JP3695744B2 - 複合蛍光体及びそれを用いた蛍光ランプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な蛍光体及びそれを用いた蛍光ランプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の蛍光ランプの開発は、希土類蛍光体を使して三波長の可視光による、光束の向上、色の見え、明るさ感の改善が主流となっており、今後もその傾向にある。そのため、蛍光体の開発により、従来より一層高効率に改善されたり、劣化に強い材質の研究が進んでいる。例えば、第259回蛍光体同学会誌第23頁に報告されているように、BAMといわれる青色蛍光体は効率が悪く、劣化しやすいという欠点があったが、希土類添加物の組成比を検討することによって、その他の蛍光体と遜色ないものとなった。また、Journal of The Electrochemical Society,146(1)392−399(1999)に示すように、近年、蛍光体の表面積を極力減らし、ランプ中における紫外線やイオンスパッタの影響を受け難くする技術も開発され、従来の蛍光ランプに導入されつつある。
【0003】
また、蛍光体の表面を特殊な方法でイットリア等の金属酸化物で被覆し、水銀の付着を防止することにより、ランプの高い光束維持率を実現する方法も報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように、希土類蛍光体を用いた蛍光ランプの需給が盛んになればなるほど、使用する希土類元素が多量に必要になってくる。しかし、希土類元素は埋蔵量が少なく、単位重量当りの単価が高いという問題がある。また、自然環境保護の観点から、貴重な資源を保護する必要もある。更に、蛍光体の中の希土類元素の使用量は増える一方であり、蛍光体の廃棄物から希土類元素を回収するにしても、莫大なエネルギーが必要になるため実現されていない。
【0005】
そこで、本発明は前記従来の問題を解決するためになされたものであり、新規な蛍光体を使用することにより、希土類元素の使用量を減少できる蛍光ランプを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の複合蛍光体は、粒子径が0.05μm以上、1.0μm以下であり、BaMgAl 10 17 :Eu 2+ 、LaPO 4 :Ce 3+ ,Tb 3+ 及びY 2 3 :Eu 3+ からなる群から選択された少なくとも一種の希土類蛍光体の粒子を、粒子径が5μm以上、 1 5μm以下である酸化アルミニウムの粒子の表面に、乾式混合によって被着したことを特徴とする。これにより、一般に使用される希土類蛍光体の量を削減することが可能となる。
【0008】
また、本発明の複合蛍光体は、酸化アルミニウムを含んでいるので、長期間の放電に耐え、且つ蛍光体の励起発光を妨げなく行うことが可能となる。
【0009】
また、本発明の複合蛍光体は、前記希土類蛍光体の粒子が、2種類以上の蛍光体からなることが好ましい。これにより、複合蛍光体粒子一粒で、赤、青、緑等の単波長の光を組み合わせて放出することが可能となる。
【0010】
更に、本発明の複合蛍光体を用いた蛍光ランプは、バルブ内に放電ガスを充満した放電空間を有し、前記放電空間に電流を通電して発光する蛍光ランプにおいて、前記バルブ内面に、前記本発明の複合蛍光体からなる層を形成したことを特徴とする。これにより、希土類元素の使用量を減少できる蛍光ランプが可能となる。また、本発明の蛍光ランプは、前記バルブと前記複合蛍光体からなる層との間に、シリコン、アルミニウム、イットリウム、セリウム、ゲルマニウム、チタン及び亜鉛からなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む無機酸化物の被膜をさらに含むことが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
本発明で用いる希土類蛍光体は、従来使用されている希土類蛍光体をすべて使用可能である。具体的に工業化されている希土類蛍光体としては、Sr14(PO46Cl2:Eu2+、(Sr,Ca)10(PO46Cl2:Eu2+、(Sr,Ca)10(PO46Cl2・nB23:Eu2+、(Sr,Ca,Mg)10(PO46Cl2:Eu2+、LaPO4:Ce3+,Tb3+、La23・0.2SiO2・0.9P25:Ce3+,Tb3+、Sr2 Si 3 α 2SrCl2:Eu2+、Ba3MgSi2 α Eu2+、(Sr,Ba)Al2Si2 α Eu2+、Y2SiO5:Ce3+,Tb3+、BaAln13:Eu2+、CeMgAl1119:Tb3+、BaMgAl1017:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、Sr4Al1425:Eu2+、SrMgAl1017:Eu2+、Y23:Eu3+、YVO4:Dy3+ Y(P,V)O4:Eu3+、SrB47F:Mn2+、GdMgB510:Ce3+,Tb3+、YVO4:Eu3+、3.5MgO・0.5MgF2・CeO2:Mn4+、Y2SiO5:Ce3+,Tb3+、Y23・Al23:Tb3+、Y3Al512:Ce3+、Sr2Si29・2SrCl2:Eu2+、Sr10(PO46Cl2:Eu2+等が使用されており、本発明においても好適に使用できる。
【0013】
前記希土類蛍光体は、通常1〜10μmの粒子径の粉体が使用されている。しかし、1μm以下の蛍光体粒子は見かけの表面積が小さいことから、前記希土類蛍光体の励起波長の吸収効率が低下し、見かけ上量子効率が低下するため、一般に使用されていない。しかしながら、このような1μm以下の蛍光体微粒子は効果的に励起波長を照射すれば発光効率は低下しない。
【0014】
図1及び図2は、本発明の複合蛍光体の模式図である。図1は1種類の希土類蛍光体1を使用した場合である。図2は2種類以上の希土類蛍光体3を使用した場合である。本発明の複合蛍光体は、無機化合物の粒子2の表面に、希土類蛍光体の粒子1又は3を被着せしめたものである。このため、効率よく励起光を蛍光体表面に受けることが可能なだけでなく、蛍光体に照射されなかった紫外線を前記無機化合物の粒子が反射し、前記蛍光体微粒子に照射できる。このことにより、見かけの蛍光体の発光効率は向上し、従来使用されている蛍光体と遜色無く発光することができる。したがって、本発明の複合蛍光体は、従来使用していた希土類元素の使用量を低減できるとともに、少ない量で従来以上に発光効率を高めることが可能である。
【0015】
本発明における前記無機化合物の粒子は、平均粒子径5μm以上、15μm以下の粒子が好ましい。5μm未満の粒子は、紫外線の照射による反射効率が低下するため、表面に被着した蛍光体の発光効率が低下するので好ましくない。また、15μmを超える粒子は、従来の蛍光体サスペンジョンを使用して均一に塗布することは不可能であり、実用的ではない。しかし、無機化合物粉体中に、全体の20%以下で、5μm未満の粒子及び15μmを超える粒子が含まれているならば、発光効率を低下させず、塗布膜の形成にも影響はない。
【0016】
前記無機化合物は、シリコン、アルミニウム、イットリウム、セリウム、ゲルマニウム、チタン、亜鉛の酸化物であることが好ましい。前記無機酸化物の粒子は、紫外線に対して結晶形態や粒子構造が容易に変化せず、紫外線を外部へ反射する効率も高いため、本発明の希土類蛍光体の微粒子を被覆する粒子として最適だからである。
【0017】
また、紫外線が硝子バルブへ直接照射されないように、無機化合物の被膜をバルブ内面に塗布することも好ましい。この無機化合物は、シリコン、アルミニウム、イットリウム、セリウム、ゲルマニウム、チタン、亜鉛の酸化物であると、上記複合蛍光体の無機酸化物粒子と同じ理由で、好ましい構成となる。
【0018】
本発明の蛍光ランプは、前記複合蛍光体を使用して、従来の蛍光ランプと同様な方法で作製可能である。また、蛍光ランプの作製工程であるシンター工程、排気工程においても従来と同様な条件でランプの作製が可能である。
【0019】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を説明する。
【0020】
(実施例1)
一般に蛍光ランプに使用される青色蛍光体は、BaMgAl1017:Eu2+(以下、BAMという)で、発光波長は約450nmである。前記蛍光体の粉体に254nmの励起光を照射し、発光する450nmの強度を粒子径別に測定した。
【0021】
図4は本発明の複合蛍光体と従来の蛍光体の輝度特性を示した図である。従来の蛍光体は、図4のカーブ7に示すように粒子径が2〜5μm程度のものの輝度が最も高く、それより粒子径が小さくなると極端に輝度が低下する。このことから、1μm以下の蛍光体は、実用上発光効率が悪いので使用できないことがわかる。このため、従来の蛍光ランプでは、1μm以下の粒子径の蛍光体は全く使用されていない。
【0022】
しかしながら、本発明において、粒子径5μmのアルミナを担持体として粒子径の異なる蛍光体を被着したものと粒子径15μmのアルミナを担持体として粒子径の異なる蛍光体を被着したものとを用いて発光輝度を測定したところ、図4のカーブ8、9に示すように、粒子径が1μm以下の蛍光体でも高い発光輝度が得られることがわかった。用いる蛍光体担持用の粒子の粒子径により若干異なり、担持粒子の粒子径が大きいほど輝度のピークは蛍光体の粒子径が小さいほうへ移動する。なお、8は本発明の5μmの担持粒子を用いた複合蛍光体の輝度特性カーブ、9は本発明の15μmの担持粒子を用いた複合蛍光体の輝度特性カーブである。
【0023】
次に、本発明の複合蛍光体の調製方法を説明する。アルミナ粉体1kgと各目的の粒子径の蛍光体粉末300gとを乾式ミキサーで一昼夜混合した。その後、電子顕微鏡で粒子形状を確認したところ、1.0μm以下の蛍光体では、アルミナ粉体の表面に隙間なくBAM粒子が被着した複合蛍光体粒子となっていた。
【0024】
このように、従来使用されていない1.0μm以下の粒子径の蛍光体を、担持粒子5〜15μmのアルミナに被着することにより、従来の蛍光体と同様十分使用可能なものとすることができる。
【0025】
同じく、平均粒子径10μmのアルミナ粉体と、緑色発光する蛍光体LaPO4:Ce3+,Tb3+(以下、LAPという)を乾式ミキサーで一昼夜混合して、緑色発光の複合蛍光体粒子が得られた。この発光輝度も図4のBAM蛍光体と同様に、粒子径が0.05〜1.0μmの範囲でLAP蛍光体の輝度向上効果を示し、相対比90%以上の高い輝度が得られた。
【0026】
また、同じく、平均粒子径10μmのアルミナ粉体と、赤色発光する蛍光体Y23:Eu3+(以下、YOXという)を乾式ミキサーで一昼夜混合して調製した複合蛍光体も同じように粒子径が0.05〜1.0μmの範囲で輝度向上が認められた。
【0027】
更に、前記BAM、LAP、YOXの各々平均粒子径0.3μmの粉体を、それぞれ15g、50g、35gとり混ぜて、乾式ミキサーで一昼夜混合した。その後更に、平均粒子径10μmのアルミナ粉体を500g加え、乾式ミキサーで一昼夜混合した。その後取り出した粉体を、電子顕微鏡、レーザ顕微鏡で観察したところ、前記アルミナ粒子の表面に、BAM、LAP、YOXのそれぞれの蛍光体がランダムで被着している複合蛍光体粒子となっていることが観察された。更に、粉体に254nmの励起光を照射したところ、前記三種類の分光分布が観察され、各発光波長のピーク比率は、ほぼ3:10:7であり、最初に混合した比率どうりの発光波長の分布が得られた。このように、単一担持粒子の上に、任意の組成の3種類の蛍光体を担持することができ、その組成比にしたがって発光する輝度の高い複合蛍光体が得られた。
【0028】
(実施例2)
実施例1に示した複合蛍光体を使用して蛍光ランプを作製し、従来の蛍光体を使用した蛍光ランプと光束を比較した。実験には、図3に示すように、ガラスバルブ4(内径26mm、厚さ1.0mm、長さ1200mm)の両端にコイル5を設け、バルブ内表面に蛍光体を塗布し、水銀とアルゴン、ネオンガスを400Pa封入した蛍光ランプを使用した。なお、6は口金である。
【0029】
先ず、目的の複合蛍光体1000gと、ニトロセルロースを2質量%溶解した酢酸ブチル溶液1dm3とを混合攪拌し、均一なスラリーを作製した。これを洗浄したガラスバルブ内面に塗付量2.5g、3.5g、4.5g、5.5g、6.5gになるように塗布し、乾燥した。その後、この塗布したバルブを530℃で10分間焼成して冷却後、両端にコイルを取付けた。排気管から真空排気を行い、水銀とアルゴン・ネオン混合ガスを目的量封入し、密栓した。そして、口金を取付けてランプを完成した。比較したランプの種類を下記に示す。
【0030】
本発明のサンプル1は、粒子径0.3μmのBAMを粒子径10μmのアルミナに被着した複合蛍光体と、粒子径0.3μmのLAPを粒子径10μmのアルミナに被着した複合蛍光体と、粒子径0.3μmのYOXを粒子径10μmのアルミナに被着した複合蛍光体の三種類の複合蛍光体を質量組成比15対50対35でスラリー中に混合したものをバルブに塗布したものである。
【0031】
本発明のサンプル2は、粒子径0.3μmのBAMと粒子径0.3μmのLAPと粒子径0.3μmのYOXを質量組成比15対50対35の割合で混合後、この混合物を粒子径10μmのアルミナに被着した複合蛍光体を調製し、その複合蛍光体で上記スラリーを作製してバルブに塗布したものである。
【0032】
従来のサンプル3は、粒子径5μmのBAM、粒子径5μmのLAP、粒子径5μmのYOXを質量組成比15対50対35でスラリー中に混合したものをバルブに塗布した従来品である。
【0033】
次に、前記3種の蛍光ランプの光束比較を行った。表1にその結果を示す。なお、同色温度での光束を比較するために、調合比の微調整を行っている。
【0034】
【表1】
Figure 0003695744
【0035】
表1において、従来のサンプル3の光束は、塗付量4.5gにおける3635lmが最高値であり、それより塗付量が少なくても多くても光束は低下した。それに比較して、本発明のサンプル1、サンプル2は、同じ塗付量4.5gの場合には、従来より0.4%程度光束が低いが、塗付量が多くなると光束はそれを上回り、塗付量6.5gで、従来サンプルより2%以上高い光束値を示した。本発明のサンプル1、サンプル2における実際に使用する蛍光体の量は、担持したアルミナの質量がほとんどであって、塗付量6.5gで真の蛍光体含有量は1.3gである。このことから、本発明の複合蛍光体を使用することにより、従来の蛍光体を使用するよりも、蛍光ランプの光束が数%向上でき、なお且つ蛍光体の使用量を従来の1/3以下に抑えることができた。サンプル1とサンプル2の光束に違いがないことから、複合蛍光体の調整方法を変えても光束には影響がないことがわかる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の複合蛍光体及びこれを用いた蛍光ランプは、従来よりも使用する蛍光体の量を低減でき、なお且つ高い光束を示す蛍光ランプを提供できるものである。これにより、蛍光体中に含まれる希土類元素の量を低減することができる。そして、蛍光ランプに本発明の蛍光体を導入することにより、従来品より発光効率が高まるため、エネルギー消費量を減らすことも可能である。
【0037】
また、本発明の複合蛍光体の粒子が細かいことにより、蛍光体の製造コストの低減、ランプ製造時の色ずれ、色合わせの工程削減が可能であり、結果としてランプ製造コストの低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】1種類の希土類蛍光体を使用した本発明の複合蛍光体の模式図である。
【図2】2種類以上の希土類蛍光体を使用した本発明の複合蛍光体の模式図である。
【図3】本発明の複合蛍光体を使用した蛍光ランプの要部断面図である。
【図4】本発明の複合蛍光体と従来の蛍光体の輝度特性を示した図である。
【符号の説明】
1 希土類蛍光体
2 無機化合物(蛍光体を担持する粒子)
3 異なる2種類以上の希土類蛍光体
4 ガラスバルブ
5 コイル
6 口金
7 従来の蛍光体の粒子径に対する輝度特性カーブ
8 本発明の5μmの担持粒子を用いた複合蛍光体の輝度特性カーブ
9 本発明の15μmの担持粒子を用いた複合蛍光体の輝度特性カーブ

Claims (4)

  1. 粒子径が0.05μm以上、1.0μm以下であり、BaMgAl 10 17 :Eu 2+ 、LaPO 4 :Ce 3+ ,Tb 3+ 及びY 2 3 :Eu 3+ からなる群から選択された少なくとも一種の希土類蛍光体の粒子を、粒子径が5μm以上、15μm以下である酸化アルミニウムの粒子の表面に、乾式混合によって被着したことを特徴とする複合蛍光体。
  2. 前記希土類蛍光体の粒子が、2種類以上の蛍光体からなる請求項1に記載の複合蛍光体。
  3. バルブ内に放電ガスを充満した放電空間を有し、前記放電空間に電流を通電して発光する蛍光ランプにおいて、前記バルブ内面に、請求項1又は2に記載した複合蛍光体からなる層を形成したことを特徴とする蛍光ランプ。
  4. 前記蛍光ランプは、前記バルブと前記複合蛍光体からなる層との間に、シリコン、アルミニウム、イットリウム、セリウム、ゲルマニウム、チタン及び亜鉛からなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む無機酸化物の被膜をさらに含む請求項3に記載の蛍光ランプ。
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