JP3704172B2 - キレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体及 びその用途 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩、該化合物から誘導される放射性金属錯体、及びその錯体を含有してなるヒトを含む哺乳動物の脳及び心臓のイメージングに有用な新規な放射性診断剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
放射性同位元素により標識された化合物は、従来から画像診断を目的にイメージング剤として使用されてきている。これらの標識には、体内の組織や器官を透過する放射線を放出するものでなければならず、ガンマ線、X−線又はポジトロン放射線を放出する放射性同位元素が用いられている。
【0003】
これらの条件を満たす好ましい放射性同位元素として、ヨウ素−123及びテクネチウム−99m(以下99m Tcという)等をあげることができる。特に、99m Tcは、放出するガンマ線のエネルギーが140KeVと汎用的に利用しうる放射線イメージング装置におけるシンチグラム像にも適し、特定臓器の描出、特定疾患の検出、及び動態検査を目的とした核医学領域において、その半減期が6時間と適当である上、ジェネレーターの普及により容易にしかも安価に入手できるという利点を有していることから、特に好ましい放射性同位元素ということができる。
【0004】
99m Tc錯体を用いた脳を標的器官としたインビボイメージング用放射性診断剤としては、特開昭61−143351号公報に記載されているプロピルアミンオキシムの99m Tc錯体、心臓を標的器官としたものについては、特開昭62−201363号公報に記載されているエーテルイソニトリルの99m Tc錯体があげられるが、これらの錯体は、脳及び心臓の両方を標的器官とするものではなかった。
【0005】
特開平4−91073号公報には、フェニルジアミノジチオール誘導体の99m Tc錯体が記載され、これらの多くが高い脳集積と高い心臓集積を示すことが記載されている。しかし、J.Med.Chem. (B.J.Mcbride et al, 第 36 巻, 81-86 頁, 1993年) には、フェニルジアミノジチオール誘導体の99m Tc錯体のラットにおける体内分布について、脳及び心臓へは高い集積を認めるが、主たる集積臓器は肝臓であり、そのクリアランスが緩徐であったと記載されている。
【0006】
即ち、該錯体の体内動態について、脳及び心臓に高い集積性を示しているが、肝臓への集積も40%以上の値を示しており、心臓のイメージング用製剤としては肝臓への集積性が高いという問題点を有することを示している。更に、99m Tcが有する優れた物理学的特性を生かすためにも、速やかに代謝されて体外に排泄されることは、患者の被曝の観点からも重要な課題であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術のキレート形成性化合物と99m Tc等の放射性同位元素からなる放射性金属錯体が、脳又は心臓のみを標的器官とする製剤であること、更に、脳及び心臓の両方を標的器官とする製剤でも心臓イメージング剤として必要な肝臓への低い集積が満たされていない状況に鑑み、投与後速やかに脳及び心臓に取り込まれ、イメージ撮像に適当な時間、脳内及び心臓内に保持され、錯体調製後の安定性も高く、生体内投与後における血液レベルが低く、更に肝臓からのクリアランスも良好であるヒトを含む哺乳動物の脳及び心臓をイメージングするのに有用なキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩、該化合物と放射性金属からなる放射性金属錯体、及びその錯体を含有してなる放射性診断剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
で示される構造を有するキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩(式1中、Rはヘテロ原子を含む基である。)であり、該化合物と放射性金属よりなる放射性金属錯体、及びその錯体を含有してなる放射性診断剤である。
【0009】
式1中のRとしては、例えば下記の式2〜5で示されるヘテロ原子を含む基があげられる。Rが、式2
(式2中、nは0〜5の整数、mは0〜4の整数ならびにkは0〜1の整数である。)
で表される場合、好ましくはn=1〜4、m=0〜4及びk=0〜1であり、特に好ましくはn=2〜3、m=0〜2及びk=0〜1である。更に具体的には、1−(2−(2−メトキシエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン)、1−(2−(3−メトキシプロピル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン)、1−(2−(2−エトキシエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン)、1−(2−(4−メトキシブチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン)、1−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン)等のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩をあげることができる。
【0010】
式1中のRが、式3
(式3中、nは0〜5の整数である。)
で表される場合、好ましくはn=1〜3であり、特に好ましくはn=1である。更に具体的には、1−(2−シアノメチルチオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン又はその塩をあげることができる。
【0011】
式1中のRが、式4
(式4中、nは0〜5の整数、mならびにlは0〜4の整数である。)
で表される場合、好ましくはn=1〜3、m=0〜2及びl=0〜2であり、特に好ましくはn=2、m及びl=0である。更に具体的には、1−(2−(2−ジメチルアミノエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン又はその塩をあげることができる。
【0012】
式1中のRが、式5
(式5中、nは0〜5の整数、mは0〜4の整数である。)
で表される場合、好ましくはn=1〜3、m=1〜3であり、特に好ましくはn=1、m=1である。更に具体的には、1−(2−エトキシカルボニルメチルチオ−2−メチルプロピルアミノ)−(2−メルカプト−2−メチルアミン)ベンゼン又はその塩をあげることができる。
【0013】
式1のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体の塩としては、塩酸塩、酢酸塩等が含まれる。又、該化合物は、放射性金属と反応させ放射性金属標識錯体を得ることができる。特に、放射性医薬品として好ましい放射性同位元素である99m Tc錯体は、過テクネチウム酸ナトリウム(99m Tc)溶液と式1で示されるキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩を塩化第一スズ等の還元剤との共存下、反応させることにより得ることが可能である。この99m Tc錯体は、
【0014】
【化11】
で示されると考えられる。
【0015】
式6中、Rは前記の式2〜式5で表されるヘテロ原子を含む基である。
【0016】
一般に脳イメージング製剤としての特徴は、中性の錯体であること、高脂溶性の錯体であること、分子量400〜500程度の錯体であること等があげられる。一方、心臓イメージング製剤としての99m Tc錯体の特徴は、従来技術の比較から、高い脂溶性を有する錯体であり、かつ主なバックグランドとなる肝臓への集積を抑え、肝臓からのクリアランスを促進させることを目的にアルコキシル基を含有することをあげることができる。
【0017】
本発明は、先述した特開平4−91073号公報のフェニルジアミノジチオール誘導体の99m Tc錯体のもつ脳及び心臓への高い集積性に加え、肝臓への集積を抑制し、かつ肝臓からのクリアランスを促進させるために、該フェニルジアミノジチオール誘導体の側鎖にアルコキシル基を含むヘテロ原子を有する官能基を導入したものである。
【0018】
当該キレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体及びその塩は、放射性金属と容易に錯体を形成する性質を有するものであり、得られたその錯体は、実施例に示すように調製後24時間まで安定であり、優れた安定性を有するものである。更にボーラス投与による静脈注射等の一般的に用いられる非経口投与における、生体内での安定性にも優れ、化合物自身の毒性も極めて低いという放射性診断剤としての目的を達成しうる優れた性質を有するものである。
【0019】
更に、本発明の99m Tc錯体は局所的脳血流分布及び局所的心臓血流分布が一定し、シンチグラム撮像に適当な時間、脳内もしくは心臓内に保持される。又、血液中の放射能濃度が極めて低いうえ、肝臓への集積も低く、クリアランスも良好なことから、一投与当たり多量の放射能の適用が可能であるうえ、脳/血液比も従来技術と比べ数倍であるなど、高感度な血流を反映したイメージング用放射性診断剤として最も好ましい性質を有するものである。
【0020】
以上述べた特性は、本発明のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩の薬学的に容認しえる99m Tc錯体が、脳及び心臓をイメージングするのに有用であることを意味している。式1のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体の典型的な合成経路及び調製方法を図1によって説明する。
【0021】
式1のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体の合成は、出発物質である図1中化合物1の2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタール((1)、以下化合物名に記した番号は、図1中の化合物に付した番号である。)をテトラヒドロフラン(以下、THFという。)溶液に塩酸を加えて加水分解を行い、2−メルカプト−2−メチルプロパナール(2)を得た後、水素化シアノホウ素ナトリウムの存在下、O−フェニレンジアミンとの縮合反応によって、2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン(3)を得る。
【0022】
次に、2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタール(4)とナトリウムメトキシドの存在下、臭化アルキルエーテル等との縮合反応によって、図1中化合物(6)を得る。
【0023】
このようにして得られた式1化合物の中間体2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン(3)と化合物(6)を水素化シアノホウ素ナトリウムの存在下、縮合反応させることにより、目的の式1で表されるキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体を得る。
【0024】
上記のようにして得られた式1のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩は、過テクネチウム酸ナトリウム(99m Tc)溶液と塩化第一スズ又は亜ニチオン酸ナトリウムのような還元剤との共存下、反応させ式6で示される99m Tc錯体を得ることができる。この時、未反応の過テクネチウム酸及び不溶性の放射性不純物は、メンブランフィルター、あるいは液体クロマトグラフィー等により、取り除くことが可能である。
【0025】
本発明のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩は、マクロゴールあるいは2−ヒドロキシ−β−シクロデキストリン(以下、HPCDという。)等の可溶化剤を用いて水溶液にした後、薬学的に許容される適当なレドックス電位を有する通常の還元剤(例えば、塩化第一スズ、亜ニチオン酸ナトリウム及び水素化ホウ素ナトリウム)、安定剤(例えば、アスコルビン酸、p−アミノ安息香酸)、賦形剤(例えば、D−マンニトール)、生成物の放射化学的純度を改良するのに役立つ促進剤(例えば、クエン酸、酒石酸、マロン酸)等とともに用時調製用キットの形態でも提供が可能である。
【0026】
尚、本発明の放射性診断剤は、ボーラス投与による静脈注射等の一般的に用いられる非経口手段により投与することができ、その投与量は、患者の体重、年令及び適当な放射線イメージング装置等の諸条件を考慮し、イメージングが可能と考えられる放射能が決定される。ヒトを対象とする場合、通常は5〜30mCiの範囲が好ましい。以下、実施例により、本発明を更に具体的に説述する。
【0027】
【実施例】
(実施例1)
2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの合成
2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの3.0g(20.3mmol)をテトラヒドロフラン50.0mlに溶解し、0.5Nの塩酸50.0mlを加え、一晩、加熱還流した。放冷後、水層をエーテルで抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を常圧で留去した。得られた2−メルカプト−2−メチルプロパナールは、未精製のまま次の反応に供した。
【0028】
O−フェニレンジアミンの3.29g(30.5mmol)をメタノール150mlに溶解し、上記で得られた2−メルカプト−2−メチルプロパナールを室温で滴下した。滴下終了後、酢酸6.09g(102mmol)を加え、室温で30分攪拌後、水素化シアノほう素ナトリウム6.38g(102mmol)を加え、更に室温で一晩攪拌を続けた。反応終了後、メタノールを減圧留去し、水を加えクロロホルムで抽出、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム)により精製し、目的物である2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの890mg(収率22.4%)を淡褐色結晶として得た。
【0029】
(実施例2)
2−(2−メトキシエチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの合成。
2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの1.48g(10.0mmol)をメタノール50.0mlに溶解し、2−ブロモエチルメチルエーテルの1.39g(10.0mmol)、及びナトリウムメトキシドの1.08g(20.0mmol)を加え、7.5時間加熱還流した。反応終了後、メタノールを減圧留去し、水を加えクロロホルムで抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)により精製し、目的物である2−(2−メトキシエチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの1.62g(収率78.5%)を黄色油状物として得た。
【0030】
(実施例3)
1−(2−(2−メトキシエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの合成。
実施例2で得た2−(2−メトキシエチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの262mg(1.27mmol)をTHF10.0mlに溶解し、0.5Nの塩酸2.0mlを加え、2時間加熱還流した。放冷後、水層をエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた2−(2−メトキシエチル)チオ−2−メチルプロパナールは、未精製のまま次の反応に供した。
【0031】
実施例1で得た2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン250mg(1.27mmol)をメタノール20.0mlに溶解し、前記で得られた2−(2−メトキシエチル)チオ−2−メチルプロパナールを室温で滴下した。滴下終了後、酢酸0.3ml(5.24mmol)を加え、室温で30分攪拌後、水素化シアノほう素ナトリウム400mg(6.37mmol)を加え、室温でさらに一晩攪拌を続けた。反応終了後、メタノールを減圧留去し、水を加えクロロホルムで抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。粗生成物を分取用シリカゲル薄層クロマトグラフィー(薄層板:シリカゲル60F254 、展開溶媒:クロロホルム)により精製し、目的物である1−(2−(2−メトキシエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの348mg(収率80.1%)を無色油状物として得た。
【0032】
本化合物の270MHzにおけるプロトンNMR(溶媒:重クロロホルム)の帰属は以下の通りである。
6.81〜6.65ppm(4H,m,PhH)、4.11ppm,3.89ppm(各1H,bs,NH)、3.48ppm(2H,t,OCH2 )、3.30ppm(3H,s,OCH3 )、3.12ppm,3.03ppm(各2H,s,NCH2 )、2.67ppm(2H,t,SCH2 )、1.84ppm(1H,s,SH)、1.50ppm,1.43ppm(各6H,s,CH3 )。
【0033】
(実施例4)
2−(3−メトキシプロピル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの合成。
実施例2と同様の操作法により、2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの1.48g(10.0mmol)、及び3−ブロモプロピルメチルエーテルの1.53g(10.0mmol)から合成し、目的物である2−(3−メトキシプロピル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの1.91g(収率86.7%)を無色油状物として得た。
【0034】
(実施例5)
1−(2−(3−メトキシプロピル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの合成。
実施例3と同様の操作法により、2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの250mg(1.27mmol)、及び2−(3−メトキシプロピル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの280mg(1.27mmol)から合成し、目的物である1−(2−(3−メトキシプロピル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの280mg(収率61.8%)を無色油状物として得た。
【0035】
本化合物の270MHzにおけるプロトンNMR(溶媒:重クロロホルム)の帰属は以下の通りである。
6.81〜6.64ppm(4H,m,PhH)、4.11ppm,3.88ppm(各1H,bs,NH)、3.41ppm(2H,t,OCH2 )、3.28ppm(3H,s,OCH3 )、3.11ppm,3.02ppm(各2H,s,NCH2 )、2.53ppm(2H,t,SCH2 )、1.83ppm(1H,s,SH)、1.78ppm(2H,qui,SCH2 CH 2 CH2 O)、1.50ppm,1.42ppm(各6H,s,CH3 )。
【0036】
(実施例6)
2−(3−エトキシエチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの合成。
実施例2と同様の操作法により、2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの1.48g(10.0mmol)、及び2−ブロモエチルエチルエーテルの1.53g(10.0mmol)から合成し、目的物である2−(3−エトキシエチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの1.42g(収率64.4%)を無色油状物として得た。
【0037】
(実施例7)
1−(2−(2−エトキシエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの合成。
実施例3と同様の操作法により、2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの250mg(1.27mmol)、及び2−(3−エトキシエチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの280mg(1.27mmol)から合成し、目的物である1−(2−(2−エトキシエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの297mg(収率65.6%)を無色油状物として得た。
【0038】
本化合物の270MHzにおけるプロトンNMR(溶媒:重クロロホルム)の帰属は以下の通りである。
6.82〜6.63ppm(4H,m,PhH)、4.10ppm,3.88ppm(各1H,bs,NH)、3.51ppm(2H,t,OCH 2 CH2 )、3.45ppm(2H,q,OCH 2 CH3 )、3.11ppm,3.03ppm(各2H,s,NCH2 )、2.67ppm(2H,t,SCH2 )、1.83ppm(1H,s,SH)、1.50ppm,1.42ppm(各6H,s,CH3 )、1.15ppm(3H,t,OCH2 CH 3 )。
【0039】
(実施例8)
2−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの合成。
実施例2と同様の操作法により、2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの1.48g(10.0mmol)、及び1−ブロモ−2−(2−メトキシエトキシ)エタンの1.83g(10.0mmol)から合成し、目的物である2−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの2.05g(収率81.9%)を無色油状物として得た。
【0040】
(実施例9)
1−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの合成。
実施例3と同様の操作法により、2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの250mg(1.27mmol)、及び2−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの318mg(1.27mmol)から合成し、目的物である1−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン390mg(収率79.4%)を無色油状物として得た。
【0041】
本化合物の270MHzにおけるプロトンNMR(溶媒:重クロロホルム)の帰属は以下の通りである。
6.82〜6.64ppm(4H,m,PhH)、4.0ppm(2H,bs,NH)、3.59〜3.46ppm(6H,m,OCH2 )、3.34ppm(3H,s,OCH3 )、3.11ppm,3.02ppm(各2H,s,NCH2 )、2.69ppm(2H,t,SCH2 )、1.83ppm(1H,s,SH)、1.50ppm,1.42ppm(各6H,s,CH3 )。
【0042】
(実施例10)
2−(4−メトキシブチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの合成。
実施例2と同様の操作法により、2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの1.48g(10.0mmol)、及び4−クロロブチルメチルエーテル1.23g(10.0mmol)から合成し、目的物である2−(4−メトキシブチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの1.80g(収率76.8%)を無色油状物として得た。
【0043】
(実施例11)
1−(2−(4−メトキシブチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの合成。
実施例3と同様の操作法により、2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン250mg(1.27mmol)、及び実施例10で得た2−(4−メトキシブチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタール323mg(1.27mmol)から合成し、目的物である1−(2−(4−メトキシブチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン387mg(収率82.7%)を無色油状物として得た。
【0044】
本化合物の270MHzにおけるプロトンNMR(溶媒:重クロロホルム)の帰属は以下の通りである。
6.80〜6.64ppm(4H,m,PhH)、4.32ppm(2H,t,J=6Hz,−CH 2 OCH3 )、3.28ppm(3H,s,−OCH3 )、3.10ppm,3.00ppm(各2H,s,−NHCH 2 −)、4.09ppm,3.89ppm(各1H,brs,−NHCH2 −)、2.46ppm(2H,t,J=7Hz,−SCH2 −)、1.83ppm(1H,s,−SH)、1.65〜1.56ppm(4H,m,−SCH2 CH 2 CH 2 CH2 OCH3 )、1.50ppm,1.41ppm(各6H,s,CH3 )。
【0045】
(実施例12)
2−(2−ジメチルアミノエチル)チオ−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの合成。
2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの270mg(1.82mmol)、及び1−ジメチルアミノ−2−クロロエタン塩酸塩263mg(1.83mmol)をエタノール2.0mlと2Nの水酸化ナトリウム溶液2.0mlの混合溶液に加え、4時間還流した。溶媒を留去した後、塩酸を加え未反応物をベンゼンで抽出し、除去した。塩酸液は、炭酸水素ナトリウムを加え液性をアルカリ性とした後、クロロホルムで目的物を抽出した。クロロホルム層は、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去し、油状の目的物である2−(2−ジメチルアミノエチル)チオ−2−メチルプロパナールエチレンアセタールの160mg(収率40.0%)を得た。
【0046】
(実施例13)
1−(2−(2−ジメチルアミノエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの合成。
実施例3と同様の操作法により、2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの74.0mg(0.38mmol)、及び2−(2−ジメチルアミノエチル)チオ−2−メチルプロパナールの65.9mg(0.38mmol)から合成し、目的物である1−(2−(2−ジメチルアミノエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの47.0mg(収率38.0%)を油状物として得た。
【0047】
(実施例14)
2−シアノメチルチオ−2−メチルプロパナールの合成。
2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの134mg(0.91mmol)を0.5Nの塩酸3.0mlとTHFの3.0mlの混合液に加え、4時間還流した。反応後生成する2−メルカプト−2−メチルプロパナールは、クロロホルムで抽出し、これにシアノメチルブロマイド108mg(0.90mmol)、及びトリエチルアミン91.0mg(0.90mmol)を加え、室温下で5分間攪拌した。反応液は塩酸酸性とし、クロロホルムで目的物である2−シアノメチルチオ−2−メチルプロパナールを抽出した。この粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ベンゼン)により精製し、84.0mg(収率65.0%)の2−シアノメチルチオ−2−メチルプロパナールの精製物を得た。
【0048】
(実施例15)
1−(2−シアノメチルチオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの合成。
実施例14で得た2−シアノメチルチオ−2−メチルプロパナールの67.0mg(0.47 mmol)、2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの92.0mg(0.47mmol)、及び酢酸165mg(2.75mmol)相当をメタノール10.0mlに加え、室温で30分間攪拌した。反応後、水素化シアノほう素ナトリウム86.0mg(1.37mmol)を添加し、反応を停止させた。反応後の溶媒を留去した後、残渣に水を加え、更にこれをクロロホルムで抽出した。得られた粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム)で精製し、目的物である1−(2−シアノメチルチオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの113mg(収率75.0%)を得た。
【0049】
(実施例16)
2−エトキシカルボニルメチルチオ−2−メチルプロパナールの合成。
実施例14と同様の操作法により、2−メルカプト−2−メチルプロパナール−エチレン−アセタールの973mg(6.57mmol)、及びエチルブロモアセテートの1100mg(6.59mmol)から合成し、目的物である2−エトキシカルボニルメチルチオ−2−メチルプロパナールの778mg(収率62.0%)を得た。
【0050】
(実施例17)
1−(2−エトキシカルボニルメチルチオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの合成。
実施例15と同様の操作により、2−エトキシカルボニルメチルチオ−2−メチルプロパナールの73.0mg(0.38mmol)、及び2−アミノ−1−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの75.0mg(0.38mmol)から、目的物である1−(2−エトキシカルボニルメチルチオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの98.0mg(収率69.0%)を得た。
【0051】
(実施例18)
1−(2−(2−メトキシエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの99m Tc錯体の調製。
実施例3で得られた1−(2−(2−メトキシエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチル−プロピルアミノ)ベンゼン(以下リガンド−1という。)をエタノールに溶解し、1.0mMの濃度とした。この液0.5mlに対し、市販のジェネレーターより溶出した30mCi/mlの過テクネチウム酸ナトリウム(99m Tc)注射液0.45ml及び0.3mMの塩化第一スズ溶液0.05mlを加え、混合し、室温で約30分間放置した。その後、0.22μmのメンブランフィルターでこの調製液を濾過した。この調製液の純度は、メタノール/水=9/1を展開溶媒としてC18ODS薄層板を用いたTLCで分析した。この時、標識錯体のRf値は0.41であり、その純度は95%であった。又、この99m Tc標識調製液をHPLC(ODSカラム:φ4.6×150mm,溶離液:80%エタノール,流速:0.7ml/min)で分析したところ、Rt4.4分にメインピーク(99%)が認められた。
【0052】
(実施例19)
1−(2−(3−メトキシプロピル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの99m Tc錯体の調製。
実施例5で得られた1−(2−(3−メトキシプロピル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン(以下、リガンド−2という。)をエタノールに溶解し、0.5mMの濃度とした。以下、実施例18と同様の操作法で、99m Tc標識調製液を得た。この標識錯体を実施例18と同様のTLCで分析したところ、Rf値0.36にメイン成分が認められ、その純度は95%であった。又、実施例18と同様のHPLCによる分析では、Rt4.9分にメインピーク(98%)が認められた。
【0053】
(実施例20)
1−(2−(2−エトキシエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの99m Tc錯体の調製。
実施例7で得られた1−(2−(2−エトキシエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン(以下、リガンド−3という。)をエタノールに溶解し、0.5mMの濃度とした。以下、実施例18と同様の操作法で、99m Tc標識調製液を得た。この標識錯体を実施例18と同様のTLCで分析したところ、Rf値0.35にメイン成分が認められ、その純度は97%であった。又、実施例18と同様のHPLCで分析したところ、Rt5.1分にメインピーク(99%)が認められた。
【0054】
(実施例21)
1−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの99m Tc錯体の調製。
実施例9で得られた1−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン(以下、リガンド−4という。)をエタノールに溶解し、0.5mMの濃度とした。以下、実施例18と同様の操作法で、99m Tc標識調製液を得た。この標識錯体を実施例18と同様のTLCで分析したところ、Rf値0.41にメイン成分が認められ、その純度は91%であった。又、実施例18と同様のHPLCで分析したところ、Rt4.9分にメインピーク(100%)が認められた。
【0055】
(実施例22)
1−(2−(4−メトキシブチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの99m Tc錯体の調製。
実施例11で得られた1−(2−(4−メトキシブチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン(以下、リガンド−5という。)をエタノールに溶解し、0.5mMの濃度とした。以下、実施例18と同様の操作法で、99m Tc標識調製液を得た。この標識錯体を実施例18と同様のTLCで分析したところ、Rf値0.41にメイン成分が認められ、その純度は95%であった。又、実施例18と同様のHPLCで分析したところ、Rt4.9分にメインピーク(100%)が認められた。
【0056】
(実施例23)
1−(2−(2−ジメチルアミノエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの99m Tc錯体の調製。
実施例13で得られた1−(2−(2−ジメチルアミノエチル)チオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン(以下、リガンド−6という。)0.3mgを1.5mlのエタノールに溶解し(0.56mM)、これに市販のジェネレーターより溶出した30mCi/mlの過テクネチウム酸ナトリウム(99m Tc)注射液1.5ml、及び1.0mMの塩化第一スズ溶液0.1mlを加え、混合し、室温で約30分間静置した。更に、この調製液1容量を4容量の5.0%ヒト血清アルブミン溶液に添加し、最終調製液を得た。この調製液の純度は、酢酸エチル/メタノール/水/アンモニア水=86/10/4/1を展開溶媒としてシリカゲル薄層板を用いたTLCで分析した。この時、標識錯体のRf値は0.55で、その純度は97%であった。
【0057】
(実施例24)
1−(2−シアノメチルチオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの99m Tc錯体の調製。
実施例15で得られた1−(2−シアノメチルチオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン(以下、リガンド−7という。)を実施例23と同様の操作法で99m Tc標識調製液を得た。この標識錯体を実施例23と同様のTLCで分析したところ、Rf値0.9にメイン成分が認められ、その純度は92%であった。
【0058】
(実施例25)
1−(2−エトキシカルボニルメチルチオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼンの99m Tc錯体の調製。
実施例17で得た1−(2−エトキシカルボニルメチルチオ−2−メチルプロピルアミノ)−2−(2−メルカプト−2−メチルプロピルアミノ)ベンゼン(以下、リガンド−8という。)0.3mgを1.5mlのエタノール溶解した。次にグルコヘプタネート1.0mgを酢酸緩衝液(pH5.6)0.5mlに溶解し、これに市販のジェネレーターから溶出した30mCi/mlの過テクネチウム酸ナトリウム(99m Tc)注射液1.0ml、及び1.0mMの塩化第一スズ溶液0.05mlを加えた。この溶液に予め調製しておいたリガンド−8エタノール溶液全量を添加し、室温で約30分間静置した。更に、この調製液1容量を4容量の5.0%ヒト血清アルブミン溶液に添加し、最終調製液を得た。この標識錯体を、実施例23と同様のTLCで分析したところ、Rf値0.9にメイン成分が認められ、その純度は、95%であった。
【0059】
(実施例26)
99m Tc錯体のラットにおける体内動態。
実施例18で調製したリガンド−1−99m Tc溶液、実施例19で調製したリガンド−2−99m Tc溶液、実施例20で調製したリガンド−3−99m Tc溶液、実施例21で調製したリガンド−4−99m Tc溶液及び実施例22で調製したリガンド−5−99m Tc溶液の投与後5分、30分及び60分のラットにおける体内動態の結果を下記の表1、表2、表3、表4及び表5に示した。
【0060】
ラットは、SD系雌ラット(170〜240g体重)を用い、チオペントバルビタールナトリウム注射液を腹腔内に投与して麻酔を施し、各調製液100μlを尾静脈より投与し、直ちに尿道口を鉗子でクランプして静置した。又、各測定点ごとにラットを開腹し、ヘパリン処理を施した注射筒及び注射針を用いて腹大動脈から採血(5〜9ml)することにより屠殺し、直ちに脳、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、内容物を含む胃、小腸、大腸、膀胱、尿及び残全身に解剖した。摘出した臓器は、尿を除き重量を測定し、放射能を計数した。尚、尿と膀胱は一括して測定した。
【0061】
99m Tc錯体は、いずれも投与直後から速やかに脳に集積し、高い脳移行性を示した。その後、放射能は緩やかに脳から洗い出されるが、その速度は緩徐であった。又、リガンド−2−99m Tc錯体を除き、全ての99m Tc錯体は、投与後5分には心臓へ1.0%/臓器以上集積し、好ましい心臓集積を示した。他の臓器では、投与後初期においては、肝臓への高い集積が認められたが、その値は経時的に減少し、代わって小腸の放射能が増加した。この事は、該錯体は体内には蓄積されず、肝胆道系を介し、糞中に排泄される事を示すものと判断された。更に、特徴的であるのは、リガンド−2−99m Tc錯体を除き、脳/血液比が投与直後から1.0以上を示しており、特にリガンド−1−99m Tc錯体は、投与後30分において約4以上の値を示した。この結果より、脳を標的器官とした場合、主なバックグランドとなる血液の放射能が低く、良いコントラストの画像が得られることが示唆された。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
(実施例27)
リガンド−1を用いた用時調製用キットの製造。
100mlの三角フラスコに実施例3で合成したリガンド−1の14.7mg(0.043mmol)を加え、0.5mlのエタノールに溶解した。この中にHPCDの5.0gを溶解した水溶液50mlを添加し、ボルテックスミキサーで5分間攪拌した。次にL−アスコルビン酸43.6mg(0.25mmol)、及び10mMに調製した塩化第一スズ溶液を1.0ml加えた。この混合物をメンブランフィルターで濾過して、0.5mlずつアルゴン置換した3.5mlのバイアルに分注し、液体窒素を用いて急速凍結し、冷凍庫にて保存した。尚、水はアルゴン気流下、脱気した無菌水を用い、全ての操作はクリーンベンチ内アルゴン気流下で行った。
【0068】
(実施例28)
用時調製用キットを用いた99m Tc錯体の調製。
実施例27で製造した凍結キットを室温下で解凍した後、これに市販のジェネレーターより溶出した40mCi/mlの過テクネチウム酸ナトリウム(99m Tc)注射液0.5mlを加え、攪拌した後、室温下で静置した。99m Tc錯体の純度は、メタノール/水=9/1を展開溶媒としてC18ODS薄層板を用い、分析した。この時、標識錯体のRf値は約0.4で、調製後24時間まで95%以上の純度であった。
【0069】
(実施例29)
用時調製用キットを用いて調製した99m Tc錯体のラットにおける体内動態。市販されているジェネレーターより溶出した過テクネチウム酸ナトリウム(99m Tc)注射液に適当量の生理食塩水を加え、放射能濃度が3mCi/ml程度になるように調製した。その後の操作は、実施例28に則って、99m Tc錯体を得、実施例26に示した方法でラットに投与した。結果を表6に示した。表1に示した50%エタノール溶液と比較して、脳への取り込み、及び他の臓器への分布に差は認められなかった。
【0070】
【表6】
【0071】
(実施例30)
用時調製用キットを用いて調製した99m Tc錯体のラット脳のオートラジオグラフィー。
実施例28記載の方法で調製した99m Tc錯体溶液20mCi/mlを用い、予めチオペントバルビタールで麻酔を施したSD系雌ラット(200g前後)の尾静脈より0.3ml投与した。投与後5分に脱血し、脳を摘出した。脳周辺部の血液を軽く拭き取り、粉状ドライアイスで凍結させた。この後、クリオスタット(Jung社, FRIGOCUT 2800E)にて、10μmの凍結切片を作製し、X線フィルム(コニカ, NewA)と接触させ、−20℃で3日間露光させた。フィルムの現像は通常の方法で行った。得られた投与後5分点での画像は、鮮明であり脳血流を反映しているものと判断された。結果を図2に示した。
【0072】
(実施例31)
99m Tc錯体の血液脳関門透過性の比較。
物質の血液脳関門の透過性を評価できるインビトロ系として公知の初代培養牛脳毛細血管内皮細胞系を用い、実施例28で調製した99m Tc錯体の血液脳関門透過性を一般的に脳血流診断剤として用いられている99m Tc−ヘキサメチルプロピレンアミンオキシムと比較評価した。その結果を表7に示した。
【0073】
実施例28で調製した標識体の血液から脳方向への透過速度は、該標識体よりも脂溶性の低い99m Tc−ヘキサメチルプロピレンアミンオキシムの1/6と低い値を示した。又、20分間の細胞内蓄積量は、両者ともほぼ同程度の値を示した。以上の結果より、実施例28で調製した99m Tc錯体は単純拡散で脳毛細血管管腔側膜を透過するが、内皮細胞内にとどまっている割合が、99m Tc−ヘキサメチルプロピレンアミンオキシムに比べ多いと考えられた。
【0074】
一般に、化合物が血液脳関門を透過して脳細胞間液中に移行すれば脳内での拡散や代謝等といった脳内動態を考慮しなければならないが、実施例28で調製した99m Tc錯体は、上記のように脳細胞間液中への移行量が少なく、内皮細胞内に蓄積される特性を有していることから、脳血流のイメージング用診断剤として有用であると考えられた。
【0075】
【表7】
【0076】
(実施例32)
用時調製用キットを用いて調製した99m Tc錯体のジエチルエーテル麻酔下におけるラット体内動態。
予めジエチルエーテルを吸引させて麻酔を施したSD系雌ラット(180〜200g体重)に、実施例29に則って得られた99m Tc錯体の調製液100μlを尾静脈より投与し、直ちにラット用代謝ゲージに移動させた。この中で測定点まで飼料及び水を自由に与え、飼育し、尿及び糞を分別採取した。各測定点の直前に再びジエチルエーテル麻酔し、測定点でラットを開腹し、ヘパリン処理を施した注射筒及び注射針を用いて腹大動脈から採血することにより、屠殺し、脳、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、内容物を含む胃、小腸、大腸、膀胱、尿、糞及び残全身に解剖した。摘出した臓器は、尿及び糞を除き重量を測定し、放射能を計数した。尚、尿と膀胱は一括して測定した。表8及び9に投与後6分、30分、1時間、3時間、6時間、15時間及び24時間のラットにおける体内動態の結果を示した。
【0077】
標識体は、投与直後から速やかに脳に集積し、高い脳移行性を示した。その後、放射能は速やかに脳から洗い出されるが、その速度は緩徐であった。又、肝臓からのクリアランスは速く、投与後24時間には糞中へ78.1%排泄された。このことから標識体は、投与後、体内に蓄積されることなく速やかに肝胆道系を介して糞中に排泄される性質を有することが示唆された。
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
(実施例33)
99m Tc錯体のラットにおける体内動態。
実施例23で調製したリガンド−6−99m Tc溶液、及び実施例24で調製したリガンド−7−99m Tc溶液を実施例26記載の方法でラットに投与した。投与後5分点及び30分点における体内動態の結果を表10及び11に示した。
【0081】
リガンド−6−99m Tc錯体は、投与直後から速やかに脳に集積し、高い脳移行性を示した。その後、放射能は緩やかに脳から洗い出されるが、その速度は緩徐であった。他の臓器では投与後初期において、肝臓への高い集積が認められたが、その値は経時的に減少し、代わって小腸の放射能が増加した。これは該標識体が、体内には蓄積されず、肝胆道系を介し、糞中に排泄されることを示すものと判断された。
【0082】
リガンド−7−99m Tc錯体は、投与後速やかに心臓に集積し、集積した放射能が貯留する性質が認められた。
【0083】
【表10】
【0084】
【表11】
【0085】
(実施例34)
Tc錯体の安全性。
放射能的に減衰したTcを用いて実施例28に示した方法に準じ、Tc錯体を調製した。この被験液をラットに1.0ml/kg体重(推定される臨床用量の60倍)を静脈内に投与した。この結果、死亡例はなく、解剖所見、遅状所見とも以上は見られず、本錯体の高い安全性が確認された。
【0086】
【発明の効果】
本発明のフェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩により、放射性金属錯体の調製後における高い安定性、投与後速やかな脳及び心臓への取り込み、取り込み後の適当な保持時間、投与直後の肝臓への30%以下の低い集積性、生体内投与後における低い血液レベル及び肝胆道系を介し、速やかに糞中に排泄される性質等、ヒトを含む哺乳動物の脳及び心臓をイメージングするのに必要な要件を備えたキレート形成性化合物、該化合物と放射性同位元素からなる錯体、及び該錯体を含有してなる放射性診断剤の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明化合物の典型的な合成経路図。
【図2】リガンド−1−99m Tc錯体の投与後5分点でのラット脳(海馬部)におけるオートラジオグラフィー(生物の形態)。
【図3】リガンド−1−99m Tc錯体の投与後5分点でのラット脳(線状体部)におけるオートラジオグラフィー(生物の形態)。
【図4】リガンド−1−99m Tc錯体の投与後5分点でのラット脳(小脳)におけるオートラジオグラフィー(生物の形態)。
Claims (9)
- 式2が、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシエチル、メトキシブチル又はメトキシエトキシエチルのいずれかである請求項1記載のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩。
- 式3が、シアノメチルである請求項1記載のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩。
- 式4が、ジメチルアミノエチルである請求項1記載のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩。
- 式5が、エトキシカルボニルメチルである請求項1記載のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩。
- 請求項1〜5いずれかに記載のキレート形成性フェニルジアミノジチオール誘導体又はその塩と放射性金属からなる放射性金属錯体。
- 請求項6記載の放射性金属錯体を含有してなる放射性診断剤。
- 放射性金属がテクネチウム−99mである請求項7記載の放射性診断剤。
- 放射性金属がテクネチウム−99mである請求項6記載の放射性金属錯体。
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