JP3696770B2 - シリンダベッドミシン - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ベビーウエアの袖口の伏せ縫製など極細の筒状物の縫製に適したシリンダベッドミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、小径の筒状物の縫製を行うには、ミシンベッドの縫製部を細い筒状のフリーアームにしたミシン、いわゆるシリンダベッドミシンが用いられている。ところが、そのフリーアームの細さはそのフリーアーム内に収容される布送り機構の大きさに限定されるので、極細の筒状布地をフリーアームにセットすることが困難であり、その場合、やむなく布送り方向をフリーアームの長手方向としたミシンを代用していた。だが、この代用のミシンでもフリーアームに極細の筒状布地をセットすることができず、その布地の筒の略中心線が斜めの状態で該布地を仕掛けて縫製していた。そのため、縫製作業の能率が悪くなるとともに熟練が必要とされていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、極細の筒状物の縫製が容易にできるシリンダベッドミシンを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、針孔と針板爪とを有する針板をシリンダベッド部上部に取り付け、上下に往復運動する針を左右に横切って運動し該針との協働で二重環縫い目を形成するルーパと、該針孔の針落を貫通する針先端を前方より支持する前針受けと、該針先端を後方より支持する後針受けとをシリンダベッド部内に備え、該針板との間に筒状物の布地を挟んで押圧する押え金と、シリンダベッド部にセットされた筒状物の布地を円周方向に送る布送り手段とをシリンダベッド部の上方に備えたシリンダベッドミシンにおいて、針板の後部が傾斜面を有し、押え金が針開口孔と該針開口孔の手前に配置された送り歯溝とを有し、布送り手段が、シリンダベッド部にセットされた布地の表側に係合して該布地を布送り方向に送る送り部材のみからなり、送り部材が、押え金の送り歯溝を間欠的に貫通して針板の針落の手前で布地を布送り方向に送る差動上送り歯と、針後部に接近して配置され、針板の傾斜面に対して直交方向に該傾斜面に押圧し、該差動上送り歯の送り運動と協調して間欠駆動される主送りローラと、該主送りローラの揚程をなす主送りローラ揚げ手段とを有し、前針受けがルーパの取付け軸台に取り付けられ、後針受けがシリンダベッド内壁に取り付けられ、前記シリンダベッド部内に下送り歯を有しないと共に、前記針板に下送り歯が挿通される長手角孔を有しないことを特徴とする。
【0005】
【作用】
本願発明によれば、極細の筒状布地がシリンダベッド部にセットされると、長手角孔を有しない針板が該布地を下方より確実に支持し、布送り手段が該布地の表側に係合して該布地をシリンダベッド円周方向に送ることとなる。
【0006】
特に、針板後部に傾斜面を設けるとともに、布送り手段の差動送り歯および主送りローラとを針落を挟んで前後に配置し、針落の手前に配置された差動送り歯を押え金の送り歯溝に貫通させ、針板後部の傾斜面に該主送りローラを押圧することで、筒状布地の送りが確実に行われる。また、針先端が針板の針落を貫通すると、針先端は、ルーパの取付け台に取り付けられた前針受けにより前方より支持されるとともに、シリンダベッド内壁に取り付けられた後針受けにより後方より支持される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を適用させたシリンダベッドミシンの要部を示す部分斜視図である。シリンダベッド部1の上面には針板2が設けられている。針板2の上面とシリンダベッド部1の上面とは同一平面上にある。針板2は、図2に示すように、布送り方向Fと直交する方向に沿って形成されたスリット3より針落4a,4bまで延びる門形状の針孔5と、針孔5に囲まれ先端が布送り方向Fに延びる舌片6(針板爪)とを有する。針板2は、後部に傾斜面7を有し、下送り歯が挿通する長手角孔を有していない。なお、本実施の形態では針板の後部に傾斜面を設けていたが、これに限定されるわけでなく、針板をフラットにし、針板後部に位置するシリンダベッド部に後述する主送りローラが押圧する傾斜面を設けるようにしてもよい。
【0008】
シリンダベッド部1内にはルーパ8と前針受け9と後針受け10とが配置されている。図4に示すように、ルーパ8は揺動軸11の腕12に連結されたルーパ軸13の取付け軸台14に取り付けられ、揺動軸11はロッド15,16を介して主軸Sに連結されている。主軸Sが回転すると、ルーパ8は後述する針を左右に横切って運動する。ルーパ8の先端にはルーパ糸8aが挿通されている。前針受け9は、取付け軸台14に取り付けられ、ルーパ8に略平行に配置されている。後針受け10はシリンダベッド部1の内壁下面1aにネジ10aで取り付けられている。ルーパ8が左方に進出する時、前針受け9は針を前方より支持し、後針受け10は針を後方より支持する。なお、本実施の形態では後針受けをシリンダベッド部の内壁下面に取り付けていたが、これに限定されるわけでなく、後針受けをシリンダベッド部の内壁側面に取り付けてもよい。
【0009】
シリンダベッド部1の上方、即ちミシンアームAには、左右に並設された2本の針17,18と、布地を針板2に押圧する押え金19と、セットされた布地を布送り方向Fに送る布送り手段20とが配置されている。各針17,18は針棒21の先端に固定された針株22に取り付けられ、針棒21はベッド本体部Bで全回転する主軸S(図4参照)に連動して上下に往復運動する。図4に示すように、針先端には針糸17a,18aが挿通されている。針棒21の降下時に各針17,18先端は針孔5の針落4a,4bを貫通する。主軸Sが一方向に全回転すると、ルーパ8は針17,18と協働する。この協働によって、針17,18先端に夫々挿通された針糸17a,18aとルーパ8の先端に挿通されたルーパ糸8aとが二重環縫い目となって布地に形成される。
【0010】
押え金19は、ミシンアームAのブッシュ23にスライド可能に支持された押え棒24の下端に取り付けられ、針17,18貫通用の針開口孔(図示せず)および該針開口孔の手前に配置された送り歯溝19aを有する。押え棒24はミシンアーム部A内に配置されたスプリング機構(図示せず)により押え金19を針板2に押圧し、布地への押圧は針板2の傾斜面7直前まで行われる。また、ミシンアームAには足踏みペダル等の動作により押え金19を上昇させる押え揚げ機構(図示せず)が備えられている。
【0011】
布送り手段20は、シリンダベッド部1にセットされた布地の表側に係合して該布地を布送り方向Fに送る主送りローラ25と差動送り歯26を備えている。主送りローラ25は、針後部に近接して配置され、ギヤ25aを有する。ギヤ25aはベルト27を介してギヤ28に連結され、ギヤ28はユニット29の出力軸29aに取り付けられたスプライン31にユニバーサルジョイント30を介して連結されている。このユニット29は、主軸Sの回転を駆動源とし、主軸の連続回転を間欠回転に変換する。主軸Sが回転すると、ユニット29の出力軸29aに取り付けられたスプライン31が一方向に間欠的に回転する。スプライン31の間欠回転はユニバーサルジョイント30を介してギヤ28に伝動され、ギヤ28に伝動された間欠回転はベルト27を介して主送りローラ25のギヤ25aに伝動される。すなわち、主軸Sの回転によって主送りローラ25が一方向に間欠回転し、主送りローラ25の間欠回転が布地に伝達される。
【0012】
また、ユニット29は、間欠回転量を調節できる機能を有し、該調節機能で針孔5後方の布地に対する送り量の変更を可能としている。なお、本実施の形態では、主軸の全回転を駆動源とするユニットを用いたが、これに限定されるわけでない。例えば、その駆動源を主軸に連動して揺動する揺動軸とし、該揺動軸にワンウェイクラッチを連結した機械式間欠機構、或いは、主軸回転パルス発信器からの信号に基づき作動するステッピングモータを用いてもよい。
【0013】
主送りローラ25には、図5に示すように、布地がシリンダベッド円周方向で確実に送られるよう布地を針板2の傾斜面7に弾性的に押圧する付勢部材32が付設されている。付勢部材32は、ギヤ25a,28を回転可能に支持する支持具33と、該支持具33を下方に付勢する付勢具34を備える。付勢具34はミシンアーム部Aの背面にネジ35で固定されるコ字状のブラケット36を有し、このブラケット36は支持具33の延出棒33aを上下にスライド可能に支持している。延出棒33aの中途には規制片37がネジ38で取り付けられている。圧縮バネ39は規制片37とブラケット36との間に位置する延出棒33aに介装されている。主送りローラ25の押圧方向は針板2の傾斜面7の直交方向と一致されるようにしており、圧縮バネ39の押圧力は調節ネジ40で調節できるようにしている。
【0014】
また、付勢部材32により布地に押圧される主送りローラ25の押圧解除は、主送りローラ揚げ手段41により行われる。主送りローラ揚げ手段41は規制片37を引き上げるワイヤ部材を備える。ワイヤ部材のアウターケーブル42aはブラケット36に固定されたアウターケーブル受け片44で支持され、ワイヤ部材のインナーワイヤ42bは足踏みペダルの動作により圧縮バネ39に抗して規制片37を上昇させる。この主送りローラ揚げ手段41の上昇を、押え揚げ手段(図示せず)による押え金19の上昇と連動させておくと、布地のセットあるいは取外しを容易にできる。なお、本実施の形態では、主送りローラの押圧解除策としてワイヤ部材を用いたが、これに限定されるわけでなく、規制片に連結ないし係合されるようなエアシリンダを用いてもよい。
【0015】
差動送り歯26は、ミシンアーム部A内に配置された公知の上送り機構により上下前後に楕円運動し、押え金19の送り歯溝19aを間欠的に貫通する。間欠的に貫通した差動送り歯26は上方より布地に係合し、差動送り歯26の送り動作が布地に伝達される。主送りローラ25と差動送り歯26の布送りタイミングは同一となるように調整しておくのが望ましい。なお、本実施の形態では、布送り手段を主送りローラと差動送り歯とで構成していたが、これに限定されるわけでなく、図6に示すように、針を前後にまたいで形成される前後送り歯片45とし、前後送り歯片45を公知の上送り機構で上下前後に楕円運動させてもよい。
【0016】
【発明の効果】
以上に述べたように、本願発明によれば、長手角孔を有しない針板が布地を下方より確実に支持し、布送り手段が布地の表側に係合して布地をシリンダベッド円周方向に送るよう構成したことで、シリンダベッド部の径を下送り歯を含む送り機構に制限されない極細にできるとともに、極細のシリンダベッド部であっても布地のセットないし送りを確実にでき、極細の筒状布地の縫製を能率よく行うことができる。
【0017】
特に、針板後部に傾斜面を設けるとともに、布送り手段の差動送り歯および主送りローラとを針落を挟んで前後に配置し、針落の手前に配置された差動送り歯を押え金の送り溝に貫通させ、針板後部の傾斜面に該主送りローラを押圧することで、筒状布地の送りを確実に行うことができる。また、針先端を、ルーパの取付け台に取り付けられた前針受けにより前方より支持し、シリンダベッド内壁に取り付けられた後針受けにより後方より支持するように構成することで、シリンダベッド部の径を極細にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に適用されるシリンダベッドミシンの要部を示す斜視図である。
【図2】 同上ミシンの針板付近を示す概略平面図である。
【図3】 同上ミシンのシリンダベッド部を示す概略側面図である。
【図4】 同上ミシンのルーパ機構を示す斜視図である。
【図5】 同上ミシンの付勢部材を示す概略背面図である。
【図6】 本発明に適用されるシリンダベッドミシンのシリンダベッド部の別の様態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
1 シリンダベッド部
1a 内壁下面
2 針板
5 針孔
6 舌片(針板爪)
7 傾斜面
8 ルーパ
9 前針受け
10 後針受け
14 取付け軸台
17,18 針
19 押え金
20 布送り手段
21 針棒
25 主送りローラ
26 差動送り歯
41 主送りローラ揚げ手段
Claims (1)
- 針孔と針板爪とを有する針板をシリンダベッド部上部に取り付け、上下に往復運動する針を左右に横切って運動し該針との協働で二重環縫い目を形成するルーパと、該針孔の針落を貫通する針先端を前方より支持する前針受けと、該針先端を後方より支持する後針受けとをシリンダベッド部内に備え、該針板との間に筒状物の布地を挟んで押圧する押え金と、シリンダベッド部にセットされた筒状物の布地を円周方向に送る布送り手段とをシリンダベッド部の上方に備えたシリンダベッドミシンにおいて、針板の後部が傾斜面を有し、押え金が針開口孔と該針開口孔の手前に配置された送り歯溝とを有し、布送り手段が、シリンダベッド部にセットされた布地の表側に係合して該布地を布送り方向に送る送り部材のみからなり、送り部材が、押え金の送り歯溝を間欠的に貫通して針板の針落の手前で布地を布送り方向に送る差動上送り歯と、針後部に接近して配置され、針板の傾斜面に対して直交方向に該傾斜面に押圧し、該差動上送り歯の送り運動と協調して間欠駆動される主送りローラと、該主送りローラの揚程をなす主送りローラ揚げ手段とを有し、前針受けがルーパの取付け軸台に取り付けられ、後針受けがシリンダベッド内壁に取り付けられ、前記シリンダベッド部内に下送り歯を有しないと共に、前記針板に下送り歯が挿通される長手角孔を有しないことを特徴とするシリンダベッドミシン。
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