JP3702335B2 - 自然斜面安定化工法および支圧板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、樹木を伐採することなく自然斜面の安定化を図ることを可能にする自然斜面安定化工法、およびこれに用いる支圧板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自然斜面の安定化を図る工事に際して、環境保全や景観の観点から、樹木の伐採をせずに施工できる工法が強く望まれている。その目的に沿う工法として、土よりも引っ張り剛性の高い例えば鉄筋等の補強材を土中に挿入して、みかけの土塊の強度を高める地山補強土工法を利用することが考えられているが、自然斜面は一般に、表層部が柔らかい有機質土壌であって多孔質の軟弱な地盤であるため、単なる地山補強土工法では斜面安定の効果が不充分である。
そこで、地山補強土工法を支圧板および頭部連結材とともに施工する工法、すなわち、曲げ剛性のある複数のアンカーを適宜の配列で自然斜面の土中に挿入し、前記各アンカーの頭部に支圧板を取り付け、各アンカー頭部間を柔軟性を有する線状連結材で連結するいわゆるノンフレーム工法が自然斜面安定化工法として最近注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のノンフレーム工法は、補強材だけの単なる地山補強土工法と比べ、支圧板および頭部連結材の補強作用が付加されることで、斜面安定効果が向上するのであるが、前記の通り、自然斜面の表層部は一般に軟弱な地盤であり、また不均質であるため、硬く均質な地盤において行なわれている従来の多くの研究結果は必ずしも利用できず、ノンフレーム工法の地盤を補強する補強メカニズムは解明されていない。このような事情から、アンカー、支圧板、頭部連結材の各部材が果たす補強作用並びにそれらの相互関係を解明して、それぞれの補強作用の組み合わせを適切に生かした一層高い斜面安定効果を持つ自然斜面安定化工法が期待されている。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ノンフレーム工法におけるアンカー、支圧板、頭部連結材の各部材の補強作用が効果的に組み合わされて、一層高い斜面安定効果を発揮することのできる自然斜面安定化工法、およびこれに用いる支圧板を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、自然斜面において曲げ剛性のある複数のアンカーを適宜の配列で土中に挿入し、前記各アンカーの頭部に支圧板を取り付け、各アンカー頭部間を柔軟性を有する線状または帯状の頭部連結材で連結する自然斜面安定化工法であって、
前記頭部連結材をアンカーの地表より地中に入り込んだ部位に連結するとともに、斜面変位の初期の段階では前記アンカーおよび支圧板が斜面変位に抵抗し、斜面変位がある程度大きくなった時に前記頭部連結材による抵抗が前記アンカーおよび支圧板による抵抗に付加されるように設定することを特徴とする。
【0013】
請求項2は、請求項1の自然斜面安定化工法に用いる支圧板であって、底板の下面に下向きの突出部を備えるとともに、この突出部に、前記頭部連結材を係止させるための窪みまたは切り欠きまたはフックを設けたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図10に示した一実施例の自然斜面安定化工法を参照して説明する。
図1(イ)は本発明の自然斜面安定化工法を施工した自然斜面の平面図、(ロ)は同斜面傾き方向の断面図である。本発明の自然斜面安定化工法はいわゆるノンフレーム工法である。すなわち、曲げ剛性のある複数のアンカー1を適宜の配列で土中に挿入し、前記各アンカー1の頭部に支圧板2を取り付け、各アンカー1頭部間を柔軟性を有する線状または帯状の頭部連結材3で連結する。
本発明では、斜面変位の初期の段階では前記アンカー1および支圧板2が斜面変位に抵抗し、斜面変位がある程度大きくなった時に前記頭部連結材3による抵抗が前記アンカー1および支圧板2による抵抗に付加されるように設定する。
図1(ロ)および後述の図6において、15は斜面変位が生じる際の移動土層、16は不動土層を示す。
【0015】
前記アンカー1として、例えば径が28.3mmφ、長さ3mの棒鋼を用い、頭部連結材3として、例えば径が8mmφのワイヤロープを用いる。各アンカー1は、1辺が斜面傾き方向をなす三角形網目の交点に位置する配列としており、また、その三角形は例えば1辺が2mの正三角形とする。図2に1本の頭部連結材(ワイヤロープ)3で連結する3本のアンカー1からなる1つのユニットを拡大して示す。
【0016】
前記支圧板2は、鋼板製であり、図3、図4にも示すように、底板5と、この底板5の中心部にあけたアンカー挿通穴5aに合わせて溶接固定した筒体6と、この筒体6を補強するように底板5および筒体6に溶接固定したリブ7とからなる。図示例では、底板5が頂部を切り欠いた概ね正三角形状をなし、リブ7は筒体6の外周面から正三角形の頂部側に向かう向きで設けられている。支圧板2は、後述するようにある程度の広さを持つことが補強力を高めるために有効であり、例えば0.22m2とする。また、リブ7の筒体6との接続部にワイヤロープ連結用の切り欠き7aを設けている。図2において4は3つのアンカー1に廻らせた1本のワイヤロープ3の両端を連結したターンバックルである。
なお、本発明では 前記頭部連結材(ワイヤロープ)3を、アンカー1の地表より地中に入り込んだ部位に連結するが、図3ではその手段を示していない。アンカー1の地表より地中に入り込んだ部位に連結する手段の具体的実施例は図10で説明する。
【0017】
次に、具体的な施工手順の一例について説明すると、施工領域の自然斜面において複数のアンカー1を、前述した図1の配列で土中に挿入する。すなわち各アンカー1の配列を、1辺が斜面傾き方向をなす正三角形網目の各交点にそれぞれ位置するような配列とする。次いで、支圧板2をアンカー1の頭部に配置し、図3に示すように、アンカー1に螺合させたナット8を締め付けて、支圧板2を地面に押し付けて沈下させ、予め支圧板2に支圧力を与えておく。この支圧力はアンカー1の軸力の反力として生じる。支圧板2を沈下させ予め支圧力を与えておくことは、後述する通り、支圧板2下の土塊を圧縮し締め固め(圧密)て、土塊強度を増加させるので、斜面変位時に支圧板2の支圧効果を効果的に発揮させるために有効である。
【0018】
次いで、1つの正三角形網目を形成する3つのアンカー1を1本の頭部連結材(ワイヤロープ)3で連結する。この場合、図2、図3に示すように、頭部連結材3を各アンカー1の支圧板2におけるリブ7の切り欠き7aを通して各筒体6の外周を廻らせ、緊張し、その両端をターンバックル4で連結して、頭部連結材3の正三角形を形成する。この頭部連結材3の緊張、ターンバックルによる連結は工具を用いて行う。
このように、頭部連結材3によるアンカー1間の連結は、3つのアンカー1がなす正三角形を1つのユニットとして行い、これを斜面のアンカー1全体について行なう。
【0019】
上記の自然斜面安定化工法を施工した自然斜面において、アンカー1はいわゆる補強土工法の作用を果たす重要な要素であり、第1に斜面変位に伴ってアンカーが変形する際の曲げ剛性によって土層のすべり力に抵抗する作用(▲1▼)により、斜面の安定に寄与する。第2にアンカー1と地盤との間の摩擦(周面摩擦)に起因する軸力で土の直応力を増加させてすべり面でのせん断強度を増加させる作用(▲2▼)により、斜面の安定に寄与する。
また、支圧板2は、第1に斜面変位時に支圧板2が土を押し込み、圧縮(圧密)する支圧効果(▲3▼)が生じる。この支圧効果は、土の直応力を増加させすべり面でのせん断強度を増加させて、斜面の安定に寄与する。この効果は前記▲2▼の効果に付加される。また、この支圧効果は、支圧板2で移動土塊を挟み込んでその移動を拘束するという作用を果たす。また、斜面変位が小さいうちは、アンカー1頭部の斜面傾き方向への変位を拘束する作用(アンカー頭部拘束効果(▲4▼))をし、これによりアンカー1の曲げ剛性による抵抗を大きくする。
また、頭部連結材3は、第1に斜面変位の際のアンカー1の変形に伴って緊張力を発生してアンカー1を拘束するという引き留め効果(▲5▼)により、斜面安定に寄与する。第2に頭部連結材3が地表面でネットを形成し、この頭部連結材3による地表ネットで地盤を押さえ込む地盤押さえ込み効果(▲6▼)により、斜面安定に寄与する。
【0020】
上記の通り、アンカー1、支圧板2、頭部連結材3はそれぞれの補強作用により斜面安定に寄与するが、これらの各部材は、斜面変位が小の段階から中の段階、大の段階となるに応じて、それぞれ異なった仕方で補強作用を果たし、全体として大きな斜面安定効果を確保する。これらの各部材1、2、3の補強作用および相互関係は表1に示す通りである。
【表1】
こられの各部材(アンカー1、支圧板2、頭部連結材3)による補強作用(斜面安定効果)を図5、図6を参照して説明する。図5は本発明の自然斜面安定化工法の基本部材であるアンカー(補強材)1の補強作用を模式的に示したもので、横軸は斜面変位、縦軸は補強力である。ここで土質は、模式的に、斜面変位が微小の段階では弾性を示し、斜面変位が小の段階(前記弾性域を越えた段階)では擬似弾性を示し、この擬似弾性域を越えると塑性を示す、とみなす。図5において、実線はアンカー1の引っ張り力(周面摩擦力)による補強力、破線は支圧板2を頭部に取り付けた状態でのアンカー1の曲げ剛性による補強力であり、その合成補強力を1点鎖線で示す。
【0021】
斜面変位が小さい初期段階(土質が擬似弾性域を越えない段階)では、図6(イ)に示すように、アンカー1は移動土層のすべり力を受けて曲げ変形するが、このアンカー1の曲げ剛性によってすべり力に抵抗する(上記▲1▼の作用)。この初期の段階では、支圧板2がアンカー1の頭部を拘束する作用(上記の▲4▼の作用)をして、アンカー1の持つ曲げ剛性による抵抗を大きく発揮させる。この状況は、「頭部を拘束された抑止杭」の設計法の場合の現象に相当するといえる。
【0022】
斜面変位が中程度に大きくなった段階(土質が擬似弾性域を越えた段階)では、図6(ロ)に示す状況となる。この段階では、アンカー1の曲げ剛性ですべり力に抵抗する作用(▲1▼の作用)とともに、周面摩擦でアンカー1に生じる引っ張り力ですべり面でのせん断強度を高める作用(上記の▲2▼の作用)が付加される。また、支圧板2の支圧効果(上記の▲3▼の作用)ですべり面でのせん断強度が増加し、前記アンカー1の引っ張り力によるせん断強度増加(上記▲2▼)に付加される。さらに、この段階から、頭部連結材3による引き留め効果(上記の▲5▼の作用)も発生してくる。頭部連結材3の引き留め力をPで示す。
なお、この頭部連結材3は、前述した8mmφのワイヤロープの場合では、実験によると、斜面変位がアンカー1間隔(実施形態の場合2m)の約1〜3%に達するまでは緊張力の発生は殆どなく、1〜3%を超えた段階から緊張力が発生しほぼ伸びに比例して増大する。
この状況は、「補強土工法」の設計法の場合の現象に相当するといえる。
【0023】
斜面変位がさらに大きくなった段階(土質が塑性域になった後さらに大きく変位した段階)では、図6(ハ)に示す状況となる。この段階では、アンカー1の曲げ剛性による抵抗の増大はなく、次第に増大する引っ張り力による補強力(上記の▲2▼の作用)がさらに増大していく。また、支圧板2の支圧効果(上記の▲3▼の作用)として、支圧板2で移動土塊を挟み込んでその移動を拘束するという作用を果たす。アンカー1と支圧板2とのこの状況は、アンカー1の引っ張り力を硬い地盤に伝達させ支圧板2との間の不安定土塊を挟み込んでその動きを拘束する「支圧アンカー工法」の設計法の場合の現象に相当するといえる。
そして、頭部連結材3による引き留め効果(▲5▼の作用)がさらに増大するとともに、この頭部連結材3による地表ネットで地盤を押さえる効果(上記の▲6▼の作用)が発生し、アンカー1、支圧板2による補強力に付加される。図6(ハ)中の符号Qは頭部連結材3による押さえ込み力の反力を示す。頭部連結材3の引き留め効果は、順時斜面上方のアンカー1へ伝達されるので、この頭部連結材1の地盤押さえ込み効果が面的な抵抗となり、斜面を効果的に安定化させる
上記の通り、アンカー1、支圧板2、頭部連結材3のそれぞれの補強作用が効果的に組み合わされ、斜面変位の段階に応じてそれぞれの斜面安定効果を適切に発揮することで、高い斜面安定効果が実現される。
【0024】
一般にアンカー頭部に設置する支圧板は斜面変位時に土を締め付ける作用(支圧効果)で斜面を安定化するとされている。しかし、自然斜面のように表層部が軟らかい土質の場合、この支圧効果が有効に発揮できない。
しかし、支圧板2の支圧面積(底板5の面積)を大きくすることにより、図7に示すように支圧板2下にくさび状の土塊(ハッチングの部分)の支持力の影響を大きくすることができる。支圧板2下の土塊の支持力が増大すれば、アンカー1の曲げ剛性による抵抗を支圧板2下の土塊が有効に支持することができるので、表層部が柔らかい自然斜面であっても、高い斜面安定効果が得られる。なお、図7において、Qrは土塊重量による受動土圧(粘着力考慮しない)、Qpcは有効圧(支圧板2以外の地表に荷重が作用していないので、この場合は0である)と粘着力による受動土圧を示す。
支圧板2の底面積を例えば0.22m2とすると、前述したようにアンカー配列の三角形(網目)の1辺が2mの場合、1本のアンカー1が負担する面積(三角形2つ合わせた平行四辺形の面積である)は3.46m2(=2m×√3m)であり、したがって、支圧板2の支圧面積のアンカー負担面積に対する比率は6.4%(=0.22m2/3.46m2)である。本願発明者らの実験結果によれば、この支圧面積・アンカー負担面積比は、0.5%〜7%が適切である。
【0025】
上記の支圧板2下の土塊の支持力をさらに高める方法としては、(イ)上述の実施形態の通り、予め支圧板2を強制的に沈下させて、支圧板2下の土塊を圧縮(圧密)し、土塊強度を増加させ方法、(ロ)支圧板2の下にグラウト材を注入して圧縮強度を高める方法、(ハ)支圧板2下に突出部を設ける方法等が可能である。図10に支圧板2下に逆円錐体状の突出部11を設けた実施形態を示す。支圧板2下に突出部11を設けると、支圧板2下に圧力球根が形成されること、支圧板2および突出部11の全体として土との接触面積が増大すること、突出部11による圧力の作用方向が角度を持つ(作用方向が分散する)こと等により、支持力が高くなる。
上記のように、比較的大きな支圧板2を使用し、かつ上記(イ)〜(ハ)の1つまたは幾つかの方法を採用して、支圧板のアンカー軸力に抵抗する力を増大させ、これによりアンカーの曲げ剛性による補強効果を十分に発揮させて、より高い斜面安定効果を実現することができる。
【0026】
前述の通り、頭部連結材3は、斜面変位に伴うアンカー1の曲げ変形とともに緊張力が発生してアンカー1を引き留める引き留め効果を奏するとともに、この頭部連結材3による引き留め効果が順次斜面上方へと波及していくが、これを模式化して解析した結果を図9に示す。図9は頭部連結材3で連結されたアンカー1群の1個所のアンカー(図でS点)に荷重を付加した場合の各アンカー1の変形範囲を解析した結果を示すもので、(イ)は頭部連結材に相当するものが剛体である場合、(ロ)は頭部連結材が柔軟性を持つ材料の場合である。この解析結果に明瞭に示されるように、頭部連結材が剛体、例えばコンクリート枠やコンクリート吹き付け枠等の曲げ剛性の大きい材料の場合は、局所的な変位が斜面全体に及ぼされる。
これに対して、頭部連結材が柔軟性のある材料、例えばワイヤロープ等の場合は、局所的な斜面変位によって影響を受ける範囲は、その周辺部だけであって、斜面全体には影響を及ぼさない。このように、局部的な動きであるため、仮に崩壊が生じたとしても被害は最小限で押さえられるとともに、アンカー1と支圧板2との連携によって斜面変形が徐々に生じるため、対策を講じやすい。
【0027】
図8は、頭部連結材3が1本のアンカー1に対して引き留め力を作用させる状況を説明するもので、上述のような1辺が斜面傾き方向をなす三角形網目を形成するアンカー配列では、図示の通り、1本のアンカー1には斜面上部の3方向から連結された3本の頭部連結材3(図8ではAB、AC、ADの3本)がいずれも引き留め力を作用させる。このように、アンカーに水平方向から連結される頭部連結材も存在するようなアンカー配列の場合と比べて、引き留め力を負担しない頭部連結材が存在することがなく、アンカー1に連結されているすべての頭部連結材3が引き留め力を作用させるので、頭部連結材3による引き留め力を得るためのアンカー配列として極めて効率がよい。
また、頭部連結材3を三角形をなす3本のアンカー1頭部間に回し連結しているので、すなわち、頭部連結材3の三角形の各辺部分がそれぞれ独立してアンカー1頭部間を連結しているのでなく、円筒体6の外周を摺動可能な状態で3本のアンカー1を連結しているので、頭部連結材3の各辺部分に張力が均等に作用し、一部の辺に偏った大きな張力が作用することはない。したがって、頭部連結材3の強度を必要以上に大きくする必要はない。また、頭部連結材3が円筒体6の外周を摺動可能であることで、頭部連結材3の張力を斜面上方のアンカー1に伝達する作用が円滑に行なわれ、この点でも斜面安定化の向上に有効である。
【0028】
また、図6(ハ)に示した通り、頭部連結材3の地盤押さえ込み効果は、斜面変位が大きくなる程大となるが、本発明では、図10に示すように、頭部連結材3をアンカー1の地表より地中に入り込んだ部位に連結することで、地盤押さえ込み効果をさらに増大させている。この実施形態は、前述したように、支圧板2の底板5の下面に突出部、例えば図示例では逆円錐体状の突出部11を設けたものであるが、この突出部11に頭部連結材3を係止させるための周方向の溝(窪み)11aを設ける。そして、図示のように、頭部連結材3を底板5にあけた穴から土中に導き、突出部11の溝11aに廻らせた後、再び底板5の上に取り出し、次のアンカー1へ廻らせる。なお、頭部連結材3を係止させる構造として、周方向の溝(窪み)でなく、部分的な切り欠きであってもよいし、また、フックを取り付けてもよい。
【0029】
上記のように頭部連結材3を底板5の下面の突出部11に係合させた場合、頭部連結材3には単なる斜面と平行な緊張力のみでなく、支圧板2の直下で斜面と垂直な下向きの緊張力が発生する。頭部連結材3に作用するこの下向きの緊張力は、頭部連結材3自体が地面を押し付けて地盤を拘束する作用すなわち地盤押さえ込み効果を著しく増大させる。特に、図6(ハ)に示したように、斜面変位が大きくなった時に、この頭部連結材3による地盤押さえ込み効果は大きく作用し、斜面安定効果を一層向上させる。
【0030】
頭部連結材3を支圧板2の円筒体6の外周に廻らせる場合、図11(イ)、(ロ)に示すように、円筒体6の下端外周に、頭部連結材3を案内する案内部材として円弧状のスリーブ13を固定し、このスリーブ13内に頭部連結材3を通すようにすれば、頭部連結材3の長さ方向の摺動に対する拘束が一層少なくなり、頭部連結材3の作用が有効に発揮される。
また、図12(イ)、(ロ)に示すように、円筒体6の下端外周に案内部材としてプーリー状の回転体17を嵌合させ、この回転体17の外周溝17aに頭部連結材3を巻き掛けるようにしてもよい。回転体17は樹脂製または金属製のいずれでもよい。さらに、図13に示すように、円筒体6の下端部に嵌装したベアリング18を介して、前記と同様な回転体17’を嵌合させてもよい。これにより、頭部連結材3の長さ方向の摺動に対する拘束を一層少なくできる。
なお、図11〜図13の実施例では、頭部連結材3をアンカー1の地表より地中に入り込んだ部位に連結する手段の図示は省略している。
【0031】
本発明において、支圧板の構造は特に限定されるものではなく、例えば、底板は円形、四角形その他の形状でもよい。また、鋼板製に限らない。要するに、アンカーに作用する引っ張り力を支圧力として地盤に伝達できるものであればよい。
また、頭部連結材3のアンカーとの係合は、筒体16を廻らせる仕方に限らず、リブにあけた穴に直接通す仕方、あるいはアンカーに直接連結する仕方等、任意である。
また、頭部連結材は、ワイヤロープに限らず、樹脂製ロープその他、柔軟な線状体ないし帯状体であればよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、斜面変位の初期の段階ではアンカーおよび支圧板が斜面変位に抵抗し、斜面変位がある程度大きくなった時に頭部連結材による抵抗が前記アンカーおよび支圧板による抵抗に付加されるので、アンカー、支圧板、頭部連結材の各部材の補強作用が斜面変位の各段階でそれぞれ適切かつ有効に発揮され、表層度が柔らかい軟弱地盤である自然斜面であっても、高い斜面安定効果を実現することが可能となった。
【0036】
また、頭部連結材がアンカーの地表より地中に入り込んだ部位に連結されることで、頭部連結材に斜面と直角の下向きの緊張力が発生するので、頭部連結材による地盤押さえ込み効果が増大し、斜面安定効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(イ)は本発明の自然斜面安定化工法を施工した自然斜面の平面図、(ロ)は図1の模式的な断面図である。
【図2】図1の一部分の拡大図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】図3における支圧板の平面図である。
【図5】本発明の自然斜面安定化工法における、斜面変位に対するアンカーの補強力発生状況を説明する図である。
【図6】本発明の自然斜面安定化工法の作用を説明するもので、(イ)は斜面変位が小さい段階、(ロ)は斜面変位がやや大きくなった段階、(ハ)は斜面変位が大きくなった段階をそれぞれ示す。
【図7】本発明の自然斜面安定化工法における支圧板の作用を説明する図である。
【図8】本発明における頭部連結材の作用を説明する図である。
【図9】本発明における頭部連結材の作用を解析した結果を示すもので、頭部連結材で連結されたアンカー群の1個所のアンカー(図でS点)に荷重を付加した場合の各アンカーの変形範囲を示し、(イ)は頭部連結材に相当するものが剛体である場合、(ロ)は頭部連結材が柔軟性を持つ場合である。
【図10】本発明における、頭部連結材をアンカーの地表より地中に入り込んだ部位に連結する手段の一実施形態を示す図である。
【図11】支圧板の他の実施形態を示すもので、(イ)は支圧板の平面図、(ロ)は(イ)の要部の一部切り欠き拡大正面図である。
【図12】支圧板のさらに他の実施形態を示すもので、(イ)は支圧板の要部の一部切り欠き正面図、(ロ)は(イ)の水平断面図である。
【図13】支圧板のさらに他の実施形態を示すもので、図12(ロ)に相当する水平断面図である。
【符号の説明】
1 アンカー
2 支圧板
3 頭部連結材(ワイヤロープ)
5 底板
5a アンカー挿通穴
6 筒体
7 リブ
7a 切り欠き
11 突出部
11a 溝(窪み)
13 案内部材(スリーブ)
17、17’ 案内部材(回転体)
Claims (2)
- 自然斜面において曲げ剛性のある複数のアンカーを適宜の配列で土中に挿入し、前記各アンカーの頭部に支圧板を取り付け、各アンカー頭部間を柔軟性を有する線状または帯状の頭部連結材で連結する自然斜面安定化工法であって、
前記頭部連結材をアンカーの地表より地中に入り込んだ部位に連結するとともに、斜面変位の初期の段階では前記アンカーおよび支圧板が斜面変位に抵抗し、斜面変位がある程度大きくなった時に前記頭部連結材による抵抗が前記アンカーおよび支圧板による抵抗に付加されるように設定することを特徴とする自然斜面安定化工法。 - 請求項1の自然斜面安定化工法に用いる支圧板であって、底板の下面に下向きの突出部を備えるとともに、この突出部に、前記頭部連結材を係止させるための窪みまたは切り欠きまたはフックを設けたことを特徴とする支圧板。
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