JP3705861B2 - 超電導磁石装置及びその着磁調整方法 - Google Patents

超電導磁石装置及びその着磁調整方法 Download PDF

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    • G01R33/3815Systems for generation, homogenisation or stabilisation of the main or gradient magnetic field using electromagnets with superconducting coils, e.g. power supply therefor

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導磁石装置、特に静磁場発生源として超電導複合体を利用した超電導磁石装置に関する。従って、本発明は静磁場を利用する全産業分野に利用できる。
【0002】
【従来の技術】
よく知られているように、超電導磁石装置はいろいろな分野において用いられている。一般的に知られている超電導磁石装置についていえば、特開平4−49948号公報に開示されているように、超電導線材をコイル状に巻き、これを冷媒容器に収容されている超電導冷媒である液体ヘリウム中に浸漬されて、予め定められた空間に磁束、従って磁界を発生させるようにしたものである。
【0003】
図68はその一例を示したものである。冷媒容器11内に支持体14に超電導線材をコイル状に巻いた静磁場発生源13が配置されている。超電導線材としては、Nb3SnやNbTiの線が使用されている。静磁場発生源13による磁場は静磁場空間18内にその中心軸19に沿って形成される。静磁場発生源13は複数個のコイルからなり、各コイルの巻数を変えることにより、静磁場空間18内の磁場を調整することができる。また、冷媒容器11には液体ヘリウムなどの超電導用冷媒12が冷媒源17からコック16を経由して冷媒注入ポート15から注入される。静磁場発生源13のコイルに流す着磁電流は励磁電源20からコネクタ部21及び永久電流スイッチ24を経由して導入される。
【0004】
永久電流スイッチ24は静磁場発生源13を永久電流モードで運転する際のスイッチで、その一例を図69に示す。永久電流スイッチ24は静磁場発生源13と共に冷媒容器11内に収容され、超電導用冷媒12にて冷却される。永久電流スイッチ24は主として超電導線材28とヒータ線29とを一緒にコイル状に巻き、エポキシ樹脂などで熱絶縁を施したものである。この超電導線材28には母材としてCuNi合金を用いた超電導線が、ヒータ線29にはマンガニンヒータ線が通常用いられている。静磁場発生源13は永久電流ジョイントP、Qにおいて超電導線材28及び励磁電源20と接続されており、励磁電源20側はスイッチ26が設けられている。ヒータ線29にはコネクタ部23を経由してヒータ電源22が接続されており、ヒータ電源20側にはスイッチ27が設けられている。永久電流スイッチ24は、ヒータ線29を加熱したときには、超電導線材28は臨界温度Tc以上となり、ヒータ線29を加熱しないときには超電導状態となり、スイッチはON状態となる。
【0005】
静磁場発生源13を永久電流モードで運転するためには、次の手順がとられる。
(1)静磁場発生源13と永久電流スイッチ部25を超電導用冷媒12にて超電導状態に冷却しておく。
(2)ヒータ電源22側のスイッチ27をONにし、永久電流スイッチ25をOFF状態にし、励磁電源20側のスイッチをONにし、励磁電源20にて静磁場発生源13を定格電流まで励磁する。
(3)ヒータ電源22側のスイッチ27をOFFにしてヒータ加熱をやめて、永久電流スイッチ25の超電導線材28を導通状態(ON状態)にして、励磁電源20の電流を0まで下げる。このとき、永久電流スイッチ25の超電導線材28を流れる電流は静磁場発生源13の定格電流値まで上昇する。この状態で励磁電源20は取りはずし可能である。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】
しかし、従来の超電導磁石装置においては、静磁場発生源に超電導コイルを使用していること、永久電流モードで運転するために永久電流スイッチを使用していること等に起因して下記の問題点がある。
(1)超電導コイルの接続部の抵抗のために生じる磁束の経時的低下、
(2)永久電流スイッチを構成しているCuNi合金と超電導線材を構成しているCuとの接合部位に生ずる接触電位差に伴うクエンチ発生要因の生成、
(3)超電導コイルの接続部に生ずる磁場の強度並びにその方向の乱れに起因する通電電流の低下、
(4)コイルの固定不具合によりコイルの一部が機械的に変動して局部発熱を生じ、局部発熱部位が超電導状態から常電導状態に変化することにより、局部発熱が加速されて起こるクエンチ発生要因の生成、
(5)超電導コイルの作製作業の主要部、コイルの接続作業、コイルの押え作業など人間の手作業に頼る部分が多いため、製作精度を一様にすることは困難で、超電導磁石装置を必要な高い精度で製作するには充分に熟達した作業者を必要とする。
【0007】
このため、本発明では、磁束の経時変化が少なく、クエンチにも強く、小型で、精度の高い超電導磁石装置を均質に着磁する着磁調整方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は次の解決手段により達成される。本発明の超電導磁石装置は、内容物を超電導状態に冷却できる冷却容器と、該冷却容器中に配置され、予め定められた磁場領域(以下、均一磁場領域という。)にその中心軸に沿った磁束を発生させる電流の保持媒体となる超電導複合体を含む静磁場発生手段と、該静磁場発生手段を前記冷却容器中に保持する保持手段とを含み、前記超電導複合体が温度調節素子を有する超電導磁石装置において、前記静磁場発生手段の着磁を誘導着磁にて行い、その着磁値を前記温度調節素子により前記超電導複合体の温度を制御することにより調節可能にしたものである(特徴1)。
【0009】
本発明では静磁場発生手段を超電導複合体で構成し、間接着磁法である誘導着磁にて着磁を可能にすることにより、静磁場発生手段に直接励磁電流を流すことなく着磁できるので、従来の如く、超電導線材をコイルに巻いた超電導コイルは不要となった。その結果、着磁電源と超電導コイルとの配線に伴う熱抵抗の問題、永久電流スイッチの使用に伴うクエンチ発生の問題、超電導コイルの巻線作業に関する問題等がなくなり、磁束の経時変化が少なく、クエンチにも強い超電導磁石装置が得られる。また、静磁場発生手段を構成する超電導複合体に温度調節素子を付加したことにより、超電導複合体を着磁して永久電流が流れるようにした後に、温度調節素子により超電導複合体の温度を制御して着磁後の永久電流を調節できるので、超電導磁石装置の着磁後の着磁値の調整が容易になった。この結果、誘導着磁においても、着磁後に着磁値を自由に所望値に制御することができるようになった。
【0010】
本発明の超電導磁石装置は、特徴1のものに対し、超電導複合体は超電導複合板材を円筒形に加工した円筒体であり、静磁場発生手段は複数個の円筒体を円筒長手方向に中心軸を合わせて配置され(以下、この複数個の円筒体を第1の円筒体群という。)、この第1の円筒体群の中心軸とその円筒長手方向の中心線との交点近傍に均一磁場領域を形成するように構成され、第1の円筒体群を誘導着磁により着磁することにより、均一磁場領域中に所望の静磁場強度と磁束の方向を得るものである(特徴2)。
【0011】
この構成の超電導磁石装置は水平磁場方式のもので、超電導複合板材を用いた円筒体群を中心軸を合わせて円筒長手方向に配列したものである。均一磁場領域は円筒体群のほぼ中心部分に形成される。
【0012】
本発明の超電導磁石装置では更に、第1の円筒体群の外周に、他の径の大きい複数個の円筒体又は中心穴のあいた円板体(以下、第2の円筒体群という。)を第1の円筒体群と中心軸を合わせて配列し、かつ第2の円筒体群にも温度調節素子を付加し、第2の円筒体群について第1の円筒体群の発生する磁束を打ち消す方向の磁束を発生するように誘導着磁し、漏洩磁束を減少させたものである(特徴3)。この構成は特徴2の超電導磁石装置に対し、漏洩磁束を減少させるために第2の円筒体群を付加したものである。
【0013】
本発明の超電導磁石装置では更に、第1の円筒体群を構成する複数個の円筒体のうちの1個以上の円筒体を他の円筒体とは逆向きの電流が流れるように誘導着磁することにより、均一磁場領域の磁場均一度を損なうことなく、第1の円筒体群の配置長さを短縮したものである(特徴4)。同じ磁場均一度の均一磁場領域を形成するのに同極性の永久電流を流した円筒体のみの組合せでは静磁場発生手段の長さは長くなってしまうが、この中に逆極性の永久電流を流した円筒体を組入れることにより、静磁場発生手段の長さを短縮できる。
【0014】
本発明の超電導磁石装置では更に、第1の円筒体群を構成する円筒体の内径側に、長さを第1の円筒体群の配列長さよりも長く、外径を第1の円筒体群の内径よりも小さくし、かつ温度調節素子を付加した1個以上の円筒体(以下、第3の円筒体群という。)を配置し、第3の円筒体群を超電導磁石装置の着磁開始から着磁値調整完了時まで前記温度調節素子により加温して超電導状態を解いておき、着磁調整が完了した後に温度調節素子による加温を解き、第3の円筒体群を冷却し超電導状態に戻すものである(特徴5)。
【0015】
この構成では、静磁場発生手段の構成主要素である第1の円筒体群の内周側に第3の円筒体群を配置して、第1の円筒体群を着磁した後、第1の円筒体群が均一磁場領域を形成する磁束の大部分を通す第3の円筒体群を超電導状態にすることにより、前記磁束の大部分は第3の円筒体群に捕捉されるので、第1の円筒体群における磁束変化は第3の円筒体群で補償され、均一磁場領域中の磁場強度の時間的減衰及びこの減衰によって生じる磁場分布の時間的変化を補償することができる。
【0016】
本発明の超電導磁石装置では更に、第3の円筒体群の両端部に、温度調節素子を付加し、中心穴を有する円板体群を配置して、均一磁場領域を形成する第1の円筒体群の磁束の捕捉の度合を高めて、均一磁場領域中の磁場強度の時間的減衰及びこの減衰によって生じる磁場分布の時間的変化をより高い精度で補償することができる(特徴6)。
【0017】
本発明の超電導磁石装置では、特徴1記載の超電導磁石装置が2組、その中心軸を合わせて対向して配置され、両超電導磁石装置の対向中心部近傍に均一磁場領域を有する超電導磁石装置において、超電導複合体は超電導複合板材を適当な直径及び長さ寸法の円筒形に加工した円筒体であり、静磁場発生手段は複数個の前記円筒体をその中心軸を合わせて立体的に配置して構成され(以下、この複数個の円筒体を第4の円筒体群という。)、2組の超電導磁石装置を誘導着磁により着磁することにより、均一磁場領域中に所望の静磁場強度と磁束の方向を得るものである(特徴7)。
【0018】
この構成の超電導磁石装置は垂直磁場方式の対向形超電導磁石装置で、均一磁場領域を中心にして対称の静磁場発生手段を対向配置したものである。静磁場発生手段は水平磁場方式のものと同様円筒体群で構成しているが、円筒体の外径、長さ寸法を適当に選択して、円筒体の長手方向について2種類の外径の異なる円筒体のオーバーラップもできるので、超電導磁石装置の外径、長さ寸法の縮小化を可能にしている。
【0019】
本発明の超電導磁石装置では更に、2組の第4の円筒体群の均一磁場領域から離れた外側の位置に、温度調節素子を付加した複数個の超電導複合板材を用いた円筒体又は円板体(以下、第5の円筒体群という。)を第4の円筒体群と中心軸を合わせて配置し、第5の円筒体群について第4の円筒体群の発生する磁束を打ち消す方向の磁束を発生するように誘導着磁し、漏洩磁束を減少させたものである(特徴8)。
【0020】
本発明の超電導磁石装置では更に、2組の第4の円筒体群を構成する複数個の円筒体のうち1個以上の円筒体を他の円筒体とは逆向きの電流が流れるように誘導着磁することにより、均一磁場領域の磁場均一度を損なうことなく、第4の円筒体群の外径を縮小化したものである(特徴9)。この構成での効果は、特徴4の場合と同様である。
【0021】
本発明の超電導磁石装置では更に、2組の第4の円筒体群の対向面側の前面に、直径を第4の円筒体群の外径とほぼ同一とし、温度調節素子を付加し、かつ超電導複合板材を用いた1個以上の円板体(以下、第1の円板体群という。)を、第4の円筒体群と中心軸を合わせて配置し、第1の円板体群を超電導磁石装置の着磁開始から着磁値調整完了時まで温度調節素子により加温して超電導状態を解いておき、着磁調整が完了した後に温度調節素子による加温を解き、第1の円板体群を冷却し超電導状態に戻すものである(特徴10)。この構成での効果は、特徴5の場合と同様である。
【0022】
本発明の超電導磁石装置では更に、第4及び第5の円筒体群の外周にも、温度調節素子を付加した第6の円筒体群を配置し、第1の円板体群と第6の円筒体群で、第4及び第5の円筒体群を囲む構成としたことにより、均一磁場領域を形成する第4及び第5の円筒体群の磁束の捕捉の度合を高めるものである(特徴11)。
【0023】
本発明の超電導磁石装置では更に、特徴1記載の超電導磁石装置が2組、その中心軸を合わせて対向して配置され、両超電導磁石装置の対向中心部に均一磁場領域を有する超電導磁石装置において、超電導複合体は超電導複合板材を静磁場発生手段の外径の1/3以下の直径を有する円筒形に加工後、温度調節素子を付加した小円筒体であり、静磁場発生手段は複数個の小円筒体で構成され(以下、第7の円筒体群という。)、第7の円筒体群は中心軸と同心の円周上に等間隔で配列され、かつ円筒体各々の中心軸が均一磁場領域を向くように超電導磁石装置の中心軸に対し所定の傾きを与えられて構成され、第7の円筒体群を誘導着磁により着磁することにより、均一磁場領域中に所望の静磁場強度と磁束の方向を得るものである(特徴12)。
【0024】
この構成の超電導磁石装置は特徴7記載のものと同様、垂直磁場方式の対向形超電導磁石装置であるが、静磁場発生手段を構成する円筒体群が小円筒体からなっている。小円筒体は円周上に等間隔で配置され、均一磁場領域を形成するために、その方向に中心軸を向けて傾斜して配列されている。
【0025】
本発明の超電導磁石装置では更に、第7の円筒体群を構成する円筒体の直径よりも小さい直径を有する複数個の他の小円筒体を、第7の円筒体群と同心ではあるが異なる径の円周上に等間隔でかつ第7の円筒体群の2個の小円筒体の中間に位置するように配列され、かつ小円筒体各々の中心軸が均一磁場領域を向くように超電導磁石装置の中心軸に対し所定の傾きを与えられて構成されたものである(特徴13)。このように構成することにより、小円筒体群を円周上に配置した場合に生じる均一磁場領域における周方向の均一度低下を改善し、磁場均一度を向上することができる。
【0026】
本発明の超電導磁石装置では更に、第7の円筒体群の対向面とは反対側の、均一磁場領域から離れた部分に、温度調節素子を付加し、超電導複合板材を用いて加工した他の1個以上の円筒体又は1個以上の円板体を、第7の円筒体群と同軸に配置し、他の円筒体又は円板体を第7の円筒体群の発生する磁束を打ち消す方向に電流が流れるように誘導着磁を行うことにより、漏洩磁束を減少させたものである(特徴14)。この構成での効果は、特徴3の場合と同様である。
【0027】
本発明の超電導磁石装置では更に、第7の円筒体群の対向面側の端面部分に、超電導複合板材を第7の円筒体群の外径とほぼ同じ外径の円板に加工後、温度調節素子を付加した1個以上の円板体(以下第2の円板体群という。)を、超電導磁石装置の中心軸と同軸に配置し、第2の円板体群を超電導磁石装置の着磁開始から着磁値調整完了時まで温度調節素子により加温して超電導状態を解いておき、着磁調整が完了した後に温度調節素子による加温を解き、第2の円板体群を冷却し超電導状態に戻すものである(特徴15)。この構成での効果は、特徴4の場合と同様である。
【0028】
本発明の超電導磁石装置では更に、第7及び第8の円筒体群の外周にも、温度調節素子を付加した第9の円筒体群を配置し、第2の円板体群と第9の円筒体群で、第7及び第8の円筒体群を囲む構成としたことにより、均一磁場領域を形成する第7及び第8の円筒体群の磁束の捕捉の度合を高めるものである(特徴16)。
【0029】
本発明の超電導磁石装置では更に、静磁場発生手段を構成する複数個の円筒体のうち、着磁時に配置される外置着磁コイルから離れた位置にある円筒体、又は逆極性に着磁する必要のある円筒体を着磁するために、冷却容器内の円筒体の近傍に着磁用補助コイルを配置したものである(特徴17)。この構成では、着磁のやりにくい円筒体を着磁用補助コイルにより所定の着磁値に容易に着磁することができるようになる。
【0030】
本発明の超電導磁石装置では更に、第4及び第5の円筒体群の外周部の一部又は全部に、複数個の超電導複合板材を円筒体の外径の1/3以下の直径の円筒形に加工した後温度調節素子を付加した円筒体(以下、小円筒体という。)を、小円筒体の中心軸が均一磁場領域を向くように配置し、均一磁場領域外周部の磁場強度を補正したものである(特徴18)。この構成では、対向形超電導磁石装置において、複数個の小円筒体の配置を適当に選択することにより、均一磁場領域の外周部の磁場均一度を向上させることができる。
【0031】
本発明の超電導磁石装置では更に、第1及び第2の円筒体群と、円筒体群を構成する円筒体に付加されている温度調節素子とを、静磁場発生手段の長手方向の中心線を境にして左グループと右グループに2分割し、左右各グループの温度調節素子を独立に直列に接続し、また各円筒体に端部温度調節用の温度調節素子(以下、端部温度調節素子という。)が付加されている場合には端部温度調節素子について一括して直列に接続し、更に第3の円筒体群が配列されている場合には第3の円筒体群に付加されている温度調節素子について一括して直列に接続して、リード線を超電導磁石装置内部から外部に引き出したものである(特徴19)。この構成では、水平磁場方式の超電導磁石装置からリード線引き出しを必要最小限にし、かつ着磁調整作業でのイニシャライズから磁場分布の固定に至るまでの全ての工程で温度調節素子の制御が可能である。
【0032】
本発明の超電導磁石装置では更に、2組の第4及び第5の円筒体群又は第7及び第8の円筒体群を構成する各円筒体に付加した温度調節素子を組単位に直列に接続し、また各円筒体に端部温度調節素子が付加されている場合には端部温度調節素子について一括して直列に接続し、更に第1の円板体群及び/又は第6の円筒体群又は第2の円板体群及び/又は第9の円筒体群が配列されている場合には円板体群及び/又は円筒体群に付加されている温度調節素子について一括して直列に接続して、リード線を超電導磁石装置内部から外部に引き出したものである(特徴20)。この構成は、垂直磁場方式の超電導磁石装置からのリード線引き出しに関するもので、その効果は特徴19のものと同様である。
【0033】
本発明の超電導磁石装置では更に、円筒体又は円板体に付加された温度調節素子に直流電流を導く通路は、直流電流を供給する着磁電源装置から磁石内部の配線に至るまで、全て往復の直流電流通路として捩り合わされており、また温度調節素子内の通路は往復の直流電流が密着して通過するよう2本のヒータ又はリード線が平行に又は捩り合わされて構成されている(特徴21)。この構成は、温度調節素子に流す電流による磁界が着磁磁場に悪影響を与えないようにしたものである。
【0034】
本発明の超電導磁石装置では更に、温度調節素子をその電流制御に最適なグループ別に複数個ずつに分割し、各グループ単位に一括して直列に接続して、リード線を超電導磁石装置内部から外部に引き出したものである(特徴22)。この構成は、温度調節素子での電流制御が効率良く実行できると共に、リード線の外部への引出しを最小限にしている。
【0035】
本発明の超電導磁石装置では更に、超電導磁石装置外に引き出すリード線にステンレス鋼線又は高温超電導線材を用いたものである(特徴23)。この構成は、リード線部分からの熱の侵入を防止するためのものである。
【0036】
本発明の温度調節素子付加円筒体は、超電導複合板材を円筒形に加工した円筒体であって、1個以上の全体加温用の第1の温度調節素子を円筒体の周方向に等間隔に、円筒体の長手方向に沿って配設し、第1の温度調節素子に直流電流を導入し、直流電流を制御することにより円筒体中を周方向に流れる永久電流を制御することができるものである(特徴24)。この構成は、円筒体の周方向に流れる永久電流に直交するように温度調節素子を配設し、効率良く永久電流を制御できる。
【0037】
本発明の温度調節素子付加円筒体は、超電導複合板材を円板形に加工した円板体であって、1個以上の全体加温用の第1の温度調節素子を円板体の中心点から放射状に等角度に配設し、第1の温度調節素子に直流電流を導入し、直流電流を制御することにより円板体中を円周方向に流れる永久電流を制御することができるものである(特徴25)。この構成での効果は、特徴24と同様である。
【0038】
本発明の温度調節素子付加円筒体は更に、円筒体の端部の限定した領域のみを加温するための端部加温用の第2の温度調節素子1個以上を円筒体の端部の周方向に等間隔に、円筒体の長手方向に沿って配設し、第2の温度調節素子に直流電流を導入し、直流電流を制御することにより円筒体の端部を周方向に流れる永久電流を制御することができるものである(特徴26)。この構成は、円筒体の端部に流れる突出永久電流を制御するために円筒体端部専用の温度調節素子を配設したものである。
【0039】
本発明の温度調節素子付加円筒体は更に、円筒体が長手方向に2又は3分割され、本体部分と1又は2個の端部からなり、端部に端部加温用の第2の温度調節素子が配設され、本体部分と端部との結合体に全体加温用の第1の温度調節素子が配設されているものである(特徴27)。
【0040】
本発明の温度調節素子は、超電導複合板材を加工した円筒体又は円板体の加温を行う温度調節素子であて、電気的絶縁を施したヒータ2本を1組として、そのヒータ部の長さを円筒体又は円板体の温度調整部位の必要寸法に合わせて加工し、その両端にリード線を接続し、ヒータ部分を銅又はアルミニウム等の熱伝導率の高い保護管に格納し、ヒータ部の周囲を熱伝導率の高い合成樹脂で充填して固定したものである(特徴28)。この構成は、温度調節素子の基本構成で、円筒体への取付上堅牢で、取扱いが容易である。
【0041】
本発明の温度調節素子は更に、ヒータ2本を平板状とし、ヒータを格納する保護管を偏平にしたものである(特徴29)。この構成は、薄い円筒体や円板体への埋込みに適している。
【0042】
本発明の温度調節素子は更に、ヒータ2本の中央部分にリード線を配し、両端部分の必要領域のみヒータとしたものである(特徴30)。この構成は、端部温度調節素子用である。
【0043】
本発明の温度調節素子付加円筒体又は円板体は、超電導複合板材を円筒形又は円板形に加工した超電導磁石装置用円筒体又は円板体であって、特徴28乃至30記載の温度調節素子を超電導複合板材の間に挟む形で埋込み加工したものである(特徴31、32)。
【0044】
本発明の温度調節素子付加円筒体又は円板体は更に、温度調節素子の円筒体又は円板体への埋込後の固定を熱伝導率の高い合成樹脂にて固定したものである(特徴33)。この構成は、温度調節素子による円筒体又は円板体の温度制御を短時間に確実に行うためのものである。
【0045】
本発明の円筒体は、超電導複合板材を用いて加工した複数の円筒を一体化した超電導磁石装置用円筒体であって、その内径面に電気的絶縁を施し、その内側に円筒体の固定具として銅又はアルミニウムで作られた円筒を密着挿入して一体化したものである(特徴34)。この構成は、円筒体を強度的に補強すると共に、円筒体支持台への取付を容易にする。
【0046】
本発明の円筒体は更に、円筒体の外周に、ステンレス鋼又は銅又はアルミニウムで作られた円筒を嵌着して、誘導着磁磁場強度によって生ずる電磁力から円筒体を保護するものである(特徴35)。
【0047】
本発明の円筒体は更に、円筒体の厚さ方向について複数層の円筒体に分割し、分割された各層の円筒体に温度調節素子を埋め込み、円筒体各層間に銅又はアルミニウムのスぺーサを、温度調節素子の埋込部分を除いて密着挿入し、温度調節素子の埋込部分についてはスペーサのない空隙部分に、熱伝導率の低い合成樹脂を充填するものである(特徴36)。この構成は、厚い円筒体を作る場合に適している。
【0048】
本発明の円筒体又は円板体構造体は、超電導複合板材を円筒形又は円板形に加工した超電導磁石装置用円筒体又は円板体を複数個用いた構造体において、各々の円筒体又は円板体の周方向の位置を所定角度ずつずらして重ね合わせて、超電導複合板材の加工時の特性不均一を低減したものである(特徴37、38)。
【0049】
本発明の円筒体支持台は、超電導複合板材を円筒形に加工した超電導磁石装置用円筒体を支持する円筒体支持台であって、その長手方向は中心から両端に向って階段状に加工され、各階段の外径は中心から端部に行くにつれて小さくなり、各階段の中心軸と直交する面は電気的絶縁が施され、各階段の中心軸と平行な外周面は前記円筒体が嵌着できる用に加工されているものである(特徴39)。この構成は、水平磁場方式の超電導磁石装置に適用した場合、堅牢で、かつ均一磁場領域の磁場均一度の高い磁石を提供する。
【0050】
本発明の円筒体支持台は更に、各階段の電気的絶縁の施されている面に、各円筒体に付加される温度調節素子のリード線を通すための通路を設けたものである(特徴40)。この構成では、超電導磁石装置内でリード線を連続して、最短長さで配線することができる。
【0051】
本発明の円筒体支持台は更に、支持台の長手方向の中心線上で左右に2分割し、後に前記中心線上で2つの分割体を接合して一体化した(特徴41)。この構成では、最初に分割体を別々に加工し、後に接合して一体化できるので、加工が容易となる。
【0052】
本発明の円筒体支持台は更に、支持台の材質が円筒体の熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数を持つ金属又は合金又は複合材であるものである(特徴42)。
【0053】
本発明の円筒体取付構造は、特徴39乃至42記載の円筒体支持台の階段状部分に、超電導複合板材を円筒形に加工し、温度調節素子を付加した超電導磁石装置用円筒体を嵌着したものである(特徴43)。
【0054】
本発明の着磁電源装置は、超電導磁石装置の着磁を行う着磁電源装置において、外置着磁コイルに着磁電流を供給する第1の着磁用電流出力回路と、超電導磁石装置に内蔵される着磁用補助コイルに着磁電流を供給する第2の着磁用電流出力回路と、静磁場発生手段を構成する円筒体群(円板体群も含む。)に付加された温度調節素子を左右グループ又は組単位に2分割して直列に接続した2組の第1の温度調節素子に加温電流を供給する2組の第1の温度制御用電流出力回路と、前記円筒体群(円板体群を含む。)の端部温度調節のために付加された端部温度調節素子を一括して直列に接続した1組の第2の温度調節素子に加温電流を供給する第2の温度制御用電流出力回路と、静磁場発生手段と均一磁場領域の間に、均一磁場領域の磁場分布を補償するために配置された円筒体群(円板体群を含む。)に付加された温度調節素子を一括して直列に接続した1組の第3の温度調節素子に加温電流を供給する第3の温度制御用電流出力回路とを含むものである(特徴44)。この着磁電源装置は、超電導磁石装置の温度調節素子と着磁コイルに電流を供給すると共にその電流を制御する装置である。着磁コイルには外置着磁コイルと、磁石内蔵着磁コイル、温度調節素子には静磁場発生用の円筒体群用の第1の温度調節素子、端部調整用の第2の温度調節素子、磁場分布補償用の第3の温度調節素子があり、各々に対応する電流出力回路が着磁電源装置に設けられている。
【0055】
本発明の着磁電源装置では更に、各々の電流出力回路に電流を供給し、その電流を制御するために、デジタル/アナログ変換回路と、制御の開始及び完了を指示する信号との論理積回路とを介して制御値を設定する設定回路と、これらの設定と制御を全体的に指示するコンピュータ回路と、コンピュータ回路と設定回路、論理積回路並びに超電導磁石装置の状態を警報表示(ガイド表示を含む。)として表示する表示回路とを結合するコンピュータ回路用出力回路と、超電導磁石装置の磁場の計測値をコンピュータに入力する入力回路と、着磁電源装置についての操作情報を入力する入力回路と、コンピュータ構成制御回路と、着磁調整作業ソフトを格納する記憶回路と、これらに電力を供給する電源回路とが含まれている(特徴45)。この構成は、着磁電源装置の各種電源出力回路の制御回路の構成である。
【0056】
本発明の外置着磁コイルは、超電導磁石装置の着磁時に均一磁場領域に挿入される外置着磁コイルにおいて、外置着磁コイルに前記均一磁場領域内の管理ポイントの磁場強度を計測するための磁場強度計測用素子を付加することにより、着磁中に前記均一磁場領域の磁場強度を計測できるようにしたものである(特徴46)。
【0057】
本発明の外置着磁コイルは、超電導磁石装置の着磁に使用される外置着磁コイルにおいて、外置着磁コイルの全長を、静磁場発生手段を構成している円筒体の全長と比べ、同等もしくはそれ以下にすることにより、静磁場発生手段を構成する円筒体の長手方向両端部での着磁に伴う周方向電流の突出を抑制したものである(特徴47)。
【0058】
本発明の超伝導磁石装置は、着磁調整完了後に、静磁場発生手段を構成する円筒体群(円板体群を含む。)に緊急減磁用温度調節素子を付加し、該緊急減磁用温度調節素子に超電導磁石装置の緊急時に減磁操作を行う緊急減磁装置を接続し、磁場を消失させる必要が生じた場合に、緊急減磁装置より緊急減磁用温度調節素子に超電導磁石装置を消磁させるのに必要な電流を供給するように構成したものである(特徴48)。この緊急減磁装置は、超伝導磁石装置の緊急時にのみ減磁操作を行うもので、着磁後に超伝導磁石装置内の緊急減磁用温度調節素子に接続される。
【0059】
本発明の緊急減磁装置は、超電導磁石装置と組合わせて使用される緊急減磁装置において、超電導磁石装置内の静磁場発生手段を構成する円筒体群(円板体群を含む。)に付加した緊急減磁用温度調節素子を直列に接続した抵抗体を負荷とし、負荷に円筒体群の温度を制御するための電流を供給する定電流出力回路と、定電流出力回路に1〜2分で減磁を行うことができる電流を供給できるだけの容量を有するバッテリーと、バッテリーを常時充電するための直流電源と充電回路と、約1分のオフディレイタイマー機能付押釦スイッチとを備え、押釦スイッチをオンすることにより定電流出力回路にバッテリーから電流を導くことができるものである(特徴49)。
【0060】
本発明の超伝導磁石装置は、静磁場発生手段を構成する円筒体群(円板体群を含む。)に着磁調整のために付加されている温度調節素子の制御電流の最大通電値並びに容量を、緊急減磁に必要な電流及び通電時間約1分に十分耐えられ、かつ緊急減磁動作後も温度調節素子の抵抗値の変化が以後の使用に支障を与えない範囲の容量値を選択することにより、温度調節素子に緊急減磁用温度調節素子を兼用させたものである(特徴50)。この構成は超伝導磁石装置の着磁調整用温度調節素子の電流容量を緊急減磁用のものより大きくして、両者の機能を兼用させたものである。
【0061】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は、内容物を超電導状態に冷却できる冷却容器と、冷却容器中に配置され、予め定められた磁場領域(以下、均一磁場領域という。)にその中心軸に沿った磁束を発生させる電流の保持媒体となる超電導複合体を含む静磁場発生手段と、静磁場発生手段を冷却容器中に保持する保持手段とを含み、超電導複合体が温度調節素子を有する超電導磁石装置において、静磁場発生手段を先ず誘導着磁にて着磁した後、温度調節素子に流す電流値を制御して超電導複合体の温度を調節することにより、誘導着磁値が所望の範囲に納まるように調整するものである(特徴51)。この構成は本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法の基本構成であり、その効果は特徴1と同様である。
【0062】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、予め予備誘導着磁を行い、その着磁結果に基づき誘導着磁の磁場設定値の変更を行い、その変更設定値に従って最終誘導着磁を行うことにより、誘導着磁後の着磁値の調整を省略したものである(特徴52)。
【0063】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、最初の誘導着磁における磁場設定値を所望の着磁値より高い値に設定して、着磁した後に、超電導複合体をその温度−臨界電流密度特性に合わせて加温し、加温温度を調節することにより着磁値を低下させて、所望の着磁値を得るものである(特徴53)。この構成は、本発明での着磁値調整の基本原則である。
【0064】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、超電導磁石装置に外置着磁コイルを組込み、着磁電源装置を接続して行う超電導磁石装置の着磁調整方法において、先ず外置着磁コイルを超電導磁石装置の均一磁場領域と中心を合わせて実装し、着磁電源装置に接続して、第1及び第2の円筒体群又は第4及び第5の円筒体群又は第7及び第8の円筒体群を着磁する手順で、先ず第2又は第5又は第8の円筒体群について一括着磁を行い、更に外置着磁コイルの極性を反転させて第1又は第4又は第7の円筒体群について一括着磁を行うことにより、各円筒体群を構成している超電導複合板材を使用した円筒体の内径側に更に永久電流を流すことができる余裕領域を集中してもたせるように着磁するものである(特徴54)。このように着磁調整された超伝導磁石装置は、円筒体の内径側に余裕領域を持つことにより、着磁調整後の磁場強度の経時的減衰を補償することができる。
【0065】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、第1及び第2の円筒体群又は第4及び第5の円筒体群又は第7及び第8の円筒体群を構成している円筒体を着磁するにあたり、その直径の小さい方から順に着磁することにより、各円筒体にその円筒体位置で必要な磁場強度値に独立的に着磁するものである(特徴55)。
【0066】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、第2又は第5又は第7の円筒体群を構成している円筒体群を着磁するにあたり、第1又は第4又は第7の円筒体群を構成している円筒体の着磁極性とは逆向きにし、円筒体の直径の小さい方から順に着磁するものである(特徴56)。この構成は超伝導磁石装置の小型化に効果がある。
【0067】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、第1又は第4又は第7の円筒体群を構成している円筒体群を着磁するにあたり、円筒体のうちの一部の円筒体のみを他の円筒体の着磁極性とは逆向きにし、円筒体の直径の小さい方から順に着磁するものである(特徴57)。この構成の効果は特徴56と同様である。
【0068】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、円筒体を厚さ方向に複数個の層に分割し、分割された複数個の層の各々に温度調節素子を付加し、各々の層を個別の円筒体の如く位置付けて、円筒体を着磁するにあたり、その直径の小さい層から順に着磁することにより、円筒体の各層にその層の位置で必要な磁場強度値を独立的に着磁するものである(特徴58)。
【0069】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、外置着磁コイルを第1又は第4又は第7の円筒体群の着磁用、超電導磁石装置に内蔵した着磁用補助コイルを第2又は第5又は第8の円筒体群の着磁用として位置付けし、着磁用補助コイルの着磁極性を外置着磁コイルの着磁極性と逆向きにして、両着磁コイルを同時に制御して着磁するものである(特徴59)。この構成の効果は、特徴17と同様である。
【0070】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、第1及び第2の円筒体群又は第4及び第5の円筒体群又は第7及び第8の円筒体群を構成する円筒体を、厚さ方向に2つの円筒体に分割し、各々の円筒体に温度調節素子を付加し、先ず2つの円筒体のうち径の大きい方の円筒体を着磁コイルにより最終着磁値の1/nの着磁値で着磁し、次に着磁コイルの発生する1/nの着磁磁場と径の大きい方の円筒体の着磁値とを加えて2/nの着磁磁場として径の小さい方の円筒体を2/nの着磁値に着磁するという手順で着磁を進め、この操作を順次n回繰り返すことにより、最終着磁の1/nの磁場強度の着磁コイルを用いていずれかの円筒体を最終着磁値に着磁するものである(特徴60)。この構成では、小さい着磁磁場を用いて高い着磁値に着磁できるので、着磁コイル及び着磁電源装置の小容量化を図ることができる。
【0071】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は、特徴12乃至16記載の超電導磁石装置を着磁調整する着磁調整方法であって、第7及び第8の円筒体群を構成する小円筒体の内部に着磁用補助コイルを内蔵し、外置着磁コイルの発生する着磁磁場強度と着磁用補助コイルの着磁磁場強度とを重畳させて着磁するものである(特徴61)。この構成では、小円筒体に着磁用補助コイルを内蔵させたことにより小円筒体群を用いた超伝導磁石装置を効率良く着磁できる。
【0072】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、第1乃至第3の円筒体群又は第4及び第5の円筒体群及び第1の円板体群及び/又は第6の円筒体群又は第7及び第8の円筒体群及び第2の円板体群及び/又は第9の円筒体群を構成する円筒体及び円板体を、着磁に先立ち温度調節素子を加温して昇温させて超電導状態から常電導状態に移行させた後、加温を止めて冷却し再び超電導状態に戻すことにより、過去の残留磁場を消失させるイニシャライズ工程を具備するものである(特徴62)。このイニシャライズ工程は、過去の残留磁場を消失するもので、均質な着磁を行うためには必須の工程である。
【0073】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、第3の円筒体群又は第1の円板体群及び/又は第6の円筒体群又は第2の円板体群及び/又は第9の円筒体群を構成する円筒体及び円板体を、イニシャライズ工程から着磁値調整が完了するまで、常電導特性を示す状態に保持し、着磁調整完了後に超電導特性を示す状態に戻るように制御するものである(特徴63)。この工程は、着磁調整後の磁場分布を固定するためのもので、着磁後の着磁強度の経時的減衰と磁場分布の経時的変効が補償される。
【0074】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、イニシャライズ工程後第1及び第2の円筒体群又は第4及び第5の円筒体群又は第7及び第8の円筒体群を構成する円筒体(円板体を含む。)に付加した温度調節素子を用いて円筒体を昇温して超電導状態から常電導状態に移行させる制御と共に、着磁コイルの励磁電流を上昇させ、所望の着磁磁場強度値に到達させた後この状態を保持すると共に、温度調節素子による加温を止めて円筒体を冷却し常電導状態から再び超電導状態に戻す制御を完了した後、着磁コイルの励磁電流を徐々に下降させて零にする制御を行って、円筒体に所望の着磁値を付与する工程(以下、着磁工程という。)を具備するものである(特徴64)。この構成は、超伝導磁石装置の静磁場発生用円筒体群を着磁する工程であり、本発明の超伝導磁石装置を着磁調整するための必須の工程である。
【0075】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、円筒体及び円板体に付加した温度調節素子を用いて行う円筒体及び円板体の温度の制御を、円筒体及び円板体が常電導状態でしかも超電導状態に近い温度に保持されるような設定値で制御することにより消費される寒剤量又は冷却エネルギーを最少化したものである(特徴65)。この構成では、円筒体及び円板体の温度上昇及びその保持時間を最小になるように温度調節素子での電流制御を行うことにより、冷却用の寒剤量等の消費が節減される。
【0076】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、着磁コイルの励磁電流の単位時間あたりの制御量を、円筒体を構成する超電導複合板の有する特性の許容値より小さくし、しかも着磁調整時間を最短にする範囲に設定することにより、消費される寒剤量又は冷却エネルギーを最少化したものである(特徴66)。
【0077】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、円筒体のうちの着磁の対象となっている円筒体ごとに、着磁に先立ち円筒体に付加した温度調節素子を加温して円筒体を昇温させて超電導状態から常電導状態に移行させた後、昇温を止めて冷却し再び超電導状態に戻すイニシャライズ工程と、温度調節素子を加温して円筒体を昇温させて超電導状態から常電導状態に移行させると共に、着磁コイルの励磁電流を上昇させ所望の磁場強度にした後この状態を保持し、温度調節素子による加温を止めて円筒体を冷却し常電導状態から再び超電導状態に戻した後着磁コイルの励磁電流を徐々に下降させて円筒体に所望の着磁値を付与する着磁工程を実行し、これを各円筒体の必要着磁ごとに繰り返し実行することにより、各円筒体の着磁値を個別に制御したものである(特徴67)。この構成は、静磁場発生用円筒体が複数個存在する場合に、円筒体ごとに分割して着磁を行うもので、分割着磁と称する。
【0078】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、第1及び第2の円筒体群又は第4及び第5の円筒体群又は第7及び第8の円筒体群を構成する円筒体(円板体を含む。)の端部に突出電流が生じる着磁調整方法の場合には、着磁工程後に各円筒体の端部に付加した端部調整用温度調節素子を用いて円筒体端部のみの温度制御を行い、突出電流の低減をする工程(以下、端部調整工程という。)を具備するものである(特徴68)。この構成は、超伝導磁石装置の静磁場発生用円筒体の端部に流れる突出永久電流を低減する工程で、必要に応じ実行するものである。
【0079】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、円筒体を円筒体中央部とその両端に補助円筒体を付加した構成とし、更に該補助円筒体に端部調整用温度調節素子を付加したことにより、補助円筒体のみの温度制御を可能にしたものである(特徴69)。
【0080】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、着磁工程又は端部調整工程完了後に、第1及び第2の円筒体群を円筒長手方向に配列した超電導磁石装置では円筒長手配列方向の中心線を境に左右の着磁磁場値の、2組の第4及び第5の円筒体群又は2組の第7及び第8の円筒体群とを対向配置した超伝導磁石装置では対向する2組の磁石の着磁磁場値の、差が所定の範囲を越えている場合には、着磁磁場値の高い方のグループの円筒体群を構成している円筒体に付加されている温度調整素子を昇温して円筒体を加温することにより、そのグループの着磁磁場値を低下させて、他のグループの着磁磁場値と平衡させる工程(以下、バランス調整工程という。)を具備するものである(特徴70)。この構成は、超伝導磁石装置の磁場分布、特に左右着磁値のバランス、又は対向する2組の着磁値のバランスを調整する工程で、静磁場発生用の円筒体群を2つのグループに分けて、一方のグループのみを着磁値が低下するように調整するもので、必要に応じ行う工程である。
【0081】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、着磁工程又は端部調整工程又はバランス調整工程完了後に、第1及び第2の円筒体群又は第4及び第5の円筒体群又は第7及び第8の円筒体群を構成する円筒体(円板体を含む。)に付加した温度調節素子を用いて円筒体全体を昇温し温度調整を行うことにより、所定の着磁磁場値を得る工程(以下、全体調整工程という。)を具備するものである(特徴71)。この構成は、着磁工程で得られた着磁値を所定値に調整する工程で、静磁場発生用円筒体群を温度調節して行われる。
【0082】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、円筒体又は円筒体端部の設定温度範囲の上限値を、円筒体が超電導特性を消失しない範囲での最小値にすることにより、着磁調整時に着磁磁場の消失を防止するものである(特徴72)。
【0083】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は、特徴2乃至23記載の超伝導磁石装置に外置着磁コイル(磁石内蔵の着磁用補助コイルが有る場合にはそれを含む。以下、両者を含めて着磁コイルという。)と着磁電源装置を組合せて行う超電導磁石装置の着磁調整方法であって、その作業工程はI着磁工程と、II端部調整工程と、IIIバランス調整工程と、IV全体調整工程と、V磁場分布固定工程とからなり、I着磁工程においては超電導磁石装置の円筒体群及び円板体群に付加した温度調節素子、磁場計測機器、着磁コイルと着磁電源装置とを接続し、着磁電源装置の電源スイッチをオンし、一定時間経過後着磁調整開始用スタート押釦スイッチをオンし、着磁コイル並びに端部温度調節素子を除く温度調節素子の電流出力値が予め定めた値に設定され、超電導磁石装置の円筒体及び円板体が昇温され超電導状態から常電導状態に移行するように端部温度調節素子を除く温度調節素子に流れる電流が制御され、その後必要な時間経過後予め定めた着磁値が設定され、着磁コイルに直流電流が導かれて徐々に上昇され、直流電流が所定値に達した後、端部温度調節素子を除く温度調節素子に流れる電流が徐々に零になるように制御され、円筒体及び円板体の特性が常電導状態から超電導状態に戻され、一定時間経過後着磁コイルの直流電流が徐々に下降され零になるように制御されて、円筒体及び円板体の周方向に永久電流が発生し保持されることにより、均一磁場領域が所望値以上の磁場強度で着磁され、ぞの後均一磁場領域の管理ポイントの磁場が計測され、着磁電源装置にて所定値か否か判定され、この判定結果所定値未達であれば着磁値が再設定されて着磁を繰り返し、所定値を達成していれば次工程に進む、II端部調整工程においては先ず予め超電導磁石装置ごとに端部調整の要否を決めておき、否の場合は不要とし、要の場合には端部温度調節素子に流す直流電流値が設定され、端部温度調節素子に設定された電流が流れることにより、円筒体の端部が加温され、その端部を流れる永久電流が調整される、IIIバランス調整工程においては先ず先に取込んだ均一磁場領域の管理ポイントの計測値から着磁値の左右グループ又は対向する2組のアンバランスを判定し、バランス調整の要否を決定し、否の場合は不要とし、要の場合には磁場の高い方のグループ又は組の円筒体及び円板体に付加されている温度調節素子に流す直流電流値が磁場計測値から演算して設定され、温度調節素子に流れる電流が制御されて円筒体及び円板体に流れる永久電流が調整される、IV全体調整工程においては先ず着磁値の下げたい目標値を設定し、その設定値と現在の着磁値との差分を演算し、その演算結果に基づいて円筒体及び円板体に付加されている温度調節素子に流す直流電流値が設定され、温度調節素子に流れる電流が制御されて円筒体及び円板体に流れる永久電流が制御され、その結果着磁値が変更されるが、その後着磁値の計測を行い、変更後の計測値が設定された所定値になっているか否かを確認し、否であれば同じ工程を繰り返すことにし、所定値になっていれば次の工程に進む、V磁場分布固定工程においては磁場分布補償用円筒体及び円板体に付加された温度調節素子に流れる電流を止めて磁場分布補償用円筒体及び円板体の加温を止め冷却して常電導状態から超電導状態に戻すものである(特徴73)。この構成は、超伝導磁石装置の着磁調整作業の全工程を網羅したものであり、II端部調整工程とIII バランス調整工程は必要に応じ実施するもので、省略することも可能な工程である。
【0084】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、各電流値の設定にあたり、全設定値に対し個々に限界値を決めておき、各電流の設定値が限界値を越えていないかどうかをチェックするステップを含むものである(特徴74)。この構成では、異常な設定値が設定されることがなくなり、スムーズな着磁調整作業が行われる。
【0085】
本発明の超伝導磁石装置の着磁調整方法は更に、温度調節素子の制御直流電流並びに着磁用コイルの直流電流の設定値を1/nに分割し、各々の電流の制御を実行するにあたり、設定値の1/nずつの電流を適当な時間間隔で増加させる手順を繰り返し、設定値までの制御を実行するものである(特徴75)。この構成では、着磁コイル電流及び温度制御電流を逐次階段状に上昇して行くことになるので、各電流の制御が自動的に行うことができるようになる。
【0086】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例の詳細を説明するにあたっては、先ず、本発明を支える基本事象について実験結果を基に説明し、その後で前記基本事象を応用した超電導磁石装置の構成、その着磁方法、着磁した磁場の調整方法、磁場減衰の補償方法、磁場滅衰に伴う磁場分布の変動の補償方法、着磁電源装置及び緊急減磁装置等に関し、添付図に従って説明する。
【0087】
本発明では、従来の超電導線材に対し、超電導複合板材等の超電導体の板材又はそれを円筒、円板等に加工したものを使用する。図1には超電導複合板の代表例として、NbTi/Nb/Cu超電導多層複合体の断面図を示す。NbTi/Nb/Cu超電導多層複合体(以下、NbTi多層体という。また、略してML板又はMLという場合もある。)は、NbTi層30層とCu層31層とNb層60層とから成り、表面層はCu層で、Cu層とNbTi層は交互に積層され、かつCu層とNbTi層との間にNb層が介在するように構成されている。NbTi多層体は上記の如く多層に積層したものを熱間圧延及び冷間圧延して、厚さ1mm程度の板に加工されている。
【0088】
本発明の超電導磁石装置では、このNbTi多層体を円板又は円筒に加工して、組立てて静磁場発生源として使用する。円板は1mmの板から切り出して作るが、円筒の場合には1mmの板を1枚、又は場合によっては複数枚を一体にして深絞り加工し、得られたカップ状のものをその底部を切る取ることにより円筒状のNbTi多層体が得られる。NbTi多層体の作り方については、アイイーイーイー・トランザクション・オン・アプライド・スーパーコンデクティビティ,第3巻,第1号,1993年3月,第177頁〜第180頁(IEEE TRANSACTION ON APPLIED SUPERCONDUTIVITY,Vol.3,No.1,MARCH 1993,PP177〜180)に詳しく記載されている。
【0089】
従来の技術の欄でも述べた如く、超電導線材を用いた超電導磁石装置では、超電導コイルの両端から電流を流し込み、流し込んだ電流をコイル両端に設けた永久電流スイッチをオンして、超電導コイルの両端を短絡して流し込んだ電流を永久電流として保存する。
これに対し、本発明では前記超電導多層複合体で作った円筒体等を永久電流の担体としており、この場合超電導コイルの場合のように前記円筒体等に直接電流を流すことはせずに、円筒体等を着磁磁界中に置き、間接的に円筒体等の中に永久電流を得ようとするものである。これを誘導着磁と称している。
【0090】
誘導着磁を行う方法は幾通りかの方法があるが、基本的には超電導多層複合体の円筒体等の内部に外部から与えた磁界によって作られる磁場を形成する必要がある。そのためには前記円筒体等が超電導状態であれば、超電導特性特有の反磁性現象により、その円筒体等の内部に磁場を形成するためには、反磁性現象を破るに十分な外部磁場強度を必要とする。この方法は構成は単純であるが、外部磁界強度を着磁磁場強度の2倍以上にしなければならないので経済的に成り立たない。
【0091】
本発明では、超電導多層複合体の円筒体の円筒長さ方向にしかも円周と直角に、幅の狭い領域を加温し、加温部位の特性を超電導特性から常電導特性に変化させて、円筒体の周方向に流れている電流を遮断し、円筒体全体があたかも超電導特性を失ったのと同様の現象を発生させると、円筒体内部に外部磁界によって作られた着磁磁場が形成されるので、その後加温をやめることにより常電導特性を示した部位は超電導特性を示す状態まで冷却される。この状態で外部磁界を徐々に下降させて零にする。この過程で円筒体の内部に形成されている磁束は、電磁気学の法則に従い、現状維持の現象を呈する。すなわち外部磁界は誘導着磁における着磁磁場に相当し、外部磁界の下降に相当する磁場の低下は円筒体内に周方向に流れる超電導電流を発生させ、これが永久電流として保存され、円筒体内の磁場強度が保存される結果、円筒体を静磁場発生源として利用することができる。このことは円筒体に限らず、円板体その他でも同様に発生する現象である。
【0092】
以上の事象について、以下図2を用いて詳しく説明する。図2は超電導多層複合体からなる円筒体を着磁する範囲を説明するための図である。図中、横軸は外部磁界Hを、縦軸は磁束密度B(磁場強度)を表わし、45度の特性線はB=μHを示す。但し、μは透磁率である。図において、領域II'(横軸が領域I、縦軸が領域I'の範囲。以下他の範囲の場合も同様に記す。)が本発明の着磁に利用する領域である。領域I-II'、I'-II、II-II'については、円筒体の磁化特性に依存し、磁界Hを無駄に大きくする必要があるため、本発明では利用しない。
【0093】
図2において、外部磁界Hの目盛10以下の領域は、前記円筒体を加温しなければ外部磁界の作る磁束が円筒体内に受け入れられない領域である。本発明ではこの領域を利用するため、円筒体の最大着磁値は縦軸の磁束密度の目盛10に相当し、この値は外部磁界Hの目盛10の磁界にμを乗じた値に対応する。また、図2には円筒体の着磁ルート例を示してある。いずれのルートでも円筒体を加温する手順が含まれている。ルート▲1▼又は▲1▼'の場合は最大着磁値の50%、ルート▲2▼又は▲2▼'の場合は最大着磁値の95%、ルート▲3▼又は▲3▼'の場合は最大着磁値の100%の着磁がそれぞれ行われる。▲1▼〜▲3▼と▲1▼'〜▲3▼'の手順の相違点は、前者が最初超電導状態にし磁界を上昇してから加温して常電導状態にするのに対し、後者では最初から加温して常電導状態で磁界を上昇する点である。
【0094】
本発明では超電導多層複合体の円筒体を加温することで常電導状態にし、外部磁界による磁束を円筒体内に導き、その後加温を止めて超電導状態に戻して、導いた磁束を円筒体内に閉じ込め、閉じ込めた磁束を保存するための電流を円筒体内に永久電流として維持するという着磁の原理を利用するものである。
【0095】
図3〜5は、超電導多層複合体についての第1の実験例を説明する図である。この実験では、超電導多層複合体の円筒体の外側又は内側に着磁コイルを配置して、着磁磁界Hと着磁された磁束密度Bとの関係を測定した。図4は着磁コイルCexを円筒体ML1の内側に配置した場合の配置図、図5は着磁コイルCexを円筒体ML1の外側に配置した場合の配置図である。以下の説明では、図4の場合を内部着磁、図5の場合を外部着磁と呼ぶことにする。円筒体ML1の寸法はいずれも同じで、内径100mm、長さ100mm、厚さ1mmである。永久電流の向きは着磁された磁束が上向きになるように流れている。また、図4、図5のいずれかの場合にも、円筒体ML1に加温用ヒータを付加しているが、これは図示より省略した。
【0096】
図3は着磁結果を示したもので、横軸は外部磁界Hを磁場強度μHに換算した値を、縦軸は磁束密度Bを、単位テスラ(T)で表わしている。計測点Aoは円筒体の中心位置である。計測点Aoの位置の磁場強度がμHになるように着磁磁場を印加し、着磁後計測点Aoの位置でこれを保存した値が縦軸の磁束密度Bで示した値である。以下、このBを着磁値と呼ぶことにする。
【0097】
図3において、図4の内部着磁の場合を黒丸で、図5の外部着磁の場合を白丸で示している。実験は、図2の領域Iと領域IIにわたって外部磁界を印加している。着磁値は、領域Iでは直線的に上昇しているが、領域IIでは飽和している。
【0098】
本実験で判明したことは、領域II'で効率よく着磁で
きることに加え、円筒体の内外何れの場所に着磁コイルを配置しても同様な着磁値が得られることが実証された。この結果は、円筒体を用いて超電導磁石を形成するための基本現象として位置付けられる。
【0099】
超電導磁石を形成するためには、円筒体1個のみで形成することは少なく、むしろ多くの円筒体を組合せて形成することになる。このため、超電導多層複合体についての第2の実験例として、円筒体を2個同軸に配置して着磁した場合について説明する。図6、7を用いて、2重円筒体の着磁について説明する。
【0100】
図7は、2重円筒体と着磁コイルの配置を示したものである。外径100mm、長さ43.5mmの円筒体(以下、大径円筒体という。)ML2と外径80mm、長さ43.5mmの円筒体(以下、小径円筒体という。)ML3とを同軸に配置し、その外側に着磁コイルCexを配置した。磁場計測点Aoは円筒体ML2、ML3の中心点である。
【0101】
2重円筒体の着磁は、円筒体2個を一括して着磁する場合(以下、一括着磁という。)と、最初に小径円筒体ML3を着磁し、後に大径円筒体ML2を同極性で着磁する場合(以下、分割着磁という。)とについて行った。
【0102】
図6には、本実験による着磁値を示す。横軸、縦軸の表示は図3と同じである。計測値は、円筒体の中心点Aoにおける着磁値が示されており、一括着磁の場合のものは黒丸で、分割着磁の場合のものは×印で示されており、比較のため大径円筒体ML2を単独で着磁した場合のものを白丸で示した。
【0103】
図6から判るように、2重円筒体を一括着磁した場合は、1個の円筒体を単独で着磁した場合の大略2倍の着磁値が得られる。これに対し、同極性で個別に分割着磁した場合は、1個着磁した時の着磁値と2個一括着磁した時の着磁値との中間の着磁値になっている。
【0104】
大径円筒体ML2を単独で着磁した場合は図3に示した場合と同じであるが、大径円筒体ML2と小径円筒体ML3とを一括着磁した場合は2個の円筒体があたかも1個と同様に着磁されている。小径円筒体ML3を着磁後大径円筒体ML2を個別に同極性に分割着磁する場合は、小径円筒体ML3が着磁された状態にあるため、小径円筒体ML3内に大径円筒体ML2を着磁する際の着磁用磁束が侵入できず、大径円筒体ML2が作る断面積から小径円筒体ML3が作る断面積を差し引いた領域の磁束を大径円筒体ML2で保存したことになる。
【0105】
従って、本来なら計測点Aoの磁場の計測値は小径円筒体ML3単独の場合と同一となるべきであるが、大径円筒体ML2の保存した磁束が形成する磁場により、小径円筒体ML3の磁場を形成している磁束が中心点Aoに集中したもので、その結果中心点Aoの磁場が強くなっている。
【0106】
図6中の横軸、縦軸の領域区分を示してあるが、領域IAI'Aと領域IIAII'Aは小径円筒体ML31個を着磁した場合の着磁結果を区分して示した領域であり、領域IBI'Bと領域IIBII'Bは2個の円筒体ML2、ML3を着磁した場合の着磁結果を区分して示した領域である。
【0107】
本実験結果に基づいて円筒体を用いた超電導磁石を形成し、強い磁石を作るためには、円筒体を重ねて多重円筒体とし、円筒体部分の断面積を増加することが効果的である。また、多重円筒体を個別に分割して着磁することで、同一着磁磁場値で着磁された面積を拡張でき、さらに内側の円筒体の着磁磁場強度を円筒体の中心に集中させることができるので、これらの現象を有効に活用することが重要である。
【0108】
次に、円筒体の厚さ方向の電流分布をビーンモデルを用いて解析したので、その内容を図8〜図10により説明する。図8は1個の円筒体ML1を単独で着磁した場合のものである。先ず、図8(A)で、円筒体ML1の外周に外部着磁コイルCexを配置し、円筒体ML1を加温しながら外部磁界をかける。Cexによる着磁磁場μHは円筒体の最大着磁磁場の80%(μH=μH8)とし固定する。この時の着磁磁場を図8(A)の下段に示し、その時に円筒体ML1に流れる永久電流密度Jを図8(A)の上段に示している(以下、図8(B)以降についても同じ)。図8(A)においては、円筒体ML1は未だ着磁されていないので、円筒体ML1には磁束分布も
、永久電流の分布もない。
【0109】
図8(B)においては、着磁コイルCexの着磁磁場をμH8に保持したまま、円筒体ML1の加温をやめ超電導状態にすると、円筒体ML1内に磁束密度μH8の一様な磁束分布が形成される。ここまでは円筒体ML1は着磁していないので、着磁後の永久電流は零である。
【0110】
図8(C)は、図8(B)の状態から外部磁場をμH8から下降させた状態を示したもので、円筒体ML1内にはその内部磁場μH8を保持するためにμH8から下降した分に相当する磁場を形成する電流が円筒体ML1の外周側より永久電流として存在するようになる。このとき、永久電流は臨界電流密度Jcで流れることになる。(以下においても、永久電流はJcの電流密度で流れる。)
【0111】
図8(D)は、更に外部磁場の下降が進み、外部磁場が零になった状態を示したもので、その内部磁場μH8を保持するための永久電流が円筒体ML1の円周方向に存在するようになり、一連の着磁が完了する。
【0112】
μH=μH8で着磁した場合、目盛上からみるとまだ磁束を捕捉することが可能で、未だ約20%の永久電流を流す余裕がある。しかし、μH=μH10で着磁した場合には磁束密度がB10となり、円筒体ML1が最大着磁値を保持するため、円筒体ML1の厚さ方向の全領域に永久電流が存在し余裕がなくなる。
【0113】
図9は2個の円筒体ML2、ML3をμH=μH8で一括着磁した場合のものである。円筒体ML2とML3の外径の差がそれ程大きくない場合には、図8の円筒体1個の場合と同様に扱うことができる。この場合も、永久電流が外周側から存在するようになるので、μH=μH8で着磁した場合、内側の円筒体ML3の内周側に余裕が生じる。
【0114】
図10は2個の円筒体ML2、ML3を個別に分割してμH=μH8で着磁した場合のものである。内側の円筒体ML3の着磁は外側の円筒体ML2を加温して常電導状態において着磁しているため、図8の円筒体1個の場合の着磁と同一となる。従って、図10(A)〜(D)は内側の円筒体ML3が単独で着磁される過程を示している。
【0115】
図10(E)〜(G)は外側の円筒体ML2が着磁される過程を示している。円筒体ML3の着磁後円筒体ML2を加温した状態で着磁コイルCexによる着磁磁場をμH8に上げ、次に円筒体ML2の加温を止めて冷却し超電導状態にすると図10(E)の状態になる。円筒体ML3は内周側の磁束密度μH8を保持したまま、外周側の磁束密度もμH8となっているため、円筒体ML3の外周側には逆極性の永久電流が流れ、電流分布も磁束密度分布も複雑な分布になっている。
【0116】
着磁コイルCexの磁場をμH8から下降させると、円筒体ML2の外周側の磁束密度がその下降分だけ低下するが、この下降分を補償するために円筒体ML2内には前記下降した分に相当する磁場を形成する永久電流が誘導され、その永久電流が円筒体ML2の外周側より存在するようになる。この状態を示したのが図10(F)である。
【0117】
着磁コイルCexの磁場を零にすると着磁が完了となるが、その時の状態を示したのが図10(G)である。図10(G)において、永久電流の分布は円筒体ML2、ML3とも内周側に余裕が生じている。図10(H)は比較のために、μH=μH10まで着磁した場合の永久電流、磁束密度の分布を示したものである。この場合には、永久電流の余裕はなくなっている。μH10の場合には、これ以上着磁磁場を高くしても、それ以上の磁束を捕捉することができない状態になっているので、磁束の捕捉可能な着磁磁場の最大値になっているとみることができる。このため、μH10の着磁磁場は着磁率100%の磁場とみなすことができるので、以後この場合の着磁を着磁率100%の着磁と呼ぶことにする。この呼び方に従えば、例えばμH8の場合、着磁率80%の着磁となる。
【0118】
以上の実験結果をまとめると、(1)2個の円筒体を一括着磁した場合、永久電流の余裕は内側の円筒体の内周側に生じる、(2)直径の差が小さい2個の円筒体の一括着磁では、1個の円筒体の厚さが増加した場合と同様の現象を呈する、(3)2個の円筒体を分割着磁した場合は永久電流分布、磁束密度分布とも一括着磁とは全く異なる分布となり、永久電流の余裕は各々の円筒体の内周側に生じる、(4)着磁率を100%にした場合には、永久電流を受け入れる余裕はなくなる。
【0119】
図8〜図10で示したように、着磁を例えばμH8=B8(着磁率80%)で行えば、永久電流の余裕は20%生じ、この永久電流を受け入れる余裕が磁場強度の時間的減衰及びこの減衰に伴う磁場分布の変動を補償する動作を呈することになり、さらに長時間安定な磁場空間を維持できる超電導磁石を生む一条件となる。
【0120】
次に、2個の円筒体ML2、ML3を個別に分割して着磁し、しかも後に着磁する円筒体を逆極性に着磁した場合の着磁状況を実験により確認した。図11に着磁実験の結果を、図12に着磁時の円筒体ML2、ML3と着磁コイルCexの配置を示す。円筒体ML3については後に述べる理由により、厚さを円筒体ML2の2倍にしておく。図12においては、加温用ヒータの図示は省略した。
【0121】
図12の円筒体と着磁コイルの配置は図7と同じであるが、計測点は中心点Ao以外に円筒体ML2の外周の点A'1も設けた。計測点A'1は円筒体ML2とML3の間の点A1の代りに設けたもので、この点A1の磁場強度を推測するためのものである。
【0122】
図11において、白丸で示した計測値(特性曲線▲1▼)は円筒体ML3を単独で着磁した場合の計測点Aoでの磁場強度値を、黒丸で示したもの(特性曲線▲2▼)は逆極性で分割着磁した場合の計測点Aoでの磁場強度値を、×印で示したもの(特性曲線▲3▼)は前記分割着磁の場合の計測点A'1での磁場強度値を示している。特性曲線▲2▼、▲3▼は逆極性着磁によるものであるので、領域が原点より左側の範囲になっているが、特性曲線▲1▼との比較のため極性を反転させて特性曲線▲1▼と同じ領域に示したものである。
【0123】
前記逆極性での分割着磁は、先ず内側の円筒体ML3を単独で着磁した後に、外側の円筒体ML2を逆極性で着磁するものである。円筒体ML3を単独に着磁した場合には着磁値は特性曲線▲1▼の如く変化する。次に円筒体ML2を逆極性の着磁磁場で着磁した場合には着磁値は特性曲線▲2▼の如く変化する。領域IcI'cでの計測点Aoでの計測値は最初円筒体ML3単独の特性曲線▲1▼上をたどり、着磁率100%に近づくに従い特性曲線▲1▼から離れ、領域IIcでは円筒体ML3の着磁した状態を破り、着磁値が減少した特性を呈する。このことは計測点A'1における計測値の特性曲線▲3▼が領域IIcで上昇していることからも予測できることである。
【0124】
なお、μH=0.3(T)、着磁率100%以下の領域Icにおいて、計測点Aoの計測値が円筒体ML3単独の特性曲線▲1▼より低い値になっているが、これは円筒体ML3の着磁磁場を形成している磁束の総量は変らず、円筒体ML2が逆極性に着磁された磁場の影響で円筒体ML3の内部の磁束分布が変ったための現象であり、領域IIcでの計測点Aoの計測値の下降とは全く相違する。
【0125】
前記の実験内容をビーンモデルでマクロに分析すると図13に示す如くなる。図13において、上段の図は円筒体内の永久電流密度の分布、下段の図は円筒体内の磁束密度分布である。図13(A)〜(D)は内側の円筒体ML3を着磁する過程であるので図10(A)〜(D)と同じである。次に図13(E)では円筒体ML2を逆極性に着磁するため、着磁磁場を−μH8に設定し円筒体ML2の加温を止め超電導状態にする。この状態では円筒体ML3の内側にはμH8の磁束密度が捕捉されており、円筒体ML3の外周から円筒体ML2の内周までの範囲には−μH8の磁束密度が捕捉される。
【0126】
次に図13(F)では着磁コイルCexによる着磁磁場を−μH8から徐々に下降させて零に近づけて行く過程の途中の状態を示している。この状態では着磁磁場が−μH8から変化した分の磁束を補償するのに必要な永久電流が円筒体ML2の外周側に誘導され保存される。図13(G)は着磁コイルCexの着磁磁場を零にした状態を示したもので、円筒体ML2の外周の磁束密度は零になり、着磁磁場の変化分に相当する永久電流が円筒体ML2内で内周側に向って増加し、これで着磁は完了する 。この場合の円筒体ML2内の永久電流も円筒体ML3がその内側に捕捉した磁場を保持する永久電流と同様に円筒体ML2とML3の間で捕捉した磁場の磁束量と連動して変化する。
【0127】
図13(H)には着磁率100%で着磁した時の磁束密度及び永久電流の分布を示す。円筒体ML3には永久電流が+Jcの電流密度で全領域にわたって流れているのに対し、円筒体ML2には−Jcの電流密度で50%の領域にわたって流れている。以上のことから、外側の円筒体を内側の円筒体と逆の極性で適当に着磁するためには、内側の円筒体の厚さを外側の円筒体の厚さの2倍にしておくことがよいことが分かる。
【0128】
上記の逆極性着磁の動作を、図14に示すμH−B特性図を用いて説明する。図14において横軸は着磁コイルが発生する磁場μHを、縦軸は円筒体が着磁された磁場Bを示す。
【0129】
最初に、着磁率50%の着磁磁場μH5で着磁する場合について説明する。図12において、先ず内側の円筒体ML3にμH5の着磁磁場を与えて着磁する。このとき円筒体ML3は図14において、原点→μH5点→a5点→B5点、又は、原点→a5点→B5点の経路で、着磁値B5に着磁される。次に、円筒体ML2を加温した状態で着磁磁場を逆極性の−μH5に変化させる。このとき円筒体ML3の外側の磁場はB5点→b5点に変化するので、円筒体ML3単独では着磁磁場がμH5から−μH5に変化しているため、全体としてμH10に相当する着磁磁場の変化を受けており、着磁率100%の着磁を受けたことになる。
【0130】
さらに、着磁手順を変化させて、b5点→−μH5点→C5点→−B5点の経路をたどって、円筒体ML2の内周が逆極性着磁磁場値−B5に着磁され、また円筒体ML3の外周も同じ着磁磁場値−B5に保持される。この結果、円筒体ML3に着磁値B5が、円筒体ML2に着磁値−B5がそれぞれ着磁され、円筒体ML3では着磁磁場を着磁率100%に相当する着磁磁場値μH10の幅で変化させてその50%の着磁値を得たことになり、円筒体ML2では着磁磁場が−μH5であるから着磁率50%相当の着磁磁場値の変化で50%の着磁値を得たことになる。従って、円筒体ML3では余裕はなく、円筒体ML2では50%の余裕をもって着磁されたことになる。
【0131】
次に、着磁率100%の着磁磁場μH10で着磁する場合について説明する。この場合は、内側の円筒体ML3の厚さを2倍とし、μH10×2の着磁磁場の変化に応じられるようにしておく。先ず、円筒体ML3にμH10(着磁率100%の着磁磁場値)の着磁磁場を与えて着磁すると、原点→μH10点→a10点→B10点、又は原点→a10点→B10点の経路で、着磁値B10に着磁される。次に、円筒体ML2を着磁するには着磁磁場を−μH10に変化させ、さらに零に戻すことで、B10点→b10点→C10点→−B10点の経路で、着磁値−B10(逆極性で着磁率100%の着磁をした時の着磁値)に着磁される。この結果、円筒体ML2、ML3ともに着磁率100%の着磁値を得る。このとき、円筒体ML3はμH10×2の着磁磁場の変化を受けるが、厚さを2倍にしておいたことにより、着磁における問題は生じない。
【0132】
以上述べた現象をまとめると、円筒体2個を個別に着磁する場合に一方の円筒体を他の円筒体と逆極性に着磁することができるということである。この逆極性に着磁することができることは、磁石の大きさを小さくしたり、磁場均一度を高めたりするのに非常に重要な現象で、円筒体を用いた超電導磁石を構成する上で非常に利用価値のあるものである。
【0133】
以上、着磁のための基本現象を、試料での実験結果に基づいて説明した。次に、着磁後の着磁値の調整を主体とした基本的動作について説明する。
【0134】
超電導特性を考える場合、通常温度T(K)、磁場強度B(μH)、永久電流密度Jを基本データとみなして、これらの基本データの間の関係を基準して考える。図15は超電導線NbTiについてのこれら3者の関係を示したものである(超電導工学,第4章,図4.1,P.68,電気学会編)。NbTiを液体ヘリウム中に浸漬し冷却して使用する場合、温度Tの目盛4.2(K)が最も低い温度で、目盛9(K)が超電導特性をもって動作する限界値であると言われている。従って、着磁前のイニシャライズ工程において又は安全のための緊急減磁装置を作動させて着磁磁場を消磁させる温度領域はT≧9(K)となる。
【0135】
また、着磁後の着磁値の調整時の調整温度範囲はT=4.2〜9(K)となる。例えば円筒体を一括着磁した後にこの一括着磁値を調整する場合、当初T=4.2(K)にて着磁すると、永久電流密度Jの最大値はa1、磁場強度Bの最大値はa'1となる。これを加温して温度を調整することにより、永久電流密度Jは矢印の方向に沿ってa1よりa2に、磁場強度Bはa'1よりa'2に変化する。a2及びa'2の記号をそれぞれb2及びb'2に置換する。次に、加温を解き冷却して温度Tを4.2(K)に戻すと、各々の特性値はbの矢印に沿って変化し、磁場強度Bはb'2→b'1に、永久電流密度Jはb2→b1に変化することになる。この結果、着磁磁場Bはa'1→b'1に 、この磁場を構成している磁束を支える永久電流密度Jはa1→b1に変化した状態で調整を完了する。すなわち、b'1が着磁値の所望値であり、a'1〜b'1、a1〜b1の幅は余裕値となる。なお、b1、b'1は温度Tの軸に平行に移動している。
【0136】
次に、円筒体の温度の調整のやり方を図16、図17を用いて説明する。図16は円筒体が1個の場合、図17は円筒体が2個の場合について示したものである。図16において、円筒体ML1の表面にヒータH1が配してある。ヒータH1は円筒体ML1の中心軸とほぼ平行にかつ中心軸からみて同一方向の内外周に配され、着磁電源装置PS1に接続されていて、加温時には直流電流ir1が導かれる。図17において、2個の円筒体ML2、ML3各々の表面にヒータH2、H3が配してある。ヒータH2、H3は円筒体ML2、ML3の中心軸とほぼ平行に単一円筒体の場合と同様に配され、各別に着磁電源装置PS1に接続されていて、加温時にはそれぞれ直流電流ir2、ir3が導かれるように制御される。
【0137】
円筒体の着磁の調整はヒータにより円筒体の一部を直線的に加温することにより行われる。円筒体の一部の温度をT≧9(K)にすると円筒体の円周方向に流れる永久電流を断つことができ、また円筒体の一部の温度を4.2(K)≦T≦9(K)の範囲内の温度Tに保持すると円筒体の円周方向に流れる永久電流密度Jを前記温度Tに対応する値に調整することができる。このような原理に従って、ヒータH1、H2、H3に導く直流電流ir1、ir2、ir3を適当に制御することによって、円筒体ML1、ML2、ML3の一部の温度を変化させることにより、円筒体ML1、ML2、ML3を流れる永久電流密度Jを変化させ、その結果として円筒体ML1、ML2、ML3の着磁値が調整される。このとき、ヒータH1、H2、H3に導く直流電流ir1、ir2、ir3は着磁電源装置PS1より制御された値として供給される。
【0138】
次に、円筒体1個を着磁する場合の手順を説明する。図18に単一円筒体ML1の着磁調整手順のタイムチャートを示す。着磁調整手順はイニシャライズ、着磁、着磁値調整の順になり、着磁値としては調整後の最終値が得られる。図中(イ)は図16のヒータH1による円筒体ML1の昇温の状態を、(ロ)は着磁コイルCexによる着磁磁場の状態を、(ハ)は円筒体ML1が着磁された磁束密度の状態をそれぞれ示している。なお、図中のtは時間を表示している。
【0139】
先ず、図(イ)のa点でヒータH1をオンして円筒体ML1を昇温し、b点でヒータH1をオフして円筒体ML1を冷却することで円筒体ML1のイニシャライズを終了する。次に、図(ロ)のc点で着磁コイルCexに励磁電流を流して着磁磁場μHを上昇させる。この上昇の途中から図(イ)のヒータH1をオンして円筒体ML1を昇温する。着磁磁場μHが最大値となったd点に対応する図(イ)のe点でヒータH1をオフし円筒体ML1を冷却し基準温度に戻す(f点)。図(イ)のf点に対応する図(ロ )のg点(μHが最大値に到達している。)から着磁コイルCexの励磁電流を徐々に下降させ着磁磁場を徐々に零まで下げi点に至る。その間図(ハ)の円筒体ML1の着磁値はh点から徐々に上昇し、図(ロ)のi点に対応するj点で着磁値Bに達する。これで着磁が完了する。
【0140】
上記の着磁では若干余裕をとった着磁値Bに着磁し、その後着磁値が所望値になるように調整する。着磁の調整においては、着磁後の図(イ)のl点でヒータH1をオンして加温を開始し徐々に円筒体ML1の温度を上昇させる。この加温により図(ハ)の着磁値Bはk点から徐々に下降するので所望の着磁値B'が得られるm点までヒータH1の加温を続ける。この結果図(ハ)のn点で所望の着磁値B'が得られ、着磁の調整が完了する。
【0141】
次に、円筒体2個を着磁する場合の手順を説明する。図19に2個の同軸円筒体ML2、ML3の着磁調整手順のタイムチャートを示す。着磁調整手順は円筒体1個の場合と同様、イニシャライズ、着磁、着磁値調整の順になる。ここでは、内周側の円筒体ML3を図18の場合と同様に着磁し、外周側の円筒体ML2を逆極性で着磁する場合について説明する(円筒体2個を一括着磁する場合は円筒体1個を着磁する場合と同様であるので、この説明は省略する。)。図(イ)、(ロ)、(ハ)の縦軸、横軸は図18と同じであるが、図(ロ)、(ハ)は逆極性範囲も使用することになる。
【0142】
先ず、図(イ)のa点でヒータH2、H3をオンして円筒体ML2、ML3を昇温し、b点でH2、H3をオフして円筒体ML2、ML3を冷却することで円筒体ML2、ML3のイニシャライズを終了する。次に、図(ロ)のc点で着磁コイルCexに励磁電流を流して着磁磁場μHを正方向に上昇させる。この上昇の途中から図(イ)のヒータH2、H3をオンして円筒体ML2、ML3を昇温する。着磁磁場μHが最大値となったd点に対応する図(イ)のe点でヒータH3のみオフして円筒体ML3を冷却し基準温度に戻す(f点)。図(イ)のf点に対応する図(ロ)のg点から着磁コイルCexによる着磁磁場μHを徐々に零まで下げてi点に至る。その間図(ハ)の円筒体ML3の着磁値はh点から徐々に上昇し、図(ロ)のi点に対応するj点で着磁値Bに達する 。これで円筒体ML3の着磁が完了する。
【0143】
上記に引き続き、図(ロ)の着磁コイルCexの発生する着磁磁場を逆極性にして、c'点(μH=0)から開始し−μHまで変化させる。着磁コイルCexの着磁磁場が−μHになったd'点に対応する図(イ)のe'点からヒータH2の加温を止め円筒体ML2の温度を基準温度に戻す(f'点)。その後、図(イ)のf'点に対応するg'点から着磁コイルCexによる着磁磁場を−μHから徐々に零に戻す(i'点)。この着磁磁場の変化に伴って円筒体ML2の着磁値はh'点の零からj'点の−Bまで変化し、円筒体ML2は−Bに着磁される。ここまでで、円筒体ML2、ML3の着磁が完了する。
【0144】
着磁の調整は、円筒体1個の場合と同様に行われる。着磁完了後の図(ハ)のk、k'点に対応する図(イ)のl点でヒータH2、H3をオンして加温を開始し徐々に円筒体ML2、ML3の温度を上昇させる。この加温により図(ハ)の着磁値B、−Bはk、k'点から徐々に下降するので、所望の着磁値B'、−B'が得られるm点までヒータH2、H3の加温を続ける。この結果図(ハ)のn、n'点で所望の着磁値B'、−B'が得られ、着磁の調整が完了する。
【0145】
図16〜図19についての説明の中で超電導磁石装置にとって重要な事項は、(1 )円筒体へのヒータの取付けは図16、図17に示す如く円筒体の円周面と直角な、円筒体長さ方向に、一直線上に取付けて、しかもヒータに導入する温度制御電流は直流であり、円筒体の内外周往復同一直線上を通り、円筒体に温度制御電流の影響を与えないようにすること、(2)イニシャライズから着磁調整までの手順の順序は原則として図18、図19のタイムチャートに従って実行すること、である。
【0146】
次に、新しい着磁方法として繰り返し着磁法を図20〜図22に従って説明する。図20に着磁試料としての2個の円筒体ML2、ML3と着磁コイルCexと着磁電源装置PS1との配置関係を示す。円筒体ML2、ML3は同軸に配置されており、直径は異なるが厚さは同一とする。着磁コイルCexは外径の小さい円筒体ML3の内側に配置されている。円筒体ML2、ML3にはそれぞれヒータH2、H3が取り付けられている。着磁電流iex、ヒータ電流ir2、ir3は着磁電源装置PS1から供給される。
【0147】
本法の繰り返し着磁法では、最終着磁磁場をμH10(=B10)としたとき、着磁コイルCexによる着磁磁場をμH10の1/nとし、この着磁磁場をn回に分けて繰り返し円筒体ML2、ML3に印加して行くことによって、最終的に2個の円筒体の一方にμH10の着磁をするものである。
【0148】
次に、本法での着磁の動作を図21のビーン・モデル図と図22のタイムチャートを用いて説明する。先ず、図21のビーン・モデル図を参照して説明する。円筒体ML2、ML3をイニシャライズした後(図22(イ)a点→b点へ)、図21(A)に示す如く、着磁コイルCexによる着磁磁場を全着磁磁場μH10の1/5のμH2だけ上昇させた後に、円筒体ML2のみヒータH2による加温を解き、冷却して、図21(B)に示す如く、円筒体ML2に着磁磁場μH2を通す(図22(イ)でb点→e点→f点、図22(ロ)でc点→d点→g点)。
【0149】
図21(C)で、着磁コイルCexの着磁電流iexを低下させて、着磁磁場μH2を徐々に下降させて、円筒体ML2について着磁値B2を得る(図22(ロ)でg点→i'点、図22(ハ)でh点→i点)。
【0150】
次に、着磁磁場をμH4に上げるため、図21(D)に示すように、着磁コイルCexによる着磁磁場をμH2だけ上昇する。すると、円筒体ML2の内側の磁場強度は円筒体ML2の着磁値μH2と着磁コイルCexによる着磁磁場μH2とが加算されてμH2(ML2)+μH2(Cex)≒μH4となり、μH4の着磁磁場が得られる。その後で、円筒体ML3のヒータH3の加温を解き冷却する(図22(イ)でm点→n点、図22(ロ)でk点→l点→o点、図22(ハ)でi点→j点→p点)と、図21(E)に示す如く着磁磁場μH4が円筒体ML3を通る。さらに、円筒体ML2を加温して円筒体ML2による着磁磁場μH2(ML2)を徐々に下降させて零にした後、着磁コイルCexによる着磁磁場μH2(Cex)を徐々に下降させて零にすることで、円筒体ML3は図21(F)に示す如く着磁値B4を得る(図22(イ)でm点→s点、図22(ロ)でo点→r点、図22(ハ)でp点→t点、図22(ニ)でq点→u点)。
【0151】
同様の手順で、円筒体ML2は図21(I)に示す如く着磁値B6を得る。この時の着磁磁場μH6は円筒体ML3の着磁値B4(=μH4)と着磁コイルCexによる磁場μH2が加算されて、μH6≒μH4(ML3)+μH2(Cex)により得られるものである。
【0152】
さらに、同様な手順を進めることにより、図21(L)では円筒体ML3に着磁値B8が、図21(O)では円筒体ML2に着磁値B10が得られる。このときの各々の場合の着磁磁場μH8、μH10はそれぞれμH8≒μH6(ML2)+μH2(Cex)、μH10=μH8(ML3)+μH2(Cex)により得られる。
【0153】
上記により円筒体ML2、ML3の繰り返し着磁は完了し、円筒体ML2は着磁値B10を得て、円筒体ML3はB10を通した状態で着磁が終了する。これら一連の動作に対応した円筒体中の永久電流密度Jは図21(A)〜(O)の上段に示す如く変化する。
【0154】
次に、上記の動作を図22のタイムチャートを参照して説明する。図22(イ)のa点でヒータH2、H3をオンし円筒体ML2、ML3を昇温し、b点でオフし加温を解く。図22(イ)のb点に対応する図22(ロ)のc点において着磁コイルCexを励磁し着磁磁場をμH2まで上昇させる。同時に、図22(イ)のa'点においてヒータH2、H3もオンし円筒体ML2、ML3を加温する。図22(ロ)で着磁磁場μHがμH2に達した後のd点に対応する図22(イ)のe点でヒータH2のみ加温を解き円筒体ML2を冷却する(f点)。図22(イ)のf点に対応する図22(ロ)のg点から着磁磁場μH2を徐々に低下させて零にする(i'点)。それに従って、図22(ハ)では円筒体ML2の着磁値Bはh点からi点に上昇し、着磁値B2で着磁されて円筒体ML2の着磁が終了する。
【0155】
次に、図22(ハ)の円筒体ML2の着磁後のj点に対応する図22(ロ)のk点から着磁コイルCexによる着磁磁場μHを再びμH2まで上昇する(k点→l点)。このとき着磁磁場はμH2(Cex)とμH2(ML2)が加算されて、μH4になっている(μH4=μH2(ML2)+μH2(Cex))。図22(ロ)のl点に対応する図22(イ)のm点でヒータH3の加温を解き円筒体ML3を冷却する(n点)。図22(イ)のn点に対応する図22(ニ)のq点から円筒体ML3の着磁が開始する。円筒体ML3の着磁は着磁コイルCexによる磁場μH2(Cex)と円筒体ML2の着磁値B2(=μH2)によって行われる。図22(イ)のn点からヒータH2を加温し温度制御しながらs点まで温度上昇することにより、図22(ハ)に示す如く円筒体ML2の着磁値B2をp点からt点に徐々に下降させる。これと並行して、図22(ロ)の着磁コイルCexによる着磁磁場μH2をo点からr点へ徐々に下降させる。このような制御をすることにより、図22(ニ)の円筒体ML3の着磁値はq点からu点に上昇し着磁値B4(=μH2(Cex)+B2(ML2))を得て、円筒体ML3へのB4着磁が完了する。
【0156】
上記の説明では、図22(ロ)のo点からr点への制御と図22(ハ)のp点からt点への制御を並行して行うことにしたが、これに限定されることはなく、例えばo点→r点の制御を先にし、その後にp点→t点の制御を行うとか、この順序を逆にするとかしてもよく、また両者の制御時間を若干ずらして一部をオーバーラップさせてもよい。ただ、円筒体の特性の許容範囲内で制御を行うことが肝要である。
【0157】
上記の動作を繰り返し続けて行くことにより、円筒体ML2にB6、円筒体ML3にB8、円筒体ML2にB10の順序で、最終的に円筒体ML2に着磁値B10を得させることができる。
【0158】
本方法は、円筒体の個数を3個にしても4個以上にしてもよく、着磁の手順を適当に決めることにより、いずれかの円筒体(複数個でも可能)に所望の着磁値を得させることができる。
【0159】
本方法は、超電導磁石装置全体から見た場合、着磁コイルによる着磁磁場を最大着磁値の1/nにすることができるので、着磁コイルの最大出力を小さくできるという利点がある。また、円筒体ML3は最終的に磁束密度B10を通しただけであるので、磁場減衰などに対して余裕値として作用する。
【0160】
図23には一般に表示されている超電導体の磁束密度Bと永久電流密度Jとの関係を示す。超電導体に流せる最大電流密度値(臨界電流密度)をJcで表わした場合、JcとBとの関係曲線は図示の如くになっており、磁場Bが強くなるに従い、流すことができる最大永久電流密度Jcは低下する。超電導線材を使用する場合、例えば磁束密度値B1で使用する場合には、B1に対応するJc値であるJc1点と原点0とを直線で結んだ特性線L1を負荷特性と称し、負荷率50%(L50)の点の永久電流値1/2Jc1で使用される。すなわち、1/2Jc1の永久電流値が超電導線材で構成したコイルを流れるものとして、必要磁場値に対応するコイル巻数を決定する。
【0161】
図24には超電導コイルWと永久電流スイッチPCと着磁電源装置PS1とを組合せてなる超電導磁石装置の要部を示す。図24において、永久電流スイッチPCのヒータHに電流ihを導き、永久電流スイッチPCを構成している超電導線材を常電導状態にし、着磁電源装置PS1から超電導コイルWに着磁電流iwを流し込み、iw=(1/2)・Jc1になったら電流iwの上昇を止める。次に、永久電流スイッチPCのヒータHに流れている電流ihをオフすることで、永久電流スイッチPCを構成している超電導線材を常電導状態から超電導状態にして、電流iwが永久電流スイッチPC内を流れるように切り換えることにより、超電導コイルWに永久電流(iw)が流れるようになり、着磁電源装置PS1と関係のない状態になる。
【0162】
これに対し、本発明の如き誘導着磁の場合は、負荷特性が磁束密度Bによって大幅に変動し、例えば図23のL1からL0までの範囲で変動するので、これをどのような方法で超電導磁石装置に支障を与えないようにするかという課題がある。この課題の解決方法を次に説明する。
【0163】
先に、円筒体の一括着磁と、分割着磁の2形態の着磁方法について、永久電流の分布の相違をビーン・モデルにて表示した(図9、図10参照)。この相違に沿った形で着磁値の調整を行うことで上記課題を解決する案を提示する。図25は超電導体において磁場強度Bをパラメータとして臨界電流密度Jcと温度Tとの関係を示したものである(超電導工学、第4章、図4、17、P94、電気学会編)。図中横軸が温度Tを、縦軸が臨界電流密度Jcを表わしている。超電導体はNbTiである。
【0164】
図25から明らかなことは、図23と同様に、同一温度の下では磁場強度の低い場所ほど臨界電流密度Jcが大きく、高い場所ほど小さくなることである。
【0165】
複数個の円筒体で構成する超電導磁石装置では、図25中のグループIは各々の円筒体の配置された位置と円筒体自体の着磁値とにより決定される磁場強度により、臨界電流値Jcの異なる円筒体を一括着磁する場合に適する。すなわち、臨界電流値Jcの異なる状態を維持したままで、ヒータ加温により磁場の調整が可能となる。
【0166】
また、グループIIは臨界電流値Jcを一定にして制御する方法であり、着磁にあたって、円筒体を個々に或いは円筒体を分割してその分割した円筒体を個別に、臨界電流値一定で着磁した場合の磁場の調整に適している。
【0167】
勿論、円筒体を個々に着磁した場合でも、各々の着磁値を変えて着磁を行い、その着磁特性に合った調整を行うというようなグループIとグループIIの中間的な調整法も可能である。
【0168】
図26には具体的な超電導磁石装置の構成例を示す。図26に示した超電導磁石装置は水平磁場方式のものである。従って、中心軸を中心にして上下対称であるため、上半分のみ示している。図26において、円筒体C1〜C4は左グループの円筒体組立を構成し、円筒体C’1〜C’4は右グループの円筒体組立を構成する。また、円筒体C1〜C4、C’1〜C’4には個別にヒータの抵抗体R1〜R4、R’1〜R’4が取り付けられ、円筒体C1〜C4、C’1〜C’4の温度制御が行われる 。また、円筒体C1〜C4、C’1〜C’4の磁場強度はB1〜B4、B’1〜B’4で示す。ヒータの抵抗体R1〜R4、R’1〜R’4は全て直列に接続し、着磁電源装置PS1に接続される。従って、ヒータに流れる調整電流ir1は抵抗体R1〜R4 、R’1〜R’4全てについて同一値となる。
【0169】
ここで、説明を簡単にするために、個々の円筒体の長さと厚さを同一とし、その直径のみ異にするものと仮定する。その場合のヒータの抵抗体R1〜R4、R’1〜R’4の抵抗値も全て同値Rで、従って温度上昇値は抵抗体の消費電力量ir1 2×R1×t(t:ヒータオン時間)にて決定されるので、図25のグループIの場合に相当する。また、ヒータの抵抗体R1〜R4、R’1〜R’4の抵抗値を変えて、円筒体個々に必要な加温値を得ている場合には、円筒体個々に温度上昇値が変わるので、この場合には図25のグループII又はグループI、II間の任意の組合せの場合に相当する。
【0170】
これらのことを使用目的で示すと図27の如くなり、横軸は昇温領域と飽和領域とに大別され、縦軸は着磁調整領域とイニシャライズ又は緊急減磁領域とに大別される。グループIは磁場Bの大きい領域がある場合には比較的狭い温度範囲となる傾向があるので、着磁並びに温度調節素子を構成するヒータ抵抗体の抵抗値も大略同一値でよく、製作上有利である。
【0171】
一方、グループIIとグループI-II間の任意の組合せでは、温度調整範囲を個別に選定することで製作上煩雑ではあるが、円筒体を個別に着磁できる利点がある。
【0172】
なお、図中にはイニシャライズと緊急減磁の場合の特性例も示した。すなわち、緊急減磁の場合は、約1分以内に磁場が消える温度まで上昇するようにヒータを制御する電流をir1として選定する。また、イニシャライズは数分で磁場が消える温度まで上昇するようにヒータを制御する電流をir1として選定する。
【0173】
以上説明した如く、本案によれば着磁条件と連係して温度調節素子中のヒータの抵抗体の抵抗値を決定することにより、本案の目的である前記課題を十分に解決することができる。
【0174】
次に、円筒体を誘導着磁した場合の円筒体内の着磁後の電流分布について説明する。図29は円筒体と着磁コイルCexと磁場検出素子の配置を示す。円筒体の寸法は全長Lが100mm、内径が100mm、厚さが1mmである。円筒体各部の永久電流の分布は各部の着磁磁場の分布値(ホール素子を用いて測定した)から計算により算出したものである。その結果を図28に示す。横軸は円筒体の中心軸方向に沿った位置を、縦軸は各位置での周方法に流れる永久電流密度値である。実線が同定された永久電流密度分布で、端部に高密度部がある。
【0175】
この端部の高密度値を或る目的領域内の値に調整するとか、又はこの端部の高密度値を他の位置の値より低い値に調整するとかして、端部を含めて円筒体の全体について永久電流密度を均一化するために、円筒体の端部の着磁値を調整するための端部専用ヒータを付加する場合もある。
【0176】
この場合のヒータによる調整温度は円筒体が超電導特性を失わない範囲とする必要がある。着磁調整後の特性は、円筒体内の総磁束数一定の法則から、全体の磁束数は殆んど減ずることなく、円筒体の両端部近くの内側の部分で端部における減少を受けて補うことになる。着磁調整後の永久電流密度分布例を2点鎖線及び破線で示す。2点鎖線の分布は円筒体端部の高密度値を若干下げて永久電流密度の変動幅を小さくしたものである。破線の分布は円筒体端部の高密度値を下げて中央部の一様な電流密度領域を拡げたものである。
【0177】
円筒体の端部の温度調整をより精度良く行うための構成の一例として、円筒体を分割して円筒体の端部に端部専用の円筒体を配する方法が考えられる。このような円筒体を図30に示す。円筒体の本体ML1の両端に端部専用の円筒体ML’1が配されており、これらの円筒体ML’1にも温度調整用のヒータが配されることになる。
【0178】
また、端部専用の円筒体としては、単一の円筒体でなく、図31に示す如く、リング状の円板を積層して構成することも可能である。端部専用の円筒体ML’2は図31(B)に示す厚さ1mmの超電導複合板材の円板を積層して構成され、図31(A)に示す如く、円筒体本体ML2の両端に配置される。円筒体ML’2にも当然温度調整用ヒータが配される。
【0179】
また、円筒体に流れる永久電流密度分布は着磁コイルCexの配置の仕方によっても変えることができる。円筒体端部に集中する永久電流は、原理的に円筒体長さ方向に平行な磁場として、円筒体の長さより十分長い平行磁場にて着磁した場合に最も大きく現われる。これは、円筒体に囲まれた円筒体内部においては磁場を変えないようにするため、着磁磁場を保存するよう円筒体の磁場Bの限界まで永久電流が端部に集中して流れる。
【0180】
従って、円筒体の端部の磁場を他の円筒体が作る磁場によって補うようにして作る場合、或いは図32(B)に示す如く、着磁コイルCexの長さL2を円筒体ML1の長さL1より短くして着磁することで、円筒体ML1の端部に着磁電流が集中するのを抑制することができる。(図32(A)の如き配置では着磁電流の円筒体端部集中を助長することになる。)
【0181】
図33には円筒体端部に端部専用ヒータを配した水平磁場超電導磁石装置の具体例を示す。この図は図26の構成に対し、円筒体の端部専用ヒータの抵抗体r11,1241,42、r’11,1241,42を付加したもので、これらの抵抗体は直列に接続されて、着磁電源装置PS1から調整電流ir2が導かれるように構成されている。
【0182】
上記の如き部分的な調整は必ず行うべき条件ではない。しかし、円筒体内を流れる永久電流は円筒体の断面に対し極力均等に分布すれば、単位長さ当たりの電位傾度が均等となり、時間的変化も全体的に均一化するので、円筒体内の磁場強度と磁場均一度の長期的安定に役立つ。
【0183】
次に、円筒体を対向して配置させ、両円筒体の間の空間を磁場として使用する垂直磁場方式の超電導磁石装置を想定した場合の基本構成を図35に示す。図35において、円筒体ML21、ML31からなる2重円筒体(1)と円筒体ML22、ML32からなる2重円筒体(2)が中心軸Aと同軸にかつ中心線Bを中心にして対向して配置されて円筒体の組合せを形成する。円筒体ML21、ML22は内径100mm 、長さ43.5mm、円筒体ML31、ML32は内径80mm、長さ43.5mmで、対向間隔は40mmである。図35の如く配置した円筒体を着磁率を変えて一括着磁を行った後に、円筒体組合せの中心点A’0の磁場強度の変化を計測した。また、円筒体ML21 、ML31からなる2重円筒体(1)のみについて着磁率を変えて一括着磁を行った後にその中心点A0の磁場強度の変化についても計測した。
【0184】
上記両者の計測結果を図34に示す。図34において横軸に着磁率を、縦軸に磁場強度の変動率を示す。実線は2重円筒体(1)の点A0の測定値を、2点鎖線は円筒体組合せの点A’0の測定値を示している。また、図示の磁場変動率(ppm/hr)は着磁後6 ×105秒経過後のものである。
【0185】
円筒体の着磁磁場強度はいずれの場合でも経時的に減衰して行くものであるが、先ず、着磁率が100%の場合には両者共ほぼ同じ減衰率(約75ppm/hr)を示している。しかし、着磁率が低い範囲では円筒体組合せの場合の方が2重円筒体(1)の場合よりも磁場変動率が小さく、両者の差は着磁率が70〜90%の範囲で著しく現われている。この結果は、円筒体の着磁磁場の減衰率は、円筒体を2重円筒体(1)の如く配置するよりも、円筒体組合せの如く対向配置した方が小さくなることを示している。すなわち対向配置することにより円筒体の着磁磁場の減衰率が改善されることを示している。
【0186】
上記の結果をビーン・モデルによりマクロ的に分析すると図36に示す如くなる。図36(A)は着磁率100%の場合である。この場合には図示から判るように永久電流密度分布及び磁束密度分布に余裕がなく、永久電流密度分布の変化(減少)が即座に磁束密度分布の変動(減衰)を生じ、この磁場の変動は円筒体内部の点A0の磁場変動として現われる。図36(B)は着磁率67%の場合である。この場合には33%の余裕があるため、磁場のわずかな減衰に対しては円筒体断面内の余裕部で前記の磁場減衰を補償する働きをするので、磁場の減衰即円筒体内部の点A0の磁場減衰としては現われない。更に余裕を大きくとった図36(C)の場合(余裕61%)には、図36(B)の場合より長時間にわたって点A0の磁場の減衰は現われないことになる。
【0187】
図37は円筒体組合せと2重円筒体(1)の着磁の差を説明するために円筒体組合せ内の磁束の分布の様子を示したものである。図中磁束Φ1は対向する2重円筒体(1)と2重円筒体(2)の両者を通過した磁束とし、磁束Φ2は2重円筒体(1)又は2重円筒体(2)1個のみを通過し、他の2重円筒体を通過しない磁束とする。両磁束のうち磁束Φ1は2組の2重円筒体の断面積で捕捉されている磁束で形成されているため、余裕のある2組の2重円筒体のうちのどちらが減衰しても他方がその減衰を相互に補うため、1個の2重円筒体の場合よりその減衰量は大幅に小さくなり、着磁率100%近くまで減衰値を補償し合う特性となる 。磁束Φ2は点A’0の磁場分布に影響を与えるが、磁場減衰に関しては2重円筒体個々の減衰特性に合った減衰パターンを呈することになる。
【0188】
上記の磁場減衰に関する現象は、円筒体を対向配置した超電導磁石装置において効果があるだけでなく、円筒体を中心軸に沿って同軸に配列した超電導磁石装置でも同様な効果が得られる。但し、この現象は円筒体の作る断面積内の総磁束量の減衰に対しての補償であり、磁場強度の分布、すなわち一般に表現されている磁場分布は、磁場の減衰を補償する空間的座標が磁場の減衰前の座標となるため厳密な意味では磁場分布は変動する。
【0189】
従って、磁場分布の変動を最小におさえるためには、分割着磁法で円筒体の厚さ方向を例えばn分割し、n分割したそれぞれの部分円筒体に余裕をもたせて着磁するのが効果的である。この場合、n個の部分円筒体が同時に磁場減衰するため、磁場減衰を補償できる時間は短くなり、一括着磁の場合の1/nになる。
【0190】
一方、一括着磁の場合は上記の如く磁場減衰を補償できる時間は分割着磁の場合のn倍になる反面、磁場を発生する空間座標が分割着磁の場合よりも大きく移動し、この座標移動が大きいために磁束分布の変化が大きくなる。従って、各円筒体の着磁率についてはメンテナンス周期を考慮して決定し、磁場減衰を目標値以内に設定しても、磁場分布の点で満足しない場合が生じる。このような場合の磁場減衰の補償方法を以下に説明する。
【0191】
図38(A)は磁場分布の経時的変動の少ない着磁法を説明するための図である。図37の構成に対し、各2重円筒体の対向面側に円板体ML4-3を付加したものである。円板体ML4-3の細部を図38(B)〜(D)に示す。円板体ML4-3は上記の磁束Φ2に対応させたもので、円板体の構造は図38(B)、(C)に示す如く、中心に穴を設けた形状をしており、外径は円筒体ML21、ML22の外径と同じとし、穴径は均一磁場領域(FOV)の外径よりも小さくする(但し、この中心穴は必ずしも設ける必要はない。)。円板体には図示の如く4個のヒータH43a〜H43dを配置し、各ヒータH43a〜H43dは図38(D)の如く直列に接続し、着磁電流装置PS1より調整電流ir4を導くようにした。
【0192】
円筒体組合せを図38の如く構成すると、使用領域に相当する均一磁場領域FOVの磁場を形成する主要磁束の大部分は円板体ML4-3を通過する。磁束Φ1とΦ2の主要磁束の大部分を通過させるためには、円板体ML4-3に配置したヒータを着磁調整方法と同期させて円板体ML4-3の温度調整を行えばよい。
【0193】
図38の着磁法を水平磁場方式の超電導磁石装置に適用した構成例を図39に示す。図39において、超電導磁石も構成する円筒体群C14、C’14、の配列長さLC1 3より長い円筒体ML4-1を円筒体群C14、C’14の内周側に配置して、主に磁束Φ2を通すようにした。更に、磁束Φ1を通す必要がある場合には、両側面に円板体ML4-2L、ML4-2Rを円筒体ML4-1の外周に密着するような形で設け主に磁束Φ1を通す。
【0194】
付加した円筒体ML4-1と円板体ML4-2L、ML4-2Rのみの構成を図40(A)、(B)、(C)に示す。図40(A)は側面図(半分)、図40(B)は全体の断面図、図40(C)は円筒体ML4-1及び円板体ML4-2L、ML4-2Rに取り付けたヒータの接続図を示したものである。本実施例でも、図38(D)に示した例と同様、図40(A)、(C)に示した如く、ヒータH41a〜H42dが円筒体及び円板体に配列され、その抵抗体が直列に接続され、着磁電源装置PS1より調整電流ir4が導かれてい、このヒータを用いて円筒体群C14、C’14の着磁調整方法と同期させて、円筒体及び円板体の温度調整を行うことにより、磁束Φ2が円筒体ML4-1を、磁束Φ1が円板体ML4-2L、ML4-2Rを通ることになる。
【0195】
図41にヒータの温度調整と着磁作業と着磁後の調整作業との関係を示す。図41(イ)はヒータの温度調整のタイムチャートを、図41(ロ)は着磁作業(イニシャライズ手順を含む。)のタイムチャートを、図41(ハ)は着磁値の調整作業のタイムチャートを示す。先ず、図41(イ)に示す如く、円筒体ML4-1、円板体ML4-2L、ML4-2Rの温度調整用ヒータは着磁・調整作業全体を通じて昇温しておき、前記円筒体及び円板体を常電導特性を示す状態に保持する。このように円筒体及び円板体の超電導特性を失わせることによって、超電導磁石を構成する円筒体群C14、C’14の着磁作業、調整作業への影響を排除する。図41(イ)で温度調整用ヒータを点aまで昇温した後、図41(ロ)の点bから点cまで円筒体群C14、C’14の着磁作業を行い、更に図41(ハ)の点dから点eまで着磁値の調整作業を行い、それらが完了したら、図41(イ)の点fからヒータの制御電流をオフして円筒体及び円板体を冷却して超電導特性を示す状態に戻し、着磁調整後の均一磁場領域FOVを形成している磁束が円筒体ML4-1及び円板体ML4-2L、ML4-2Rを通るようにする。
【0196】
上記の如く、均一磁場領域FOVを形成する磁束が円筒体ML4-1、円板体ML4-2L、ML4-2Rを通された状態で、何らかの要因で均一磁場領域FOV中の磁場の変動が発生すると、円筒体ML4-1、円板体ML4-2L、ML4-2R内の前記磁束を通している空間座標点で磁場変動を補償する動作を行うことになり、その結果磁場発生源である円筒体群の磁場減衰に伴う磁場分布の変動も補償することができる。
【0197】
また、図39の構成は、設置環境による外乱磁場に対しても、均一磁場領域FOVの磁場強度及び磁場分布を保護するような作用を呈し、外乱磁場の影響を吸収する作用を伴う。
【0198】
上述の超電導磁石装置は、磁場分布や磁場減衰等の特性を重要な特性とする核磁気共鳴現象を応用した分析装置や磁気共鳴イメージング装置用として最適なものである。
【0199】
本発明の超電導磁石装置に使用される超電導複合板材は、その製法により異なる超電導特性を示しているため、これを超電導磁石装置に適用するに当たっては種々の工夫が必要である。以下にその実施例を説明する。
【0200】
超電導複合材は一般に圧延工程を経て厚さの加工が行われる。このため、圧延方向とその直角方向とでは着磁したときの永久電流密度Jcの値が異なる。図42にその実測値の一例を示す。図42(A)は着磁後の着磁値Bと永久電流密度値Jcとの関係を示したもの、図42(B)は着磁試料である超電導複合板材の圧延方向と着磁 方向との関係を示したものである。図42(A)において、横軸は着磁後の着磁値B(T)を、縦軸は永久電流密度値Jc(A/mm2)であり、図中の白丸印のデータは圧延方向と平行な方向の電流値を、黒丸印のデータは圧延方向と直角な方向の電流値を示している。両者を比較すると同一の着磁値Bに対して、圧延方向と直角な方向の電流値の方が大きい値を示している。
【0201】
このような超電導複合板材で円筒体を作ると、円筒体の円周方向で上記の両特性が交互に現れることになる。この現象は超電導複合板材の材料であるNbTiの表面に存在するTi−αの不純物形状に起因するものであるので、圧延作業のばらつきでその値に大小の差があったとしても、圧延作業を経る以上はこれをなくすことは困難である。しかし、この現象が円筒体の円周面に存在するので、この円筒体を誘導着磁した場合、圧延方向と平行な方向で着磁を完了することになる。図42(A)の特性図を用いて圧延方向と電流値の関係をあてはめて、仮に着磁値B=2Tで着磁が完了したとすると、円筒体の円周面には(イ)の点の着磁電流が流れることになる。これに対し、圧延方向と直角な方向の着磁電流は(ハ)の点の値となり、(イ)の点より大きな値であるので、余裕が十分にあることになる。逆に、圧延方向と直角な方向に、仮に着磁値B=4Tで着磁が完了したとすると、円筒体の円周面には(ロ)の点の着磁電流が流れることになり、圧延方向と平行な方向の着磁電流は(ニ)の点の値で、(ロ)の点より小さい値であるので、着磁磁場を下げない限り、円筒体の円周面を流れる着磁電流が臨界電流密度Jcを超過することになる。
【0202】
この場合、円筒体の周方向には圧延方向と平行な方向と垂直な方向が各々2回ずつ現われるので、円筒体の周方向に永久に電流が流れた場合、周方向の位置によって臨界電流密度値Jcが異なるため、各位置によって流れている永久電流と臨界電流の比率(着磁率に相当)が異なる。その結果として、円筒体の周方向の各位置で永久電流の減衰への影響が異なり、磁場分布が変動することになる。
【0203】
以上の如き理由から、円筒体又は円板体の円周面の特性を極力均一化すべく、円筒体又は円板体の構成を改善する案を以下に示す。本案の具体例を図43、図44に示す。図43は円筒体に適用したもの、図44は円板体に適用したものである。図43において、円筒体全体は圧延方向の異なる4個の円筒体から構成され、図(A)は円筒体全体の縦断面図を、図(B)は4個の円筒体の各々を構成する超電導複合板材の圧延方向を示す図である。図示の如く円筒体全体は4個の円筒体MLa〜MLdの組合せで作られており、各円筒体を構成する超電導複合板材はその圧延方向がそれぞれ45°ずつ回転させられている。即ち、円筒体MLaはその周方向が圧延方向と平行、円筒体MLbはその周方向が圧延方向に対し45°回転、円筒体MLcは同様に90°回転、円筒体MLdは同様に135°回転させられている。このように構成することで、圧延方向の異なる円筒体が4個積層されることになり、円筒体全体の周方向の総合特性が等価的に均等化される。
【0204】
図44においては、円板体全体は上記の円筒体全体と同様に圧延方向の異なる4個の円板体から構成されている。図(A)は円板体全体を上から見た図、図(B)は断面図で、円板体全体を構成する各々の円板体MLa〜MLdは圧延方向が45°ずつ異なったものである。円板体MLaを基準にして、圧延方向がMLbで45°、MLcで90°、MLdで135°異なっている。この場合、円板体全体は円板体単体MLaを、0°、45°、90°、135°回転させて4個の積層したものと同じである。このような構成にすることにより、図43の場合と同様の効果が得られる。
【0205】
上記で説明した円筒体又は円板体MLa〜MLdを作る場合、これを1枚の超電導複合板材で作るよりも、n枚の板材を圧延方向を変えて厚さ方向に積層して一体化して加工した方が、材料製造上の避け難い特性上の課題を容易に解決することができる。
【0206】
以上、イニシャライズ工程以降の着磁・調整方法における着磁結果、着磁値の最終目標値に導く調整方法の原理、着磁後の磁場減衰とそれを補う磁場補償方法、超電導複合板材加工工程により発生する磁場分析への影響の軽減手段などについて詳述した。その中で、ヒータを用いて超電導体の温度調整を行ってきた。特に、温度調節素子の円筒体や円板体への取付をどのようにするかは、発熱体であるヒータの効果的活用のため重要課題である。また、温度調節素子をどのように構成するかも重要課題である。以下、これらの課題の解決手段について述べる。
【0207】
図45には円筒体への温度調節素子の取付例を示す。図45(A)は円筒体の全長にわたって温度調節素子を配したものである。図には円筒体群C14、C’14のうちの1つの円筒体が示してある(以下の図でも同様。)。円筒体C14(C’14)は複数層の円筒体からなるので、その複数層の円筒体の大略の中央に凹部を作り、ヒータH1をその凹部に埋め込む構造にして、円筒体に密着させ、発熱体であるヒータの全周で円筒体C14(C’14)を加温する方式とする。温度調整用直流電流ir1は必ず同一場所を往復させて、円筒体C14(C’14)に電流ir1の影響を残さないようにする。ヒータH1のリード線は他の部分との接続のため円筒体C14(C’14)の両端に引き出しておくとよい。
【0208】
図45(B)は円筒体C14(C’14)の端面を調整するために2種類の温度調節素子を配したものである。円筒体C14(C’14)の全長にわたってヒータH1を埋め込む。この埋め込み方式は図45(A)の場合と同じである。円筒体C14(C’14)の周方向のヒータH1を配した位置とは別の位置に、端部調整用の温度調節素子を埋め込む。端部調整用温度調節素子は工作上ヒータH1と同一形態の温度調節素子とし、中間部は超電導線とし、その両端部に端部ヒータH2LとH2Rを結合し、ヒータH1と同様の手法で円筒体C14(C’14)に埋め込み 、調整電流ir2は必ず往復で同一場所を通過させる。
【0209】
図45(C)は円筒体C14(C’14)を中央部と2個の端部C1e4e(C’1e4e)に分割し、温度調節素子を円筒体C14(C’14)全体に1個、2個の端部C1e4e(C’1e4e)にそれぞれ1個ずつ配したものである。円筒体C14(C’14)全体にはヒータH1を図45(A)の場合と同様に埋め込み、2個の端部C1e-4e(C’1e-4e)には2個のヒータH2LとH2Rを個別に埋め込む。ヒータH1とヒータH2L、H2Rは図45(B)の場合と同様、円筒体C14(C’14)の周方向の異なる位置に埋め込むことになる。この場合、ヒータH2L、H2Rは端部C1e4e(C’1e4e)の長さ内で折り返し往復構造にする。また、この折り返しヒータ構造は図45(B)の場合に適用しても特に問題はない。
【0210】
次に、円筒体や円板体に埋め込む温度調節素子について図46を用いて説明する。図46は温度調節素子の実施例を示したものである。図46(A)は円筒体C14(C’14)を全長にわたって加温するための温度調節素子の構造を示すもので、銅又はアルミニウム管内にマンガニン線などの抵抗体をヒータとして配し、ヒータ自身の外装を電気的に絶縁し、両端にリード線を接続したものである。この外装は銅又はアルミニウム管内に熱伝導を良好にするための材料例えば銅又はアルミニウムの粉末を混入したエポキシ樹脂(1)を充填し、ヒータを固定した構造とする。ヒータ線は2本往復で同じ位置になるよう配置し、調整電流ir1を流す。
【0211】
図46(B)は図46(A)のヒータを両端部に必要長さだけ配置し、中間部はリード線を撚架して埋め込み、ヒータと接続する。外装として銅又はアルミニウム管内にエポキシ樹脂(1)を充填することは図46(A)と同じであるが、中間部のリード線を配した部分については、熱伝導が比較的不良なガラス・ウール等にエポキシ樹脂を含浸させたエポキシ樹脂(2)を充填し、ヒータ部分についてはエポキシ樹脂1を充填して固定する構造になっている。
【0212】
図46(C)は表面を絶縁したマンガニン板をヒータとして用い、これを銅又はアルミニウムからなる偏平パイプ内に配し、エポキシ樹脂(1)を充填して固定したものである。
【0213】
温度調節素子を図46に示すような構造にすることにより、管理及び取扱いが容易となり、円筒体への取付・固定が容易になる。図46の如き構成をとることは、一見過保護のようにみえるが、円筒体の寸法は比較的大きいことが予想され、ヒータを裸で取扱うことは品質管理上得策でない。さらに、ヒータが超電導磁石装置を磁石として使用可能にするための最重要要素であることを考慮した場合決して過保護ではない。円筒体又は円板体へのヒータの取付は、温度調節素子の外周と密着する形状寸法の穴を設け(円筒体又は円板体を加工する時にこの穴を型により一括加工しておくとよい。)、エポキシ樹脂(1)を温度調節素子の外周部に塗布して穴に埋め込み固定する。
【0214】
次に、上記の温度調節素子を組み込んだ円筒体や円板体を用いた具体的な超電導磁石装置例をもって、一連の着磁調整作業の詳細を説明する。図47には水平磁場方式の超電導磁石装置の構成と着磁調整のための機器一式をブロック図で示した。図において、超電導磁石装置本体SCMは水平磁場を形成する円筒体群C13、C’13と、漏洩磁場を減ずる円筒体C4、C’4と、これらを超電導用冷媒と共に収容する冷媒容器と、断熱層と、冷凍機と、冷媒注入口などから成る。着磁調整のための機器としては主磁場を着磁する着磁コイルCex1、円筒体C4、C’4を着磁する着磁コイルCex4、C’ex4、着磁電源装置PS1、磁場計測機器、緊急減磁装置PS2、着磁コイルCex4、C’ex4へ電源導入するコネクタなどがある。また、円筒体群C13、C’13の内周部には磁場分布変動防止用の円筒体ML4-1と円板体ML4-2L、ML4-2Rが配置されている。
【0215】
図47の構成において、超電導磁石装置本体SCMの中心点A0を含む均一磁場領域FOVには、円筒体群C13、C’13及び円筒体C4、C’4によって、磁場強度及び方向をB0及び矢印表示で示した均一な磁場が形成される。円筒体群C13、C’13を着磁する着磁コイルCex1は外置用で、超電導磁石装置本体SCMの内周に配置され、a点で円周方向にn1箇所固定され、さらに固定材を用いてb点で円周方向にn2箇所固定されている。円筒体C4、C’4を着磁する着磁コイルCex4、C’ex4は磁石内蔵着磁コイル(着磁用補助コイル)として円筒体C4、C’4の近傍の超電導用冷媒中に配置されている。着磁コイルCex1及びCex4、C’ex4への着磁電流は着磁電源装置PS1よりそれぞれ接続ケーブルLPS1及びL’PS1を通じて供給される。円筒体群C14、C’14の温度調整を行うヒータ群(図示せず)への電流も着磁電源装置PS1から供給される。また 、緊急時の減磁のためのヒータ加温電流は緊急減磁装置PS2より接続ケーブルLPS2を通じて供給される。冷媒容器内への着磁電流及びヒータ電流の供給はコネクタから導入される。
【0216】
冷媒容器は内部に液体ヘリウム等の超電導用冷媒を収容し、断熱層で被われており、超電導用冷媒は冷凍機で冷却される。超電導用冷媒の注入は冷媒注入口から行われ、気化した冷媒は排気口(図示せず)から排出される。
【0217】
円筒体ML4-1及び円板体ML4-2L、ML4-2Rに取付けた温度調節素子への電流供給も着磁電源装置PS1より接続ケーブルL’PS1を通じて行われる。
【0218】
超電導磁石装置本体SCMと着磁電源装置PS1等との接続関係については、着磁調整中は着磁電源装置PS1から接続ケーブルLPS1、L’PS1を経由して着磁電流、ヒータ調整電流の供給とそれらの制御が行われ、着磁調整完了後は緊急減磁装置PS2と接続ケーブルLPS2で接続され、ヒータ調整電流の供給とその制御が行われる。
【0219】
超電導磁石装置本体SCMの内部での着磁コイルCex4、C’ex4及び円筒体群C14、C’14、円筒体ML4-1、円板体ML4-2L、ML4-2Rに取付けた温度調節素子と着磁電源装置PS1、緊急減磁装置PS2との接続の詳細を図48に示す。先ず、図48(A)は、図47の構成において、円筒体群C14、C’14の端部の電流調整を必要とせず、磁場分布の補償も必要としない場合の超電導磁石装置本体SCMの内部の接続を示したものである。接続ケーブルL’PS1を介して、直列に接続された着磁コイルCex4及びC’ex4に着磁電源装置PS1より着磁電流iex4が供給される。円筒体群C14とC’14については、別々にヒータ調整電流の供給を行っている。円筒体群C14のヒータHC1、HC2、HC3、HC4の抵抗体を直列に接続して、着磁電源装置PS1より接続ケーブルL’PS1を介して温度調整電流ir1Lが供給される。同様に、円筒体C’14のヒータH’C1、H’C 2、H’C3、H’C4の抵抗体にも温度調整電源ir1Rが供給される。このような構成では、着磁後に電流ir1Lとir1Rを調整して磁場強度の左右のバランス調整と着磁値の調整を行うことができる。
【0220】
図48(B)は、図48(A)に対し、円筒体端部の電流調整を必要とする場合の構成を示したものである。図48(B)において、中央部の図示は図48(A)と同じで、外周部に図示した円筒体端部調整用のヒータの配置が付加されている。円筒体群C14の端部の電流調整用ヒータHC1L、HC2L、HC3L、HC4Lの抵抗体は直列に接続され、接続ケーブルL’PS1を介して着磁電源装置PS1から温度調整電流ir2Lが供給されている。同様に、円筒体C’14のヒータHC1R、HC2R、HC3R、HC4Rの抵抗体についても温度調整電流ir2R が供給される。ここでは、ヒータHC1L〜HC4LとヒータHC1R〜HC4Rをグループ分けして、各グループ内の抵抗体を直列に接続したが、これは両グループの抵抗体を全て直列に接続して、しかも必要とする円筒体端部のみとしてもよい。このヒータは、着磁後の部分調整を行うために、左右配置の円筒体のバランス調整前に使用する。
【0221】
図48(C)は、磁場分布の変動を更に小さくすることを目的としたもので、図48(A)又は図48(B)のものに対し付加される。図示したものは構成要素を最大限に付加したもので、円筒体ML4-1用のヒータH41a〜H41d、円板体ML4-2L、ML4-2R用のヒータH42La〜H42Ld、H42Ra〜H42Rdから構成される。この構成に対し、必要に応じ、円板体ML4-2L、ML4-2Rは付加されない場合もある。これらのヒータは全て直列に接続され、着磁作業開始に先立ち、着磁電源装置PS1より制御電流ir4が導かれ、その電流が着磁調整完了まで維持される。その結果、円筒体ML4-1及び円板体ML4-2L、ML4-2Rは着磁調整完了まで常電導特性を示す状態に保持される。その後、均一磁場領域FOV内の磁場に関係する磁束を全て通すために、ヒータの制御電流ir4を零に調整し、ヒータの役割を完了する。
【0222】
図49には超電導磁石装置本体SCM内のヒータ群と外部機器である着磁電源装置PS1及び緊急減磁装置PS2との接続を纏めて示した。図中の実線はオンライン、破線はオフラインでの接続である。
【0223】
図49(A)は、補助着磁コイルCex4、C’ex4が付かない状態で、円筒体群C14、C’14にヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4が取り付けられている場合で 、着磁電源装置PS1はオフラインで、緊急減磁装置PS2はオンラインで接続されている。
【0224】
図49(B)は、図49(A)に対し、補助着磁コイルCex4、C’ex4を付加したもので、この補助着磁コイルCex4、C’ex4は着磁電源装置PS1とオフラインで接続されている。
【0225】
図49(C)は、図49(A)に対し、円筒体C14、C’14の端部調整用ヒータHC1L 〜HC4L、HC1R〜HC4Rを付加した場合で、この端部調整用ヒータHC1L〜HC4L、HC1R〜HC4Rはオフラインで着磁電源装置PS1に接続されている。
【0226】
図49(D)は、図49(C)に対し、補助着磁コイルCex4、C’ex4を付加したもので、図49(B)と同様に、この補助着磁コイルCex4、C’ex4は着磁電源装置PS1にオフラインで接続されている
【0227】
図49(E)は、図48(A)〜(D)に対し、円筒体ML4-1、円板体ML4-2L、ML4-2Rの温度調整するためのヒータH41a〜H41d、H42La〜H42Ld、H42Ra〜H42Rdを付加したものである。これらのヒータは着磁電源装置PS1にオフラインで接続されている。円筒体ML4-1、円板体ML4-2L、ML4-2Rは図49(A)〜(D)のいずれにも付加可能であるので、必要に応じて付加される。
【0228】
図49(F)は着磁コイルCex1と着磁電源装置PS1との接続を示すもので、図49(A)〜(E)のいずれの組合せに対しても必ず使用されるものである。両者の接続はオフラインで接続されている。
【0229】
次に、図47に示した水平磁場方式超電導磁石装置を例にとって、着磁調整作業方法を説明する。図50〜図55は着磁調整作業のフローチャート及びタイムチャートである。図50は着磁調整作業全体のフローチャートである。図50(A)は、着磁調整作業全体を纏めたフローチャートで、標準的には5つの工程に分けられる。工程Iは着磁工程、工程IIは端部調整工程、工程IIIはバランス調整工程、工程IVは全体調整(微調整)工程、工程Vは磁場分布固定工程である。各工程のフローチャートの細部は図50(B)〜(F)に示す。
【0230】
図50(B)は工程Iの着磁工程のフローチャートである。この着磁工程では円筒体群等をイニシャライズし、円筒体群を着磁する工程である。図中、ステップ1は準備確認工程で、着磁作業に使用される各機器(着磁電源装置、着磁コイル等)の準備状況及び接続ケーブル等の接続が規定通りに行われているかどうかを目視その他により確認する。規定通りに行われていれば次のステップに進む。ステップ2はスタート工程で、着磁電源装置PS1に設けられているスタート用押釦スイッチをオンし、着磁作業を開始する。
【0231】
ステップ3はヒータ電源設定工程、ステップ4はMLイニシャライズ工程である。MLイニシャライズ工程では以下の各ステップで着磁又は着磁調整を円筒体群など(C14、C’14、ML4-1、ML4-2L、ML4-2Rなど)を常電導特性を示す状態にするため、それらに取付けたヒータ群を加温する。そのため、ステップ3のヒータ電流設定工程では、着磁電源装置PS1において各ヒータに流す電流値を設定する。ステップ4のMLイニシャライズ工程では各ヒータ(HC1〜HC4、H’C1〜H’C4、HC1L〜HC4L、HCIR〜HC4R、H41a〜H41d、H42La〜H42Ld、H42Ra〜H42Rd)に設定電流値を流し、円筒体群等を常電導特性を示す状態にし、その後ヒータによる加温をやめ冷却して超電導特性を示す状態に戻す。但し、円筒体ML4-1、円板体ML4-2L、ML4-2Rについては工程Vの磁場分布固定工程でのみ調整を行うことになるので、その時まで常電導特性を示
す状態を維持することが必要なので、ヒータH41a〜H41d、H42La〜H42Ld、H42Ra〜H42Rdのみは工程Vまで加温を継続する。
【0232】
ステップ5は着磁条件設定工程で、着磁コイルCex1、Cex4、C’ex4に流す着磁電流の条件、円筒体群C14、C’14を加温するヒータ群HC1〜HC4、H’C1〜H’C4に流す温度調整電流の条件を設定する(このステップでは一括着磁か分割着磁かなどの条件設定も行う。)。ステップ6は着磁工程で、ステップ5で設定した着磁条件に従って、着磁電源装置PS1から着磁コイルCex1、Cex4、C’4への着磁電流iex1、iex4及びヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4への温度調整電流ir1L、ir1Rを流して、円筒体群C14、C’14の着磁を行う。円筒体C14、C’14への着磁は着磁コイルCex1、Cex4、C’ex4に着磁電流iex1、iex4を流して着磁磁場を作り、ヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4への電流ir1L、ir1Rをオンして、一旦円筒体C1〜4、C’1〜4を常電導特性を示す状態として着磁磁場を通した後に、ヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4への電流ir1L,ir1Rをオフして円筒体C14、C’14を超電導特性を示す状態に戻すことによって行う。
【0233】
ステップ7は着磁値判定工程で、超電導磁石装置の均一磁場領域FOVが中心及び外周部等の着磁値管理ポイントの磁場強度が所定値になっているかどうかを手動又は自動で判定する。各位置には磁場計測手段を配置しておき、手動又は自動で磁場の計測を行い、設定されている所定値と比較する。これらの計測値が所定値を達成していれば、ステップ10の着磁完了となるが、計測値が所定値未達の場合には再度着磁を行うためにステップ8の手動設定工程を経てステップ2のスタート工程に戻る。ステップ8では、着磁時の着磁電流又は着磁磁場値を手動で設定し直す。ステップ10の着磁完了工程では、小休止して工程IIに進む。
【0234】
図50(C)は工程IIの端部調整工程のフローチャートである。この端部調整工程では円筒体群C14、C’14の端部に集中して流れる永久電流を低い値になるように調整する。先ず、ステップ11は端部調整要否確認工程で、要の場合は端部調整を行い、否の場合は工程IIIに直行する。端部調整の要否は通常着磁磁場分 布によって決まるので、超電導磁石設計時点で決定されるものである。
【0235】
ステップ11で要の場合は、ステップ12の設定・スタート工程に進み、端部調整の条件を設定し、スタート用押釦スイッチをオンする。端部調整では円筒体群C14、C’14の端部調整用ヒータHC1L〜HC4L、HC1R〜HC4Rに温度調整電流を流して円筒体C14、C’14の端部に流れる永久電流を調整することになるので、温度調整電流値、電流を流す時間等を設定する。
【0236】
ステップ13は端部調整工程で、ステップ12での端部調整条件に従って端部調整用とヒータHc1L〜Hc4L、Hc1R〜Hc4Rに流す温度調整電流を制御する。ステップ14は端部調整完了工程で、円筒体群C1〜4、C’1〜4の端部に流れる永久電流が所定値に調整されたことを確認し(この確認は磁場を計測して行う。)、その後ヒータの温度調整電流を零にして端部調整を完了する。通常、ステップ13,14は自動操作で行う。
【0237】
図50(D)は工程IIIのバランス調整工程のフローチャートである。このバランス調整工程では水平磁場方式の超電導磁石の中心軸に直角な中心線の左右の磁場のバランスを磁場計測値から自動的に算出し、円筒体群C14とC’14を別々にヒータで温度調整し、均一磁場領域に形成される磁場のバランスを調整する。先ず、ステップ15はバランス調整要否確認工程で、要の場合はバランス調整を行い、否の場合には工程IVに直行する。バランス調整の要否は磁場計測値に基づいて磁場の左右の傾きを計算し、許容範囲に入っているかどうかを見て判定する。許容範囲に入っていないときはバランス調整要となる。
【0238】
要の場合には、ステップ16のバランス計算設定工程に進む。この工程では、磁場計測値に基づき円筒体群C14、C’14に流れている永久電流値を計算し、円筒体群C14、C’14の各々の永久電流をどれだけ低下させればよいか、そのためには円筒体群の各々の温度を何度に保持すればよいか、又円筒体群の各々に取付けたヒータにどれだけの制御電流を流せばよいかを計算し、左側のヒータ群HC1〜HC4又は右側のヒータ群H’C1〜H’C4に流すヒータ電流値ir1L又はir1Rとその電流を流す時間を設定する。この工程は通常自動で計算し設定される。
【0239】
次に、ステップ17のスタート工程に進む。この工程では、スタート用押釦スイッチをオンして、バランス調整を開始する。ステップ18のバランス調整工程では、左側のヒータ群HC1〜HC4又は右側のヒータ群H’C1〜H’C4のいずれか一方にヒータ電流ir1L又はir1Rを流し、左右の磁場の一方を減磁して、両磁場のバランス調整を行う。ステップ19の部分調整完了工程では、バランス調整後の磁場を計測し、左右の磁場の傾きが許容範囲に入ったことを確認し、工程IIIのバランス調整工程を完了させる。
【0240】
図50(E)は工程IVの全体調整工程のフローチャートである。この全体調整工程では超電導磁石装置の磁場の着磁値が目標とする最終着磁値に一致するように着磁値の微調整を行う。この全体調整工程でも円筒体群C14、C’14のヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4の電流ir1L、ir1Rを調整する。先ず、ステップ20の手動設定工程では超電導磁石装置の最終着磁値を手動又は自動で設定する。この最終着磁値が設定されると、この着磁値と磁場の計測値の差に基づき、円筒体群C14、C’14を加温するヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4に流すヒータ電流値ir1L、ir1Rを計算して求め設定する。ステップ21のスタート工程ではスタート用押釦スイッチをオンして、全体調整を開始する。ステップ22の磁場値調整工程ではステップ20で設定したヒータ電流ir1L、ir1RをヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4に流し、超電導磁石装置の着磁値を微調整する。ステップ23では前記微調整後の着磁値が所定の最終着磁値になっているかどうかをステップ7と同様に磁場計測値と比較して判定する。所定値を達成していれば次工程に進み、所定値になっていないときはステップ20に戻り、工程IVを繰り返す。
【0241】
図50(F)は工程Vの磁場分布固定工程のフローチャートである。この磁場分布固定工程では超電導磁石装置の磁場の着磁値と磁場分布が経時的に変化しないように固定する。ステップ24はML4冷却工程で、円筒体群C14、C’14の内周及び側面に配置した円筒体ML4-1、円板体ML4-2L、ML4-2RのヒータH41a〜H41d、H42La〜H42Ld、H42Ra〜H42Rdの加温を止め、円筒体ML4-1、円板体ML4-2L、ML4-2Rを冷却し、超電導特性を示す状態にする。この操作により円筒体ML4-1、円板体ML4-2L、ML4-2Rを通る磁束が固定され、均一磁場領域の磁場強度の経時的変化(減衰)を補償することができる。ステップ25の磁場分布計測工程では超電導磁石装置の磁場分布を計測して、全着磁工程を完了させる。
【0242】
次に、図50のフローチャートに対応するタイムチャートを図51に示す。図50において、図(イ)はスタート用押釦スイッチの動作、図(ロ)は円筒体群及び円筒体ML4-1、、円板体ML4-2L、ML4-2R(以下、円筒体ML4と称する。)のイニシャライズ動作、図(ハ)は円筒体ML4を加温するヒータH41a〜H41d、H42La〜H42Ld、H42Ra〜H42Rdの電流制御、図(ニ)は円筒体ML4の状態(常電導状態か超電導状態かを示す。)、図(ホ)は円筒体群C14、C’14を加温するヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4の電流制御、図(ヘ)は円筒体群C14、C’14の状態(破線で常電導状態か超電導状態かの変化を示し、実線で着磁値の変化を示す。)、図(ト)は着磁コイルCex1、Cex4、C’ex4への着磁電流条件設定のための操作、図(チ)は着磁コイルCex1、Cex4、C’ex4への着磁電流、図(リ)は端部調整のためにヒータHC1L〜HC4L、HC1R〜HC4Rの電流条件設定のための操作、図(ヌ)はヒータHC1L〜HC4L、HC1R〜HC4Rの電流制御、図(ル)は左右の磁場バランスの計算のタイムチャートである。
【0243】
図51のタイムチャートについては、図50のフローチャートと同様(A)イニシャライズ・着磁工程、(B)端部調整工程、(C)バランス調整工程、(D)全体調整工程、(E)磁場分布固定工程とに分けて説明する。
【0244】
(A)イニシャライズ・着磁工程
図(イ)のa点でスタート信号を発する押釦スイッチをオンすると、図(ロ)のb点に進む。ここでは、予め(計算等で)定めたイニシャライズのためにヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4、H41a〜H41d、H42La〜H42Ld、H42Ra〜H42Rdに流す電流の設定値テーブルを持ち、この設定値を自動操作のために制御テーブルに設定する作業を(b)点から(c)点までの間に完了させる。この部分は図50のステップ3に対応するが、ステップ3の詳細フローチャート例を示すと図52の如くなる。ステップ3−1では予め定めた円筒体群等の温度設定値を読み出し、その値をヒータの制御電流値に変換する。さらに、最適制御パターンに合わせてヒータ電流値を1/nに分割する。次に、ステップ3−2で分割した値を実行(実際に制御すること。)エリアに格納する作業を行う。図(ロ)の(c)点でヒータ電流の設定作業が完了すると、図(ハ)の(d)点で円筒体ML4のヒータ加温と図(ホ)の(e)点で円筒体群C14、C’14のヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4の加温を開始する。図(ハ)のヒータ加温は図(ニ)に示す円筒体ML4を超電導特性(図示S特性)を示す状態から常電導特性(図示N特性)を示す状態に変えるためにヒータ電流ir4の制御を、また、図(ホ)のヒータ加温は図(ヘ)に示す円筒体群C14、C’14の残留磁場の消磁を行うためにS特性からN特性に変え、再びS特性に戻すためにヒータ電流ir1L、ir1Rの制御を、図(ロ)の設定値に従い実行する。
【0245】
次に、図(ト)の(f)点に進み、着磁コイルCex1、Cex4、C’ex4の着磁電流iex1、iex4の設定が開始し、(f’)点で完了する。この着磁電流の設定も図52に示す如く行う、すなわち、着磁電流の設定値は最適制御パターンに合わせて1/nに分割して実行エリアに格納して完了する。次に、図(チ)の(g)点に進み、(g)点から(h)点に亘り着磁電流を流して着磁に必要な磁場強度まで着磁磁場を上昇させる。(h)点にて着磁磁場値が所定値に達すると、(h)点→図(ホ)の(i)点→(j)点→図(ヘ)の(k)点→(l)点→図(チ)の(m)点→(n)点→図(ヘ)の(o)点→図(チ)の(p)点→図(ヘ)の(q)点の順で着磁が完了する。
【0246】
ステップ6の着磁工程の詳細なフローチャートを示すと図53の如くなる。図53において、ステップ6−1は図51(チ)の(g)点に対応し、ヒータ電流ir1L、ir1R、ir4の上昇を完了し、着磁電流の自動設定を完了した時点である。ステップ6−2では、着磁電流の1/n1を上昇出力として着磁電源装置PS1の出力回路に設定出力すると共に、出力上昇管理カウンタを+1する。この操作で着磁コイルCex1、Cex4、C’ex4に1/n1の着磁電流が着磁電源装置PS1から導入される。ステップ6−3、6−4は前記の操作を着磁磁場立上り待時間を間にとりながらn1回繰り返すもので、n1回の繰り返しで着磁磁場の上昇を完了する(図51(チ)の(h)点に対応)。
【0247】
次に、ステップ6−5では円筒体群C14、C’14をN特性からS特性に戻すためにヒータ電流ir1L、ir1Rを零に向けて制御する。ステップ6−6では円筒体群C14、C’14がS特性を示すようになるまで冷却するのを待つ(図51(チ)の(m)点に対応)。このようにして着磁のための準備を完了する。
【0248】
着磁は円筒体群C14、C’14の形成する円筒体の断面積内の着磁磁場を構成している磁束を捕捉することで行われるので、ステップ6−7、6−8、6−9にて円筒体群C14、C’14がS特性を示す状態に保持したまま着磁コイルによる着磁磁場を下降させる。その制御は上昇時と同様に行われ、ステップ6−7では着磁電流の1/n2を下降出力として着磁電源装置PS1の出力回路に設定出力すると共に、出力下降管理カウンタを+1する。この操作で着磁電流は1/n2だけ下降される。ステップ6−9では着磁磁場が下降する待ち時間をとる。ステップ6−7、6−9をn2回繰り返し、着磁電流の下降操作を完了させる。n2回の繰返しが完了したら、ステップ6−10で着磁完了表示を行う(図51(ヘ)の(q)点に対応)。着磁が完了すると、次の端部調整工程に進む。
【0249】
(B)円筒体群C14、C’14の端部調整工程
端部調整の要否は予め設定された情報に基づき自動判定され、要の場合のみ、図51(イ)の(2)点でスタート用押釦スイッチをオンする((3)点に対応)。スタート・オンすると、図51(リ)の(4)点から(5)点に亘り円筒体群C14、C’14の端部調整用ヒータHC1L〜HC4L、HC1R〜HC4Rの制御電流値の設定が行われる。5点で設定が完了すると、図51(ヌ)の(6)点からヒータHC1L〜HC4L、HC1R〜HC4Rの制御電流ir1L、ir1Rを制御して、円筒体群C1 4、C’1 4についてS特性を示す範囲内に保持しつつ端部のみ温度を上昇させる(図51(ヌ)の(8)点に対応)。その結果(8)点から(10)点に亘る所定時間の加温により円筒体群C14、C’14の端部の永久電流を所定値まで下降させることができる(図51(ヘ)の(7)点→(9)点→(11)点の変化に対応する)。その後(10)点から(12)点に亘りヒータの制御電流ir1L、ir1Rを零に向けて下降させる。端部調整工程でのヒータ電流条件の設定は(A)イニシャライズ・着磁工程のものとほぼ同じであり、異なる点はその設定値が端部調整のために予め定められた値であるということなので、ヒータ電流の設定〜制御の一連の動作は(A)イニシャライズ・着磁工程と同じアルゴリズムとなる。
【0250】
(C)左右バランス調整工程
磁場の左右のバランスの調整では、管理ポイントの着磁値の計測データを着磁電源装置PS1に入力し、左右磁場の着磁値の差を計算し、それが許容範囲内にあるかどうかを確認する。図51(ル)の(13)点では、上記計測値に基づき左右磁場の着磁値の差を計算し、バランス調整の要否を判断する。要の場合には、図51(ロ)の(15)点に進み、バランス調整に必要な条件の計算を行い、ヒータHC1〜HC4、又はH’C1〜H’C4の制御電流などの設定を行う。この部分は図50のステップ16に対応し、その詳細を図54に示す。
【0251】
図54はステップ16のバランス計算設定工程の詳細フローチャートを示したものである。先ず、ステップ16−1では超電導磁石装置が作る磁場の計測データを読み込む。一般には計測機器から自動で読み込まれるが、不可の場合は手動読込みでもよい。ステップ16−2では左右磁場の差を計算し、その差に基づきどれだけの磁場を調整すればよいかを確認する。ステップ16−3では左磁場と右磁場のうちどちらの磁場が高いかを見て、どちらのヒータを制御すべきかを決める。ステップ16−4、16−5ではステップ16−2の結果に基づき調整すべき側のヒータの制御条件を設定し、その設定値を実行エリアに入れる。ステップ16−4、16−5は(A)イニシャライズ・着磁工程のステップ3と同様であるので、それと同一のアルゴリズムで設定を行う。
【0252】
図51(ロ)の(16)点で調整すべき側のヒータの制御条件の設定が完了すると、図51(イ)の(17)点に進み、スタート用押釦スイッチをオンする。すると図51(ホ)の(19)点から調整すべき側のヒータHC1〜HC4又はH’C1〜H’C4の電流ir1L又はir1Rが流れ、円筒体群C14又はC’14を加温する。このヒータ電流の制御は、銅図のe点からj点までの操作と同一のアルゴリズムで行うことができ、円筒体群C14、C’14はS特性を示す状態に保持されたまま調整が行われる。この調整は(21)点で完了する。
【0253】
(D)全体調整工程
全体調整工程での着磁の最終値は標準値を予め定めておき自動設定するようになっているが、場合によっては標準値+α値を設定したい場合もあり、この場合には+α分だけ手動で設定する。この+α値を図51(ロ)の(23)点から(24)点で標準値に加算した後最終着磁値の最大値以内か否かをチェックし、管理値内であれば、着磁値の測定値との差を算出し、その差分を円筒体群C14、C’14のヒータの制御電流ir1L、ir1Rに変換し、このヒータの制御電流値を最適制御パターンに合わせて1/n3に分割後実行エリアに格納する。設定値が異常値であれば、これをキャンセルし再び手動設定を行う。これをフローチャートで表現したのが図55である。
【0254】
図55において、ステップ20−1の手動設定工程では+α値をデータとして手動で設定し、ステップ20−2の設定完了工程では標準値にα値を加算後一時記憶エリアへ格納する。ステップ20−3の読込み格納工程では標準値+α値を一時記憶エリアから読み出しチェックエリアへ移す。ステップ20−4の最大値チェック工程では着磁最終値の最大値を確認するための計算を行う。ステップ20−5では着磁最終値の最大値と標準値+α値との比較を行い、標準値+α値が着磁最終値の最大値以内か否かをチェックする。正常の場合はステップ20−9へ、異常の場合はステップ20−6へ進む。設定値が異常値の場合にはステップ20−6で再設定が必要の旨表示し、ステップ20−7で設定値をキャンセルし、ステップ20−8ではキャンセル済の確認をして、ステップ20−1に戻る。設定値が正常値の場合はステップ20−9の設定データ演算工程で着磁値の計測値と設定値との差を算出し、差分をヒータの制御電流値に変換し、この制御電流値を制御パターンに合わせて1/n3に分割し、ステップ20−10でその分割値を実行エリアに格納する。
【0255】
(24)点でヒータ制御電流の設定を完了すると、図51(イ)の(25)点に進み、スタート用押釦スイッチをオンする。すると、(26)点から図51(ホ)の(27)点に進み、円筒体群C14、C’14のヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4は同一ヒータ電流値で制御され、(27)点から(29)点の間に図51(ヘ)において円筒体群C14、C’14の着磁値が(28)点から(30)点に亘って調整される。ヒータ電流の制御は1/n3ずつ順に出力し実行するアルゴリズム(図53に大略同じ)で行われ、円筒体群C14、C’14はS特性内で温度制御される。
【0256】
(E)磁場分布固定工程
着磁値の全体調整が完了すると、図51(ホ)の(29)点から図(ハ)の(31)点に進む。(31)点では円筒体ML4のヒータの制御電流を下降制御し零にする。それに従い、図51(ニ)において、円筒体ML4はN特性を示す状態((32)点)からS特性を示す状態((33)点)に戻り、この円筒体ML4によって均一磁場領域の磁場分布を固定し、その磁場分布の減衰を補償することになる。この工程をもって、全ての着磁調整作業が完了する。
【0257】
図56には以上で説明したアルゴリズムを実行するために用いられる着磁電源装置PS1のブロック構成図を示す。図56において、着磁電源装置PS1は定電流出力回路O17、デジタル/アナログ変換回路D/A17(不要な場合もある。)、制御期間を管理する論理積回路AND17、アップダウンカウンタU/D17、演算回路を中心とするコンピュータシステム、その出力を分担する出力回路、表示回路、磁場計測機器からのデータ等を入力する入力回路、コンピュータの制御回路、記憶回路、電源回路などから構成される。入力回路への入力としては、上記以外に手動入力やその他の入力(例えば超電導磁石装置の液体ヘリウムのレベルなど)などが取り込まれる。また、定電流出力回路O17に着磁コイルCex1、Cex4、C’ex4、ヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4、HC1L〜HC4L、HC1R〜HC4R、H41、H42L、H42Rが接続される。記憶回路には図50、図52〜図55のアルゴリズムがソフトウェアとして格納される。
【0258】
図57は緊急減磁装置PS2のブロック構成図である。超電導磁石装置の実際の使用状態で人間が何等かの原因で磁性体と共に超電導磁石装置に吸い込まれたり、磁性体が吸い込まれたり、その他種々の異常状態が生じた場合に、磁場がそのまま存在すると異常状態が継続したままとなるので、磁場の除去が必要となり、その目的で緊急減磁装置が使用される。緊急減磁装置PS2は、円筒体群C14、C’14及び円筒体ML4を減磁するために、これらを一定時間(例えば1〜2分)加温し、その目的を達する。加温するヒータはHC1〜HC4、H’C1〜H’C4、H41、H42L、H42Rであり、これらのヒータに同時に加温のための電流を導く。このために、上記の一連の着磁調整作業完了後に、超電導磁石装置の中のヒータHC1〜HC4、H’C1〜H’C4、H41、H42L、H42Rは直列に接続され、緊急減磁装置PS2の出力回路に接続される。この接続のために、ヒータ回路側には直列結合部が設けられている。緊急減磁装置PS2の出力回路は定電流回路で、バッテリーバックアップ(停電のバックアップ)付の直流電源が1〜2分のオフディレイのガード付押釦スイッチを介して接続されており、更にこの直流電源には交流を直流に変換して直流定電圧を作る定電圧源が接続されている。
【0259】
超電導線材で巻いた超電導コイルで構成される従来の超電導磁石装置では、操作スイッチとして一般のオン・オフスイッチを用い、バックアップのバッテリーとして本発明のものより容量が1桁小さいものが使用できるなどの利点がある反面、巻線はインダクタンスが大きいこと、巻線が局部的に焼損しないように保護抵抗を付加したり、又は半導体等で構成した保護回路を設けたりして、超電導磁石装置内部を複雑にしているという欠点がある。これに対し、本発明では、制御用のヒータを着磁調整のヒータと共用できるため、緊急減磁のための保護手段が全く必要としないという大きな利点がある。
【0260】
以上では、水平磁場方式の超電導磁石装置の着磁調整方法と着磁調整後の使用時における安全システムについて述べたが、着磁調整後の手順としては、着磁値を規定値以外の任意の値でイニシャライズと着磁までを行い、これを予備着磁と位置付け、この着磁値に基づいて計算により最終着磁値を想定して本着磁を行うことで、調整工程を省いても、使用に耐える超電導磁石装置となる。この場合の最終着磁値は、予備着磁で一応設置環境をある程度考慮した値を得た場合のものとなる。
【0261】
図58は垂直磁場方式の対向型超電導磁石装置に円筒体を適用した構成例である。図58において、上部超電導磁石SCM1と下部超電導磁石SCM2とが均一磁場領域FOVを間に挟んで対向配置されている。上部磁石SCM1と下部磁石SCM2とはほぼ対称形に構成されているので、図示では上部磁石SCM1のみの内部構成を示した。上部磁石SCM1は中心軸と同軸に配設された円筒体C1
2、C3、C4と円板体ML4とから成る。円筒体に流れる永久電流は円筒体の周方向に流れるが、一部の円筒体には他のものと逆方向に永久電流を流すことにより装置の小型化をはかっている(図58にては円筒体C3に流れる永久電流が逆方向になっている。)。
【0262】
円筒体群C14は均一磁場領域FOVに均一な高磁場を作るために、円板体ML4は均一磁場領域FOVの磁場分布を固定するために配置されたもので、各々の機能は水平磁場方式の場合と同様である。また、円筒体C1、C2、C3、C4のそれぞれは通常1箇以上の円筒体を組合せて構成されている。着磁コイルCex1は均一磁場領域FOVの部分に配置して、上述の水平磁場方式の場合と同様に行われる。着磁の際は通常円筒体の径の小さい順に着磁が行われる。また、着磁電源装置や緊急減磁装置の構成は図56と図57のものと同じであり、着磁調整のフローチャートとタイムチャートも図50〜図55と同様である。
【0263】
図59〜図62には比較的直径の小さい円筒体を複数個対向配列して超電導磁石装置を構成する例について説明する。図59は前記磁石を構成することを目的に着磁実験を行った際の小円筒体群試料の配列と着磁コイルCexの配置と磁場計測位置を示した。図59(A)は対向配置した小円筒体群のうちの一方のX−Y座標面での配列を示している。内径20mm、長さ40mmの10箇の小円筒体を内径50mmの円に接するよう配列されており、X軸上には小円筒体の中心が位置し、Y軸上には小円筒体の外接点が位置するようにしてある。図59(B)は対向配置した小円筒体群のうちの一方の側面図とその周囲に配置した着磁コイルCexの断面を示している。小円筒体群はZ軸を中心軸として、点A0を中心に対称に配列されている。図59(A)、(B)で座標X1〜X5、Y1〜Y3、Z1〜Z3は磁場計測点の位置の座標を示している。
【0264】
図60に着磁実験での磁場計測値を示す。これらの計測値は着磁コイルCexに所定の着磁電流を流して小円筒体群を着磁した後に計測点の磁場強度を計測したものである。図60(A)はX軸上での計測値、図60(B)はY軸上の計測値、図60(C)はZ軸上の計測値である。これらの計測結果は別途行った計算結果と大略一致している。図60(A)〜(C)において、X軸上及びY軸上では中心点A0から約35mmの部分に鋭いピークがあるのに対し、Z軸上では値が小さくかつゆるやかな変化をしており、中心点A0の近くでマイナス値を示し約30mmを越えるとプラス値を示している。これは図59(A)から判るように各々の小円筒体の電流の方向が内側の50mmの円に接する部分と外側の90mm(50mm+20mm×2)の円に接する部分とでは逆向きになるためである。また、2箇の小円筒体が接触する部分(例えばY軸上の点)で、流れる電流が逆向きであるため磁場が相殺されて磁場強度は低くなっている。
【0265】
図61は他の小円筒体群の配列例を示す。図61(A)は平面図、図61(B)は側面図である。図61(B)に示す如く、本実施例の超電導磁石装置は均一磁場領域FOVの中心点A0を中心として、上部磁石SCM1と下部磁石SCM2が対向配置されており、各々の磁石は図61(A)の小円筒体群と円板体ML4とからなる。さらに小円筒体群は大きい径の小円筒体群C1〜C5と小さい径の小円筒体群C’1〜C’5とからなり、各円筒体群は均一磁場領域FOVの中心点A0に向かって中心軸に対し傾斜して配置されている。本実施例の場合、小円筒体が形成する磁場が指向性を持っているので、これらの磁場が均一磁場領域に向くように小円筒体を傾斜させ、大きい径の小円筒体相互間の磁場分布の低下を改善するためにその間に小さい径の小円筒体C’1〜C’5を配置させたものである。
【0266】
本実施例の超電導磁石装置では、外置きの着磁コイルCexを均一磁場領域FOVに配置して着磁することも可能であるが、さらに有効な着磁方法として各小円筒体内に着磁コイルCexiを実装する方法がある。この着磁方法では、小円筒体C1〜C5、C’1〜C’5の内周側に着磁コイルCex1〜Cex5、C’ex1〜C’ex5を装着し、各着磁コイルを直列に接続して、着磁電源を流すものである。この実施例の最大の特長は小円筒体群C1〜C5、C’1〜C’5が受け持つ断面積が小さく、着磁磁場を形成する際の1個の小円筒体が作る磁束量が小さいため、着磁コイル内蔵形の方が有利であること、更に、小円筒体の直径に対し長さを比較的大きく形成できるため磁場減衰を小さくできること、更に超電導複合板材で円筒体を製作する場合の材料利用率が高いこと、等の利点が得られることである。
【0267】
図62は第3の小円筒体群の配置例を示す。この図は本実施例の超電導磁石装置の側面図を示したもので、上部磁石SCM1及び下部磁石SCM2の主要部は超電導線材のコイル又は超電導複合板材で作った円筒体群と円板体ML4とからなり、補助手段として小円筒体群が用いられている。小円筒体群は主要磁石の周囲に配置されて、その高い指向性を活用して、均一磁場領域FOVの周辺部の磁場補強をするものである。このような構成にすることにより、上部磁石SCM1及び下部磁石SCM2の直径を小さくすることができる。
【0268】
上記の小円筒体としては、更に、酸化物高温超電導体で製作した小円筒体を適用することも可能であり、図47(水平磁場方式)や図58(垂直磁場方式)の場合に比べて、超電導複合体を構成する材料の選択をより拡げることができる。また、図61、図62に示す構成において、小円筒体の製作の容易な高温超電導体と大きな径の円筒体の製作の容易な金属(又は合金)超電導体とを合理的に組合せた超電導磁石装置を容易に構成することができる。
【0269】
図63〜図65には円筒体の細部構造例を示す。図63は円筒体の外周の電磁力を円筒体の内周に配置した物体で受けるようにした構造例である。図63(A)は横断面、図63(B)は側断面である。図63(B)において、円筒体ML1とML2の間に温度調節素子がはさみ込まれる形で埋め込まれており、エポキシ樹脂(1)で固定されている。円筒体の内周側には電気的絶縁物を介してアルミニウム又は銅の円筒が圧入する形で挿入され、円筒体ML1及びML2と一体化された構造になっている。温度調節素子は90度間隔で4箇所に埋め込まれている。この埋込穴の形状は通常は円形である。
【0270】
図64は円筒体にかかる電磁力を円筒体の内・外周に配置した物体で受けるようにした構造例である。図64(A)は横断面、図64(B)は側断面である。円筒体への温度調節素子の配置及び円筒体の内周側へのアルミニウム又は銅の円筒の圧入は図63の場合と同じである。本実施例では更に、円筒体ML1、ML2の外周側に電磁力により変形しないように電磁力に打ち勝つに十分な厚さを持つステンレス鋼又はアルミニウム又は銅の円筒を圧入する形で一体化する。図64(C)は温度調節素子の埋込穴の形状を示したもので、偏平外形の穴の例を示したもので、円筒体が薄い場合には有効である。
【0271】
図65は図63の円筒体の外周に更に別の円筒体を配置し、その外周側にステンレス鋼又はアルミニウム又は銅の円筒を図64と同様に配したものである。内周側の円筒体ML1、ML2とアルミニウム又は銅の円筒との組合せは図63のものと同じである。その外周にスペーサとしてのアルミニウム又は銅の円筒が配されており、温度調節素子が埋め込まれている部分の外周のみガラス繊維などからなる温度絶縁体が配され、エポキシ樹脂で固定されている。スペーサの外周には別の円筒体ML3、ML4が配され、更にその外周にステンレス鋼又はアルミニウム又は銅の円筒が配されている。内周側の円筒体ML1、ML2に埋め込まれた温度調節素子と外周側の円筒体ML3、ML4に埋め込まれた温度調節素子とは円筒体の周方向の同じ角度の位置に配置され、温度絶縁体で熱的に絶縁されている。
【0272】
図66は図63〜図65に例示した円筒体を円筒体支持台に取付る構造例を示す。本実施例は長手方向中心線を基準にして左右対称形である超電導磁石装置を想定した構造であるので、図66には右半分の構造のみを示した。円筒体支持台は内側が中心軸に沿って円筒状の穴があいていて、外側は階段状に外径が端部に行くにつれて小さくなる構造をしており、材質はアルミニウムなどからなっている。円筒体支持台の各階段の長出方向中心線と平行な面を電気的に絶縁して、各階段に内径の異なる円筒体を径の大きい方から順次圧入して取付ける。このような構造では、電磁力が矢印の方向に作用するため、電磁力に対し円筒体を安定して円筒体支持台に固定することができる。この階段状の構造は均一磁場領域FOVの磁場分布に対しても良好な分布を与える構造になっている。図66の構造は、左右対称であるので一体で製作することも、左右部分を別々に製作して長手方向中心線の部分で溶接して接続することも可能である。
【0273】
図67(A)には図66に示した円筒体と円筒体支持台の組合せを超電導磁石装置に組込んだ構造例を示した。円筒体と円筒体支持台の組合せは冷媒容器に収納され、注液口から注入される冷媒によって冷却される。冷媒は冷凍機で冷却される。冷媒容器は断熱層を介して冷却容器に支持される。円筒体に埋め込まれた温度調節素子には着磁電源装置PS1より配線口を経由して制御電流が導かれる。又着磁後は温度調節素子は緊急減磁装置PS2と接続される。
【0274】
着磁コイルCexは超電導磁石装置SCMの均一磁場領域FOVの近傍にその中心軸と着磁コイルの中心を合わせて超電導磁石装置SCMに固定される。超電導磁石装置SCMのボア内には、図67(B)に示す如く着磁コイルCexを挿入するためのガイドレールが取付けられており、超電導磁石装置SCMのボアの両端面には着磁コイルCexを固定するための凸部が取付けられている。着磁コイルCexは着磁コイル固定金具を外した状態で超電導磁石装置SCMのボアの一端から挿入し、挿入後着磁コイル固定金具を取付けて、着磁コイルCexを超電導磁石装置SCMに固定する。このように着磁コイルCexは均一磁場領域FOVを覆うことになる。このため、磁場計測素子(例えばホール素子)は着磁コイルCexの磁場管理点に対応する位置に取付けられ、着磁中の磁場のチェックを磁場コイルCexを外さずに実行できるように構成されている。勿論、最終的な磁場の調整は、着磁後に着磁コイルCexを取外し、、精密計測用磁場センサを取付け、最終着磁値の調整を行う。
【0275】
以上の如く、円筒体の基本特性を実験により確認し、この円筒体を適用した超電導磁石装置の着磁調整方法を系統的に説明した。上記説明では、超電導複合板材を応用する例で説明して来たが、本発明は超電導板材又は円筒体全般に適用可能なものであるので、材料を高温超電導体に変えた場合でも同様に適用できることは言うまでもない。
【0276】
【発明の効果】
本発明によれば、超電導複合板材を適用した円筒体を目的の均一磁場領域を得るために効果的な配列を行い、この円筒体を磁場発生源とするために誘導着磁を行い、円筒体に温度調節素子を取付けて温度制御することに着磁後の着磁値の調整を可能にしたことにより、従来の超電導線材のコイルを使用した超電導磁石装置から、円筒体を磁場発生源とする新しい超電導磁石装置へ移行することができた。円筒体を使用することにより、巻線作業は一掃され、型による成型作業、機械加工、組立作業などの一般加工作業で磁場発生源の製作が可能となったので、熟練した作業者なしでも製作精度の高い超電導磁石装置が製作できるようになった。
【0277】
本発明の超電導磁石装置では、円筒体に温度調節素子を取付け、これを緊急減磁装置に接続していること、着磁が誘導着磁で行われていること、円筒体の電磁力による変形を防止する構造を採用していることなどにより、クエンチ現象を排除する構成になっている。
【0278】
均一磁場領域と磁場発生源との間に円筒体又は円板体を配し、着磁値を固定することにより、超電導磁石装置の均一磁場領域の磁場強度と磁場分布の変動を補償することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 NbTi/Nb/Cu超電導多層複合体の断面図。
【図2】 超電導多層複合体からなる円筒体を着磁する範囲の説明図。
【図3】 円筒体ML1の着磁実験結果の説明図。
【図4】 着磁コイルを円筒体ML1の内側に配置した場合の配置図。
【図5】 着磁コイルを円筒体ML1の外側に配置した場合の配置図。
【図6】 2重円筒体の着磁実験結果の説明図。
【図7】 2重円筒体と着磁コイルの配置図。
【図8】 1個の円筒体ML1を単独で着磁した場合のビーンモデルによる着磁説明図。
【図9】 2個の円筒体ML2、ML3を一括着磁した場合のビーンモデルによる着磁説明図。
【図10】 2個の円筒体ML2、ML3を分割して個別に着磁した場合のビーンモデルによる着磁説明図。
【図11】 2重円筒体の外側円筒体を逆極性着磁する場合の着磁実験結果の説明図。
【図12】 2重円筒体の外側円筒体を逆極性着磁する場合の2重円筒体と着磁コイルの配置図。
【図13】 2重円筒体の外側円筒体を逆極性着磁する場合のビーンモデルによる着磁説明図。
【図14】 2重円筒体の外側円筒体を逆極性着磁する場合のμH−B特性上からの着磁説明図。
【図15】 NbTiの温度・磁場強度・永久電流密度の特性相関説明図。
【図16】 円筒体1個の場合の温度の調整のやり方の説明図。
【図17】 円筒体2個の場合の温度の調整のやり方の説明図。
【図18】 円筒体1個の着磁調整手順のタイムチャート。
【図19】 外側の円筒体を逆極性で着磁する場合の円筒体2個の着磁調整手順のタイムチャート。
【図20】 繰り返し着磁法における着磁試料としての2個の円筒体ML2、ML3と着磁コイルと着磁電源装置との配置図。
【図21】 円筒体2個による繰り返し着磁法のビーンモデルによる着磁説明図。
【図22】 円筒体2個による繰り返し着磁法の着磁調整順序を説明するためのタイムチャート。
【図23】 超電導体B−J特性と負荷率との関係の説明図。
【図24】 従来の超電導線材を用いたコイルの着磁説明図。
【図25】 NbTiの温度と臨界電流密度(永久電流密度の最大値)との関係説明図。
【図26】 複数個の円筒体を用いた水平磁場方式の超電導磁石装置の構成例。
【図27】 ヒータの温度調整区分と役割の説明図。
【図28】 円筒体内の着磁永久電流分布と調整例。
【図29】 円筒体内の着磁永久電流分布固定時の円筒体と着磁コイルと磁場検出素子の配置図。
【図30】 円筒体を分割して円筒体の端部に端部専用の円筒体を配した例。
【図31】 円筒体を分割して円筒体の端部に端部専用の円筒体を配した他の例。
【図32】 着磁コイルの長さを変えて端部集中着磁電流を抑制する例。
【図33】 端部集中着磁電流調整用ヒータを用いた水平磁場方式の超電導磁石装置の構成例。
【図34】 2重円筒体の着磁率と磁場減衰特性との関係の実測例。
【図35】 垂直磁場方式の超電導磁石装置の基本構成としての2重円筒体の対向配置。
【図36】 着磁率と磁場減衰特性との関係についてのビーンモデルによる説明図。
【図37】 2重円筒体を対向配置した場合の磁束分布。
【図38】 2重円筒体を対向配置した場合の均一磁場領域の磁場減衰と磁場分布変動の補償法の説明図。
【図39】 水平磁場方式の超電導磁石装置の均一磁場領域の磁場減衰と磁場分布変動を補償するための構成例。
【図40】 水平磁場方式の超電導磁石装置の磁場分布変動を補償するための円筒体及び円板体とヒータの配置例。
【図41】 図40のヒータの温度制御と着磁作業と調整作業のタイムチャート。
【図42】 NbTiの超電導複合板材の圧延方向と平行な方向と垂直方向のB−Jc特性例。
【図43】 超電導複合板材の圧延に伴う方向による特性差の円筒体構成での改善方法。
【図44】 超電導複合板材の圧延に伴う方向による特性差の円筒体構成での改善方法。
【図45】 円筒体への温度調節素子の取付例。
【図46】 温度調節素子の構成例。
【図47】 水平磁場方式の超電導磁石装置の構成と着磁調整用機器一式のブロック図。
【図48】 温度調節素子並びに磁石内蔵着磁コイルと着磁電源装置等との接続説明図。
【図49】 温度調節素子群並びに磁石内蔵着磁コイルと着磁電源装置等との接続まとめ図。
【図50】 水平磁場方式超電導磁石装置の着磁調整方法のフローチャート。
【図51】 図50のフローチャートに対応するタイムチャート。
【図52】 図50のステップ3ヒータ電流設定工程の詳細フローチャート。
【図53】 図50のステップ6着磁工程の詳細フローチャート。
【図54】 図50のステップ16バランス計算設定工程の詳細フローチャート。
【図55】 図50のステップ20手動設定工程の詳細フローチャート。
【図56】 超電導磁石装置を着磁するための着磁電源装置のブロック構成図。
【図57】 緊急減磁装置のブロック構成図。
【図58】 垂直磁場方式の対向形超電導磁石装置に円筒体を適用した構成例。
【図59】 小円筒体群試料による着磁実験の配置例。
【図60】 小円筒体群試料による着磁実験の磁場計測値。
【図61】 小円筒体群を用いた対向形超電導磁石装置の構成図。
【図62】 小円筒体群を用いた対向形超電導磁石装置の他の構成図。
【図63】 円筒体に温度調節素子と金属円筒を付加した構造例。
【図64】 図63の構成体に対電磁力補強を施した構造例。
【図65】 複数の円筒体を一体化するための構造例。
【図66】 円筒体群を円筒体支持台に取付ける構造例。
【図67】 円筒体と円筒体支持台の組合せを超電導磁石装置に組込んだ構造例。
【図68】 従来の超電導線材を用いた超電導磁石装置の構造例。
【図69】 永久電流スイッチの構造例。
【符号の説明】
Cu…銅、Nb…ニオブ、NbTi…ニオブチタン合金、ML…超電導複合板材又はそれを加工した物、B、−B、B’、−B’…磁束密度(磁場強度)、H…磁界、μ…透磁率、I、I’、IA、I’A、IB、I’B、IC、I’C…着磁領域II、II’、IIA、II’A、IIB、II’B、IIC、II’C…着磁に使用しない領域、Cex、Cex1…着磁コイル、ML1…円筒体、A0…中心磁場計測点、ML2、ML21、ML22…大径円筒体、ML3、ML31、ML32…小径円筒体、J…永久電流密度、Jc…永久電流の臨界電流密度、A1、A’1…磁場計測点、T…温度、H1、H2、H3…ヒータ、ir1、ir2、ir3…ヒータ電流、PS1…着磁電源装置、t…経過時間、iex…着磁電流、L1、L0…負荷曲線、PC…永久電流スイッチ、ih…ヒータ電流、iw…着磁電流、W…超電導線材を用いたコイル、C14、C’14…円筒体、B14、B’14…円筒体の磁場強度、R14、R’14…ヒータの抵抗体、L…円筒体の長さ、ML’1、ML’2…円筒体ML1、ML2の両端部に設けた補助円筒体、L1…円筒体ML1の長さ、L2…着磁コイルの長さ、r1142、r’1142…円筒体端部専用ヒータの抵抗体、ir2…円筒体端部の温度制御用ヒータに導く制御電流、A’0…2組の2重円筒体を対向配置した場合の中心点、Φ1…対向した両2重円筒体を通過する磁束、Φ2…対向2重円筒体の一方のみを通過する磁束、ML4-1…磁場分布補償用円筒体、H41a〜H41d…円筒体ML4-1に取付けたヒータ、ML4-2L、ML4-2R、ML4-3…磁場分布補償用円板体、H42La〜H42Ld、H42Ra〜H42Rd…円板体ML4-2L、ML4-2Rに取付けたヒータ、H43a〜H43d…円板体ML4-3に取付けたヒータ、ir4…磁場分布補償用円筒体又は円板体の温度制御用ヒータに導く制御電源、MLa〜MLd…超電導複合板材4枚の組合せ、C1e〜C4e…端部補助円筒体、H2L、H2R…円筒体端部用ヒータ、LSP1…着磁電源装置と超電導磁石装置との接続表示、LSP2…緊急減磁装置と超電導磁石装置との接続表示、Cex4、C’ex4…磁石内蔵着磁コイル、L’PS1…着磁電源装置と外置着磁コイルとの接続表示、S特性…超電導特性、N特性…常電導特性、O17…定電流出力回路、D/A17…デジタル/アナログ変換回路、AND17…論理積回路、U/D17…アップ・ダウン・カウンタ、E…設置、VAC…交流電源、X15…磁場計測点(X方向)、Y13…磁場計測点(Y方向)、Z13…磁場計測点(Z方向)、Al…アルミニウム、SCM、SCM1、SCM2…超電導磁石装置本体、PS2…緊急減磁装置、FOV…均一磁場領域、HC1〜HC4、H’C1〜H’C4…円筒体C14、C’14に取付けたヒータ、HC1L〜HC4L、HC1R〜HC4R…円筒体C14、C’14に取付けた円筒体端部用ヒータ、SUS…ステンレス鋼。

Claims (13)

  1. 内容物を超電導状態に冷却できる冷却容器と、該冷却容器中に配置され、予め定められた磁場領域(以下、均一磁場領域という。)にその中心軸に沿った磁束を発生させる電流の保持媒体となる超電導多層から成る静磁場発生手段と、該静磁場発生手段を前記冷却容器中に保持する保持手段を含み、前記超電導多層体が温度調節素子を有する超電導磁石装置において、前記静磁場発生手段の着磁を誘導着磁にて行って前記磁束を発生させ、その着磁値を前記温度調整素子により前記超電導多層を超電導状態に保持する範囲内でその温度を制御することにより調整可能にしたことを特徴とする超電導磁石装置。
  2. 請求項1記載の超電導磁石装置において、前記超電導多層体は超電導多層板材を円筒形に加工した円筒体であり、前記静磁場発生手段は複数個の前記円筒体を円筒長手方向に中心軸を合わせて配置され(以下、この複数個の円筒体を第1の円筒体群という。)、該第1の円筒体群の中心軸とその円筒長手方向の中心線との交点近傍に均一磁場領域を形成するように構成され、前記第1の円筒体群を誘導着磁により円周方向に電流を誘起して着磁することにより、前記均一磁場領域中に所望の静磁場強度と磁束の方向を得ることを特徴とする超電導磁石装置。
  3. 請求項2記載の超電導磁石装置において、前記第1の円筒体群の外周に、他の径の大きい複数個の円筒体又は中心穴のあいた円板体(以下、第2の円筒体群という。)を前記第1の円筒体群と中心軸を合わせて配列し、かつ該第2の円筒体群にも温度調節素子を付加し、前記第2の円筒体群について前記第1の円筒体群の発生する磁束を打ち消す方向の磁束を発生するように誘導着磁し、漏洩磁束を減少させたことを特徴とする超電導磁石装置。
  4. 請求項2及び3記載の超電導磁石装置において、前記第1の円筒体群を構成する複数個の円筒体のうちの1個以上の円筒体を他の円筒体とは逆向きの電流が流れるように誘導着磁することにより、前記均一磁場領域の磁場均一度を損なうことなく、前記第1の円筒体群の配置長さを短縮したことを特徴とする超電導磁石装置。
  5. 請求項2乃至4のいずれかに記載の超電導磁石装置において、前記第1の円筒体群を構成する円筒体の内径側に、長さを前記第1の円筒体群の配列長さよりも長く、外径を前記第1の円筒体群の内径よりも小さくし、かつ温度調節素子を付加した1個以上の円筒体(以下、第3の円筒体群という。)を配置し、該第3の円筒体群を超電導磁石装置の着磁開始から着磁値調整完了時まで前記温度調節素子により加温して超電導状態を解いておき、前記着磁調整が完了した後に前記温度調節素子による加温を解き、前記第3の円筒体群を冷却し超電導状態に戻すことを特徴とする超電導磁石装置。
  6. 請求項1記載の超電導磁石装置が2組、その中心軸を合わせて対向して配置され、両超電導磁石装置の対向中心部近傍に均一磁場領域を有する超電導磁石装置において、前記超電導多層体は超電導複合板材を適当な直径及び長さ寸法の円筒形に加工した円筒体であり、前記静磁場発生手段は複数個の前記円筒体をその中心軸を合わせて立体的に配置して構成され(以下、この複数個の円筒体を第4の円筒体群という。)、前記2組の超電導磁石装置を誘導着磁により着磁することにより、前記均一磁場領域中に所望の静磁場強度と磁束の方向を得ることを特徴とする超電導磁石装置。
  7. 請求項6記載の超電導磁石装置において、2組の前記第4の円筒体群の前記均一磁場領域から離れた外側の位置に、温度調節素子を付加した複数の超電導複合板材を用いた円筒体又は円板体(以下、第5の円筒体群という。)を前記第4の円筒体群と中心軸を合わせて配置し、該第5の円筒体群について前記第4の円筒体群の発生する磁束を打ち消す方向の磁束を発生するように誘導着磁し、漏洩磁束を減少させたことを特徴とする超電導磁石装置。
  8. 請求項6及び7記載の超電導磁石装置において、2組の前記第4の円筒体群を構成する複数個の円筒体のうち1個以上の円筒体を他の円筒体とは逆向きの電流が流れるように誘導着磁することにより、前記均一磁場領域の磁場均一度を損なうことなく、前記第4の円筒体群の外径を縮小化したことを特徴とする超電導磁石装置。
  9. 請求項2乃至8のいずれかに記載の超電導磁石装置の着磁時に前記均一磁場領域に挿入される外置着磁コイルにおいて、該外置着磁コイルに前記均一磁場領域内の管理ポイントの磁場強度を計測するための磁場強度計測用素子を付加したことを特徴とする外置着磁コイル。
  10. 請求項2乃至8のいずれかに記載の超電導磁石装置において、前記温度調整素子を緊急減磁用温度調整素子として兼用し、超電導磁石装置の緊急時に減磁操作を行う緊急減磁装置を前記温度調整素子に接続し、磁場を消失させる必要が生じた場合に、前記緊急減磁装置より超電導磁石装置を消磁させるのに必要な電流を前記温度調整素子に供給するように構成したことを特徴とする超電導磁石装置。
  11. 内容物を超電導状態に冷却できる冷却容器と、該冷却容器中に配置され、予め定められた磁場領域(以下、均一磁場領域という。)にその中心軸に沿った磁束を発生させる電流の保持媒体となる超電導多層体を含む静磁場発生手段と、該静磁場発生手段を前記冷却容器中に保持する保持手段とを含み、前記超電導多層体が温度調節素子を有する超電導磁石装置において、前記静磁場発生手段を先ず誘導着磁にて着磁した後、前記温度調節素子に流す電流値を制御して前記超電導多層体の温度を超電導状態を保持する範囲内で調節することにより、前記誘導着磁値が所望の範囲に納まるように調整することを特徴とする超電導磁石装置の着磁調整方法。
  12. 請求項11記載の超電導磁石装置の着磁調整方法において、予め予備誘導着磁を行い、その着磁結果に基づき誘導着磁の磁場設定値の変更を行い、その変更設定値に従って最終誘導着磁を行うことにより、誘導着磁後の着磁値の調整を省略したことを特徴とする超電導磁石装置の着磁調整方法。
  13. 請求項11記載の超電導磁石装置の着磁調整方法において、最初の誘導着磁における磁場設定値を所望の着磁値より高い値に設定して、着磁した後に、前記超電導多層体をその温度−臨界電流密度特性に合わせて加温し、該加温温度を調節することにより着磁値を低下させて、所望の着磁値を得ることを特徴とする超電導磁石装置の着磁調整方法。
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