JP3700265B2 - フローマーク測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
一般に、カレンダー成形、押出しキャスト成形、インフレーション成形、射出成形またはブロー成形によって得られた樹脂またはゴムのフィルム、シート又は板状成形品には、フローマークと呼ばれる波状の模様が残存することがあり、これは製品外観を著しく悪化させる恐れがある。本発明はこれらの成形加工法によって得られた樹脂シート(以下、フィルム、シート又は板状成形品を総称して樹脂シートという)に残存するフローマークによる樹脂シートの歪みを測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、このようなフローマークを評価する方法としては熟練した作業者が樹脂シートを直接目視観察し、その良否を判別して評価する方法しか知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フローマークについてこのような従来の方法に代わる、すなわち、カレンダー成形などで製造される樹脂シートの上に幾何学的模様像を投影しフローマークによる幾何学的模様の輪郭の歪みに反映させ、反射像の目視観察による良否の判別を容易にするばかりでなく、さらに必要に応じて幾何学的模様の歪みの程度を画像処理装置を用いて数値化することができるフローマーク測定方法の提供にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、樹脂シートの上に幾何学的模様の像を投影し、上記樹脂シートのフローマークにより歪められた幾何学的模様の輪郭を、反射像としてカメラレンズの光軸と該樹脂シートの面のなす角度が10°〜80°となるように配置されたカメラで撮影することを特徴とするフローマーク測定方法を要旨とするものである。
【0005】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
本発明に使用される幾何学的模様の像の図柄は、特に限定されるものではないが、最終的に模様の輪郭の歪みを観察又は定量するので、反射像又は撮影して得られる映像がなるべく単純な模様、すなわち直線状の縞模様、円形状の水玉模様などとなるものが好ましく、フローマークによる歪みの程度によって使い分けることができる。すなわち、フローマークによる歪みの程度が甚だしい場合は円形状の図柄が好ましい。一方、フローマークが比較的少なく上記円形状の図柄では定量評価が困難な場合は、直線状の縞模様的図柄を使用することでフローマークによって直線が曲線に歪められその輪郭の最大振れ幅の値からフローマークによる歪みの程度を定量化して評価することができる。また、円形状および直線状の幾何学的模様の色柄はコントラストの観点から樹脂シートの色調や透明度に応じて任意に選択でき、鮮明度の高い組み合わせが好ましい。
【0007】
直線状の縞模様を投影した場合、縞模様の大きさは図1に示す樹脂シート2とスリット7の距離h(図1の8)及びスリット7と光源1の距離h′(図1の19)を調整することで任意に変化させることができる。例えば図2に示す様に直線の太さM(縞模様を構成する2色の内の細い方で図2に示す9)は0.5mm〜10mmで、線と線の間隔N(縞模様を構成する2色の内の太い方で図2に示す10)は5mm〜50mmの範囲で等間隔であることが好ましい。直線の太さMが0.5mm〜10mmであれば、直線の輪郭の歪みの検出が容易であり、測定対象となる点数を充分取ることができる。また、線の間隔Nは5mm〜50mmであれば、フローマークによって歪められた直線同士が重なることなく、検出範囲も充分広く取ることができる。更に、このような直線状の縞模様を使用する場合はフローマークの線と縞模様の直線の交差角γ(図3に示す13)は20°〜70°に設定すると歪みが増幅されるので分解能の観点で好ましい。さらに好ましくは40°〜50°である。また、カメラの光軸のシート面への投影線と直線状の縞模様の線とのなす角度β(図1に示す6)は、30゜〜60゜が好ましく、この範囲で最も輪郭の乱れが増幅される。
【0008】
例えば、図2に示す直線状の縞模様をスリットとして使用した場合、フローマークによって直線は図4に示すような曲線状に歪み目視観察による良否の判別を容易にすることができる。さらに、この場合図6に示すように曲線の輪郭の最大振れ幅の値F(図6に示した14)を計測してフローマークの程度を数値化して評価することもできる。ここで、フローマークにより直線が曲線状に歪むとは、直線が非直線の形状へと変形することを意味する。
【0009】
撮影した映像が円となる原図の模様、すなわち楕円の大きさは、図7に示す楕円の長径aと短径bが0.2cm〜5cmであることが好ましい。長径aと短径bが0.2cm〜5cmであれば、輪郭の歪みを定量することが容易であり、フローマークによって歪められた円状の図形同士が重なることなく、しかも検出範囲を充分広く取ることができ統計的な解析を行うことができる。カメラのレンズの光軸と樹脂シートの面のなす角度α(図1に示す5)は後述するとおり10°〜80°が好ましいのでそれに応じて斜めから観察したときに真円になるように原図の円形状模様の楕円率を調整することが好ましい。すなわち、b/a=sinαの関係を満たし、楕円の長径方向にカメラを設置して撮影することが好ましい。隣合う各楕円の間隔(図7に示すX、Y)は映像において楕円に相当する部分の模様が互いに接触しない程度で、かつ円形模様と円形模様の間の白色下地部分にフローマークが存在し非検出領域が存在しない程度であれば特に限定されない。また、評価するシートが大きい場合はカメラから遠ざかるほど各模様の映像が小さくなるので映像入力されるときと同じ大きさになるように奥行き方向にも必要に応じて模様の大きさと楕円率を調整することが好ましい。
【0010】
幾何学的模様の輪郭の乱れを映像入力するカメラの光軸と樹脂シートの面のなす角度α(図1に示す5)は好ましくは10°〜80°、さらに好ましくは20°〜40°である。10゜未満の場合は輪郭の乱れは激しいものの模様部分と下地部分が明瞭でなくなり全体的にコントラストが落ちるといった問題がある。一方、80゜を超えるとコントラストは充分であるものの輪郭の乱れが増幅できないおそれがある。
【0011】
樹脂シートが厚くカールしている場合や極端に薄く水平に保持しにくい場合はガラスに挟んで測定しても差し支えない。ガラスの厚みは幾何学的模様の輪郭が視認できれば特に限定されるものではない。また、樹脂シートの表裏を逆にして評価しても測定の感度に支障をきたすおそれはない。
【0012】
樹脂シートへの幾何学的模様の投影方法は、蛍光灯、水銀灯、白色光等の光源(図1の1)の輪郭を直接投影する方法、規則的模様等が打ち抜かれたスリット(図1の7)などを介してその輪郭を投影する方法がある。又、光源と樹脂シートの間や光源とスリットの間に光学的レンズを設置することで投影される像の輪郭をより鮮明にする方法を用いることもできる。光源から発せられる光線の波長及びその強度としては、本発明の方法の目的が達せられる波長域のものであればどのような波長の光線及びも用いることができるが、樹脂シートへの損傷が認められないような波長及び強度を適宜選択することができる。例えば、樹脂シートが透明な場合は白色光等の光源の輪郭を直接投影することが好ましく、不透明な樹脂シートの場合は波長400nm〜800nmの可視光光線を使用することが好ましい。さらに、市販のレーザーパターンプロジェクターを用いても差し支えない。
【0013】
図7に示す幾何学的模様を図柄として使用し、楕円模様が円形に見える角度にカメラを固定した場合、フローマークによって円形模様は図8、図9に示すように輪郭が歪み目視観察による良否の判別を容易にすることができる。さらにその歪みの程度を”真円度”として数値化して評価することもできる。真円度は(4π×模様の面積)÷周囲長の2乗で定義され、その値が1に近づく程フローマークの程度が低く製品外観が良いと判断できる。
【0014】
これらのフローマークにより投影像が変形したことを判断する方法としては、例えば、樹脂シートとして良好なもの及び不良のものとについて予め観察、定量によって評価し、良品と不良品との相違についての基準を定めておき、その後評価の対象となる樹脂シートについて得られた観察、定量の評価結果と比較することで良品と不良品との鑑別を行うといった相対的な評価方法を用いることができる。また、直接、評価の対象となる樹脂シートについて得られた観察、定量の評価結果により良品と不良品との鑑別を行うといった評価方法を用いることもできる。
【0015】
更に、評価対象の樹脂シートを定量評価する場合において、撮影された幾何学的模様の輪郭を数値化して評価することもできる。この方法としては、前記したような直線状の模様を評価対象の樹脂シートへ投影しフローマークにより投影像が変形したことを撮影像の輪郭の最大振れ幅として数値化する方法、撮影像の輪郭をトレースし、直線より歪んだ位置を記録して数値化する方法、また、前記したような楕円状の模様を評価対象の樹脂シートへ投影し、これを真円となる位置から撮影してフローマークにより撮影像が真円から変形したことを真円度として数値化する方法、撮影像の中心点を撮影像における上下、左右のそれぞれの領域で同じ面積となるように設定された位置とし、その中心点から一定の半径を有する円を描き、撮影像と描かれた円との比較により両者の相違する領域を面積として数値化する方法などが例示できる。
【0016】
以上のような方法でフローマークによる樹脂シートの評価を行うわけであるが、実際に反射像を撮影するに当たっては、幾何学的模様の輪郭をフローマークによって歪め、その歪められた像を目視にて直接評価したり、カメラから画像入力して画像解析装置に取り込み、フローマークによる歪みの程度を目視にて評価したり、これを数値化して算出したりする。カメラを用いる場合には、カメラは画像処理装置に映像入力できるものなら何でもよく、テレビカメラまたは高感度CCD(電荷結合素子)カメラを使用することが好ましい。ここで、撮影された映像を直接目視にて観察し評価しても良いが、画像を解析するために市販の画像解析装置および画像解析ソフトを使用することができ、たとえば、日本アビオニクス(株)製画像解析装置TVIP−4100および同画像解析ソフト”イメージコマンド4198”をあげることできる。映像入力をするに際しては、必要に応じて蛍光灯、水銀灯、白色光等の光源で規則的模様の輪郭が充分視認できるように照明を施しても差し支えない。
【0017】
本発明を適用して測定する対象となる樹脂シートを成形する成形加工法は、カレンダー成形加工法、押出しキャスト成形加工法、インフレーション成形加工法、ブロー成形加工法、射出成形加工法などで、特に限定されない。又、本発明の方法においては光源より樹脂シートへ投影された反射像を観察、定量するものであるため、樹脂シートの色調、厚み、密度等の樹脂の性状には左右されずに実施することができる。
【0018】
本発明を適用して測定する対象となる樹脂シートの素材となる熱可塑性樹脂は、上述の成形法によって成形することができるものであればよく、未加硫のゴムも含む。たとえば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ナイロン、ポリエステル、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどをあげることができる。また、これらの樹脂に通常添加される炭酸カルシウムなどの無機フィラー、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、顔料、染料などを添加した樹脂組成物であっても、本発明によって支障なくフローマークを測定することができる。
【0019】
さらに本発明の測定方法が可能な幾何学的模様を印刷した紙または平板とカメラおよび必要に応じて画像処理装置で構成されるフローマーク測定装置を、例えば実際のカレンダー成形加工機や押出しキャスト成形機の巻き取り装置の前までの適切な位置に組み込んでインライン自動検査装置として活用し、成形加工機の運転条件と連動させて評価検査システムとして使用することもできる。例えば、カレンダー成形の場合にはロール温度、ロール回転速度などの加工条件の調整と連動させ、これらの最適の条件の把握などを行うことができる。
【0020】
【実施例】
実施例1
ポリ塩化ビニル樹脂(東ソー(株)製、リューロンTH700)、該ポリ塩化ビニル樹脂100重量部あたり、安定剤(日東化成(株)製、N2000E)3重量部および滑剤(川研ファインケミカル(株)製、F3)0.2重量部の割合の樹脂組成物をスクリュー温度75℃、バレル温度90℃、ダイス温度180℃に設定されたコ・ニーダー混練機を用いて予備混練し、プレコンパウンドを得た。このプレコンパウンドをロール温度が185℃、回転数が6回/分に設定された6インチ(152.4mm)径の4本のロールで構成される逆L式4本カレンダーを用いて厚み0.3mmのシート状に成形した。図1に示す装置で樹脂シート上に投影された線状模様が、線幅(図2におけるMに対応)=1mm、線間隔(図2におけるNに対応)=5mmとなるようなスリット(図1の7)を用いて得られた輪郭の歪みを図4に示す。また、同装置で樹脂シート状に投影された円形状幾何学的模様の投影像が、長径=7mm、短径=4mm、間隔(図7におけるXに対応)=5.5mm、間隔(図7におけるYに対応)=4mmとなるようなスリットを使用し、図1に示した評価装置を用いて得られた輪郭の歪みを図8に示す。カメラは池上通信(株)製計測用テレビカメラIF−8500を使用し、設定条件は、α=30゜、β=40゜、γ=45゜であった。図4、図8の輪郭の歪みを画像解析装置(日本アビオニクス(株)製画像解析装置、TVIP−4100)に映像入力し、画像解析ソフト(同社製画像解析ソフト”イメージコマンド4198”)を用いて図4の最大振れ幅、図8の真円度の値を求めた。最大振れ幅の値は3.0mm、真円度は0.75、であった。
【0021】
実施例2
カレンダーロールの設定温度を195℃とした以外はすべて実施例1と同一の条件でシートを成形した。この試料のフローマークによる歪みを図5、図9に示した。実施例1と同様に画像解析した結果、最大振れ幅の値は1.4mm、真円度は0.90、であった。
【0022】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明のフローマーク測定方法によれば、どのような作業者によっても熟練を要せず、目視観察による評価が容易になるばかりでなく必要に応じてフローマークによって歪められた樹脂シートの歪みの映像を画像処理装置を用いて観察又は定量的に評価することができる。
【0023】
また、本発明によって各樹脂のフローマーク特性の評価を加工条件の調整と連動させ、これらの最適の条件の把握などを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を示す斜視図である。
【図2】実施例1および2で使用した直線状縞模様の図柄である。
【図3】直線状縞模様を使用して本発明を実施して得られる映像の一態様である。
【図4】実施例1で得られた図2の幾何学的模様の映像のスケッチである。
【図5】実施例2で得られた図2の幾何学的模様の映像のスケッチである。
【図6】最大振れ幅の値Fの定義を示す図である。
【図7】実施例1および2で使用した楕円状模様の図柄である。
【図8】実施例1で得られた図7の幾何学的模様の映像のスケッチである。
【図9】実施例2で得られた図7の幾何学的模様の映像のスケッチである。
【符号の説明】
1:光源
2:樹脂シート
3:カメラ
4:画像解析装置
5:カメラの光軸と樹脂シートの面のなす角度α
6:カメラの光軸方向と縞模様を構成するの直線のなす角度β
7:幾何学模様が打ち抜かれたスリット
8:樹脂シートとスリットの距離h
9:直線の幅M
10:直線と直線の間隔N
11:フローマーク
12:フローマークによって歪められた後の直線
13:フローマークと縞模様を構成するの直線なす角度γ
14:最大振れ幅の値F
15:楕円の長径a
16:楕円の短径b
17:楕円と楕円の長径方向の間隔X
18:楕円と楕円の短径方向の間隔Y
19:スリットと光源の距離h′
Claims (5)
- 樹脂シート表面上に幾何学的模様を投影し、樹脂シートのフローマークによる上記幾何学的模様の輪郭の歪みを反射像として、カメラレンズの光軸と該樹脂シートの面のなす角度が10°〜80°となるように配置されたカメラで撮影することを特徴とするフローマーク測定方法であり、
該幾何学的模様が楕円を配置した模様であり、樹脂シート上に投影した上記楕円が真円となる位置から撮影し、フローマークによる樹脂シートの歪みの程度を真円度として評価することを特徴とするフローマーク測定方法。 - 樹脂シート表面上に幾何学的模様を投影し、樹脂シートのフローマークによる上記幾何学的模様の輪郭の歪みを反射像として、カメラレンズの光軸と該樹脂シートの面のなす角度が10°〜80°となるように配置されたカメラで撮影することを特徴とするフローマーク測定方法であり、
該幾何学的模様が1本又は2本以上の直線からなる縞模様であり、且つカメラの光軸のシート面への投影線と直線状の縞模様の線とのなす角度が30゜〜60゜となるように配置されたカメラで撮影し、フローマークによって歪められた程度を直線が曲線状に歪められた輪郭の最大振れ幅の値として評価することを特徴とするフローマーク測定方法。 - フローマークの線と直線の交差角を20°〜70°に設定することを特徴とする請求項2に記載のフローマーク測定方法。
- 直線の間隔が5mm〜50mmであることを特徴とする請求項2又は3に記載のフローマーク測定方法。
- 幾何学的模様の歪みの程度を画像処理装置によって数値化することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフローマーク測定方法。
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