JP3700222B2 - バニシ仕上加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、加工部材に設けた貫通孔の寸法を精度良く修正するために行われるバニシ仕上加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、加工部材である円筒状部材の内周面を仕上げる方法として、砥石を使用した内面研削が行われる。
この研削加工では、円筒状部材の内周面に対して、砥石を、急速接近、研削、スパークアウト、後退の手順で移動させることで行われる。このとき、研削後の仕上寸法の精度を向上させるために、NC制御、インプロセス寸法測定等が付加される場合もある。
【0003】
しかし、上記NC制御やインプロセス寸法測定等が付加された研削加工であっても、例えば、砥石の摩耗、加工部材の回転精度、機械の応答速度、研削液によるインプロセスゲージの揺れなどの様々な要因によって、仕上寸法の絶対値のバラツキを1〜2μmφ以下にすることは困難であり、通常、上記バラツキは4μm程度となる。このとき、上記研削加工による上記仕上寸法のバラツキを小さくしようとする場合には、研削速度を遅くしたりスパークアウトの時間を長くするなど若干の改善方法はあるものの、加工時間が長くなり且つ加工コストが高価なものとなる。
【0004】
このため、通常は、上記研削加工の後工程として、ホーニング盤による仕上加工を施したり、熟練者によるハンドラップを行い、さらには、内径寸法の選別が行われているのが実情である。但し、これらの方法では、設備費や人件費が高価なものとなる。
また、従来、上記研削加工の後工程として、バニシ仕上加工により内径寸法の修正が行われる場合もある。
【0005】
この従来のバニシ仕上加工は、円筒状部材の内周面に対し精度の良い適正な寸法の超硬球を単に貫通させることで、内径寸法の修正を行うものである。
即ち、図7に示すように、ベース部材20上に設置された円筒状部材1の貫通孔1aの上端開口部に、当該貫通孔1aの径よりも若干大きい寸法の超硬球21を載せ、続けて、ピストンロッド22により上側から上記超硬球21を貫通孔1a内に圧入して貫通させるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来のバニシ仕上加工方法では、内径寸法は修正されるものの、貫通孔の形状が崩れて良品とならないおそれがあるという問題がある。
例えば、内径寸法が3.997mmφの円筒状部材1に対し、4.026mmφの超硬球21を貫通させた場合、加工後の円筒状部材1の内径寸法は、4.000mmφとなり、29μmφの締代で3μmφの寸法修正が行われたことになる。ここで、上記円筒部材の諸元は図2に示すものとする。
【0007】
しかし、円筒状部材1の加工前と加工後の内周面形状を測定すると、図8に示す形状になっている。ここで、図8中、(a)は加工前の形状を、(b)は加工後の形状を示している。この図8から分かるように、加工前に0・3μmの中凸形状(軸方向中央に向けて内径が小さくなる形状)をしていたものが、加工後は逆に、0.3μmの中凹形状(軸方向中央に向けて内径が大きくなる形状)となってしまい、加工前の形状が維持されていない。
【0008】
即ち、研削加工により上記中凸形状に加工されたにもかかわらず、従来のバニシ仕上加工方法で仕上加工を施すと、内周面形状が中凹形状となってしまう。
なお、上記内周面形状が中凹形状となるのは、円筒状部材1において開口端部側の方が軸方向中央部側に比べて拘束力が小さいため、上記開口端部側の方が、上記超硬球21の通過による塑性変形量よりも弾性変形量の割合が大きいためと推測される。
【0009】
ここで、加工後に上記のような中凹形状になると、軸方向中央の内径が大径となり且つ開口端部側が小径となるので、加工後の内径寸法が測定しにくく軸方向の寸法が定め難い。この結果、挿入する軸部材との締代を設定し難い。さらに、開口端部側が小径となるので、貫通孔1aに軸部材が挿入し難くなるという欠点を持つ。
【0010】
これに対して、加工後の内周面形状が上記中凸形状であれば、軸方向中央側の内径が小径となるため内径寸法が測定し易くなると共に、開口端部部分がテーパ状となって軸部材を挿入する際の案内面を構成し当該軸部材が挿入し易くなるという利点を持つ。
本願発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、簡易な手段によって、内径寸法の修正精度を向上すると共に貫通孔の形状を制御可能なバニシ仕上加工方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載のバニシ仕上加工方法は、加工部材に設けた貫通孔に球状体を貫通させ内径寸法を所望の寸法に仕上げるバニシ仕上加工方法において、上記球状体を貫通させる前に、上記貫通孔の少なくとも一方の開口端部側に対し、上記球状体より大径の球状体を、上記開口端部から所定圧入量だけ圧入した後に該開口端部側に抜くことを特徴としている。
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記貫通用球状体の径を、上記貫通穴の内径寸法のバラツキに基づいて決定することを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、下記式で求められる圧入率δを5%以上30%以下とし、且つ、下記式で求められるボール径差率εを0.05%以上とすることを特徴とするものである。
Figure 0003700222
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載した構成に対し、下記式で求められる平均締代率xm を、0.7%以上1.1%以下とすることを特徴とするものである。
Figure 0003700222
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載した構成に対し、加工する加工部材を、その貫通孔の内径寸法の大きい又は小さいいずれか一つの順に並べ、その内径寸法の最大値側又は最小値側からのいずれかから、下記式で求められる締代率xの最大値と最小値との差であるΔxが0.05以下となる上記加工部材ごとに、貫通用球状体の径を定めて使用することを特徴とするものである。
Figure 0003700222
【0012】
本発明においては、目的とする球状体を貫通する前に、貫通孔の開口端部に上記目的とする球状体と同径又は大径の球状体を圧入して、開口端部側を予め拡径し、その後に目的とする球状体を貫通することで、貫通孔の形状を中凸形状に維持したまま寸法の修正が行われる。
このとき、上記目的とする球状体と同径又は大径の球状体の径の選択や圧入量などを調整することで、加工後の貫通孔の形状を加工前と同様な形状としたり、若干,中凸状にするなど形状調整が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
まず装置の構成を説明する。本実施の形態の装置は、図1に示すように、加工部材である円筒状部材1を軸を上下にして設置するためのベース部材2と、上記ベース部材2を回転させる回転アクチュエータ3と、上記円筒状部材1の貫通孔1aを貫通する貫通用球状体4と、上記貫通孔1aの開口端部を拡径するための拡径用球状体5と、上記球状体4,5を貫通孔1a内に圧入するための図外の上側シリンダ装置と、圧入した上記拡径用球状体5を上側に抜くための図外の下側シリンダ装置とを備える。
【0014】
上記ベース部材2は、円筒状部材1を上下から挟持可能な側面視略コ字形状に形成されている。即ち、軸を上下に向けて設置される上記円筒状部材1の下端面に当接する下側ベース2aと、該円筒状部材1の上端面に当接する上側ベース2bと、上下方向に延在して上記下側ベース2aと上側ベース2bとを連結する連結部2cとから構成される。上記下側ベース2a及び上側ベース2bには、それぞれ、設置する円筒状部材1の貫通孔1aよりも大径の開口2d,2eが開設し、その開口2d,2eは、円筒状部材1の貫通孔1aに圧入される球状体4,5が余裕を持って通過可能な大きさとなっている。
【0015】
上記ベース部材2の連結部2cの中央部には、回転アクチュエータ3の駆動軸3aが連結される。その駆動軸3aは軸を水平にして配設され、その駆動軸3aが正逆180°回転することで、上記ベース部材2は反転、即ち、上側ベース2bが下側に下側ベース2aが上側に位置するように旋回する。
上記回転アクチュエータ3は、例えばサーボモータを本体3bとして構成され、その回転軸を上記駆動軸3aとする。勿論、回転アクチュエータ3は、これに限定されるものではなく、上記ベース部材2を反転可能であれば他の周知のアクチュエータであっても構わない。
【0016】
また、上記上側ベース2bの上方には、図外の上側シリンダ装置が配設される。その上側シリンダ装置のピストンロッド6は、軸を上下に向け、且つ、上記ベース部材2に設置された円筒状部材1の貫通孔1aと同心になるように設定されている。そして、当該ピストンロッド6は、伸縮することで上記貫通孔1aに上側から挿通可能となっている。
【0017】
同様に、上記下側ベース2aの下方には、図外の下側シリンダ装置が配設される。その下側シリンダ装置のピストンロッド7も、軸を上下に向け、且つ、上記ベース部材2に設置された円筒状部材1の貫通孔1aと同心になるように設定される。そして、当該ピストンロッド7は、伸縮することで上記貫通孔1aに下側から挿通可能となっている。
【0018】
また、拡径用球状体5は、貫通用球状体4よりも若干大径の球状体である。この拡径用球状体5及び上記貫通用球状体4は、それぞれ超硬合金によって作製されている。
なお、図1中、8は、上記ベース部材2を設置するためのボルスタであって、左右方向に移動可能となっている。
【0019】
次に、上記装置の動作や作用等について説明する。
まず、ベース部材2の上側ベース2bと下側ベース2aとの間に円筒状部材1を取り付ける。このとき、上記上側ベース2bと下側ベース2aとに設けた開口2d,2eと、円筒状部材1の貫通孔1aとをほぼ同心としておく。
ここで、ワークとしての上記円筒状部材1は、前加工である研削加工が施されて所定の内径寸法となっているとする。
【0020】
次に、上記円筒状部材1の上端に拡径用球状体5を載置し、上側シリンダ装置を作動する。これによって、上側シリンダ装置のピストンロッド6を下方に伸ばして上記拡径用球状体5を下方に押し込み、当該拡径用球状体5を、円筒状部材1の貫通孔1aの上端部内に所定圧入量Pだけ圧入する。
次に、上記上側シリンダ装置のピストンロッド6を縮めて元の位置に戻すと共に、下側シリンダ装置を作動する。そして、該下側シリンダ装置のピストンロッド7を下側から上記貫通孔1aに挿入し、上記圧入した拡径用球状体5を上方に押し上げ上側の開口端部側に抜く。
【0021】
次に、上記拡径用球状体5を一旦退避させた後に、回転アクチュエータ3を作動し、その駆動軸3aを180度回転させることで、ベース部材2を反転する。これによって、円筒状部材1のボルスタ8側に位置していた開口端部側が上方を向く。
次いで、円筒状部材1の上端開口部上に再び拡径用球状体5を載置した後、上記と同様に、上側シリンダ装置及び下側シリンダ装置を順次,作動させて、拡径用球状体5を貫通孔1aの上端開口部内に所定圧入量Pだけ圧入した後、その拡径用球状体5を圧入した開口端部側、即ち上方に抜く。
【0022】
これによって、貫通孔1aの両端開口部に対する予備加工が終了し、当該貫通孔1aの両端開口部がそれぞれ拡径する。
次に、上記拡径用球状体5を貫通用球状体4に交換し、該貫通用球状体4を円筒状部材1の上端開口部上に載置する。その後、上側シリンダ装置を作動させ、ピストンロッド6を伸ばして上記貫通用球状体4を上側から押し込み、当該貫通用球状体4を、従来と同様に貫通させることで、仕上加工が完了する。
【0023】
これによって、従来と同様に円筒状部材1の寸法修正が行われると共に、貫通孔1aの両端開口部に上記のような予備加工を施すことで、円筒状部材1の貫通孔1aの形状を調整可能となる。
特に、本実施の形態では、従来のような貫通用球状体4による貫通だけのバニシ仕上加工では軸方向中央部よりも小径となりやすい軸方向端部を、予め拡径するように予備加工を施しているので、加工前の中凸形状を維持したり、より良好な中凸形状に成形することが可能となる。このことは、また、貫通孔1aの軸方向の内径差を従来よりも小さく設定可能となり、仕上寸法を高精度に修正することも可能となる。
【0024】
また、装置構成が簡単なために、作業の熟練も必要とせず、また作業時間も短い。
なお、上記実施の形態では、貫通孔1aの軸方向両端部に対し拡径用球状体5を使用して予備加工を行っているが、一方の軸方向端部だけに上記予備加工を行うようにしてもよい。
【0025】
また、上記実施の形態の装置は、一つの装置によって上記予備加工と貫通用球状体4を貫通される本加工とを行う構成にすることで装置のコンパクト化を図っているが、必ずしも同一装置で上記予備加工と本加工とを行う必要はない。上記予備加工と本加工とを別工程とし、それぞれ別の装置によって行うようにしてもよい。
【0026】
また、上記実施の形態では、加工部材である円筒状部材1の軸を上下に向けて加工を行う装置構成で説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、円筒状部材1の軸を横方向に向けた状態で横方向から球状体4,5を圧入して仕上加工するような装置構成にしてもよい。
また、上記拡径用球状体5及び貫通用球状体4は、例えば窒化珪素セラミック素材から作製してもよいし、セラミックスコーティングを施してもよい。要は、円筒状部材1の貫通孔1aを圧延可能な硬さを持っていればよい。
【0027】
また、上記実施の形態では、加工部材として円筒状部材1を例として説明しているが、これに限定されるものではない。要は、円柱状の貫通孔が設けられ且つその貫通孔に所定の寸法精度が要求される部材であれば、他の形状の加工部材であってもよい。
【0028】
【実施例】
本願発明に基づくバニシ仕上加工を、上記装置を使用し、次のような条件の基に行った。
条件:
上記加工部材:加工前の内径寸法が3.9966mmφの円筒状部材
なお、円筒状部材の諸元は図2に示すものとする。
【0029】
その設定仕上寸法 :4.0000mmφ
拡径用球状体の直径 :4.026mmφ
拡径用球状体の圧入量 :0.8mm
貫通用球状体の直径 :4.024mmφ
上記仕上加工を施すことにより、加工後の円筒状部材1の内径寸法は、3.99905mmφとなり、27.4μmφの締代で2.45μmφの寸法修正が行われた。
【0030】
また、円筒状部材1の加工前と加工後の軸方向の内径形状を測定したところ、図3に示すような形状が得られた。ここで、図3中、(a)は加工前の形状を示し、(b)は加工後の形状を示している。この図3に示す結果から、加工後も加工前の中凸形状が維持されていることが分かる。
このように、本発明に基づくバニシ仕上加工を施すと、簡易に、加工前の中凸形状を維持しつつ寸法修正が行われることが分かる。
【0031】
ここで、上記本願発明に基づくバニシ仕上加工における、拡径用球状体5の貫通用球状体4に対する径差や、該拡径用球状体5の圧入量Pなどの適正な値の設定範囲について説明する。
まず、上記装置を使用し下記の条件で、締代率xと、貫通用球状体4を貫通させた後の内径寸法の内径寸法拡大率yとの関係を求めると、図4に示す関係を得た。
条件:
円筒状部材の諸元:5.2mmφ×4mmφ×4mmh(図2参照)
拡径用球状体の直径 = 貫通用球状体の直径D + 2μm
圧入量P:0.8mm
ここで、
Figure 0003700222
とする。
【0032】
この図4から分かるように、締代率xが増大するほど内径寸法拡大率yが急増していることが分かり、上記図4から、上記締代率xと内径寸法拡大率yとは、次の実験式によって表される関係が成立する。
【0033】
【数1】
Figure 0003700222
【0034】
ここで、下記説明では、上記締代率xの上限を0.8%とし、上記内径寸法拡大率yの上限を0.125%として説明する。
次に、本願発明に基づくバニシ仕上加工を行った後における、貫通孔1aが凸形状を維持可能な条件について説明する。
拡径用球状体5の圧入率δと貫通孔1aの形状変化量(凸量)の突出率Cとの関係を、ボール径差率εを変化させて求めてみたところ、図5に示す結果を得た。
【0035】
ここで、
圧入率δ = P/b
P:拡径用球状体の圧入量
b:円筒状部材の軸方向の長さ
Figure 0003700222
を表している。
【0036】
本願実施例では、貫通孔1aの径寸法を拡張して寸法修正を施した際に、研削加工時(加工前)の凸形状を維持したいので、上記突出率Cが0%以上でなければならない。
上記図5から分かるように、従来のように単に貫通用球状体4を貫通させるだけでは(ε=0)、突出率Cが−12.5%、即ち中凹形状となるのに対し、本願発明に基づくバニシ仕上加工では、圧入率δに合わせて上記ボール径差率εを適宜選択することで、加工後の軸方向の形状を中凸形状にすることが出来ることが分かる。
【0037】
そして、上記図5から、加工後の形状を中凸形状に維持するためには、上記ボール径差率εを0.05%以上にしなければならず、望ましくは0.1%以上に設定することが好ましい。
即ち、上記ボール径差率εを0.1%以上に設定することで、ほぼどの圧入率δを採用しても中凸形状を維持可能となる。即ち、上記ボール径差率εを0.1%以上に設定することで、拡径球状体5の圧入量Pの制御をラフにすることが可能となる。
【0038】
ここで、加工後も中凸形状を維持して寸法測定や軸の挿入などが行い易ければよいので、積極的に突出率Cを大きくするような加工は必要なく、加工後も中凸形状が維持可能であれば製品として問題はない。つまり、下限の突出率Cが圧入率δの全域(0〜30%)に渡って選択できればよい。また、上記圧入率δは最大50%まで選択できるが、ボール径差率εを0.1%以上の範囲で自由に選択すれば圧入率δに関係なく中凸形状を維持可能となる。
【0039】
なお、上記ボール径差率εは、貫通孔1aの開口端部をどの程度だけ予め拡径すればよいかの割合を示しているとも言える。
また、上記図5から分かるように、ボール径差率εに応じて圧入率δを適宜選択することで加工後も中凸形状を維持可能となる。例えば、ボール径差率εを0.05%に設定した場合、圧入率δを25%に設定すればよい。この点から、上記ボール径差率εは、拡径用球状体5をどこまで圧入しなければならないかを決定する値となる。
【0040】
次に、本願発明に基づく内径寸法修正の精度の向上について説明する。
加工前のロット内の内径寸法のバラツキに対し、このバラツキを改善するためには上記締代Xを幾らにすればよいかを説明する。このために、平均締代率x m に対するΔy/Δxの関係を求めたところ、図6に示す結果を得た。
ここで、
Δy:加工後におけるロット内の寸法バラツキ(μm)
Δx:寸法公差(0〜−4μm)
Figure 0003700222
を示している。
【0041】
上記Δy/Δxは、公差又は加工前の寸法のバラツキに対する、加工後の上記バラツキの減少の割合を示すものである。即ち、このΔy/Δxは、小さい程良く、Δy/Δx=0.5とは、加工前の寸法バラツキを加工後には加工前の1/2のバラツキに改善出来ることを示している。例えば、前加工である研削加工による仕上寸法のバラツキが4μmであれば、加工後は2μmのバラツキに改善されることを示す。
【0042】
このΔy/Δxをいくらに設定するかによって、平均締代率xm の適正範囲は異なり、また、上記Δy/Δxは0.7,0.6などと所望の値に設定可能であるが、加工後の寸法バラツキを加工前の略0.5以下に設定すると、上記図6から、上記平均締代率xm として0.7〜1.1%の範囲で選択しなければならないことが分かる。
【0043】
即ち、上記平均締代率xm の設定の仕方によって寸法バラツキの改善の度合いを調整することが可能であり、上記平均締代率xm を0.7〜1.1%、好ましくは0.75〜105となるように設定することで、上記Δy/Δxを0.6若しくは0.5以下とすることが可能となり、加工前のロットバラツキを0.5若しくは0.6の比以下に減少することができる。
【0044】
ここで、上記図6は、次のようにして求められる。
貫通用球状体の径:D(mm)
加工前における内径寸法のロット最大寸法:dMAX (mm)
加工前における内径寸法のロット最小寸法:dMIN (mm)
ロットの最大締代XMAX (μm)=D −dMIN > 0 ・・・(2)
ロットの最小締代XMIN (μm)=D −dMAX > 0 ・・・(3)
とすると、
上記(1)式に基づき、
内径拡張量YMAX 、YMIN は、下記式で表される。
【0045】
【数2】
Figure 0003700222
【0046】
さらに、拡大後の内径寸法は、
dfMAX (mm)=dMAX +YMIN
dfMIN (mm)=dMIN +YMAX
と表せる。
従って、対象とするロット内の加工後の内径寸法バラツキΔyは、次にように求められる。
【0047】
Figure 0003700222
この式で、dMAX −dMIN =Δx(寸法公差)とすると、Δyは、次式で表される。
【0048】
【数3】
Figure 0003700222
【0049】
ここで、上記(2)式及び(3)式より、
MAX −XMIN =dMAX −dMIN =Δx
従って、 XMAX =XMIN +Δxとなる関係を使用している。
そして、Δx=(0−(4))=4μm、内径寸法4mm(呼称寸法)の図2に示す円筒状部材1をワークとした例での実験結果を求めてみると、次に示す表1を得る。
【0050】
【表1】
Figure 0003700222
【0051】
ここで、貫通用球状体4の直径D及び内径寸法db (dMAX ,dMIN )は、目標とする円筒状部材1の内径寸法(呼称寸法)である4.000mmφに対する偏差分で示している。後述する表中であっても同様である。
また、表1中のΔy及びΔy/Δxは、表1の上段の諸元に対し上記(6)式を用いて求めたものである。
【0052】
そして、上記図6から、平均締代率xm を0.75〜1.05%の範囲に設定すれば、|Δy/Δx|≦0.5、即ちΔx=4μmでΔy≦2μmとすることができることが分かる。
このように、平均締代率xm を0.7〜1.1の範囲に設定することで、上記Δy/Δxを0.6以下とすることが可能となり、好ましくは、平均締代率を0.75〜1.05の範囲に設定することで、Δy/Δxを0.5以下とすることが可能となる。即ち、寸法修正の精度を従来よりも大幅に向上させることが可能となる。
【0053】
次に、上記寸法修正の精度をさらに向上するために、ロット内の寸法バラツキに対し、ロット内の締代率xの差分Δxが0.05以下となるように貫通用球状体4の径を複数選択して求めてみると、下記表2に示す結果を得た。
なお、上記ロット内の締代率xの差分Δxとは、ロット内の最大締代率と最小締代率との差分である。
【0054】
【表2】
Figure 0003700222
【0055】
ここで、
内径寸法拡張量Yは、上記(4)式に基づき求めた値
Figure 0003700222
をそれぞれ表している。
【0056】
この表2に表されるように、上記条件によって貫通用球状体4の径を複数選択して寸法修正を行うと、加工前の加工部材のバラツキ寸法が3.5μmであるのに対し、加工後のバラツキ寸法は、計算値で0.55μm、実測値で0.8μmとなり、上記|Δy/Δx|=0.16となって0.5をはるかに下回る、即ち、貫通用球状体4の直径を適宜,選択することで、更に寸法修正の精度が向上することが分かる。
【0057】
ここで、上記表2において、NO. 1〜NO. 3は、同一の貫通用球状体4(直径の偏差分が+24μm)を使用し、上記締代率xの差分Δxは0.023であり、NO. 4〜NO. 5は、同一の貫通用球状体4(直径の偏差分が+22μm)を使用し、上記締代率xの差分Δxは0.005である。
上記表2の比較例として、貫通用球状体4の直径の偏差分が+24μmの同一の球状体だけを使用した場合を求めて見ると、次に表される表3のような結果が得られる。
【0058】
【表3】
Figure 0003700222
【0059】
この表3では、上記締代率xの差分Δxは0.088と0.05よりも大きい値となり。この場合には、加工前の加工部材のバラツキ寸法が3.5μmであるのに対し、加工後のバラツキ寸法は2.06μmとなり、上記|Δy/Δx|=0.59となる。即ち、締代率xの差分Δxが0.05よりも大きいと、上記|Δy/Δx|>0.5となることが分かる。
【0060】
同様にして、別のサンプルで、ロット内の寸法バラツキに対し、ロット内の締代率xの差分Δxが0.05以下となるように貫通用球状体4の径を複数選択して求めてみると、次の表4に示す結果を得た。
【0061】
【表4】
Figure 0003700222
【0062】
加工前の加工部材のバラツキ寸法が3.55μmであるのに対し、加工後のバラツキ寸法は、計算値で1.45μm、実測値で1.2μmとなり、上記|Δy/Δx|=0.34となって0.5を下回る。この場合も、貫通用球状体4の径を適宜,選択することで、より寸法修正の精度が向上していることが分かる。
ここで、上記表4において、NO. 1〜NO. 4は、同一の貫通用球状体4(直径の偏差分が+24μm)を使用し、上記締代率xの差分Δxは0.04であり、NO. 4〜NO. 5は、同一の貫通用球状体4(直径の偏差分が+20μm)を使用し、上記締代率xの差分Δxは0.04である。
【0063】
上記表4の比較例として、貫通用球状体4の径の偏差分が+24μmの同一の球状体だけを使用した場合を求めて見ると、下記表5のような結果が得られる。
【0064】
【表5】
Figure 0003700222
【0065】
この表5では、上記締代率xの差分Δxは0.11と0.05よりも大きい値となる。この場合には、加工前の加工部材のバラツキ寸法が3.55μmであるのに対し、加工後のバラツキ寸法は2.08μmとなり、上記|Δy/Δx|は0.59となる。
以上のように、対象とするロット内の締代率xの差分Δxが大きくなると、上記加工後のバラツキの改善度合いを示す|Δy/Δx|が大きくなることが分かり、当該ロットの締代率xの差分Δxを0.05%以下に抑えるように貫通用球状体4の径を選択することで、|Δy/Δx|を0.5以下に抑えることが可能となる。
【0066】
即ち、対象とするロット内の締代率xの差分Δxに応じて貫通用球状体4の径を適宜選択することで、同一径の貫通用球状体4を使用する場合に比べて加工後のバラツキが抑えられ寸法修正の精度が向上する。
上述のことから、加工する円筒状部材1を、その内径寸法の大きい又は小さいいずれか一つの順に並べ、その内径寸法の最大値又は最小値側からのいずれかから、前記締代率xの最大値と最小値との差(Δx)が0.05以下となる円筒状部材1毎に貫通する貫通用球状体4の径を定めて用いることで、バラツキの度合いを加工前の半分以下に低減することが可能となる。
【0067】
このとき、上述のように、平均締代率xm が0.75〜1.05の範囲となる様に締代Xを選択すると、両者の効果によって更に寸法修正後のバラツキの低減が可能となり、修正後の寸法精度が向上する。
【0068】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明のバニシ仕上加工方法を使用すると、簡単な方法によって、加工後の貫通孔の形状を加工前の中凸形状に維持しつつ内径寸法を所望の寸法に仕上げることが可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るバニシ仕上加工方法に使用する装置を示す概念図である。
【図2】加工部材である円筒状部材の諸元を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例における円筒状部材の内周面形状を示す図であり、(a)は加工前の形状を、(b)は加工後の形状をそれぞれ示している。
【図4】本発明の実施例における締代率と内径寸法拡大率との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施例におけるボール径差率を変化させた場合の圧入量と突出量との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例における平均締代率とバラツキの改善度合との関係を示す図である。
【図7】従来のバニシ仕上加工方法に使用する装置を示す概念図である。
【図8】従来のバニシ仕上加工方法における円筒状部材の内周面形状を示す図であり、(a)は加工前の形状を、(b)は加工後の形状をそれぞれ示している。
【符号の説明】
1 円筒状部材(加工部材)
1a 貫通孔
2 ベース部材
3 回転アクチュエータ
4 貫通用球状体
5 拡径用球状体
6 上側シリンダ装置のピストンロッド
7 下側シリンダ装置のピストンロッド
x 締代率
m 平均締代率
y 内径寸法拡大率
P 圧入量
δ 圧入率
C 突出率
ε ボール径差

Claims (5)

  1. 加工部材に設けた貫通孔に貫通用球状体を貫通させ内径寸法を所望の寸法に仕上げるバニシ仕上加工方法において、上記球状体を貫通させる前に、上記貫通孔の少なくとも一方の開口端部側に対し、上記貫通用球状体よりも大径の拡径用球状体を、上記開口端部から所定圧入量だけ圧入した後に該開口端部側に抜くことを特徴とするバニシ仕上加工方法。
  2. 上記貫通用球状体の径を、上記貫通穴の内径寸法のバラツキに基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載したバニシ仕上加工方法。
  3. 下記式で求められる圧入率δを5%以上30%以下とし、且つ、下記式で求められるボール径差率εを0.05%以上とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したバニシ仕上加工方法。
    Figure 0003700222
  4. 下記式で求められる平均締代率x m を、0.7%以上1.1%以下とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載したバニシ仕上加工方法。
    Figure 0003700222
  5. 加工する加工部材を、その貫通孔の内径寸法の大きい又は小さいいずれか一つの順に並べ、その内径寸法の最大値側又は最小値側からのいずれかから、下記式で求められる締代率xの最大値と最小値との差であるΔxが0.05以下となる上記加工部材ごとに、貫通用球状体の径を定めて使用すること を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載したバニシ加工方法。
    Figure 0003700222
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