JP3696855B2 - 整流装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、3相交流を直流に整流する整流装置に関し、さらに詳しくは、交流側の高調波成分の発生を低減する整流装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
第1の先行技術の3相交流を直流に整流する整流装置は、交流側に発生する高調波を低減するために、多相交流回路によって構成されている。第1の先行技術の整流回路は、移相変換器と、3相全波整流回路と、相間リアクトルとを含む。移相変圧器は、3相交流電源に接続され、3相交流電源から供給される3相交流から、30°の位相差を有する2組の3相交流を生成する。3相全波整流回路は、ダイオードによって構成され、移相変圧器によって生成される2組の3相交流をそれぞれ全波整流する。3相全波整流回路の正極側同士および負極側同士を相間変圧器によって接続して、それぞれの相間変圧器の中点を直流負荷に接続する(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
交流側と直流側とを絶縁する必要がない場合には、前述した移相変圧器を用いる整流装置によって、絶縁型変圧器を用いる整流装置よりも装置の寸法および重量を小さくすることができる。
【0004】
このような整流装置では、12パルス整流となる。したがって、流入電流が12段の階段状波形となる。このため12m±1次の高調波が発生し、電圧波形および電流波形の高調波の量、つまりひずみ率が10%を越えてしまうという問題がある。
【0005】
このような問題に鑑み、第2の先行技術の整流装置では、第1の先行技術の整流装置の相間変圧器に2次巻線を設け、2次巻線にインバータを接続し、インバータから高調波電流をキャンセルするような電流を注入することによって高調波を低減している(たとえば、非特許文献2参照)。
【0006】
また第3の従来技術として、第1の先行技術の整流装置の移相変換器によって生成される2組の3相交流の位相差を40°に広げ、さらに相間変圧器と直流負荷との間のタップ用切換ダイオードを設ける整流装置がある(たとえば、非特許文献3参照)。
【0007】
【非特許文献1】
今井孝二監修「パワーエレクトロニクスハンドブック」2002年、R&Dプランニング社
【非特許文献2】
Sewan Choi, Prasad Enjeti, Hong-Hee Lee, Ira Pitel:「New Active Interphase Reactor for 12-Pulse rectifiers Provides Clean Power Utility Interface」、IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRY APPLICATIONS,NOVEMBER/DECEMBER 1996,VOL.32,NO.6
【非特許文献3】
大口・山田:「部分容量の非絶縁変圧器結合二重化三相ダイオードブリッジ整流回路の入力電流波形改善」,電学論D,平成7年,115巻9号,pp1196,1197
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
第2の先行技術の整流装置では、相間変圧器の2次巻線に高調波電流をキャンセルするような電流を注入するためのインバータが必要となり、このためインバータを構成するためのトランジスタなどの能動素子や制御回路が必要となる。したがって、装置が複雑化するといった問題がある。トランジスタなどの能動素子はダイオードに比べ故障しやすい。このため装置構成が簡単であり、かつ制御回路を用いないで3相交流を直流に整流することができる整流回路が望まれている。
【0009】
第3の先行技術の整流装置では、移相変圧器によって40°の位相差を有する2組の3相交流を生成する必要があるので、30°の位相差を有する2組の3相交流を生成する移相変圧器と比較して、移相変換器が大形化する。したがって、整流装置が大形化するという問題がある。またこの整流装置では、等価的に18パルス整流となるので、装置が複雑化することに比べて3相交流に含まれる高調波を低減する効果が少ない。したがって装置を大形化しないで、効率よく高調波の発生を低減することができる装置が望まれている。
【0010】
本発明の目的は、簡単な構成で高調波の発生を低減することができ、かつ小形の整流装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、3相交流電源に接続され、1次巻線と2次巻線とが接続されて、3相交流電源から供給される3相交流から、30°の位相差を有する2組の3相交流を生成する移相変圧器と、
前記移相変圧器によって生成される2組の3相交流をそれぞれ全波整流する2つの3相全波整流回路と、
前記2つの3相全波整流回路の直流出力の正極同士および負極同士をそれぞれ1次巻線によって接続し、直流出力の正極同士を接続する1次巻線に対応する2次巻線の正極と、直流出力の負極同士を接続する1次巻線に対応する2次巻線の正極とを相互に接続する正極側および負極側相間変圧器と、
受動素子からなる第1〜第4の整流素子によって構成される単相全波整流ブリッジ回路とを含み、
前記単相全波整流ブリッジ回路の2つの交流入力端に前記正極側および負極側相間変圧器の直列接続された2次巻線の負極をそれぞれ接続し、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流負極出力端を、前記正極側相間変圧器の1次巻線の中性点に接続し、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端を、負荷の正極側に接続し、前記負極側相間変圧器の1次巻線の中性点に負荷の負極側を接続することを特徴とする整流装置である。
【0012】
請求項4記載の本発明は、3相交流電源に接続され、1次巻線と2次巻線とが接続されて、3相交流電源から供給される3相交流から、30°の位相差を有する2組の3相交流を生成する移相変圧器と、
前記移相変圧器によって生成される2組の3相交流をそれぞれ全波整流する2つの3相全波整流回路と、
前記2つの3相全波整流回路の直流出力の正極同士および負極同士をそれぞれ1次巻線によって接続し、直流出力の正極同士を接続する1次巻線に対応する2次巻線の正極と、直流出力の負極同士を接続する1次巻線に対応する2次巻線の正極とを相互に接続する正極側および負極側相間変圧器と、
受動素子からなる第1〜第4の整流素子によって構成される単相全波整流ブリッジ回路とを含み、
前記単相全波整流ブリッジ回路の2つの交流入力端に前記正極側および負極側相間変圧器の直列接続された2次巻線の負極をそれぞれ接続し、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端を、前記負極側相間変圧器の1次巻線の中性点に接続し、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流負極出力端を、負荷の負極側に接続し、前記正極側相間変圧器の1次巻線の中性点に負荷の正極側を接続することを特徴とする整流装置である。
【0013】
本発明に従えば、移相変圧器によって3相交流電源から供給される3相交流から、30°の位相差を有する2組の3相交流を生成し、この3相交流を2つの3相全波整流回路によってそれぞれ全波整流する。それぞれの3相全波整流回路から出力される直流電圧、つまり相間変圧器に印加される電圧には、電源周波数の3倍および6倍の周波数成分が含まれる。正極側および負極側相間変圧器の2次巻線の正極同士を接続して、この各2次巻線に誘起される電圧の差分をとると、正極側相間変圧器の2次巻線の負極と、負極側相間変圧器の2次巻線の負極との間に、前記正極側および負極側相間変圧器に印加される電圧のうち、電源周波数の6倍の周波数成分の電圧を単独で抽出することができる。
【0014】
単相全波整流ブリッジ回路は、前記正極側および負極側相間変圧器によって抽出された電源周波数の6倍の周波数成分の電圧を整流し、電源周波数の12倍の周波数成分の電圧として、単相全波整流ブリッジ回路に直列に接続される負荷に与えることができる。したがって、この負荷に印加される直流電圧の波形は、3相全波整流回路によって整流された直流電圧の波形と、単相全波整流ブリッジ回路の直流負極端および直流正極端の間の電圧の波形とを加算した波形となる。したがって、負荷に印加される直流電圧の波形は、3相全波整流回路から出力される直流電圧よりもさらに平滑化された波形となり、3相全波整流回路から出力される直流電圧のリップルの半分の周期のリップルを有する。つまり整流装置によって、等価的に24パルス整流されることになる。
【0015】
このように負荷に印加される直流電圧のリップルを減少することができるとともに、正極側および負極側相間変圧器の2次巻線には負荷に流れる負荷電流と同じ大きさの6倍周期の交流電流が流れる。これによって、各相間変圧器の1次側の電流バランスを崩すことができ、各相間変圧器への入力電流は、電源周波数の6倍の周期で脈動する直流電流となる。これによって3相全波整流回路の入力端電流は、半周期の2/3のパルス幅を有する波形となり、これらを移相変圧器によって合成すると、24段の階段状の交流電流波形となる。このように3相交流電源から入力される3相交流の波形をより正弦波に近づけることができるので、3相交流電源から供給される3相交流に含まれる高調波を低減することができる。
【0016】
3相全波整流回路および整流回路は、第2の先行技術の整流装置が有する能動素子および制御回路を用いないで、受動素子だけで構成することができる。ダイオードなどの受動素子は、過電流に対して壊れにくいので、装置の信頼性が向上し、また装置の保守管理が容易となる。
【0017】
さらに移相変圧器には、第1あるいは第2の先行技術と同様の移相変圧器を用いることができるので、装置が大形化することがなく、1次巻線と2次巻線とが絶縁されている絶縁型の変圧器を用いて装置を作製する場合よりも装置を小形化することができる。さらに第1の先行技術と比較して、構成の増加は相間変圧器の2次巻線と、4つの整流素子によって構成される整流回路だけであり、簡単な構成で、3相交流の高調波を低減することができる。また、24パルス整流と同等の整流回路が構成できるため、第3の先行技術が実現している等価的な18パルス整流よりも、高調波の発生が少ない。
【0018】
請求項2記載の本発明は、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端と、負極側相間変圧器の1次巻線の中性点との間に直流リアクトルを直列に設けることを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端と、負極側相間変圧器の1次巻線の中性点との間に直流リアクトルを直列に設けるので、負荷に流れる突入電流を抑制し、直流電流を平滑化することができるとともに、かつ電流断続を防止することができる。
【0020】
請求項3記載の本発明は、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端と、負極側相間変圧器の1次巻線の中性点との間で、負荷に並列にフィルタキャパシタを設けることを特徴とする。
【0021】
本発明に従えば、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端と、負極側相間変圧器の1次巻線の中性点との間で、負荷に並列にフィルタキャパシタを設けるので、電荷がこのフィルタキャパシタに蓄えられ、負荷に印加される直流電圧をさらに平滑化することができ、電圧リプルをさらに抑制することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の整流装置を示す回路図である。整流装置は、移相変圧器11と、第1および第2の3相全波整流回路12a,12bと、第1および第2の相間変圧器13a,13bと、単相全波整流ブリッジ回路14と、直流リアクトル15と、フィルタキャパシタ16とを含む。本実施の形態において、接続とは、電気的な接続を意味する。
【0023】
移相変圧器11は、3相交流電源17から供給される3相交流から、30°の位相差を有する2組の3相交流を生成する。移相変圧器11は、第1移相変圧部21と、第2移相変圧部22と、第3移相変圧部23とを含む。
【0024】
第1移相変圧部21は、第1の1次巻線21aと、第1の2次巻線21bとを有する。第2移相変圧器22は、第2の1次巻線22aと、第2の2次巻線22bとを有する。第3移相変圧器23は、第3の1次巻線23aと、第3の2次巻線23bとを有する。第1〜第3の1次巻線21a〜23aおよび第1〜第3の2次巻線21b〜23bは、たとえば内鉄形3相鉄心に巻き付けられ、これによって移相変圧器11が構成される。
【0025】
3相交流電源17は、たとえば対称3相をなすY形電源によって実現される。3相交流電源17は、出力端子である第1端子a、第2端子b、第3端子cを有する。また3相交流電源17は中性点oを有する。3相交流電源17の起電力をVao,Vbo,Vcoで表す。前記Vao,Vbo,Vcoは、第1端子a、第2端子bおよび第3端子cと、中性点oとの間の電圧をそれぞれ表す。また第1端子a,第2端子bおよび第3端子cから外部に流れ出る電源電流を、それぞれIa,Ib,Icで表す。
【0026】
第1端子aは、第1の2次巻線21aの中点a1と、第2の1次巻線22aの一端部a2と、第3の1次巻線23aの他端部a3とに相互にそれぞれ接続される。第2端子bは、第1の1次巻線21aの他端部b1と、第2の2次巻線22bの中点b2と、第3の1次巻線23aの一端部b3とに相互にそれぞれ接続される。第3端部cは、第1の1次巻線21aの一端部c1と、第2の1次巻線22bの他端部c2と、第3の2次巻線23bの中点c3とに相互に接続される。
【0027】
移相変圧器11によって生成される30°の位相差を有する2組の3相交流電圧をそれぞれVro,Vso,Vtoと、Vuo,Vvo,Vwoとによって表す。Vroは、第1の2次巻線21bの一端部rと、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。Vsoは、第2の2次巻線22bの一端部sと、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。Vtoは、第3の2次巻線23bの一端部tと、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。
【0028】
Vuoは、第1の2次巻線21bの他端部uと、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。Vvoは、第2の2次巻線22bの他端部vと、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。Vwoは、第3の2次巻線23bの一端部wと、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。
【0029】
第1〜第3移相変圧部21〜23は、すべて加極性である。前述した移相変圧器11の第1〜第3の1次巻線21a〜23aの一端部c1,a2,b3は、負極であり、他端部b1,c2,a3は、正極である。また、前述した移相変圧器11の第1〜第3の2次巻線21b〜23bの一端部r,s,tは、負極であり、他端部u,v,wは正極である。
【0030】
第1〜第3移相変圧部21〜23の1次巻線21a〜23aと2次巻線21b〜23bとの巻線比は、以下の式(1)〜(3)によって表される。ここで、第1の1次巻線21aの巻数をNa1とし、第2の1次巻線22aの巻数をNa2とし、第3の1次巻線23aの巻数をNa3とする。また第1の2次巻線21bの一端部rから中点a1までの巻数をNra1とし、第1の2次巻線21bの他端部uから中点a1までの巻数をNua1とする。また第2の2次巻線22bの一端部sから中点b1までの巻数をNsb1とし、第2の2次巻線22bの他端部vから中点b1までの巻数をNvb1とする。また第3の2次巻線23bの一端部tから中点d1までの巻数をNtc1とし、第3の2次巻線23bの他端部wから中点c1までの巻数をNwc1とする。
Na1:Nra1:Nua1=1:K:K …(1)
Na2:Nsb1:Nvb1=1:K:K …(2)
Na3:Ntc1:Nwc1=1:K:K …(3)
【0031】
ここで、Na1=Na2=Na3であり、Nra1=Nua1=Nsb1=Nvb1=Ntc1=Nwc1である。また、Kは予め定める定数である。予め定める定数Kは、0.15程度に選ばれ、たとえば0.155に選ばれる。
【0032】
本実施の形態では移相変圧器11は、第1〜第3の1次巻線21a〜23aおよび第1〜第3の2次巻線21b〜23bを、たとえば内鉄形3相鉄心に巻き付けることによって構成されるが、本発明の他の実施の形態において、第1〜第3移相変圧部21〜23の巻線は、別々の鉄心に巻きつけて構成してもよい。
【0033】
第1および第2の3相全波整流回路12a,12bは、3相ダイオードブリッジ整流回路によって実現される。第1の3相全波整流回路12aは、第1のダイオード24a〜第6のダイオード29aによって構成される。第2の3相全波整流回路12bは、第1のダイオード24b〜第6のダイオード29bによって構成される。
【0034】
第1の3相全波整流回路12aは、第1のダイオード24aのアノードと第2のダイオード25aのカソードとを相互に接続し、第3のダイオード26aのアノードと第4のダイオード27aのカソードとを相互に接続し、第5のダイオード28aのアノードと第6のダイオード29aのカソードとを相互に接続し、第1,第3,第5のダイオード24a,26a,28aのカソードとを相互に接続し、第2,第4,第6のダイオード25a,27a,29aのアノードとを相互に接続して構成される。前記第1,第3,第5のダイオード24a,26a,28aのカソードが、第1の3相全波整流回路12aの直流出力の正極となる。前記第2,第4,第6のダイオード25a,27a,29aのアノードが、第1の3相全波整流回路12aの直流出力の負極となる。
【0035】
第2の3相全波整流回路12bは、第1のダイオード24bのアノードと第2のダイオード25bのカソードとを相互に接続し、第3のダイオード26bのアノードと第4のダイオード27bのカソードとを相互に接続し、第5のダイオード28bのアノードと第6のダイオード29bのカソードとを相互に接続し、第1,第3,第5のダイオード24b,26b,28bのカソードとを相互に接続し、第2,第4,第6のダイオード25b,27b,29bのアノードとを相互に接続して構成される。前記第1,第3,第5のダイオード24b,26b,28bのカソードが、第2の3相全波整流回路12bの直流出力の正極となる。前記第2,第4,第6のダイオード25b,27b,29bのアノードが、第2の3相全波整流回路12bの直流出力の負極となる。
【0036】
移相変圧器11の第1の2次巻線21bの一端部rは、第1の3相全波整流回路12aの第1のダイオード24aおよび第2のダイオード24bの間に接続される。移相変圧器11の第1の2次巻線21bの他端部uは、第2の3相全波整流回路12bの第1のダイオード24bおよび第2のダイオード25bの間に接続される。
【0037】
移相変圧器11の第2の2次巻線22bの一端部sは、第1の3相全波整流回路12aの第3のダイオード26aおよび第4のダイオード27aの間に接続される。移相変圧器11の第2の2次巻線22bの他端部vは、第2の3相全波整流回路12bの第3のダイオード26bおよび第4のダイオード27bの間に接続される。
【0038】
移相変圧器11の第3の2次巻線23cの一端部tは、第1の3相全波整流回路12aの第5のダイオード28aおよび第6のダイオード29aの間に接続される。移相変圧器11の第3の2次巻線23cの他端部wは、第2の3相全波整流回路12bの第5のダイオード28bおよび第6のダイオード29bの間に接続される。
【0039】
第1の相間変圧器13aは、正極側相間変圧器であり、1次巻線31aおよび2次巻線32aと、鉄心とを有し、1次巻線31aおよび2次巻線32aが鉄心に巻きつけられて構成される。第1の相間変圧器13aは、減極性である。第1の3相全波整流回路12aの直流出力の正極は、第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの一端部p1と相互に接続される。第2の3相全波整流回路12bの直流出力の正極は、第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの他端部p2と相互に接続される。前記第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの一端部p1は、正極であり、他端部p2は、負極である。第1の相間変圧器13aの1次巻線31aは、相間リアクトルとして機能する。
【0040】
第2の相間変圧器13bは、負極側相間変圧器であり、1次巻線31bおよび2次巻線32bと、鉄心とを有し、1次巻線31bおよび2次巻線32bが鉄心に巻きつけられて構成される。第2の相間変圧器13bは、加極性である。第1の3相全波整流回路12aの直流出力の負極は、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの一端部n1と相互に接続される。第2の3相全波整流回路12bの直流出力の負極は、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの他端部n2と相互に接続される。前記第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの一端部n1は、正極であり、他端部n2は、負極である。第2の相間変圧器13bの1次巻線31bは、相間リアクトルとして機能する。
【0041】
第1の相間変圧器13aの2次巻線32aの正極と、第2の相間変圧器13bの2次巻線32bの正極とは、相互に接続される。つまり第1の相間変圧器13aの2次巻線32aと、第2の相間変圧器13bの2次巻線32bとは直列に接続される。
【0042】
単相全波整流ブリッジ回路14は、第1〜第4の整流素子14a〜14dを有する。第1〜第4の整流素子14a〜14dは、ダイオードによって実現される。
【0043】
第1の整流素子14aの正極および第2の整流素子14bの負極は、相互に接続される。第3の整流素子14cの正極および第4の整流素子14dの負極は、相互に接続される。第1の整流素子14aの負極および第3の整流素子14cの負極と、第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの中性点35aとは、相互に接続される。前記中性点35aとは、1次巻線31aの中点であって、一端部p1および他端部p2からの巻数が等しい位置である。前記第1および第3の整流素子14a,14cの負極が、単相全波整流ブリッジ回路14の直流負極出力端41である。
【0044】
また第2の整流素子14bの正極および第4の整流素子14dの正極は、相互に接続される。前記第2および第4の整流素子14b,14dの正極が、単相全波整流ブリッジ回路14の直流正極出力端42である。第1〜第4の整流素子14a〜14dの正極は、ダイオードのカソードに対応し、負極はダイオードのアノードに対応する。
【0045】
第1の整流素子14aおよび第2の整流素子14bの間には、第1の相間変圧器13aの2次巻線31bの負極が接続される。第3の整流素子14cおよび第4の整流素子14dの間には、第2の相間変圧器13bの2次巻線32bの負極が接続される。前記第1の整流素子14aおよび第2の整流素子14bの間が、単相全波整流ブリッジ回路14の一方の交流入力端43aであり、第3の整流素子14cおよび第4の整流素子14dの間が、単相全波整流ブリッジ回路14の他方の交流入力端43bである。
【0046】
上述した単相全波整流ブリッジ回路14は、直流負荷17に直列に接続される。直流負荷17の正極側の端部は、単相全波整流ブリッジ回路14の直流正極出力端42に接続され、負極側の端部は、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの中性点35bに相互に接続される。前記中性点35bとは、1次巻線31bの中点であって、一端部n1および他端部n2からの巻数が等しい位置である。
【0047】
直流リアクトル15は、単相全波整流ブリッジ回路14に直列に接続される。直流リアクトル15は、単相全波整流ブリッジ回路14の直流正極出力端42と、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの中性点35bとの間に直列に設けられる。直流リアクトル15の一端部は、単相全波整流ブリッジ回路14の直流正極出力端42と相互に接続される。直流リアクトル15の他端部は、直流負荷17の正極側の端部と相互に接続される。直流リアクトル15を設けることによって、直流負荷17に流れる突入電流を抑制し、直流負荷17に流れる直流電流Idを平滑化することができるとともに、かつ電流断続を防止することができる。以後、負荷に流れる直流電流Idを負荷電流Idと記載する。
【0048】
フィルタキャパシタ16は、単相全波整流ブリッジ回路14に直列に接続され、かつ直流負荷17に並列に接続される。フィルタキャパシタ16は、単相全波整流ブリッジ回路14の直流正極出力端42と、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの中性点35bとの間で、直流負荷17に並列に設けられる。フィルタキャパシタ16の一端部は、前記直流リアクトル15の他端部と相互に接続され、直流リアクトル15を介して単相全波整流ブリッジ回路14の直流正極出力端42と相互に接続される。フィルタキャパシタ16の他端部は、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの中性点35bと相互に接続される。
【0049】
フィルタキャパシタ16を設けることによって、直流負荷17に印加される直流電圧Voをさらに平滑化することができ、電圧リプルをさらに抑制することができる。以後、直流負荷17に印加される直流電圧Voを負荷電圧Voと記載する。
【0050】
次に上述した整流装置の動作を説明する。3相交流電源17によって移相変圧器11に3相交流を供給すると、移相変換器11では、30°の位相差を有する2組の3相交流電圧Vro,Vso,Vtoと、Vuo,Vvo,Vwoとを生成する。
【0051】
図2は、3相交流電源17から供給される3相交流と、移相変圧器11によって変換される2組の3相交流とをフェーザ表示した図である。移相変圧器11の第1〜第3の2次巻線21b〜23bの一端部r,s,tにおける電圧は、3相交流電源17の第1〜第3端子a〜cにおける電圧に対して、それぞれ+θの位相差を有する。移相変圧器11の第1〜第3の2次巻線21b〜23bの他端部u,v,wにおける電圧は、3相交流電源17の第1〜第3端子a〜cにおける電圧に対して、それぞれ位相差−θを有する。前記θは15°である。つまり、移相変圧器11の第1〜第3の2次巻線21b〜23bの一端部r,s,tにおける電圧と、移相変圧器11の第1〜第3の2次巻線21b〜23bの他端部u,v,wにおける電圧とは、それぞれ30°の位相差を有する。
【0052】
図3は、第1および第2の3相全波整流回路12a,12bの入出力電圧の波形を示す図である。第1および第2の3相全波整流回路12a,12bに、入力電圧VroおよびVuoをそれぞれ印加したときに、出力される電圧Vp1o,Vp2o,Vn1o,Vn2oを示す図である。図3において、横軸は角周波数ωに時間tを乗算した値を示し、縦軸は各電圧を第1端子aと第2端子bとの線間電圧Vabで除算した値を示す。
【0053】
出力電圧Vp1oは、第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの一端部p1と、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。出力電圧Vn1oは、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの一端部n1と、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。
【0054】
出力電圧Vp2oは、第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの他端部p2と、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。出力電圧Vn2oは、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの他端部n2と、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。
【0055】
図3において、第1の3相全波整流回路12aの入力電圧Vroの波形を細線の点線で示す。第2の3相全波整流回路12bの入力電圧Vuoの波形を太線の点線で示す。第1の3相全波整流回路12aの出力電圧Vp1oの波形を細線の実線で示す。第1の3相全波整流回路12aの出力電圧Vn1oの波形を太線の実線で示す。第2の3相全波整流回路12bの出力電圧Vp2oの波形を一点鎖線で示す。第2の3相全波整流回路12bの出力電圧Vn2oの波形を2点鎖線で示す。
【0056】
図3に示すように、入力電圧VroおよびVuoは、第1および第2の3相全波整流回路12a,12bによって整流される。入力電圧VroおよびVuoの波形は、30°の移相差を有する。また、ここでは図示しないが、入力電圧Vso,Vvo,Vto,Vwoを第1および第2の3相全波整流回路12a,12bに入力することによって、それぞれ30°ずつの移相差を有する同様な波形が出力される。
【0057】
図4は、第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの一端部p1と中性点35aとの間の電圧Vbp11の波形と、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの一端部n1と中性点35bとの間の電圧Vbn11の波形とを示し、さらに整流装置14の交流入力端43a,43b間の電圧Vswの波形を示す図である。図4において、横軸は各周波数ωに時間tを乗算した値を示し、縦軸は各電圧を線間電圧Vabで除算した値を示す。
【0058】
第1の相間変圧器13aの2次巻線31bの電圧をVbp2とし、第2の相間変圧器13bの2次巻線32bの電圧をVbn2とすると、Vswは、以下の式(4)〜(6)によって求められる。
Vsw=Vbp2−Vbn2 …(4)
Vbp2=N×Vbp11 …(5)
Vbn2=N×Vbn11 …(6)
【0059】
ここでNは、予め定める定数であり、第1および第2の相間変圧器13a,13bの巻線比である。
【0060】
第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの一端部p1から中性点35aまでの巻数と、中性点35aから他端部p2までの巻数と、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの一端部n1から中性点35bまでの巻数と、他端部n2から中性点35bまでの巻数とは、それぞれ等しくNb1である。また第1の相間変圧器13aの2次巻線32aの巻数と、第2の相間変圧器13bの2次巻線32bの巻数とは、それぞれ等しくNb2である。
【0061】
第1および第2の相間変圧器13a,13bの巻線比Nの決定方法を以下に示す。ここで、巻線比N=Nb2/2Nb1である。
【0062】
移相変圧器11の第1〜第3の2次巻線21b〜23bの一端部r、s、tおよび他端部u,v、wの各電圧Vを式(7)および式(8)のように表す。
V(r,s,t)=Vssin(ωt−2kπ/3+π/12)…(7)
ここで、k=0(r),1(s),2(t)
V(u,v,w)=Vssin(ωt−2kπ/3−π/12)…(8)
ここで、k=0(u),1(v),2(w)
【0063】
第1および第2の相間変圧器13a,13bの中性点35a,35bの間の電圧をVmは、式(9)のように表される。また単相全波整流ブリッジ回路14の出力電圧Vdbは、式(10)のように表される。
Vm=2Vscos(π/12)sin(π/3)cosθ …(9)
Vab=4Vsnsin(π/12)sin(π/3)abs(sinθ)…(10)
【0064】
前記式(9)および(10)のθは、以下の式(11)のように表される。
θ=mod(ωt+π/12,π/6)−π/12 …(11)
【0065】
直流出力電圧Vo=Vm+Vdbのリップルが最小になるように、第1および第2の相間変圧器13a,13bの巻線比Nを選ぶと、以下の値を得る。
【0066】
【数1】
【0067】
このようにNを決定すると、3相交流電源17から整流装置に入力される入力電流は24相整流波形と同等となる。また、本実施の他の形態において、前記巻線比Nは、0.25程度としてもよい。
【0068】
第1および第2の3相全波整流回路12a,12bから出力される直流電圧、つまり第1および第2の相間変圧器13a,13bに印加される電圧には、3相交流電源17の周波数の3倍および6倍の周波数成分の電圧が含まれる。第1および第2の相間変圧器13a,13bの2次巻線32a,32bの正極同士を接続して、この各2次巻線32a,32bに誘起される電圧の差分をとると、第1の相間変圧器13aの2次巻線32aの負極と、第2の相間変圧器13bの2次巻線32bの負極との間に、第1および第2の相間変圧器13a,13bに印加される電圧のうち、電源周波数の6倍の周波数成分の電圧、つまり図4に示す電圧Vswを単独で抽出することができる。
【0069】
図5は、単相全波整流ブリッジ回路14の正極および負極間の電圧Vbdの波形と、第1および第2の相間変圧器13a,13bの各1次巻線31a,32aの中性点35a,35b間の電圧Vmの波形と、直流負荷17に印加される電圧Voの波形とを示す図である。図5において、横軸は各周波数ωに時間tを乗算した値を示し、縦軸は各電圧を線間電圧Vabで除算した値を示す。
【0070】
単相全波整流ブリッジ回路14は、前記第1および第2の相間変圧器13a,13bによって抽出された電源周波数の6倍の周波数成分の電圧を整流し、電源周波数の12倍の周波数成分の電圧とすることができる。これによって、単相全波整流ブリッジ回路14に直列に接続される直流負荷17に電源周波数の12倍の周波数成分の電圧を与えることができる。
【0071】
直流負荷17は、単相全波整流ブリッジ回路14に直列に接続される。したがって、この直流負荷17に印加される負荷電圧Voの波形は、第1および第2の3相全波整流回路12a,12bによって整流された直流電圧の波形、つまり第1および第2の相間変圧器13a,13bの各1次巻線31a,32aの中性点35a,35b間の電圧Vmの波形と、単相全波整流ブリッジ回路14の直流出力端間の電圧Vdbの波形とを加算した波形となる。
【0072】
したがって図5に示すように、直流負荷17に印加される負荷電圧Voの波形は、第1および第2の3相全波整流回路12a,12bから出力される直流電圧よりもさらに平滑化された波形となり、第1および第2の3相全波整流回路12a,12bから出力される直流電圧のリップルの半分の周期のリップルを有する。つまり整流装置によって、等価的に24パルス整流されることになる。このように第1および第2相間変圧器13a、13bおよび単相全波整流ブリッジ回路14によって、直流負荷17に印加される負荷電圧Voのリップルを減少することができる。
【0073】
図6は、負荷電圧Vo、出力電圧VpおよびVnの波形を示す図である。図6において、横軸は各周波数ωに時間tを乗算した値を示し、縦軸は各電圧を線間電圧Vabで除算した値を示す。出力電圧Vpは、第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの中性点35aと、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。出力電圧Vnは、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの中性点35bと、3相交流電源17の中性点oとの間の電圧である。負荷電圧Voは、上述したように、直流負荷17に印加される電圧である。
【0074】
図7は、第1の全波整流回路13aの出力電流Idp1,Idn1の波形を示す図である。第1の3相全波整流回路12aの直流出力の正極から第1の相間変圧器13aに流れる電流をIdp1とし、第2の相間変圧器13bから第1の3相全波整流回路12aの直流出力の負極に流れる電流をIdn1とする。ここで、Idp1=Idn1である。
【0075】
図8は、第2の全波整流回路13bの出力電流Idp2,Idn2を示す図である。第1の3相全波整流回路12aの直流出力の正極から第1の相間変圧器13aに流れる電流をIdp2とし、第2の相間変圧器13bから第2の3相全波整流回路12bの直流出力の負極に流れる電流をIdn2とする。ここで、Idp2=Idn2である。図7および図8において、横軸は各周波数ωに時間tを乗算した値を示し、縦軸は各電流を負荷電流Idで除算した値を示す。
【0076】
上述したように第1および第2相間変圧器13a,13bおよび単相全波整流ブリッジ回路14を設けることによって、第1および第2の相間変圧器13a,13bの2次巻線32a,32bには負荷電流Idと同じ大きさの6倍周期の交流電流Iswが流れる。これによって、第1および第2の相間変圧器13a,13bの1次側の電流バランスを崩すことができ、第1および第2の相間変圧器13a,13bへの入力電流は、図7および図8に示すように、電源周波数の6倍の周期で脈動する直流電流となる。ここで、Id=Idp1+Idp2=Idn1+Idn2である。また図7および図8示すように、前記電流Idp1およびIdn1は、電流Idp2およびIdn2とに対して30°の位相差を有する。
【0077】
図9は、第1の3相全波整流回路12aに入力される入力電流Irの波形を示す図である。図10は、第2の3相全波整流回路12aに入力される入力電流Iuの波形を示す図である。入力電流Irは、移相変圧器11の第1の2次巻線21bの一端部rから第1の3相全波整流回路12aに入力される電流である。入力電流Iuは、移相変圧器11の第1の2次巻線21bの他端部uから第2の3相全波整流回路12bに入力される電流である。
【0078】
第1および第2の3相全波整流回路12a,12bの入力電流Ir,Iuは、図9および図10に示すように、半周期の2/3のパルス幅を有する交流電流波形となる。入力電流IrとIuとは、互いに30°の位相差を有する。
【0079】
移相変圧器11の第2の2次巻線22bの一端部sから第1の3相全波整流回路12aに入力される入力電流Isは、入力電流Irと同様な波形であり、入力電流Irの波形と120°の移相差を有する。また移相変圧器11の第2の2次巻線22bの他端部vから第2の3相全波整流回路12bに入力される入力電流Ivは、入力電流Iuと同様な波形であり、入力電流Iuの波形と120°の移相差を有する。
【0080】
移相変圧器11の第3の2次巻線23bの一端部tから第1の3相全波整流回路12aに入力される入力電流Itは、入力電流Irと同様な波形であり、入力電流Irの波形と120°の移相差を有し、かつ入力電流Isと120°の移相差を有する。また移相変圧器11の第3の2次巻線23bの他端部wから第2の3相全波整流回路12bに入力される入力電流Iwは、入力電流Iuと同様な波形であり、入力電流Iuの波形と120°の移相差を有し、かつ入力電流Ivと120°の移相差を有する。
【0081】
図11は、移相変圧器11の第3の1次巻線23aに入力される電流Iabの波形を示す図である。図12は、移相変圧器11の第2の1次巻線22aに流れる電流Icaを示す図である。図13は、移相変圧器11の第1の1次巻線21aに流れる電流Ibcの波形を示す図である。図11〜図13において、横軸は各周波数ωに時間tを乗算した値を示し、縦軸は各電流を負荷電流Idで除算した値を示す。
【0082】
前記電流Iabは、第1端子aから第2端子bに流れる電流であり、電流Ibcは、第2端子bから第3端子cに流れる電流であり、電流Icaは、第3端子cから第1端子aに流れる電流である。
【0083】
各電流Iab,Ibc,Icaは、前記電流Ir,Is,ItおよびIw,Iu,Ivと、移相変圧器11の巻線比Kとを用いて以下の式(12)〜(14)によって表される。巻線比Kは、前述した式(1)〜(3)の予め定める値Kと同一である。
Iab=k×(−It+Iw) …(12)
Ibc=k×(−Ir+Iu) …(13)
Ica=k×(−Is+Iv) …(14)
【0084】
図14は、3相交流電源17の第1端子aから移相変圧器11に入力される電流Iaの波形を示す図である。図14には、入力電流Iaのほかに、Iab−Icaと、Irと、Iuとの波形を示している。図14において、Iaの波形は実線で示し、Iab−Icaの波形は一点鎖線で示し、Irの波形は点線で示し、Iuの波形は2点鎖線で示す。入力電流Iaは、以下の式(15)によって求められる。
Ia=(Iab−Ica)+Ir+Iu …(15)
【0085】
図14に示すように、入力電流Iaの波形は、24段の階段状波形で表される。つまり24パルス整流されていることが判る。
【0086】
図15は、入力電流Iaの波形と、正弦波とを示す図である。図15において、入力電流Iaを実線で示し、正弦波は点線で示す。図15に示すように、入力電流Iaは、24段の階段状波形で表され、15°毎にステップを刻む。したがって入力電流Iaの波形が、正弦波の波形により近づけることができるので、第1および第3の先行技術の整流装置と比較して、3相交流電源17から供給される3相交流に含まれる高調波を低減することができる。
【0087】
図16は、3相交流電源17から外部に出力される電源電流Ia、Ib、Icの波形を示す図である。電源電流Iaは、前述した入力電流Iaである。電源電流IbおよびIcは、電源電流Iaと同様に求められる。これらの電源電流IbおよびIcは、以下の式(16)および(17)によってそれぞれ求められる。
Ib=(Ibc−Iab)+Is+Iv …(16)
Ic=(Ica−Ibc)+It+Iw …(17)
【0088】
図16に示すように、電源電流IbはIaと120°の移相差を有し、Icは、IaおよびIbと120°の移相差を有する波形となる。図14〜図16において、横軸は各周波数ωに時間tを乗算した値を示し、縦軸は各電流を負荷電流Idで除算した値を示す。
【0089】
以上のような整流装置では、直流電圧Voのリップルを小さくすることができるので、フィルタキャパシタ16の容量を、第1および第3の先行技術の整流回路よりも小さく構成することができる。また前述した整流装置は、3相全波整流回路12および単相全波整流ブリッジ回路14を構成する素子に、受動素子であるダイオードのみを用い、第2の先行技術の整流装置が備える能動素子およびこの能動素子を駆動する制御回路を設けない。ダイオードなどの受動素子は、過電流に対して壊れにくいので、整流装置の故障を低減することができるとともに、整流装置の保守管理が容易となる。
【0090】
さらに移相変圧器11には、第1の先行技術と同様の移相変圧器を用いることができるので、第3の先行技術のような特殊な移相変圧器を用いる必要がなく、装置が大形化することがない。さらに第1の先行技術と比較して、構成の増加は第1および第2の相間変圧器13a,13bの2次巻線32a,32bと、4つの整流素子によって構成される単相全波整流ブリッジ回路14だけであり、簡単な構成で、3相交流の高調波を低減することができる。
【0091】
次に上述した整流装置の動作をシミュレーションした結果について説明する。発電容量が22メガワット(MW)であり、出力電圧が4160ボルト(V)の同期発電機に、上述した整流装置を介して容量が21メガワット(MW)の直流負荷を接続した場合の発電機線間電圧と線電流との波形をシミュレーションによって形成した。回路シミュレーションには、EMTP(Electro Magnetic Transients Program)を用いた。また、移相変圧器11と、第1および第2の3相全波整流回路12a,12bと、第1および第2の相間変圧器13a,13bと、単相全波整流ブリッジ回路14とは理想的なものとした。
シミュレーションの詳細な設定条件を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
また比較対象として、表1に示す条件と同じ移相変圧器と、3相全波整流回路と、相間変圧器とを用いた第1の従来技術の整流装置のシミュレーションを行った。以後、比較対象の整流装置を、比較整流装置と記載する。
【0094】
図17は、本発明の整流装置の交流線間電圧のシミュレーション波形を示す図であり、図18は本発明の整流装置の交流入力電流のシミュレーション波形を示す図であり、図19は本発明の整流装置の直流出力電圧のシミュレーション波形を示す図であり、図20は本発明の整流装置の電圧ひずみ率と、電流ひずみ歪とを示す図である。
【0095】
図21は、比較整流装置の交流線間電圧のシミュレーション波形を示す図であり、図22は比較整流装置の交流入力電流のシミュレーション波形を示す図である。
【0096】
図17、図19および図21において、横軸は時間tを示し、縦軸は電圧を示す。また図18および図22において、横軸は時間tを示し、縦軸は電流を示す。前記時間tの単位は秒であり、電圧の単位はボルト(V)であり、電流の単位はアンペア(A)とする。図20において、横軸は高調波次数を示し、縦軸はひずみ率を示す。図20では、電圧ひずみ率を白色の棒グラフで表し、電流ひずみ率を黒色の棒グラフで示す。
【0097】
図17および図18と、図21および図22とを比較すると判るように、本発明の整流装置では、交流線間電圧の波形および交流入力電流の波形がともに、正弦波に近づいている。
【0098】
また図20に示すように本発明の整流装置では、電圧の全高調波ひずみ率(略称THD)は、7.3パーセントであり、電流の全高調波ひずみ率は、1.5%となった。比較整流装置の電圧の全高調波ひずみ率は、9.7%であり、電流の全高調波ひずみ率は、8.9%程度であった。このように本発明の整流装置では、電圧および電流の高調波ひずみ率を低減することができ、したがって高調波を低減することができる。
【0099】
前述のような整流装置は、交流側と直流側との絶縁が必要ない場合に、小形で、かつ高調波成分を低減された整流装置を構成することができる。また前述した整流装置は、3相交流発電機に接続される電力変換制御装置として好適に利用することができる。
【0100】
本発明の実施の他の形態の整流装置では、上述した単相全波整流ブリッジ回路14の直流正極出力端42を、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの中性点35bに接続し、単相全波整流ブリッジ回路14の直流負極出力端41を、直流負荷17の負極側の端部に接続し、第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの中性点35aに直流負荷17の正極側を接続してもよい。これによって、上述した図1に示す整流装置と同様に高調波を低減することができる。
【0101】
この場合、直流リアクトル15を、第1および第2の相間変圧器13a,13bの間で直流負荷17に直列に接続する。またフィルタキャパシタ16は、単相全波整流ブリッジ回路14の直流正極出力端42と、第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの中性点35aとの間で、単相全波整流ブリッジ回路14に直列に接続し、かつ直流負荷17に並列に接続する。
【0102】
本実施の形態の整流装置では、前記単相全波整流ブリッジ回路14の第1〜第4の整流素子14a〜14dはダイオードによって実現されるが、本発明の実施の他の形態において、前記単相全波整流ブリッジ回路14の第1〜第4の整流素子14a〜14dをサイリスタなどの能動素子によって実現してもよい。前記サイリスタは、たとえば逆素子3端子サイリスタ(略称SCR)およびゲートターンオフサイリスタ(略称GTO)などである。この場合、制御回路を設けて前記単相全波整流ブリッジ回路14の各整流素子を制御する。
【0103】
【発明の効果】
請求項1および4記載の本発明によれば、3相交流電源から入力される3相交流の波形をより正弦波に近づけることができるので、3相交流電源から供給される3相交流に含まれる高調波を低減することができる。また、先行技術と比較しても装置が大形化することなく、1次巻線と2次巻線とが絶縁されている絶縁型の変圧器を用いて装置を作製する場合よりも装置を小形化することができ、簡単な構成で24パルス整流を行うことができる。
【0104】
3相全波整流回路および単相全波整流ブリッジ回路は、第2の先行技術の整流装置が有する能動素子および制御回路を用いないで、受動素子だけで構成することができる。ダイオードなどの受動素子は、過電流に対して壊れにくいので、装置の信頼性が向上し、また装置の保守管理が容易となる。したがって、電力制御装置として好適に用いることができる。また、負荷に並列にフィルタキャパシタを接続する場合、このフィルタキャパシタの容量を小さな物にすることができ、装置全体の構成が大形化することがない。
【0105】
請求項2記載の本発明によれば、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端と、負極側相間変圧器の1次巻線の中性点との間に直流リアクトルを直列に設けるので、負荷に流れる突入電流を抑制し、直流電流を平滑化することができるとともに、かつ電流断続を防止することができる。
【0106】
請求項3記載の本発明によれば、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端と、負極側相間変圧器の1次巻線の中性点との間で、負荷に並列にフィルタキャパシタを設けるので、電荷がこのフィルタキャパシタに蓄えられ、負荷に印加される直流電圧をさらに平滑化することができ、電圧リプルをさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である整流装置を示す回路図である。
【図2】3相交流電源17から供給される3相交流と、移相変圧器11によって変換される2組の3相交流とをフェーザ表示した図である。
【図3】第1および第2の3相全波整流回路12a,12bの交流側入力端にVroおよびVuoをそれぞれ印加したときに、出力される電圧Vp1o,Vp2o,Vn1o,Vn2oを示す図である。
【図4】第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの一端部p1と中性点35aとの間の電圧Vbp11の波形と、第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの一端部n1と中性点35bとの間の電圧Vbn11の波形とを示し、さらに整流装置14の交流入力端43a,43b間の電圧Vswの波形を示す図である。
【図5】単相全波整流ブリッジ回路14の正極側出力端42と負極側出力端41との間の電圧Vdbと、第1の相間変圧器13aの1次巻線31aの中性点35aと第2の相間変圧器13bの1次巻線31bの中性点35bとの間の電圧Vmの波形とを示し、さらに直流電圧Voの波形を示す図である。
【図6】直流電圧Vo、出力電圧VpおよびVnの波形を示す図である。
【図7】第1の全波整流回路13aの出力電流Idp1,Idn1の波形を示す図である。
【図8】第2の全波整流回路13bの出力電流Idp2,Idn2を示す図である。
【図9】第1の3相全波整流回路12aに入力される入力電流Irの波形を示す図である。
【図10】第2の3相全波整流回路12aに入力される入力電流Iuの波形を示す図である。
【図11】移相変圧器11の第3の1次巻線23aに入力される電流Iabの波形を示す図である。
【図12】移相変圧器11の第2の1次巻線22aに流れる電流Icaを示す図である。
【図13】移相変圧器11の第1の1次巻線21aに流れる電流Ibcの波形を示す図である。
【図14】3相交流電源17の第1端子aから移相変圧器11に入力される電流Iaの波形を示す図である。
【図15】入力電流Iaの波形と、正弦波とを示す図である。
【図16】3相交流電源17から外部に出力される電源電流Ia、Ib、Icの波形を示す図である。
【図17】本発明の整流装置の交流線間電圧のシミュレーション波形を示す図である。
【図18】本発明の整流装置の交流入力電流のシミュレーション波形を示す図である。
【図19】本発明の整流装置の直流出力電圧のシミュレーション波形を示す図である。
【図20】本発明の整流装置の電圧ひずみ率と、電流ひずみ歪とを示す図である。
【図21】比較整流装置の交流線間電圧のシミュレーション波形を示す図である。
【図22】比較整流装置の交流入力電流のシミュレーション波形を示す図である。
【符号の説明】
11 移相変圧器
12 3相全波整流回路
13 相間変圧器
14 単相全波整流ブリッジ回路
14a〜14d 整流素子
15 直流リアクトル
16 フィルタキャパシタ
17 3相交流電源
Claims (4)
- 3相交流電源に接続され、1次巻線と2次巻線とが接続されて、3相交流電源から供給される3相交流から、30°の位相差を有する2組の3相交流を生成する移相変圧器と、
前記移相変圧器によって生成される2組の3相交流をそれぞれ全波整流する2つの3相全波整流回路と、
前記2つの3相全波整流回路の直流出力の正極同士および負極同士をそれぞれ1次巻線によって接続し、直流出力の正極同士を接続する1次巻線に対応する2次巻線の正極と、直流出力の負極同士を接続する1次巻線に対応する2次巻線の正極とを相互に接続する正極側および負極側相間変圧器と、
受動素子からなる第1〜第4の整流素子によって構成される単相全波整流ブリッジ回路とを含み、
前記単相全波整流ブリッジ回路の2つの交流入力端に前記正極側および負極側相間変圧器の直列接続された2次巻線の負極をそれぞれ接続し、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流負極出力端を、前記正極側相間変圧器の1次巻線の中性点に接続し、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端を、負荷の正極側に接続し、前記負極側相間変圧器の1次巻線の中性点に負荷の負極側を接続することを特徴とする整流装置。 - 前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端と、負極側相間変圧器の1次巻線の中性点との間に直流リアクトルを直列に設けることを特徴とする請求項1または2記載の整流装置。
- 前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端と、負極側相間変圧器の1次巻線の中性点との間で、負荷に並列にフィルタキャパシタを設けることを特徴とする請求項1または2記載の整流装置。
- 3相交流電源に接続され、1次巻線と2次巻線とが接続されて、3相交流電源から供給される3相交流から、30°の位相差を有する2組の3相交流を生成する移相変圧器と、
前記移相変圧器によって生成される2組の3相交流をそれぞれ全波整流する2つの3相全波整流回路と、
前記2つの3相全波整流回路の直流出力の正極同士および負極同士をそれぞれ1次巻線によって接続し、直流出力の正極同士を接続する1次巻線に対応する2次巻線の正極と、直流出力の負極同士を接続する1次巻線に対応する2次巻線の正極とを相互に接続する正極側および負極側相間変圧器と、
受動素子からなる第1〜第4の整流素子によって構成される単相全波整流ブリッジ回路とを含み、
前記単相全波整流ブリッジ回路の2つの交流入力端に前記正極側および負極側相間変圧器の直列接続された2次巻線の負極をそれぞれ接続し、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流正極出力端を、前記負極側相間変圧器の1次巻線の中性点に接続し、前記単相全波整流ブリッジ回路の直流負極出力端を、負荷の負極側に接続し、前記正極側相間変圧器の1次巻線の中性点に負荷の正極側を接続することを特徴とする整流装置。
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