JP3702409B2 - 風洞実験装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、高層ビルや橋梁等の大型構造物の耐風安定性等を実験・計測するための風洞実験装置に関し、より詳しくは、限られたスペースを有効に活用し得るコンパクトな構成で、種々の実験・計測が可能な多機能風洞実験装置を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の風洞としてはゲッチンゲン型やエッフェル型の風洞が知られている。前者は風路が閉ループ状になっており、気流が回流するタイプであるのに対し、後者は風路への気流取入口と測定胴下流の吐出口とが開放されているタイプであり、外部大気の変動の影響を避けるため室内還流方式を採用するのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主要な目的は、構造物に作用する外力のうち、空気や水などの流体に起因する静的・動的外力に焦点を当て、これらの流体力の諸特性、および流体力と構造物の応答挙動との相互作用、さらに構造物の多様化に伴う新しい流体力学的諸現象、等の解明のために各現象をシミュレートするための実験装置群を具備した多機能風洞実験装置を提供することにある。また、そのために、精度が良く、しかも限られたスペースを有効に活用し得るコンパクトな風洞実験装置を提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、送風機としてシロッコファンを採用し、拡散胴の拡散角を大きくとることにより、整流胴気流方向の長さを短縮したものである。これにより、各種実験を実施するための測定部長さを充分確保できるコンパクトな室内回流式の風洞実験装置が実現した。測定胴を充分長くとることによって、測定部に精度の良い気流を発生させることができる。
【0005】
また、風洞の壁面の一部を鉛直軸まわりに回転可能な回転パネルで構成し、前記回転パネルの一方を平坦面とし、他方の壁面を曲面状とし、前記回転パネルを反転させることにより異なる風路断面積を形成させるようにしたものである。これも風洞実験装置のコンパクト化に大いに寄与している。
【0006】
さらに、複数の回転ブレードと開口パネルにより主流方向変動気流を発生させる主流方向変動気流発生装置を小断面風路に配置したものである。
【0007】
前記主流方向変動気流発生装置が、上下2ヶ所に8等分の扇形スリットを有するパネルと、前記扇形スリットの中心を軸心として回転自在に支持した4枚翼の回転ブレードと、前記回転ブレードを同期回転させるためのタイミングベルトと、前記回転ブレードを回転駆動するための電動機とを具備した構成とすることができる(請求項2)。
【0008】
前記パネルを風洞の所定部位に着脱自在とすることにより(請求項3)、必要なときにのみパネルを取り付けることができる。その際、キャスタ等の移動手段を設けておくと着脱作業が容易となる。
【0009】
請求項4の発明は、送風機としてシロッコファンを採用し、拡散胴の拡散角を大きくとることにより、整流胴気流方向の長さを短縮し、測定胴長さを充分とり、かつ、測定胴内の模型取付け部の天井および床面に、主流方向に対して直角に延びるスリットを設け、各スリットに沿って複数のスピーカーを配列した音響付加装置を具備したことを特徴とする、室内回流式の風洞実験装置である。
【0010】
前記音響付加装置により模型の上側面および下側面に同相もしくは逆相で単一周波数の正弦波状の圧力変動を与えることができる(請求項5)。
【0011】
請求項6の発明は、送風機としてシロッコファンを採用し、拡散胴の拡散角を大きくとることにより、整流胴気流方向の長さを短縮し、測定胴長さを充分とり、かつ、外輪を風洞の壁面に固定するとともに床面に立設したフレームにより支持し、内輪をモータで回転駆動するようにしたベアリングと、前記内輪に固定した一対のバーと、前記一対のバーの両端間に張設した引っ張りバネと、前記引っ張りバネの中間部間に掛け渡した、中心部に被試験体を支持するための中間バーとで構成したバネ支持を具備したことを特徴とする、室内回流式の風洞実験装置である。このバネ支持装置により、被試験体の仰角(姿勢)を種々設定し、その条件下で被試験体の振動応答を計測することができる。また、フレーム、ベアリングにはモータとクランクシャフト、スライドベアリングにより駆動される被試験体の強制加振装置を設置することが可能であり、種々の仰角下で鉛直方向並進運動、水平方向並進運動、ねじれ運動等の振動状態を被試験体に対して個々に与えることができる。たとえば、長大橋梁桁断面の基本的フラッター性能を調査し、対フラッター性能により優れた桁断面開発を行うため、および構造物の各種空力現象を解明するために二次元剛体模型をバネ支持し、その振動応答特性を計測するために用いるほか、強制振動状態における非定常空気力や非定常圧力の計測等々種々の実験・計測が可能である。さらに、大径の、それゆえに質量の大なるベアリングをフレームで支持し、被試験体を支持する部材をこのベアリングから直接風洞内に臨ませたことにより、風洞の壁面ノイズが遮断され測定精度が向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1および図2に風洞実験装置の全体概観を示す。図1は実験室の建屋内に据え付けた状態の風洞(1)の側面図であり、図2はその平面図である。これらの図から分かるように、この風洞(1)はエッフェル型の室内還流タイプである。風洞(1)の測定胴部分の壁面は透明アクリル板で構成され、内部の被試験体(模型)の様子などが外部から透視できるようになっている。風洞(1)の測定胴部分に配設さた各種の装置について、以下に順次説明する。
【0013】
風洞(1)の上流端に、電動機(2)で駆動される送風機(3)が設置されてある。送風機(3)の吹出口から吐出された気流は拡散胴(4)、整流胴(5)および第一縮流胴(6)を経て第二縮流胴(7)へと進み、測定胴内を流過して下流端の開口から実験室内に吹き出し、実験室内を回流して再び送風機(3)に吸い込まれる。送風機(3)として具体的にはシロッコファンを採用するとともに、拡散胴(4)の拡散角を大きく(図示例の場合約60゜)とることにより、送風機(3)自体の気流方向の長さが短いこととあいまって、風洞(1)の全長を著しく短縮することができた。その結果、狭い空間を利用した室内回流式で、小さな絞り比でも十分な精度を確保できる、コンパクトな多機能風洞実験装置が実現したものである。
【0014】
また、第二縮流胴(7)は、図2から分かるとおり、風路の左右に設置された一対の回転パネル(8)を有する。各回転パネル(8)は鉛直軸を中心として回転可能であり、図2に実線で示された状態では、平坦なパネル壁面(8a)が大断面の風路壁面の一部を構成している。この状態から回転パネル(8)を180゜回転させると、曲面状のパネル壁面(8b)が図2に想像線で示す小断面の風路壁面の一部を構成することとなる。このように回転パネル(8)を反転させるだけの簡単な操作で、単一の風洞(1)において大断面と小断面の二様の風路断面積を選択的に形成させることができる。なお、測定胴の風路断面積を変更可能とするため、回転パネル(8)の下流側の風洞壁面を構成するパネルも風路を横断する方向に移動可能になっている。
【0015】
第一縮流胴(6)の下流側に、乱流境界層の制御とともに様々な地表面粗度に対応する大気境界層を風洞内に模擬する目的で、スパイヤーとラフネスブロックよりなる乱流境界層発生装置が設けられてある。この乱流境界層発生装置は、たとえば、都市上空風、海上風、草原上風をそれぞれ模擬できるものである。スパイヤーは幾何学形状の非定常変化が可能であり、ラフネスブロックとの併用により乱流諸特性の制御が可能である。なお、この乱流境界層発生装置は従来のものと実質上変わるところがないため図示を省略する。
【0016】
模型等の供試体(図示せず)は図3および図4に示すバネ支持装置(9)により風洞(1)内の所定位置に支持される。バネ支持装置(9)は風洞(1)の壁面に大径のベアリング(11)を取り付け、ベアリング(11)の外輪(11a)を固定して内輪(11b)を回転可能とし、その内輪(11b)に引っ張りバネ(12)を介して中間バー(13)を浮遊状態で連結したものである。ベアリング(11)の外輪(11a)は小断面測定胴の両側の床面に立設したフレーム(10)で支持させる。内輪(11b)の側面に扇形のウオームホイール(14b)を固定するとともに、外輪(11a)の側面に減速機付きサーボモータ(15)を固定してその出力軸にウオームホイール(14b)と噛み合うウオーム(14a)を取り付け、ウオームギヤ(14)を構成させる。
【0017】
内輪(11b)の側面に上下一対のバー(16)を固定し、この一対のバー(16)の両端間に引っ張りバネ(12)を張設する。両引っ張りバネ(12)の中間部間に中間バー(13)を架け渡して引っ張りバネ(12)のバランスにより浮遊状態となす。中間バー(13)の中心部には、風胴(1)の壁面の貫通孔(17)から風路内に向けて延びた取付部(18)があり、この取付部(18)に模型(図示せず)を取り付けるのである。風洞(1)の壁面に貫通孔(17)が存在することから、戻り気流対策として防風カバー(1a,1b)を設けてある。また、風圧による横揺れを防止するため、内輪(11b)の側面から主流方向にアーム(19)を出し、その端部にヒンジ(20)を設けてボス(21)をはめ込み、そのボス(21)とベアリング(11)の中心を結ぶ板(22)を取り付け、板(22)の両端部に板バネ(23)を付けてヒンジ(20)を支点として模型が自由に上下運動できるようにし、かつ、横振れを防止する。
【0018】
サーボモータ(15)とウオームギヤ(14)とで構成される駆動装置によって、内輪(11b)を所望の角度位置に旋回させたり、往復揺動運動を行わせることができる。内輪(11b)の回転に伴って模型の傾斜角度が変化する。このようにして模型の固定および傾斜角度を円滑かつ容易に自動設定できる。しかも、このバネ支持装置により、模型の仰角変更と、後述する加振とを同時に行うことができる。設定傾斜角はたとえば−15゜〜+15゜とし、連続的に設定可能である。このベアリング(11)の設定角度等の調整は実験室内の操作盤よりサーボモータ(15)を遠隔制御することにより、あるいは、機側より手動にて行うことができる。模型の振動自由度は鉛直たわみ、ねじれ、流れ方向、ローリングとし、各モードの変更は手動にて行う。
【0019】
さらにバネ支持装置(9)には、自由振動実験用模型減衰装置、自由振動実験用模型加振装置、強制振動実験用模型加振装置等が併設される。自由振動実験用模型減衰装置は、たとえば、長大橋梁桁断面の基本的フラッター性能を調査し、対フラッター性能により優れた桁断面開発を行うための自由振動実験に使用される。バネ支持された2次元剛体模型の構造減衰を所定の値に調整するための装置である。鉛直たわみ、ねじれ、流れ方向の3つのモードで個々に減衰制御が可能である。自由振動実験用模型加振装置は、たとえば耐風性に優れた長大橋の桁断面開発を目的として、バネ支持された二次元剛体模型を強制加振するための装置であり、自由振動法による非定常空気力測定その他に用いられる。鉛直たわみ、ねじれ、流れ方向の三つのモードで個々に加振制御が可能である。模型の左右で、同相および逆相で各モードの単一周波数の正弦加振が可能である。
【0020】
強制振動実験用模型加振装置(31)は、たとえば長大橋のフラッター性能の調査および桁断面開発のために、振動中の二次元剛体模型に作用する非定常空気力、非定常圧力の計測に用いられる。図5ないし図7に示すように、ベアリング(11)に支持された模型に対して、減速機付電動機(32)により駆動されるクランク(33)およびロッド(34)により、模型を強制的に加振する。強制振動実験用模型加振装置(31)は、使用時、風路を挟んで左右各一個対称に、バネ支持装置(9)のベアリング(11)の内輪(11b)の側面にボルトにて設置される。板(35)の中央付近には中心を介して対称の位置にリニアガイド(36)を取り付け、それに沿ってスライドする板(37)を取り付ける。その板(37)の中央に軸受(38)を設け、クランクロッド(34)と連結するアーム(39)を取り付けた軸(40)を回転自在に支持させる。そして、模型はこの軸(40)の内端に取り付けるのである。揺動固定ピン(39’)によりアーム(39)の揺動を阻止すると、電動機(32)の回転に伴って板(37)がスライドし、軸(40)を介して模型に直動往復運動をさせる。揺動固定を解くとともに直動固定ピン(37’)によりスライド運動を阻止すると模型は揺動運動のみを行う。鉛直たわみ、ねじれ、流れ方向の三つのモードで個々に単一周波数の正弦加振制御が可能である。鉛直たわみモードおよびねじれモードとして使用する場合は、リニアガイド装置が鉛直方向になるように固定する(図10)。流れ方向モードとして使用する場合は、リニアガイド装置が主流方向になるように固定する(図7)。各モードの変更は手動にて行う。ベアリング(11)の設定角度および加振周波数の調整は、実験室内の操作盤より電動機(15,32)の回転数を遠隔制御することによって行う。
【0021】
なお、既述のとおり強制振動実験用模型加振装置(31)は風路の両側に対で設けられ、互いに同期して作動する必要がある。そのため、板(35)に電動機(32)を取り付けた場合には、電動機(32)同士の同期回転や回転角度の一致を電気的に調整する。あるいは、図5に想像線で示すような構成を採用すれば、単一の電動機(32’)で済み、しかも、簡単に同期をとることができる。すなわち、風路を横断して延在する軸の両端にプーリー(32”)を固定し、その軸を電動機(32’)で回転駆動するとともに、電動機(32)に代えて従動プーリーを取り付け、その従動プーリーと、プーリー(32”)と、静止部材にバネを介して取り付けたアイドラとにベルトを巻き掛ける。
【0022】
バネ支持装置(9)およびターンテーブル(64)には非定常・定常空気力測定装置が併設され、空力現象の機構解明、フラッター性能の調査および耐風性に優れた桁断面開発のために、二次元剛体模型、および三次元全体模型に作用する定常・非定常空気力の計測に用いられる。この装置は直交二成分(X,Y)の力、天秤のZ軸まわりのモーメントの計測が可能であり、小断面実験用では抗力、揚力、ピッチングモーメント、大断面実験用では抗力、揚力、ヨーイングモーメントが計測することができる。
【0023】
非定常・定常空気力測定装置は小断面空気力測定装置および大断面空気力測定装置より構成される。小断面空気力測定装置実験は、バネ支持装置(9)に三分力検出器(天秤)を設置し、その間に模型(図示せず)を取り付けて行う。三分力検出器(図示せず)は、バネ支持装置(9)のベアリング(11)の内輪(11b)の側面の直径方向に架け渡した板に固定する。バネ支持装置(9)のベアリング(11)の設定角度を調整することによって、気流に対する模型の角度を任意に設定することができる。設定角度の調整は実験室内の操作盤より電動機(15)を遠隔制御することにより行う。
【0024】
大断面空気力測定装置実験は、ターンテーブル(64)上に三分力検出器(天秤)を設置し、その上に模型(図示せず)を取り付けて行う。ターンテーブル(64)の回転角度を調整することにより気流に対する模型の設定角度を任意に変更することができる。なお、ターンテーブル(64)の設定角度の調整は実験室内の操作盤より遠隔にて行うことができるが、これについては模型起振装置に関連して後述する。
【0025】
空力特性の機構解明とより耐風性に優れた断面開発を目的として、剥離せん断層に対する外的刺激と空力特性の関連、空力諸特性に及ぼす乱れの効果を調査研究する実験計測に用いるため、鉛直変動気流および主流方向変動気流を個々に発生できる周期変動流発生装置を設ける。周期変動流発生装置は鉛直変動気流発生装置(47)と主流方向変動気流発生装置(54)とからなる。
【0026】
鉛直変動気流発生装置(47)は可変翼の正弦加振により鉛直方向変動気流を発生させるもので、小断面風路内に配置する。図8ないし図10に示すように、多数の翼(48)を水平等間隔に配し、各翼(48)をピン(49)で水平軸まわりに揺動可能に支持するとともに、各翼(48)の端部に設けたピボット(50)をロッド(51)に連結する。ロッド(51)は長手方向にスライド自在とし、下端部にてクランク(52)の一端と連結する。クランク(52)の他端は、床面に設置した変速機付き電動機(53)の出力軸に連結する。これにより、電動機(53)の回転に伴い、クランク(52)を介してロッド(51)が上下運動し、翼(48)を揺動させる。翼(48)の作動速度の調整は実験室内の操作盤より電動機(53)の回転数を遠隔制御することにより行う。また、クランク(52)の位置を手動にて変更することにより翼(48)の揺動振幅を調整することができる。
【0027】
主流方向変動気流発生装置(54)は、小断面風路に配置して、回転ブレードと開口パネルにより主流方向変動気流を発生させるものである。すなわち、図11ないし図13に示すように、パネル(55)の上下2ヵ所に8等分の扇形スリット(56)を設け、その中心を軸心として4枚翼の回転ブレード(57)を回転させ、スリット(56)の開口部分の開閉を繰り返して主流方向変動気流を発生させる。上下の回転ブレード(57)はタイミングベルト(58)により同期回転するようになっており、変速機付き電動機(59)により回転駆動する。風洞(1)への設置・取り外しを容易にするため、パネル(55)の下部にキャスタ(60)を取り付けてある。回転ブレード(57)の作動速度の調整は実験室内の操作盤より電動機(59)の回転数を遠隔制御することにより行う。なお、電動機(59)による回転ブレード(57)の駆動方法は、図11に想像線で示すようにしてもよい。
【0028】
測定胴内の模型設置位置より風上側に乱流格子(図示せず)を設置し、模型位置にて規定の乱れ強さの乱流を発生させる。乱流格子はアルミ角パイプおよび角木をボルトにて格子状に組み立てる構造とし、風洞(1)の天井と床にボルト等で取り付ける。乱流格子は様々な乱流強度をもつ等方性乱流を風洞(1)内に発生させ、空力諸特性に及ぼす乱れの効果を調査研究する実験計測に用いら
れる。
【0029】
各種空力現象の機構解明と耐風安定性に優れた長大橋の桁断面開発を目的として、剥離せん断層に対する外的刺激と空力特性の関連を調査研究する実験計測に用いられる音響付加装置(61)を設置する。この音響付加装置(61)は、模型のリーディングエッジ付近の上下面を音響にて刺激するもので、図14および図15に示すように、測定胴内の模型取付け部の天井および床下に、主流方向に対して直角に延びるスリット(62)を設け、各スリット(62)に沿って複数たとえば8個のスピーカー(63)を配列する。音圧排出口と背圧排出口以外は密閉構造とする。音圧排出口は幅20mm程度に絞って音圧を風洞(1)内に放出する。周波数の調整は周波数発生装置を用いて行う。音響付加装置(61)のON/OFFおよび周波数の調整は実験室内の操作盤より遠隔にて行う。模型の上側面および下側面に同相もしくは逆相で単一周波数の正弦波状の圧力変動を与えることが可能である。たとえば、模型表面における圧力の変動振幅を無風雨状態で周波数15Hzで1Pa以上とし、周波数は2〜60Hzの範囲で連続的に制御できるようにする。
【0030】
図16および図17に示すように、測定胴内のターンテーブル(64)上に模型起振装置(65)を設置する。模型起振装置(65)は模型の基部を強制加振するための装置であって、塔状構造物、海洋構造物などを想定し、他の実験装置により計測された地震力、波力などによる振動を模型に与え、風と波など複数の自然外力作用下における構造物の応答挙動を把握する調査研究に用いられる。
【0031】
ターンテーブル(64)は、外輪(66a)を静止架台(67)上に固定し、内輪(66b)を回転自在とした大径のベアリング(66)の内輪(66b)に取り付けてある。内輪(66b)の内周面には内歯車(68)が形成され、サーボモータ(69)の出力軸に固定した小歯車(70)と噛み合っている。したがって、サーボモータ(69)の回転に伴いターンテーブル(64)が旋回する。内輪(66b)の上面に取付けベース(71)が設置され、取付けベース(71)の上面にはガイドウエイ(72)が設けてある。ガイドウエイ(72)上に、スライドガイド(73)を介して直動可能に、下部テーブル(74)が載置されている。下部テーブル(74)の上面には中間テーブル(75)が相対回転可能に載置され、さらにその中間テーブル(75)の上に上部テーブル(76)が載置されている。中間テーブル(75)はその下面から下部テーブル(74)を貫通して垂下した軸(76)を有し、この軸(76)の下端にアーム(77)の一端が固定されている。アーム(77)の他端はロッド(78)を介して、減速機付き電動機(79)の出力軸に取り付けたクランク(80)と連結されている。下部テーブル(74)をベース(71)に固定して下部テーブル(74)の直線運動を阻止する直動固定ピン(81)、および、中間テーブル(75)を下部テーブル(74)に固定して中間テーブル(75)の揺動を阻止する揺動固定ピン(82)を設けてある。
【0032】
模型起振装置(65)により、気流直角水平方向、気流方向、および鉛直軸まわり回転方向の三方向に個々に正弦波状の加振が可能である。すなわち、気流直角水平方向および気流方向の加振を行うときは、直動固定ピン(81)を取り除いて直動運動を解除するとともに、揺動固定ピン(82)を挿入して中間テーブル(75)の揺動を阻止する。これにより、電動機(79)の回転に伴い、上部テーブル(76)が下部テーブル(74)および中間テーブル(75)と一体となって直線往復運動を行う。鉛直軸まわり回転方向の加振を行うときは、揺動固定ピン(82)を取り除いて揺動運動を解除するとともに、直動固定ピン(81)を挿入して下部テーブル(74)の直線運動を阻止する。これにより、電動機(79)の回転に伴い、上部テーブル(76)が中間テーブル(75)と一体となって揺動する。起振周波数の調整は実験室内の操作盤より電動機(79)の回転数を遠隔制御することによって行い、クランク回転運動の角度設定は、手動にて行う。気流直角水平方向あるいは気流方向の位置決めは、サーボモータ(69)を回転させてターンテーブル(64)を旋回させることにより行う。
【0033】
図16(B)は、図16(A)における軸(76)を中空パイプ(76’)に代えるとともに上部テーブル(76)中間テーブル(75)にも開口を設けて貫通穴(76”)を形成した模型起振装置(65)の変形態様を示す。貫通穴(76”)の存在により、床面から立ち上げた支持台に天秤を設置してこの天秤を貫通穴(76”)から風洞内に臨ませる、といったことが可能となる。
【0034】
図18および図19に示す傾斜ケーブル支持装置(83)は、送電線ケーブルや斜張橋ケーブルなどを想定し、ケーブル姿勢と空力諸特性との関連、ならびにケーブル振動に対するよりよいケーブル制振装置の開発のために、ケーブル模型を任意の風方角で支持することができるようにしたものである。模型支持のケーブルにはピアノ線を使用する。ケーブル模型(84)の一端はターンテーブル(64)部の天井に設置された上部止着具(85)に固定し、他端はターンテーブル(64)の外周付近に設けた下部止着具(86)に固定する。上部止着具(85)は旋回アーム(87)の先端部に位置し、旋回アーム(87)は減速機付き電動機(88)によって旋回駆動される。水平面に対するケーブル模型の仰角(α)は45°に固定される。気流に対するケーブル模型の水平偏角(β)は、アーム(87)あるいはターンテーブル(64)を旋回させることによって0°< β< 360°の範囲で調整できる。この設定角度の調整は実験室内の操作盤の押し釦操作により電動機(88)を遠隔制御することにより行う。
【0035】
図20および図21にレインバイブレーション実験用ケーブル支持装置(89)を示す。この装置(89)は、送電線ケーブルや斜張橋ケーブルなどを想定し、降雨を伴うケーブルの空力特性、およびケーブル振動に対するより有効な制振装置の開発のために、実スケールのケーブル模型(90)を支持し、応答、圧力等の物理量を計測するためのものである。傾斜角度は、水平面に対するケーブル模型の仰角α、気流に対するケーブル模型の水平偏角αのいずれも45°に設定してある。
【0036】
図20および図21における符号91は降雨装置を指している。この降雨装置(91)は、送電線ケーブルや斜張橋ケーブルなどを想定し、空力振動に対するよりよい制振装置を開発するために、風洞内に人口降雨を発生させ、降雨を伴うケーブルの空力特性を調査する目的で使用される。測定部上流の天井より測定胴大断面の幅方向全域にわたり雨滴が発生し得るようにして、測定胴部のターンテーブル(64)後端天井部に、水道水を導きノズルより測定部に降雨させるものである。測定部天井両サイドに主流方向と平行にガイドウエイを取り付け、主流方向に対し直角にブリッジを渡す。ブリッジは両サイドのガイドウエイ上を単独に手動にて移動させ、降雨位置を設定することができる。一方を止め他方を動かすとブリッジは主流直角方向に斜めに懸かる。ブリッジには複数たとえば10個のノズルを等間隔に取り付け、風洞内測定部に一様な人口降雨を発生させる。床下には返流するしぶきから機器を防水するため、アクリルのカバーを設ける。上記のカバーの近くに堤を設け、側溝の水をドライエリアに導く。また、下流の壁面にネットを張り雨滴を吸収する。降雨装置(91)の降雨のON/OFFや降雨流量の制御は実験室内の操作盤より遠隔にて行う。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、送風機としてシロッコファンを採用し、拡散胴の拡散角を大きくとることにより、気流方向の長さを短縮してコンパクトな室内回流式の風洞実験装置を提供することができる。また、測定胴部分に各種の装置を具備することにより、コンパクトな構成でありながら種々の実験・計測を行うことのできる多機能風洞実験装置が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】風洞実験装置の側面図である。
【図2】風洞実験装置の平面図である。
【図3】バネ支持装置の正面図である。
【図4】バネ支持装置の断面図である。
【図5】強制振動実験用模型加振装置の正面図である。
【図6】強制振動実験用模型加振装置の断面図である。
【図7】強制振動実験用模型加振装置の正面図である。
【図8】鉛直変動気流発生装置の正面図である。
【図9】鉛直変動気流発生装置の断面図(A)および翼の平面図(B)である。
【図10】図9BのC部拡大図である。
【図11】主流方向変動気流発生装置の正面図である。
【図12】主流方向変動気流発生装置の断面図である。
【図13】図12のA部拡大図(A)および回転ブレードの正面図(B)である。
【図14】音響付加装置を示す風洞の横断面図(A)および要部縦断面図(B)である。
【図15】スピーカーの拡大図である。
【図16】模型起振装置の断面図である。
【図17】模型起振装置の平面図である。
【図18】傾斜ケーブル支持装置を示す風洞の横断面図である。
【図19】傾斜ケーブル支持装置の平面図である。
【図20】レインバイブレーション実験用ケーブル支持装置および降雨装置の側面図である。
【図21】レインバイブレーション実験用ケーブル支持装置および降雨装置の平面図である。
【符号の説明】
1 風洞
3 送風機
4 拡散胴
8 回転パネル
9 バネ支持装置
31 強制振動実験用模型加振装置
47 鉛直変動気流発生装置
54 主流方向変動気流発生装置
61 音響付加装置
64 ターンテーブル
65 模型起振装置
83 傾斜ケーブル支持装置
89 レインバイブレーション実験用ケーブル支持装置
91 降雨装置
Claims (6)
- 送風機としてシロッコファンを採用し、拡散胴の拡散角を大きくとることにより、整流胴気流方向の長さを短縮し、測定胴長さを充分とり、かつ、風洞の壁面の一部を鉛直軸まわりに回転可能な回転パネルで構成し、前記回転パネルの一方を平坦面とし、他方の壁面を曲面状とし、180°回転させることにより異なる風路断面積を形成させるようにし、複数の回転ブレードと開口パネルにより主流方向変動気流を発生させる主流方向変動気流発生装置を小断面風路に配置したことを特徴とする、室内回流式の風洞実験装置。
- 前記主流方向変動気流発生装置が、上下2ヶ所に8等分の扇形スリットを有するパネルと、前記扇形スリットの中心を軸心として回転自在に支持した4枚翼の回転ブレードと、前記回転ブレードを同期回転させるためのタイミングベルトと、前記回転ブレードを回転駆動するための電動機とを具備したことを特徴とする請求項1の風洞実験装置。
- 前記パネルを風洞の所定部位に着脱自在としたことを特徴とする請求項2の風洞実験装置。
- 送風機としてシロッコファンを採用し、拡散胴の拡散角を大きくとることにより、整流胴気流方向の長さを短縮し、測定胴長さを充分とり、かつ、測定胴内の模型取付け部の天井および床面に、主流方向に対して直角に延びるスリットを設け、各スリットに沿って複数のスピーカーを配列した音響付加装置を具備したことを特徴とする、室内回流式の風洞実験装置。
- 前記音響付加装置により模型の上側面および下側面に同相もしくは逆相で単一周波数の正弦波状の圧力変動を与えることを特徴とする請求項4の風洞実験装置。
- 送風機としてシロッコファンを採用し、拡散胴の拡散角を大きくとることにより、整流胴気流方向の長さを短縮し、測定胴長さを充分とり、かつ、外輪を風洞の壁面に固定するとともに床面に立設したフレームにより支持し、内輪をモータで回転駆動するようにしたベアリングと、前記内輪に固定した一対のバーと、前記一対のバーの両端間に張設した引っ張りバネと、前記引っ張りバネの中間部間に架け渡した、中心部に被試験体を支持するための中間バーとで構成したバネ支持を具備したことを特徴とする、室内回流式の風洞実験装置。
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