JP3703652B2 - 抗菌性合成繊維、該繊維からなる充填材、及び該充填材を用いた寝具類 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌性合成繊維及びこれからなる充填材、並びに該充填材を用いた寝具類に関し、更に詳しくは、有害微生物の生育を阻止する微生物が長期に亘って繊維表面で滞留生育し、悪臭等を発生させる有害微生物の増殖を有効に阻止し得る抗菌性合成繊維及び該繊維からなる充填材、並びに該充填材を用いた寝具類に関する。
【0002】
【従来の技術】
寝具は、睡眠中に人体から発散する汗や老廃物により有害な微生物が繁殖し、この微生物が汗や老廃物に含まれる有機物を分解して不快臭を発生したり、ダニ等の害虫を繁殖させ皮膚炎等を惹き起こす場合がある。このような問題を惹き起こす有害微生物としては、シュードモナス属、セラチア属、アルカリゲネス属、アルテリナリア属、アスペルギウス属、ペニシリウム属等が知られている。
【0003】
かかる問題を解決せんとして、特開平3−234208号公報では、有害微生物の生育を阻止する好気性微生物の水懸濁液を羽毛等の充填材やポリウレタンフォーム等の発泡体、側生地、毛布、シーツ等に塗布した後乾燥させる方法、布、不織布、紙等に含浸乾燥させたシート状物を寝具類の中に組み込む方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし乍ら、寝具等の充填材としては、ポリエステルを始めとして、ポリプロピレン、アクリル等の合繊繊維がかなり大きなウエイトを占めており、これらの合成繊維に上記方法により好気性微生物を繊維表面に塗布乾燥させたとしても、短期間で死滅し、長期に亘って有害微生物の生育を阻止し、悪臭等の発生を防止することができない。
【0005】
本発明は上記問題を解決し、有用な微生物が繊維表面で十分に滞留増殖し、また死滅することなく長期に亘って有害微生物の生育を阻止し、悪臭等の発生を阻止することの可能な抗菌性合成繊維及びこれからなる充填材、並びに該充填材を用いた寝具類を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる実情に鑑み鋭意研究の結果、合成繊維の表面に凹凸を形成することにより有用な好気性微生物の云わば住処を提供するとともに、該好気性微生物の栄養物質を与えることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明の第1の請求項1は、凹凸を形成した合成繊維の表面に、有害微生物の生育を阻止する好気性微生物を好気性微生物の栄養物質とともに付着させたことを特徴とする抗菌性合成繊維を内容とする。
【0008】
好ましい態様としての請求項2は、凹凸を形成した合成繊維が異形断面を有する合成繊維である。
【0009】
好ましい態様としての請求項3は、合成繊維が、遠赤外線放射性、抗菌性、防虫性、脱臭性の1又は2以上の機能性を有する物質を含有又は付着せしめたものである請求項1又は2記載の抗菌性合成繊維である。
【0010】
好ましい態様としての請求項4は、機能性を有する物質が、アルミナ(Al2 O3 )、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO2 )、チタニア(TiO2 )、二酸化ケイ素(SiO2 )、酸化クロム(Cr2 O3 )、フェライト(FeO2 ・Fe3 O4 )、スピネル(MgO・Al2 O3 )、セリア(CeO2 )、ベリリア(BeO)、蛇紋石、絹雲母、電気石(トルマリン)、ゼオライト、セリサイト、水晶、医王石から選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の抗菌性合成繊維である。
【0011】
好ましい態様としての請求項5は、請求項3又は4記載の機能性を有する物質とともに、アルミ、プラチナの粉末等の遠赤外線反射性物質を含有又は付着する抗菌性合成繊維である。
【0012】
好ましい態様としての請求項6は、請求項3、4又は5記載の抗菌性合成繊維において、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム(ボウ硝)、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、重炭酸亜酸化鉄、硫酸亜酸化鉄、ミョウバン、イオウ、ラドン、ラジウムから選ばれる少なくとも1種からなる他の機能性物質を含有又は付着する抗菌性合成繊維である。
【0013】
本発明の第2の請求項7は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗菌性合成繊維からなる抗菌性充填材である。
【0014】
本発明の第3の請求項8は、上記抗菌性充填材を袋内に収容したことを特徴とする寝具類を内容とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者は、特開平3−234208号公報に記載の方法により羽毛や綿、麻等に好気性微生物を塗布した場合と合成繊維に塗布した場合とでは、前者の方が、塗布面からの微生物の離脱が少なく、また長期間に亘って死滅し難いことに着目し鋭意研究の結果、羽毛や綿の場合は表面が凹凸状であり、これらが微生物の住処として機能するとともに、羽毛を構成する蛋白質、脂質等の有機物、無機物や、綿を構成するセルローズや、オイリング工程で使用した油が微生物の栄養源としての役割を果たしていることを知見し、本発明に到達したものである。
【0016】
本発明に用いられる合成繊維は、繊維形成能を有する合成樹脂からなり特に限定されないが、例えば、従来から充填材として用いられるポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、レーヨン、モダアクリル、ポリエチレン等からなるものが好適である。また、モダアクリル、ポリエチレンはマイナスイオンに帯電し、好気性微生物の生育にも好都合である。更に、吸湿(水)性に優れた繊維も好気性微生物の生育に好適である。
【0017】
合成繊維の表面に凹凸を形成する方法としては、例えば断続的に吐出量を変える方法、粗面化する方法、異形断面の口金を用いて紡出する方法等が挙げられるが、特に異形断面の口金を用いて紡出する方法が生産性が高く好適である。異形断面の形状は、星形、特に星形の先端がきのこ状に拡がったものが、微生物の住処及び栄養物質の貯蔵庫として好都合な凹部を形成する点で好ましい。
【0018】
本発明に用いられる有害微生物の生育を阻止し、悪臭の発生を防止する好気性微生物として、例えば、ストレプトマイセス属、ニトロバクター属、アクロモバクター属、ミクロコッカス属、マイコバクテリウム属、ビブリオ属等に属する微生物が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。市販のものとしては、「BIO 520(株式会社サンカイハイテックス社製)」、「ハイ・クリーンΣ(日本ミルフオード株式会社製)」等が挙げられる。
【0019】
上記好気性微生物の栄養物質としては、例えば、単糖、二糖、多価アルコール、有機酸等の炭素源、硝酸塩、アンモニウム塩、アミノ酸、アミド、アミン等の窒素源、リン酸、リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム等の無機質等が挙げられ、これらは適宜組み合わせて、栄養源としての通常の濃度に調整して用いられる。
【0020】
凹凸を形成した合成繊維の表面に上記好気性微生物を栄養物質とともに付着させる方法としては、例えば、上記栄養物質、又は該栄養物質を水、アルコール等に溶解した溶液中に、又は必要に応じて付着力を高めるバイダー物質を添加した溶液中に、好気性微生物を懸濁した液中に合成繊維を浸漬した後乾燥する方法、該液をスプレー等により合成繊維にふりかけた後乾燥する方法等が挙げられる。
【0021】
上記の如くして、表面に凹凸を形成した合成繊維に好気性微生物を栄養物質とともに付着させて得られた抗菌性合成繊維は、特に充填材として好適で、袋内に収容されて寝具、座布団、クッション、枕等の寝具類とされる。また、ソファーやイス等の充填材としても好適である。
【0022】
本発明の抗菌性合成繊維は、非抗菌性合成繊維、即ち、好気性微生物の付着処理の施されていない通常のポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、レーヨン等の充填材と併用することもできる。この場合、抗菌性合成繊維からなる充填材は、少なくとも1個の別の小袋内に収容しておき、抗菌効果が弱くなった場合には、外部に取り出して再び好気性微生物の付着処理を行ってから寝具類内へ戻したり、新しいのと取り替えることも可能である。その他、フェルト、不織布又は織布として寝具類や、ソファーやイスの中に含ませることもできる。
【0023】
本発明に用いられる合成繊維として、遠赤外線放射性、抗菌性、防虫性、脱臭性等の1又は2以上の機能性を有するセラミックスや天然鉱物等を含有又は付着せしめたものを好適に用いることもできる。このような物質としては、例えば、アルミナ(Al2 O3 )系、マグネシア(MgO)系、ジルコニア(ZrO2 )系、チタニア(TiO2 )系の外、二酸化ケイ素(SiO2 )、酸化クロム(Cr2 O3 )、フェライト(FeO2 ・Fe3 O4 )、スピネル(MgO・Al2 O3 )、セリア(CeO2 )、ベリリア(BeO)等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。尚、天然鉱物としては蛇紋石(マグネシウムの含水ケイ酸塩鉱物)、絹雲母、電気石(トルマリン)、ゼオライト、セリサイト、水晶、医王石等が挙げられる。機能性物質は粉末で用いられる。これらの遠赤外線放射性物質は、例えば、血行促進、筋肉の疲労の回復、神経痛や筋肉痛の緩解、胃腸の機能の活発化等の効能も発揮する。
【0024】
また、上記機能性物質とともに、アルミ、プラチナの粉末等の遠赤外線反射性物質や、他の機能性物質を微粉状で添加して合成繊維に含有又は付着させてもよい。
例えば、他の機能性物質として温泉医療物質を付着・含有させることにより、日常生活の中で温泉医療効果を受けることができる。このような温泉医療物質は、温泉に含まれ医療効果のある物質であれば特に制限されず、例えば炭酸泉として、慢性胃カタルや慢性便秘に効果がある炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;重炭酸土類泉として、慢性湿疹や皮膚病に効果がある重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム等;重ソウ泉として、創傷、火傷、皮膚病、慢性胃カタルに効果がある重炭酸ナトリウム;硫酸塩泉として、常習便秘、胆石症に効果のある硫酸ナトリウム(ボウ硝)、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等;鉄泉として、婦人病、貧血症、慢性リウマチに効果がある重炭酸亜酸化鉄、硫酸亜酸化鉄;ミョウバン泉として、慢性皮膚病、多汗症、婦人科疾患に効果があるミョウバン;イオウ泉として、慢性皮膚病、関節リウマチ、筋肉リウマチ、神経痛に効果があるイオウ;放射能泉として、慢性関節リウマチ、筋肉リウマチ、神経痛、慢性胃腸カタル、慢性皮膚病に効果があるラドン、ラジウム、等が好ましいものとして例示され、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0025】
金、白金、銀、銅の粉末も遠赤外線反射機能の他に、健康増進作用や防黴、防菌、防虫等の効果を有するので好ましい。
例えば、金は漢方でも治療や美容に良く用いられ、金に接するだけで血行が良くなり、高血圧、ぜんそく、便秘等に効果があり、また金箔師にガンの人が少ないとも云われており、金箔入り清酒や金入りクリーム等が市販されている。これらは金の持っているイオン(電気)の作用であることが指摘されている。
また、遠赤外線反射性物質を混入させることにより、該反射性物質の反射効果により遠赤外線が打ち返され、遠赤外線の利用効率が一層高められる。
【0026】
【発明の効果】
叙上のとおり、本発明の抗菌性合成繊維は、凹凸を形成した合成繊維の表面に有害微生物の生産を阻止する好気性微生物を栄養物質とともに付着せしめたことにより、繊維表面の凹部が恰かも好気性微生物の住処として機能して該微生物を繊維表面に滞留させるとともに、更に、栄養物質と一緒に付着させたので、栄養不足による活性の低下や死滅が防止され、長期に亘って抗菌効果を効率的に発揮せしめることができる。
【0027】
また、好気性微生物を付着させる合成繊維として、遠赤外線放射性、抗菌性、防虫性、脱臭性等の機能を有する物質、遠赤外線反射物質、温泉医療物質、金、白金、銀、銅等の粉末を含有させたものを用いることにより、遠赤外線による血行促進、筋肉疲労の緩解等の効能、金、白金等による遠赤外線反射機能、健康維持増進作用、防菌、防虫作用、温泉医療物質による医療効果等を相乗的に享受することができる。
Claims (8)
- 凹凸を形成した合成繊維の表面に、有害微生物の生育を阻止する好気性微生物を好気性微生物の栄養物質とともに付着させたことを特徴とする抗菌性合成繊維。
- 凹凸を形成した合成繊維が異形断面を有する合成繊維である請求項1記載の抗菌性合成繊維。
- 合成繊維が、遠赤外線放射性、抗菌性、防虫性、脱臭性の1又は2以上の機能性を有する物質を含有又は付着せしめたものである請求項1又は2記載の抗菌性合成繊維。
- 機能性を有する物質が、アルミナ(Al2 O3 )、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO2 )、チタニア(TiO2 )、二酸化ケイ素(SiO2 )、酸化クロム(Cr2 O3 )、フェライト(FeO2 ・Fe3 O4 )、スピネル(MgO・Al2 O3 )、セリア(CeO2 )、ベリリア(BeO)、蛇紋石、絹雲母、電気石(トルマリン)、ゼオライト、セリサイト、水晶、医王石から選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の抗菌性合成繊維。
- 請求項3又は4記載の機能性を有する物質とともに、アルミ、プラチナの粉末等の遠赤外線反射性物質を含有又は付着する抗菌性合成繊維。
- 請求項3、4又は5記載の抗菌性合成繊維において、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム(ボウ硝)、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、重炭酸亜酸化鉄、硫酸亜酸化鉄、ミョウバン、イオウ、ラドン、ラジウムから選ばれる少なくとも1種からなる他の機能性物質を含有又は付着する抗菌性合成繊維。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗菌性合成繊維からなる抗菌性充填材。
- 請求項7記載の抗菌性充填材を袋内に収容したことを特徴とする寝具類。
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