JP3700109B2 - コンクリート構造物の爆裂制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物が火災を受けた際に、コンクリートが剥離する現象(爆裂)の発生を制御するための、コンクリート構造物の爆裂制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、通常の普通コンクリートに比べて圧縮強度を高めた高強度コンクリートと呼ばれるコンクリート材の利用が盛んとなっている。このような高強度コンクリートは、その設計基準強度の大きさから様々な構造物への活用を期待されているものの、火災時においては、内部に含まれている水蒸気の膨張圧が高まり、また非定常熱応力が生じることにより、表面からウロコ状に剥離する現象(爆裂)を起こしやすい傾向にあると言われている。
【0003】
したがって、高強度コンクリートを利用した構造物においては、火災時に、各部材に爆裂が生じ、これが進行することにより構造物が破壊に至ることが懸念され、このため、種々の爆裂防止策が検討されている。
【0004】
上述のコンクリートの爆裂現象は、コンクリートの強度が高いほど発生しやすい傾向にあるといわれており、発生要因の一つとして、コンクリート内部の水蒸気圧の上昇が考えられている。
【0005】
そこで、火災時に溶融する合成繊維をコンクリートに対してあらかじめ混入しておき、火災時には、合成繊維の溶融等により生じた空隙を通じて、コンクリート内部の水蒸気を外部へ放出させ、これにより爆裂現象の発生を防止するという手法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような合成繊維をコンクリートに混入したことによる爆裂防止効果は、コンクリートに混入する合成繊維の量が多くするほど大きくなることが期待されるが、その反面、コンクリートに混入した合成繊維の混入量が多いほど、コンクリートとしての他の性質、例えば、ワーカビリティーや硬化後の強度特性が大きく低下するとともに、施工コストは上昇することとなる。したがって、構造物の強度に影響を与えない範囲内での爆裂現象を許容しつつ、爆裂によるコンクリートの剥離深さを許容範囲内に制御する技術が求められている。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明においては、構造物の各部材において火災時に発生する爆裂の程度を正確に制御して、コンクリート構造物の火災安全性に対する信頼性を向上させるようなコンクリート構造物の爆裂制御方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載のコンクリート構造物の爆裂制御方法は、コンクリート構造物が火災を受けた場合を想定して、火災時および火災後に該コンクリート構造物に対して要求される供用性能をあらかじめ設定しておき、該供用性能に基づいて、前記コンクリート構造物を構成する各部材に許容される断面欠損量を算定し、前記各部材において発生が想定されるコンクリートの爆裂による爆裂深さが前記断面欠損量以下となるように、前記各部材を構成するコンクリートの空気量および/または前記コンクリートに混入する合成繊維および合成高分子固体の混入率を、予め求めた爆裂深さとコンクリートの空気量との関係および/または爆裂深さと合成繊維および合成高分子固体の混入率との関係から調整するコンクリート構造物の爆裂制御方法であって、
前記コンクリート構造物の施工性からコンクリートの空気量と合成繊維および合成高分子固体の混入率を決定する場合には、合成繊維の混入率を施工性から決まる最大許容量とし、合成繊維の混入率を最大許容量としただけでは、所望の爆裂深さが得られないときは、不足分をコンクリートの空気量と合成高分子固体の混入率で調整することとし、
前記コンクリート構造物の強度特性からコンクリートの空気量と合成繊維および合成高分子固体の混入率を決定する場合には、合成繊維の混入率と合成高分子固体の混入率のみを調整することとし、合成繊維の混入率を施工性から決まる最大許容量とし、合成高分子固体の混入率で不足分を調整することを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る発明は、上述の爆裂防止メカニズムが、コンクリート中に混入された合成繊維が火災時に溶融することによって形成される空隙を通じて、コンクリート中の水蒸気が移動することにより、コンクリート中の水蒸気圧が緩和されることによるものであることに着目したものであり、合成繊維を使用した場合に限らず、広く、コンクリート中に火災時に形成される空隙量を調整することにより、爆裂制御を行うこととしている。
【0011】
そして、請求項1に係る発明においては、具体的に、上述の空隙量を調整するにあたって、空隙が、合成繊維等の爆裂防止材料の溶融により形成されるだけでなく、コンクリート練り混ぜ時にコンクリート中に入る空気泡(エントレインドエア、エントラップトエア)によっても形成されることを考慮し、コンクリートに混入する合成繊維等の爆裂防止用材料の混入率に加えて、コンクリート中の空気量を調整することにより、爆裂の発生を制御することとしたものである。
【0012】
さらに、請求項2記載のコンクリート構造物の爆裂制御方法は、請求項1記載のコンクリート構造物の爆裂防止方法であって、前記合成高分子固体として、ビーズ状のものを用いることを特徴としている。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、コンクリート中に混入された合成高分子固体が、火災加熱時に溶融してコンクリート中において空隙を形成するように作用することから、合成繊維をコンクリートに混入した場合と同様の爆裂低減効果を得ることが可能となる。また、この場合、合成高分子固体がビーズ状に形成されるために、コンクリートに対する混入を容易に行うことができ、さらに良好な施工性を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明によるコンクリート構造物の爆裂制御方法の一例を示すフローチャートである。
本実施の形態のコンクリート構造物の爆裂制御方法は、図1に示すように、ステップS1からS3までの三つの手順から構成されている。
【0015】
すなわち、ステップS1においては、コンクリート構造物を構成する各部材の火災時および火災後における供用性能が設定される。この場合の火災時および火災後の供用性能としては、当該部材が柱、梁、耐力壁などの耐力部材である場合には、その部材の強度が用いられ、また、当該部材が、床、間仕切壁、外壁などの非耐力部材である場合には、その部材の防火性能が用いられる。
【0016】
ステップS2においては、コンクリート構造物を構成する各部材に許容される断面欠損量が算定される。具体的には、上記の火災時および火災後における供用性能を実現するような、爆裂による各部材の断面欠損の許容量が算出される。
【0017】
さらに、ステップS3においては、火災時に各部材に発生が想定される爆裂による剥離深さ寸法の調整が行われる。具体的には、爆裂による断面欠損を許容量以下とするようなコンクリートの水セメント比(水結合材比)、コンクリート中の空気量、および、コンクリート中の爆裂防止用材料の混入率が決定される。
【0018】
この場合、爆裂制御対象のコンクリート部材が耐力部材である場合には、水セメント比の調整は、構造設計において決定された強度の低下を招くため、コンクリート中の空気量、および、コンクリート中の爆裂防止用材料の混入率のみを調整することにより、爆裂による断面欠損を許容量以下とするようにする。
【0019】
また、爆裂制御対象のコンクリート部材が耐力部材でない場合には、水セメント比を調整することにより、予想される爆裂深さを低減するようにし、水セメント比の調整のみによっては爆裂による断面欠損を許容範囲内に抑制することができない場合に、コンクリート中の空気量、および、コンクリート中の爆裂防止材料の混入率を調整するようにする。
【0020】
なお、水セメント比の調整による爆裂深さの制御については、例えば、本願発明の発明者らにより、すでに提案がなされた技術(特願平9−152669号参照)が好適に用いられる。
【0021】
一方、コンクリート中の空気量、およびコンクリート中の爆裂防止用材料の混入率が爆裂制御に及ぼす影響は、例えば、以下の図2および図3のようになる。
図2および3は、水結合材比25%および30%の高強度コンクリートに爆裂防止用材料である合成繊維(ポリプロピレン、径48μm)を、0.0、0.05、0.10、および0.30%(体積%:コンクリート1m3あたりの繊維の体積)の割合で混入して加熱実験を実施し、フレッシュ時に測定されるコンクリートの空気量が爆裂制御におよぼす影響について検討した際の結果である。この加熱実験は、10×10×40cmの試験体の1面をISO834の標準加熱曲線に従って1時間加熱し、加熱実験後の試験体の爆裂深さを測定するものであり、図2は、水結合材比25%の場合、図3は、水結合材比30%の場合である。また、各図の(a)は、フレッシュ時に測定されたコンクリート中の空気量を横軸とし、(b)では、その空気量に繊維体積分を加えた値を横軸としている。なお、図中において、Pは、コンクリートの水結合材比を、Sは、爆裂防止用材料のコンクリートに対する混入率(体積%)を表している(以下同様)。
【0022】
これらの結果から分かるように、フレッシュ時に測定されたコンクリート中の空気量が大きいほど、また、繊維の混入率が大きいほど爆裂深さが浅くなっている。さらに、図2および図3に示した「空気量」または「空気量+繊維混入率」の範囲で、強度低下は、図4および図5に示すように、空気量が多い場合でも最大で10%であった。また、ワーカビリティーの一つの指標であるスランプフローは、図6および図7に示すように、空気量の違いによる差異はほとんどない。
【0023】
さらに、水結合材比25%の事例(図2)では、以下のことがわかる。
a)空気量が約2%の場合、繊維混入率を0.05%から0.1%にすることによって、爆裂深さを約10mm低減できている。
b)繊維混入率が0.05%の場合、空気量を2%から3.6%にすることによって、爆裂深さを約5mm低減できている。
【0024】
また、水結合材比30%の事例(図3)では、次のことがわかる。
c)空気量が約2%の場合、繊維混入率を0%から0.05%にすることによって、爆裂深さを約10mm低減できている。
d)繊維混入率が0.0%の場合、空気量を2.2%から3.8%にすることによって、爆裂深さを約8mm低減できている。
【0025】
ここで、「爆裂低減効率」を以下のように定義し、a)からd)について、空気量と繊維混入率それぞれの爆裂低減効率を算定すると次のようになる。
a)(爆裂低減効率)=10mm/(0.10-0.05)=200mm/%
b)(爆裂低減効率)= 5mm/(3.6-2.0)=3.13mm/%
c)(爆裂低減効率)=10mm/(0.05-0.00)=200mm/%
d)(爆裂低減効率)= 8mm/(3.8-2.2)=5.0mm/%
【0026】
爆裂低減効率の算定結果から、空気量単独、合成繊維混入単独、または、空気量と合成繊維混入の複合のいずれかによって爆裂を低減(制御)できることが明らかである。したがって、これを上述のステップS3において適用することにより、爆裂深さの制御を、コンクリートに対する合成繊維の混入率、および、コンクリート中の空気量のいずれか一方または双方を調整して行うことが可能となる。
【0027】
また、この場合、爆裂低減効率は、空気量の調整に比べて、合成繊維の混入率を調整する方が大きくなっているが、その理由としては、加熱されるコンクリート中に発生する水蒸気圧を緩和するメカニズムに違いがあること、および、細孔径の違いなどが影響していると考えられる。細孔径およびメカニズムについては、以下に考察する。
【0028】
[細孔径について]
合成繊維が消失することによって生じる細孔径は繊維径に依存し、上述の例では、48μmである。一方、空気量と称しているものは、コンクリート練り混ぜ時にコンクリート中に入る空気泡(エントレインドエア、エントラップトエア)のことである。
【0029】
硬化コンクリートに関して水銀圧入法による細孔分析の結果、空気量が多く爆裂が軽微もしくは生じていないコンクリートでは、空気量が少なく爆裂が大きいコンクリートに比べて、0.1μmから10μmの径を持つ空隙が多く確認されている(図8,9参照)。また、一般に、エントラップトエアーの細孔径は1000〜4000μm(1〜4mm)、エントレインドエアーの細孔径は、60〜1000μm(0.06〜1mm)であり、セメントの水和反応による硬化過程で生じるセメントペースト中の毛細管空隙は低水セメント比の場合で10〜50μm(0.01〜0.05mm)、高水セメント比の場合で3〜5μmであるとされている。フレッシュ時の空気量は化学混和剤(空気連行剤)によって調整していることから、空気量を多くしたコンクリートでは、フレッシュ時のエントレインドエアー量が増したことにより、硬化後の毛細管空隙量の増加をもたらしたものと考えられる。
【0030】
[メカニズムについて]
(毛細管空隙)
毛細管空隙が多いほど透水性または透気性が高くなることから、加熱されたコンクリート中に発生する水蒸気が移動しやすくなり、水蒸気圧の上昇が緩和される。
【0031】
(エントレインドエアーの気泡)
硬化コンクリートの凍害(凍結融解作用)は、温度変化による硬化コンクリート中の水の体積変化に起因する圧力がコンクリートを破壊する現象である。この凍害はエントレインドエアーを3〜6%連行することにより防止でき、これは、エントレインドエアーの気泡が水で満たされることなく、凍結時の移動水分の逃げ道となるためであるといわれている。エントレインドエアーの気泡は、圧力緩和という作用からすれば、加熱されたコンクリート中に発生する水蒸気圧についても同様な効果を得ることができるものであると考えられる。
【0032】
(合成繊維の消失により形成される管状空隙)
毛細管空隙と同様に水蒸気を移動しやすくする作用がある。ハーゲン−ポアズイユの法則によれば、軸方向に圧力勾配のある円管内の流体の移動量は、半径の4乗に比例し、管の長さに反比例する。このことから、毛細管空隙よりも径が大きくかつ毛細管空隙よりも直線的に形成される管状空隙を通しての水蒸気の移動量は毛細管空隙よりも多いといえる。
【0033】
以上のように、水和反応による硬化過程で生成される毛細管空隙、化学混和剤(空気連行剤)により連行されるエントレインドエアーの気泡、および合成繊維の消失により形成される管状空隙は、それぞれに爆裂を低減(制御)する効果があるといえる。
【0034】
このように、爆裂深さ低減(制御)のおおよそのメカニズムは、コンクリート中の水蒸気の圧力緩和、移動促進といったことであり、それらの効果をもたらす毛細管空隙、エントレインドエアーの気泡は、加熱を受けたときに比較的低温で体積減少・溶融・分解・揮発し管状空隙を形成する合成繊維と同様の効果を得られるものであることは容易に想像され、また、高温時に体積減少・溶融・分解・揮発し適切な細孔径をもつ細孔空隙を形成する球形またはそれ以外の形状の合成高分子の固体(例えば、ポリプロピレンのビーズ状のもの)をコンクリートに混入しても効果が得られると考えられる。
【0035】
そこで、上述のステップS3における爆裂深さの制御手順に適用しうる方法としては、以下の1)〜7)のようなものが考えられる。
ここで、
A:毛細管空隙、エントレインドエアーの気泡(硬化コンクリート中に(加熱を受けなくても)常に存在する。)、
B:合成繊維(高温時に管状空隙を形成)、
C:合成高分子固体(高温時に細孔空隙を形成)、
と定義すると、
1) 上記Aのみで爆裂を制御する方法。
2) 上記Bのみで爆裂を制御する方法。
3) 上記Cのみで爆裂を制御する方法。
4) 上記AとBとで爆裂を制御する方法。
5) 上記AとCとで爆裂を制御する方法。
6) 上記CとBとで爆裂を制御する方法。
7) 上記A、C、およびBで爆裂を制御する方法。
なお、ここでいう細孔空隙とは、毛細管空隙およびエントレインドエアーの気泡程度の細孔径を持つ空隙をいう。
【0036】
以上より、上述のステップS3では、以下のような手段により、爆裂深さを調整するようにする。
まず、コンクリート中の空気量VA、および、合成繊維の混入率VSFまたは合成高分子固体の混入率VSBと、予想される爆裂深さXとが、上述の実験結果等(上記a)〜d)参照)から次式のような関係を有すると推定できるので、これに基づいて、爆裂深さXを許容範囲内に抑制するように、空気量VAと混入率VSF,VSBとを調整するようにする。
【0037】
上記AとBとで爆裂の制御を行う場合の一例を、以下に示す。例えば、水セメント比25%の場合には、X0=24.7mmとなり、
X = 24.7mm−3.13×VA−200×VSF
となる。また、水セメント比30%の場合には、X0=33.1mmとなり、
X = 33.1mm−5.00×VA−200×VSF
となる。
【0038】
また、この場合、空気量VAと混入率VSF,VSBとをどのような調整量とするかについては、以下のように決定を行う。
・爆裂制御対象のコンクリート構造物の施工性から上記決定を行う場合
この場合には、まず、VSFを施工性から決まる最大許容量とし、VSFを最大許容量としただけでは、所望の爆裂深さが得られないときには、不足分をVAとVSBで調整するようにする。ただし、この際、VSBを優先させた方が強度的には有利となる。
・爆裂制御対象のコンクリート構造物の強度特性から上記決定を行う場合
この場合には、VSFとVSBのみを調整する。ここでも、VSFを施工性から決まる最大許容量とし、VSBで不足分を調整するようにする。
【0039】
さらに、細孔空隙の量を調整するには、具体的には、コンクリート用AE剤(空気連行剤)を用いるか、または、合成高分子固体を用いることにより調整を行うようにする。
【0040】
なお、上述の1)〜7)の方法においては、以下のようなコンクリート、合成繊維、または合成高分子体を好適に用いることができる。
○ 1)〜7)の方法に適用するコンクリート
・コンクリートの水セメント比または水結合材比:35%以下
○ 2),4),6)および7)の方法に適用する合成繊維
・合成繊維の種類:TG(熱重量測定)において500℃以下の温度で、80%以上の重量減少を示し、かつ、DTA(示唆熱分析)で急激な発熱反応を示さず安定した発熱性状を示す合成高分子でできた繊維。
・合成繊維の寸法:長さ10〜50mm、径10〜500μm
○ 3),5),6)および7)の方法に適用する合成高分子固体
・合成高分子固体の種類:TG(熱重量測定)において500℃以下の温度で、80%以上の重量減少を示し、かつ、DTA(示唆熱分析)で急激な発熱反応を示さず安定した発熱性状を示す合成高分子でできた固体。
・合成高分子固体の寸法:径0.01〜1000μm
(0.01〜5μmは、毛細管空隙の径寸法に相当し、60〜1000μmは、エントレインドエアーの径寸法に相当する)
○ 1)〜7)の方法において形成されるコンクリート中の空隙量(=空気量+高温時において体積減少・溶融・分解・揮発する合成高分子材料の混入率)
・2%〜10%
【0041】
以上説明したように、本実施の形態の爆裂制御方法においては、コンクリート構造物が火災を受けた場合を想定して、火災時および火災後にコンクリート構造物に対して要求される供用性能をあらかじめ設定しておき、この供用性能に基づいて、コンクリート構造物を構成する各部材に許容される断面欠損量を算定し、断面欠損量に基づいて前記各部材において発生が想定されるコンクリートの爆裂による剥離深さ寸法を調整することとなっており、さらに、この調整に際して、コンクリート中に火災時に形成される空隙量を調整するようにしたので、実際のコンクリート中の水蒸気圧の緩和メカニズムに即した爆裂制御を行うことができ、より正確な爆裂制御を可能とすることができる。これにより、コンクリート製構造物または部分ならびにコンクリート製品の火災安全性に対する信頼性を向上できるとともに、経済的な火災安全設計を可能とすることができる。
【0042】
また、上述の爆裂制御方法においては、空隙量の調整にあたって、コンクリートの空気量、および、コンクリートに混入する爆裂防止用材料の混入率のうちのいずれか一方または双方を調整するようにしたので、正確な空隙量の調整が可能となる。
【0043】
さらに、上述の爆裂制御方法においては、爆裂防止用材料としてビーズ状の合成高分子固体を使用することとしているため、この合成高分子固体の径寸法を、コンクリート中に形成される細孔空隙の径寸法と同様のものとすることにより、細孔空隙と同様の水蒸気圧緩和効果を得ることができ、より正確な空隙量の調整、特に微調整が可能となる。さらに、この場合、合成高分子固体をビーズ状にしたため、コンクリートへの混練が容易となり、コンクリート構造物の施工性を確保することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態の爆裂制御方法と、すでに本願発明の発明者らが提案している技術(特願平10−111094号参照)とを組み合わせて考えれば、コンクリート構造物の爆裂は、「コンクリートの水結合材比」、「コンクリートの空気量」、「合成繊維の種類」、「合成繊維の寸法」、および「合成繊維の混入量」によって制御できることとなる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明においては、コンクリート構造物が火災を受けた場合を想定して、火災時および火災後にコンクリート構造物に対して要求される供用性能をあらかじめ設定しておき、この供用性能に基づいて、コンクリート構造物を構成する各部材に許容される断面欠損量を算定し、断面欠損量に基づいて前記各部材において発生が想定されるコンクリートの爆裂による爆裂深さを調整することとなっており、さらに、この調整に際して、コンクリート中に火災時に形成される空隙量を調整するようにしたので、実際のコンクリート中の水蒸気圧の緩和メカニズムに即した爆裂制御を行うことができ、より正確な爆裂制御を可能とすることができる。これにより、コンクリート製構造物または部分ならびにコンクリート製品の火災安全性に対する信頼性を向上できるとともに、経済的な火災安全設計を可能とすることができる。
【0046】
また、請求項1に係る発明においては、爆裂深さの調整にあたって、コンクリートの空気量、および、コンクリートに混入する爆裂防止用材料の混入率のうちのいずれか一方または双方を調整するようにしたので、正確な空隙量の調整が可能となる。
【0047】
さらに、請求項2に係る発明においては、爆裂防止用材料としてビーズ状の合成高分子固体を使用することとしているため、この合成高分子固体の径寸法を、コンクリート中に形成される細孔空隙の径寸法と同様のものとすることにより、細孔空隙と同様の水蒸気圧緩和効果を得ることができ、より正確な空隙量の調整、特に微調整が可能となる。また、この場合、合成高分子固体をビーズ状にしたため、コンクリートへの混練が容易となり、コンクリート構造物の施工性を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態であるコンクリート構造物の爆裂制御方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】 水結合材比25%のコンクリートに合成繊維(ポリプロピレン、径48μm)を、0.0、0.05、0.10、および0.30%(体積%)の割合で混入して加熱実験を実施した際の結果を示す図であって、(a)は、フレッシュ時に測定されたコンクリート中の空気量(横軸)と爆裂深さの最大値(縦軸)との関係を示すグラフ、(b)は、(a)で示した空気量に繊維体積分を加えた値(横軸)と爆裂深さ(縦軸)との関係を示すグラフである。
【図3】 水結合材比30%のコンクリートに合成繊維(ポリプロピレン、径48μm)を、0.0、0.05、0.10、および0.30%(体積%)の割合で混入して加熱実験を実施した際の結果を示す図であって、(a)は、フレッシュ時に測定されたコンクリート中の空気量(横軸)と爆裂深さの最大値(縦軸)との関係を示すグラフ、(b)は、(a)で示した空気量に繊維体積分を加えた値(横軸)と爆裂深さ(縦軸)との関係を示すグラフである。
【図4】 水結合材比25%のコンクリートに合成繊維(ポリプロピレン、径48μm)を、0.0、0.10、および0.30%(体積%)の割合で混入した際におけるコンクリート中の空気量(横軸)とコンクリートの圧縮強度(縦軸)との関係を示すグラフである。
【図5】 水結合材比30%のコンクリートに合成繊維(ポリプロピレン、径48μm)を、0.0、0.05、0.10、および0.30%(体積%)の割合で混入した際におけるコンクリート中の空気量(横軸)とコンクリートの圧縮強度(縦軸)との関係を示すグラフである。
【図6】 水結合材比25%のコンクリートに合成繊維(ポリプロピレン、径48μm)を、0.0、0.10、および0.30%(体積%)の割合で混入した際におけるコンクリート中の空気量(横軸)とスランプフロー(縦軸)との関係を示すグラフである。
【図7】 水結合材比30%のコンクリートに合成繊維(ポリプロピレン、径48μm)を、0.0、0.05、0.10、および0.30%(体積%)の割合で混入した際におけるコンクリート中の空気量(横軸)とスランプフロー(縦軸)との関係を示すグラフである。
【図8】 水結合材比25%、合成繊維の混入率0.05%のコンクリート中に混入している空気の細孔径分布を示す図であって、(a)は、空気量が小の場合に細孔容積(横軸)と細孔径(縦軸)との関係を示すグラフ、(b)は、同、空気量が大の場合のグラフである。
【図9】 水結合材比30%、合成繊維の混入率0.0%のコンクリート中に混入している空気の細孔径分布を示す図であって、(a)は、空気量が小の場合に細孔容積(横軸)と細孔径(縦軸)との関係を示すグラフ、(b)は、同、空気量が大の場合のグラフである。
Claims (2)
- コンクリート構造物が火災を受けた場合を想定して、火災時および火災後に該コンクリート構造物に対して要求される供用性能をあらかじめ設定しておき、該供用性能に基づいて、前記コンクリート構造物を構成する各部材に許容される断面欠損量を算定し、前記各部材において発生が想定されるコンクリートの爆裂による爆裂深さが前記断面欠損量以下となるように、前記各部材を構成するコンクリートの空気量および/または前記コンクリートに混入する合成繊維および合成高分子固体の混入率を、予め求めた爆裂深さとコンクリートの空気量との関係および/または爆裂深さと合成繊維および合成高分子固体の混入率との関係から調整するコンクリート構造物の爆裂制御方法であって、
前記コンクリート構造物の施工性からコンクリートの空気量と合成繊維および合成高分子固体の混入率を決定する場合には、合成繊維の混入率を施工性から決まる最大許容量とし、合成繊維の混入率を最大許容量としただけでは、所望の爆裂深さが得られないときは、不足分をコンクリートの空気量と合成高分子固体の混入率で調整することとし、
前記コンクリート構造物の強度特性からコンクリートの空気量と合成繊維および合成高分子固体の混入率を決定する場合には、合成繊維の混入率と合成高分子固体の混入率のみを調整することとし、合成繊維の混入率を施工性から決まる最大許容量とし、合成高分子固体の混入率で不足分を調整することを特徴とするコンクリート構造物の爆裂制御方法。 - 請求項1記載のコンクリート構造物の爆裂防止方法であって、
前記合成高分子固体として、ビーズ状のものを用いることを特徴とするコンクリート構造物の爆裂防止方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP36169898A JP3700109B2 (ja) | 1998-12-18 | 1998-12-18 | コンクリート構造物の爆裂制御方法 |
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