JP3699681B2 - 優先クラスの割り当て変更を伴う呼受付制御方法およびノード装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明はパケット転送型のマルチメディア通信網における呼の受付制御に関連し、特に接続済みの呼および新たに接続される呼すべての品質保証を可能とする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
IP網に代表されるパケット転送型の通信網においては、それぞれの呼が利用できる通信の伝送帯域を保証しない、いわゆるベストエフォート型のサービスが主流となってきた。ベストエフォート型のサービスでは、伝送帯域を全ての呼が共有するため、同時に接続している呼の数が少なければ1呼あたりの利用可能な帯域は大きくなるが、逆に同時に接続している呼の数が多ければ、1呼あたりの利用可能な帯域は小さくなるため、通信の品質という意味では安定しているとはいえないが、電話網に代表されるような、それぞれの呼に帯域を固定的に割り当てる回線交換型の通信網に比べて伝送帯域の有効利用が図れるため、結果として通信料金を引き下げることができるというメリットを持っていた。
【0003】
しかしながら、インターネット通信の隆盛に伴い、パケット転送型の通信網で扱う呼も、従来の単純なデー夕転送のようなリアルタイム性を要求しないものから、音声や映像を含むリアルタイム型アプリケーションのようなリアルタイム性を要求するものや、オンラインショッピングのためのクレジットカード番号に代表されるようなセキュリティを要求するものなど、それぞれが個別に満たすべき品質要求が相違するものが増加してきている。
【0004】
このような状況に対応するため、近年のパケット転送型の通信網では、それぞれの呼に対して要求品質に応じた優先クラスを割り当て、網内の各ノードにおいて、優先クラスに応じた制御を行うことで品質を差別化する方式が採用されてきている。
【0005】
図1に、優先クラスを割り当てられた呼の転送パケットと、ノードでの優先クラスに応じた制御を図解する。網内に設置されるノード装置100には、バッファ装置121、122、・・・がある。優先クラス1を割り当てられた呼の転送パケット201は、優先度1に対応したバッファ装置121へ収容され、優先クラス2を割り当てられた呼のパケット202、203は、優先度2に対応したバッファ装置122へ収容されるという具合に、それぞれのパケットは割り当てられた優先クラスに従って対応する優先度のバッファ装置に収容される。パケット読み出し装置111は、優先度に応じて各バッファからパケットを読み出し、物理回線301へパケットを転送する。パケット読み出し装置111がパケットを読み出す順番は、例えば優先クラスの高いパケットを必ず優先クラスの低いパケットより先にすべて読み出したり、あるいは優先クラスの低いパケット1つに対して優先クラスの高いパケットを数個読み出す等して、優先クラスごとに品質が変化するようになっている。ノード装置100内で割り当てられる優先度の数は限られており、同時に接続しうる呼の数の方が一般的には多いため、各優先クラスに対応したバッファ装置で実現される品質は、該当する優先度が割り当てられた呼の中で最も厳しい品質要求値を満たす必要がある。
【0006】
以上に述べたような優先制御方式を用いた通信網では、呼の種類に応じて品質を差別化することが可能となり、例えば映像を転送するアプリケーションは優先度を高くすることで、優先度の低い、例えば大量のデータを扱うファイル転送サービスよりも網内転送の遅延時間を短くすることが可能となる。しかしながら、この方式における品質の差別化は相対的なものであり、接続される呼の数が非常に多くなってしまった場合には、たとえ最も優先度の高い、優先クラス1が割り当てられた呼であっても、本来の要求品質が守られるとは限らない。
【0007】
このような状況を回避するためには、同時に接続する呼の数を制限することで、既に接続済みの呼の品質を守る必要がある。この方法は一般的に呼受付制御法と呼ばれ、従来の回線交換網やATM(非同期転送モード)網でしばしば利用されてきた。図2および図3により、ノードでの呼受付制御の様子を示す。ノード装置100内に設置された呼受け付け制御装置131は、新たな呼211の通信開始の要求があった時点で、まず新たな呼211の要求品質と、ノード装置100内で割り当てられた優先クラスごとのパケットの品質をもとに、新たな呼211に割り当てられる優先クラスを決定する。次に呼受け付け制御装置131は、バッファ装置121へ収容される優先クラス1のパケット、バッファ装置122へ収容される優先クラス2のパケット、・・・が、新たな呼211を受け付けた後に実現されるであろう品質を推定する。もし、それぞれの優先クラスのパケットについての品質が、該当する優先度が割り当てられた呼の要求品質全てを満たすと判断できた場合は、新たな呼211の通信を認めるが、ある優先クラスのパケット品質推定値について、その優先度が割り当てられた呼の要求品質を満たせないと判断された場合には、新たな呼211の通信を拒否する。これにより、既に通信を行っている呼201、201、203・・・の品質は保証される。
【0008】
この方式に関して注意すべき事柄として、例えば新たな通信開始を求める呼211に優先クラス1が割り当てられた場合(図2)でも、優先クラス1のパケットだけでなく、他の優先クラスのパケットの品質も変化する場合があり、そのため他の優先クラスについての品質も推定する必要があることが挙げられる。したがって、ある優先クラスのパケットの品質が満たされないと判断された場合には、他の全ての優先クラスのパケットの品質がどれだけ良くても、新たな呼が受け付けられず、収容効率が上げられない場合があるという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述したパケット転送網における呼受付制御法では新たな呼が受け付けられないと判断された場合に、それぞれの呼に割り当てられた優先度を見直すことで、新たな呼が受け付けられるようにし、結果としてノードでの収容効率を向上させることが可能な新たな呼受付制御法及び該方法を実施するノード装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、パケット転送型のマルチメディア通信網において、それぞれの呼の要求品質に従って優先クラスを割り当て、優先クラス毎に異なる品質を実現する優先制御方式において、新たに通信を開始しようとする呼があった場合に、新たな呼の受け付け可否を判断する本発明の呼受付制御方法は、新たな呼が加わった場合のクラス毎の品質を推定し、あるクラスの品質が、そのクラスに割り当てられた呼の要求品質を満足できないと判断された場合に、そのクラスに割り当てられた全ての呼のうち、要求品質の緩い呼のクラスを、より低い優先クラスに割り当てなおすことで、当該クラスの品質を改善し、新たな呼の受け付けを可能とすることを特徴とする。
【0011】
更に、パケット転送型のマルチメディア通信網において、それぞれの呼の要求品質に従って優先クラスを割り当て、優先クラス毎に異なる品質を実現する優先制御を実行する本発明のノード装置は、新たに通信を開始しようとする呼があった場合に、新たな呼の受け付け可否を判断する呼受付制御装置を具え、該受付制御装置が、新たな呼が加わった場合のクラス毎の品質を推定し、あるクラスの品質が、そのクラスに割り当てられた呼の要求品質を満足できないと判断された場合に、そのクラスに割り当てられた全ての呼のうち、要求品質の緩い呼のクラスを、より低い優先クラスに割り当てなおすことで、当該クラスの品質を改善し、新たな呼の受け付けを可能とすることを特徴とする。
【0012】
【作用】
従来の呼受付制御法では、クラス毎の品質が呼の要求を満足できない場合には直ちに新たな呼の受け付けを拒否しなければならなかったが、本発明の方法によれば、呼に割り当てられた優先クラスを変更することで、新たな呼が受け付けられる可能性が増加する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、従来の呼受付制御法を拡張し、従来方法では新たな呼が受け付けられない、と判断されるような場合でも呼が受け付けられるような呼受付制御方法を提供するものであり、本発明による呼受付制御手順を図2に示すノード装置及び図4に示す流れ図を用いて説明する。
まず、図2に示すような優先制御ノード装置100において新たな呼211の通信開始要求が生起すると、呼受付制御装置131が開始ステップ400で呼受付制御を開始し、第1のステップ401において、この新たな呼211の要求品質条件から、新たな呼211に割り当てられる優先クラスを決定する。次に、第2のステップ402において、ノード内で実現されている全ての優先クラスについて、新たな呼を受け付けたと仮定した場合の品質を推定する。第3のステップ403において、第2のステップ402で推定したクラス毎の品質が、新たな呼と既に通信中の各呼の要求品質を満足できるかどうか判定する。もし、全ての呼の要求品質が満足できると判定された場合には、終了ステップ407において新たな呼211の受け付けを許可して呼受付制御の手続きを終了する。そうでない場合には、次の第4のステップ404に進む。
【0014】
第4のステップ404では、品質が満足できない呼が割り当てられたクラスを特定する。該当するクラスが複数ある場合には、最も優先度の高いクラス(j)を対象とする。第5のステップ405では、第4のステップ404で特定したクラスを確認し、もしそのクラスがノード内で実現されている最も優先度の低いクラスであった場合には、終了ステップ408に進み、品質の改善は不可能と判断して、新たな呼211の受け付けを拒否して呼受付制御の手続きを終了する。そうでない場合には、次の第6のステップ406へ進む。
【0015】
第6のステップ406では、第4のステップで特定されたクラスに割り当てられた呼の中から、要求品質が最も緩いものを選び出し、当該呼のクラスを優先度が1段階低いクラス(j+1)へ割り当てなおす。これにより、第4のステップで特定されたクラスに割り当てられた呼の数が減少するため、このクラスの品質は改善される。一方、優先度が低いクラスにとっては、もともと優先度が高いクラスに割り当てられていた呼が、新たにこのクラスに加わるので、このクラスが満たすべき品質は、当該呼の要求品質に合わせてより厳しいものとなる。このように各クラスでの品質が変化するので、品質の推定を再度行うため、第2のステップに戻る。最終的に新たな呼211の受付可否が判定されるまで、以上の手順を繰り返す。
【0016】
次に、この呼受付制御方法を更に具体的に説明する。当該ノードを経由して通信を行う呼がn本存在し、全ての呼がノードで許容できる遅延時間について昇順に番号付けされているとする。すなわち、1番の呼の要求品質をω、2番の呼の要求品質をω、・・・、n番の呼の要求品質をωとすると、ω≦ω≦・・・≦ωが成り立つとする。各呼は当該ノード上でk個の優先クラスに分類され、1番からn(1)番までの呼はクラス1、n(1)+1番からn(1)+n(2)番までの呼はクラス2、・・・、n(1)+・・・+n(k-1)+1番からn(1)+・・・+n(k)=n番までの呼はクラスkに割り当てられているとする。したがって、クラス1の品質はω、クラス2の品質はω (1) +1、クラスkの品質はω (1) +・・・+n (k-1) +1を満足させる必要がある。
【0017】
いま、ノードにn+1番目の新たな呼が通信開始要求を行ったとする。まず、この新たな呼の要求品質ωn+1対して、ω (1) +・・・+n (i-1) +1≦ωn+1≦ωn(1) +・・・+n (i) +1を満たすiを求める。この時、クラスiの要求品質は新たな呼の要求品質ωn+1より厳しく、クラスi+1の要求品質はωn+1より緩いため、新たな呼はクラスiに分類される(第1ステップ401)。
【0018】
次に、n+1番の呼が加わった場合における、クラス1の品質W1、クラス2の品質W2、クラスkの品質Wkを推定し(第2ステップ402)、クラス毎の要求品質が満足できるかどうか、すなわち
(S1) W1≦ω1
(S2) W2≦ω (1) +1


(Sk) Wk≦ω (1) +・・・+n (k-1) +1
が成り立つかどうか確認する(第3ステップ403)。(S1)〜(Sk)が全て成り立つ場合には、新たな呼を受け付けても品質上問題がないと判断できるので、新たな呼を受け付けて呼受付制御手順を終了できる。
【0019】
いま、あるクラスjに対して品質が満足できない、すなわち
(Sk) Wj>ωn(1)+ ・・ +n(j-1)+1
となる場合(ステップ4)を考える。もしj=k、すなわち、最も優先度の低いクラスに対して品質が満足できないと判断された場合(第5ステップ405)には、品質上の問題を解決できないので、新たな呼を拒否して呼受付制御手順を終了する。それ以外の場合には、クラスjに割り当てられたn(1)+・・・+n(j-1)+1番からn(1)+・・・+n(j)番までの呼のうち、最も要求品質の値が緩いn(1)+・・・+n(j)番の呼について優先度の変更を行い、クラスj+1へ割り当てる(第6ステップ406)。これにより、クラスjに割り当てられた通信量が減少するので、結果として品質の改善が期待できる。一方クラスj+1に割り当てられる通信量は増加するので、結果として品質が劣化する恐れがある。更に、要求品質についても、これまではn(1)+・・・+n(j)+1番の呼の要求品質であるω (1) +・・・+n (j) +1を満足していれば良かったが、今後はより厳しい、n(1)+・・・+n(j)番の呼の要求品質であるω (1) +・・・+n (j)を満足する必要がある。そのため、新たなクラス割り当てと要求品質の組み合わせを用いてクラス毎の品質を推定し、新たな呼が受け付けられるかどうかを判定する。この手順を繰り返すことにより、最終的に(S1)〜(Sk)の全てが成り立つように出来た場合には、品質上問題がないと判断できるので、新たな呼を受け付けて呼受付制御手順を終了するが、そうでない場合には、品質上の問題を解決できないので、新たな呼を拒否して呼受付制御手順を終了する。
【0020】
以上、本発明の呼受付制御方法の手順を説明したが、これらの手順はノード装置内の呼受付制御装置に含まれるコンピュータにより実行することができ、本発明はこのような呼受付制御手順を実行させるためのコンピュータプログラム及び該コンピュータプログラムを記録した記録媒体も本発明の範囲に含むものである。
【0021】
尚、上述の呼受付制御方法の実施にあたっては、第2のステップにおけるクラス毎の品質の推定は上述したようにノードにおける平均遅延時間に基づいて行なうことができるが、ノードにおける遅延ゆらぎ時間、あるいは、ノードにおけるパケット損失率に基づいて行なうこともできる。
【0022】
【発明の効果】
従来の呼受付制御法では、前述した第3のステップにおいてクラス毎の品質が呼の要求を満足できない場合には直ちに新たな呼の受け付けを拒否しなければならなかったが、提案方法を用い、呼に割り当てられた優先クラスを変更することで、新たな呼が受け付けられる可能性が増加する。これは、通信を要求するユーザ側の観点からは、通信開始を拒否される確率が減少し、サービス性が向上されることを意味し、ネットワーク事業者側の観点からは、要求された品質を満足させつつ、同時に通信を行うことのできる呼の数を増やせることで通信設備の利用効率が向上されることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 優先制御を実現するノード装置を示す図である。
【図2】 優先制御を実現し、呼受付制御機能を有するノード装置を示す図である。
【図3】 従来の呼受付制御手順を示す流れ図である。
【図4】 本発明による呼受付制御手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
100 ノード装置
121、122、・・・ バッファ装置
111 パケット読出装置
131 呼受付制御装置
201、202、203、・・・211 パケット
301 物理回線

Claims (10)

  1. パケット転送型のマルチメディア通信網において、それぞれの呼の要求品質に従って優先クラスを割り当て、優先クラス毎に異なる品質を実現する優先制御方式において、新たに通信を開始しようとする呼があった場合に、新たな呼の受け付け可否を判断する呼受付制御法であって、新たな呼が加わった場合のクラス毎の品質を推定し、あるクラスの品質が、そのクラスに割り当てられた呼の要求品質を満足できないと判断された場合に、そのクラスに割り当てられた全ての呼のうち、要求品質の緩い呼のクラスを、より低い優先クラスに割り当てなおすことで、当該クラスの品質を改善し、新たな呼の受け付けを可能とする呼受付制御方法。
  2. 請求項1の方法において、ノードでの平均遅延時間をそれぞれのクラスの品質として推定することを特徴とする呼受付制御方法。
  3. 請求項1の方法において、ノードでの遅延ゆらぎ時間をそれぞれのクラスの品質として推定することを特徴とする呼受付制御方法。
  4. 請求項1の方法において、ノードでのパケット損失率をそれぞれのクラスの品質として推定することを特徴とする呼受付制御方法。
  5. パケット転送型のマルチメディア通信網において、それぞれの呼の要求品質に従って優先クラスを割り当て、優先クラス毎に異なる品質を実現する優先制御を実行する本発明のノード装置であって、新たに通信を開始しようとする呼があった場合に、新たな呼の受け付け可否を判断する呼受付制御装置を具え、該受付制御装置が、新たな呼が加わった場合のクラス毎の品質を推定し、あるクラスの品質が、そのクラスに割り当てられた呼の要求品質を満足できないと判断された場合に、そのクラスに割り当てられた全ての呼のうち、要求品質の緩い呼のクラスを、より低い優先クラスに割り当てなおすことで、当該クラスの品質を改善し、新たな呼の受け付けを可能とすることを特徴とするノード装置。
  6. 請求項5のノード装置において、前記呼受付制御装置がノードでの平均遅延時間をそれぞれのクラスの品質として推定することを特徴とするノード装置。
  7. 請求項5のノード装置において、前記呼受付制御装置がノードでの遅延ゆらぎ時間をそれぞれのクラスの品質として推定することを特徴とするノード装置。
  8. 請求項5のノード装置において、前記呼受付制御装置がノードでのパケット損失率をそれぞれのクラスの品質として推定することを特徴とするノード装置。
  9. パケット転送型のマルチメディア通信網において、それぞれの呼の要求品質に従って優先クラスを割り当て、優先クラス毎に異なる品質を実現する優先制御を実行する本発明のノード装置において、新たに通信を開始しようとする呼があった場合に、新たな呼の受け付け可否を判断する呼受付制御装置を構成するコンピュータに、新たな呼が加わった場合のクラス毎の品質を推定するステップと、あるクラスの品質が、そのクラスに割り当てられた呼の要求品質を満足できないと判断された場合に、そのクラスに割り当てられた全ての呼のうち、要求品質の緩い呼のクラスを、より低い優先クラスに割り当てなおすステップを実施させるためのコンピュータプログラム。
  10. 請求項9に記載されたコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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