JP3701480B2 - 高硬度軟質複合材 - Google Patents
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- C08J2333/10—Homopolymers or copolymers of methacrylic acid esters
- C08J2333/12—Homopolymers or copolymers of methyl methacrylate
Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、高硬度軟質複合材に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、表面硬度が大きく、耐摩耗性、耐損傷性に優れるとともに、軟質が、大地になじみやすい変形性を持ち、施工性にも優れている、天然石調の建材あるいは土木材等として有用な、新しい高硬度軟質複合材に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来より、樹脂あるいは樹脂に無機質フィラーや顔料を配合した軟質の複合材が建物の壁、天井、あるいは家具材等として広く使用されてきている。これらの樹脂複合材は、樹脂系の軟質材であることから、割出ししやすく、材料を薄くすることができ、曲げやすく、しかも下地になじみやすいことから、施工性に優れた建材あるいは土木材としてなくてはならないものとなっている。
【0003】
しかしながら、たとえば塩化ビニルシートや塩化ビニルタイル、Pタイル等として代表的なものが知られているこれらの軟質材は、いずれのものも表面硬度が低く、耐摩耗性、耐損傷性がほとんどないためその使用目的、用途等は極めて限定されていた。また、これらの軟質材は、見るからにプラスチックとわかるものであって、顔料やフィラーの配合によって調色や柄付けが行われていても、質感はどうしてもプラスチックとしての制約をまぬがれることはできなかった。
【0004】
このため、摩耗や損傷が避けられない床や通路、そしてより高級感や意匠性が求められる部位には使用することができないという問題があった。また、従来のものは、耐候性に劣り、熱膨張率も大きいため、屋外では使用できないという問題があった。
一方、より表面硬度が高く、高級感のある材料として天然石調の樹脂複合材も実用化されているが、これらの従来の硬質材は、軟質材の持っている前記のとおりの特徴を欠いているため、施工性等に大きな制約があり、また、天然石調とは言えどもほとんどのものは樹脂、プラスチックとしての質感がわかってしまうものであって、天然石の質感にはほど遠いのが実情であった。
【0005】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来の技術の限界を克服し、軟質樹脂系複合材の持つ、薄くて割れにくく、施工も容易であるという長所を損わずに、しかも高い表面硬度を有し、耐摩耗性、耐損傷性に優れているとともに、深みと高級感のある、新しい建材や土木材等として有用な、高硬度軟質複合材を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、以上のとおりの課題を解決するものとして、まず第1には、骨材成分を含めた無機質成分と、可塑剤を含有しその主成分がメタクリル系樹脂である樹脂成分とからなり、無機質成分が全体量の80重量%以上、樹脂成分が20重量%以下である有機・無機質複合材であって、無機質成分は、2〜70メッシュの大きさの骨材成分と100メッシュの大きさ以下粒径の小さな微粒成分とにより構成され、骨材成分と微粒成分との重量比が骨材成分/微粒成分=1/10〜10/1であり、この複合材の表面硬さがビッカース硬度(JIS Z 2244)で400以上で、破壊することなく曲げ加工が可能な曲率半径が厚さ3〜15mmの板状体においてR25〜1000mmで、その曲げ加工に要する力が1kgf/cm 2 以下であることを特徴とする高硬度軟質複合材を提供する。
【0007】
そして、第2には、樹脂成分が全体量の6〜15重量%含まれている前記複合材を提供する。
また、この出願の発明は、前記第1または第2の発明について、さらに、第3には、骨材成分の少くとも一部として透明性成分が配合されている複合材を、
第4には、骨材成分の少くとも一部として、透明成分の表面に顔料成分を被覆硬化させたものが配合されている複合材を、
第5には、蓄光材または蛍光材が配合されている複合材を、
第6には、難燃剤が配合されている複合材を、
第7には、樹脂成分中に着色する顔料が配合されている複合材を、
第8には、抗菌材が配合されている複合材を提供する。
【0008】
さらにまた、この出願の発明は、第9には、成形体の表面が研磨またはウォータージェット加工、もしくは研磨後のウォータージェット加工されている複合材を、
第10には、ポリメタクリレートと、メタクリレートモノマーおよびアクリレートモノマーのうちの少くとも1種との配合により硬化されている複合材を、
第11には、ポリメタクリレートが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)であり、メタクリレートモノマーおよびアクリレートモノマーが、メチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレートおよびエチルヘキシルアクリレートの1種以上である複合材をも提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、高い硬度と軟質性という矛盾する特性を両立させて建材や土木材としての物理的化学的性質に優れ、しかも深みと高級感のある天然石調の複合材を提供することにおいて画期的なものである。
このようなこの発明の複合材は、
<I>骨材成分を含めた無機質成分(60重量%以上、より好ましくは80重量%以上)
<II>樹脂成分(40重量%以下、より好ましくは20重量%以下)
とを基本的な組成としている。
【0010】
そしてこの発明の高硬度軟質複合材は、少くとも次のいずれの要件として特定されるものでもある。
表面硬さがビッカース硬度(JIS Z 2244)400以上で、破壊することなく曲げ加工が可能な曲率半径が厚さ3〜15mmの板状体においてR25mm以上である。
【0011】
以上の要件については、ビッカース硬度が1000以上、さらには1200以上であることが好ましい。
この発明の複合材は、高硬度で軟質であって、しかも深みと高級感のある天然石調のものとして特筆されるものであるが、その組成についてみると、前記<I>骨材成分を含む無機質成分については、骨材成分とフィラー等としての他の無機質成分とに区分することができる。ここで骨材成分は、この発明の複合材の表面硬度をより高いものとするのに欠かせない成分である。これら骨材成分としては、みかげ石、大理石、変成岩、石英石、長石、雲母等の天然石や鉱物、溶融シリカ、ガラス、金属、陶磁器等からの各種のセラミックスや金属の細粒がその代表例として示される。
【0012】
また、他の無機質材としては、フィラーや顔料、あるいは後述する蓄光材等が考慮される。フィラー成分の代表例としては、炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム等がある。
骨材成分としての無機質細粒成分は、より好ましくは2〜70メッシュ(Tyler基準) の大きさを有するものとし、他のフィラー等としての無機質成分は100メッシュ(Tyler基準) 以下の粒径のより小さな微粒成分とすることが好ましい。
【0013】
天然石等の細粒骨材成分は、得られる人造石の外観ならびに物理的性質に主要な要因として機能する。特に一部を露出することで他の成分と相まって外観上の色や模様の主要因となる。
前記の微粒成分は細粒骨材成分に比べて100メッシュレベルよりも相当細かいものであり、細粒骨材成分の一つ一つの粒の間に侵入し粒の間の空間を埋めるように位置し、得られる人造石の固さやしなやかさといった性質を得ることに寄与する。細粒骨材成分とこの微粒成分とは、その重量比において1/10〜10/1とするのが好ましい。
【0014】
無機質細粒骨材成分の大きさも前記のとおり、特定のもの、すなわち、無機質細粒成分は、前記の通り2〜70メッシュの大きさとすることが好ましい。そして特殊な場合を除き、同一大きさのもののみを用いることが好ましい。色のあるものとないものとを使用して、色を上あるいは下に濃く付けたい場合等において、色の有無により細粒の大きさを変えて使用することが考えられるが、極端に差のあるものの大量使用は、製品の強度を劣化させるので使用すべきではない。
【0015】
微粒成分の粒子の大きさは、前記の通り100メッシュアンダーとするが、細粒成分の粒子の間に十分に入り込めるものでなければならない。従って細粒成分の粒子の大きさに近いものは好ましくなく、より具体的には150〜至250メッシュ程度のものが好ましい。
この発明における樹脂成分は、前述の骨格を形成する成分である天然石等の細粒成分や、微粒成分に対して、これらを包み込み、全体を結合することに寄与し、人造石が完成したとき製品に弾性あるいは引張強度を与える機能がある。
【0016】
この発明においてはこれら成分の構成比率が重要である。特に重要なことは樹脂成分と他の成分との構成比率である。たとえばこの発明では、緻密な組織を有する高密度品を可能とすることができる。
骨格成分である天然石等の細粒成分の製品中の構成比率は多いほど天然石に近いものとなるが、あまり多いと固まったものとならず、製品として使用することはできない。また得られる製品の物理的性質が貧弱なものとなり、通常の用法による使用に耐えないものとなる。
【0017】
また、微粒成分を多く用いても固まらない等の不都合を生ずるほかに、得られるものが艶のないものとなり、石とは言いにくいものになる。
従って、細粒骨材成分や、微粒成分の使用量割合は、それらの総和として、この発明の複合材の全体量について60重量%以上なければならず、好ましくは80%以上である。なお、95%を超すと製品が脆くなり、使用しにくいものしか得られない。また、60%未満では製品が柔らかすぎて石的な性質が得られず、使用範囲が樹脂板と同様な範囲となってしまう。
【0018】
このことは、天然石等の細粒骨材成分ならびに微粒成分以外のもの、すなわち、樹脂成分は製品において多くても全体量の40重量%を超えて存在してはならないことになる。
樹脂成分が40重量%程度を超えると製品がプラスチック的になり、もはや人造石とは名のみの見かけだけのものとなる。また、樹脂成分を過度に少なくすることは製品の天然色に近い外観性を増大させる面もあるが製品が脆いものとなり、使用に適しなくなる。
【0019】
高密度な人造石とする場合には、この発明においては樹脂成分の割合を全体量の20重量%以下とするのが好ましい。
そして、この発明の樹脂・無機質複合材では、前記の無機質細粒骨材成分の一部または全部が、透明性の粒子であってもよいし、あらかじめ、その粒子もしくは小塊が無機あるいは有機物によって被覆されているものであってもよい。
【0020】
このような透明性細粒骨材成分もしくはこの成分粒子を表面被覆したものが重要であることは次の理由によっている。
すなわち、この発明の複合材を如何なる色調や意匠性のものとするかの点に関係するかである。御影石や大理石は天然のものからの製品が得にくいことと、色艶が美麗なためによく目標とされる。この場合、その色艶は、御影石や大理石の価値を決める重要なテーマである。天然の御影石や大理石においては、まったく黒いものから白いもの、あるいは赤いものまで色そのものの種類も多く、かつ同じ色であってもその程度が異なる。
【0021】
従来の技術では、各種の人造石に色を与える場合、たとえば黒いものを得るには天然石等の粉粒体の黒いもののみを使用すればよいが、中間の色調の物を得るには、再現性が問題になる。また、色を与えても大理石の持つ独特の艶を与えることは、困難であった。たとえば染料や顔料を使用して色を与えた場合でも、従来では艶や深みを与えることは困難であった。
【0022】
これに対して、この発明においては、細粒骨材成分として透明性のものを使用することができる。たとえば、御影石調や大理石調等の艶のあるものを得ようとする際には、細粒骨材成分として石英系天然石を粉砕して得た細粒を使用することができる。石英系天然石を粉砕して得た細粒骨材成分は、原料が石英系であるから表面が独特の平滑部を持っている。また多くの場合無色で透明である。色を持っている場合もあまり強くないし、透明でない場合もいくぶんの透明性を残しているものが多い。
【0023】
この原料を使用すれば得られた製品複合材の色は制御でき、かつ、その色は、透明性の石英系細粒成分の存在により、深みを与え、艶を持たせることができる。
透明性細粒骨材成分は、石英系の珪石、あるいはガラス粉等として考慮されるが、細粒骨材成分全体に占める割合は、10〜100重量%であってよい。
【0024】
また、この細粒骨材成分とともに微粒成分が用いられる場合、たとえば前記のとおり炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム等とともに、微粒成分の1部として、色調の調整のための二酸化マンガン、二酸化チタン、珪酸ジルコニウム、酸化鉄等の成分や、夜光性や蛍光性という機能を付与するために、アルミン酸ストロンチウム等の蓄光材や、各種の酸化物の無機蛍光材を配合してもよい。
【0025】
蓄光材の配合は、夜間等の暗視野下において夜光(発光)する人造石を与え、誘導、表示のためのガイド、あるいは夜間装飾として特徴のある景観や外観意匠性の機能を持つことになる。
この蓄光材については、人造石全体量の40重量%まで配合することができる。そしてアルミン酸ストロンチウム等の蓄光材は、前記の無機質微粒成分の一部としても配合することができる。
【0026】
蓄光材の配合による光機能が付与されることにより、この発明の不燃性人造石はより高度な機能を備えたものとなる。
透明性の細粒骨材成分の被覆が行われる場合には、その透明性細粒骨材成分の表面に樹脂を被覆硬化させることや、あるいは水ガラス、陶磁器用の釉薬等の無機物質を焼付けて被覆すること等によって実現される。いずれの場合にも、透明細粒骨材成分の粒子表面には数μm〜数十μm、たとえば5〜50μm、より好ましくは20〜30μm程度の被覆が施されているようにすることができる。より具体的には、たとえばアクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂組成物を用い、100〜300℃程度に加熱して、あるいは光照射して細粒成分の粒子表面にこれら樹脂組成物を被覆硬化させることや、あるいは、水ガラス、釉薬等を用いて800〜1100℃程度の高温において焼付けて無機質被覆を施すことができる。
【0027】
複合材製品の色は細粒骨材成分の被覆層並びに樹脂成分の色調によって制御でき、かつ、その色は、透明性の石英系細粒骨材成分の存在により、深みを与え、艶を持たせることができる。
たとえば被覆層として白色顔料を含む水ガラスの焼付層を有する場合や、ポリエステル系不飽和樹脂の硬化層を有する場合であって、樹脂成分としてポリエステル系不飽和樹脂を用いた場合は、樹脂の持つ色は一般に多少黄色味を含む白であるから、得られる製品は艶のある乳白色のものとなり、天然の乳白色の大理石によく似た色調の製品を得ることができる。
【0028】
被覆層を顔料、染料等の着色材を含有させたものとすることによって、深みと艶のある独特の色調を持たせることができる。
なお、この発明では、色成分として細粒成分とほぼ同じ大きさの粒状の有色のものとを混合して使用し、製品に色を与えることもできる。
いずれにしても、従来の人造石に比べて色の再現性が遙かに容易に確保でき、変色がなく、深みと艶に優れたものが得られる。
【0029】
また、この発明では、陶磁器等に着色する釉薬を天然の透明性細粒骨材成分の粉粒体に塗布し、これを焼き付けて希望する色の粉粒体とし、これを細粒骨材成分として使用することが特に有効でもある。この方法を用いれば色を確かなものとすることができるのみならず、幅広く選ぶことができる。
石英系の天然石を粉砕したもので細粒骨材成分として使用するものと同じものを使用し、これに釉薬を塗布し焼き付けたものを使用すれば、黒あるいは赤といった色の場合、色の再現性についてはまったく心配がなく、再現される色は、単に色そのもののみでなく艶や色調といったものまで完全に再現される。
【0030】
これらの被覆は、人造石の骨材として機能する細粒骨材成分の組織全体に対しての親和性を大きく向上させる。また、微粒成分と樹脂成分との混合によって、強度が大きく、表面の硬度も良好となる。
さらに重要なことは、細粒骨材成分は前記の通りの透明性の天然石等を用い、その表面に上記の硬質被覆を行っていることから、人造石製品の表面を研磨すると、部分的にこの被覆層が破られることである。すると、部分的に露出した無機質透明性細粒成分の粒子とその周囲の被覆層との表面組織が、光の反射に独特の効果を得ることになる。
【0031】
つまり、光は透明性の細粒骨材成分に入射し、その周囲の被覆層で反射され、透明細粒骨材成分を再通過して反射されることになる。このような透光と反射の現象は、従来の人造石の表面だけの反射とは本質的に異なるものであって、この発明の複合材に独特の深み感を与えることになる。どっしりとした深みのある高品質な大理石調の複合材を得る。
【0032】
以上の通りの被覆層を有する透明細粒骨材成分は、配合する無機質細粒骨材成分の全量にして、一般的には、前記のとおり、10〜100%の割合とすることができる。
次に、この発明の樹脂、無機質複合材を構成する主成分としての一つの樹脂成分についてさらに説明する。
【0033】
一般的に、この発明においては、樹脂成分は熱硬化性のものから選ぶことができる。
たとえば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が例示される。なかでも、メタクリル系樹脂あるいはメタクリル系樹脂と他の樹脂との混合、もしくはそれらとの共重合樹脂等が好ましいものとして示される。
【0034】
樹脂成分には、硬化(触媒)剤や色調の調整のために、アゾ系、フタロシアニン系の有機顔料や染料を配合しておいてもよい。
この樹脂成分は、前記のとおり、この発明の複合材の全体量の40重量%を超えることはない。より好ましくは、その配合割合は20重量%以下、さらには15重量%以下である。
【0035】
この樹脂成分については、より好ましくは硬質樹脂を与える成分と、この硬質樹脂をより軟質なものとする成分、もしくは軟質樹脂を与える成分との組合わせ配合とすることが考慮される。ただ、この場合にも、各々の成分が分離しないで一体化されて硬化されるものとすることが欠かせない。
これらは、同種、同系の成分として選択されることが好ましい。たとえば、メチルメタアクリレート樹脂成分と、2−エチルヘキシルメタアクリレート樹脂成分との組合わせ配合等である。
【0036】
また、透明性に優れているとの観点からは、メタクリル系樹脂を採用することが好ましい。たとえば次式
CH3 −CH(CH3 )−CO−O−R
(Rは、直鎖または分枝鎖状の脂肪族炭化水素基あるいは環状炭化水素基等である。)
以上のようなメタアクリル系樹脂とする場合、ポリメタアクリレートとメタアクリレートモノマーとを配合して硬化させることが好ましい。さらに好ましくは、メタクリル系樹脂を複合材の樹脂成分とする場合には、次の配合組成とすることが考慮される。配合割合は、<1>メチルメタクリレートモノマー(MMA)100重量部を基準としている。
【0037】
<1>メチルメタクリレートポリマー(PMMA) 0〜50
<2>メチルメタクリレートモノマー(MMA) 100
<3>アルキルメタアクリレートモノマー
またはアルキルアクリレートモノマー 300以下
<4>可塑剤 0〜300
ここで、<3>アルキルメタアクリレートまたはアルキルアクリレートとしては、たとえば、2−エチルヘキシルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルペンチルメタアクリレート、2−エチルペンチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等が例示される。
【0038】
なかでも、2−エチルヘキシルアクリレートは良好である。
可塑剤としては、たとえばフタル酸エステル等が例示される。
また、この発明の樹脂・無機質複合材においては、顔料等だけでなく、色調とのかね合いにおいては、組織補強のために短繊維成分を配合してもよい。たとえば、ガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維、樹脂繊維等を用いることができる。なかでも、ガラス繊維が好ましいものとして例示される。
【0039】
これらの短繊維は、一般的には、10〜100μm径、1〜100mm長程度のものが、細粒成分の1〜10重量%程度の割合で用いられる。
さらに難燃剤が配合されてもよい。この難燃剤については、アンチモン系やほう素系化合物等の無機系難燃剤あるいは臭素化合物等の有機系の難燃剤が用いられるが、より好ましくは有機系のものであって、なかでも臭素系難燃剤が有効性の高いものとして例示される。たとえばフェノール、ジフェニルエーテル、ビスフェノールA、ベンジルアルコール等の芳香族化合物に臭素が結合された化合物や、それらのエステル、エーテル、ポリエステル等の化合物や、臭素化アクリレート、臭素化エポキシアクリレート、臭素化カーボネート等のポリマーやオリゴマー等である。
【0040】
より具体的には、たとえばブロム変性エポキシアクリレート樹脂等である。
この発明においては、難燃剤の配合は、難燃性人造石の構成としては
前記の高密度人造石組成への配合;
難燃剤の樹脂への分散混合と、その混合物による樹脂層を前記高密度人造石組成物(成形体)とを積層一体化すること;
の態様において実現される。
【0041】
さらにこの発明においては、家具材、浴室材、キッチンカウンター、便器等への応用を考慮する場合には抗菌材を配合してもよい。抗菌剤としては、たとえば銀、酸化銀、ゼオライト、銀担持ゼオライト等の無機質のものが各種用いられる。これらの配合量については、一般的には、複合材の全体量の5重量%以下とすることができる。
【0042】
さらに例示すれば、この発明の複合材においては、前記の細粒骨材成分の少くとも一部として透明無機質成分を用いるとともに、微粒成分の少くとも一部として夜光性または螢光性物質を用いることができる。
透明性無機質骨材としての細粒成分については、実質的に光透過性の大きな無機質成分であることを意味しており、その透明度には様々な程度があるが、天然、あるいは人工合成される無機物質において比較的光透過性の大きなものがこの発明において用いられることになる。このため、透明性の無機質細粒骨材成分は、着色された状態、あるいは固有の色を有した状態のものであってもよい。
【0043】
代表的には、石英石、珪石、ガラス等がこの発明における透明性無機質細粒成分として、例示されるが、これらに限定されることはない。
そして、微粒成分の一部または全部として、100メッシュアンダーの、蓄光性や紫外線吸収にともなう発光性のある、夜光性もしくは螢光性の成分を用いることが考慮される。このような成分の代表的なものとしてはアルミン酸ストロンチウム系蓄光材や硫化亜鉛等がある。これらの各種の素材がこの発明において用いられることになる。
【0044】
細粒成分の重量(W1 )と、微粒成分の重量(W2 )と、夜光性もしくは螢光性成分の重量(W3 )との関係は、たとえば
W1 /(W2 +W3 )として、1/10から10倍以上が考慮されるか、より好ましくは1/1〜4/1程度である。
そして、無機質微粒成分と夜光性もしくは螢光成分との割合については、後者のものが全てを占めてもよいし、あるいは無機質微粒成分が10重量倍以上の割合となるようにしてもよい。
【0045】
また、無機質細粒成分については、そのうちの透明性無機質細粒成分の割合は、
W3 =(0.3〜1.0)×W1
の関係にあるようにするのが望ましい。
以上のことは、人造石としての強度、硬度、密度等の物理的性質や、夜光性もしくは螢光性という光機能の実現にとって適当とされているのである。
【0046】
なお、各成分の大きさは、具体的には、組合わせる成分の各々の大きさと配合割合によって適宜に選択されることになるが、微粒成分は、一般的には150〜250メッシュ程度のものとすることがより好ましい。
人造石の光機能についてさらに説明すると、この発明の人造石においては、光機能は、発光が厚みのものとして可能とされることである。従来のように表層部のみでの発光ではなく、人造石の厚み全体において発光されることになり、発光性能が優れ、しかも高価な夜光性もしくは螢光性成分の使用にともなう経済性にも優れたものとなる。
【0047】
このことは、透明性骨材としての透明性無機質細粒成分の使用によって、外部より照射される光が人造石の内部にまで透過浸透し、効率よくその光エネルギーが夜光性もしくは螢光性の成分に吸収され、かつ、蓄光材等からなる夜光性もしくは螢光性成分が分散された発光層が人造石の内部まで含めた大きな厚みとして確保されることから、長時間、高光度を保つことが可能とされるからである。発光時には、透明性無機質細粒骨材成分は、光透過性が良好であることによって、高光度となるのである。
【0048】
細粒骨材成分全体に占める透明性成分の割合は前記のとおり30〜100重量%とするが、人造石の強度等の物理性能や、外観意匠性によっては、100%の割合とすることが、光機能の観点では好ましいことは当然である。もちろんこのことに限定されることはないが、30%未満の場合には所要の光機能が得られにくいことになる。
【0049】
無機質骨材の一部として夜光性または螢光性物質によって表面焼付けした透明性無機質骨材を用いる場合細粒成分については、この発明においては、少くともその一部が透明性のあるものでその表面に蓄光性等の夜光性物質や紫外線吸収にともなう発光性のある螢光性物質を焼付けたものとして用いることができる。つまり、細粒成分の一部または全量は、夜光性物質または螢光性物質がその表面に被覆された透明性無機質骨材とする。このような透明光のある無機質骨材としての細粒成分としては、ガラスや珪石等が好適なものとして例示される。
【0050】
組成物に配合する細粒成分については、その10〜100%の割合(重量)を前記の夜光性物質また螢光性物質の表面被覆層を有する透明無機質骨材とするのが好ましい。
透明性の無機質骨材、特に細粒骨材成分の焼付け被覆では、透明細粒成分の粒子表面には数μm〜数十μm、たとえば5〜50μm、より好ましくは20〜40μm程度の被覆が施されているようにする。より具体的には、120〜1200℃程度の高温において焼付けて被覆を施すことができる。
【0051】
焼付けられる螢光物質としては、アルミン酸ストロンチウム、硫化亜鉛等々の蓄光性または紫外線照射により発光する各種の螢光物質であってよい。
焼付けは従来より知られている各種の方法でなく、たとえば、アルミン酸ストロンチウム等の蓄光材の粉粒を分散させた分散液、あるいはペースト中に透明性無機質骨材、たとえば前記の細粒成分を混合し、乾燥して焼付けすることができる。
【0052】
表面が高硬度でしかも軟質で、かつ深みと高級感のあるこの発明の樹脂・無機質複合材は、たとえば以上のとおりの組成構成として例示されるものであるが、
その形状においては、板状、デザインされた特殊な形状等の任意とすることができる。
このようなこの発明の複合材は、たとえば以下の方法によって製造することができる。
【0053】
代表的な製造法としては、成形型に無機質成分と樹脂成分等との成形用混合物を注入して自然硬化させる方法、あるいは注入後に上型を合わせてプレス硬化させて脱型する方法、さらには必要に応じて研磨することやあるいはウォータージェット等によって粗面化処理して製造する方法が示される。
自然硬化ではなく、上型を合わせての加熱圧縮による硬化では、たとえば5〜100kgf/cm2 程度の面圧で押圧して圧縮する。この成形においては、圧縮時に、概略90〜140℃の温度に5〜20分間程度加熱する。
【0054】
このような圧縮成形による方法は、平板成形品のように比較的単純な形状を成形法として量産効果を発揮し、また、材料のロスがほとんどないため経済性にも優れたものである。
なお、表面研磨のための手段には特に限定はなく、砥石、研磨布、研磨ベルトなどの工具を用いて、あるいは、バフ研磨剤、ラビングコンパウンド等の研磨剤を用いて実施する事ができる。
【0055】
研磨材としては、研磨作用を主とするダイヤモンド、炭化ホウ素、コランダム、アルミナ、ジルコニアや、研磨作用を主とするトリポリ、ドロマイト、アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム等が適宜に使用される。
そして、この発明においては、成形後の成形体表面に粗面化加工を施し、微粒成分が表面部に露出するようにしてもよい。
【0056】
このための方法としては、まず、樹脂成分の選択的除去法が採用される。すなわち、たとえば、成形型から脱型した後に、成形品の表面に高圧水を噴出させて地肌面加工を施すことが有効である。
この加工は、厚みや、ノズルとの距離、加工形態等の種々の条件によって異なるので限定的ではないが、通常は、2〜20cmの厚みの場合、2〜50cm程度のノズルの高さからは、50〜1400kg/cm2 程度の水圧とすることができる。この圧力は、自然石を対象とする場合に比べて、より低い水圧条件となる。
【0057】
つまり、樹脂分の存在によって、より容易に、高品位での加工が可能となるためである。
高圧水の噴出のためのノズルやそのシステムについては特に制限はない。各種のものが採用される。
この地肌面加工によって、ウォータージェットによる平坦化、あるいは粗面化が実現され、深みのある質感を持った複合材が製造される。
【0058】
樹脂成分の存在によって、表面が白濁することもなく、また、薬品を用いるエッチング方法に比べて、廃液の処理も容易となる。
もちろん、必要に応じて、表面部を有機溶剤によって処理し、樹脂成分を軟化もしくは溶融させて部分除去することもできる。
この場合の有機溶剤としては、使用する樹脂成分に対応して選択すればよく、たとえば、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、無水酢酸、酢酸エチル、酢酸ブチル等のカルボン酸やそのエステル化合物、あるいはアセトン、テトラヒドロフラン、DMF、DMSO等が例示される。
【0059】
成形体はこれらの有機溶剤に浸漬するか、あるいはこれら有機溶媒をスプレーもしくは流下させ、軟化もしくは溶融した樹脂成分を表面部から取除くことで表面凹凸を形成することができる。
あるいはまた、ワイヤーブラシ、切削手段等によって硬度の低い樹脂成分を表面部よりかき取るようにして凹凸を形成してもよい。
【0060】
以上の各種手段によって粗面化し、地肌面加工を施した後に、前記した通り、表面を研磨することにより、独特の深みと艶のある表面質感が実現される。
たとえば、以上のいずれの方法においても、樹脂成形用混合物として夜光性または螢光性物質によって表面被覆した透明性無機質骨材を用いる場合には、研磨等の処理によって、粒子とその被覆層の断面が露出する。
【0061】
こうすることによっても、優れた発光特性とともに、優れた肌合い、質感を有する複合材が得られる。
そしてこの発明の有機、無機質複合材は、前記のとおり、表面硬度が高いことから、薄板であっても、耐磨耗性、耐損傷性に優れ、また軟質であるため下地面への適合性に優れており、しかも深みと高級感のある人工石材としての特徴を有していることから、床材、通路材としての施用や、柱等の造作への使用等において極めて優れたものとなる。
【0062】
以下、実施例を示してさらに詳しくこの発明の複合材について説明する。
【0063】
【実施例】
(実施例1)
粒径10〜25メッシュの大きさの天然珪石の細粒骨材成分とし、平均粒径230メッシュの水酸化アルミニウムを微粒成分とし、その重量比を、細粒骨材成分/微粒成分=2/1として無機質成分とした。
【0064】
この無機質成分を全体量の80重量%とし、表1の構成の樹脂成分を20重量%として複合材組成物とした。
この組成物を型内に投入し、20kgf/cm2 の圧力で約110℃の温度で圧縮成形した。厚さ5mmの板状体を得た。
このものについてJIS A 5209(陶磁器質タイル)基準に従い、吸水率、耐摩耗性、曲げ試験を行い、また、JIS Z 2244基準に従ってビッカース硬度も測定した。その結果を表2に示した。
【0065】
また、得られた複合材について、図1に示したように、5mm厚、幅30mmの板材として、長さ80mmの距離の両端を支持して上部長面を押圧し、破壊までの限界たわみ量(δ)と限界圧力(P)とを測定した。その結果も表2に示した。
なお、この発明の複合材については、実施例としては、限界たわみ量に関して、一般的に次のように特徴づけることもできる。
【0066】
すなわち、5mm厚、幅30mmの板材として長さ80mmの距離の両端を支持して上部中央を1kgfで加圧した時の限界たわみ量が2mm以上であるものとして特徴づけられる。さらには、この限界たわみ量は5mm以上である。
上記複合材について、破壊することなく曲げ加工が可能な曲率半径を測定したところR200mmであることが確認された。また、この曲げ加工に要する力は0.05kgf/cm2 であった。
【0067】
表面硬度が高く、しかも軟質であることが確認された。また、天然石調の深みと高級感のある複合材であることも確認された。
(実施例2)
実施例1において、無機質成分の割合を全体量の88重量%とし、樹脂成分を12重量%として実施例1と同様の複合材を得た。
【0068】
その性能試験の結果を表2に示した。また、この複合材は、破壊することなしにR500mmのコンクリート製柱に弾性エポキシ樹脂で接着可能であった。
実施例1と同様に表面硬度が高く、しかも軟質であることが確認された。また深みと高級感のある外観であった。
(実施例3〜6)
表1のとおりの樹脂成分の構成において、実施例1と同様にして複合材を得た。
【0069】
その性能試験の結果を表2に示した。
いずれの場合も高硬度表面と良好な軟質性能が得られた。深みと高級感のある外観が得られた。
(比較例1〜2)
樹脂成分として表1のとおり2−エチルヘキシルメタクリレートを用いずに実施例1と同様にして複合材を得た。その性能試験の結果を表2に示した。
【0070】
表面硬度は高いが、軟質性能は得られなかった。
(比較例3〜4)
不飽和ポリエステル樹脂と顔料、石粉により成形した市販の人造石材(2種類)についても同様に性能試験を行った。その結果も表2に示した。
表面硬度が極めて低いことが確認された。また、プラスチック板であることがただちにわかる外観を呈していた。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、表面硬度が高いことから、薄板であっても、耐磨耗性、耐損傷性に優れ、また軟質であるため下地面への適合性に優れており、しかも深みと高級感のある人工石材としての特徴を有し、床材、通路材としての施用や、柱等の造作への使用等において極めて優れたものとなる有機・無機複合材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】限界たわみ量の測定方法を示した概要図である。
Claims (11)
- 骨材成分を含めた無機質成分と、可塑剤を含有しその主成分がメタクリル系樹脂である樹脂成分とからなり、無機質成分が全体量の80重量%以上、樹脂成分が20重量%以下である有機・無機質複合材であって、無機質成分は、2〜70メッシュの大きさの骨材成分と100メッシュの大きさ以下粒径の小さな微粒成分とにより構成され、骨材成分と微粒成分との重量比が骨材成分/微粒成分=1/10〜10/1であり、この複合材の表面硬さがビッカース硬度(JIS Z 2244)で400以上で、破壊することなく曲げ加工が可能な曲率半径が厚さ3〜15mmの板状体においてR25〜1000mmで、その曲げ加工に要する力が1kgf/cm 2 以下であることを特徴とする高硬度軟質複合材。
- 樹脂成分が全体量の6〜15重量%含まれている請求項1の複合材。
- 骨材成分の少くとも一部として透明性成分が配合されている請求項1または2の複合材。
- 骨材成分の少くとも一部として、透明成分の表面に顔料成分を被覆硬化させたものが配合されている請求項1ないし3のいずれかの複合材。
- 蓄光材または蛍光材が配合されている請求項1ないし4のいずれかの複合材。
- 難燃剤が配合されている請求項1ないし5のいずれかの複合材。
- 樹脂成分中に着色する顔料が配合されている請求項1ないし6のいずれかの複合材。
- 抗菌材が配合されている請求項1ないし7のいずれかの複合材。
- 成形体の表面が研磨またはウォータージェット加工、もしくは研磨後のウォータージェット加工されている請求項1ないし8のいずれかの複合材。
- ポリメタクリレートと、メタクリレートモノマーおよびアクリレートモノマーのうちの少くとも1種との配合により硬化されている請求項1ないし9のいずれかの複合材。
- ポリメタクリレートが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)であり、メタクリレートモノマーおよびアクリレートモノマーが、メチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレートおよびエチルヘキシルアクリレートの1種以上である請求項10の複合材。
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