JP3704070B2 - 超音波探傷装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、試験体中の傷を検出するための超音波探傷装置に関するもので、ラム波を試験体中に送信して試験体中の傷からの反射信号を受信することにより、傷の有無や大きさや位置を検出するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の超音波探傷装置としては、特表平10−507530号公報に示されているものがある。特表平10−507530号公報では、管の軸方向に沿う単一方向に、単一モードラム波を送信して、受信信号を分析することから管の状態を診断している。
【0003】
図22は、特表平10−507530号公報に示されている送信方法を説明するための説明図であり、1は試験体、2は励振アセンブリであり、複数の励振デバイス2a、2bおよび2cからなっている。また、励振デバイス2a、2bおよび2cは、管の周方向に配置された複数の超音波送信子からなっている。
図22においては、励振デバイス2a中の超音波送信子が駆動されることにより、管の軸方向に沿う単一方向に、単一モードラム波をパイプの管軸方向に送信しようとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなラム波を用いた超音波探傷技術では、試験体1の1方向にラム波を長距離にわたって伝播させ、ラム波伝播方向に存在する傷からの信号を検出することを狙いとしている。このような技術においては、数mから時には数10m先の傷からの反射信号を検出する必要がある。このような数mから数10m先に存在する傷からの反射信号は微弱な場合が多い。
【0005】
しかしながら、特表平10−507530号公報に示された超音波探傷装置では、信号対雑音電力比(以下、SN比と称す)を向上させるための信号処理手段を有していなかったので、超音波探傷装置内で生じるシステムノイズや外来ノイズといったノイズが大きい場合に、所望の信号がこのようなノイズに埋もれて検出できないという問題があった。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ラム波を用いた超音波探傷装置において、SN比を向上させることができる超音波探傷装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る超音波探傷装置は、試験体中にラム波を送信しその反射波を受信する1つ以上の送受信子からなる送受信子群と、上記送受信子群に対し信号を送受するための送受信部と、上記送受信部により受信した信号を処理する信号処理部と備え、上記送受信部は、符号変調された系列に基づいて複数個の送信信号を発生する送信信号発生機能と、上記送信信号に対応した受信信号を受信する受信機能とを有し、上記信号処理部は、上記符号系列により規定される参照信号を用いて上記送信信号に対応した受信信号を相関処理する相関処理機能を有するものである。
【0008】
また、上記符号系列は、複数補系列もしくは相補系列であり、上記送受信部は、上記送信信号発生機能により、上記複数補系列もしくは上記相補系列に基づいて複数個の送信信号を発生し、上記受信機能により、上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ受信し、上記信号処理部は、上記相関処理機能により、上記複数補系列もしくは相補系列により規定される複数個の参照信号を用いて上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ相関処理すると共に、複数個の相関処理の結果を加算する加算機能をさらに有するものである。
【0009】
また、上記複数補系列は、各系列の自己相関関数を加算したときは各自己相関関数のサイドローブが打ち消し合わされ、相異なる上記系列同士の相互相関関数の予め定められた組み合わせを加算したときには互いに打ち消し合わされる系列群である。
【0010】
また、上記試験体は、パイプであり、上記複数補系列もしくは上記相補系列の単位ビットに対応する信号が含む周波数帯域は、送信に関する所望のラム波モードが持つ次数より一つ大きい次数を持つラム波モードのカットオフ周波数よりも低いものである。
【0011】
また、上記試験体は、管であり、送信に関する所望のラム波モードは、最低次ねじれモードであり、上記複数補系列もしくは上記相補系列の単位ビットに対応する信号が含む周波数帯域は、最低次よりも次数が1つ大きいねじれモードのカットオフ周波数よりも低いものである。
【0012】
また、上記信号処理部は、上記送受信子群の上記試験体への接触状態をチェックするチェック機能をさらに有するものである。
【0013】
また、上記送受信部は、複数の上記送受信子群から一つの上記送受信子群を送信用として選択し、複数の上記送受信子群から一つ以上の上記送受信子群を受信用として選択して送受信を行う機能と、送信用および受信用の上記送受信子群の選択の組み合わせを変えて複数回の送受信を行う機能とを有し、上記送受信子群全てを送信用として少なくとも1回選択するものである。
【0014】
また、上記信号処理部は、上記チェック機能による、上記送受信子群の上記試験体に対する接触状態のチェックを、送信用として選択された上記送受信子群から、受信用として選択された上記送受信子群へ直接伝播したラム波成分の振幅を用いて行うものである。
【0015】
また、上記信号処理部は、複数のラム波モードから受信における所望のモードを識別するためのモード識別機能を有するものである。
【0016】
また、上記信号処理部は、上記試験体の2つの方向から伝播してきたラム波の内、1つの方向からのラム波を識別する方向識別機能を有するものである。
【0017】
また、上記送受信子群は、上記試験体のラム波伝播方向に沿った2箇所に配置されているものである。
【0018】
また、送信における所望モードのラム波と受信における所望モードのラム波を同じとし、上記所望モードのラム波が上記試験体のラム波伝播方向に沿った2箇所の間を伝播するのに要する時間をτとし、Qを正の整数とした場合、上記複数補系列もしくは上記相補系列の単位ビットに対応する信号のキャリア周波数fは、f=Q/(4τ)である。
【0019】
また、上記送受信子群は、上記試験体のラム波伝播方向に沿った2箇所に配置されており、上記2箇所の配置位置における第一の配置位置に配置された上記送受信子群と、上記2箇所の配置位置における第二の配置位置に配置された上記送受信子群とに同時に送信信号が送信され、上記2箇所の配置位置における第一の配置位置に配置された上記送受信子群に送信される上記送信信号と、上記2箇所の配置位置における第二の配置位置に配置された上記送受信子群に送信される上記送信信号とが、異なる系列に基づいた信号である。
【0020】
さらに、上記複数補系列もしくは上記相補系列の各ビットに対応する信号を、上記2箇所の配置位置における第一の配置位置に配置された上記送受信子群と、上記2箇所の配置位置における第二の配置位置に配置された上記送受信子群とに分けて送信し、上記試験体のラム波伝播方向に沿った1方向について上記複数補系列もしくは上記相補系列に基づいた信号が送信されるものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置について図1から図5を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置の構成を示す図であり、図1(a)はこの発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置の一部の構成を示す図であり、図1(b)はこの発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置の全体構成を示す図である。
【0022】
図1において、1は試験体、3は試験体にラム波を送受信する送受信子、4は1つ以上の上記送受信子からなる送受信子群であり、図1では4a〜4dの4つの送受信子群4が示されている。また、5は送受信部であり、51は送受信部5における送信部、52は送信部5における受信部である。さらに、6は信号処理部、7は表示部、8は制御部、9は傷である。
【0023】
図1において、試験体1は、試験体1に沿ったある方向にラム波が伝播可能なものであり、棒、角柱、円筒等の形状が考えられる。さらに具体的には、電線、鉄道レール、チューブもしくは管といったものが考えられる。この発明は、これら全てに適用可能であるが、以下、試験体1が管の場合に統一して説明を行う。
【0024】
また、この発明において、超音波は、人間の耳に聞こえない程度に高い周波数の音波や弾性波を指す言葉として使われるが、この発明では、周波数は特に規定しないものとする。すなわち、この発明における「超音波」という文言には、人間の耳で聞こえる周波数の上限の限界よりも高い周波数の音波や弾性波に限らず、この上限よりも低い周波数の音波や弾性波も含めた波という意味を含んでおり、無論、人間の耳で聞こえる周波数の下限の限界よりも低い周波数の音波や弾性波という意味も含む。
【0025】
また、この発明における「ラム波」という文言は、「超音波」という文言の持つ意味に含まれ、文献[1](J. L. Rose 著、”Ultrasonic Waves in Solid Media”、Cambridge University Press発行、24頁)に示されている、「Guided Waves」という文言と同じ意味を持っている。
【0026】
試験体1中を伝播するラム波には、複数のモードが存在することが知られており、これらのモードの伝播速度は、周波数に関する分散特性(以下、分散特性と称す)を持っている。その一例として、外径88.7mm、管厚5.5mmのSchedule 40 steel pipeに関する分散特性が文献[2](D. N. Alleyne他著、”The Excitation of Lamb Wames in Pipes Using Dry-Coupled Piezoelectric Transducers”、Journal of Nondestructive Evaluation, Vol. 15, No. 1, pp. 11-20, 1996)に示されている。文献[2]に示されている通り、試験体1が管の場合、ラム波のモードには、ねじれモード(Torsional mode)、縦モード(Longitudinal mode)および曲げモード(Flexural mode)が存在する。なお、この発明におけるラム波伝播速度とは、いわゆる群速度を意味している。
【0027】
図1において、送受信子3は、上記ラム波の送信方向と直交する方向に等間隔で複数配置されている。また、複数の送受信子3は、複数の送受信子群4に分割されている。また、送信部51の出力端子は1つであり、送受信子群4a〜4dに対して同時に送信信号を送信する機能を有する。また、受信部52は送受信子群4a〜4dにそれぞれ並列に接続されている。
【0028】
また、送信部51は、複数補系列に基づいて複数個の送信信号を発生する送信信号発生機能を有し、受信部52は、上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ受信する機能を有する。信号処理部6は、上記複数補系列により規定される複数個の参照信号を用いて上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ相関処理する相関処理機能と、複数個の相関処理の結果を加算する加算機能と、複数のラム波モードから受信における所望のモードを識別するためのモード識別機能とを有している。
【0029】
なお、この発明における「複数補系列」、「複数補系列に基づいて複数個の送信信号を発生」、「参照信号」および「相関処理」という各文言は、特公平7−85076号公報に記載されている「複数補系列」、「複数補系列に基づいて複数個の送信信号を発生」、「参照信号」および「相関処理」という各文言と同じ意味を持つ。
【0030】
なお、分散特性において、送信信号が含む周波数帯域におけるラム波の伝播方向と直交する方向に関するラム波の次数の最大値を求め、ラム波の伝播方向に直交する方向に配置する送受信子3の個数を、この最大値より大きくすることにより、単一モードのラム波を送信できる。このことは、文献[3](D. N. Alleyne他著、”The effect of discontinuities on the long-range propagation of Lamb waves in pipes”、Journal of Process Mechanical Engineering, Part E, Proc Instn Mech Engrs, Vol. 210, No. 3, pp. 217-226, 1996)に示されている。
【0031】
例えば、文献[2]に示された試験体1の分散特性においては、周波数40kHzにおけるラム波の伝播方向と直行する方向に関するラム波の次数の最大値は7である。このとき、周波数40kHz近傍の周波数帯域を含む信号を送信周波数とし、送受信子3の個数を8個以上とすればよい。
【0032】
また、この発明における送信信号が含む周波数帯域とは、例えば送信信号の周波数スペクトルに関する中心周波数成分のレベルに対して予め規定された比率以上のレベルを持つ周波数帯域のことを指す。具体的には、中心周波数成分のレベルに対して予め規定された比率を−40dBとした場合、10波のトーンバースト信号の周波数帯域は、中心周波数の0.8倍から1.2倍の間である。
なお、各送受信子群4に含まれる送受信子3の数は等しくする必要があるので、送受信子3の数は、送受信子群4の数の整数倍としておく。
【0033】
図1においては、送受信子3の個数、送受信子群4の個数の1例として、送受信子3の個数が8であり、送受信子群4の個数が4であり、1つの送受信子群4に含まれる送受信子3の個数が2である場合について示しているが、これらの数は試験体1の外径、管厚および試験体1の材質といった探傷の条件により変えても構わない。
【0034】
表示部7は、信号処理部6における処理結果を表示し、試験体1中の状態、例えば傷の有無、傷の大きさ、傷の位置、傷の形状もしくは試験体1の補修の必要性といった内容を表示する。
【0035】
また、制御部8は、送受信部5、信号処理部6および表示部7に対して制御信号を送受してこれらの動作を司る。制御部8は、送受信部5、信号処理部6および表示部7に接続され、表示部7は信号処理部6に接続され、信号処理部6は送受信部5に接続されている。
【0036】
なお、図1においては、送受信子3は、送信子としての機能と受信子としての機能とを兼ね備えたものである。このような構成とすることで、送信子と受信子とを別途に備える場合と比較して、装置構成を簡略化するとともに装置全体を廉価にできるという効果が生じる。送受信子3および送受信子群4は、試験体1の端部に配置されており、試験体1の1方向に関してラム波を送受する。
【0037】
ここで、図1に示した超音波探傷装置の動作を図2により補足して説明する。
図2は、図1に示した超音波探傷装置の動作に関するフローチャートである。まず、送信に関する1つの所望ラム波モードおよび受信に関する所望のラム波モードを決定する(ステップS1)。送信に関する所望ラム波モードとしては、検出したい傷9の形状について検出しやすい粒子変位パターンを持つモードを選択する。例えば、試験体1のラム波伝播方向に沿った方向に長い形状を持つ傷9の検出には、ねじれモードを選択する。これにより傷9からの反射レベルが大きくなり、傷9を検出しやすくなることが、文献[4](W. Mour他著、”On Inspection of Thin-Walled Tubes for Transverse and Longitudinal Flaws by Guided Ultrasonic Waves”、IEEE Transaction on Sonics and Ultrasonics, Vol. SU-23, No. 5(1976))に示されている。
【0038】
ここでは、送信に関する所望のラム波モードに最低次ねじれモード以外の他のモードを用いても構わないが、最低次ねじれモードは完全に非分散なモード、つまり伝播速度の周波数特性が完全にフラットなモードであるので、長距離にわたって伝播することが可能である。したがって、送信に関する所望のラム波モードに最低次ねじれモードを用いれば、より長い範囲にわたる探傷が可能になるという効果が生じる。
【0039】
以下においては、送信に関する所望のラム波モードに最低次ねじれモードを用いる場合について述べる。このとき、送受信子3にはせん断振動する極性を持つものを用い、最低次ねじれモードを効率よく送信するために、振動方向を、試験体1のラム波伝播方向と直交する方向且つ試験体1の接線方向に沿った方向とすればよい。
【0040】
次に、制御部8から送受信部5、信号処理部6、表示部7を動作させるための制御信号を送信する(ステップS2)。送受信部5において複数補系列の1つを選択し、この補系列に基づいた送信信号を決定し、送信信号を発生する(ステップS3)。このとき、複数補系列の1ビットに対応する信号(以下基本信号よ称す)は、この信号が含む周波数帯域が、最低次よりも次数が1つ大きいねじれモードのカットオフ周波数以下となるものとする。これにより、最低次ねじれモードを送信した際に、他のねじれモードを送信することがなくなる。
【0041】
なお、送信信号波形のパラメータとしては、キャリア周波数、キャリアの繰り返し数(バースト信号のバースト数)およびガウシアンwindow、ハニングwindowといった窓関数の形状等がある。基本信号の具体的例としては、試験体1が外径88.7mm、管厚5.5mmのSchedule 40 steel pipeの場合、周波数40kHzで5波のバースト数を持つガウシアンバースト波形を基本信号とすればよい。
【0042】
送信における所望のラム波モードに分散性のあるモード、例えば最低次縦モードを用いる場合においては、基本信号の持つ周波数帯域が、分散特性における非分散な周波数帯域に含まれるようにする。すなわち、複数補系列もしくは上記相補系列の単位ビットに対応する信号が含む周波数帯域は、送信に関する所望のラム波モードが持つ次数より一つ大きい次数を持つラム波モードのカットオフ周波数よりも低いものとする。
【0043】
ここで発生される複数個の送信信号は、複数補系列の単位ビットの正符号に、基本信号を対応させ、複数補系列の単位ビットの負符号に、基本信号に−1を乗じた波形を対応させた波形とすればよい。
【0044】
次に、送信信号を送受信子群4a〜4dに送信する(ステップS4)。送受信子群4中の送受信子3は、この送信信号を電気音響変換し(ステップS5)、試験体1の軸方向にラム波を送信する(ステップS6)。これにより、試験体1に対して単一モードからなるラム波が送信される。
【0045】
送信されたラム波は、試験体1中を伝播して傷9により反射され、再び試験体1中を伝播して送受信子3により受信される(ステップS7)。送受信子3で受信したラム波は電気信号に電気音響変換され(ステップS8)、送受信子群4内の送受信子3の受信信号が合計されたものが送受信子群4からの受信信号として出力される(ステップS9)。
【0046】
次に、信号処理部6において、送信された補系列により規定される参照信号を用いて、複数の送受信子群4a〜4dからの受信信号をそれぞれ相関処理する(ステップS10)。参照信号には、送信信号そのもの、または送信信号を送受信子3が送受信総合で有する周波数応答特性を持つフィルタを通した信号を用いる。
【0047】
次に、送信時に選択する補系列を変えてステップS3からステップS10までの手順を繰り返し(ステップS11)、得られた結果を図には示さないが逐次メモリに保存する。複数補系列の全てを選択し終わった時点で、メモリ上の複数個の相関処理の結果を、送受信子群4a〜4dのそれぞれについて加算する(ステップS12)。
【0048】
ステップS3からステップS12までの動作により合成圧縮パルスが得られるが、この様子を図3から図5を用いて説明する。ここでは、複数補系列の1例として、以下の系列1から系列4を選んだ。なお、複数補系列の1ビットには、5波のガウシアンバースト波を対応させた。
系列1:−−−+−
系列2:−−−++
系列3:−−+−−
系列4:−−+−+
【0049】
各系列に対応した受信信号を図3に示す。図3(a)は系列1に関する送受信信号であり、図3(b)は系列2に関する送受信信号であり、図3(c)は系列3に関する送受信信号であり、図3(d)は系列4に関する送受信信号を図3(d)である。なお、送信信号と試験体1中の傷9から反射されて受信される受信信号の波形は同じものとする。
【0050】
図3の受信信号を送信信号により相関処理した結果を図4に示す。図4(a)は、図3(a)の受信信号を送信信号で相関処理した結果であり、図4(b)は、図3(b)の受信信号を送信信号で相関処理した結果であり、図4(c)は、図3(c)の受信信号を送信信号で相関処理した結果であり、図4(d)は、図3(d)の受信信号を送信信号で相関処理した結果である。
【0051】
また、図4(a)〜図4(d)に示した相関処理結果を加算処理した結果を図5に示す。
図3〜図5に示したように、ステップS3からステップS12に対応した処理を行うことで、図3では時間軸上に分散していたエネルギーが、複数補系列の1ビットに対応する時間範囲に集中され、高ピーク合成圧縮パルスが得られる。この処理により、送受信子群4で受信する受信信号に対して特公平7−85076号公報に記載されているのと同じ効果が得られるが、特に、傷9からの反射信号のレベルが低く超音波探傷装置のシステムノイズに埋もれて検出が難しい場合においても、レンジサイドローブを0に保ったまま、S/N比を改善して傷9からの反射信号を検出することが可能になるという効果が得られる。なお、この発明における「合成圧縮パルス」および「レンジサイドローブ」という文言は、特公平7−85076号公報に記載されている「合成圧縮パルス」および「レンジサイドローブ」という文言と同じ意味を持つ。
【0052】
次に、信号処理部6において、上記モード識別機能により、受信における予め決めれらた所望のモードを識別して抽出する(ステップS13)。最低次ねじれモードを識別して抽出するのであれば、送受信子群4a〜4dにより得られたデータを単純に合計する。また、曲げモードを識別して抽出するのであれば、送受信子群4a〜4dにより得られたデータに+1もしくは−1を乗じてこれらを合計する。
【0053】
試験体1中の傷は、試験体1の周方向に関する一部に存在しているので、試験体1の周方向に関して非対称なモードである曲げモードラム波を多く反射すると考えられる。また、試験体1中の傷以外の反射体、例えば試験体1と他のもう一つの試験体1が溶接されている場合の溶接部余盛りは試験体1の周方向に関して対称な形状を持っているので、試験体1の周方向に関して対称なモードである最低次ねじれモードを多く反射すると考えられる。
【0054】
したがって、対称モードラム波と非対称モードラム波のレベルを比較することから、反射信号が傷からのものか否かの判別が可能になる。このため、このようなモード識別機能を備えることにより、データ中に含まれる傷からの反射信号の検出・識別を容易にすることが可能になる。
【0055】
信号処理部6において得られた対称モードラム波や非対称モードラム波の成分は、AC波形でもしくは包絡線検波された波形で、表示部7により表示される(ステップS14)。表示部7においては、これらの波形を表示するだけでなく、これらの波形をもとに試験体1の状態を検査した結果、例えば、傷の有無、傷の大きさ、傷の形状もしくは傷の位置といった情報を表示すればよい。
【0056】
なお、図1においては、送受信子3の個数が8であり、送受信子群4の個数が4であり、1つの送受信子群4に含まれる送受信子3の個数が2である場合について示している。図1において、1つの送受信子群4に含まれる送受信子3の個数を少なくして、送受信子群4の個数を多くすれば、例えば、図1において、1つの送受信子群4に含まれる送受信子の個数を1とし、送受信子群4の個数を8とすれば、受信時における所望モードの選択肢を多くし、受信データをより詳細に解析して傷9に関する多くの情報を得ることができる。
【0057】
また、1つの送受信子群4に含まれる送受信子11の個数を多くして、送受信子3の個数を少なくすれば、例えば、図1において、1つの送受信子群4に含まれる送受信子3の個数を4とし、送受信子群の個数を2とすれば、送受信子群4と送受信部5との間に関する接続線の本数を少なくできるので、装置構成が簡単になる。
【0058】
この発明の実施の形態1においては、用いる系列が複数補系列の場合を示したが、この系列が特公平7−85076号公報に記載されているところの相補系列であっても、傷9からの反射信号のレベルが低く超音波探傷装置のシステムノイズに埋もれて検出が難しい場合においても、レンジサイドローブを0に保ったまま、S/N比を改善して傷9からの反射信号を検出することが可能になるという効果が得られることに変わりはない。
【0059】
また、上記複数補系列が特公平7−85077号公報に示されている系列群、つまり、各系列の自己相関関数を加算したときは各自己相関関数のサイドローブが打ち消し合わされ、相異なる上記系列同士の相互相関関数の予め定められた組み合わせを加算したときには互いに打ち消し合わされる系列群であれば、特公平7−85077号公報に示されたように、残響エコーが検査結果に及ぼす影響を排除できるという効果が生じる。
【0060】
また、この発明の実施の形態1においては、送受信子群4a〜4dからの信号各々に対し、信号処理部6において合成圧縮パルスを得るための相関処理および加算処理を行っていたが、モード識別機能の動作を行った後に、抽出した各モードに関するデータごとに合成圧縮パルスを得るための処理を行っても良い。このとき、受信時に抽出するモードの個数が、送受信子群4の個数より小さければ、合成圧縮パルスを得るための相関処理および加算処理の回数を減らすことができ、計算時間が短縮できるという効果が生じる。
【0061】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る超音波探傷装置について図6から図8を参照しながら説明する。図6は、この発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置の構成を示す図である。図6においては、図1と同様に、複数の送受信子群4のそれぞれには1つ以上の送受信子3が含まれており、送受信子3は試験体1のラム波伝播方向に直交する方向に等間隔に配置されている。
【0062】
図6において、送受信部5は、複数補系列に基づいて複数個の送信信号を発生する送信信号発生機能と、上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ受信する機能を有する。
【0063】
また、信号処理部6は、上記複数補系列により規定される複数個の参照信号を用いて上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ相関処理する相関処理機能と、複数個の相関処理の結果を加算する加算機能と、送受信子群4の試験体1への接触状態をチェックするチェック機能と、複数のラム波モードから受信における所望のモードを識別するためのモード識別機能とを有している。
【0064】
また、送受信子群4の個数は、送受信子3および送受信子群4の試験体1への接触状態をチェックするために複数としておけばよい。チェック機能については後述する。
【0065】
図6においては、送受信子3の個数、送受信子群4の個数の1例として、送受信子群4の個数が4である場合について示している。このとき、図1と同様に、1つの送受信子群4に含まれる送受信子3の個数を2とすればよい。ただし、これらの数は試験体1の外径、管厚および試験体1の材質といった探傷の条件により変えても構わない。
【0066】
また、表示部7は、信号処理部6における処理結果を表示し、試験体1中の状態、例えば傷の有無、傷の大きさ、傷の位置、傷の形状もしくは試験体1の補修の必要性、といった内容を表示する。
【0067】
また、制御部8は、送受信部5、信号処理部6および表示部7に対して制御信号を送受してこれらの動作を司る。制御部8は、送受信部5、信号処理部6および表示部7に接続され、表示部7は信号処理部6に接続され、信号処理部6は送受信部5に接続されている。送受信部5には、複数の送受信子群4が並列に接続されている。
【0068】
なお、図6においては、送受信子3および送受信子群4は、送信子および送信子群としての機能と受信子および受信子群としての機能とを兼ね備えたものである。このような構成とすることで、送信子および送信子群と、受信子および受信子群とを別途に備える場合と比較して、装置構成を簡略化するとともに装置全体を廉価にできるという効果が生じる。
【0069】
また、図6において、送受信子3および送受信子群4は、試験体1の端部に配置されており、試験体1の1方向に関してラム波を送受する。
【0070】
ここで、図6に示した超音波探傷装置の動作を図7により補足して説明する。図7は、図6に示した超音波探傷装置の動作に関するフローチャートである。まず、送信に関する1つの所望ラム波モードおよび受信に関する所望のラム波モードを決定する(ステップS21)。送信に関する所望ラム波モードの決定は、実施の形態1に示したのと同じ方法でよい。以下では例として、試験体1を外径88.7mm、管厚5.5mmのSchedule 40 steel pipeとし、最低次ねじれモードを送信に関する所望のラム波モードとする。
【0071】
制御部8から送受信部5、信号処理部6、表示部7を動作させるための制御信号を送信する(ステップS22)。送受信部5において複数の送受信子3からなる送受信子群4の内の1つを選択し(ステップS23)、次に複数の送受信子群4から1つ以上を受信用の送受信子群4として選択する(ステップS24)。
【0072】
次に、送受信部5において複数補系列の1つを選択し、この補系列に基づいた送信信号を決定し、送信信号を発生する(ステップS25)。このとき、複数補系列の1ビットに対応する信号(基本信号)は実施の形態1に示したのと同じ方法で決定すれば良い。ここでは、基本信号として周波数40kHzで5波のバースト数を持つガウシアンバースト波形としたものとする。
【0073】
次に、選択した送受信子群4に送信信号を送る(ステップS26)。送受信子群4中の送受信子3は、この送信信号を電気音響変換し(ステップS27)、試験体1の軸方向にラム波を送信する(ステップS28)。このとき、送受信子群4が試験体1の周方向について接触している長さは試験体1の全周長さより小さいので、1つの送受信子群4から送信されるラム波は複数のモードからなる。
【0074】
送信された複数モードからなるラム波は、試験体1中を伝播して傷9により反射され、再び試験体1中を伝播して送受信子3により受信される(ステップS29)。送受信子3で受信したラム波は電気信号に電気音響変換され(ステップS30)、送受信子群4内の送受信子3の受信信号が合計されたものが送受信子群4からの受信信号として出力される(ステップS31)。
【0075】
次に、信号処理部6において、送信された補系列により規定される参照信号を用いて、複数の送受信子群4からの受信信号をそれぞれ相関処理する(ステップS32)。参照信号には、実施の形態1において用いた参照信号と同じものを用いればよい。
【0076】
次に、送信時に選択する補系列を変えてステップS25からステップS32までの手順を繰り返し(ステップS33)、得られた結果を図には示さないが逐次メモリに保存する。次に、複数補系列の全てを選択し終わった時点で、メモリ上の複数個の相関処理の結果を、受信用として選択した送受信子群4のそれぞれにおいて加算し、この結果をメモリにデータとして保存する(ステップS34)。
【0077】
ステップS25からステップS34までの動作により、送受信子群4で受信する受信信号に対して特公平7−85076号公報に記載されているのと同じ効果が得られるが、特に、傷9からの反射信号のレベルが低く超音波探傷装置のシステムノイズに埋もれて検出が難しい場合においても、レンジサイドローブを0に保ったまま、S/N比を改善して傷9からの反射信号を検出することが可能になるという効果が得られる。
【0078】
次に、ステップS23からステップS34までの動作を、送受信子群4の個数をT(図6においてはT=4)とし、第1から第Tの送受信子群4の全てについて少なくとも1回は行う(ステップS35)。
【0079】
ここで、送信用の送受信子群4の選択および受信用の送受信子群4の選択の組み合わせについて述べておく。
図8は、送信用の送受信子群4の選択および受信用の送受信子群4の選択の組み合わせの1例を示すものである。図6においては、送信と受信の送受信子群4を入れかえても同じデータが得られる。例えば、送信用として選択された送受信子群4が送受信子群4aであり、受信用として選択された送受信子群4が送受信子群4bである場合と、送信用として選択された送受信子群4が送受信子群4bであり、受信用として選択された送受信子群4が送受信子群4aである場合は、同じデータが得られる。
【0080】
したがって、送信用として選択された送受信子群4が送受信子群4aであり、受信子時に選択された送受信子群4が送受信子群4bである場合についてのデータをメモリ上にコピーし、送信用として選択された送受信子群4が送受信子群4bであり、受信子時に選択された送受信子群4が送受信子群4aである場合についてのデータとした。
【0081】
このように考えて、図8に示した組み合わせで選択することにより、送信用として送受信子群4を逐次選択した際に全ての送受信子群4で受信したデータを採取したこととなる。具体的には、以下の通りである。
(1)送信用として送受信子群4aを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4cおよび4dの4つを選択した場合の4つのデータ
(2)送信用として送受信子群4bを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4cおよび4dの4つを選択した場合の4つのデータ
(3)送信用として送受信子群4cを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4cおよび4dの4つを選択した場合の4つのデータ
(4)送信用として送受信子群4dを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4cおよび4dの4つを選択した場合の4つのデータ
【0082】
これら(1)〜(4)の全てのデータを採取したのと等価となる。これにより、実際には(1)〜(4)のデータの内の一部のデータを採取するだけで、(1)〜(4)したとのと同じ状態を得ることができ、計測に要する時間を短縮できるという効果が生じる。
【0083】
次に、信号処理部6において、上記チェック機能により、送受信子群4の試験体1への接触状態をチェックし(ステップS36)、チェック機能によるチェック結果からメモリ内に格納したデータの振幅に補正係数を乗じて補正をかける(ステップS37)。これにより、複数の送受信子群4の試験体1への接触状態が均一である場合のデータと等価なデータを得ることができる。
【0084】
次に、下記に示す受信データを合計する(ステップS38)。
(1’)送信用として送受信子群4aを選択した際のデータ
(2’)送信用として送受信子群4bを選択した際のデータ
(3’)送信用として送受信子群4cを選択した際のデータ
(4’)送信用として送受信子群4dを選択した際のデータ
【0085】
以上(1’)〜(4’)のデータを合計する処理により、送受信子群4a〜4dの間の試験体1への接触状態が不均一である場合でも、送信に関する所望のモードである最低次ねじれモードを単一で送信した際の送受信子群4a〜4dの個々で受信したデータを等価的に実現できる。複数モードのラム波を送信すると、傷9や試験体1の端面からの複数モードラム波が受信信号に重畳して受信信号から傷9からの反射信号のみを検出するのが難しくなる。しかし、このような等価的な単一モード送信の実現により、傷9からの反射信号の検出を容易にするという効果が生じる。なお、ステップS38の処理は、受信用として選択した送受信子群が4a、4b、4cおよび4dである場合の個々について行う。この処理により得られたデータを、順に、データDA、データDB、データDCおよびデータDDと以下では称する。
【0086】
ここで、上述の接触状態のチェック機能によるチェック方法について、説明する。接触状態のチェックにおいては、受信データにおいて、送信用として選択された送受信子群4から受信用として選択された送受信子群4へ超音波が直接伝播して受信された成分の振幅レベルを用いる。なお、送信用として選択された送受信子群4から受信用として選択された送受信子群4へ直接伝播する超音波は文献[1]で定義されているところのラム波とは若干性質が異なるが、ここでは送信用として選択された送受信子群4から受信用として選択された送受信子群4へ直接伝播する超音波も、ラム波と称することとする。
【0087】
ここで、送受信子群4aの接触面におけるラム波送受信効率をA、送受信子群4bの接触面におけるラム波送受信効率をB、送受信子群4cの接触面におけるラム波送受信効率をC、送受信子群4dの接触面におけるラム波送受信効率をDとする。
【0088】
まず、送受信子群4aから送信した際の送受信子群4bでの受信データと、送受信子群4dでの受信データを比較する。このとき、送受信子群4aに対する送受信子群4bと送受信子群4dとの位置関係は、幾何学的に同じ位置関係であるので、接触状態が同じであれば、両データにおいて送信位置から受信位置へ直接伝播した成分については同じ振幅の信号が得られるはずである。このため、送信位置から受信位置へ直接伝播した成分の振幅比をとることから、送受信子群4bの接触面におけるラム波送受信効率をBと、送受信子群4dの接触面におけるラム波送受信効率をDとの比、つまり、B/Dが求まる。この値をXとする。
【0089】
次に、送受信子群4bから送信した際の送受信子群4aでの受信データと、送受信子群4cでの受信データを比較する。このとき、送受信子群4bに対する送受信子群4aと送受信子群4cとの位置関係は、幾何学的に同じ位置関係であるので、接触状態が同じであれば、両データにおいて送信位置から受信位置へ直接伝播した成分については同じ振幅の信号が得られるはずである。このため、送信位置から受信位置へ直接伝播した成分の振幅比をとることから、送受信子群4aの接触面におけるラム波送受信効率Aと、送受信子群4cの接触面におけるラム波送受信効率Cとの比、つまり、A/Cが求まる。この値をYとする。
【0090】
次に、送受信子群4aから送信した際の送受信子群4cでの受信データと、送受信子群4bから送信した際の送受信子群4dでの受信データを比較する。このとき、送受信子群4aに対する送受信子群4cの位置関係と、送受信子群4aに対する送受信子群4cの位置関係とは、幾何学的に同じ位置関係であるので、送受信子群4a〜4dの接触状態が同じであれば、両データにおいて送信位置から受信位置へ直接伝播した成分については同じ振幅の信号が得られるはずである。このため、送信位置から受信位置へ直接伝播した成分の振幅比をとることから、送受信子群4aの接触面におけるラム波送受信効率Aに送受信子群4cの接触面におけるラム波送受信効率Cを乗じたものと、送受信子群4bの接触面におけるラム波送受信効率Bに送受信子群4dの接触面におけるラム波送受信効率Dを乗じたものとの比、つまり、(A×C)/(B×D)が求まる。この値をZとする。
【0091】
以上の手順を踏むことにより、B/D、A/Cおよび(A×C)/(B×D)が求められたので、送受信子群4aの接触面におけるラム波送受信効率Aを用いて、B、CおよびDの値を、
B=A×√{X/(Y×Z)} (1)
C=A/Y (2)
D=A×√{1/(X×Y×Z)} (3)
のように求めることができる。
【0092】
ここで、Aを1とし、各受信データに対し、補正係数として、送信用として選択した送受信子群4の接触面におけるラム波送受信効率と受信用として選択した送受信子群4の接触面におけるラム波送受信効率とを乗ずる。例えば、送信用として選択した送受信子群4が送受信子群4aで、送信用として選択した送受信子群4が送受信子群4bである場合の受信データには、補正係数A×Bを乗じる。これにより、複数の送受信子群4の試験体1への接触状態が均一である場合の受信データと等価な受信データを得ることができる。
【0093】
なお、上記接触状態のチェックは、各送受信子群4による受信信号において、図6において送受信子群4を配置しているのと反対側の端面からの反射ラム波を受信している時間帯を時間ゲートで抽出し、抽出した時間帯における反対側の端面からの反射ラム波の振幅レベルを用いてもよい。以下、この方法に関して具体的に説明する。
【0094】
反対側の端面から反射された最低次ねじれモードラム波の振幅は、試験体1の外周上で一定である。このことは、文献[5](J. L. Rose 著、”Ultrasonic Waves in Solid Media”、Cambridge University Press発行、158頁、式(12.15))に示されている、試験体1を伝搬するラム波粒子変位の一般解から明らかである。反対側の端面から反射された最低次ねじれモードラム波の振幅ピーク値が各データにおいて一定でないということは、上述の接触状態にばらつきがあるということを意味している。ここで、反対側の端面から反射された最低次ねじれモードラム波の振幅レベルが一定になるような補正係数を各データに乗じることにより、複数の送受信子群4の試験体1への接触状態が均一である場合の受信信号と等価な受信信号を得ることができる。
【0095】
なお、図6においては、送受信子3の個数が8であり、送受信子群4の個数が4であり、1つの送受信子群4に含まれる送受信子3の個数が2である場合について示している。図6では、複数の送受信子群4間の接触状態のばらつきに補正をかけることはできるが、1つの送受信子群4に含まれる2つの送受信子3間の接触状態のばらつきに補正をかけることはできない。しかし、1つの送受信子群4に含まれる送受信子3の個数を少なくして、送受信子群4の個数を多くすれば、例えば、図6において、1つの送受信子群4に含まれる送受信子の個数を1とし、送受信子群4の個数を8とすれば、複数の送受信子群4の試験体1への接触状態に関し、さらに綿密な補正をかけることが可能になる。これにより、送受信子3の試験体1の周方向に関する接触状態をさらに一定にすることができる。
【0096】
また、1つの送受信子群4に含まれる送受信子3の個数を多くして、送受信子群4の個数を少なくすれば、例えば、図6において、1つの送受信子群4に含まれる送受信子3の個数を4とし、送受信子群4の個数を2とすれば、送受信子群4と送受信部5との間に関する接続線の本数を少なくできるので、装置構成が簡単になる。
【0097】
次に、信号処理部6において、モード識別機能により、受信における予め決めれらた所望のモードを識別して抽出する(ステップS39)。最低次ねじれモードを識別して抽出するのであれば、ステップS39で得たデータDDA〜データDDを単純に合計する。また、試験体1の周方向に関して非対称な変位分布を持つ曲げモードを識別して抽出するのであれば、データDA〜データDDに+1もしくは−1を乗じてこれらを合計する。
【0098】
信号処理部6における上記チェック機能および上記モード識別機能に関する効果は、送受信子3を複数の送受信子群4に分割し、複数の送受信子群4を個別に送信し、複数の送受信子群4からの受信信号を個別に受信したことにより可能になったものである。
【0099】
信号処理部6において得られた対称モードラム波や非対称モードラム波の成分は、AC波形でもしくは包絡線検波された波形で、表示部7により表示される(ステップS40)。表示部7においては、これらの波形を表示するだけでなく、これらの波形をもとに試験体1の状態を検査した結果、例えば、傷の有無、傷の大きさ、傷の形状もしくは傷の位置といった情報を表示すればよい。
【0100】
この発明の実施の形態2においては、用いる系列が複数補系列の場合を示したが、この系列が特公平7−85076号公報に記載されているところの相補系列であっても、傷9からの反射信号のレベルが低く超音波探傷装置のシステムノイズに埋もれて検出が難しい場合においても、レンジサイドローブを0に保ったまま、S/N比を改善して傷9からの反射信号を検出することが可能になるという効果が得られることに変わりはない。
【0101】
また、上記複数補系列が特公平7−85077号公報に示されている系列群、つまり、各系列の自己相関関数を加算したときは各自己相関関数のサイドローブが打ち消し合わされ、相異なる上記系列同士の相互相関関数の予め定められた組み合わせを加算したときには互いに打ち消し合わされる系列群であれば、特公平7−85077号公報に示されたように、残響エコーが検査結果に及ぼす影響を排除できるという効果が生じる。
【0102】
また、この発明の実施の形態2においては、送受信用の送受信子群4を選択して送受信を行う毎に、信号処理部6において合成圧縮パルスを得るための相関処理および加算処理を行っていたが、モード識別機能の動作を行った後に、抽出した各モードに関するデータごとに合成圧縮パルスを得るための処理を行っても良い。このとき、受信時に抽出する所望モードの個数が、送受信子群4の個数より小さければ、合成圧縮パルスを得るための相関処理および加算処理の回数を減らすことができ、計算時間が短縮できるという効果が生じる。
【0103】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る超音波探傷装置について図9から図14を参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態3に係る超音波探傷装置の構成を示す図である。図9においては、図1と同様に、複数の送受信子群4のそれぞれには1つ以上の送受信子3が含まれており、送受信子3は試験体1のラム波伝播方向に直交する方向に等間隔に配置されている。
【0104】
また、図9では、送受信子群4a〜4dの4つの送受信子群4が試験体1上の配置位置P1に、送受信子群4e〜4hの4つの送受信子群4が試験体1上の配置位置P2にそれぞれ示されている。また、傷9は2つあり、傷9aは送受信子群4a〜4hの左側に存在し、傷9bは送受信子群4a〜4hの右側に存在している。
【0105】
また、送信部51の出力端子は2つであり、送受信子群4a〜4dに対して同時に送信信号を送信する機能と、送受信子群4e〜4hに対して同時に送信信号を送信する機能とを有する。また、受信部52は送受信子群4a〜4hにそれぞれ並列に接続されている。
【0106】
また、送信部51は、複数補系列に基づいて複数個の送信信号を発生する送信信号発生機能を有し、受信部52は、上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ受信する機能を有し、信号処理部6は、上記複数補系列により規定される複数個の参照信号を用いてそれぞれ上記複数個の受信信号を相関処理する相関処理機能と、複数個の相関処理の結果を加算する加算機能と、複数のラム波モードから受信における所望のモードを識別するためのモード識別機能と、試験体1の2つの方向から伝播してきたラム波の内、1つの方向からのラム波を識別する方向識別機能とを有している。
【0107】
図9においては、試験体1のラム波伝播方向に沿った1つの配置位置における送受信子3の個数、送受信子群4の個数は、実施の形態1と同様に決めれば良い。また、表示部7は、信号処理部6における処理結果を表示し、試験体1中の状態、例えば傷の有無、傷の大きさ、傷の位置、傷の形状もしくは試験体1の補修の必要性といった内容を表示する。
【0108】
また、制御部8は、送受信部5、信号処理部6および表示部7に対して制御信号を送受してこれらの動作を司る。制御部8は、送受信部5、信号処理部6および表示部7に接続され、表示部7は信号処理部6に接続され、信号処理部6は送受信部5に接続されている。
【0109】
なお、図9においては、送受信子3は、送信子としての機能と受信子としての機能とを兼ね備えたものである。このような構成とすることで、送信子と受信子とを別途に備える場合と比較して、装置構成を簡略化するとともに装置全体を廉価にできるという効果が生じる。また、送受信子3および送受信子群4は、試験体1の端部に配置されており、試験体1の両方向に関してラム波を送受する。
【0110】
ここで、図9に示した超音波探傷装置の動作を図10により補足して説明する。図10は、図9に示した超音波探傷装置の動作に関するフローチャートである。まず、送信に関する1つの所望ラム波モードおよび受信に関する所望のラム波モードを決定する(ステップS41)。送信に関する所望ラム波モードの決定は、実施の形態1に示したのと同じ方法でよい。以下では例として、試験体1を外径88.7mm、管厚5.5mmのSchedule 40 steel pipeとし、最低次ねじれモードを送信に関する所望のラム波モードとする。
【0111】
次に、制御部8から送受信部5、信号処理部6、表示部7を動作させるための制御信号を送信する(ステップS42)。次に、送受信子群4a〜4dを送信用の送受信子群として選択する(ステップS43)。次に、送受信部5において複数補系列の1つを選択し、この補系列に基づいた送信信号を決定し、送信信号を発生する(ステップS44)。このとき、複数補系列の1ビットに対応する信号(以下、基本信号と称す)および送信信号は、実施の形態1と同じ方法で決定すればよい。ここでは、基本信号として周波数40kHzで5波のバースト数を持つガウシアンバースト波形としたものとする。
【0112】
次に、送信信号を選択した送受信子群4に送信する(ステップS45)。送受信子群4中の送受信子3は、この送信信号を電気音響変換し(ステップS46)、次に、試験体1の軸方向にラム波を送信する(ステップS47)。これにより、試験体1に対して単一モードからなるラム波が送信される。
【0113】
送信されたラム波は、試験体1中を伝播して傷9により反射され、再び試験体1中を伝播して送受信子3により受信される(ステップS48)。送受信子3で受信したラム波は電気信号に電気音響変換され(ステップS49)、送受信子群4内の送受信子3の受信信号が合計されたものが送受信子群4からの受信信号として出力される(ステップS50)。
【0114】
次に、信号処理部6において、送信された補系列により規定される参照信号を用いて、複数の送受信子群4からの受信信号をそれぞれ相関処理する(ステップS51)。参照信号には、実施の形態1で用いたのと同じ参照信号を用いれば良い。
【0115】
次に、送信時に選択する補系列を変えてステップS44からステップS51までの手順を繰り返し(ステップS52)、得られた結果を図には示さないが逐次メモリに保存する。次に、複数補系列の全てを選択し終わった時点で、メモリ上の複数個の相関処理の結果を、送受信子群4a〜4hのそれぞれについて加算する(ステップS53)。
【0116】
ステップS44からステップS53までの動作により、送受信子群4で受信する受信信号に対して特公平7−85076号公報に記載されているのと同じ効果が得られるが、特に、傷9からの反射信号のレベルが低く超音波探傷装置のシステムノイズに埋もれて検出が難しい場合においても、レンジサイドローブを0に保ったまま、S/N比を改善して傷9からの反射信号を検出することが可能になるという効果が得られる。
【0117】
次に、送信用送受信子群4を送信用送受信子群4e〜4hとして、ステップS44からステップS53までの動作を再度行う(ステップS54)。
【0118】
次に、信号処理部6において、上記モード識別機能により、受信における予め決めれらた所望のモードを識別して抽出する(ステップS55)。このとき、モード識別は、配置位置P1に配置した送受信子群4a〜4dと、配置位置P2に配置した送受信子群4e〜4eのそれぞれについて行う。それぞれの配置位置におけるモード識別方法は、実施の形態1に示したのと同じ方法でよい。モード識別により得られたデータの内、配置位置P1(送受信子群4a〜4d)で送信して配置位置P1(送受信子群4a〜4d)で受信した場合のデータをデータDAA、配置位置P1(送受信子群4a〜4d)で送信して配置位置P2(送受信子群4e〜4h)で受信した場合のデータをデータDBB、配置位置P2(送受信子群4e〜4h)で送信して配置位置P1(送受信子群4a〜4d)で受信した場合のデータをデータDCC、配置位置P2(送受信子群4e〜4h)で送信して配置位置P2(送受信子群4e〜4h)で受信した場合のデータをデータDDDと以下では称する。
【0119】
次に、信号処理部6において、上記方向識別機能により、上記データDAA、DBB、DCCおよびDDD中から、所望の1方向から伝播してきたラム波を識別・抽出する(ステップS56)。
【0120】
この方向識別機能について図11から図14を用いて説明する。なお、このステップS56は、受信における所望モードの抽出結果のそれぞれについて行うが、ここではこの所望モードが最低次ねじれモードであるとして説明を行う。また、図11から図14においては、受信における最低次ねじれモードのラム波が、試験体1のラム波伝播方向に沿った2箇所の間を伝播するのに要する時間をτとし、送信信号のキャリア周波数をfとし、vを最低次ねじれモードの伝播速度とし、Qを正の整数とし、f=Q/(4τ)とした場合について示している。
【0121】
図11は、送受信子群4から左側に送信された最低次ねじれモードラム波が、図9の左側の傷9aによって反射されて受信され、モード識別機能により抽出された最低次ねじれモードを示す図であり、図11(a)はデータDAA、図11(b)はデータDBB、図11(c)はデータDCC、図11(d)はデータDDDに関するものである。
【0122】
図12は、送受信子群4から右側に送信された最低次ねじれモードラム波が、図9の右側の傷9bによって反射されて受信され、モード識別機能により抽出された最低次ねじれモードを示す図であり、図12(a)はデータDAA、図12(b)はデータDBB、図12(c)はデータDCC、図12(d)はデータDDDに関するものである。
【0123】
図11および図12のデータに対し、以下の操作を行う。
(1”)データDBB(図11(b)および図12(b)のデータ)には時間軸の−方向にτだけシフトさせ、−1を乗じる。
(2”)データDCC(図11(c)および図12(c)のデータ)には時間軸の−方向にτだけシフトさせ、−1を乗じる。
(3”)データDDD(図11(d)および図12(d)のデータ)には時間軸の−方向に2τだけシフトさせる。
【0124】
以上(1”)〜(3”)の処理を行った結果の内、図11(a)〜図11(d)に対応するデータを図13(a)〜図13(d)に、図12(a)〜図12(d)に対応するデータを図14(a)〜図14(d)に示す。
【0125】
データDAAと(1”)〜(3”)の処理を施されたデータDBB、データDCCおよびデータDDDとが合計される。
図13(a)から図13(d)に示した4つのデータを合計すると、図13(e)に示すように0となる。この際、図14(a)〜図14(d)に示した4つのデータも合計されるが、図14(e)に示すように0とはならない。したがって、以上の処理を行った後に残ったデータは右側の傷9からの反射信号であると識別できる。類似の処理により左側の傷9からの反射信号を識別できることは明らかである。
【0126】
なお、図11から図14においては、送信信号のキャリア周波数をfを、f=Q/(4τ)としているので、図13(a)〜図13(d)の信号が合計されて0となる際に図14(a)〜図14(d)の信号は同位相で合計されるので最も明確に方向識別機能を有する効果を得ることができる。
また、送信信号のキャリア周波数をfを、f=Q/(2τ)とすると、図13(a)〜図13(d)の信号が合計されて0となる際に、図14(a)〜図14(d)の信号も逆相で合計されるために振幅が小さくなるが、この発明において送受する信号はパルスであるので、完全に0となることはない。したがって、f=Q/(2τ)以外の場合については、図14(a)〜図14(d)が合計された結果は0とはならない。
【0127】
信号処理部6において得られた対称モードラム波や非対称モードラム波の成分は、AC波形でもしくは包絡線検波された波形で、表示部7により表示される(ステップS57)。表示部7においては、これらの波形を表示するだけでなく、これらの波形をもとに試験体1の状態を検査した結果、例えば、傷の有無、傷の大きさ、傷の形状もしくは傷の位置といった情報を表示すればよい。
【0128】
上述したように、この発明の実施の形態3においては、用いる系列が複数補系列の場合を示したが、この系列が特公平7−85076号公報に記載されているところの相補系列であっても、傷9からの反射信号のレベルが低く超音波探傷装置のシステムノイズに埋もれて検出が難しい場合においても、レンジサイドローブを0に保ったまま、S/N比を改善して傷9からの反射信号を検出することが可能になるという効果が得られることに変わりはない。
【0129】
また、上記複数補系列が特公平7−85077号公報に示されている系列群、つまり、各系列の自己相関関数を加算したときは各自己相関関数のサイドローブが打ち消し合わされ、相異なる上記系列同士の相互相関関数の予め定められた組み合わせを加算したときには互いに打ち消し合わされる系列群であれば、特公平7−85077号公報に示されたように、残響エコーが検査結果に及ぼす影響を排除できるという効果が生じる。
【0130】
また、この発明の実施の形態3においては、送受信子群4a〜4hからの信号各々に対し、信号処理部6において合成圧縮パルスを得るための相関処理および加算処理を行っていたが、モード識別機能および方向識別機能の動作を行った後に、抽出した各モード各方向に関するデータごとに合成圧縮パルスを得るための処理を行っても良い。このとき、受信時に抽出する所望モードの個数に方向識別における所望の方向の個数(この場合は2個)を乗じた個数が、送受信子群4の個数より小さければ、合成圧縮パルスを得るための相関処理および加算処理の回数を減らすことができ、計算時間が短縮できるという効果が生じる。
【0131】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る超音波探傷装置について図15から図17を参照しながら説明する。図15は、この発明の実施の形態4に係る超音波探傷装置の構成を示す図である。図15においては、図1と同様に、複数の送受信子群4のそれぞれには1つ以上の送受信子3が含まれており、送受信子3は試験体1のラム波伝播方向に直交する方向に等間隔に配置されている。
【0132】
また、図15では、4a〜4dの4つの送受信子群4が試験体1上の配置位置P1に、4e〜4hの4つの送受信子群4が試験体1上の配置位置P2にそれぞれ示されている。また、傷9は2つあり、傷9aは送受信子群4a〜4hの左側に存在し、傷9bは送受信子群4a〜4hの右側に存在している。
【0133】
また、送受信部5は、複数補系列に基づいて複数個の送信信号を発生する送信信号発生機能と、上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ受信する機能を有し、また、信号処理部6は、上記複数補系列により規定される複数個の参照信号を用いて上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ相関処理する相関処理機能と、複数個の相関処理の結果を加算する加算機能と、送受信子群4の試験体1への接触状態をチェックするチェック機能と、複数のラム波モードから受信に関する所望のモードを識別するためのモード識別機能と、試験体1の2つの方向から伝播してきたラム波の内、1つの方向からのラム波を識別する方向識別機能とを有している。
【0134】
なお、ラム波の伝播方向に直交する方向に配置する送受信子3の個数および送受信子群4の個数は、この発明の実施の形態1と同様に決めればよい。
【0135】
図15において、表示部7は、信号処理部6における処理結果を表示し、試験体1中の状態、例えば傷の有無、傷の大きさ、傷の位置、傷の形状もしくは試験体1の補修の必要性、といった内容を表示する。
また、制御部8は、送受信部5、信号処理部6および表示部7に対して制御信号を送受してこれらの動作を司る。制御部8は、送受信部5、信号処理部6および表示部7に接続されている。表示部7は信号処理部6に接続されている。信号処理部6は送受信部5に接続されている。送受信部5には、複数の送受信子群4が並列に接続されている。
【0136】
なお、図15において、送受信子3および送受信子群4は、送信子および送信子群としての機能と受信子および受信子群としての機能とを兼ね備えたものである。このような構成とすることで、送信子および送信子群と、受信子および受信子群とを別途に備える場合と比較して、装置構成を簡略化するとともに装置全体を廉価にできるという効果が生じる。
また、図15において、送受信子3、送受信子群4は、試験体1の両方向に関してラム波を送受する。
【0137】
ここで、図15に示した超音波探傷装置の動作を図16により補足して説明する。図16は、図15に示した超音波探傷装置の動作に関するフローチャートである。まず、送信に関する1つの所望ラム波モードおよび受信に関する所望のラム波モードを決定する(ステップS61)。ステップS61での決定方法は、この発明の実施の形態1と同じ方法でよい。以下では例として、試験体1を外径88.7mm、管厚5.5mmのSchedule 40 steel pipeとし、最低次ねじれモードを送信に関する所望のラム波モードとする。
【0138】
次に、制御部8から送受信部5、信号処理部6、表示部7を動作させるための制御信号を送信する(ステップS62)。次に、送受信部5において複数の送受信子3からなる送受信子群4の内の1つを選択し(ステップS63)、さらに複数の送受信子群4から1つ以上を受信用の送受信子群4として選択する(ステップS64)。
【0139】
次に、送受信部5において複数補系列の1つを選択し、この補系列に基づいた送信信号を決定し、送信信号を発生する(ステップS65)。このとき、複数補系列の1ビットに対応する信号(基本信号)は実施の形態1に示したのと同じ方法で決定すれば良い。ここでは、基本信号として周波数40kHzで5波のバースト数を持つガウシアンバースト波形としたものとする。
【0140】
次に、選択した送受信子群4に送信信号を送る(ステップS66)。送受信子群4中の送受信子3は、この送信信号を電気音響変換し(ステップS67)、試験体1の軸方向にラム波を送信する(ステップS68)。このとき、送受信子群4が試験体1の周方向について接触している長さは試験体1の全周長さより小さいので、一つの送受信子群4から送信されるラム波は複数のモードからなる。
【0141】
送信された複数モードからなるラム波は、試験体1中を伝播して傷9aおよび9bにより反射され、再び試験体1中を伝播して送受信子3により受信される(ステップS69)。送受信子3で受信したラム波は電気信号に電気音響変換され(ステップS70)、送受信子群4内の送受信子3の受信信号が合計されたものが送受信子群4からの受信信号として出力される(ステップS71)。
【0142】
次に、信号処理部6において、送信された補系列により規定される参照信号を用いて、複数の送受信子群4からの受信信号をそれぞれ相関処理する(ステップS72)。参照信号には、実施の形態1において用いたのと同じものを用いれば良い。
【0143】
次に、送信時に選択する補系列を変えてステップS65からステップS72までの手順を繰り返し(ステップS73)、得られた結果を図には示さないが逐次メモリに保存する。次に、複数補系列の全てを選択し終わった時点で、メモリ上の複数個の相関処理の結果を、受信用として選択した送受信子群4のそれぞれについて加算し、この結果をメモリにデータとして保存する(ステップS74)。
【0144】
ステップS65からステップS74までの動作により、送受信子群4で受信する受信信号に対して特公平7−85076号公報に記載されているのと同じ効果が得られるが、特に、傷9からの反射信号のレベルが低く超音波探傷装置のシステムノイズに埋もれて検出が難しい場合においても、レンジサイドローブを0に保ったまま、S/N比を改善して傷9からの反射信号を検出することが可能になるという効果が得られる。
【0145】
次に、ステップS63からステップS74までの動作を、送受信子群4の個数をT(図15においてはT=4×2=8)とし、第1から第Nの送受信子群4の全てについて少なくとも1回は行う(ステップS75)。
【0146】
ここで、送信用の送受信子群4の選択および受信時の送受信子群4の選択の組み合わせについて述べておく。
図17(a)および図17(b)は、送信用の送受信子群4の選択および受信用の送受信子群4の選択の組み合わせの2つの例を示すものである。実施の形態1において示したのと同様に考えることから、図17に示した組み合わせで選択することにより、送信用として送受信子群4を逐次選択した際に全ての送受信子群4で受信したデータを採取したと考える。
【0147】
具体的には、次の通りである。
(1)送信用として送受信子群4aを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4c、4d、4e、4f、4gおよび4hの8つを選択した場合の8つのデータ
(2)送信用として送受信子群4bを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4c、4d、4e、4f、4gおよび4hの8つを選択した場合の8つのデータ
(3)送信用として送受信子群4cを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4c、4d、4e、4f、4gおよび4hの8つを選択した場合の8つのデータ
(4)送信用として送受信子群4dを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4c、4d、4e、4f、4gおよび4hの8つを選択した場合の8つのデータ
(5)送信用として送受信子群4eを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4c、4d、4e、4f、4gおよび4hの8つを選択した場合の8つのデータ
(6)送信用として送受信子群4fを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4c、4d、4e、4f、4gおよび4hの8つを選択した場合の8つのデータ
(7)送信用として送受信子群4gを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4c、4d、4e、4f、4gおよび4hの8つを選択した場合の8つのデータ
(8)送信用として送受信子群4hを選択し、受信用として送受信子群4a、4b、4c、4d、4e、4f、4gおよび4hの8つを選択した場合の8つのデータ
【0148】
これら(1)〜(8)の全てのデータを採取したことと等価となる。これにより、実際には(1)〜(8)のデータの内の一部のデータを採取するだけで、(1)〜(8)したとのと同じ状態を得ることができ、計測に要する時間を短縮できるという効果が生じる。なお、この発明の実施の形態4においては、図17(a)および図17(b)に示した組み合わせの内のいずれを採用しても構わないが、受信用として選択できる送受信子群4の数が、4つに限られている場合であれば、図17(b)に示した組み合わせを用いれば、図17(a)に示した組み合わせを用いる場合と比較して少ない送受信回数で所望のデータが得られるので、探傷に要する時間を短くできるという効果が得られる。
【0149】
次に、信号処理部6において、上記チェック機能により、送受信子群4の試験体1への接触状態をチェックする(ステップS76)。次に、チェック機能によるチェック結果からメモリ内に格納したデータの振幅に補正係数を乗じて補正をかける(ステップS77)。これにより、複数の送受信子群4の試験体1への接触状態が均一である場合の受信信号と等価な受信信号を得ることができる。
【0150】
次に、下記に示すデータ(1’)〜(4’)を合計したものと、データ(11’)〜(14’)を合計したものを個別に求める(ステップS78)。
(1’)送信用として送受信群4aを選択した際の受信データ
(2’)送信用として送受信群4bを選択した際の受信データ
(3’)送信用として送受信群4cを選択した際の受信データ
(4’)送信用として送受信群4dを選択した際の受信データ
(11’)送信用として送受信群4eを選択した際の受信データ
(12’)送信用として送受信群4fを選択した際の受信データ
(13’)送信用として送受信群4gを選択した際の受信データ
(14’)送信用として送受信群4hを選択した際の受信データ
【0151】
この処理により、配置位置P1から最低次ねじれモードを単一で送信した際の送受信子群4a〜4hの個々で受信したデータと、配置位置P2から最低次ねじれモードを単一で送信した際の送受信子群4a〜4hの個々で受信したデータとを等価的に実現できる。このような等価的な単一モード送信の実現により、傷からの反射信号の検出を容易にするという効果が生じる。なお、ステップS18の処理は、受信用として選択した送受信子群が4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4hである場合の個々について行う。
【0152】
ここで、上述の接触状態のチェック機能によるチェック方法について説明する。
接触状態のチェックにおいては、送信用として選択された送受信子群4から受信用として選択された送受信子群4へ直接伝播したラム波の振幅レベルを用いる。
【0153】
ここで、送受信子群4aの接触面におけるラム波送受信効率をA、送受信子群4bの接触面におけるラム波送受信効率をB、送受信子群4cの接触面におけるラム波送受信効率をC、送受信子群4dの接触面におけるラム波送受信効率をD、送受信子群4eの接触面におけるラム波送受信効率をE、送受信子群4fの接触面におけるラム波送受信効率をF、送受信子群4gの接触面におけるラム波送受信効率をG、送受信子群4hの接触面におけるラム波送受信効率をHとする。
【0154】
まず、実施の形態1で述べたX、YおよびZの値を、実施の形態1と同じ同じ方法により求める。次に、送受信子群4e〜4hについて、実施の形態1で送受信子群4a〜4d接触状態のチェック方法についての述べたのと同様の手順で、F/Hの値を求めてX’とし、E/Gの値を求めてY’とし、(E×G)/(F×H)の値を求めてこの値をZ’とする。
【0155】
これらの値から、送受信子群4eの接触面におけるラム波送受信効率Eを用いて、F、GおよびHの値を、
F=E×√{X’/(Y’×Z’)} (4)
G=E/Y’ (5)
H=E×√{1/(X’×Y’×Z’)} (6)
のように求める。
【0156】
次に、送受信子群4aから送信した際の送受信子群4cでの受信データと、送受信子群4eから送信した際の送受信子群4gでの受信データを比較する。このとき、送受信子群4aに対する送受信子群4cの位置関係と、送受信子群4eに対する送受信子群4gの位置関係とは、幾何学的に同じ位置関係であるので、送受信子群4a、4c、4eおよび4gの接触状態が同じであれば、両データにおいて送信位置から受信位置へ直接伝播した成分については同じ振幅の信号が得られるはずである。このため、送信位置から受信位置へ直接伝播した成分の振幅比をとることから、送受信子群4aの接触面におけるラム波送受信効率Aに送受信子群4cの接触面におけるラム波送受信効率Cを乗じたものと、送受信子群4eの接触面におけるラム波送受信効率Eに送受信子群4gの接触面におけるラム波送受信効率Gを乗じたものとの比、つまり、(A×C)/(E×G)が求まる。
【0157】
この値をZ”は、
Z”=(A×C)/(E×G)=(A×A/Y)/(E×E/Y’) (7)
であるので、Eの値は次式により求まる。
E=A×√{Y’/(Y×Z”)} (8)
したがって、F〜Hの値は、
F=A×√{Y’/(Y×Z”)}√{X’/(Y’×Z’)} (9)
G=A×√{Y’/(Y×Z”)}/Y’ (10)
H=A×√{Y’/(Y×Z”)}√{1/(X’×Y’×Z’)} (11)
【0158】
ここで、各受信データに対し、Aを1とし、送信用として選択した送受信子群4の接触面におけるラム波送受信効率と受信用として選択した送受信子群4の接触面におけるラム波送受信効率とを乗ずる。例えば、送信用として選択した送受信子群4が送受信子群4aで、送信用として選択した送受信子群4が送受信子群4bである場合の受信データには、A×Bを乗じる。
これにより、複数の送受信子群4の試験体1への接触状態が均一である場合の受信信号と等価な受信信号を得ることができる。
【0159】
なお、上記接触状態のチェックは、各送受信子群4による受信信号において、図15における試験体1のいずれかの端面からの反射ラム波を受信している時間帯を時間ゲートで抽出し、抽出した時間帯における反対側の端面からの反射ラム波の振幅レベルを用いてもよい。以下、この方法に関して具体的に説明する。
【0160】
端面から反射された最低次ねじれモードラム波の振幅は、試験体1の外周上で一定である。端面から反射された最低次ねじれモードラム波の振幅ピーク値が各データにおいて一定でないということは、上述の接触状態にばらつきがあるということを意味している。ここで、端面から反射された最低次ねじれモードラム波の振幅レベルが一定になるような補正係数を各データに乗じることにより、複数の送受信子群4の試験体1への接触状態が均一である場合の受信信号と等価な受信信号を得ることができる。
【0161】
次に、信号処理部6において、上記モード識別機能により、受信における予め決めれらた所望のモードを識別して抽出する(ステップS79)。モード識別機能の動作は、配置位置P1で送信した場合と、配置位置P2で送信した場合のそれぞれにおいて、ステップS78において得られた配置位置P1に存在する送受信子群4a〜4dでのデータおよび配置位置P2に存在する送受信子群4e〜4hでのデータそれぞれに関し、実施の形態2に示したのと同じとすればよい。
【0162】
ステップS79で処理された結果において、配置位置P1で送信して配置位置P1で受信した場合のデータをデータDAA、配置位置P1で送信して配置位置P2で受信した場合のデータをデータDBB、配置位置P2で送信して配置位置P1で受信した場合のデータをデータDCC、配置位置P2で送信して配置位置P2で受信した場合のデータをデータDDDと以下では称する。
【0163】
次に、信号処理部6において、上記方向識別機能により、上記データDAA、DBB、DCCおよびDDD中から、所望の1方向から伝播してきたラム波を識別・抽出する(ステップS80)。方向識別機能の動作は、上記データDAA、DBB、DCCおよびDDDに対し、実施の形態3と同じ処理を行うものである。
【0164】
信号処理部6における上記チェック機能、上記モード識別機能および上記方向識別機能に関する効果は、送受信子3を複数の送受信子群4に分割し、複数の送受信子群4を個別に送信し、複数の送受信子群4からの受信信号を個別に受信したことにより可能になったものである。
【0165】
信号処理部6において得られた対称モード(最低次ねじれモード)ラム波や非対称モード(曲げモード)ラム波の成分は、AC波形でもしくは包絡線検波された波形で、表示部7により表示される(ステップS81)。表示部7においては、これらの波形を表示するだけでなく、これらの波形をもとに試験体1の状態を検査した結果、例えば、傷の有無、傷の大きさ、傷の形状もしくは傷の位置といった情報を表示すればよい。
【0166】
この発明の実施の形態4においては、用いる系列が複数補系列の場合を示したが、この系列が特公平7−85076号公報に記載されているところの相補系列であっても、傷9からの反射信号のレベルが低く超音波探傷装置のシステムノイズに埋もれて検出が難しい場合においても、レンジサイドローブを0に保ったまま、S/N比を改善して傷9からの反射信号を検出することが可能になるという効果が得られることに変わりはない。
【0167】
また、上記複数補系列が特公平7−85077号公報に示されている系列群、つまり、各系列の自己相関関数を加算したときは各自己相関関数のサイドローブが打ち消し合わされ、相異なる上記系列同士の相互相関関数の予め定められた組み合わせを加算したときには互いに打ち消し合わされる系列群であれば、特公平7−85077号公報に示されたように、残響エコーが検査結果に及ぼす影響を排除できるという効果が生じる。
【0168】
また、この発明の実施の形態4においては、送受信用の送受信子群4を選択して送受信を行う毎に、信号処理部6において合成圧縮パルスを得るための相関処理および加算処理を行っていたが、モード識別機能の動作を行った後に、抽出した各モードに関するデータごとに合成圧縮パルスを得るための処理を行っても良い。このとき、受信時に抽出する所望モードの個数に方向識別における所望の方向の個数(この場合は2個)を乗じた個数が、送受信子群4の個数より小さければ、合成圧縮パルスを得るための相関処理および加算処理の回数を減らすことができ、計算時間が短縮できるという効果が生じる。
【0169】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5に係る超音波探傷装置について図9、図18および図19を参照しながら説明する。この発明の実施の形態5に係る超音波探傷装置は、図9に示した実施の形態3に係る超音波探傷装置と基本的な構成は同じである。ただし、実施の形態3においては、送受信子群4a〜4dと送受信子群4e〜4hに対し、同じ波形の送信信号を送っていた。このような場合、送受信子群4a〜4dと送受信子群4e〜4hを同時に駆動すると、受信信号が試験体1のどちらの方向から伝播してきたのかを判断する方向識別が難しい。方向識別を行うためには、実施の形態3に示したように、送受信子群4a〜4dと送受信子群4e〜4hを別々に駆動する必要があった。この実施の形態5では、送受信子群4a〜4dと送受信子群4e〜4hに対し、異なる波形の送信信号を送って受信子群4a〜4dと送受信子群4e〜4hを同時に駆動する場合においても方向識別を容易にする方法を提供する。
【0170】
この発明の実施の形態5においては、複数補系列は特公平7−85077号公報に示されている系列群、つまり各系列の自己相関関数を加算したときは各自己相関関数のサイドローブが打ち消し合わされ、相異なる上記系列同士の相互相関関数の予め定められた組み合わせを加算したときには互いに打ち消し合わされる系列群を採用する。具体的1例としては、以下の系列1〜4の系列群である。
系列1:+++−
系列2:++−+
系列3:−−−+
系列4:++−+
【0171】
このような系列1、系列2、系列3および系列4の複数補系列に基づいた信号を、信号1、信号2、信号3および信号4とし、φを相関関数を表す記号とし、φの下付文字を相関処理する2つの信号が基づいている系列番号とすると、次式(12)で表される値σはサイドローブが0である合成圧縮パルスとなり、次式(13)で表される値σ’は0となることが、特公平7−85077号公報に示されている。
σ=φ11+φ22+φ33+φ44 (12)
σ’=φ12+φ23+φ34+φ41
=φ21+φ32+φ43+φ14=0 (13)
【0172】
ここで、図9に示した超音波探傷装置の実施の形態5における動作を図18により補足して説明する。図18は、図9に示した超音波探傷装置の動作に関するフローチャートである。まず、送信に関する1つの所望ラム波モードおよび受信に関する所望のラム波モードを決定する(ステップS91)。送信に関する所望ラム波モードの決定は、実施の形態1に示したのと同じ方法でよい。
【0173】
次に、制御部8から送受信部5、信号処理部6、表示部7を動作させるための制御信号を送信する(ステップS92)。次に、送受信部5において複数補系列の一つを選択し、この補系列に基づいた送信信号を決定し、送信信号を発生する(ステップS93)。このとき、複数補系列の1ビットに対応する信号(以下基本信号)は、実施の形態1と同じ方法で決定すればよい。
【0174】
次に、系列1に対応した送信信号を送受信子群4a〜4dに、系列2に対応した送信信号を送受信子群4e〜4hに、同時に送信する(ステップS94)。送受信子群4中の送受信子3は、この送信信号を電気音響変換し(ステップS95)、試験体1の軸方向にラム波を送信する(ステップS96)。これにより、試験体1に対して単一モードからなるラム波が送信される。
【0175】
送信されたラム波は、試験体1中を伝播して傷9により反射され、再び試験体1中を伝播して送受信子3により受信される(ステップS97)。送受信子3で受信したラム波は電気信号に電気音響変換され(ステップS98)、送受信子群4内の送受信子3の受信信号が合計されたものが送受信子群4からの受信信号として出力される(ステップS99)。
【0176】
次に、信号処理部6において、送信された補系列系列により規定される参照信号を用いてそれぞれ相関処理する(ステップS100)。このとき、参照信号は、それぞれの送受信子群4に送信した送信信号と同じものとする。ここでは、送受信子群4a〜4dについては系列1に基づいた参照信号であり、送受信子群4e〜4hについては系列2に基づいた参照信号である。
【0177】
次に、ステップS93からステップS100の動作を複数補系列全てを選択し終わるまで繰り返す(ステップS101)。このとき、各繰り返しにおいて、送受信子群4a〜4dおよび送受信子群4e〜4hに送信する送信信号、受信する受信信号および参照信号が基づいている複数補系列の組み合わせを図19に示す。
【0178】
次に、送受信子群4a〜4dおよび送受信子群4e〜4hにより得られたそれぞれの相関結果について加算する(ステップS102)。
ここで、送受信子群4a〜4dにより得られた結果の加算結果について説明する。図19に示した各繰り返し番号において、送受信子群4a〜4dにより受信される受信信号に含まれている信号は、繰返し番号1においては、送受信子群4a〜4dから送信された系列1に基づく信号(以下、信号11と称す)と、送受信子群4e〜4hから送信された系列2に基づく信号(以下、信号12と称す)とである。また、繰返し番号2においては、送受信子群4a〜4dから送信された系列2に基づく信号(以下、信号22と称す)と、送受信子群4e〜4hから送信された系列3に基づく信号(以下、信号23と称す)とである。また、繰返し番号3においては、送受信子群4a〜4dから送信された系列3に基づく信号(以下、信号33と称す)と、送受信子群4e〜4hから送信された系列4に基づく信号(以下、信号34と称す)とである。さらに、繰返し番号4においては、送受信子群4a〜4dから送信された系列4に基づく信号(以下、信号44と称す)と、送受信子群4e〜4hから送信された系列1に基づく信号(以下、信号41と称す)とである。
【0179】
これらの信号11、信号12、信号22、信号23、信号33、信号34、信号44および信号41に対し、繰返し番号1に関する信号は系列1に基づく参照信号で、繰返し番号2に関する信号は系列2に基づく参照信号で、繰返し番号3に関する信号は系列3に基づく参照信号で、繰返し番号4に関する信号は系列4に基づく参照信号で、相関処理を行う。
【0180】
相関処理結果の加算結果σ1は、φを相関関数の意味を持つ記号とし、φの上付文字を参照信号が基づいている系列の番号とし、φの下付文字を受信信号に含まれている信号の番号とし、次式で計算される値となる。
Figure 0003704070
【0181】
式(14)の右辺第2項は、式(13)から次式(15)となることが分かる。
ρ1 12+ρ2 23+ρ3 34+ρ4 41=0 (15)
したがって、相関処理結果の加算結果σ1は、次式(16)の値となる。
σ1=(ρ1 11+ρ2 22+ρ3 33+ρ4 44) (16)
式(16)で表される相関処理結果の加算結果σ1は、レンジサイドローブのない、合成圧縮パルスである。また、送受信子群4a〜4dからの受信信号により得られる相関処理結果の加算結果σ1においては、送受信子群4a〜4dから送信して受信された成分のみが含まれている。
【0182】
以上は、送受信子群4a〜4dにより得られた結果の加算結果についての説明であったが、同様の説明により、送受信子群4e〜4hからの受信信号により得られる相関処理結果の加算結果においては、送受信子群4e〜4hから送信して受信された成分のみが含まれている。
【0183】
以上のように、送受信子群4a〜4dと送受信子群4e〜4hから同時に送信しているにも係わらず、送受信子群4a〜4dから得られた信号からは送受信子群4a〜4dにより送受信された成分のみが抽出され、送受信子群4e〜4hから得られた信号からは送受信子群4e〜4hにより送受信された成分のみが抽出される。
【0184】
次に、抽出された2つの信号を比較し、送受信子群4a〜4dについて抽出された信号の方が時間軸上で早い時間に受信されていれば、この信号は左側からの信号であると識別するし、送受信子群4e〜4hについて抽出された信号の方が時間軸上で早い時間に受信されていれば、この信号は右側からの信号であると識別する(ステップS103)。
【0185】
以上のように、送受信子群4a〜4dと送受信子群4e〜4hとを異なる送信信号で駆動することにより、送受信子群4a〜4dと送受信子群4e〜4hとを同時に駆動しても、得られた信号がどちらの方向から伝播してきたものかを識別することが可能となる。
【0186】
なお、この発明の実施の形態5においては、送信信号が基づいている系列として、各系列の自己相関関数を加算したときは各自己相関関数のサイドローブが打ち消し合わされ、相異なる上記系列同士の相互相関関数の予め定められた組み合わせを加算したときには互いに打ち消し合わされる系列群を用いたので、送受信子群4a〜4dから送信された信号と、送受信子群4e〜4hから送信された信号とを完全に分離できるという効果を得ることができる。
【0187】
ただし、相関処理結果もしくは加算処理結果のいずれかの段階において、送受信子群4a〜4dから送信された信号と、送受信子群4e〜4hから送信された信号とを分離できるものであれば、他の系列群を用いてもよい。例えば、送受信子群4a〜4dに送信する送信信号が基づいている系列と、送受信子群4e〜4hに送信する送信信号が基づいている系列とを、相関性の小さい系列、例えば互いに直交する符号系列とすれば、送受信子群4a〜4dから送信された信号と、送受信子群4e〜4hから送信された信号とを相関処理の段階で区別することができる。
【0188】
このような互いに直交する符号系列を基本信号とした複数補系列もしくは相補系列に基づいた信号を送信信号とし、受信時に相関処理および加算処理を行えば、方向識別機能による効果と、合成圧縮パルスを得ることによるSN比の改善効果との両方を得ることができる。
【0189】
次に、信号処理部6において、上記モード識別機能により、受信における予め決めれらた所望のモードを識別して抽出する(ステップS104)。モード識別の方法は、実施の形態3に示した方法に準じて行えば良い。
【0190】
信号処理部6において得られた対称モードラム波や非対称モードラム波の成分は、AC波形でもしくは包絡線検波された波形で、表示部7により表示される(ステップS105)。表示部7においては、これらの波形を表示するだけでなく、これらの波形をもとに試験体1の状態を検査した結果、例えば、傷の有無、傷の大きさ、傷の形状もしくは傷の位置といった情報を表示すればよい。
【0191】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6に係る超音波探傷装置について図9、図20および図21を参照しながら説明する。この発明の実施の形態6に係る超音波探傷装置は、図9に示した実施の形態3に係る超音波探傷装置と基本的な構成は同じである。ただし、実施の形態3においては、送受信子群4a〜4dと送受信子群4e〜4hに対し、同じ波形の送信信号を送っていたが、この実施の形態6においては、送受信子群4a〜4dと送受信子群4e〜4hに対し、異なる波形の送信信号を送る機能を有している。
【0192】
ここで、図9に示した超音波探傷装置の実施の形態6における動作を、図20により補足して説明する。図20は、図9に示した超音波探傷装置の実施の形態6における動作に関するフローチャートである。まず、送信に関する1つの所望ラム波モードおよび受信に関する所望のラム波モードを決定する(ステップS111)。送信に関する所望ラム波モードの決定は、実施の形態1に示したのと同じ方法でよい。
【0193】
次に、制御部8から送受信部5、信号処理部6、表示部7を動作させるための制御信号を送信する(ステップS112)。次に、送受信部5において複数補系列に基づいた送信信号を決定し、送信信号を発生する(ステップS113)。このとき、複数補系列の1ビットに対応する信号(以下基本信号と称す)および送信信号は、実施の形態1と同じ方法で決定すればよい。
【0194】
ここで、系列の1ビット毎に、送信信号を送る送受信群を4a〜4dと4e〜4hとの間で交互にスイッチして送る(ステップS114)。例えば、配置位置P1から配置位置P2に送信に関する所望のラム波が伝播する時間をτとし、配置位置P2から補系列のあるビットを送信し終わったと同時に配置位置P1から送信した次のビットに対応する信号が、配置位置P2に到着するように制御を行う。
【0195】
送受信タイミングの具体的例を実施の形態1に示した系列1の場合について図21に示す。図21(a)は配置位置P1での送信信号、図21(b)は配置位置P2での送信信号、図21(c)は試験体1の右方向に送信されるの送信信号、図21(d)は試験体1の左方向に送信されるの送信信号である。なお、図21に示した信号は系列の基本信号を矩形波で示しているが、実際には実施の形態1と同じ方法により決められた基本信号が1ビットに対応している。このようなタイミングで配置位置P1および配置位置P2から送信を行うことにより、試験体1の所望の1方向に沿って伝播する信号のみが、複数補系列で変調された信号となる。このとき、試験体1の他の1方向に関しては、複数補系列で変調された信号とはならない。
【0196】
送受信子群4中の送受信子3は、この送信信号を電気音響変換し(ステップS115)、試験体1の軸方向にラム波を送信する(ステップS116)。これにより、試験体1に対して単一モードからなるラム波が送信される。
【0197】
送信されたラム波は、試験体1中を伝播して傷9により反射され、再び試験体1中を伝播して送受信子3により受信される(ステップS117)。送受信子3で受信したラム波は電気信号に電気音響変換され(ステップS118)、送受信子群4内の送受信子3の受信信号が合計されたものが送受信子群4からの受信信号として出力される(ステップS119)。
【0198】
次に、信号処理部6において、送信された補系列により規定される参照信号を用いて、送受信子群4a〜4hからの受信信号をそれぞれ相関処理する(ステップS120)。参照信号には、試験体1の1方向に沿って送信された信号そのもの、また、試験体1の1方向に沿って送信された信号を送受信子3が送受信総合で有する周波数応答特性を持つフィルタを通した信号を用いる。
【0199】
次に、送信時に選択する補系列を変えてステップS113からステップS120までの手順を繰り返し(ステップS121)、得られた結果を図には示さないが逐次メモリに保存する。次に、複数補系列の全てを選択し終わった時点で、メモリ上の複数個の相関処理の結果を、受信用として選択した送受信子群4のそれぞれについて加算し、この結果をメモリにデータとして保存する(ステップS122)。
【0200】
このとき、1方向に沿って送信された信号については、この加算結果によりエネルギーが1ビットの時間内に圧縮された高いピークの合成圧縮パルスが得られるが、他の1方向に沿って送信された信号については、この加算結果により得られる合成圧縮パルスは時間軸上に分散され、高いピークが得られない。したがって、得られた合成圧縮パルスを所望の1方向からの信号であると識別する(ステップS123)。
【0201】
以上のように、この発明の実施の形態6の方法を用いれば、方向識別の動作を行うのと同時に合成圧縮パルスを得てS/N比を改善できることができるという効果が生じる。
【0202】
次に、信号処理部6において、上記モード識別機能により、受信における予め決めれらた所望のモードを識別して抽出する(ステップS124)。モード識別の方法は、実施の形態3に示した方法に準じて行えば良い。
【0203】
信号処理部6において得られた対称モードラム波や非対称モードラム波の成分は、AC波形でもしくは包絡線検波された波形で、表示部7により表示される(ステップS125)。表示部7においては、これらの波形を表示するだけでなく、これらの波形をもとに試験体1の状態を検査した結果、例えば、傷の有無、傷の大きさ、傷の形状もしくは傷の位置といった情報を表示すればよい。
【0204】
この発明の実施の形態6においては、用いる系列が複数補系列の場合を示したが、この系列に相補系列を用いても、傷9からの反射信号のレベルが低く超音波探傷装置のシステムノイズに埋もれて検出が難しい場合においても、レンジサイドローブを0に保ったまま、S/N比を改善して傷9からの反射信号を検出することが可能になるという効果が得られる。
【0205】
また、上記複数補系列が特公平7−85077号公報に示されている系列群、つまり、各系列の自己相関関数を加算したときは各自己相関関数のサイドローブが打ち消し合わされ、相異なる上記系列同士の相互相関関数の予め定められた組み合わせを加算したときには互いに打ち消し合わされる系列群であれば、特公平7−85077号公報に示されたように、残響エコーが検査結果に及ぼす影響を排除できるという効果が生じる。
【0206】
なお、この発明の実施の形態1から実施の形態6においては、複数補系列もしくは相補系列に基づいた送信信号を用いていたので、レンジサイドローブが0である合成圧縮パルスを得ることができたが、距離分解能が必要でなく、S/N比の改善効果が得られれば十分な場合であれば、複数補系列もしくは相補系列以外の符号変調された系列、例えば擬似ランダム系列に基づいた送信信号を用い、この送信信号に基づいた参照信号により相関処理して圧縮パルスを得る演算を行えば、S/N比の改善効果は十分に得られる。
【0207】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、ラム波を用いた超音波探傷装置において、SN比を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による超音波探傷装置の構成を示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による超音波探傷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】 この発明の実施の形態1による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図4】 この発明の実施の形態1による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図5】 この発明の実施の形態1による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図6】 この発明の実施の形態2による超音波探傷装置の構成を示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態2による超音波探傷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】 この発明の実施の形態2による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図9】 この発明の実施の形態3による超音波探傷装置の構成を示す図である。
【図10】 この発明の実施の形態3による超音波探傷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】 この発明の実施の形態3による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図12】 この発明の実施の形態3による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図13】 この発明の実施の形態3による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図14】 この発明の実施の形態3による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図15】 この発明の実施の形態4による超音波探傷装置の構成を示す図である。
【図16】 この発明の実施の形態4による超音波探傷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】 この発明の実施の形態5による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図18】 この発明の実施の形態5による超音波探傷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図19】 この発明の実施の形態6による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図20】 この発明の実施の形態6による超音波探傷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図21】 この発明の実施の形態6による超音波探傷装置を説明するための図である。
【図22】 従来例に係る超音波探傷装置を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1 試験体、2 励振アセンブリ、2a〜2c 励振デバイス、3 送受信子、4 送受信子群、5 送受信部、51 送信部、52 受信部、6 信号処理部、7 表示部、 8 制御部、9 傷、9a 左側の傷、9b 右側の傷。

Claims (13)

  1. 試験体中にラム波を送信しその反射波を受信する1つ以上の送受信子からなる送受信子群と、
    上記送受信子群に対し信号を送受するための送受信部と、
    上記送受信部により受信した信号を処理する信号処理部と
    備え、
    上記送受信子群は、上記試験体のラム波伝播方向に沿った2箇所に配置され、
    上記送受信部は、符号変調された系列に基づいて複数個の送信信号を発生する送信信号発生機能と、上記送信信号に対応した受信信号を受信する受信機能とを有し、
    上記信号処理部は、上記符号系列により規定される参照信号を用いて上記送信信号に対応した受信信号を相関処理する相関処理機能を有する
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  2. 請求項1に記載の超音波探傷装置において、
    上記符号系列は、複数補系列もしくは相補系列であり、
    上記送受信部は、上記送信信号発生機能により、上記複数補系列もしくは上記相補系列に基づいて複数個の送信信号を発生し、上記受信機能により、上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ受信し、
    上記信号処理部は、上記相関処理機能により、上記複数補系列もしくは相補系列により規定される複数個の参照信号を用いて上記複数個の送信信号に対応した受信信号をそれぞれ相関処理すると共に、複数個の相関処理の結果を加算する加算機能をさらに有する
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  3. 請求項2に記載の超音波探傷装置において、
    上記複数補系列は、各系列の自己相関関数を加算したときは各自己相関関数のサイドローブが打ち消し合わされ、相異なる上記系列同士の相互相関関数の予め定められた組み合わせを加算したときには互いに打ち消し合わされる系列群である
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  4. 請求項2または3に記載の超音波探傷装置において、
    上記試験体は、管であり、
    上記複数補系列もしくは上記相補系列の単位ビットに対応する信号が含む周波数帯域は、送信に関する所望のラム波モードが持つ次数より一つ大きい次数を持つラム波モードのカットオフ周波数よりも低い
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  5. 請求項2または3に記載の超音波探傷装置において、
    上記試験体は、管であり、
    送信に関する所望のラム波モードは、最低次ねじれモードであり、
    上記複数補系列もしくは上記相補系列の単位ビットに対応する信号が含む周波数帯域は、最低次よりも次数が1つ大きいねじれモードのカットオフ周波数よりも低い
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の超音波探傷装置において、
    上記信号処理部は、上記送受信子群の上記試験体への接触状態をチェックするチェック機能をさらに有する
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  7. 請求項6に記載の超音波探傷装置において、
    上記送受信部は、複数の上記送受信子群から一つの上記送受信子群を送信用として選択し、複数の上記送受信子群から一つ以上の上記送受信子群を受信用として選択して送受信を行う機能と、送信用および受信用の上記送受信子群の選択の組み合わせを変えて複数回の送受信を行う機能とを有し、
    上記送受信子群全てを送信用として少なくとも1回選択する
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  8. 請求項7に記載の超音波探傷装置において、
    上記信号処理部は、上記チェック機能による、上記送受信子群の上記試験体に対する接触状態のチェックを、送信用として選択された上記送受信子群から、受信用として選択された上記送受信子群へ直接伝播したラム波成分の振幅を用いて行う
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の超音波探傷装置において、
    上記信号処理部は、複数のラム波モードから受信における所望のモードを識別するためのモード識別機能を有する
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  10. 請求項1ないし9のいずれかに記載の超音波探傷装置において、
    上記信号処理部は、上記試験体の2つの方向から伝播してきたラム波の内、1つの方向からのラム波を識別する方向識別機能を有する
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  11. 請求項1ないし10のいずれかに記載の超音波探傷装置において、
    送信における所望モードのラム波と受信における所望モードのラム波を同じとし、上記所望モードのラム波が上記試験体のラム波伝播方向に沿った2箇所の間を伝播するのに要する時間をτとし、Qを正の整数とした場合、上記複数補系列もしくは上記相補系列の単位ビットに対応する信号のキャリア周波数fは、f=Q/(4τ)である
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  12. 請求項1ないし10のいずれかに記載の超音波探傷装置において、
    記2箇所の配置位置における第一の配置位置に配置された上記送受信子群と、上記2箇所の配置位置における第二の配置位置に配置された上記送受信子群とに同時に送信信号が送信され、
    上記2箇所の配置位置における第一の配置位置に配置された上記送受信子群に送信される上記送信信号と、上記2箇所の配置位置における第二の配置位置に配置された上記送受信子群に送信される上記送信信号とが、異なる系列に基づいた信号である
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
  13. 請求項1ないし10のいずれかに記載の超音波探傷装置において、
    上記複数補系列もしくは上記相補系列の各ビットに対応する信号を、上記2箇所の配置位置における第一の配置位置に配置された上記送受信子群と、上記2箇所の配置位置における第二の配置位置に配置された上記送受信子群とに分けて送信し、上記試験体のラム波伝播方向に沿った1方向について上記複数補系列もしくは上記相補系列に基づいた信号が送信される
    ことを特徴とする超音波探傷装置。
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