JP4183022B2 - 人造石材 - Google Patents
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Description
この発明は、人造石材に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、御影石調あるいは大理石調の優れた肌合いと良好な表面硬度および表面耐摩性等の優れた特性を有し、軽量で高硬度、高強度の高密度人造石材であって、低コストで所要の厚み調整が容易な改善された新しい人造石材に関するもので、壁材、床材、その他の建材、土木用材、石柱等として有用な人造石材を提供するものである。
背景技術
従来より、天然石を適宜の大きさに粉砕し、これに炭酸カルシウムと樹脂を混合した後に硬化させて人造石とすることはすでに知られている。すなわち、たとえば、原料石粉や樹脂等を減圧下で混合し、これを型枠の中に流し込み、取り出して切削加工に供することについて述べられている。
さらには、天然石の粉粒と合成樹脂を用いて人造石を製造する場合に、所定の混合比で原料を使用することと、原料を型枠の中に入れた後に十分な加圧を施すことの必要性も知られている。
しかしながら、これらの従来の方法により得られた人造石の場合には、天然石の粉粒を使用しているからといってその色調や深み感が好ましいものとなるとは限らないという問題がある。
従来の人造石では、どうしても表面の色調がくすんでしまうという欠点があった。このように、従来では、透明感があり、しかも深みがあって、どっしりとした御影石調や大理石調の表面を実現することは極めて難しいのが実情である。
その理由としては、人造石は、その組成、天然石粉粒の大きさと配合等によって、表面での光の反射や吸収の特性が大きく異なるが、このような観点について、従来はあまり検討されてきていないことが考えられる。
そして人造石の組成については、型枠成形性をも大きく左右し、人造石に配合する天然石粉粒の大きさや割合、バインダー樹脂の割合等によっては、型枠成形のための流動性が失なわれ、成形体の内部に気泡が残り、製品人造石の品質、強度を著しく損うという問題がある。
そこで、樹脂分の量を多くすることで流動化を図り、気泡発生を防止することも考えられている。
しかし、一方で、気泡の発生を防止することや、型枠への送り込みのための流動性確保のために、樹脂成分を多くすることは、流動性確保や気泡発生防止には役立っても、出来上がる人造石の性質には悪影響を及ぼすことになる。
樹脂成分の多量使用は人造石製品の樹脂化につながり、得られる製品は樹脂の中に天然石の粉粒体が存在するというものに過ぎず、物性的には原料石よりも原料樹脂に近くなってしまっている。したがって、人造石といいながら、得られているのは石のように見える樹脂製品にとどまっている。
そこで、このような従来の人造石の欠点を解消し、素材として天然石等の粉粒体を使用した場合、得られた製品が緻密な組織を持ち、その透明感のある色調とともに、深み感があり、御影石や大理石等の天然石調の特徴を有し、しかも、成形性に優れ、板状あるいは棒状等の任意の形状であることを可能とする新しい人造石として、この出願の発明者らは、無機質成分が、より粒径の大きい細粒成分と、粒径の小さな微粒成分とからなり、しかも樹脂の配合割合をほぼ10重量%以下とした組成物を提供している。
この人造石は、その色調において、またその特性においても優れたものとして注目されている。
ただ、その後の検討において、この新しい人造石組成物については、厚みのあるものを提供しようとすると、その無機質成分の素材構成と製造の点においてコスト高になりやすいという問題が残されていた。また、その成形品について、より工夫された機能や意匠性を持たせたものとすることがその後の課題として残されてもいた。
発明の開示
この発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであって、上記の課題を解決するものとして、5〜70メッシュの大きさの無機質細粒成分と100メッシュアンダーの無機質微粒成分との和が人造石混合物全体の89重量%以上である無機質細粒成分と無機質微粒成分とからなる無機質混合成分とともに、人造石混合物全体量の11重量%以下の樹脂モノマー成分を含有する人造石混合物と、あらかじめ硬化されている硬化体スラブとが一体化成形されている人造石材であって、無機質細粒成分の少くとも一部が、夜光性または蛍光性物質が表面に焼付けられ、または常温被覆された透明無機質材であることを特徴とする人造石材を提供する。
また、この発明は、5〜70メッシュの大きさの無機質細粒成分と100メッシュアンダーの無機質微粒成分との和が人造石混合物全体の89重量%以上である無機質細粒成分と無機質微粒成分とからなる無機質混合成分とともに、人造石混合物全体量の11重量%以下の樹脂モノマー成分を含有する人造石混合物と、あらかじめ硬化されている硬化体スラブとが一体化成形されている人造石材であって、無機質細粒成分または無機質微粒成分の少くとも一部が、夜光性または蛍光性物質であることを特徴とする人造石材をも提供する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の人造石材の製造を例示した工程図である。第2図は、別の工程図である。第3図および第4図は、各々、さらに別の製造例を示した要部斜視図である。
発明を実施するための最良の形態
この発明について以下にさらに詳しく実施の形態を説明する。
まずこの発明の人造石材を構成する原料としての人造石混合物は3成分に大別される。一つは主成分としての5〜70メッシュの大きさの無機質の細粒成分であって、これは、珪石、かんらん石、長石、輝石、雲母等の鉱物や、花崗岩、変成岩等の天然石、陶磁器、ガラス、金属等からの適宜な無機質の細粒成分が用いられる。
また、この細粒成分とともに100メッシュアンダーの微粒成分が用いられる。この微粒成分としては、天然又は人造の各種の微粒成分が挙げられる。たとえば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等は得やすい微粒成分である。
また、この微粒成分の1部として、色調の調整のための二酸化マンガン、二酸化チタン、珪酸ジルコニウム、酸化鉄等の成分や、難燃性付与のための三酸化アンチモン、ホウ素化合物、臭素化合物等の成分を添加配合してもよい。
第3番目の成分として樹脂モノマー成分がある。この樹脂モノマー成分は打込み一体化成形後に硬化するものであって、熱硬化性のものの中から広い範囲で選ぶことができる。
たとえば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を構成するものであって、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のモノマーがあり、その硬化後の人造石の色調、物理化学的特性等の観点からは、特に、メチルメタクリレートが代表的なものとして例示される。
天然石等の細粒成分は、得られる人造石の外観ならびに物理的性質に主要な要因として機能する。特に一部を露出することで他の成分と相まって外観上の色や模様の主要因となる。
微粒成分は細粒成分に比べて100メッシュレベルよりも相当細かいものであり、細粒成分の一つ一つの粒の間に侵入し粒の間の空間を埋めるように位置し、得られる人造石の固さやしなやかさといった性質を得ることに寄与する。細粒成分とこの微粒成分とは、その重量比において0.5:1〜5:1とするのが好ましい。
また、樹脂成分は、前述の骨格を形成する成分である天然石等の細粒成分や、微粒成分に対して、これらを包み込み、全体を結合することに寄与し、人造石が完成したとき製品に弾性あるいは引張強度を与える機能がある。
この発明においてはこれら成分の構成比率が重要である。特に重要なことは樹脂成分と他の成分との構成比率である。
この発明では、緻密な組織を有する高密度品を可能とすることが特徴の一つであるが、ここで高密度とは、人造石製品の中に含まれている細粒成分と微粒成分とが高密度に存在するという意味であり、その程度はたとえば密度2.2g/cm3以上という、従来の人造石に含有されている範囲を越えている。
すなわち、骨格成分である天然石等の細粒成分の製品中の構成比率は多いほど天然石に近いものとなるが、あまり多いと固まったものとならず、製品として使用することはできない。また得られる製品の物理的性質が貧弱なものとなり、通常の用法による使用に耐えない。
また、微粒成分を多く用いても固まらない等の不都合を生ずるほかに、得られるものが艶のないものとなり、石とは言いにくいものになる。
従って、細粒成分や、微粒成分の使用量割合は限定される。すなわち、重量比で89%以上なければならず、好ましくは90%以上である。なお、95%を超すと製品が脆くなり、使用しにくいものしか得られない。また、89%未満では製品が柔らかすぎて石的な性質が得られず、使用範囲が樹脂板と同様な範囲となってしまう。
このことは、天然石等の細粒成分ならびに微粒成分以外のもの、すなわち、樹脂成分は製品において多くても重量比11%を越えて存在してはならないことになる。
樹脂成分が11%程度を越えると製品がプラスチック的になり、もはや人造石とは名のみの見かけだけのものとなる。また、樹脂成分を過度に少なくすることは製品の天然色に近い外観性を増大させる面もあるが製品が脆いものとなり、使用に適しなくなる。このような観点からは、より好ましくは、樹脂成分は3〜10重量%となるようにする。
そして、この発明の人造石混合物では、前記の無機質細粒成分の一部または全部が、透明性の粒子であって、しかも、あらかじめ、その粒子もしくは小塊が無機あるいは有機物によって被覆されているものとすることが特徴の一つでもある。
透明性の細粒成分のこのような被覆は、その透明性細粒成分の表面に樹脂を被覆硬化させることや、あるいは水ガラス、陶磁器用の釉薬等の無機物質を焼付て被覆すること等によって実現される。いずれの場合にも、透明細粒成分の粒子表面には数μm〜数十μm、たとえば5〜50μm、より好ましくは20〜30μm程度の被覆が施されているようにする。より具体的には、たとえばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等の組成物を用い、150〜300℃程度に加熱して、あるいは光照射して細粒成分の粒子表面にこれら樹脂組成物を被覆硬化させることや、あるいは、水ガラス、釉薬等を用いて800〜1100℃程度の高温において焼付けて無機質被覆を施すことができる。
これらの被覆は、人造石の骨材として機能する細粒成分の組織全体に対しての親和性を大きく向上させる。また、微粒成分ど樹脂成分との混合によって、強度が大きく、表面の硬度も良好となる。
さらに重要なことは、細粒成分は前記の通りの透明性の天然石等を用い、その表面に上記の硬質被覆を行っていることから、人造石製品の表面を研磨すると、部分的にこの被覆層が破られることである。すると、部分的に露出した無機質透明性細粒成分の粒子とその周囲の被覆層との表面組織が、光の反射に独特の効果を得ることになる。
つまり、光は透明性の細粒成分に入射し、その周囲の被覆層で反射され、透明細粒成分を再通過して反射されることになる。このような透光と反射の現象は、従来の人造石の表面だけの反射とは本質的に異なるものであって、この発明の人造石製品に独特の深み感を与えることになる。どっしりとした深みのある高品質な大理石調の人造石を得る。
以上の通りの被覆層を有する透明細粒成分は、組成物に配合する無機質細粒成分の全量にして、一般的には10〜100%の割合とすることができる。
なお、この発明では、前記のとおり、無機質細粒成分の大きさも特定のものとすることが必要である。すなわち、無機質細粒成分は、前記の通り5〜70メッシュの大きさとする。そして特殊な場合を除き、同一大きさのもののみを用いることが好ましい。色のあるものとないものとを使用して、色を上あるいは下に濃く付けたい場合等において、色の有無により細粒の大きさを変えて使用することが考えられるが、極端に差のあるものの大量使用は、製品の強度を劣化させるので使用すべきではない。
一方、微粒成分の粒子の大きさは、前記の通り100メッシュアンダーとする。細粒成分の粒子の間に十分に入り込めるものでなければならない。従って細粒成分の粒子の大きさに近いものは好ましくなく、より具体的には150〜至250メッシュ程度のものが好ましい。
さらに、この発明の人造石材において重要なことは、特例を除いて、これらの人造石混合物の打込み後の硬化部のどの部分においても均一に分散していることが望ましいことである。
そして、硬化部の外部表面は研磨するのが好ましいのである。すなわち、表面の少くとも一部には前記の通り、被覆層が一部破れた細粒成分が露出しているようにするのが好ましい。
研磨はこの発明の深み感のある高密度人造石の持っている緻密な組織状態を表面露出させるのに実用的に便利な方法である。もちろん、製品の面の一部を研磨して細粒成分を露出し、同じ面の他の部分との間の相違を模様として使用することもできる。
なお、人造石を得る場合において、目標とする天然石を如何なる色調や意匠性のものとするかは、重要な問題である。御影石や大理石は天然のものからの製品が得にくいことと、色艶が美麗なためによく目標とされる。この場合、その色艶は、御影石や大理石の価値を決める重要なテーマである。天然の御影石や大理石においては、まったく黒いものから白いもの、あるいは赤いものまで色そのものの種類も多く、かつ同じ色であってもその程度が異なる。
従来、各種の人造石に色を与える場合、たとえば黒いものを得るには天然石等の粉粒体の黒いもののみを使用すればよいが、中間の色調の物を得るには、再現性が問題になる。また、色を与えても大理石の持つ独特の艶を与えることは、困難であった。
たとえば染料や顔料を使用して色を与えた場合でも、従来では艶や深みを与えることは困難であった。
一方、この発明においては、細粒成分として透明性のものを使用する。たとえば、御影石調や大理石調等の艶のあるものを得ようとする際には、細粒成分として石英系天然石を粉砕して得た細粒を使用することができる。
石英系天然石を粉砕して得た細粒は、原料が石英系であるから表面が独特の平滑部を持っている。また多くの場合無色で透明である。色を持っている場合もあまり強くないし、透明でない場合もいくぶんの透明性を残しているものが多い。
この原料を使用すれば得られた打込みされて硬化された硬化部の色は細粒成分の被覆層並びに樹脂成分の色調によって制御でき、かつ、その色は、透明性の石英系細粒成分の存在により、深みを与え、艶を持たせることができる。
たとえば被覆層として白色顔料を含む水ガラスの焼付層を有する場合や、ポリエステル系不飽和樹脂の硬化層を有する場合であって、樹脂成分としてポリエステル系不飽和樹脂を用いた場合は、樹脂の持つ色は一般に多少黄色味を含む白であるから、得られる製品は艶のある乳白色のものとなり、天然の乳白色の大理石によく似た色調を得ることができる。
被覆層を顔料、染料等の着色材を含有させたものとすることによって、さらには、樹脂成分に二酸化チタン、珪酸ジルコニウム、二酸化マンガン、酸化鉄、酸化コドルト等の無機顔料や、アゾ顔料、フタロシアニン系顔料等の有機顔料、あるいは各種の染料を加えることによって、均一な色を持ち、深みと艶のある独特の色調を持たせることができる。
なお、この発明の人造石組成物では、色成分として細粒成分とほぼ同じ大きさの粒状の有色のものとを混合して使用し、製品に色を与えることもできる。
いずれにしても、従来の人造石に比べて色の再現性が遙かに容易に確保でき、変色がなく、深みと艶に優れたものが得られる。
また、陶磁器等に着色する釉薬を天然の透明性細粒成分の粉粒体に塗布し、これを焼き付けて希望する色の粉粒体とし、これを細粒成分として使用することが特に有効でもある。この方法を用いれば色を確かなものとすることができるのみならず、幅広く選ぶことができる。
石英系の天然石を粉砕したもので細粒成分として使用するものと同じものを使用し、これに釉薬を塗布し焼き付けたものを使用すれば、黒あるいは赤といった色の場合、色の再現性についてはまったく心配がなく、再現される色は、単に色そのもののみでなく艶や色調といったものまで完全に再現されるので、従来の着色方式では到底得られないものとなる。
いずれにしても、この焼付けによって被覆層を形成した細粒成分は、全細粒成分の10〜100%の割合において使用する。
また、色調とのかね合いにおいて、成形品の組織補強のために短繊維成分を配合してもよい。たとえば、ガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維、樹脂繊維等を用いることができる。なかでも、ガラス繊維が好ましいものとして例示される。
これらの短繊維は、一般的には、10〜100μm径、1〜10mm長程度のものが、細粒成分の1〜10重量%程度の割合で用いられる。ここで、まず、上記の人造石混合物が打込み一体化成形される硬化体スラブについて説明すると、この硬化体スラブは、あらかじめ硬化された状態のものであり、型枠内に置かれて、または型枠内には置かれることなしに、前記の人造石混合物が打込まれて一体化されるものである。
たとえば第1図は、型枠(1)内に置かれた上記の硬化体スラブ(2)の上に前記の人造石混合物(3)を注入し、プレス(4)により加圧して人造石混合物(3)を硬化させ、硬化体スラブ(2)にその硬化部(5)を一体化する方法を例示したものである。また、第2図は、型枠(1)内に人造石混合物(3)を注入し、その上に硬化体スラブ(2)を置いて、同様にプレス(4)によって加圧する方法を例示したものである。
もちろん、第1図および第2図の例に限られることはなく、第3図のように、硬化体スラブ(2)に形成した所定形状の切欠きや溝内に、人造石混合物(3)を埋込むように打設してその硬化部(5)を一体化してもよい。第4図のように、所定形状の金属体(6)等を設けた硬化体スラブ(2)に対して人造石混合物(3)を打設してその硬化部(5)を一体化するようにしてもよい。このように様々な態様が可能である。
いずれの場合においても、硬化体スラブ(2)は、セメント系、あるいは樹脂系、さらには無機セメント系等の各種の組成であってよい。ただ、人造石混合物との成形後の一体化性の点、つまり接着性の点からは、この硬化体スラブは、樹脂成分を含有し、できるだけ人造石混合物と同質の樹脂が含有されているものとすることが好ましい。
ただ、この硬化体スラブでは、無機質配合成分や色調等については適宜でよく、より低コストな、高炉スラグ、ガラス等の産業廃棄物を含有するものによって構成することができる。
これによって、ある程度厚みのある人造石材を提供する場合にも、裏打材として低コストな硬化体スラブを用い、しかもその厚みを大きくし、表層のみを、高価な素材を用いる前記の人造石混合物の打込みにより形成することができる。
もちろん、人造石混合物と同様の組成によって硬化体スラブを形成し、これに打込み一体化してもよい。硬化体を相互に接着する場合とは異なり、接着剤を使用することなく、一体化は大きな強度として実現される。
たとえば、樹脂としては、メタクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂をはじめ、熱硬化性の各種のものであってよく、これら樹脂には、骨材等の代替成分として、たとえば、全体量の60〜90重量%の高炉スラグ、粉砕ガラス、焼却炉からの各種無機質スラブ等を用いて硬化体スラブを形成することができる。
これらは、再利用も可能である。打込み一体化成形された製品の板厚に対して、この硬化体スラブをどの程度とするかは、用途によっても相違するが、たとえば全板厚の95%程度までの厚みを占めてもよい。また、硬化体スラブは、この発明における前記のとおりの人造石混合物と同様の組成によって形成されてもよいことはすでに述べたとおりである。
さらにまた、この発明においては、第2図において、硬化体スラブ(2)の上に、別の人造石混合物(3)を打設して、サンドイッチ構造としてもよいことは言うまでもない。
上記いずれの場合でも、打設硬化された人造石混合物から形成された表面が、製品としての表面となるようにする。
さらにまた、この説明においては、前記の人造石混合物によってあらかじめ硬化体スラブを形成し、次いで、この形成された硬化体スラブに対して、前記の高炉スラグ等を含有する硬化体スラブに相当する硬化性混合物を打込み一体化成形した人造石材も発明の対象とし、この人造石材も提供する。
このような構成において、この発明の人造石材では、夜光性または蛍光性を持つようにすることもできる。これは、少くとも人造石材の表面を形成する前記の人造石混合物に夜光性、または蛍光性を持つ成分を配合することによって可能となる。
骨格成分である細粒成分の少なくとも一部が前記のとおりの夜光性物質または蛍光物質によって焼付け、または常温被覆されているものであることが実施上の特徴である。
透明性の無機質骨材、特に細粒成分の焼付け被覆では、透明細粒成分の粒子表面には数μm〜数十μm、たとえば5〜50μm、より好ましくは20〜40μm程度の被覆が施されているようにする。より具体的には、120〜1200℃程度の高温において焼付けて被覆を施すことができる。
焼付けられる蛍光物質としては、アルミン酸ストロンチウム、硫化亜鉛等々の蓄光性または紫外線照射により発光する無機酸化物等からなる各種の蛍光物質であってよい。
焼付けは従来より知られている各種の方法でなく、たとえば、アルミン酸ストロンチウム等の蓄光材の粉粒を分散させた分散液、あるいはペースト中に透明性無機質骨材、たとえば前記の細粒成分を混合し、乾燥して焼付けすることができる。
また常温コーティングによる被覆では、前記の分散液やペーストに透明粘着物質(バインダー)を用いておくことによっても被覆される。
この構成においては、外部から照射された光は、内部の焼付けられた被覆物質にまで達し、また、樹脂成分として透明性に優れたメタクリル樹脂(MMA樹脂)を用いる場合には、人造石材の厚み方向の全域に入射されることになる。
このため、その内部にまで入射光が浸透し、また内部からも発光することになる。つまり、光の吸収層および発光層が厚くなる。このため短時間での蓄光が可能となり、また発光効率も大きくなる。
細粒成分の表面のみの被覆であるため、夜光性または蛍光性物質の使用量は少なくてすむことになる。
そして、この発明では、微粒成分の少くとも一部として、100メッシュアンダーの蓄光性や紫外線吸収にともなう発光性のある、夜光性もしくは蛍光性の成分が直接含有されてもよい。代表的なものとしてはアルミン酸ストロンチウム系蓄光材や硫化亜鉛等がある。これら各種の素材がこの発明において用いられることになる。
微粒成分は細粒成分に比べて100メッシュレベルよりも相当細かいものであり、細粒成分の一つ一つの粒の間に侵入し粒の間の空間を埋めるように位置し、得られる人造石の固さやしなやかさといった性質を得ることに寄与する。
そして、前記の夜光性もしくは蛍光性成分の場合には、微粒成分と同様の役割りを果たすとともに、夜光性もしくは蛍光性という光機能を人造石材に付与することになる。
以上の場合の各無機質成分については、その大きさとともに配合割合が重要となる。
前記の無機質細粒成分の重量(W1)と、無機質微粒成分の重量(W2)と、夜光性もしくは蛍光性成分の重量(W3)との関係が、
W1:(W2+W3)=1:2〜5:1
W2:W3=1:2〜10:1
であることが望ましい。
W1:(W2+W3)については、より好ましくは1:1〜4:1程度であり、また、W2:W3については、1:1〜5:1程度であるのがより好ましい。
そして、無機質細粒成分については、そのうちの透明性無機質細粒成分の割合は、
(0.3〜1.0)W1
の関係にあるようにする。
以上のことは、人造石としての強度、硬度、密度等の物理的性質や、夜光性もしくは蛍光性という光機能の実現にとって重要とされているのである。
光機能は、
1)無機質細粒成分の30〜100重量%を透明性無機質細粒成分とすること、また、望ましくは、同様に無機質微粒成分の30〜100重量%が透明性無機質微粒成分とすること
2)100メッシュアンダーの夜光性もしくは蛍光性の成分を、前記のとおりの特定の割合で配合すること
によって、夜光性もしくは蛍光性のある人造石材として実現されることになる。発光性能が優れ、しかも高価な夜光性もしくは蛍光性成分の使用にともなう経済性にも優れたものとなる。
このことは、透明性骨材としての透明性の無機質細粒成分、さらには微粒成分の使用によって、外部より照射される光が人造石の内部にまで透過浸透し、効率よくその光エネルギーが夜光性もしくは蛍光性の成分に吸収され、かつ、蓄光材等からなる夜光性もしくは蛍光性成分が分散された蛍光層が人造石の内部まで含めた大きな厚みとして確保されることから、長時間、高光度を保つことが可能とされるからである。発光時には、透明性無機質細粒成分は、光透過性が良好であることによって、高光度となるのである。
人造石混合物の硬化体スラブへの打込み一体化成形によるこの発明の人造石材の製造法については、前記のプレス成形において、たとえば5〜100kgf/cm2の面圧で押圧して圧縮成形を行うことで実現される。そしてこの成形においては、圧縮時に、概略90〜140℃の温度に5〜20分間程度加熱することが望ましい。
また、この加熱しながらの圧縮成形においては、圧力とともに型枠に振動を加え、型枠内の上記混合材料の流動性を良くすることもできる。
このような圧縮成形による方法は、平板成形品のように比較的単純な形状を成形法として量産効果を発揮し、また、材料のロスがほとんどないため経済性にも優れたものである。
そして、この発明においては、成形後の人造石混合物の硬化後の表面に研磨や、粗面化加工を施し、微粒成分が表面部に露出するようにしてもよい。
このための粗面化方法としては、まず、樹脂成分の選択的除去法が採用される。すなわち、たとえば、成形型から脱型した後に、成形品の表面に高圧水を噴出させて地肌面加工を施すことが有効である。
この加工は、厚みや、ノズルとの距離、加工形態等の種々の条件によって異なるので限定的ではないが、通常は、2〜20cmの厚みの場合、2〜50cm程度のノズルの高さからは、50〜1400kg/cm2程度の水圧とすることができる。この圧力は、自然石を対象とする場合に比べて、より低い水圧条件となる。
つまり、樹脂分の存在によって、より容易に、高品位での加工が可能となるためである。
高圧水の噴出のためのノズルやそのシステムについては特に制限はない。各種のものが採用される。
この地肌面加工によって、ウォータージェットによる平坦化、あるいは粗面化が実現され、深みのある質感を持った人造石が製造される。樹脂成分の存在によって、表面が白濁することもなく、また、薬品を用いるエッチング方法に比べて、廃液の処理も容易となる。
もちろん、必要に応じて、表面部を有機溶剤によって処理し、樹脂成分を軟化もしくは溶融させて部分除去することもできる。
この場合の有機溶剤としては、使用する樹脂成分に対応して選択すればよく、たとえば、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、無水酢酸、酢酸エチル、酢酸ブチル等のカルボン酸やそのエステル化合物、あるいはアセトン、テトラヒドロフラン、DMF、DMSO等が例示される。
成形体はこれらの有機溶剤に浸漬するか、あるいはこれら有機溶媒をスプレーもしくは流下させ、軟化もしくは溶融した樹脂成分を表面部から取除くことで表面凹凸を形成することができる。
あるいはまた、ワイヤーブラシ、切削手段等によって硬度の低い樹脂成分を表面部よりかき取るようにして凹凸を形成してもよい。
以上の各種手段によって粗面化し、地肌面加工を施した後に、表面を研磨することにより、表面の細粒成分の被覆層を部分的に破り、この被覆層と細粒成分の粒子とが断面として製品の表面部に露出させる。これによって、独特の深みと艶のある表面質感が実現される。
表面研磨のための手段には特に限定はなく、砥石、研磨布、研磨ベルトなどの工具を用いて、あるいは、バフ研磨剤、ラビングコンパウンド等の研磨剤を用いて実施する事ができる。
研磨材としては、研磨作用を主とするダイヤモンド、炭化ホウ素、コランダム、アルミナ、ジルコニアや、琢磨作用を主とするトリポリ、ドロマイト、アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム等が適宜に使用される。
もちろん、このような研磨を施した後に、表面部をさらに粗面化し、凹凸を形成してもよい。
こうすることによっても、優れた肌合い、質感を有し、さらには発光特性をも有する人造石材が製造される。
以下、実施例を説明する。もちろん、この発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例
実施例1
高炉スラグ60重量%、平均粒径10メッシュの天然砕石30重量%、並びにメチルメタアクリレート(硬化剤含有)10重量%の組成のものを型枠中において圧縮成形した。これにより厚み12mmの硬化体スラブを得た。
このものを第1図のように型枠に入れた。
あらかじめ、白色釉薬を用いて約1000℃で表面焼付け層を約30μmの厚みで設けた粒径10〜25メッシュの天然珪石を全細粒成分の50重量%として用い、細粒成分と、230メッシュの水酸化アルミニウムとを、その重量比2:1において、組成物全重量の90重量%となるように、9重量%のメチルメタクリレートモノマーおよび1重量%の硬化剤とともに均一混合してモルタル状の人造石混合物とした。
この混合物を、型枠内の硬化体スラブ上に投入し、圧力30kgf/cm2の面圧で、110℃の温度において15分間圧縮して一体化成形を行い、厚み約15mmの板状体に成形した。
次いで、人造石混合物から硬化させた表面部をコランダム研磨材を用いて研磨した。これにより、焼付け被覆層を有する細粒成分は、その焼付け層と細粒成分との部分断面を露出させた。
得られた人造石は、深みのある、大理石調の乳白色と艶をもち、内部や表面に気泡が存在せず、組成は均一であった。
硬化体スラブと人造石混合物の硬化部との接合は強度において充分であった。
日本工業規格JIS K−7112に従った試験では、比重2.02であった。また、吸水率は、0.10%であった。その他の特性は以下の表1の通りであった。
得られた製品を建物の壁板として使用したところ、深みのある美麗な大理石の壁を得ることができた。人造石材の製品としての製造コストは、前記の硬化体スラブを用いずに15mm厚の板材を得る場合に比べて約1/30にまで低減することができた。
実施例2
実施例1において、人造石混合物として次のものを用いて同様にして板状成形体を得た。
すなわち、あらかじめ、アルミン酸ストロンチウム系蓄光材を用いて約1000℃で表面焼付け層を約30μmの厚みで設けた粒径10〜25メッシュの天然珪石を全細粒成分の50重量%として用い、細粒成分と、平均粒径230メッシュの炭酸カルシウムとを、その重量比2:1において、組成物全重量の89重量%となるように、11重量%のメチルメタアクリレート(MMA)およびMMA重量の1.5重量%の硬化剤とともに均一に混合してモルタル状の人造石混合物とした。
この混合物を投入し、厚み約15mmの板状体に成形した。
次いで、表面部をダイヤモンド系砥石および炭化珪素・マグネシア系砥石を用いて研磨した。これにより、焼付け被覆層を有する細粒成分は、その焼付け層と細粒成分との部分断面を露出させた。
得られた人造石は、厚み方向全体の夜光性の蓄光/発光特性を示し、普通でも、深みのある、大理石調の乳白色と艶をもち、内部や表面に気泡が存在せず、組成は均一であった。
日本工業規格JIS K−7112に従った試験では、比重2.02であった。また、吸水率は、0.10%であった。その他の特性は以下の表2に通りであった。
また、3%塩酸水溶液8時間浸漬、並びに3%水酸化ナトリウム水溶液8時間浸漬による耐酸性、耐アルカリ性試験によっても異常は認められなかった。
得られた製品を建物の壁板として使用したところ、深みのある美麗な御影石調の壁を得ることができた。
実施例3
次の配合(重量%)
透明性天然珪石 :50
(10〜70メッシュ)
水酸化アルミニウム :10
(平均粒径220メッシュ)
透明性珪石粉末 :10
(平均粒径200メッシュ)
アルミン酸ストロンチウム蓄光材 :20
(平均粒径200メッシュ)
メチルメタアクリレート(MMA) :10
(0.15%過酸化物系MMA硬化剤含有)
を均一に混合してモルタル状とした。
得られた混合物を型枠内に投入し、厚み3mmの板状体に成形した。この板状体を型枠内に置き、この上に、次の組成からなる硬化性混合物を注入した。
高炉スラグ 30重量%
ガラス粉 10重量%
天然砕石 40重量%
メチルメタクリレート 20重量%
(硬化剤を含む)
注入後、面圧40kgf/cm2において、110℃の温度で20分間圧縮した。
この圧縮により、厚み14mmの板状人造石材を得た。
次いでこの人造石材の表面をダイヤモンド系砥石および炭化珪素、マグネシア系砥石を用いて研磨し、10mm厚とした。
得られた人造石は、厚み方向全体の夜光性の蓄光/発光特性を示し、普通でも、深みのある、大理石調の乳白色と艶をもち、内部や表面に気泡が存在せず、組成は均一であった。
日本工業規格JIS K−7112に従った試験では、比重1.98であった。また、吸水率は、0.10%であった。その他の特性は以下の表3の通りであった。
また、3%塩酸水溶液8時間浸漬、並びに3%水酸化ナトリウム水溶液8時間浸漬による耐酸性、耐アルカリ性試験によっても異常は認められなかった。
得られた製品を建物の壁板として使用したところ、深みのある美麗な御影石調の壁を得ることができた。また、晴天時に昼間の日光により蓄光した光が夜間において高光度で長時間その効果を維持した。厚みを有する発光部により質感が得られた。
実施例4
実施例3の配合において、珪石粉末を20%、アルミン酸ストロンチウム系蓄光材を10%に変更し、かつ、天然珪石の割合を62%、メチルメタアクリレート(MMA)の割合を8%に変更して均一に混合したものを使用し、厚み14mmの板状体とした。
次いで表面部をダイヤモンド砥石及び、炭化珪素アグネシア系砥石を用い研磨し、さらに1100kg/cm2のウォータージェット圧力(ノズル径0.75mm、噴射距離40mm)で、表面部の樹脂部分のみを除去した。
得られた人造石は、通常では、深みを有し、ノンスリップ機能を備えたものであり、夜間においては、蓄光性により、厚み方向全体に長時間視認可能なものであった。
非常停電時の夜光性誘導標識建材として、有効な人造石として、使用することができた。
産業上の利用可能性
以上の通り、この発明では、従来得られなかった深みと艶のある優れた色調と、良好な特性を持つ高密度な人造石材を極めて低コストに提供する。得られた製品は、天然品には得にくい均一な製品となる。しかもこのように優れた製品の製造が特別に高価な設備を使用することなく可能となる。
特にこの発明の人造石は、御影石調、あるいは大理石調のものを得るのに好適であり、天然石と同様に使用することができるものである。そして、発光性という機能も実現されることになる。
製品は深みのある高級品として天然品よりも幅広く壁材、床材、柱等として使用することができるものである。
Claims (17)
- 5〜70メッシュの大きさの無機質細粒成分と100メッシュアンダーの無機質微粒成分との和が人造石混合物全体の89重量%以上である無機質細粒成分と無機質微粒成分とからなる無機質混合成分とともに、人造石混合物全体量の11重量%以下の樹脂モノマー成分を含有する人造石混合物と、あらかじめ硬化されている硬化体スラブとが一体化成形されている人造石材であって、無機質細粒成分の少くとも一部が、夜光性または蛍光性物質が表面に焼付けられ、または常温被覆された透明無機質材であることを特徴とする人造石材。
- 5〜70メッシュの大きさの無機質細粒成分と100メッシュアンダーの無機質微粒成分との和が人造石混合物全体の89重量%以上である無機質細粒成分と無機質微粒成分とからなる無機質混合成分とともに、人造石混合物全体量の11重量%以下の樹脂モノマー成分を含有する人造石混合物と、あらかじめ硬化されている硬化体スラブとが一体化成形されている人造石材であって、無機質細粒成分または無機質微粒成分の少くとも一部が、夜光性または蛍光性物質であることを特徴とする人造石材。
- 樹脂モノマー成分は、メタアクリル酸エステルである請求項1または2の人造石材。
- 硬化体スラブは、樹脂含有材である請求項1または2の人造石材。
- 硬化体スラブは、5〜70メッシュの大きさの無機質細粒成分と100メッシュアンダーの無機質微粒成分との和が全体の89重量%以上である無機質混合成分とともに、全体量の11重量%以下の樹脂成分とを含有している請求項4の人造石材。
- 樹脂成分はメタアクリル酸エステル樹脂である請求項5の人造石材。
- 硬化体スラブは、高炉スラグ、ガラス等の産業廃棄物を含有している請求項1または2の人造石材。
- 無機質細粒成分は、少なくともその一部について、その表面にあらかじめ被覆硬化された無機物層もしくは有機物層を有している請求項1、2または5の人造石材。
- 表面の被覆硬化層が、厚み5〜50μmである請求項8の人造石材。
- 細粒成分の全体量の少くとも10%が表面被覆硬化された層を有している請求項8の人造石材。
- 細粒成分が、水ガラスまたは顔料添加水ガラス、もしくは陶磁器用釉薬により焼付けされた表面被覆硬化層を有している請求項8の人造石材。
- 顔料添加樹脂からなる表面被覆硬化層を有している請求項8の人造石材。
- 細粒成分と微粒成分とが重量比で0.5:1〜5:1の割合で配合されている請求項1、2または5の人造石材。
- 透明性無機質材は、夜光性または蛍光性物質が表面に厚み5〜50μmで焼付け被覆されていることを特徴とする請求項1の人造石材。
- 透明性無機質材はガラスまたは珪石である請求項1の人造石材。
- 無機質微粒成分は、その重量のうちの5〜40%の割合が夜光性または蛍光性物質である請求項1の人造石材。
- 硬化体スラブは、セメント系、または樹脂系材からなる請求項1または2の人造石材。
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