JP3699112B2 - 治療用化合物 - Google Patents

治療用化合物 Download PDF

Info

Publication number
JP3699112B2
JP3699112B2 JP52474294A JP52474294A JP3699112B2 JP 3699112 B2 JP3699112 B2 JP 3699112B2 JP 52474294 A JP52474294 A JP 52474294A JP 52474294 A JP52474294 A JP 52474294A JP 3699112 B2 JP3699112 B2 JP 3699112B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nef
cells
nef27
nef25
protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP52474294A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09501143A (ja
Inventor
アブデュラー アザド,アーメド
シー. カーテン,シリル
ルイーズ グリーンウェイ,アリソン
アラン マクフィー,デール
マクリーディ,イアン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization CSIRO
Original Assignee
Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization CSIRO
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization CSIRO filed Critical Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization CSIRO
Publication of JPH09501143A publication Critical patent/JPH09501143A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3699112B2 publication Critical patent/JP3699112B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/005Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from viruses
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/12Antivirals
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/12Antivirals
    • A61P31/14Antivirals for RNA viruses
    • A61P31/18Antivirals for RNA viruses for HIV
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • A61P37/02Immunomodulators
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • A61P37/02Immunomodulators
    • A61P37/04Immunostimulants
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • A61P37/02Immunomodulators
    • A61P37/06Immunosuppressants, e.g. drugs for graft rejection
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2740/00Reverse transcribing RNA viruses
    • C12N2740/00011Details
    • C12N2740/10011Retroviridae
    • C12N2740/16011Human Immunodeficiency Virus, HIV
    • C12N2740/16311Human Immunodeficiency Virus, HIV concerning HIV regulatory proteins
    • C12N2740/16322New viral proteins or individual genes, new structural or functional aspects of known viral proteins or genes

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Communicable Diseases (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • AIDS & HIV (AREA)
  • Tropical Medicine & Parasitology (AREA)
  • Transplantation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Description

本発明は、ヒト免疫不全ウイルスのNefタンパク質の生物学的に活性なペプチドフラグメント、これらのペプチド又はその生物学的に活性な類似体を含む薬学組成物、ペプチドのアンタゴニスト及びこれらのアンタゴニストを含む医薬組成物及び本発明の化合物及び組成物を利用する治療及びスクリーニング方法に関する。
発明の背景
エイズの病因物質であるヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)は、その他の動物レトロウイルスに見られるよりもさらに複雑なゲノム構造によって区別される。HIV-1のゲノムは、gag, pol及びenv遺伝子に由来する主要な構造タンパク質及びtat, rev, nef, vif, vpu, vpr及びtev遺伝子に由来する少なくとも7つの非必須補助タンパク質をコードするものであることがわかってる(1, 2)。これらのタンパク質のうちのいくつかは、明確にされた機能をもつ;例えば、Tat及びRevはウイルス遺伝子発現を調節することがわかっており、一方Vif及びVpuはビリオンの形態形成及び成熟のために必要とされるものであると考えられている(3, 4, 5)。しかし、Nefといったその他の補助タンパク質の機能は、さらに不明瞭なものである。
25〜30kDaのタンパク質であるnef遺伝子産物は、N−末端ミリストイル化及びリン酸化により修正され、感染早期に発現される(6, 7)。これは、HIV感染細胞内で細胞質膜構造と結びつけられている。Nefタンパク質は、3′の長さの末端反復配列と重複するウイルスゲノムの単一の読取り枠によってコードされる(LTR;8, 9)。サル免疫不全ウイルスに感染したアカゲザルの最近の研究は、高ウイルス負荷の維持及びウイルス病因においてNefが果たす重要な役割を示唆しており(10)、HIV感染患者の延命がNefの欠如と相関関係をもつ一方で、Nefの生物学的機能及び作用メカニズムはいまだに論議の余地あるものであり続けている。Nefは、HIV-1複製の負の調節因子であるものとして報告されている(2, 10, 11):Nef発現のために安定した形で形質転換されたT細胞はウイルス増殖における遅延を実証している(11)。さらなる報告書は、NefがHIV-1 LTRからの転写を抑制するように作用する可能性がありそのためNefはウイルストランス作用因子Tatの正の効果を調節するように作用し得るということを示唆してきた(12, 13, 14)。しかしながら、その他の研究が、インビトロでのウイルス転写又は複製に対するNefの阻害効果を確認することはできておらず、実に1つのケースにおいてはNefがウイルス複製を増強することが示された(15)。
我々は、E. coli又は酵母のいずれかの中で産生された高度に精製された組換え型Nefタンパク質を用いて、NefがG−タンパク質活性を全くもたないということを発見した。
宿主細胞機能に対するHIV-1 Nefの効果は同様に論議の余地のあるものである。HIV-1感染の主たる標的はCD4+ T−リンパ球(16, 17)である。大部分がT−ヘルパー細胞のカテゴリーを構成しているこの細胞集団は、感染に対する宿主細胞の応答に密に関与している。T細胞レセプタ(TCR)によるペプチド抗原の認識と結びついた、抗原提供細胞上のMHCクラスII分子の不変決定因子とCD4抗原の特異的相互作用は、活性化されたT細胞表現型の発現へと導く事象を開始させる。その上、CD4及びその付随するチロシンキナーゼがCD3/TCR活性化プロセスにおいて活発な役割を果たし得ることが提案されてきた(18, 19)。マウスレトロウイルスLTRの制御下のnef遺伝子又はnef遺伝子を発現するワクチニアウイルス組換え体を用いることによって、タンパク質がCEMT4細胞内のCD4細胞の表面発現をダウンレギュレーションできることが発見された。ダウンレギュレーションは、CD4 mRNAの翻訳の後、及び細胞表面上の成熟タンパク質の発現の前に起こった。その上、ウイルスでコードされたNefタンパク質が、IL-2転写を誘発するTCR複合体から発せられるシグナルと干渉するということの証拠も存在する(22)。従って、ウイルス複製に影響を及ぼすのではなくむしろNefは、シグナル形質導入経路を損うことにより感染に対する正常な宿主細胞応答を変化させるように作用しうる。しかしながら、これらの結果の解釈には用心が必要である。というのも、同じベクターで形質導入されたものの機能的nef遺伝子を全くもたない細胞も表面CD4の発現の減少を示し(23)、一方IL-2遺伝子転写に対するNefの効果はまだ今後実証されるべき状態にとどまっているからである。
T細胞の活性化及びIL-2によるその刺激のメカニズムは、まだ完全に理解されていない。しかしながら、IL-2による活性化されたT細胞の刺激は、多くのセリン残基上のこのPTKのリン酸化を伴う、酵素のタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)グループの一員である酵素p56lckの触媒活性の急速な過渡的増加を導く、ということがわかっている(43)。増々増えていく証拠により、IL-2レセプタ及びCD4のβ鎖と結びつけられるものとして知られているチロシン及びセリン/トレオニンタンパク質キナーゼ特にp56lckが、IL-2依存性増殖性シグナルに関与している可能性があるということをが示唆されている(18, 44)。
終局的にHIV-1 Nefタンパク質の考えられる機能を見極めるため我々は、きわめて精製度の高い形でのNefタンパク質を得、細胞機能に対するその効果を研究した。それぞれHIV-1クローンpNL4.3のnef遺伝子の第1及び第2の開始コドンから翻訳されたNef27及びNef25を、E. coliの中で過剰産生させ、均質になるまで精製した。
我々は同様に、NefのN末端配列のアミノ酸2−19及び2−22に対応するペプチドも合成した。これらの精製されたタンパク質及びペプチドを用いて、我々はNefが、小さい単層リン脂質小胞を融合させ脂質2重層の中に非層状相を誘発できるという点で、膜摂動物性を有するということを実証した。これらの物性は、HIVの全ての菌株にわたり、膜摂動性ミツバチ毒液ペプチド、メリチンの配列との多大な相同性を有するNefの21残基N末端配列にあると思われる。
我々は、CD4細胞表面発現及びIL-2レセプタ(IL-2R)の発現に対するこれらのタンパク質の効果を調査するため、さまざまなCD4+ T細胞系統及びフィトヘマグルチニン(植物凝集素)(PHA)で活性化された末梢血単核細胞(PBMC)の中に精製度の高いNef27又はNef25を導入するべく、Baekonizationと呼ばれる電界電気穿孔法を使用した。我々は、電気穿孔の後Nef27を含んでいるT細胞系統MT-2, CEM及びジャーカット、及びPHAで活性化されたPBMCが表面CD4の発現の著しい減少を示したことを発見した。さらに、Nef27を含むMT-2細胞及びPBMCは、又、MT-2細胞の場合には構造性の又PBMCではPHAでの刺激後のIL-2Rの発現の激減も実証した。直接対比すると、電気穿孔後のNef25を含むT細胞系統及びPBMCは、変わらないレベルの表面CD4及びIL-2Rを発現した。
Nefタンパク質の活性領域を同定すると共に、我々は、Nef27が組換え型IL-2に応答してPHA活性化されたPBMCの増殖性応答を阻害することそしてNef27がNef25と異なり、IL-2刺激により誘発されるPBMC内のp56lckのリン酸化を阻害できること、を発見した。我々は、Nef27によるp56lckのIL-2依存型のリン酸化及び細胞増殖の阻害に関与する可能性のある、Nefとp56lckの間の相互作用を実証することができた。
発明の要約
第1の態様によると、本発明は、Nef2-19ペプチド又はその免疫抑制類似体を含む免疫抑制ペプチドにおいて、そのN末端配列がNef2-19の免疫抑制領域を含む免疫抑制ペプチドを提供している。
第2の態様に従うと、本発明は、有効成分としてNef2-19ペプチド又はその免疫抑制類似体を、薬学的に受容可能な担体と共に含む、薬学組成物を提供している。このような組成物は、免疫抑制剤として有用であると考えられる。「類似体」という語が、Nef2-19ペプチドのフラグメント又は延長部分を含んでいるということは明らかに理解できることだろう。
本発明は同様に、自己免疫疾患の症状又は免疫応答の抑制方法において、かかる治療を必要とする患者に対して有効量のNef2-19ペプチド又はその類似体又はこのペプチド又は類似体を含む組成物を投与する段階を含む方法をも提供している。
これら両方の態様において、ペプチド又はその類似体は、NefのN末端配列に沿った延長部分又はNef2-19又はNef2-22に隣接していないNefの配列のいずれかに対して結合されうる。
第3の実施態様において、本発明は、Nef27−又はNef2-19ペプチド媒介膜摂動、CD4のダウンレギュレーション及びIL-2レセプタのダウンレギュレーションから成るグループの中から選択された単数又は複数の活性を阻害する能力をもつNef2-19ペプチドのアンタゴニストを提供する。このようなアンタゴニストは、HIV感染の治療のための治療用作用物質として及び免疫応答の刺激物質として有用であると考えられる。
本発明は同様に、有効成分として上述のとおりのNef2-19ペプチドのアンタゴニストを薬学的に受容可能な担体と共に含んで成る医薬組成物をも内含している。
本発明はさらに、HIV感染の治療方法において、かかる治療を必要としている患者に対して有効量の本書に定める通りのNef2-19ペプチドアンタゴニストを投与し、かくしてHIV感染が症候性エイズへと進行するのを防ぐか又はエイズの症状を軽減する段階を含む方法をも提供している。
第4の態様において、本発明は、本書で記述される通り、膜摂動CD4発現のダウンレギュレーション及びIL-2レセプタ発現のダウンレギュレーションから成るグループの中から選択されたNef2-19ペプチドの生物学的活性の検定の中で試料化合物の有効性を測定することを含んで成る、Nef2-19ペプチドの類似体又はアンタゴニストとして有用であるとの推測がなされている化合物をスクリーニングする方法を提供している。
本発明のこの態様の2つの好ましい変形実施形態においては、スクリーニング方法は定量的であり、p56lckに対するNefの結合又はp56lckのリン酸化のNefによる阻害のいずれかを利用している。このような定量的方法は、Nefのこれらの機能を促進又は分断する能力について試験化合物を急速かつ大規模にスクリーニングするのに容易に適合させることができる。
Nef2-19ペプチドのペプチド配列とハチ毒メリチンのペプチド配列の間には相同性があることから、この毒液ペプチド及びクモ毒ペプチドといったその他の毒液ペプチドは、Nef2-19ペプチドの活性の阻害物質を設計するための適当な出発材料を提供すると考えられている。
当業者であれば、Nef2-19ペプチドに対して向けられた特異的抗体好ましくはモノクローナル抗体及びNef2-19ペプチド半分か又は全長Nef配列のいずれかの発現を防ぐアンチセンスRNA又は3本鎖DNAが、Nef2-19ペプチドの活性の阻害方法を提供し、従って本発明の範囲内に入るものであることを認識できるであろう。一定の与えられた配列に対するモノクローナル抗体の産生のための方法及び標的細胞内での3本鎖DNA又はアンチセンスRNA産生を誘発するための方法は、当該技術分野において周知のものである。例えば、N末端が阻害性アンチセンス配列又は阻害性ペプチドをコードする配列により置換されたnef遺伝子を、エイズの遺伝子療法のために使用することが可能である。
さらに、組換え型、合成及び天然由来のNef27, Nef25, Nef2-19及びNef1-22ペプチド及びそのフラグメント及び類似体は、N末端ミリストイル化を伴うものと伴わないものも、全て本発明の範囲内に入るということは、明らかに理解されるだろう。
本書の記述はHIV-1のNefタンパク質に特定的に関連するものであるが、HIV-2も同様にNefタンパク質を有しており、本発明は、HIV-2から誘導されたNefタンパク質及びNef2-19ペプチドの等価物にも等しく応用できるものである。同様に、この記述はNef2-19ペプチドに特定的に言及しているが、Nef2-22ペプチドも同じく本発明の一部を成すものである。
発明の詳細な説明
本発明についてここで、以下の制限的意味のない例及び図面のみを参考にして記述していく。なお図面中、
図1は、大腸菌(E. coli)、酵母及びバキュロウイルス内でのHIV-1 nef遺伝子のクローニング及び発現のために利用されるスキーマを要約している。
図2は、疎水性に対する疎水性モーメントのプロットを示す。
図3は、2つのペプチドのαらせんのまわりの極性及び疎水性残基の分布を示す、Nef及びメリチンを例示するらせん輪状(ホイール)図である。
図4は、HIVからの代表的Nefペプチド配列(A)及びメリチン(B)についての、エネルギーを最小にした構造を表わす。
図5は、Nef2-19ペプチド、Nef27及びNef25の存在下での小さい単層リン脂質小胞(SUV)の光散乱を示す。
図6は、Nef2-19ペプチド、Nef27及びNef25の付加後のSUVの31P NMRスペクトルを示す。
図7は、水、エタノール及びSUV中のNef2-19ペプチドのトリプトファン螢光スペクトルを示す。
図8は、脂質2重層の疎水性領域内に疎水性領域が挿入され極性残基が外部水性媒質へと配向されている状態でのモノマーNefペプチドを示す分子モデルを描いている。
図9は、親和力精製された抗−Nef(15-27)と反応させられた組換え型Nef27及びNef25の免疫ブロットを示す。ウエスタン免疫ブロット法において抗体により検出可能であるタンパク質の量を決定するため、可変的量の組換え型Nefタンパク質(レーンA及びH:3.0μmol;レーンB及びG:1.5μmol;レーンC及びF:0.5μmolそしてレーンD及びE:0.15μmol)が用いられた。Nef25はレーンA−Dにあり、Nef25はレーンE−Hにある。Nef27又はNef25に特異的な強いバンドが、0.15μmolのタンパク質をテストしたときにもなお観察された。
図10は、免疫ブロット法による電気穿孔されたMT-2細胞内のNefタンパク質の検出を示す。MT-2細胞から調製された細胞リゼイトの免疫ブロットを、以下の通りに電気穿孔させた:
a)偽電気穿孔法
b)組換え型Nef27(1.0μmol)での電気穿孔
c)Nef25(1.0μmol)での電気穿孔
d)組換え型Nef25単独(1.0μmol)。
全ての試料は、抗Nef15-27で免疫ブロットされた。
図11は、MT-2細胞内の細胞表面に局在化されたCD4(A)及びPHAで刺激された末梢血単核細胞(B)、及びMT-2細胞内のIL-2R(C)及びPHAで刺激されたPBMC(D)の発現を示す。細胞は、偽電気穿孔されるか(1)、又はBSA;1.0μmol(2)、Nef27;1.0μmol(3)、又はNef25;1.0μmol(4)で電気穿孔され、24時間37℃でインキュベートされた。その後、細胞を、縞入り棒で示される通り抗−CD4、抗−CD25と反応させるか又は黒色棒で示される通り適切なイソタイプ対照と反応させ、フローサイトメトリーにより分析した。陽性細胞の平均螢光強度が示されている。
図12は、MT-2細胞内の細胞表面に局在化されたトランスフェリンレセプタ(TFR)(A)又はIL-2R(B)の発現を示す。細胞は、Nef27;
Figure 0003699112
Nef25;
Figure 0003699112
BSA;
Figure 0003699112
のいずれかで電気穿孔されるか又は偽電気穿孔され
Figure 0003699112
、24時間37℃でインキュベートされた。HIV-1 Nef27での細胞電気穿孔の後でさえ、MT-2細胞上のTFRの細胞表面発現は安定していた。
図13は、ポリアクリルアミドゲルの電気泳動を受けた細胞タンパク質沈殿物の銀染色法を示す。
a)TBS(トラック1)、GST(トラック2)又はGST-Nef27(トラック3)との反応及びそれに続くグルタチオン−セファロース処理の後のMT-2細胞リゼイトから調製された沈殿物。
b)TBS(トラック3)、GST(トラック4)又はGST-Nef27(トラック5)との反応及びそれに続くグルタチオン−セファロース処理の後のPHA活性化されたPBMCリゼイトから調製された沈殿物。トラック1はGSTタンパク質(2μg)を、トラック2はGST-Nef27タンパク質(2μg)を表わしている。
c)TBS(トラック5)、GST(トラック6)又はGST-Nef27(トラック7)との反応及びそれに続くグルタチオン−セファロース処理の後のPHA活性化されたPBMCリゼイトから調製された沈殿物。トラック1は低い分子量標識を表わし、トラック2はGSTタンパク質(2μg)を表わし、トラック3はGST-Nef25(2μg)を表わす。
図14は、細胞タンパク質沈殿物のウエスタン免疫ブロット法を示す。
a)TBS(トラック1)、GST(トラック2)、及びGST-Nef27(トラック3)との反応後MT-2細胞から調製された沈殿物。抗−p56lckを一次抗体として使用した。
b)TBS(トラック4)、GST(トラック3)及びGST-Nef27(トラック2)との反応後PHA活性化されたPBMCから調製された沈殿物。抗−p56lckを一次抗体として使用した。トラック1は低分子量の標識を表わしている。
図15は、以下に記述する通り、TBS(トラック1)、GST(トラック2)及びGST-Nef27(トラック3)との反応後のPHA活性化されたMT-2細胞又はTBS(トラック4)、GST(トラック5)及びGST-Nef27(トラック6)との反応後のPHA活性化されたPBMCから調製された細胞タンパク質沈殿物のウエスタン免疫ブロット法を示す。一次抗体として抗−CD4を使用した。
図16は、指標として〔3H〕−チミジンの取込みを用いた、Nef25, Nef27又はBSAで電気穿孔されるか又は偽電気穿孔されたPHA活性化PBMCのIL-2(0, 10, 30及び100IU/ml)に対する増殖性応答を示す。電気穿孔プロセスを受けなかったPHA活性化されたPBMCが対照として内含された。結果は、3つの実験についての平均±S.D.を表わしている。
図17は、抗−p56lckを用いたNef処理を受けたPBMCリゼイトのウエスタン免疫ブロット法を示す。偽電気穿孔(トラック1, 2及び3)、Nef27での電気穿孔(トラック4, 5及び6)又はNef25での電気穿孔(トラック7, 8及び9)を受けたPHA活性化されたPBMCを、0分(トラック1, 4及び7)、15分(トラック2, 5及び8)又は30分(トラック3, 6及び9)間IL-2(1000U)で処理し、Hybond-C Superニトロセルロースへの移送の後、以下に記す通りフィルターを抗−p56lckと反応させた。
図18は、PMA刺激の前後の抗−p56lckを用いたNef処理済みPBMCリゼイトの免疫ブロット法を示す。
偽電気穿孔(トラック1及び2)、Nef27での電気穿孔(トラック3及び4)又はNef25での電気穿孔(トラック5及び6)を受けたPBMCをPMAで処理する(20ng/ml;トラック1, 3及び5)か又は37℃で2時間培地単独の中でインキュベートさせた。細胞リゼイトを電気泳動し、Hybond-C Superニトロセルロースに移し、ひき続き抗−p56lckでプローブ探査した。
図19は、ウエスタン免疫ブロット法で検出されるようなNef処理されたMT-2細胞内の核タンパク質c-mybのレベルを示す。
Nef27で電気穿孔されたMT-2細胞(トラック4及び5)、Nef25(トラック3)、偽電気穿孔された細胞(トラック2)又は対照MT-2細胞(トラック1)を溶解させ、電気泳動させ、Hybond-C Superニトロセルロースに移し、抗−c-mybと反応させた。
材料と方法
試薬:ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)はSigma社、St.Louis MOから購入し、スピン標識付けされたリン脂質(1−パルミトイル−2−(16−ドキシルステアロイル)ホスファチジルコリン(16 PC-SL)、1−パルミトイル−2−(12−ドキシルステアロイル)ホスファチジルコリン(12 PC-SL)、及び1−パルミトイル−2−(5−ドキシルステアロイル)ホスファチジルコリン(5 PC-SL)は、Avanti Polar Lipids, Pelham ALから購入した。テンポコリン塩素(TCC)、フルオロクロムオクタデシルローダミン、1−アミノナフタリン−3, 6, 8−トリスルホン酸(ANTS)及び螢光消光剤N, N′−P−キシレンビス−(臭化ピリジニウム)(DPX)は、Molecular Probes, Junction City OR.から購入した。
Nef27及びNef25:これらのタンパク質はE. coliの中で発現され、Azad et al(54)の中で記述されている通りに精製された。この方法により、生物学的及び構造的研究に着手できるようにする量である数十ミリグラムのNef27及びNef25の産生が可能となる。
Nef27及びNef25をコードする配列を、HIV-1感染性クローンpNL4.3からPCRによって増幅させ(Adachi et al. J.Virol. 1986 59 284〜291)、E. coli、酵母及びバキュロウイルス発現ベクターの中へ直接サブクローニングさせた。利用されたスキーマは図1に要約されている。酵母及びバキュロウイルス由来のNefは、未変性N末端を有していたが、発現レベルは低かった。E. coli由来のグルタチオン(GST)-Nef融合タンパク質の発現レベルは非常に高く、発現産物の主要部分は可溶性を有していた。E. coli由来のNef27及びNef25の大規模産生を、流加条件下で発酵槽内で組換え型細胞を成長させることによって行なった。可溶性GST-Nef融合タンパク質をグルタチオンセファロース上で親和力精製させた。融合接合部でのトロンビン分割の後、グルタチオン−セファロースに結合させることによってGSTを選択的に除去した。大規模産生条件下で、Nef27はつねにやや小さめのN末端分割産物で汚染されており、2つは、反応性レッド120染料リガンドに無傷のNef27を選択的に結合させることによって分解できた。微量の汚染性細菌タンパク質を除去するには、時として最終的ゲルろ過段階が必要であった。精製の後Nef27及びNef25は、予想されたN末端配列を有し、還元SDS-PAGE及びゲルろ過上で単一のモノマーバンドとして現われた。非還元条件下では、Nef27及びNef25は両方共モノマーとダイマーの混合物として存在していた。精製度の高いNefタンパク質はいかなるGタンパク質活性も有していなかった。Nef27もNef25も、検出可能なGTP又は自己リン酸化活性を有していなかった。両方のタンパク質は共に、ウシ血清アルブミン、キモトリプシン又はリゾチームと比べた場合に著しいGTP結合を示していたが、p21radが示したレベルに比べると、結合レベルは取るに足らないものであった。
ペプチド合成:Nefのアミノ末端配列の第2から第19そして第2から第22の残基に対応するペプチドを、酸性不安定なBoc基によってアミノ酸のαアミノ基が防御される標準的Merrifield固相技法を用いて、Applied Bio-systems社のペプチド合成装置上で合成した。HIV-1のNL4.3菌株からの配列は以下のとおりであった:
Figure 0003699112
アミノ酸1はMetであり、これは真核細胞の中でインビボで分割される。
セリン側鎖をベンジル基で防御し、アルギニン側鎖をメシチレン−2−スルホニル基で防御した。ブタノールエステルの4モル余剰分を用いてカップリングされたアルギニンを除いて、カップリングは各アミノ酸の非対称無水物の2モル余剰分を用いて達成された。低トリフルオロメタンスルホン酸/高フッ化水素酸技法を用いて、完成したペプチドを樹脂から分割しているが、これにより4−メチルベンジルベンツヒドリルアミン樹脂からペプチドが生み出された。ペプチドをC4 Vydacカラム上でのHPLCにより精製した。最終濃度が50mMとなるまで0.05Mのトリス−HCl緩衝液、pH7.3の中で乾燥リン脂質を水和させ、懸濁液がもはや濁らなくなるまで窒素下で音波処理しその後超遠心分離により大き目の小胞及びチタン粒子があればそれを音波処理機の先端から除去することによって、小さい単層リン脂質小胞(SUV)を調製した。スピン標識付けされたリン脂質を、望ましいスピン標識/脂質比で余剰の70/30クロロホルム/メタノール中のリン脂質と混合することにより、小胞の中に取り込んだ。混合物を、窒素流の下で乾燥させ、次に24時間真空下に保って溶剤を徹底的に除去した。次に混合物を望ましい緩衝液中で水和させ上述のとおり音波処理した。
紫外線螢光研究:Nefペプチド内のトリプトファン残基の螢光スペクトルを、290nmの励起波長を用いてPerkin Elmer MPF3螢光分光光度計で記録した。
Nefペプチド、Nef27及びNef25の存在下及び不在下でのSUVの光散乱を、励起及び発光波長を共に560nmにセットして、日立−Perkin Elmer M35分光螢光計を用いて測定した。Ecを対照SUVによる入射放射線の直角散乱による発光としEtをタンパク質及びペプチドを付加したSUVからの発光としてS=Ec/Etという等式から相対散乱値Sを得た。SUVの濃度は1mlあたり脂質35〜50μgに対応する。
標準的パルス配列を用いて、81MHzでBrunker AM X 600分光計上でSUVのNMR-31P NMRスペクトルを獲得した。
64のタンパク質の拡散データベースを用いたChou-Fasmanアルゴリズム、Schiffer/Edmundsonのαらせん輪状団(ホイール)及びEisenberg及びWessonの疎水性モーメントプログラムを用いて、ペプチド二次構造の予測を行なった。
Biosym Insight II及びDiscoverパッケージをSilicon Graphics Irisワークステーション上で用いて、分子モデリングを行なった。
細胞及び細胞培養:5人のHIV-1感染陰性のボランティアから末梢血を得、従来の方法(24)を用いてフィコール/ハイパーク比重差遠心により単核細胞を調製した。37℃で最高72時間フィトヘマグルチニン(PHA;10μg/106細胞)で末梢血単核細胞(PBMC)を刺激し、以下に記述する通り補足されたRPMI 1640培地の中で培養した。(日本国京都の京都大学ウイルス研究所のヒヌマ. Y博士が御提供下さった)CD4+ T細胞系統MT-2, CEM及びジャーカット(共にATCCより)を、37℃で5%のCO2雰囲気内で、10%(体積/体積)の仔ウシ胎児血清、25μg/mlのグルタミン、ペニシリン(100IU/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)で補足されたRPMI 1640培地中で成長させた。
中間対数増殖中に培養からMT-2細胞を収穫し、撹拌しながら37℃で2時間HIV-1分離株228200又はHTLV−IIIbで吸着させた。このインキュベーション期間の後、補足されたRPMI 1640の中で細胞を再懸濁させ、3〜4日間37℃でインキュベートさせた。MT-2細胞及びジャーカット細胞も同様に中間対数増殖中に培地から収穫され、電気穿孔のために前処理された。
抗ペプチド抗血清:HIV-1 Nefに特異的な抗体を、HIV-1クローンpNL4.3によりコードされたNefのアミノ酸残基15〜27(AVRERMRRAEPAA)に対応する前述のとおり(25)に合成された1つのペプチドに対して生成させた。このペプチドを、グルタルアルデヒドを介してキーホールリンペットヘモシアニン(KLH:Calbiochem, Behring Diagnostics, CA)に対し接合(コンジュゲート)させ、この複合体をヒツジの免疫化に使用した(ヒツジ1頭あたりペプチド接合体0.5mg)。ペプチドに対する抗体をアフィニティクロマトグラフィによって精製した。免疫ブロット法により、組換え型HIV-1 Nef25及び27との抗体の反応性を実証した。
以下に記述されるさまざまな検定においては、全長Nefタンパク質のカルボキシル末端内のエピトープに対して反応性をもつ(AE6及びAG11;国立アレルギー・感染疾患研究所、エイズ研究及び基準試薬プログラム及び抗−Nef mAb;ABT, Maryland, U.S.A)か、又はNefのアミノ末端部分内のエピトープと反応性をもつ(NEF-2-B2;国立アレルギー・感染疾患研究所、エイズ研究及び基準試薬プログラム)モノクローナル抗体(mAbs)及び、HIV-1のアミノ酸残基15−27に対応する合成ペプチド、HTLV−IIIb−Nef;(New England Nuclear Division, DuPont, U.S.A)に対して生成された抗Nef mAbを使用した。
例1理論的コンフォーメーション研究
α−らせん又はβ−ストランドといった規定の二次構造をとるNefペプチドの能力を査定するため、理論的計算を行なった。Chou-Fasman分析は、水溶液中のα−らせん形成の低い確率を示唆し、疎水性モーメントプロットは、ペプチドが表面シークと「球状」挙動の間の境界に近いことを示唆していた。疎水性に対する疎水性モーメントのプロットが図2に示されている。図2Aは、6残基「ウインドウ」を用いてプロットされ、2Bは4残基「ウインドウ」を用いてプロットされた。メリチンと同様、Nefペプチドが脂質2重層及び水性培地の間の界面といったような適切な環境内でα−らせんを形成しうるということも可能とみなされた。両方のペプチドについてのSchiffer-Edmundsonのダイヤグラムが図3に示されている。これを見ると、Nefペプチドが、脂質2重層の炭化水素領域と相互作用しうる疎水性残基のメリチンに比べてはるかに小さい弧を有するということがわかる。
例2分子モデリング
Nef及びメリチンのN末端配列が表1において比較されている。
Figure 0003699112
Nefのいくつかの異なる菌株を代表する代表的Nefペプチドのエネルギーを最小限にした構造が、図4においてメリチンの構造と比較されている。後者の構造についての座標1組は、NMR研究から入手可能である。Nef構造は、α−らせん制約を適用し、Disconerプログラムを用いてエネルギーを最小限にして組立てられた。両方の構造共、疎水性残基が下に向いた状態で提示されている。メリチンと同様に、Nefペプチドはプロリン残基を配列に沿って約半分のところに有し、これがらせん内の特徴的こぶを作り出している。メリチンとNefの間の極立った違いは、メリチンの疎水性残基がらせんの凹面に沿って存在するのに対し、Nefの疎水性残基はその凸面に沿って存在するという点にある。
例3SUVとNef27, Nef25及びNefペプチドとの相互作用についての光散乱研究
Nef27及びNefペプチドは、図5に示した通り、SUVの光散乱の急速な増大をひき起こした。Nef25は、散乱をかなり低い程度で増大させた。光散乱の増大は、おそらくは融合による小胞の凝集を表わしている。
例4NMR研究
Nef27及びNefペプチドは両方共、SUVの31P NMRスペクトルの中で等方性ピークを誘発するが、一方Nef25はこれを行なわない。このことは図6に例示されている。リン脂質小胞単独の鋭いラインは、その遷移温度より上での非常に湾曲した脂質2重層の特徴である。これはNef25についてもみられる。Nef27及びNefペプチドで見られる付加的ピークの振幅及び外観は両方共、小胞融合にとって必要な前提条件である2重層分断の特徴である。
例5トリプトファンUV螢光
緩衝液中のNefペプチドの螢光スペクトル及び、1/100のペプチド/脂質比(P/L)を与える35mg/mlのSUVの付加後の螢光スペクトルは、図7に示されている。トリプトファン発光のブルーシフトは、水性培地から炭化水素培地への環境変化の特徴である。2重層内のトリプトファンの位置は、その螢光を消光するさまざまなニトロキシドスピンプローブを含む系にペプチドを付加することによってプローブ探査された。結果は表2の中に記載されている。
Figure 0003699112
2重層に浸透しないTCCは、緩衝液中でペプチドの螢光をまさに消光するものの、SUVの存在下でトリプトファン螢光に対しいかなる効果も及ぼさないことがわかる。ペプチド/脂質比<1/100において、トリプトファンは主として5 PC-SLにより消光され、一方、ペプチド/脂質>1/50では、12及び16 PC-SLによる消光も存在している。
Nefペプチドは、数多くの形で2重層脂質膜と相互作用すると思われる。SUVの付加後に起こるトリプトファンの螢光発光におけるブルーシフトは、これらの残基が脂質2重層の炭化水素領域内に埋没させられていることを示している。この観察事実は、系内にSUVが存在する場合に水溶性TCCによる螢光消光が欠如していることによって確認される。この効果は1/50及び1/25のP/Lで存在したことから、SUVがかなり高いP/Lでペプチドを定量的に取り上げたと思われる。一方P/L<1/100では、トリプトファン螢光は5 PL-SLによって消光されたが、P/L>1/50では同じく12−及び16 PC-SLによっても消光された。これらの結果は、低いP/Lで、ペプチドは、トリプトファンができれば図8に示されているように2重層炭化水素の上部領域に局在化された状態で、2重層の表面領域と結びつけられる、ということを示唆している。これとは対照的に高いP/Lでは、ペプチドは、できればマルチマー(多量体)膜内外コンホーメーションを仮定して、トリプトファンのうち少なくとも1つが2重層の12〜16炭素領域内に局在化されるような形で、局在化される。SUVに対するペプチドの付加時点での光散乱の増大は、それがリン脂質小胞を凝集させるということを示唆している。その上、1/100のP/LまでNefペプチドを付加した後のSUVの31P NMRスペクトル内の顕著な等方性ラインの出現は、ペプチドと2重層の結びつきが、膜融合に先行する事象である非層状脂質相の形成へと導くということを示唆している。Nef27タンパク質は同様に、SUVに付加されたとき急速に光散乱を増大させ、SUVの31P NMRスペクトル内の等方性ラインの出現をひき起こす。
Nef25はこれらの効果のいずれもひき起こさないことから、Nef27のN末端領域は膜活性ドメインを含んでいると思われる。正常な細胞の内側での融合事象は生理学的に発生することから、Nefといったような外来性の膜活性分子の存在によってもたらされる予定外の融合は、細胞内区画化の崩壊の結果として非常に分断的でありうる。例えば、Nefの膜融合特性は、細胞表面に対する抗原の輸送を妨害することによるCD4のダウンレギュレーションにおけるその作用に関連しうる。従ってタンパク質のN末端伸張は、有用な治療上の標的であり得る。
例6HIV-1−感染細胞内でのシンシチウム形成に対するNef27の効果
研究対象であるウイルスの分離株に応じて、Nefタンパク質の異なる対立遺伝子形質がHIV-1ウイルス感染中に産生される。我々の実験所では、著しいシンシチウム(融合細胞)形成及び細胞変性効果を生成しシンシチウム誘発型(SI)と呼ばれるものと、シンシチウムを誘発せず比較的低い細胞死滅度をひき起こすものという2つのこのような分離株がある。後者の分離株は非シンチウム誘発型(NSI)と呼ばれる。これらの分離株での感染を受けた細胞の特徴づけによると、SI分離株は表面CD4発現をダウンレギュレートできたもののNSI分離株はできなかった、ということが示されている。我々は、pNL4.3と呼称されるHIV-1菌株のNefタンパク質が表面CD4発現をダウンレギュレートできることを示した。一連のモノクローナル抗体が、発現されたNefタンパク質の異なる対立形質を認識でき、かくしてこれらの対立形質の間の構造的差異を実証していた。NSI菌株により誘発された感染の経過は、pNL4.3対立形質の組換え型Nef27の付加によって変えられた。このことはすなわち、組換え型Nef27がシンシチウムを形成するウイルスの能力を回復させて細胞の集塊の増大を可能にすることができるということを表わしている。Nef27の効果とは対照的に、N末端切形Nef25タンパク質はこの機能回復を誘発することができなかった。
例7免疫ブロット法における組換え型Nef27とNef25との抗Nef (15-27) の反応性
組換え型Nef27及びNef25とのヒツジ抗Nef(15-27)の反応性を免疫ブロット法で決定した。アフィニティクロマトグラフィにより、免疫原性ペプチド(AVRERMRRAEPAA)に対する抗体を精製した。免疫ブロット法実験において使用された抗体調製物は基本的に免疫原性担体タンパク質に対する抗体及びカップリング剤を含んでいなかった。精製された組換え型Nef27及びNef25(0.12〜1.0μM)をSDS-13%のポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)の中で電気泳動させ、ひきつづきBio-Radタンパク質トランスファ細胞(Bio-Rad, Richmond, Ca)を用いて100Vで1時間、Hybond-Cニトロセルロース(Amersham, Buckinghamshire, England)へと移送した。膜を室温で2時間1%のウシ血清アルブミン(BSA)を用いて予備インキュベートし、次に4℃で一晩、1:100に希釈した親和力精製されたヒツジ抗−Nef(15-27)と反応させた。PBS/0.05% Tween20内で3回洗浄した後、ブロットを、ビオチンに接合され1:500に希釈されたロバ抗ヒツジ免疫グロブリンを用いて室温で一時間インキュベートした。上述の通り大規模に洗浄した後、1:500に希釈されたストレプタビシンに接合されたホースラディッシュペルオキシダーゼ(Amersham)を用いて室温で1時間膜をインキュベートした。全ての希釈はPBS中の1%のBSAを用いて行なった。大規模に洗浄した後、膜をフェニレンジアミン基質(Dako, Dakopatts、デンマーク)で顕色させた。
大腸菌(E. coli)由来のNef27及びNef25が抗Nef(15-27)と反応させられた免疫ブロット反応の結果は、図9A及び9Bに示されている。それぞれNef27及びNef25で、約27kDaと25kDaの反応性の強いバンドが観察された。抗体は、免疫ブロット法によりNef27又はNef25のいずれかを少なくとも0.15μmol検出することができ、このポリクローナル抗体による両方のタンパク質の同等の認識を表わしていた。
例8HIV-1に感染したMT-2細胞の中のHIV-1 Nefタンパク質の検出
集密性に至るまで成長させられたMT-2細胞(3×107細胞)を培養から収穫し、50ml入りのポリプロピレン試験管(Nunc, Rockilde、デンマーク)の中に入れ、撹拌しながら37℃で2時間HIV-1(分離株228200:27)で吸着させた。このインキュベーション期間の後、細胞を、補足されたRPMI 1640培地の中で再懸濁させ、4日間37℃でインキュベートした。培地のみの中でインキュベートしたMT-2細胞も対照として含み入れた。4日のインキュベーション期間の後、HIV-1に感染したMT-2細胞及び対照細胞を培養から収穫し、細胞溶解緩衝液(0.5%のNonidet P40、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム塩、50mmのNaCl、25mMのトリス/HCl、5mmのベンズアミジン/HCl、10mmのEDTA、n−プロパノール中の0.1Mのフッ化フェニルメチルスルフォニル及び0.01%のアジ化ナトリウム、pH8)の中で再懸濁させ、細胞リゼイトを電気泳動し、Hybond-Cニトロセルロース紙(Amersham)に移し、上述のとおり抗−Nef(15-27)での免疫ブロット法に付した。Nefタンパク質は、組換え型タンパク質での細胞の電気穿孔で見られたものと類似の量で検出された。
例9T細胞系統及びPHA活性化されたPBMC内への大腸菌由来のHIV-1 Nef25又は27の電気穿孔法
Baekonizationと呼ばれる効率の良い電気穿孔技術を使用してBSA、組換え型Nef27又は組換え型Nef25タンパク質をPBMC及びCD4+ T細胞系統MT-2, CEM及びジャーカット細胞内に移送した。この形の電気穿孔法は、細胞膜を横断して巨大分子を移送するため電荷ではなくむしろ電界を使用し、その結果、より大きい細胞生存度をもたらす。操作の容易さ及び急速な巨大分子トランスファを可能にする電極形態のため、Baekon 2000最新型巨大分子トランスファシステム(Baekon, Inc, Fremont, CA)を選択した。電気穿孔のための最適条件は、5×105細胞/100μlの濃度のCEM細胞、1μMの組換え型HIV-1 Nef27又はNef25及び電気穿孔媒質(1.5mMのNa2HPO4、0.5mMのKH2PO4及び0.27Mのスクロース、pH7.0)を用いて標準化された(26)。対数増殖の中間に培養から収穫されたPBMC又はT細胞をPBSで一度洗浄し、5×106細胞/mlの濃度で電気穿孔緩衝液中で再懸濁させた。次に、8×105細胞を含む80μlの最終体積で0.5〜6.0μMのNef27又はNef25と細胞を混合し、氷上で10分間インキュベートした。その後細胞を電気穿孔し、氷温のPBSで2度洗浄し、補足されたRPMI 1640培地を用いてインキュベートした。対照細胞には、いかなるNef27, Nef25又はBSAもなしで電気穿孔された細胞及び同等のタンパク質濃度でBSAと共に電気穿孔された細胞が含まれていた。さまざまなパラメータをテストした後、Baekon器具での最適な電気穿孔を提供した設定値を、以下のとおり選択した:振幅5kv;パルス周波数、28;バースト時間0.8;サイクル数、10;パルス幅160μ及び緩衝液表面からの電極の距離、1.32mm。電気穿孔の直後にPBMCを上述のとおりPHAで刺激した。
図10は、それぞれNef27又はNef25を電気穿孔されたCEM細胞内で検出されたNef特異的27kDa又は25kDaバンドを示している。組換え型タンパク質(0.75〜1.0μmol)と抗−Nef(15-27)との反応の後に得られたバンド強度は、組換え型タンパク質で電気穿孔された細胞から調製されたリゼイトとの抗体の反応の後に得られたバンド強度と類似していた。このことはすなわち、電気穿孔の間に細胞と接触させられたタンパク質の大部分が細胞によって取り上げられたことを示している。同様に、電気穿孔の後に細胞の中に取込まれたNefタンパク質のレベルは、HIV-1分離株228200での感染から48時間後にMT-2細胞内に検出された量に対応していた(データ示さず)。このことはすなわち、自然に感染した細胞の中で産生されたNefのモル濃度が、電気穿孔を受けた細胞のものと類似しているということを表わしている。
例10間接的免疫螢光検査法による電気穿孔されたHIV Nef25又は27の検出
電気穿孔の直後に、細胞をPBSで2度洗浄し、間接的免疫螢光染色によるHIV-1 Nefの検出のため前処理した。免疫螢光法による検出のためには、スライドガラス上で一滴の細胞懸濁液を空気乾燥させ、室温で10分間、調製したばかりの3.5%のパラホルムアルデヒドで固定させた。固定させた細胞をPBS中で洗浄し、室温で5分間PBS中で0.05%のNonidet P40(BDH Chemicals Ltd, Poole, Dorset)での処理によって透過性あるものにするか、或いは、PBS単独の中で5分間インキュベートした。非特異的結合を減少させるべく染色に先立って加湿したチャンバ内で室温で30分間、細胞を1%のBSA/PBSでインキュベートした。次に細胞を、40℃で一晩加湿されたチャンバの中で、ヒツジ抗−Nef(15-27)(希釈度1:100)、免疫前ヒツジ血清(特異的抗体と同じタンパク質濃度まで希釈されたもの)、mAb NF2B2, mAb AC6, mAb AG11、抗Nef mAb(NEN)又は抗−Nef mAb(ABT)又はマウスモノクローナルイソタイプ対照を用いてインキュベートした。PBSで大規模に洗浄した後、スライドを室温で30分間、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で接合されたロバ抗ヒツジIgG(希釈度1:50;Amersham)又はFITCで接合ヒツジ抗マウスIgG(希釈度1:50、Amersham)を用いて、加湿したチャンバ内でインキュベートさせた。希釈は全て、1%のBSAを含むPBSの中で行なった。488nmの幅狭の帯状ブルーフィルターを用いて、標本を螢光顕微鏡で検査した。
抗−Nef(15-27)を用いた間接的免疫螢光法によるNef27の電気穿孔を受けたMT-2細胞及びPBMCの検査は、電気穿孔の後、細胞のほぼ全ての集団がNef27を含んでいることを示した。同様に、Nef25の電気穿孔を受けたMT-2細胞及びPBMCの100%が抗−Nef(15-27)と反応した時点で強い螢光を示し、電気穿孔の後100%の細胞がNef25を含んでいたことを表わしていた。CEM及びジャーカット細胞の場合でも類似の結果が得られた。Nefに特異的ないくつかの抗体を用いた、透過性をもたされた又はもたされていない両方の細胞の染色を行ない、その結果、タンパク質が細胞表面上にあるのではなくむしろ細胞の内側にあることが確認された。抗−Nef(15-27)と偽電気穿孔された細胞の反応は、バックグラウンド染色とみなされるきわめて低い螢光しか生成せず、かくして、HIV-1 Nefタンパク質に対する抗体の特異性を確認した。Nef27−又はNef25を含む細胞と抗−Nef(15-27)との反応の後に観察された螢光パターンは、分析された全ての細胞型において、両方のタンパク質共原形質膜に卓越して局在化され、細胞内の他の場所にははるかに低い程度にしか存在しないことを示していた。CEM細胞内に取込まれたNefタンパク質の安定性を、電気穿孔後のさまざまな時点で試料を採取することによって検査した。Nef27及びNef25タンパク質は両方共電気穿孔より48時間後でもなお、電気穿孔された細胞内に存在していたが、検出されるタンパク質は少なくなっていた。
mAbs AG11, AE6及び抗−Nef mAb ABT(全てNefのC末端に対し導かれている)での電気穿孔を受けた透過性をもたされたPBMC及びMT-2細胞を検査すると、これらの抗体が透過性をもたされた細胞と反応させられた時点で、電気穿孔を受けた細胞のほぼ100%において卓越して原形質膜でのそしてそれよりはるかに低い程度で細胞質の中での強い螢光染色が実証された。このことはすなわち、これらの集団の中のほぼ全ての細胞が電気穿孔中にNef27又はNef25を取り込んだということを表わしている。テストしたその他のCD4+ve細胞系統についても同じ観察がなされた。NefのN末端に導かれた抗体(NF2B2及び抗−Nef(15-27)ポリクローナル及びモノクローナル抗体)を、Nef27で電気穿孔された透過性をもたされたMT-2細胞又はPBMCと反応させた場合にも、原形質膜にて卓越して発生する類似の螢光染色が観察された。Nef25で電気穿孔されたMT-2細胞及びPBMCと抗−Nef(15-21)(ポリクローナル又はモノクローナル)と反応させた場合にも膜に局在化された強い螢光が観察された。しかしながらNF2B2を細胞と反応させた場合には、有意な螢光染色は全く観察されなかった。AE6, AG11, ABT, NF2B2又は抗−Nef(15-27)のいずれかと偽電気穿孔を受けた細胞を反応させた場合には、低いバックグラウンド螢光のみが観察され、Nefに対する染色反応の特異性を表わしていた。
Nef27又はNef25での電気穿孔を受けた、透過性をもたされていないMT-2細胞又はPBMCと、C末端モノクローナル抗体のいずれかとの反応は、すばらしく低いバックグラウンド染色を与え、Nefタンパク質の少なくともC末端領域が細胞表面に結合されるのではなくむしろ処理済み細胞の内側にあるということを確認していた。しかしながら、Nef27又はNef25での電気穿孔を受けた、透過性をもたされていない細胞と、NefのN末端で導かれた抗体(ポリクローナル及びモノクローナルの両方の抗体である抗−Nef(15-27))との反応は、膜に局在化された強い螢光を示し、Nefタンパク質のN末端領域の細胞表面での露呈を表示していた。透過性をもたされておらず偽電気穿孔を受けた細胞をNefのC末端に対し導かれた抗体と反応させた場合、検出可能な螢光は全く観察されなかった。透過性をもたせる前に細胞膜を横断する抗体の能力についての検査として、染色手順の中にミトコンドリアタンパク質に特異的な抗体を内含させた。ミトコンドリアタンパク質に特異的な螢光染色は、MT-2細胞がNP40処理で透過性をもたされた場合にのみ観察された。ミトコンドリアタンパク質抗体を透過性をもたされていない細胞と反応させた場合、低いバックグラウンド螢光染色のみが観察された。(データ図示せず)。かくしてこの研究において使用された手順のためには、抗体が原形質膜を横断するために透過性をもたせる処理が必要とされるが、この研究中で行なわれているようなパラホルムアルデヒドでの固定は細胞膜の開窓を導くわけではない。
例11細胞表面に局在化されたNefタンパク質のトリプシン分割
Nef27, Nef25で電気穿孔されたか又は上述のとおりに偽電気穿孔されたMT-2細胞(5×106/試料)を、37℃で2分間トリプシン/ヴェルセンの1ml溶液の中で再懸濁させた。このインキュベーション期間の後、細胞を50mlのPBS中で3回大規模に洗浄した。洗浄の後、細胞を5×106細胞/mlの濃度でPBS中で再懸濁させ、スライドガラス上で一滴を空気乾燥させ、上述のとおり固定した。固定の後、細胞をPBS中で大規模に洗浄し、上述のとおり0.05%(体積/体積)のNP40での処理により透過性をもたせるか又は同じ時間中PBS内でインキュベートさせる。上述の通り1%(重量/体積)のBSA/PBS中でインキュベートした後、細胞を4℃で一晩、C末端で導かれたヒツジ抗−Nef(15-27)又はmAb(各々希釈度1:100)を用いてインキュベートさせた。次に細胞を洗浄し、FITCで接合されたロバ抗ヒツジIg又はFITCで接合されたヒツジ抗マウスIg(共に希釈度1:50)と反応させ、上述のとおり螢光顕微鏡を用いて検分した。
透過性をもたされていない電気穿孔を受けた細胞のトリプシン処理は、電気穿孔された細胞と反応するというN末端Nef抗体の能力を完全に破壊した。しかしながらトリプシン処理の後透過性をもたされた細胞とNefのC末端領域に対して導かれた抗体の反応はなおも膜と結びつけられた螢光染色を示していた。
例12大腸菌由来のNef27又はNef25を含む細胞上の細胞表面標識の分析
CD4+ -T細胞、MT-2, CEM及びジャーカット及びPBMC内へのNef27又はNef25タンパク質の取込みの結果として、CD4, CD25, CD2, CD7及びトランスフェリンレセプタ(TFR)のレベルが変動したか否かを見極めるためフローサイトメトリーを用いた。偽電気穿孔を受けた細胞及びBSAでの電気穿孔を受けた細胞も同じく比較を目的として使用した。
細胞表面CD4及びIL-2Rの定量化のため、偽電気穿孔細胞又は電気穿孔された組換え型Nef27, Nef25又はBSAを含む細胞を37℃で48時間、24ウエルのCostarプレート(Nunc)内で、補足されたRPMI 1640の培地中でインキュベートした。電気穿孔から10時間後まで2時間毎に、そして再び電気穿孔から24時間後に細胞の試料を採取した。培養から収穫した時点で細胞を一度PBSで洗浄し、氷上で1時間、フルオロセインイソチオシアネートでコンジュゲートされた抗−CD4(Leu 3a+Leu 3b)、−抗−CD25、−抗トランスフェリンレセプター(TFR)、−抗−CD2又は−抗−CD7抗体(全てBecton Dickinson, San Jose, CAからのもの)のいずれか及び適切なイソタイプ対照を用いてインキュベートした。このインキュベーション期間の後、細胞を2回PBS中で洗浄し室温で10分間3.5%のパラホルムアルデヒドで固定させた。ひきつづき細胞をFacstar Plus(Becton Dickinson, San Jose, CA)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。
偽電気穿孔されたか又はBSAでの電気穿孔を受けたMT-2, CEM及びジャーカット細胞と抗−CD4、抗−TFR及び抗−CD7の反応後に、強い特異的螢光染色が得られた。抗−CD4又は適切なイソタイプ対照との反応後のMT-2細胞を示す代表的結果が、図11Aに示されている。偽電気穿孔されたか又はBSAで電気穿孔されたPBMCと抗−CD4又は抗−CD2との反応後に強い螢光染色が得られた。抗−CD4又はイソタイプ対照モノクローナル抗体との反応後のPBMCを示す結果が、図11Bに記されている。これらの表面分子の発現レベルは、電気穿孔を受けなかった対照細胞におけるものと比較できるものであり、これは電気穿孔プロセスがこれらの細胞表面抗原の発現を変えなかったことを表わしている。同様にして、偽電気穿孔を受けたか又はBSAで電気穿孔されたMT-2細胞又はPHA活性化されたPBMCと抗−CD25との反応の後には、表面に局在化された強い螢光が得られた(図11C及び11D)。
対照細胞とは対照的に、HIV-1 Nef27を含むMT-2, CEM及びジャーカット細胞及びPBMCは、細胞表面CD4の発現の減少を示した。各々のCD4+細胞系統及びPBMC内の表面CD4のレベルは、電気穿孔より24時間後に30〜50%だけ減少した(図11A及び11B)。T細胞系統集団内の全ての細胞及びPBMC集団内の全てのCD4+細胞は著しく減少したCD4表面発現を示した(P<0.001、スチューデントのt検定)。かくして、Nef27を含む全てのT細胞は、著しく減少した表面CD4レベルを示した。標準的な実験においては、偽電気穿孔されたか又はBSAで電気穿孔されその後電気穿孔より24時間後に抗−CD4と反応させられたPBMCのフローサイトメトリー分析は、42という平均螢光強度のまわりに分布した40%のCD4+ T細胞を示した。これとは対照的に、電気穿孔の後Nef27を含んでいたCD4+ PBMCは、抗−CD4との反応後、21という平均螢光強度で単一の螢光ピークを示した。比較のため、Nef27, BSAで電気穿孔されたか又は偽電気穿孔されたPBMCとイソタイプ対照との反応後に得られた螢光染色は、7という平均螢光強度のまわりに分布していた。これらの細胞の表面上のCD2, TFR及びCD7のレベルは、HIV-1 Nef27の存在によって影響されなかった。
HIV-1 Nef27, HIV-1 Nef25, BSAで電気穿孔を受けたMT-2細胞又は偽電気穿孔を受けた細胞の中の細胞表面TFR及びIL-2Rの発現が図12に示されている。Nef27タンパク質を含むMT-2細胞及びPHAで活性化されたPBMCも又IL-2Rの発現の著しい減少を示した。この研究で用いられたその他のT4細胞系統は構成的に非常に低いレベルのIL-2Rしか発現しないことから、これらの細胞中のIL-2Rの発現に対するHIV-1 Nef27の効果は検討されなかった。偽電気穿孔又はBSAでの電気穿孔を受けたMT-2細胞の場合、平均90のまわりに分布した単一の螢光ピークが、抗−CD25との細胞の反応の後に得られた。比較すると、電気穿孔より24時間後に、Nef27を含んだMT-2細胞と抗−CD25の反応の後に得られた螢光ピークは、10という平均螢光のまわりに分布していた(図11C及び11D)。この螢光染色のレベルは、細胞とのイソタイプ対照の反応後に生成されたものと類似しており、これは、Nef27の存在によってIL-2Rの発現がバックグラウンドレベルまで減少したということを表わしている。MT-2集団内の全ての細胞は、減少したIL-2R発現を示した(図11C)。PHAで活性化されたPBMCの場合、IL-2R陽性細胞の百分率は、これらの細胞内へのNef27の電気穿孔から24時間後に19%から4%まで減少した(図11b)。ここでも又、TFR, CD2及びCD7の発現は、これらの細胞内へのNef27の取込みによる影響を受けなかった。
例13Nef25はCD4又はIL-2Rの発現をダウンレギュレートしない。
表面CD4及びIL-2Rの発現に対するNef25の効果を調査するため、Nef25も又さまざまなT細胞系統及びPBMCの中に電気穿孔させた。驚くべきことに、Nef25で電気穿孔されたCEM, MT-2及びジャーカット細胞及びPBMCは、表面CD4の正常な発現を示した(図11A及び11B)。Nef25含有細胞と抗−CD4との反応後に得られた螢光染色は、螢光強度の点で、抗体と対照細胞(偽電気穿孔又はBSA電気穿孔された細胞)との反応後に得られたものと類似していた(図11A及び11B)。同様にして、Nef25は、MT-2細胞又はPHA刺激を受けたPBMCの発現に対して全く影響を及ぼさなかった(図11C及び11D。Nef25を含むMT-2細胞又はPHA活性化されたPBMCと抗−CD25の反応の後の螢光染色は、対照細胞で得られたものと類似していた。従って、Nef25ではなくHIV-1 Nef27が、さまざまなT細胞系統及びPBMCの中でCD4及びIL-2Rの発現のダウンレギュレーションをひき起こす。
例14HIV-1 Nef27によるCD4及びIL-2Rダウンレギュレーションの時間的経過
電気穿孔の後さまざまな時間でNef27, Nef25を含むMT-2細胞又は偽電気穿孔されたMT-2細胞を収穫すると、細胞内へのNef27の取込みの結果としての表面CD4及びIL-2Rの発現の減少が電気穿孔から8〜10時間後に起こり始めることがわかった。電気穿孔から0時間、2時間、4時間及び6時間後に収穫されたNef27を含む細胞の試料は、表面CD4及びIL-2Rのレベルが対照細胞内で発現されたものに類似していることを示していた。しかしながら、電気穿孔から8〜10時間後に、CD4及びIL-2Rのレベルはそれぞれ約10%及び30%だけ減少した。電気穿孔から24時間後には、表面CD4又はIL-2Rの発現にそれ以上の減少は全く見られなかった。
例15HIV-1 Nef27によるCD4及びIL-2Rのダウンレギュレーションは用量依存性をもつ。
表面CD4及びIL-2Rの発現に対するNef27の効果がNef27タンパク質の量に依存しているか否かを調査するため、CEM及びMT-2細胞をさまざまな濃度のNef27又はNef25タンパク質で電気穿孔した。電気穿孔から24時間後に、ひきつづきCD4及びIL-2R細胞表面発現に対するこれらのタンパク質の効果を測定した。0.1〜3.0μmolのNefでのCEM及びMT-2細胞の電気穿孔は、CEM細胞の場合にはCD4の発現に対する、又MT-2細胞の場合にはCD4とIL-2Rの両方の発現に対する用量依存性の効果を示した。電気穿孔のために3.0μmolのNef27が用いられた場合に、CD4及びIL-2Rのダウンレギュレーションレベルが最高であった。このため、CEM細胞内の表面CD4の50%削減及びMT-2細胞内のほぼバックグラウンドレベル近くまでのIL-2Rの減少が結果としてもたらされた。CEM及びMT-2細胞内の細胞表面CD4及びIL-2Rの発現に対する負の調節効果は、電気穿孔のために0.1μmolのNef27タンパク質が使用された場合になおも観察された。この場合、CEM及びMT-2細胞内の表面CD4及びIL-2R発現の約6%(CEM細胞内のCD4)及び13%(MT-2細胞内のIL-2R)の減少が観察された。
例16インビトロでのNefに対する細胞タンパク質の結合
MT-2細胞又はPHAで活性化されたPBMC(3×107細胞/試料)をPBS中で2度洗浄し、細胞溶解緩衝液(0.5%v/vのNonidet-P40、0.5%w/vのデオキシコール酸ナトリウム塩、50mMのNaCl、25mMのトリス/HCl、10mMのEDTA、5mMのベンズアミジン/HCl、n−プロパノール中の10mMのフッ化フェニルメチルスルフォニル及び0.01%w/vのアジ化ナトリウム、pH8.0)300μlの中で再懸濁させ、5分間氷上でインキュベートした。このインキュベーション期間の後、細胞リゼイトを10分間12000gで遠心分離させ、細胞質抽出物を回収した。次に、細胞質画分を、10分間4℃でpH7.5のトリス緩衝生理食塩水(TBS)の中で50%のグルタチオンセファロース4Bスラリー(Pharmacia, Uppsala, Sweden)50μlを用いたインキュベーションによって予備透明化させた。2分間12000gで遠心分離させた後、上清を除去し、3本の1.5ml入り円錐管(Eppendorf, ドイツ)に分割して取り、グルタチオン(GST;5μg/試料)、GST-Nef27又はGST-Nef25(5μg/試料)又はTBSを付加した。その後細胞上清及び付加したタンパク質を4℃で一晩一緒にインキュベートした。翌日、50μlの50%のグルタチオンセファロースビーズスラリーを各々の管に付加し、室温で30分間連続撹拌しながらインキュベートした。その後、12000gで2分間遠心分離によりセファロースをペレット化させる前に15分間水上で懸濁液を冷却させた。グルタチオンセファロースビーズを、0.05%(v/v)のNP40を含む1mlの氷温TBSで3回洗浄した。結合したタンパク質を、室温で10分間、20μlの10mMグルタチオンを用いたセファロースビーズのインキュベーションによって溶出させた。遠心分離の後、上清を除去し、保管し、溶出ステップを2回繰返した。次に13%のポリアクリルアミドゲル上で、溶出された材料のアリコート(20μl)を電気泳動し、分離した材料を銀染色によって検出するか又は、Hybond C-Superニトロセルロース(Amersham, UK)に移送させ、p56lck又はCD4と反応性をもつ抗体で免疫ブロットした。
GST-Nef融合タンパク質を細胞リゼイトでインキュベートした時、MT-2細胞及びPHAで活性化されたPBMCから調製されたリゼイトから、多くのタンパク質が沈殿した。MT-2細胞リゼイトから沈殿したタンパク質はサイズが約24, 27, 32, 36, 45, 50, 56、及び75kDaであったが、一方GST-Nef27と相互作用することがわかったPHAで活性化されたPBMCから調製されたタンパク質は、27, 28, 30, 32, 36, 56, 60及び75kDaのものであった(それぞれ図13a及び13b)。結合抗原としてGST-Nef25が使用された場合、PHA活性化PBMCから調製されたリゼイトから約27, 28及び56kDaのタンパク質が沈殿した(図13c)。GSTを予め透明化されたリゼイトを用いてインキュベートした場合にはつねに、検出可能なタンパク質が全く沈殿しなかった。同様に、グルタチオン−セファロースビーズ単独との相互作用によってはいかなる検出可能なタンパク質も沈殿せず、これは、GST-Nef27及びGST-Nef25で沈殿したタンパク質がNefタンパク質と特異的相互作用を形成させることを表わしていた。
Nefとこれらの細胞タンパク質の相互作用の特異性をさらに確認するため、予め透明化されたPBMC及びMT-2細胞リゼイトのアリコートに対して組換え型Nef27又はNef25を付加した。外因性Nefの付加により、GST-Nef27又はGST-Nef25に対する各々のタンパク質の結合を著しく阻害することができた(データ示さず)。
例17GST-Nef27及びGST-Nef25に対する細胞タンパク質結合の同定
GST-Nef27及びGST-Nef25と相互作用する細胞タンパク質のいくつかを同定するため、MT-2細胞及びPHA活性化PBMCから調製されたGST-Nef27及びGST-Nef25沈殿物を13%のポリアクリルアミドゲルの中で電気泳動させ、その後Hybond-C Superニトロセルロースに移送し、抗−p56lck又は抗−CD4でプローブ探査した。GST-Nef27で沈殿したMT-2及びPHA活性化PBMCの細胞タンパク質と抗−p56lckの反応は、p56lckがMT-2−細胞及びPBMC-GST-Nef27沈殿物から調製された沈殿物の中の一成分であることを示した(それぞれ図14a及び14b)。p56lckは、56kDaとして同定されているタンパク質を代表する確率が最も高い。さらに、PHA活性化PBMC細胞タンパク質沈殿物を抗−p56lckでプローブ探査した時点で、p56lckの60kDのリン酸化されたイソ型タンパク質も存在するものとして同定された(図14b)。おそらくはPBMCの中に存在するレベルと比べてMT-2細胞内に存在するリン酸化された形態が少量であったことから、MT-2細胞リゼイトから沈殿された細胞タンパク質の中ではp56lckの60kDaのイソ型タンパク質は同定されなかった(データ示さず)。p56lckを認識する2つのその他の抗体を用いることによって、抗−p56lckとの反応の特異性を確認した。GST-Nef27で沈殿したMT-2及びPBMC細胞タンパク質と抗CD4との反応は、同様に、CD4がMT-2細胞及びPBMCの両方から調製された沈殿物の中に存在することをも示した(図15)。GST-Nef25を用いてMT-2細胞又はPBMCから沈殿させた細胞タンパク質をウエスタン免疫ブロット法の中で抗−p56lck又は抗−CD4のいずれかと反応させた場合、いずれのタンパク質も検出可能なレベルで存在しないことがわかった(データ示さず)。
図18Nef含有PBMC内のT細胞活性化
以前に記述された通り(45)、細胞DNA内への〔3H〕−チミジンの取込みを測定することにより、成長因子依存型DNA合成を見極めた。簡単に言うと上述のようにNef25, Nef25で電気穿孔されたか又は偽電気穿孔されたPHA活性化PBMC(1×106/ml)を24時間培地中でインキュベートし、次に10, 30又は100IU/ml(106細胞/試料の3組の試料)でIL-2(Boehringer Manheim, ドイツ)を用いて刺激した。培養状態に24時間おいた後、細胞を16時間〔3H〕−チミジン(5μCi/ml)を用いてパルス標識づけし、液体シンチレーションカウンタによりDNA内への放射能の取込みを測定した。各試料を2回ずつ同じ検定に付した。提示した値は、3回の実験についての平均±S.D.である。
BSAで電気穿孔されたか又は偽電気穿孔されたPHA活性化PBMCのIL-2増殖性応答は、IL-2の濃度と並行して増大した。結果は図16に示されている。IL-2で処理された対照細胞は、偽電気穿孔された又はBSAで電気穿孔されたPBMCと類似の量の〔3H〕−チミジンを取込んでいたことから、電気穿孔によって増殖が著しく変化することはなかった。これとは対照的に、IL-2での刺激の前のPHA活性化PBMC内へのNef27の取込みは、IL-2に対するこれらの細胞の増殖性応答を劇的に減少させた。同様にNef25で処理された細胞もIL-2に対する増殖性応答の減少を示した;しかしながら効果は、Nef27で観察されたものほど大きくなかった。
例19Nef処理されたジャーカット細胞内のLckの局在化
p56lckは、それぞれそのN末端及びC末端領域を通してCD4及びIL-2の両方のレセプタの細胞質ドメインと結びつけられるものであることが示された(46, 47)、IL-2の刺激に応答しての細胞増殖及びp56lckのリン酸化に対するNef27の阻害効果は、Nefとp56lckの相互作用の直接的結果でありうる。lckの細胞分布に対するNefの考えられる効果を調査する目的で、電気穿孔の直後そして電気穿孔から24時間後に再び、Nef27-, Nef25-, BSA-で電気穿孔された及び偽電気穿孔されたジャーカット細胞について、抗−p56lckを用いた間接免疫螢光研究が行なわれた。ジャーカット細胞は比較的高いレベルのp56lckを発現することから、これらの位置設定研究のために選ばれたのである。ジャーカット細胞を、組換え型Nef27, Nef25で電気穿孔するか又は偽電気穿孔し、37℃で最高24時間、補足されたRPMI 1640培地内でインキュベートした。電気穿孔から0時間、10時間及び24時間後細胞を収穫し、PBS中で2度洗浄し、細胞懸濁液を1滴(5×106細胞/ml)、スライドガラス上へと空気乾燥させ、室温で10分間3.5%のパラホルムアルデヒド内で固定させた。1%の子ウシ胎児血清で遮断した後、抗−p56lckで細胞を、4℃で一晩、1:100に希釈した抗−p56lckを用いてインキュベートした。対照として、細胞を、同じ時間だけ正常なウサギ血清を用いてインキュベートした。翌日、PBS中でスライドを3回洗浄し、室温で1時間、抗ウサギ接合TRITC Ig 2次抗体(Silenus, 希釈度1:50)を用いてインキュベートした。PBS中で洗浄した後、従来の螢光顕微鏡検査法を用いてスライドを検分した。p56lckに対し特異的な卓越して膜に関連した螢光が、電気穿孔直後に抗−p56lckと細胞を反応させた場合に偽電気穿孔及びBSA電気穿孔を受けたジャーカット細胞内に観察された。同様に、Nef27又はNef25で電気穿孔された細胞も、電気穿孔直後に抗−p56lckと反応させられた時点で、卓越して膜に関連した強い螢光を示した。電気穿孔から24時間後に電気穿孔を受けた細胞を分析すると、偽電気穿孔及びBSA電気穿孔を受けた細胞はなおも膜に局在化された強い螢光を示した。これとは直接対照的に、Nef27で電気穿孔されたジャーカット細胞は、対照時間と比べて低い強度の散在性の螢光染色を示した。Nef25で処理されたジャーカット細胞も同様に、抗−p56lckと反応させられたとき、膜に関連した螢光の低下を示した。ただしその効果は、Nef27で処理されたジャーカット細胞内で観察されるほど顕著ではなかった。
例20p56 lck のIL-2依存型及びPMA誘発されたリン酸化はNef27で処理されたPBMC内で阻害される。
高い親和力のIL-2R複合体を発現するT細胞へのIL-2の付加は、結果として増殖性刺激の伝達をもたらす。益々増えていく証拠から、チロシンタンパク質キナーゼ及びセリン/トレオニンタンパク質キナーゼがIL-2依存型増殖性シグナルに関与していることが示唆されている(48)。実際、p56lckチロシンキナーゼ活性はIL-2付加の後に急速に刺激され、ひきつづきIL-2依存型セリン/トレオニンリン酸化の修正を受け、その結果、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるp56lckタンパク質の移動度の遅延がもたらさせる(18)。IL-2に応答してのp56lckのリン酸化の変化は、Nef27, Nef25で電気穿孔された又は偽電気穿孔されたPBMCの中で評価された。電気穿孔されたPBMC又は対照PBMCを、増大する時間中IL-2で処理させた。フィコール−パーク密度遠心分離により正常な成人からヒトPBMCを分離した。3日間PHA(10μg/106細胞)の存在下で10%の子ウシ胎児血清で補足されたRPMI 1640培地中で細胞を培養した。次に、24時間、補足されたRPMI 1640培地内でPHA活性化PBMCをインキュベートし、上述の通りNef27, Nef25で電気穿孔するか又は偽電気穿孔した。IL-2の低レベル産生を減少させるべくさらに24時間培地中でインキュベートした後、細胞を収穫し、3回洗浄し、次に0分、15分及び30分間、組換え型IL-2(Boehringer Mannheim)1000IUを用いてインキュベートさせた。インキュベーションの後、細胞を溶解させ、抗−p56lckでの免疫ブロット法によりp56lckのリン酸化形態の存在について分析した。フォルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)によるPBMCの活性化のため、細胞を上述のとおり偽電気穿孔するか又はNef27, Nef25, BSAで電気穿孔させ、24時間37℃でインキュベートし、次に37℃で4時間PMA(20ng/ml)で刺激し、この時間の経過後、細胞を収穫して抗−p56lckで免疫ブロット法のために前処理した。結果は図17に示されている。対照PBMCに対してIL-2を付加すると、p56lckの一部分の電気泳動移動度が減少する結果となった。p56lckの比較的緩慢に移動する種は、PBMCのPMA処理後に誘発されたp56lckの移動度の変化した種と共に同時移動することがわかった(データ示さず)。同様に、偽電気穿孔されたPBMCに対しIL-2を付加すると、p56lckの一部分がそのp60イソ型タンパク質に変換されることになった。しかしながら、Nef27で電気穿孔されたPBMCに対するIL-2の付加はp56lckの電気泳動移動度の低下を結果としてもたらさなかった。30分間IL-2を用いてNef27処理された細胞をインキュベートした後でさえ、p56lckの電気泳動移動度における検出可能なシフトは全くみられず、これはNef27が、恐らくはp56lck遺伝子産物のリン酸化の原因であるセリン/トレオニンキナーゼの阻害によってか又は直接p56lckとの物理的結びつきによって、IL-2依存型のシグナリングを阻害したということを表わしている(図16参照)。これとは対照的に、p56lck及びp60lckの両方のイソ型タンパク質が共にIL-2処理の後Nef25含有PBMCの中で検出されたことから、Nef25はIL-2処理に応答してp56lckの変性に対する検出可能な効果を全くもっていなかった(図17)。
フォルボールエステルPMAは、T細胞内でタンパク質キナーゼc(pkc)の活性化を誘発する。p56lckを含むいくつかの細胞タンパク質が、pkc活性化の結果としてセリン/トレオニン残基上でリン酸化される。Nef27でのPBMCの処理も又、図18に示されている通りPMA処理に応答してのp56lckのリン酸化を阻害した。Nef25で処理されたPBMC内では阻害効果は全くみられなかった。同様に、BSAでのPBMCの電気穿孔又は細胞の偽電気穿孔は、PMA処理に応答してのp56lckのリン酸化に対していかなる効果ももたなかった。
例21Nef処理されたMT-2細胞内のc-Mybの発現
核オンコプロテインMybは、細胞サイクルのG0/G1相から早期S相までの細胞の遷移のために必要とされ、造血細胞の細胞成長及び分化の重要な調節因子であると考えられている。その上、CD4遺伝子の発現にはMyb転写因子が必要である。Nef27, Nef25で電気穿孔されたか又は偽電気穿孔されたMT-2細胞の中で、抗c-Mybを用いたウエスタンブロット法によって、c-Mybタンパク質のレベルを調査した。中間対数増殖相の間に収穫したMT-2細胞をPBS中で2度洗浄し、上述の通り、組換え型Nef27, Nef25, BSAで電気穿孔するか又は偽電気穿孔した。電気穿孔の後、PBS中で細胞を2回洗浄し、補足されたRPMI中で1×106の細胞濃度で再懸濁させ、37℃で24時間インキュベートさせた。インキュベーション期間の後、細胞をPBSの中で再び洗浄し、次に108細胞/mlの濃度で細胞溶解緩衝液中で再懸濁させ、10分間氷上でインキュベートした。12000gで10分間の遠心分離により細胞質抽出物を回収した。2×106細胞に対応する細胞リゼイトを、13%のポリアクリルアミドゲル中で電気泳動させ、Hybond C-Superニトロセルロースに移し、1:1000に希釈した抗−c-mybで免疫ブロットした(49)。0.05%(v/v)のTween 20を含むPBS中での洗浄の後、フィルターを1:1000で希釈した抗ウサギ−ビオチニル化Ig(Amersham)を用いて室温で1時間インキュベートさせた。次に、さらに洗浄した後でストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(希釈度1:1000;Amersham)を用いてフィルターをインキュベートし、基質として1, 4−ジクロロナフトールを用いてシグナルを検出した。結果は図19に示されている。c-Mybのレベルは、細胞の電気穿孔による影響を受けなかった。しかしながら、MT-2細胞内へのNef27及びNef25の導入は、ウエスタン免疫ブロット法によって決定される通り、c-Mybのレベルを著しく減少させた。
インビボでのHIV-1による感染のため、ヒトCD4+ T−リンパ球がその一次標的を形成している(16)。HIV感染患者からの細胞は、無症候性からエイズへの進行に関係しうる異常な免疫応答性を示す(28)。nef遺伝子は、HIV-1, HIV-2及びSIVの大部分の菌株の中に存在する(29)。
HIV-1 nef遺伝子産物が正常な細胞の機能に影響を及ぼすか否かをテストするため、我々は、それぞれ第1及び第2の開始コドンから翻訳された組換え型Nef27及びNef25タンパク質をさまざまなCD4+ T細胞内に導入した。Nef27又はNef25のいずれかを含む細胞を、抗原認識、シグナル形質導入及び正常な免疫応答の発達に関与する細胞表面分子に対するNefの効果について、対照細胞と比較した。初めて、免疫組織化学技法を用いて、我々は、Nef25ではなくHIV-1 Nef27が、用量依存的にさまざまなT細胞系統及びPBMCにおいて細胞表面のCD4及びIL-2Rの特異的ダウンレギュレーションをひき起こすことを示してきた。その他の細胞表面抗原についてはいかなる効果も検出されなかった。適切に制御された実験において電界電気穿孔法により細胞膜を横断して高度に精製された組換え型HIV-1 Nefタンパク質を移送するという新しいアプローチは、測定された特性がNefタンパク質のみに起因するものであるとすることができるということを保証している。Nef27の用量依存型効果は、完全な阻害活性にとってNef27の量が重要でありうることを示唆している。この研究において使用されたNefタンパク質の量はインビトロでのHIV-1感染の経過中に産生されたものに対応するが、一方卓越して原形質膜に電気穿孔を受けた組換え型Nefタンパク質が局在化されていることをは、天然に発生するNefが感染中に細胞膜に局在化されるということを示す諸々の研究と一致している。
Nef27によるCD4表面発現のダウンレギュレーションを示す我々の結果は、Nef発現ベクターでのトランスフェクションを受けた細胞内のCD4のダウンレギュレーションの初期報告(20, 21)を決定的に確認するものである。Guy et al.(20)は、HIV-1BRU Nefタンパク質を発現するCEM細胞内のCD4のダウンレギュレーションを観察した。同様に、Garcia及びMiller(21)は、HIV-1SF2 Nefでのトランスフェクションを受けたT−, B−、及びマクロファージ−T細胞におけるCD4ダウンレギュレーションを報告した。しかしながら、Gama Sosa et al(23)がプラスミドだけでの細胞のトランスフェクションによるCD4のダウンレギュレーションを報告していることから、これらの観察事実を実証することが不可欠であった。
インビボHIV-1感染の免疫疾患への進行は、末梢血系からのCD4+ T−細胞集団の枯渇及びPHAでの刺激の後でさえPBMCによる細胞IL-2Rの発現が減少していることによって特徴づけられる(28, 30, 31, 32)。これに対応して、我々の研究室におけるHIV-1分離株228200でのMT-2細胞の感染も同様にこれらの細胞内での表面に局在化されたCD4及びIL-2Rの発現の減少という結果をもたらしている。HIV-1に対する主要なレセプタとしての役割のほかに、CD4は、MHCクラスのタンパク質の情況下での抗原の結合を通して、抗原反応性T細胞のクローン拡大で完結するシグナル形質導入経路、及び免疫応答の発達に関与するその他の造血細胞の効率の良い動員に、密に関与している。
T細胞系統ただし最も重要にはPBMC内での表面CD4及びIL-2RのNefタンパク質によるダウンレギュレーションは、疾病へのHIV-1感染の進行に特に関連している可能性がある。高い親和力のIL-2Rsの形成は、T細胞レセプタを通しての刺激に続く充分に裏づけされた応答である(34)。T細胞レセプタに対する抗原の提供が細胞内のシグナリングを開始させ、これがひきつづき、IL-2を含むさまざまな遺伝子の転写活性化を導く。高親和力のIL-2Rに対するIL-2の結合は、抗原反応性細胞の細胞分裂及びクローン拡大にとって必要なものである(34, 35)。HIV-1 Nef27によるIL-2Rの発現の減少は、IL-2/IL-2Rの自己分泌経路の外乱を通してのIL-2遺伝子発現のNefによる阻害に結びつけることができる。代替的には、T細胞中のIL-2R発現の減少は、NFkBタンパク質結合活性のレベル低下の結果であるかもしれない。
Taxタンパク質によるIL-2R−アルファ遺伝子の発現の活性化が、同一でないにせよNFkBと類似した物性をもつ宿主転写因子との相互作用又はその活性化を通して起こるような、HTLV-1 tax遺伝子産物によるIL-2R遺伝子発現の調節について報告されている(36, 37)。さらに、nefでのトランスフェクションを受けた細胞内で、NFkBタンパク質結合能力の減少が観察された(14)。Nefによる細胞表面CD4及びIL-2Rの発現におけるダウンレギュレーションは、相互に排他的な事象を表わしているのかもしれない。
あるいは、本研究にはsrcタンパク質チロシンキナーゼp56lckの発現又は活性化の変調におけるNef27が関わりあっている可能性がある。CD4はp56lckと密に関連づけられるものとして知られている(19)。ヒトCD4のフォルボールエステルで誘発される変調には、レセプタからのp56lckの解離が付随し、一方、蓄積された証拠によるとp56lckはIL-2とIL-2Rの相互作用に続くシグナル形質導入に関与しているということが示唆されている(18, 38)。HIV-1感染の間のNefの発現はp56lckを介して細胞間シグナルを変調させることができる。このシグナル形質導入経路の混乱は、インビトロ及びインビボの両方においてウイルスの存続及び広がりにとって有利であり、T細胞集団の消滅を結果としてもたらし得る。
我々の結果は、HIV-1 Nef27とNef25の間の活性の根本的な相違も強調した。Nef27はCD4及びIL-2Rの両方の特異的ダウンレギュレーションをひき起こす一方、Nef25はこれらの表面抗原のいずれの細胞表面発現にも影響を及ぼさない。電気穿孔されたNef27及びNef25の免疫螢光検出は、両方のタンパク質について局在化が卓越して原形質膜にあることを示した。このことはすなわち、活性の差異が2つのNef種の局在化の変動の結果ではないということを表わしている。しかし、Nef27及びNef25について観察された生物学的活性の差異は、Nefの機能的ドメインがタンパク質のN末端にあることを示唆している。代替的には、最初の19のアミノ酸の欠失がタンパク質のコンホーメーションを変え、正常な活性が完全に破壊される可能性がある。いずれの場合でも、この19のアミノ酸の配列はNefの生物学的機能にとって不可欠であると思われる。
HIV-1感染中におよそMr27及び25というNefの2つの種の発現レベルの変動が存在するということが以前に示されてきた(13, 40)が、小さい方の種が内部初発、早期終結又はタンパク質分解性分割のいずれの結果としてもたらされるのかについてはわかっていない。Nef25がインビボでNef27のC末端でのタンパク質分解による分割又はnef遺伝子の3′末端の欠失によって発生するならば、それは本書で記述してきたNef25とは異なる分子となることだろう。いずれにせよ、高レベルのNef25を産生するウイルスの下位集団についての選択が存在するということは可能である。というのもこのタンパク質は、細胞増殖と干渉するウイルスタンパク質の阻害物質として作用するからである。拮抗性調節タンパク質をコードするウイルスの先例は存在する。ウシ乳頭腫ウイルスE2読取り枠及びアデノウイルスEIA領域は両方共、2つの拮抗性調節タンパク質をコードする(41, 42)。各々の場合において、拮抗性タンパク質は、カルボキシル末端配列を共有している。従って、Nef25がNef27の天然の競合物質であり、このタンパク質の負の効果を調節する可能性があるということはもっともらしいことである。この考えが現在追求されつつある。
我々の結果は、Nef25ではなくNef27がさまざまなCD4+ T細胞系統及びPHA活性化PBMCの中での細胞表面にある。CD4及びIL-2Rの発現の減少をひき起こすということを明確に示した。我々は又、HIV-1 Nef27そしてそれよりは低いレベルでHIV-1 Nef25がIL-2及びマイトジェンPHAに対するPBMCの増殖性応答を阻害するということも実証した。NefでのPBMCの処理は、結果として、src系統群キナーゼp56lckのIL-2依存性のPMAの活性化/リン酸化の阻害をもたらした。ジャーカット細胞内のp56lckの膜局在化は、Nef27による処理そしてそれよりは低いレベルでNef25による処理によって分断されたが、一方HTLV-1形質転換細胞系統MT-2内へのNef27及びNef25の電気穿孔は、プロトオンコジーン(ガン原遺伝子)c-Mybの発現を劇的に減少させた。結合抗原としてGST-Nef27を用いた沈殿研究は、p56/p60lck及びCD4として同定されたもの2つを含むいくつかの細胞タンパク質とNefが特異的に相互作用することを示した。電気穿孔された細胞とHIV-1感染を受けたMT-2細胞の両方におけるNefの局在化は、Nefが原形質膜と密に結びついており、このためNefのN末端の一部分は細胞外マトリックスに露呈されているということを示している。抗原の認識及び細胞シグナリングにとって重要なものをいくつか含む数多くのタンパク質との相互作用と合わせて、Nefの配向は、正常な細胞活性化/増殖経路を混乱させる上でNefが複雑な役割を果たしていることを示唆している。
Nef27とNef25の間の活性の差異は、Nefの機能的ドメインがタンパク質のN末端にあるということを表わしている可能性がある。代替的には、最初の19のアミノ酸残基の欠失がタンパク質の全体的コンホーメーションに影響を与え、検出可能な生物学的活性(本書に記述されている生物学的活性として定義づけられる)が影響を受けることになる可能性も考えられる。本研究の中でのNef活性のさらに詳しい調査は、Nef25がNef27と類似の活性を有するもののNef25の効果はNef27について観察された効果ほど有意なものでないということを示している。従って、我々の実験において規定されている通り、完全な活性のためにはNefタンパク質の最初の20のアミノ酸残基が必要とされる。最近の報告書(50)では、HIV-1 LTRのトランス作用のためにはnefの最初の35のアミノ酸残基が必要とされることが示されており、NefのN末端が完全な生物学的活性にとって不可欠であるという概念を裏づけている。
我々は、Nefと特異的に相互作用する細胞タンパク質を同定するため親和力試薬としてE. coliが発現したGST-Nef27及びGST-Nef25融合タンパク質を使用した。PBMC(PHA活性化された)及びMT-2細胞から調製された細胞質抽出物からの多くのタンパク質がNefに特異的に相互作用するものとして同定された。親和力試薬としてGST-Nef27が使用された場合にMT-2細胞から沈殿したタンパク質は、24, 27, 32, 36, 45, 50, 56及び75kDaのものであった。PBMCのリゼイト内でも対応するタンパク質が同定されたが、24kDaの種が不在であり、一方28及び60kDaの種がPBMCの調製物のみの中で検出可能なレベルで存在していた。2つのタンパク質はリゼイトからp56/60lck及びCD4であるものとして同定された。GST-Nefでの一定数のタンパク質の沈殿は、これらのタンパク質のいくつかについての間接的相互作用を表わしている。CD4及びlckとNefの相互作用がこれらのタンパク質のいずれかに対するNefの直接的結合の結果であるか又はその他の未同定のタンパク質との相互作用の結果であるかはわかっていない。親和力試薬としてバキュロウイルスで発現されたnef GST融合タンパク質を用いる最近の研究は、ジャーカット細胞の細胞質抽出物から一定数のタンパク質を同定した(27)。これらのタンパク質p280, p32及びp28のいくつかは、Nefのミリストイル化形態にのみ結合した。我々の研究では、p32及びp28タンパク質も同定されたがNefのミリストイル化されていない形態に結合した。
p56lckとCD4のGST-Nef27による沈殿は、これらのタンパク質と直接的又は間接的に結合することによってNefがシグナリング経路を外乱させる可能性があることを示唆している。実際、Nefは、これらのタンパク質の正常な局在化を分断し、細胞活性化の外乱を結果としてもたらす可能性がある。我々はNef27でのジャーカット細胞の処理の後そしてそれよりは低いレベルでNef25での処理の後、lckの膜局在化が分断されることを示してきた。Nef27/Nef25で処理された細胞内のlckに対する螢光染色は、本質的により散在性のものであり、膜から離れるようなタンパク質の動きを示唆している。TCR/CD3複合体とCD4又はCD8を架橋結合させることにより、TCR/CD3複合体単独の架橋結合に比べてT細胞の刺激が著しく増強されるということが詳細に示されてきた(51)。CD4とのp56lckの結びつきはT細胞刺激の後のTCR/CD3複合体とのCD4の同時局在化にとって重要であるが、一方CD4とTCR/CD3複合体の間の結びつきのp56lck依存型の損失は、CD4依存型の抗原応答性の低下を結果としてもたらす。かくしてp56lckは、T細胞刺激において数多くの役割を果たすと思われ(52)、直接的又は間接的なlckに対するNefの結合及び/又はp56lckの膜との結びつきの外乱は、T細胞の反応性を大幅に損う可能性がある。
IL-2は、造血細胞の増殖及び分化を調節する上で中枢の役割をもつ。IL-2は、細胞表面上の特異的レセプタの結合を通してその生物学的効果を及ぼす。Nef27でのPBMCの処理は、〔3H〕チミジンの取り込みによって判断されるとおり、IL-2に対するその増殖性応答を阻害した。Nef25によるPBMCの処理も同様に、IL-2に応答するその能力を低減させた。しかしながら、Nef25の負の効果は、Nef27で観察されたほど大きくはなかった。T−リンパ球増殖の誘発は、プロトオンコジーンc-mybを含む数多くの遺伝子の活性化を含め多数の事象によって左右される。複数の研究が、Tリンパ球増殖にはc-myb遺伝子機能が必要とされ、細胞サイクルの晩期G1又は早期S相を通っての遷移のためにこれが特定的に必要とされるということの証拠を提供している。我々はNefがMT-2細胞内でのc-mybレベルに影響を及ぼしIL-2に応答しての増殖の減少の原因を一部担っている可能性があることを発見した。その上、Myb系統群から転写因子がCD4プロモータ機能において重要な役割を果たしており、従ってCD4遺伝子の発現に寄与している(50)。従って、PHAで活性化されたPBMC及びさまざまなCD4+ T細胞系統内でのCD4の細胞表面発現の減少は、c-mybレベルの低下の結果である可能性がある。我々は、Nef27がIL-2又はPHAの刺激に応答してp56lckのリン酸化ひいては(多分)活性化を阻害するということを示してきた。これは、Nefとlckとの相互作用の直接的結果であるかもしれず、又タンパク質キナーゼCといったようなセリン/トレオニンキナーゼの阻害を表わしているのかもしれない。PMAはタンパク質キナーゼCの潜在的活性化物質である。Nef27でのPBMCの処理は同様にp56lckのPMA誘発型リン酸化をも阻害した。Nef25はp56lckのリン酸化に影響を与えるとは思われなかったが、ウエスタンブロット査定のより定性的な性格を反映する可能性がある。
電気穿孔された細胞及びHIV-1感染を受けたMT-2細胞の中でのNefの局在化についての我々の免疫螢光研究は、タンパク質が原形質膜と密に結びついている一方、NefのN末端の一部分が細胞外マトリックスに露呈されていることを示した。透過性をもたされた細胞ともたされていない細胞の比較から、NefのC末端に対して導かれた抗体が、透過性をもたされた細胞内でのみNefを検出し、一方、NefのN末端領域に対して導かれた抗体は、Nefを含み透過性をもたされた細胞ともたされない細胞の両方と反応した。HIV-1 Bru Nefは、神経活性サソリペプチドの構造と著しい類似性をもつ2ペプチドドメイン配列を含むものとして報告された(53)。Nefは又、パッチクランプ実験において膜の脱分極の後に合計K+電流を可逆的に増大させるものであることも示された。神経細胞のK+チャネルに対するこのような効果には、Nefの細胞外での存在が必要である。これは、細胞表面に対する分子の一部分の露呈によって達成できる。
Nefの生物学的活性のさらなる特徴づけ及び作用メカニズムの調査が現在進められており、Nefの機能を破棄することのできる抗ウイルス作用物質の合理的な設計のために役立つ情報を提供してくれることだろう。NefのN末端配列とメリチンの間の部分的相同性はメリチンが適切な候補分子であることを示唆している。
特に我々は、ここで開示した生物物理系及び抗原発現系におけるNef27の生物学的機能を実行させることのできるNef2-19内の最小限の配列を見極ようとしている。Nef2-19のペプチド類似体が合成されつつある。さらに、アンチセンスペプチド及びアンチセンスオリゴヌクレオチドならびに抗体及びそのフラグメントが調査されつつある。
細胞内にNef2-19ペプチドの類似体又はアンタゴニストを導入するためのさまざまな手段が考えられている。このような導入の後、細胞をHIVで攻撃誘発することができ、シンシチウム形成、CD4のダウンレギュレーション及びIL-2Rのダウンレギュレーションといったパラメータを調査することができる。このような手段には、リポソームでのリポフェクション、ペプチド−脂肪接合、電気穿孔及びNef2-19ペプチドをコードするnef遺伝子のN末端に対して導かれたアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現する遺伝子での細胞のトランスフェクション、がある。
当業者にとっては、本発明が明確さ及び理解を目的として幾分詳細に記述されてきたものの、本明細書に開示されている発明力ある概念の範囲から逸脱することなく、本書で記した実施形態及び方法に対しさまざまな修正及び変更を加えることが可能であるということは明白であろう。
本書で引用された参考文献は以下のページでリストアップされており、本書に参考として内含されるものである。
Figure 0003699112
Figure 0003699112
Figure 0003699112
Figure 0003699112
Figure 0003699112
Figure 0003699112
Figure 0003699112
Figure 0003699112

Claims (6)

  1. 下記のアミノ酸配列:HIV-1のNef2-19又はNef2-22から成る免疫抑制ペプチド:
    HIV-1のNef2-19:Gly-Gly-Lys-Trp-Ser-Lys-Ser-Ser-Val-Ile-Gly-Trp-Pro-Ala-Val-Arg-Glu-Arg;
    HIV-1のNef2-22:Gly-Gly-Lys-Trp-Ser-Lys-Ser-Ser-Val-Ile-Gly-Trp-Pro-Ala-Val-Arg-Glu-Arg-Met-Arg-Arg;
  2. 前記Nef2-19ペプチドが、アミノ酸配列:Gly-Gly-Lys-Trp-Ser-Lys-Ser-Ser-Val-Ile-Gly-Trp-Pro-Ala-Val-Arg-Glu-Argから成る請求項1に記載の免疫抑制ペプチド。
  3. 前記Nef2-22ペプチドが、アミノ酸配列:Gly-Gly-Lys-Trp-Ser-Lys-Ser-Ser-Val-Ile-Gly-Trp-Pro-Ala-Val-Arg-Glu-Arg-Met-Arg-Argから成る請求項1に記載の免疫抑制ペプチド。
  4. HIV-1のアナログ又はアンタゴニストとして有用であると予想される化合物を生体外でスクリーニングする方法であって、Nef2-19[Gly-Gly-Lys-Trp-Ser-Lys-Ser-Ser-Val-Ile-Gly-Trp-Pro-Ala-Val-Arg-Glu-Arg]の生物学的活性の生体外での測定における被験化合物の有効性を測定することを含んで成り、当該生物学的活性が、膜摂動性、CD4発現のダウンレギュレーション、IL-2レセプター発現のダウンレギュレーション、p56lckリン酸化の阻害、又はp56lckへのNef2-19の結合である、ことを特徴とする方法。
  5. 前記生物学的活性が、末梢血単核球において、IL-2による刺激でのp56lokのリン酸化を阻害するNef2-19能力である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記生物学的活性が、p56lokに直接的又は間接的に結合するNef2-19の能力である、請求項に記載の方法。
JP52474294A 1993-05-18 1994-05-18 治療用化合物 Expired - Fee Related JP3699112B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
AUPL886193 1993-05-18
PCT/AU1994/000254 WO1994026776A1 (en) 1993-05-18 1994-05-18 Therapeutic compounds
AU8861 1997-08-29

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09501143A JPH09501143A (ja) 1997-02-04
JP3699112B2 true JP3699112B2 (ja) 2005-09-28

Family

ID=3776902

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP52474294A Expired - Fee Related JP3699112B2 (ja) 1993-05-18 1994-05-18 治療用化合物

Country Status (7)

Country Link
US (2) US5962635A (ja)
EP (1) EP0717752B1 (ja)
JP (1) JP3699112B2 (ja)
AT (1) ATE283279T1 (ja)
CA (1) CA2163212C (ja)
DE (1) DE69434151D1 (ja)
WO (1) WO1994026776A1 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
IL112636A0 (en) * 1994-02-14 1995-05-26 Macfarlane Burnet Ctre Med Res Non-pathogenic strains of hiv-1
EP0935608A4 (en) * 1996-09-27 2004-09-15 Biomolecular Res Inst Ltd CYTOTOXIC PEPTIDES
US20050033022A1 (en) * 1997-09-26 2005-02-10 Smithkline Beecham Biologicals Sa Fusion proteins comprising HIV-1 Tat and/or Nef proteins
DE60228212D1 (de) * 2001-03-09 2008-09-25 Gene Stream Pty Ltd Neue expressionsvektoren
GB0417494D0 (en) * 2004-08-05 2004-09-08 Glaxosmithkline Biolog Sa Vaccine
MX2007001916A (es) * 2004-08-17 2007-07-11 Ct Nat De La Rech Scentifique Uso de la funci??n inmunosupresora de una prote??na auxiliar del virus de inmunodeficiencia humana o de simio para la preparaci??n de una vacuna.

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0349354A1 (fr) * 1988-04-01 1990-01-03 Institut Pasteur Peptides PF10 à PF19 d'un rétrovirus HIV, procédé de synthèse de ces peptides, leur utilisation notamment pour le diagnostic
US5221610A (en) * 1988-05-26 1993-06-22 Institut Pasteur Diagnostic method and composition for early detection of HIV infection
CA2135646A1 (en) * 1992-05-11 1993-11-25 Kenneth G. Draper Method and reagent for inhibiting viral replication
GB9311043D0 (en) * 1993-05-28 1993-07-14 Medical Res Council Inhibitors of nef-cd4 binding

Also Published As

Publication number Publication date
US6197583B1 (en) 2001-03-06
EP0717752A1 (en) 1996-06-26
WO1994026776A1 (en) 1994-11-24
US5962635A (en) 1999-10-05
CA2163212A1 (en) 1994-11-24
EP0717752B1 (en) 2004-11-24
JPH09501143A (ja) 1997-02-04
CA2163212C (en) 2004-07-13
ATE283279T1 (de) 2004-12-15
EP0717752A4 (en) 1997-08-20
DE69434151D1 (de) 2004-12-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Baur et al. HIV-1 Nef leads to inhibition or activation of T cells depending on its intracellular localization
Daniel et al. Protective effects of a live attenuated SIV vaccine with a deletion in the nef gene
Zhang et al. Antiviral activity of α-helical stapled peptides designed from the HIV-1 capsid dimerization domain
Cannon et al. Structure-function studies of the human immunodeficiency virus type 1 matrix protein, p17
Tang et al. Exosomal Tat protein activates latent HIV-1 in primary, resting CD4+ T lymphocytes
KR100547049B1 (ko) 바이러스 감염증 치료를 위한 조성물 및 방법
JPH06340698A (ja) Hiv−1 のインヒビターとしての合成ポリペプチド
CN110144326A (zh) 一种靶向性抗肿瘤t细胞及其制备方法和应用
WO1996008970A1 (en) COMPOSITIONS AND METHODS FOR THE ABROGATION OF CELLULAR PROLIFERATION UTILIZING THE HUMAN IMMUNODEFICIENCY VIRUS Vpr PROTEIN
US6121021A (en) Constitutive expression of non-infectious HIV-like particles
EP0689586B1 (en) Vpr function and activity
CN110526970A (zh) 靶向cd133的单链抗体、嵌合抗原受体t细胞及其制备方法和应用
JP3699112B2 (ja) 治療用化合物
EP2558128B1 (en) Methods and compositions for treating hiv
US7709606B2 (en) Interacting polypeptide comprising a heptapeptide pattern and a cellular penetration domain
CN109957546A (zh) 一种靶向cd317的嵌合抗原受体t细胞及其制备方法和应用
CN109957020A (zh) 一种靶向dr5的单链抗体、嵌合抗原受体t细胞及其制备方法和应用
WO2020211330A1 (zh) 一种泛素化缺失的嵌合抗原受体及其用途
US6664040B2 (en) Compositions and methods for delivery of a molecule into a cell
WO1991018454A1 (en) Compositions capable of blocking cytotoxicity of viral regulatory proteins and neurotoxic symptoms associated with retroviral infection
CN110526974A (zh) 一种靶向muc16的单链抗体、嵌合抗原受体t细胞及其制备方法和应用
AU681885B2 (en) Therapeutic compounds
US5567805A (en) The cellular receptor for the CS3 peptide of human immunodeficiency virus
AU681885C (en) Therapeutic compounds
Briese et al. Mapping the binding site of full length HIV-1 Nef on human Lck SH3 by NMR spectroscopy

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050607

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050707

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

S631 Written request for registration of reclamation of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313631

S633 Written request for registration of reclamation of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313633

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R370 Written measure of declining of transfer procedure

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R370

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees