JP3702105B2 - ディフューザ及びその製作方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気ターボ過給機の圧縮機、産業用圧縮機等の、翼付きディフューザを備えた遠心圧縮機のディフューザの構造及びその製作方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、翼付きディフューザを備えた遠心圧縮機の回転軸心に沿う要部断面図である。図4において、1は回転駆動されるインペラ、3はケーシング、4は同ケーシング3に形成された出口側通路となるスクロールである。2はディフューザであり、円周方向に沿って所定間隔(通常は等間隔)に配設された複数の翼からなる。21は同ディフューザ2の一端面であるハブ側壁面、22は同ディフューザ2の他端面であるシュラウド側壁面である。
【0003】
上記遠心圧縮機において、高速回転するインペラ1に吸入されて圧縮された気体はディフューザ2を通ってスクロール4に流出し、同スクロール4に案内されて系外の使用先に送出される。図5は上記ディフューザ2の断面形状を示し、2aは気体の入口側である前縁、24は圧力面、23は負圧面である。
【0004】
図9〜図10は上記ディフューザ2の従来の1例を示し、図9は前縁近傍の斜視図、図10は図5のE−E断面図、あるいは図9のE平面に沿う断面図である。
【0005】
図9〜図10に示すように、従来のディフューザ2は、ハブ側壁面21とシュラウド側壁面22との間の幅Hの方向において一定厚さとなっており、前縁2aは幅Hの方向に同一断面形状で、同前縁2aに連なる翼面の曲率半径Rが一定となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のディフューザ2においては、図9〜図10に示すように前縁2aが幅Hの方向に同一断面形状の円弧状断面となっているため、図7のAに示すように、前縁2aからディフューザ2の翼面に沿う流れにおいて負圧面23側での圧力上昇、つまり増速が大きくなり、これによって流れの剥離が生じ、大きなディフューザ損失の発生をみる。尚、図7のBは圧力面24における圧力変化を示す。
【0007】
また、図6には上記ディフューザ2の通路中央、つまり1/2H近傍の位置と壁面(シュラウド側壁面22あるいはハブ側壁面21)近傍との速度三角形の比較を示し、(A)は通路中央、(B)は壁面近傍である。
【0008】
図6に明らかなように、上記従来のディフューザは(B)に示す壁面近傍における子午面方向流速C2 が、(A)に示す通路中央の流速C1 よりも小さくなり、このため、壁面近傍における気体の流れ角α2 は通路中央の流れ角α1 よりも小さくなる。これによって、壁面近傍における流路損失が大きくなり、遠心圧縮機の性能が低下する。
【0009】
上記のような問題点に対処するためには、図8に示すように、前縁2aの断面における曲率半径を大きくして、前縁部における負圧面23側への流れの増速を小さくすることが考えられる。
【0010】
即ち図8の(A)は前縁2aの曲率半径R1 が小さい場合、(B)は曲率半径R2 が大きい場合を示しているが、同図(A)のように上記半径R1 が小さい場合は流入速度V1 に対して負圧面23側の増速ΔV1 が大きくなるが、(B)のように上記半径をR2 のように大きくすると、上記増速ΔV1 が小さくなり、圧力損失が低減される。
【0011】
しかしながら、図8に示されるディフューザ2は、図8(B)に示されるような、前縁2a部において、壁面近傍のみの曲率半径R2 を大きくするような機械加工は困難であるという問題点を有している。
【0012】
本発明は上記問題点を解決するもので、その目的とするところは、機械加工による製作が容易にでき、壁面近傍の圧力損失を低減し得るディフューザを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような問題点を解決するもので、その要旨とする第1の手段は、インペラによって圧縮された流体の出口通路の壁面間に設けられ複数の翼からなるディフューザにおいて、前縁が翼幅方向において上記出口通路の中央の断面に対して対称な曲線に形成されるとともに、上記前縁に垂直な断面形状が上記出口通路の中央の断面形状と同一に形成されてなることにある。
【0014】
また第2の手段は上記ディフューザの製作方法に係り、インペラによって圧縮された流体の出口通路の壁面間に設けられた複数の翼からなるディフューザを製作するにあたり、上記ディフューザの前縁に垂直な断面形状が、上記出口通路中央の断面形状と同一形状になり、かつ上記前縁が翼幅方向において上記出口通路中央断面に対して対称な曲線になるように加工することを特徴とするディフューザの製作方法にある。
【0015】
また、第3の手段は、上記第2の手段において、上記前縁に連なる翼面の上記壁面近傍における曲率半径が、上記出口通路中央における曲率半径よりも大きくなるように加工することにある。
【0016】
上記手段によれば、ディフューザを加工する際には、出口通路中央の断面形状を有するカッターを、通路中央の断面中心から、前縁に垂直な断面形状が通路中央の断面と同一形状になるように、前縁の曲線即ち翼幅方向において上下に対称な曲線に沿って移動させることにより容易に加工できる。
【0017】
かかる加工により形成されたディフューザは、壁面近傍における負圧面の通路中央断面に平行な方向即ち気体の流入方向に対する曲率半径が通路中央の曲率半径よりも大きくなり、従って、気体の流入速度に対する負圧面の増速が小さくなり、圧力損失が低減される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下図1〜図3及び図4〜図5を参照して本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0019】
図4は本発明に係る翼付きディフューザが適用される遠心圧縮機の回転軸心に沿う要部断面図であり、図4において、1は回転駆動されるインペラ、3はケーシング、4は同ケーシング3に形成された出口側通路となるスクロールである。
【0020】
2はディフューザであり、円周方向に沿って所定間隔(通常は等間隔)に配設された複数の翼からなる。21は同ディフューザ2の一端面であるハブ側壁面、22は同ディフューザ2の他端面であるシュラウド側壁面である。
【0021】
上記遠心圧縮機において、高速回転するインペラ1に吸入されて圧縮された気体はディフューザ2を通ってスクロール4に流出し、同スクロール4に案内されて系外の使用先に送出される。図5は上記ディフューザ2の断面形状を示し、2aは気体の入口側である前縁、24は圧力面、23は負圧面である。
【0022】
本発明は上記ディフューザ2の形状及びその製作方法、特にその前縁部近傍の加工方法に係るものである。
【0023】
即ち図1は本発明の実施形態に係るディフューザの前縁部近傍の要部斜視図、図2は前縁部近傍の平面図で図3のB−B面及びC−C面を示す図、図3は前縁部近傍の加工方法の説明図で(A)は要部側面図、(B)は前縁部の要部斜視図である。
【0024】
図1〜図3において、2はディフューザ、21は同ディフューザ2のハブ側壁面、22はシュラウド側壁面、2aは前縁であり、図4に示すように、上記インペラ1から半径方向に流出した気体がディフューザ2の前縁部2aからディフューザ2内に流入するようになっている。
【0025】
本発明の実施形態においては、上記ディフューザ2は、図1〜図3に示すように、前縁2aの形状を通路中央C即ちディフューザ2の幅Hの1/2の部位から翼幅方向において、図2(A)に示すように、上下対称な半径Rs なる円弧状になるように形成し、さらに翼幅方向各部位における上記前縁2aに垂直方向の断面形状を、図2(B)に示すように、上記通路中央C(図3のC−C面)の断面形状と同一形状になるように形成されている。尚、上記前縁2aの形状は、必ずしもこの実施形態のように円弧状であることを要さず、上記通路中央Cに対して翼幅方向において対称な形状の曲線であればよい。
【0026】
上記のようなディフューザ2を加工するにあたっては、通路中央Cにおける前縁2aの負圧面23の曲率半径Rc なる総形カッターを、図2(A)に示すように前縁2aの円弧の半径Rs の中心30廻りに移動させながら前縁部を加工する。この加工は、総形カッターに限らず、他の加工手段でもよい。
【0027】
これにより、ディフューザ2の前縁2aに垂直な断面、つまり、前縁2aの各部位と上記円弧(半径Rs )の中心30とを結ぶ断面形状は上記通路中央Cの断面形状(曲率半径Rc )となるが、壁面近傍B(図2(A)のB−B矢視部)の断面形状、つまり上記通路中央Cと平行な断面形状は、上記通路中央Cを斜めから切断した断面形状となり、その負圧面23の曲率半径Rb は通路中央の曲率半径Rc よりも大きくなる。尚、図3(A)において2bは前縁2aを上記のように円弧状としたことによる削り落し部である。
【0028】
即ち、上記実施形態によれば、前縁2aの形状を通路中央Cから翼幅方向において上下対称な曲線になるように形成し、翼幅方向における前縁2aに垂直な断面形状を通路中央Cの断面形状と同一になるように加工すれば、壁面近傍Bにおける負圧面23の通路中央Cに平行な方向即ち気体の流入方向に対する曲率半径Rb は通路中央Cの曲率半径Rc よりも大きくなる。
【0029】
従って、図8(B)に示すように、壁面近傍Bの曲率半径R2 (この実施形態におけるRb に相当)が大きくなることによって、流入速度V1 に対して負圧面23側の増速ΔV1 が小さくなり、これによって圧力損失が低減される。
【0030】
そして、このディフューザ2は、上記のように、通路中央の断面形状を有するカッターを、通路中央の断面中心から、前縁に垂直な断面形状が通路中央の断面と同一形状になるように、前縁の曲線に沿って移動させるという方法で以って容易に加工することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、本発明によれば、出口通路中央の断面形状を有するカッター等の加工具を、前縁に垂直な断面形状が上記出口通路中央の断面形状と同一になるようにして、上記前縁の曲線即ち翼幅方向において上下に対称な曲線に沿って移動させるという、きわめて簡単な加工方法で、壁面近傍における前縁部の負圧面の曲率半径が上記通路中央における曲率半径よりも大きくなるディフューザを得ることができる。
【0032】
従って本発明によれば、壁面近傍における前縁部の負荷面の曲率半径が出口通路中央の曲率半径よりも大きく、圧力損失が低減されたディフューザを、きわめて簡単な加工方法で以って容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るディフューザの前縁部近傍の要部斜視図。
【図2】上記実施形態における前縁部近傍の平面図(図3のC−C矢視図及びB−B矢視図)。
【図3】上記実施形態における前縁部近傍の加工方法の説明図で、(A)は要部側面図、(B)は前縁部の要部斜視図である。
【図4】本発明に係るディフューザを備えた、遠心圧縮機の要部断面図。
【図5】ディフューザの要部の全体形状を示す平面図。
【図6】上記遠心圧縮機のディフューザ部の速度三角形を示す図。
【図7】ディフューザ部における圧力損失を示す図。
【図8】ディフューザにおける流入速度比較図。
【図9】従来のディフューザの要部斜視図。
【図10】図9のE部断面図。
【符号の説明】
1 インペラ
2 ディフューザ
2a 前縁
21 ハブ側壁面
22 シュラウド側壁面
23 負圧面
24 圧力面
B 壁面近傍
C 通路中央

Claims (3)

  1. インペラによって圧縮された流体の出口通路の壁面間に設けられ複数の翼からなるディフューザにおいて、前縁が、翼幅方向において上記出口通路の中央の断面に対して対称な曲線に形成されるとともに、上記前縁に垂直な断面形状が上記出口通路の中央の断面形状と同一に形成されてなることを特徴とするディフューザ。
  2. インペラによって圧縮された流体の出口通路の壁面間に設けられた複数の翼からなるディフューザを製作するにあたり、上記ディフューザの前縁に垂直な断面形状が、上記出口通路中央の断面形状と同一形状になり、かつ上記前縁が翼幅方向において上記出口通路中央断面に対して対称な曲線になるように加工することを特徴とするディフューザの製作方法。
  3. 請求項2において、上記前縁に連なる翼面の上記壁面近傍における曲率半径が、上記出口通路中央における曲率半径よりも大きくなるように加工することを特徴とするディフューザの製作方法。
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