JP3703606B2 - 音響再生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、空間音響再生装置に関し、特に、設定された空間音響環境を忠実に再生する空間音響再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2を参照して仮想音像定位の原理を説明する。図2(a)は目標位置設置音源による再生を説明する図であり、図2(b)は実音源による再生を説明する図である。
或る目標位置に設置された音源が発生する音刺激を受聴者の各耳において模擬することを考える。この場合、受聴者に対して目標位置に音を定位させることができる。実際に音響を発生する実音源の位置と定位される位置とを異ならせることも可能である(“3D−SOUND”D.R.Begault,AP Professional、参照)。例えば、図2(b)に示される如く2個の実音源の位置が各々受聴者左右前方に配置される場合を想定する。図2(a)に示される如く目標位置に設置された音源による音響x(t)* L (t)、x(t)* R (t)を模擬するには、係数gL (t)、gR (t)を音源信号x(t)に畳み込み演算する。但し、
L(t)=(hRR(t)*hL(t)-hRL(t)*hR(t))/(hLL(t)*hRR(t)-hLR(t)*hRL(t))
R(t)=(hLL(t)*hR(t)-hLR(t)*hL(t))/(hLL(t)*hRR(t)-hLR(t)*hRL(t))
ここで、記号*は畳み込み演算、/は逆畳み込み演算を示す。また、係数gL (t)、gR (t)は、それぞれ、目標位置に設置された音源から受聴者の各耳までの音響伝達関数hL (t)、hR (t)を、実音源から受聴者各耳までの音響伝達関数hLL(t)、hRL(t)、hLR(t)、hRR(t)を示す。その内には、各実音源から空間を伝搬して異なる側の耳に到達する成分であるクロストークhRL(t)、hLR(t)も含まれている。音を忠実に模擬するには、クロストークキャンセラと称される回路を採用することが提案されている(Schroeder,M.R.and Atal,B.S.(1963).“Computer simulation of sound transmission in rooms,”in IEEE International Convention Record(7).New York:IEEE Press参照)。
【0003】
しかし、一般に音響伝達関数は受聴者および音源の位置に依存する。従って、従来技術においては受聴者と実音源の位置関係が限定されていることが使用の前提条件とされている。即ち、所望の音像定位を実現するには、受聴者の姿勢および挙動をも制約する。この問題に対処するために、所望の音像定位を実現する聴取位置を拡大する試みもなされている。しかし、拡大範囲は音波の波長以下の狭い領域、数千Hz以上の高周波数成分では数cm以内に限られる。波長が短い高周波数成分も音像定位に寄与するところから、拡大範囲はこの様な狭い領域に限られる。
【0004】
一方、ヘッドホンの如く受聴者の各耳に近接した発音源を実音源として使用する両耳受聴装置において、受聴者の位置および向きを検出する装置を具備することが提案されている。ここで、検出された位置および向きを手がかりとして逐次に合成された音響伝達関数を使用して入力された音に処理を施す。ところがこの装置によっても目標位置からの音を再現しない。これは音響伝達関数が受聴者個人によっても異なることによる。
【0005】
以上のことから、所望の音像定位を実現することは困難であった。左右方向への定位制御は受聴者に関わらず頑健である一方で、頭内位置、目標位置と定位される位置との間の前後誤判断が多数の受聴者にしばしば認められる。
以上の問題を解決するために、実音源としてスピーカとヘッドホンとを併用することが提案されている(特開平2−126795号公報参照)。例えば、スピーカを受聴者前方に配置させれば前方への音像定位が確実になる。ここで、複数のスピーカを実音源とした場合に各スピーカから発する音響の強度比を変化させれば各スピーカ間において音像定位位置を変化することができる。しかし、受聴者の位置、向きの変化および受聴者の個人差に対応して音響を変化させる構成を欠いている。この場合、目標位置から各耳に到達する音響を模擬しないので、目標位置への音像定位は保証されない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、予め設定された音響環境を受聴者の各耳に忠実に再生する上述の問題を解消した空間音響再生装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
実音源スピーカ12から音響を提示し、受聴者の耳における音響の内の実音源スピーカ12による寄与分の逆位相信号を推定する逆位相信号推定部を有し、逆位相信号に基づく信号を供給して発音源11L、11Rから音を提示する音響再生装置を構成した。
【0008】
上述の音響再生装置において、逆位相信号推定部は、実音源スピーカ12への入力信号を入力する適応フィルタ24L、24Rおよび発音源11L、11R近傍に各々配置したマイクロホン13L、13Rを有し、マイクロホンで収録された信号から発音源11L、11Rが提示した音響に相当する信号を減算して得られた信号と適応フィルタの出力信号を減算26L、26Rして得られた信号を適応フィルタ24L、24Rを動作するための誤差信号として使用する音響再生装置を構成した。
【0009】
【発明の実施の形態】
実音源としてスピーカ、およびヘッドホンその他の受聴者の各耳に近接配置した発音源を併用した空間音響再生装置を利用する。この場合、受聴者前方或は後方にスピーカを設置する。ここで、受聴者の各耳における音の内のスピーカによる寄与分の逆位相信号を逐次に推定する構成を具備する。
【0010】
更に、スピーカによる寄与分の逆位相信号を推定する構成として、入力信号に作用して受聴者の各耳に近接配置した発音源に対して信号を出力する適応フィルタを有する。そして、受聴者の各耳近傍にマイクロホンを配置する。従って、このマイクロホンは受聴者の各耳に近接配置した発音源近傍に配置される。上述の適応フィルタを動作する誤差信号として、マイクロホンで収録された信号から発音源が提示した音響に相当する信号を減算して得られた信号から更に上述の適応フィルタの出力信号を減算して得られた信号を使用する。
【0011】
ここで、受聴者前方に設置された1個のスピーカと受聴者近傍に配置された音源である1組のヘッドホンを使用して音響を再生する空間音響再生装置について考える。左右2チャネルより成る1系統の入力信号が1個のスピーカと1組のヘッドホンに供給されるまでの過程を説明する。簡単のために、この発明が左耳におけるスピーカ音響による寄与の逆位相信号を推定する場合について説明する。
【0012】
1系統の入力信号が左右2チャネルの入力信号に分岐されて、それぞれ、左強度調節部或いは右強度調節部に入力される。左強度調節部に入力された左チャネルの入力信号はスピーカ用信号およびヘッドホン用信号に分岐され、スピーカ用或いはヘッドホン用として供給される。そして、この発明は左耳に提示された音響の内のスピーカによる寄与分の逆位相信号を逐次に推定する推定回路が備えられている。この推定回路から出力されたスピーカによる音響の寄与分がヘッドホンへの出力に先だって減算される。減算によりヘッドホンに供給される信号は相殺される。従って、左耳には音響がヘッドホンのみから提示された場合と同等な音響が提示される。右側については入力信号を遮断する。従って、右耳にはヘッドホンから音響は提示されず、スピーカのみから音響が提示される。
【0013】
ここで、受聴者に提示された音響の内のスピーカによる寄与分の逆位相信号を逐次に推定する動作を説明する。但し、左耳に提示された音響の内のスピーカによる寄与分の逆位相信号を推定する場合について触れる。分岐入力されたスピーカ用信号は上述の適応フィルタに供給される。一方、ヘッドホン用信号からスピーカ用信号が減算されて別個のフィルタに入力される。このフィルタを通過した信号はヘッドホンに供給される。また、この信号は受聴者の左耳に近接したマイクロホンで収録された信号であるマイクロホン信号を減算する。この過程において、近接するヘッドホン発音源から提示された音響の寄与分が除去される。従って、スピーカによる寄与分が残る。このスピーカによる寄与分から上述の適応フィルタの出力を減算して適応フィルタを動作する誤差信号とする。従って、上述の適応フィルタの係数としてスピーカからマイクロホンまでの伝達特性の逆位相となる値が推定される。従って、入力信号に対する適応フィルタの出力としてマイクロホン位置におけるスピーカによる寄与分の逆位相信号が予測される。
【0014】
ところで、人間の知覚において先行音効果という現象が知られている。即ち、同時に複数の音源から互いに相関のある音が放射されているとき、受聴者は音波が先に到達する耳の方向に音を定位する。先の例において、左耳へのヘッドホンを通じた音の提示を遅らせれば、右耳への音を先に提示することができる。その上に、スピーカからの音の提示であれば受聴者の違いに関わらず前方に置かれたスピーカの方向への定位の手がかりが得られる。これにより受聴者は右前方への定位が可能になる(先行音効果:第一波面の法則・ハース効果とも呼称される。「空間音響」ブラウエルト著、森本、後藤編著、鹿島出版会 参照)。
【0015】
【実施例】
この発明の実施例を図を参照して具体的に説明する。図3は受聴者と知覚位置の位置関係を説明する図である。図3(a)は両耳間差による制御を説明する図であり、図3(b)は受聴者回転と知覚位置の関係を説明する図である。
図3(a)に示される如く、知覚される音像位置は左右両耳間における音刺激の強度差が生ずる場合に偏ることが知られている(「空間音響」ブラウエルト著、森本、後藤編著;鹿島出版会 参照)。知覚される位置の変位の程度は左右両耳間における強度差或は左右両耳間における音波の到達時間差を手がかりに制御される。従って、スピーカおよびヘッドホンから放射される音響の強度比或いは時間差を使用して定位位置を制御することができる。ここで、ヘッドホンの左側から左耳に提示される音響の強度を減少させるか、或いは左耳への遅延時間を大きくする程知覚される音像位置を右側へ移動することができる。音像位置とヘッドホン用信号とスピーカ用信号の強度比と時間差の対応関係が予め既知であれば、目標位置への音像位置制御を定量的に実施することができる。
【0016】
この発明において、位置が固定されたスピーカから音響を提示すれば、音像位置を、受聴者を基準として相対的に受聴者自身の移動或いは回転の反対方向に移動する補償をすることができる。これを図3(b)を参照して説明するに、知覚される音像位置がスピーカ位置よりも右側の場合を考える。受聴者が左回りに回転すれば、位置が固定されたスピーカは受聴者を基準として相対的に右回りに回転したことになる。ここで、ヘッドホンから左耳に提示される音響の強度或いは到達時間はスピーカから右耳に提示される音よりも減少或は遅れる。よく知られる通り、スピーカのみから受聴者の両耳に音響を提示すれば受聴者に常にスピーカ位置に音響を定位させることができることを考え併せれば、スピーカ位置よりも音像位置を右側へ移動することができる。即ち、受聴者自身の移動或いは回転に伴う知覚される音像位置の補償は目標位置がスピーカ位置である場合に限定されない。
【0017】
図3(b)において、上述した作用における左右を交換すれば左右対称な方向に音を定位させることができる。また、スピーカ位置の受聴者位置を基準とした前後を交換すれば前後対称な方向に音像を定位させることができる。即ち、この発明は水平面全方向に亘って受聴者に目標位置への音像定位を実現することができる。
【0018】
この発明の実施例を図1を参照して更に具体的に説明する。この実施例においては実音源スピーカ12を1個使用し、左右2チャネルの1系統の信号が入力されることを前提としている。
図1に示される空間音響再生装置の実施例は、左ヘッドホン発音源11L、右ヘッドホン発音源11R、スピーカ12、左マイクロホン13L、右マイクロホン13R、左逆特性模擬フィルタ14L、右逆特性模擬フィルタ14R、左減算部15L、右減算部15R、左遅延部16L、右遅延部16R、左強度調節部21L、右強度調節部21R、加算部22、左可変フィルタ23L、右可変フィルタ23R、左適応フィルタ24L、右適応フィルタ24R、左減算部25L、右減算部25R、左減算部26L、右減算部26R、左遅延部27L、右遅延部27R、左ヘッドホン用信号31L、右ヘッドホン用信号31R、左スピーカ用信号32L、右スピーカ用信号32R、目標位置制御信号33を構成として具備している。
【0019】
以上の構成の内の受聴者各耳における音刺激の内のスピーカによる寄与分の逆位相信号を逐次に推定する逆位相信号推定部は、図1において斜線を付与して示した左マイクロホン13L、右マイクロホン13R、左逆特性模擬フィルタ14L、右逆特性模擬フィルタ14R、左減算部15L、右減算部15R、左遅延部16L、右遅延部16R、左可変フィルタ23L、右可変フィルタ23R、左適応フィルタ24L、右適応フィルタ24R、左減算部25L、右減算部25R、左減算部26L、右減算部26Rにより構成される。
【0020】
以上の実施例について、実線矢印により示される信号の流れを説明する。説明の都合上、構成の内の左側Lに着目して説明する。左ヘッドホン用信号31Lと左スピーカ用信号32Lは左強度遅延調節部21Lに各々入力される。左ヘッドホン用信号31Lは左減算部25Lに入力される一方、左スピーカ用信号32Lは左減算部25Lおよび加算部22に供給される。左減算部25Lは左ヘッドホン用信号31Lから左スピーカ用信号32Lを減算して、その出力を左可変フィルタ23Lに通過させる。左可変フィルタ23Lを通過した信号は左逆特性模擬フィルタ14Lを通過して左ヘッドホン発音源11Lに供給されると共に、左遅延部16Lを通過せしめられる。左減算部15Lは左マイクロホン13Lで収録された信号から左遅延部16Lから出力した信号を減算する。ところで、加算部22においてLR間でスピーカ用信号が加算されて左遅延部27Lとスピーカ12へ供給される。左遅延部27Lの出力は左適応フィルタ24Lに入力される。左適応フィルタ24Lの出力信号は左減算部26Lに入力される。左減算部26Lは左減算部15Lの信号から左適応フィルタ24Lの信号を減算する。左減算部26Lからの信号を左適応フィルタ24Lを動作させる誤差信号とする。但し、左逆特性模擬フィルタ14Lにおけるフィルタ係数を左ヘッドホン発音源11Lと左マイクロホン13Lとの間の音響伝達関数の逆特性に設定する。左遅延部16Lの遅延時間は、左マイクロホン13Lに到達する音響と左遅延部16Lの出力が同期する遅延時間に設定される。また、左遅延部16Lの遅延時間は左遅延部27Lの遅延時間と同一に設定する。このとき、左減算部15Lの出力信号として左マイクロホン13Lによる収録信号から左ヘッドホン11L発音源に由来する成分が除去される。即ち、スピーカ12からの寄与が残る。依って、左減算部26Lの出力信号として、スピーカ12からの寄与から左適応フィルタ24Lからの出力信号を減算した差が得られる。これが誤差信号として左適応フィルタ24Lの適応動作に使用されて、スピーカ12から左マイクロホン13Lまでの音響伝達関数hL の逆位相となる値−hL が逐次に推定される。この値−hL は左適応フィルタ24Lにおいてフィルタ係数として入力信号に作用するので、結果として出力信号としてスピーカ12からの寄与の逆位相信号が推定される。左可変フィルタ23Lにおけるフィルタ係数として左適応フィルタ24Lで推定されたものが使用されるので、左可変フィルタ23Lと左適応フィルタ24Lへの入力信号に対してフィルタ係数を通じて常に同一のフィルタ係数−hL が作用される。フィルタ係数−hL は左適応フィルタ24Lにおいて逐次的に推定されるので、受聴者の位置、向きの変化および受聴者間の個人差に関わらず受聴者の左耳にはスピーカ12からの寄与分が除去された音が提示される。右側Rについては、右強度調節部21Rにおいて、右ヘッドホン用信号31Rおよび右スピーカ用信号32Rの双方を目標位置制御信号33により遮断状態にしている。右側の各部には信号が流れないので、ヘッドホン11Rから音響は提示されない。従って、受聴者の右耳においては、左スピーカ用信号32Lが供給されたスピーカ12から放射された音響が提示される。
【0021】
この場合、知覚される音響の位置をスピーカ12の位置より右側に制御する手がかりが得られる。右耳へ提示されるスピーカの音響は左耳に提示されるヘッドホンの音響よりも早く到達するからである。ここで、左ヘッドホン用信号31Lを左スピーカ用信号32Lよりも遅延させるか或いは強度を弱くして、右ヘッドホン用音響信号の強度を増加させれば、知覚される音像位置を前方から右側方まで移動することができる。ここで、目標位置制御信号33に従って目標位置と対応づけられた強度比が与えられる様に左強度調節部21Lで左ヘッドホン用信号31Lの強度を制御することにより、知覚される音像位置を設定することができる。
【0022】
以上の実施例において、左右の作用を交換すれば左右対称な方位への音像定位を実現することができる。また、左右両者について、左右ヘッドホン用信号31Lと31Rの供給を遮断すれば、スピーカ12からの音響のみが放射されることになる。この場合、定位される音の方向はスピーカ位置となる。また、左右音響を提示するスピーカ位置の前後を交換すれば、前後対称な方位への音像定位が実現される。結局、全周囲に亘る音像定位制御をすることができる。
【0023】
一般に、ヘッドホンのみから音響を提示したとき、受聴者の位置、向きが変化しても知覚される音像位置は受聴者を中心として相対的に変化しない。しかし、この実施例において、スピーカの位置が固定されていれば受聴者の位置、向きが変化しても知覚される音像の絶対的位置の移動は抑制される。例えば、図3(b)に示される如く、知覚される絶対位置の移動量は受聴者の向きひいてはヘッドホンによる絶対的目標位置の変化量より減少する。即ち、知覚される音像位置は受聴者の位置、向きの変化と逆方向に受聴者を中心として相対的に移動し、受聴者の位置、向きの変化に対する受聴者各耳における音響環境が自動的に補償される。
【0024】
以上の構成の内の受聴者の各耳における音刺激の内のスピーカによる寄与の逆位相信号を逐次に推定する構成とヘッドホンおよびマイクロホンを各受聴者毎に並列に機能させれば、同時に複数の受聴者に対して独立に上述の音像定位の効果を実現することができる。
【0025】
【発明の効果】
上述したこの発明の空間音響再生装置は、受聴者の位置、向きの変動および受聴者の個人差に関わらず提示された音響内のスピーカによる寄与分の逆位相信号を推定する。これにより、スピーカに近い側の耳にスピーカのみの音響を提示し、反対側の耳にはスピーカの音響の寄与分を逐次に除去することができる。従って、スピーカを受聴者の前方或いは後方に設置することにより所望の目標位置への定位を受聴者の個人差に関わらずに実現することができる。そして、音像位置を受聴者の位置、向きの変動に対して受聴者位置を基準として相対的に反対側へ補償変動することができる。即ち、所望の目的位置へ音像定位をするに際して、実現可能な受聴位置の制限が緩和される。また、受聴者の各耳における音刺激の内のスピーカによる寄与の逆位相信号を逐次に推定し、受聴者近接用発音源を各受聴者毎に備えることにより、同様な効果を複数の受聴者に対して実現することができる。
【0026】
要約するに、この発明によれば、受聴者の位置、向きの変化および受聴者の個人差に関わらず所望の目標位置への音像定位を容易に実現することができる。特に、両耳受聴をする場合に起こりがちな前後誤判断、頭内定位を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例を説明する図。
【図2】仮想音像定位の原理を説明する図。
【図3】受聴者と知覚位置の位置関係を説明する図。
【符号の説明】
11L 左ヘッドホン発音源
11R 右ヘッドホン発音源
12 スピーカ
13L 左マイクロホン
13R 右マイクロホン
14L 左逆特性模擬フィルタ
14R 右逆特性模擬フィルタ
15L 左減算部
15R 右減算部
16L 左遅延部
16R 右遅延部
21L 左強度調節部
21R 右強度調節部
22 加算部
23L 左可変フィルタ
23R 右可変フィルタ
24L 左適応フィルタ
24R 右適応フィルタ
25L 左減算部
25R 右減算部
26L 左減算部
26R 右減算部
27L 左遅延部
27R 右遅延部
31L 左ヘッドホン用信号
31R 右ヘッドホン用信号
32L 左スピーカ用信号
32R 右スピーカ用信号
33 目標位置制御信号

Claims (1)

  1. 実音源スピーカおよび受聴者の一方の耳に近接配置した発音源を有する音響再生装置において、
    前記実音源スピーカから音響を提示し、
    受聴者の前記一方の耳における音響の内の前記実音源スピーカによる寄与分の逆位相信号を推定する逆位相逐次信号推定部を有し、
    前記逆位相信号に基づく発音源用信号が前記発音源へ供給され、前記発音源から音響を前記一方の耳へ提示することを特徴とする音響再生装置。
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