以上0.15以下である透明性高分子物質を使用することを特徴とする液晶デバイスの製造方法。
- 調光層が液晶材料の連続層中に三次元網目状の透明性高分子が形成されている、請求項1に記載の液晶デバイスの製造方法。
- 透明性高分子物質が多官能型及び/又は単官能型(メタ)アクリレート誘導体の重合体からなり、その誘電損率の極大値を示す温度が0℃以下、又は80℃以上となるように該(メタ)アクリレート誘導体を選択する、請求項1又は2に記載の液晶デバイスの製造方法。
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