JP3694201B2 - スペクトル拡散通信用復調装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スペクトル拡散通信方式を通信方式とする衛星移動通信システムなどに適用されるスペクトル拡散通信用復調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、通信衛星を介して移動通信を実現する衛星移動通信システムが知られている。この衛星移動通信システムには、スペクトル拡散通信方式を通信方式とするものがある。この種の衛星移動通信システムでは、送信機は、通信信号を疑似雑音符号(PN符号)で拡散することにより周波数帯域が広げられたスペクトル拡散信号を作成し、この作成されたスペクトル拡散信号を送信する。一方、受信機は、当該スペクトル拡散信号を受信し、この受信されたスペクトル拡散信号を逆拡散することにより元の通信信号を復元する。
【0003】
図7は、従来のスペクトル拡散受信機の構成を示すブロック図である。このスペクトル拡散受信機は、受信回路50により受信されたスペクトル拡散信号のレベルを調整した後ディジタル化し、その結果得られるディジタル信号を復調装置51により復調することにより元の通信信号を復元する。
【0004】
より詳述すれば、このスペクトル拡散受信機は、可変利得増幅回路52を備えている。可変利得増幅回路52は、AGC(Automatic Gain Control)回路54から帰還される利得制御信号に基づいて、受信されたスペクトル拡散信号の利得を調整する。その結果、一定レベルの拡散信号が得られる。利得調整後のスペクトル拡散信号は、A/D(Analog/Digital)変換回路53に与えられ、このA/D変換回路53においてディジタル信号に変換される。
【0005】
このディジタル信号は、復調装置51に与えられる。復調装置51は、復調回路55、相関検出回路56およびDLL(Delay Locked Loop)回路57を備えている。相関検出回路56は、ディジタル信号に基づいて相関値を検出する。また、相関検出回路56は、この相関値が求められたタイミングをタイミング信号としてDLL回路57に与える。
【0006】
DLL回路57は、受信されたスペクトル拡散信号を逆拡散する際のタイミングを追跡するものである。より詳述すれば、DLL回路57は、A/D変換回路53から与えられたディジタル信号を2系統に分配し、各ディジタル信号をそれぞれLate codeおよびEarly codeを使って逆拡散することにより、2つの相関レベル信号を得る。
【0007】
Late codeおよびEarly codeは、相関検出回路56から出力されるタイミング信号に基づいて発生されるものである。より具体的には、Late codeは、タイミング信号により規定されるPN符号の発生タイミングの中心から1/2チップ(1チップ(Δ)はPN符号の1ビット幅)だけ位相を遅らせたものである。したがって、ディジタル信号とLate codeとで得られる相関レベル信号は、図8(a)に示すように、−Δ/2を頂点とする三角形状の信号となる。一方、Early codeは、タイミング信号により規定されるPN符号の発生タイミングの中心から1/2チップだけ位相を進ませたものである。したがって、ディジタル信号とEarly codeとで得られる相関レベル信号は、図8(b)に示すように、+Δ/2を頂点とする三角形状の信号となる。
【0008】
さらに、DLL回路57は、各相関レベル信号を減算する。これにより、図8(c)に示すように、いわゆるSカーブ信号が得られる。このSカーブ信号の中心は、同期点となる。そのため、DLL回路57は、このSカーブ信号の中心にPN符号の発生タイミングがくるように、Sカーブ信号に基づいてPN符号の位相を制御する。これにより、逆拡散タイミングを追跡することができる。位相制御されたPN符号は、復調回路55に与えられる。
【0009】
復調回路55は、DLL回路57から与えられたPN符号を用いて上記ディジタル信号を逆拡散する。こうして、元の通信信号(通信データ)を復元する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スペクトル拡散通信では、信号成分の周波数帯域を拡散する。したがって、スペクトル拡散信号に含まれる信号成分は、非常に小さなレベルで受信されることになる。そのため、スペクトル拡散受信機において、信号成分と雑音成分との比であるC/Nは、非常に低い値となる。
【0011】
すなわち、DLL回路57は、この非常に低いC/Nのディジタル信号に基づいて、相関レベル信号を作成することになる。この場合、相関レベル信号は相対的に低レベルの信号となるから、結局、この低レベルの相関レベル信号から得られるSカーブ信号は、図9(a)に示すように、相対的に緩やかな傾斜60を有する特性となる。従来のスペクトル拡散受信機は、Sカーブ信号の傾斜が通常緩やかであることを考慮し、最悪のC/Nの場合に得られる極めて緩やかな傾斜を有するSカーブ信号でも良好に動作するように、設計されている。
【0012】
ところで、スペクトル拡散受信機単独で試験する場合および折返しループにより自己診断する場合などのように雑音成分が極めて少ない場合には、C/Nは非常に大きな値となる。この場合、DLL回路57において求められる相関レベル信号は相対的に高レベルとなる。したがって、Sカーブ信号は、図9(b)に示すように、相対的に急峻な傾斜61を有する特性となる。
【0013】
しかしながら、上述のように、従来のスペクトル拡散受信機は極めて緩やかな傾斜を有するSカーブ信号でも動作するように設計されているから、Sカーブ信号の傾斜があまりにも急峻だと非常に不安定になる。その結果、PN符号の位相制御を良好に行うことができなくなり、最終的に同期追跡不能となるおそれがある。
【0014】
これに対処するためには、C/Nを意図的に低い値に変更し、Sカーブ信号の傾斜を緩やかにする必要がある。すなわち、雑音成分をわざわざスペクトル拡散信号の中に混入しなければならず、非常に不便であった。
【0015】
そこで、この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、雑音成分が極めて少ない場合に、雑音成分をわざわざ混入してC/Nを意図的に低くしなくても、Sカーブ信号の傾斜を緩やかにすることができるスペクトル拡散通信用復調装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係るスペクトル拡散通信用復調装置は、スペクトル拡散信号を受信する受信回路と、その受信したスペクトル拡散信号が供給され、擬似雑音符号により逆拡散をして元の通信信号を復元する復調回路と、前記受信回路により受信したスペクトル拡散信号が供給され、そのスペクトル拡散信号と擬似雑音符号とに基いて各相関レベル信号を生成し、その各相関レベル信号を合成してSカーブ信号を作成するSカーブ信号作成回路と、このSカーブ信号作成回路により作成されたSカーブ信号の傾斜部における傾斜が一定となるように、その作成されたSカーブ信号の頂点におけるレベルを前記受信回路により受信したスペクトル拡散信号と前記擬似雑音符号との間の相関値に応じて制御するレベル制御回路と、その制御されたSカーブ信号の同期点において擬似雑音符号を発生させるようにその擬似雑音符号の位相を制御し、その位相の制御された擬似雑音符号を前記復調回路に供給する位相制御回路とを備えたものである。
請求項2に係るスペクトル拡散通信用復調装置は、スペクトル拡散信号を受信する受信回路と、その受信したスペクトル拡散信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路と、その変換されたデジタル信号を擬似雑音符号により逆拡散をして元の通信信号を復元する復調回路と、前記A/D変換回路により変換されたデジタル信号が供給され、そのデジタル信号と既知符号列との間の相関値を検出し、その相関値が検出されたときにタイミング信号を発生する相関検出回路と、前記タイミング信号に基いてSカーブ信号を作成するSカーブ信号作成回路と、前記相関値に応じてその作成されたSカーブ信号の傾斜部における傾斜を変化させて一定となるようにして、その一定の傾斜になったSカーブ信号を出力する制御演算回路と、この制御演算回路の出力をアナログ信号に変換するD/A変換回路と、そのアナログ信号に基いて擬似雑音符号の位相を制御し、その位相の制御された擬似雑音符号を前記復調回路に供給する擬似雑音符号発生回路とを備えたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
実施の形態1
図1は、この発明の実施の形態1に係るスペクトル拡散通信用復調装置が適用される衛星移動通信システムの構成を示す概念図である。この衛星移動通信システムは、基地局1、移動局2および通信衛星3を有し、基地局1と移動局2とが通信衛星3を介して無線信号を送受することにより、移動通信を実現するものである。
【0019】
より具体的には、この衛星移動通信システムは、通信方式として直接スペクトル拡散方式を利用している。すなわち、基地局1および移動局2は、通信データに基づいて一次変調信号を作成し、この一次変調信号と疑似雑音符号(以下「PN符号」という。)とを演算することにより、周波数帯域の広がったスペクトル拡散信号を作成する。
【0020】
基地局1および移動局2は、この作成されたスペクトル拡散信号を通信衛星3を介して移動局2および基地局1にそれぞれ送信する。基地局1および移動局2は、いずれも同じ構成のスペクトル拡散受信機4、5を有している。基地局1および移動局2は、このスペクトル拡散受信機4、5において受信されたスペクトル拡散信号をPN符号を使って逆拡散することによりスペクトル拡散信号を復調し、元の通信データを復元する。
【0021】
図2は、スペクトル拡散受信機4、5の構成を示すブロック図である。このスペクトル拡散受信機4、5は、受信回路10により受信されたスペクトル拡散信号を復調装置11においてディジタル的に復調するものである。より具体的には、このスペクトル拡散受信機4、5は、アナログ的なスペクトル拡散信号をディジタル信号に変換するA/D変換回路13を備えている。また、このスペクトル拡散受信機4、5は、復調装置11に入力されるディジタル信号の入力レベルを一定に保つための可変利得増幅回路12およびAGC回路14を備えている。
【0022】
受信回路10により受信されたスペクトル拡散信号は、可変利得増幅回路12に入力される。可変利得増幅回路12は、AGC回路14から出力された利得制御信号に応じて調整された利得でスペクトル拡散信号を増幅する。これにより、スペクトル拡散信号は所定の一定レベルの信号となる。増幅後のスペクトル拡散信号は、A/D変換回路13に与えられる。
【0023】
A/D変換回路13は、スペクトル拡散信号をディジタル信号に変換する。この場合、A/D変換回路13は、後述するように、復調装置11内のDLL回路17から出力されたクロック信号に応じてA/D変換処理を実行する。ディジタル信号は、AGC回路14および復調装置11に分配される。
【0024】
AGC回路14は、ディジタル信号に基づいて利得制御信号を作成する。具体的には、AGC回路14は、ディジタル信号のレベルを判定し、この判定されたレベルに応じて利得を決定する。AGC回路14は、この決定された利得でスペクトル拡散信号が増幅されるような利得制御信号を作成し、この作成された利得制御信号を可変利得増幅回路12に与える。こうして、可変利得増幅回路12は、一定レベルのスペクトル拡散信号を出力することができる。
【0025】
復調装置11は、復調回路15、相関検出回路16およびDLL回路17を備えている。A/D変換回路13から出力されるディジタル信号は、復調回路15、相関検出回路16およびDLL回路17に対して並列に与えられる。相関検出回路16は、ディジタル信号に基づいて逆拡散処理に必要なタイミング信号を作成する。具体的には、相関検出回路16は、ディジタル信号と既知符号列との間の相関値を検出するとともに、この相関値が検出されたタイミングをタイミング信号として作成する。この場合、相関検出回路16は、雑音成分が多いときには相対的に小さな相関値を検出し、信号成分が多いときには相対的に大きな相関値を検出する。すなわち、相関値は、信号成分レベルと雑音成分レベルとの比であるC/Nに等価である。相関検出回路16は、作成されたタイミング信号をDLL回路17に与える。また、相関検出回路16は、検出された相関値をDLL回路17に与える。
【0026】
DLL回路17は、ディジタル信号を逆拡散する際の逆拡散タイミングを追跡するために、復調回路15に与えるべきPN符号の位相を制御するものである。より詳述すれば、DLL回路17は、相関検出回路16から与えられたタイミング信号に基づいてSカーブ信号を作成する。また、DLL回路17は、この作成されたSカーブ信号を相関値に応じて制御し、この制御が施された後のSカーブ信号に基づいてPN符号の位相を制御する。DLL回路17は、この位相制御されたPN符号を復調回路15に与える。なお、DLL回路17は、上記Sカーブ信号をクロック信号としてA/D変換回路13に与える。
【0027】
復調回路15は、DLL回路17から与えられた位相制御済のPN符号とディジタル信号とを演算することにより、ディジタル信号を逆拡散する。その結果、元の一次変調信号が復元される。復調回路15は、さらに、この一次変調信号に対して一次変調処理とは逆の処理である一次復調処理を施すことにより、元の通信データを復元する。
【0028】
図3は、DLL回路17の内部構成を示すブロック図である。DLL回路17は、Sカーブ信号作成回路20を備えている。Sカーブ信号作成回路20は、A/D変換回路13から出力されたディジタル信号に基づいて、Sカーブ信号を作成するものである。より具体的には、Sカーブ信号作成回路20は、逆拡散回路21a、21b、フィルタ回路22a、22bおよび検波回路23a、23bからなる復調系統を2つ備えている。各逆拡散回路21a、21bは、ディジタル信号を逆拡散し、相関レベル信号を作成する。この場合、各逆拡散回路21a、21bは、それぞれ、Early codeおよびLate codeを使用する。すなわち、各逆拡散回路21a、21bは、それぞれ、ディジタル信号とEarly codeおよびLate codeとを演算することにより、相関レベル信号を作成する。逆拡散回路21a、21bから出力される相関レベル信号は、フィルタ回路22a、22bにおいて平滑化された後、検波回路23a、23bにおいて変調の影響が除去される。その後、相関レベル信号は、減算回路24に与えられる。
【0029】
ここに、Early codeおよびLate codeは、PN符号発生回路25において発生される。PN符号発生回路25は、相関検出回路16から与えられるタイミング信号に基づいて、Early codeおよびLate codeを発生する。上述のように、タイミング信号は、復調回路15における実際のPN符号の発生タイミングに相当する。PN符号発生回路25は、この発生タイミングから1/2チップだけ位相の進んだEarly codeを発生するとともに、上記発生タイミングから1/2チップだけ位相の遅れたLate codeを発生する。なお、1チップ(Δ)は、PN符号の1ビット幅に相当する。
【0030】
減算回路24は、各相関レベル信号を減算することにより、各相関レベル信号を合成する。その結果、Sカーブ信号が得られる。Sカーブ信号は、制御回路26に与えられる。制御回路26は、Sカーブ信号の傾斜を制御するものである。より具体的には、制御回路26は、図4に示すように、レベル制御演算回路26aを備えている。レベル制御演算回路26aには、Sカーブ信号および相関検出回路16から相関値が与えられる。
【0031】
レベル制御演算回路26aは、上記相関値に応じてSカーブ信号の傾斜部の傾斜を連続的に変化させる。具体的には、相関値が小さい場合、すなわちC/Nが低い値の場合、従来では、図5(a)に二点鎖線で示すように、緩やかな傾斜のSカーブ信号となる。これに対して、この実施の形態1では、レベル制御演算回路26aは、C/Nが低い値のときには、図5(a)に実線で示すように、Sカーブ信号の傾斜部35の傾斜を従来に比べて急峻なものにする。傾斜部35は、Sカーブ信号のうち−Δ/2に対応する頂点Aと+Δ/2に対応する頂点Bとを結ぶ部分である。そのため、言い換えるならば、レベル制御演算回路26aは、Sカーブ信号の各頂点A、Bをより高いレベルに変化させることにより、傾斜部35の傾斜を急峻なものとしている。
【0032】
また、相関値が大きい場合、すなわちC/Nが高い値の場合には、従来では、図5(b)に二点鎖線で示すように、急峻な傾斜のSカーブ信号となる。これに対して、この実施の形態1では、レベル制御演算回路26aは、C/Nが高い値のときには、図5(b)に実線で示すように、Sカーブ信号の傾斜部36の傾斜を従来に比べて緩やかなものとする。傾斜部36は、Sカーブ信号のうち−Δ/2に対応する頂点Cと+Δ/2に対応する頂点Dとを結ぶ部分である。そのため、言い換えるならば、レベル制御演算回路26aは、Sカーブ信号の各頂点C、Dをより低いレベルにすることにより、傾斜部35の傾斜を緩やかなものとしている。
【0033】
こうすることにより、C/Nの高低にかかわらずSカーブ信号の傾斜をほぼ一定のものとすることができる。レベル制御演算回路26aは、傾斜制御済のSカーブ信号を位相制御回路27に与える。
【0034】
位相制御回路27は、ループフィルタ回路28、D/A(Digital/Analog)変換回路29および電圧制御発振回路30を備えている。ループフィルタ回路28は、Sカーブ信号を平滑化し、この平滑化後のSカーブ信号をD/A変換回路29に与える。D/A変換回路29は、Sカーブ信号をアナログ信号に変換した後、このアナログ信号を制御電圧として電圧制御発振回路30に与える。電圧制御発振回路30は、この制御電圧に応じた位相制御信号を発生する。この発生された位相制御信号は、PN符号発生回路25に与えられる。PN符号発生回路25は、この位相制御信号に基づいてPN符号の位相を制御する。これにより、PN符号の位相を追跡制御することができ、その結果逆拡散タイミングを追跡することができる。また、上記発生された位相制御信号は、クロック信号としてA/D変換回路13にも与えられる。
【0035】
以上のようにこの実施の形態1によれば、C/Nに等価な相関値に基づいてSカーブ信号の傾斜を制御しているから、C/Nの高低に依存することなくSカーブ信号の傾斜をほぼ一定にすることができる。したがって、たとえばC/Nが極めて高い場合に、雑音成分をスペクトル拡散信号の中にわざわざ混入してC/Nを意図的に低くしなくても、Sカーブ信号の傾斜を自動的に緩やかにすることができる。そのため、C/Nに無関係に、受信されたスペクトル拡散信号を良好に復調することができる。ゆえに、復調安定性の向上が図られたスペクトル拡散受信機を提供することができる。
【0036】
実施の形態2
図6は、この発明の実施の形態2に係る制御回路の構成を示すブロック図である。以下の説明では、図2および図3を必要に応じて参照する。
【0037】
上記実施の形態1では、相関値の大小に応じてSカーブ信号の傾斜を連続的に制御している。これに対して、この実施の形態2では、相関値の大小に基づいてSカーブ信号の傾斜を段階的に制御する。
【0038】
より詳述すれば、この実施の形態2に係る制御回路26は、2つの入力端子40a、40bおよび1つの出力端子40cを有する切替回路40を備えている。入力端子40a、40bを2つ設けているのは、この実施の形態2では、Sカーブ信号の傾斜を2段階で制御するためである。一方の入力端子40bには、減衰演算回路41が接続されている。減衰演算回路41は、減算回路24から出力されたSカーブ信号の傾斜が所定の傾きになるようにSカーブ信号のレベルを減衰させるものである。すなわち、一方の入力端子40bには、相対的に傾斜の緩やかなSカーブ信号が入力することになる。他方の入力端子40aには、減算回路24から出力されたSカーブ信号がそのまま入力される。すなわち、他方の入力端子40aには、相対的に傾斜の急峻なSカーブ信号が入力することになる。切替回路40は、この2つの入力端子40a、40bを選択的に出力端子40cに接続させる。
【0039】
切替回路40における切替処理は、相関値に基づいて制御される。すなわち、切替回路40は、相関値の大小に応じて2つの入力端子40a、40bのうちいずれを出力端子40cに接続させるかを決定する。より具体的には、切替回路40は、相関値が相対的に大きい値の場合には、相対的に傾斜の緩やかなSカーブ信号が入力される入力端子40bを出力端子40cに接続させる。これに対して、切替回路40は、相関値が相対的に小さい値の場合には、相対的に傾斜の急峻なSカーブ信号がそのまま入力される入力端子40aを出力端子40cに接続させる。したがって、制御回路26からは、相関値の大小に応じた2段階の傾斜のSカーブ信号が出力されることになる。
【0040】
以上のようにこの実施の形態2によれば、相関値の大小に応じた傾斜のSカーブ信号が得られるから、実施の形態1の場合と同様に、C/Nの高低に依存することなくSカーブ信号の傾斜をほぼ一定にすることができる。しかも、相関値の大小に応じてSカーブ信号の傾斜を連続的に制御しないから、処理の簡素化を図ることができる。
【0041】
なお、上記の説明では、Sカーブ信号の傾斜を2段階で制御する場合を例にとっている。しかし、Sカーブ信号の傾斜を3段階以上で制御するようにしてもよいことはもちろんである。
【0042】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、C/Nに等価な相関値に応じてSカーブ信号の傾斜を制御するから、C/Nの高低にかかわらずSカーブ信号の傾斜をほぼ一定のものとすることができる。特に、C/Nが高い場合に、雑音成分をスペクトル拡散信号の中にわざわざ混入してC/Nを意図的に低くしなくても、Sカーブ信号の傾斜を緩やかなものにすることができる。そのため、C/Nの高低に依存することなく復調処理を良好に行うことができる。ゆえに、復調安定性が向上されたスペクトル拡散通信用復調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係るスペクトル拡散通信用復調装置が適用される衛星移動通信システムの構成を示す概念図である。
【図2】 スペクトル拡散受信機の構成を示すブロック図である。
【図3】 DLL回路の内部構成を示すブロック図である。
【図4】 制御回路の内部構成を示すブロック図である。
【図5】 Sカーブ信号の傾斜制御について説明するための図である。
【図6】 この発明の実施の形態2に係る制御回路の構成を示すブロック図である。
【図7】 従来のスペクトル拡散受信機の構成を示すブロック図である。
【図8】 Late codeに基づく相関レベル信号、Early codeに基づく相関レベル信号およびSカーブ信号について説明するための図である。
【図9】 Sカーブ信号の傾斜変動について説明するための図である。
【符号の説明】
4、5 スペクトル拡散受信機、11 復調装置、15 復調回路、16 相関検出回路、17 DLL回路、20 Sカーブ信号作成回路、26 制御回路、26a レベル制御演算回路、27 位相制御回路、40 切替回路、41 減衰演算回路。
【発明の属する技術分野】
この発明は、スペクトル拡散通信方式を通信方式とする衛星移動通信システムなどに適用されるスペクトル拡散通信用復調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、通信衛星を介して移動通信を実現する衛星移動通信システムが知られている。この衛星移動通信システムには、スペクトル拡散通信方式を通信方式とするものがある。この種の衛星移動通信システムでは、送信機は、通信信号を疑似雑音符号(PN符号)で拡散することにより周波数帯域が広げられたスペクトル拡散信号を作成し、この作成されたスペクトル拡散信号を送信する。一方、受信機は、当該スペクトル拡散信号を受信し、この受信されたスペクトル拡散信号を逆拡散することにより元の通信信号を復元する。
【0003】
図7は、従来のスペクトル拡散受信機の構成を示すブロック図である。このスペクトル拡散受信機は、受信回路50により受信されたスペクトル拡散信号のレベルを調整した後ディジタル化し、その結果得られるディジタル信号を復調装置51により復調することにより元の通信信号を復元する。
【0004】
より詳述すれば、このスペクトル拡散受信機は、可変利得増幅回路52を備えている。可変利得増幅回路52は、AGC(Automatic Gain Control)回路54から帰還される利得制御信号に基づいて、受信されたスペクトル拡散信号の利得を調整する。その結果、一定レベルの拡散信号が得られる。利得調整後のスペクトル拡散信号は、A/D(Analog/Digital)変換回路53に与えられ、このA/D変換回路53においてディジタル信号に変換される。
【0005】
このディジタル信号は、復調装置51に与えられる。復調装置51は、復調回路55、相関検出回路56およびDLL(Delay Locked Loop)回路57を備えている。相関検出回路56は、ディジタル信号に基づいて相関値を検出する。また、相関検出回路56は、この相関値が求められたタイミングをタイミング信号としてDLL回路57に与える。
【0006】
DLL回路57は、受信されたスペクトル拡散信号を逆拡散する際のタイミングを追跡するものである。より詳述すれば、DLL回路57は、A/D変換回路53から与えられたディジタル信号を2系統に分配し、各ディジタル信号をそれぞれLate codeおよびEarly codeを使って逆拡散することにより、2つの相関レベル信号を得る。
【0007】
Late codeおよびEarly codeは、相関検出回路56から出力されるタイミング信号に基づいて発生されるものである。より具体的には、Late codeは、タイミング信号により規定されるPN符号の発生タイミングの中心から1/2チップ(1チップ(Δ)はPN符号の1ビット幅)だけ位相を遅らせたものである。したがって、ディジタル信号とLate codeとで得られる相関レベル信号は、図8(a)に示すように、−Δ/2を頂点とする三角形状の信号となる。一方、Early codeは、タイミング信号により規定されるPN符号の発生タイミングの中心から1/2チップだけ位相を進ませたものである。したがって、ディジタル信号とEarly codeとで得られる相関レベル信号は、図8(b)に示すように、+Δ/2を頂点とする三角形状の信号となる。
【0008】
さらに、DLL回路57は、各相関レベル信号を減算する。これにより、図8(c)に示すように、いわゆるSカーブ信号が得られる。このSカーブ信号の中心は、同期点となる。そのため、DLL回路57は、このSカーブ信号の中心にPN符号の発生タイミングがくるように、Sカーブ信号に基づいてPN符号の位相を制御する。これにより、逆拡散タイミングを追跡することができる。位相制御されたPN符号は、復調回路55に与えられる。
【0009】
復調回路55は、DLL回路57から与えられたPN符号を用いて上記ディジタル信号を逆拡散する。こうして、元の通信信号(通信データ)を復元する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スペクトル拡散通信では、信号成分の周波数帯域を拡散する。したがって、スペクトル拡散信号に含まれる信号成分は、非常に小さなレベルで受信されることになる。そのため、スペクトル拡散受信機において、信号成分と雑音成分との比であるC/Nは、非常に低い値となる。
【0011】
すなわち、DLL回路57は、この非常に低いC/Nのディジタル信号に基づいて、相関レベル信号を作成することになる。この場合、相関レベル信号は相対的に低レベルの信号となるから、結局、この低レベルの相関レベル信号から得られるSカーブ信号は、図9(a)に示すように、相対的に緩やかな傾斜60を有する特性となる。従来のスペクトル拡散受信機は、Sカーブ信号の傾斜が通常緩やかであることを考慮し、最悪のC/Nの場合に得られる極めて緩やかな傾斜を有するSカーブ信号でも良好に動作するように、設計されている。
【0012】
ところで、スペクトル拡散受信機単独で試験する場合および折返しループにより自己診断する場合などのように雑音成分が極めて少ない場合には、C/Nは非常に大きな値となる。この場合、DLL回路57において求められる相関レベル信号は相対的に高レベルとなる。したがって、Sカーブ信号は、図9(b)に示すように、相対的に急峻な傾斜61を有する特性となる。
【0013】
しかしながら、上述のように、従来のスペクトル拡散受信機は極めて緩やかな傾斜を有するSカーブ信号でも動作するように設計されているから、Sカーブ信号の傾斜があまりにも急峻だと非常に不安定になる。その結果、PN符号の位相制御を良好に行うことができなくなり、最終的に同期追跡不能となるおそれがある。
【0014】
これに対処するためには、C/Nを意図的に低い値に変更し、Sカーブ信号の傾斜を緩やかにする必要がある。すなわち、雑音成分をわざわざスペクトル拡散信号の中に混入しなければならず、非常に不便であった。
【0015】
そこで、この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、雑音成分が極めて少ない場合に、雑音成分をわざわざ混入してC/Nを意図的に低くしなくても、Sカーブ信号の傾斜を緩やかにすることができるスペクトル拡散通信用復調装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係るスペクトル拡散通信用復調装置は、スペクトル拡散信号を受信する受信回路と、その受信したスペクトル拡散信号が供給され、擬似雑音符号により逆拡散をして元の通信信号を復元する復調回路と、前記受信回路により受信したスペクトル拡散信号が供給され、そのスペクトル拡散信号と擬似雑音符号とに基いて各相関レベル信号を生成し、その各相関レベル信号を合成してSカーブ信号を作成するSカーブ信号作成回路と、このSカーブ信号作成回路により作成されたSカーブ信号の傾斜部における傾斜が一定となるように、その作成されたSカーブ信号の頂点におけるレベルを前記受信回路により受信したスペクトル拡散信号と前記擬似雑音符号との間の相関値に応じて制御するレベル制御回路と、その制御されたSカーブ信号の同期点において擬似雑音符号を発生させるようにその擬似雑音符号の位相を制御し、その位相の制御された擬似雑音符号を前記復調回路に供給する位相制御回路とを備えたものである。
請求項2に係るスペクトル拡散通信用復調装置は、スペクトル拡散信号を受信する受信回路と、その受信したスペクトル拡散信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路と、その変換されたデジタル信号を擬似雑音符号により逆拡散をして元の通信信号を復元する復調回路と、前記A/D変換回路により変換されたデジタル信号が供給され、そのデジタル信号と既知符号列との間の相関値を検出し、その相関値が検出されたときにタイミング信号を発生する相関検出回路と、前記タイミング信号に基いてSカーブ信号を作成するSカーブ信号作成回路と、前記相関値に応じてその作成されたSカーブ信号の傾斜部における傾斜を変化させて一定となるようにして、その一定の傾斜になったSカーブ信号を出力する制御演算回路と、この制御演算回路の出力をアナログ信号に変換するD/A変換回路と、そのアナログ信号に基いて擬似雑音符号の位相を制御し、その位相の制御された擬似雑音符号を前記復調回路に供給する擬似雑音符号発生回路とを備えたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
実施の形態1
図1は、この発明の実施の形態1に係るスペクトル拡散通信用復調装置が適用される衛星移動通信システムの構成を示す概念図である。この衛星移動通信システムは、基地局1、移動局2および通信衛星3を有し、基地局1と移動局2とが通信衛星3を介して無線信号を送受することにより、移動通信を実現するものである。
【0019】
より具体的には、この衛星移動通信システムは、通信方式として直接スペクトル拡散方式を利用している。すなわち、基地局1および移動局2は、通信データに基づいて一次変調信号を作成し、この一次変調信号と疑似雑音符号(以下「PN符号」という。)とを演算することにより、周波数帯域の広がったスペクトル拡散信号を作成する。
【0020】
基地局1および移動局2は、この作成されたスペクトル拡散信号を通信衛星3を介して移動局2および基地局1にそれぞれ送信する。基地局1および移動局2は、いずれも同じ構成のスペクトル拡散受信機4、5を有している。基地局1および移動局2は、このスペクトル拡散受信機4、5において受信されたスペクトル拡散信号をPN符号を使って逆拡散することによりスペクトル拡散信号を復調し、元の通信データを復元する。
【0021】
図2は、スペクトル拡散受信機4、5の構成を示すブロック図である。このスペクトル拡散受信機4、5は、受信回路10により受信されたスペクトル拡散信号を復調装置11においてディジタル的に復調するものである。より具体的には、このスペクトル拡散受信機4、5は、アナログ的なスペクトル拡散信号をディジタル信号に変換するA/D変換回路13を備えている。また、このスペクトル拡散受信機4、5は、復調装置11に入力されるディジタル信号の入力レベルを一定に保つための可変利得増幅回路12およびAGC回路14を備えている。
【0022】
受信回路10により受信されたスペクトル拡散信号は、可変利得増幅回路12に入力される。可変利得増幅回路12は、AGC回路14から出力された利得制御信号に応じて調整された利得でスペクトル拡散信号を増幅する。これにより、スペクトル拡散信号は所定の一定レベルの信号となる。増幅後のスペクトル拡散信号は、A/D変換回路13に与えられる。
【0023】
A/D変換回路13は、スペクトル拡散信号をディジタル信号に変換する。この場合、A/D変換回路13は、後述するように、復調装置11内のDLL回路17から出力されたクロック信号に応じてA/D変換処理を実行する。ディジタル信号は、AGC回路14および復調装置11に分配される。
【0024】
AGC回路14は、ディジタル信号に基づいて利得制御信号を作成する。具体的には、AGC回路14は、ディジタル信号のレベルを判定し、この判定されたレベルに応じて利得を決定する。AGC回路14は、この決定された利得でスペクトル拡散信号が増幅されるような利得制御信号を作成し、この作成された利得制御信号を可変利得増幅回路12に与える。こうして、可変利得増幅回路12は、一定レベルのスペクトル拡散信号を出力することができる。
【0025】
復調装置11は、復調回路15、相関検出回路16およびDLL回路17を備えている。A/D変換回路13から出力されるディジタル信号は、復調回路15、相関検出回路16およびDLL回路17に対して並列に与えられる。相関検出回路16は、ディジタル信号に基づいて逆拡散処理に必要なタイミング信号を作成する。具体的には、相関検出回路16は、ディジタル信号と既知符号列との間の相関値を検出するとともに、この相関値が検出されたタイミングをタイミング信号として作成する。この場合、相関検出回路16は、雑音成分が多いときには相対的に小さな相関値を検出し、信号成分が多いときには相対的に大きな相関値を検出する。すなわち、相関値は、信号成分レベルと雑音成分レベルとの比であるC/Nに等価である。相関検出回路16は、作成されたタイミング信号をDLL回路17に与える。また、相関検出回路16は、検出された相関値をDLL回路17に与える。
【0026】
DLL回路17は、ディジタル信号を逆拡散する際の逆拡散タイミングを追跡するために、復調回路15に与えるべきPN符号の位相を制御するものである。より詳述すれば、DLL回路17は、相関検出回路16から与えられたタイミング信号に基づいてSカーブ信号を作成する。また、DLL回路17は、この作成されたSカーブ信号を相関値に応じて制御し、この制御が施された後のSカーブ信号に基づいてPN符号の位相を制御する。DLL回路17は、この位相制御されたPN符号を復調回路15に与える。なお、DLL回路17は、上記Sカーブ信号をクロック信号としてA/D変換回路13に与える。
【0027】
復調回路15は、DLL回路17から与えられた位相制御済のPN符号とディジタル信号とを演算することにより、ディジタル信号を逆拡散する。その結果、元の一次変調信号が復元される。復調回路15は、さらに、この一次変調信号に対して一次変調処理とは逆の処理である一次復調処理を施すことにより、元の通信データを復元する。
【0028】
図3は、DLL回路17の内部構成を示すブロック図である。DLL回路17は、Sカーブ信号作成回路20を備えている。Sカーブ信号作成回路20は、A/D変換回路13から出力されたディジタル信号に基づいて、Sカーブ信号を作成するものである。より具体的には、Sカーブ信号作成回路20は、逆拡散回路21a、21b、フィルタ回路22a、22bおよび検波回路23a、23bからなる復調系統を2つ備えている。各逆拡散回路21a、21bは、ディジタル信号を逆拡散し、相関レベル信号を作成する。この場合、各逆拡散回路21a、21bは、それぞれ、Early codeおよびLate codeを使用する。すなわち、各逆拡散回路21a、21bは、それぞれ、ディジタル信号とEarly codeおよびLate codeとを演算することにより、相関レベル信号を作成する。逆拡散回路21a、21bから出力される相関レベル信号は、フィルタ回路22a、22bにおいて平滑化された後、検波回路23a、23bにおいて変調の影響が除去される。その後、相関レベル信号は、減算回路24に与えられる。
【0029】
ここに、Early codeおよびLate codeは、PN符号発生回路25において発生される。PN符号発生回路25は、相関検出回路16から与えられるタイミング信号に基づいて、Early codeおよびLate codeを発生する。上述のように、タイミング信号は、復調回路15における実際のPN符号の発生タイミングに相当する。PN符号発生回路25は、この発生タイミングから1/2チップだけ位相の進んだEarly codeを発生するとともに、上記発生タイミングから1/2チップだけ位相の遅れたLate codeを発生する。なお、1チップ(Δ)は、PN符号の1ビット幅に相当する。
【0030】
減算回路24は、各相関レベル信号を減算することにより、各相関レベル信号を合成する。その結果、Sカーブ信号が得られる。Sカーブ信号は、制御回路26に与えられる。制御回路26は、Sカーブ信号の傾斜を制御するものである。より具体的には、制御回路26は、図4に示すように、レベル制御演算回路26aを備えている。レベル制御演算回路26aには、Sカーブ信号および相関検出回路16から相関値が与えられる。
【0031】
レベル制御演算回路26aは、上記相関値に応じてSカーブ信号の傾斜部の傾斜を連続的に変化させる。具体的には、相関値が小さい場合、すなわちC/Nが低い値の場合、従来では、図5(a)に二点鎖線で示すように、緩やかな傾斜のSカーブ信号となる。これに対して、この実施の形態1では、レベル制御演算回路26aは、C/Nが低い値のときには、図5(a)に実線で示すように、Sカーブ信号の傾斜部35の傾斜を従来に比べて急峻なものにする。傾斜部35は、Sカーブ信号のうち−Δ/2に対応する頂点Aと+Δ/2に対応する頂点Bとを結ぶ部分である。そのため、言い換えるならば、レベル制御演算回路26aは、Sカーブ信号の各頂点A、Bをより高いレベルに変化させることにより、傾斜部35の傾斜を急峻なものとしている。
【0032】
また、相関値が大きい場合、すなわちC/Nが高い値の場合には、従来では、図5(b)に二点鎖線で示すように、急峻な傾斜のSカーブ信号となる。これに対して、この実施の形態1では、レベル制御演算回路26aは、C/Nが高い値のときには、図5(b)に実線で示すように、Sカーブ信号の傾斜部36の傾斜を従来に比べて緩やかなものとする。傾斜部36は、Sカーブ信号のうち−Δ/2に対応する頂点Cと+Δ/2に対応する頂点Dとを結ぶ部分である。そのため、言い換えるならば、レベル制御演算回路26aは、Sカーブ信号の各頂点C、Dをより低いレベルにすることにより、傾斜部35の傾斜を緩やかなものとしている。
【0033】
こうすることにより、C/Nの高低にかかわらずSカーブ信号の傾斜をほぼ一定のものとすることができる。レベル制御演算回路26aは、傾斜制御済のSカーブ信号を位相制御回路27に与える。
【0034】
位相制御回路27は、ループフィルタ回路28、D/A(Digital/Analog)変換回路29および電圧制御発振回路30を備えている。ループフィルタ回路28は、Sカーブ信号を平滑化し、この平滑化後のSカーブ信号をD/A変換回路29に与える。D/A変換回路29は、Sカーブ信号をアナログ信号に変換した後、このアナログ信号を制御電圧として電圧制御発振回路30に与える。電圧制御発振回路30は、この制御電圧に応じた位相制御信号を発生する。この発生された位相制御信号は、PN符号発生回路25に与えられる。PN符号発生回路25は、この位相制御信号に基づいてPN符号の位相を制御する。これにより、PN符号の位相を追跡制御することができ、その結果逆拡散タイミングを追跡することができる。また、上記発生された位相制御信号は、クロック信号としてA/D変換回路13にも与えられる。
【0035】
以上のようにこの実施の形態1によれば、C/Nに等価な相関値に基づいてSカーブ信号の傾斜を制御しているから、C/Nの高低に依存することなくSカーブ信号の傾斜をほぼ一定にすることができる。したがって、たとえばC/Nが極めて高い場合に、雑音成分をスペクトル拡散信号の中にわざわざ混入してC/Nを意図的に低くしなくても、Sカーブ信号の傾斜を自動的に緩やかにすることができる。そのため、C/Nに無関係に、受信されたスペクトル拡散信号を良好に復調することができる。ゆえに、復調安定性の向上が図られたスペクトル拡散受信機を提供することができる。
【0036】
実施の形態2
図6は、この発明の実施の形態2に係る制御回路の構成を示すブロック図である。以下の説明では、図2および図3を必要に応じて参照する。
【0037】
上記実施の形態1では、相関値の大小に応じてSカーブ信号の傾斜を連続的に制御している。これに対して、この実施の形態2では、相関値の大小に基づいてSカーブ信号の傾斜を段階的に制御する。
【0038】
より詳述すれば、この実施の形態2に係る制御回路26は、2つの入力端子40a、40bおよび1つの出力端子40cを有する切替回路40を備えている。入力端子40a、40bを2つ設けているのは、この実施の形態2では、Sカーブ信号の傾斜を2段階で制御するためである。一方の入力端子40bには、減衰演算回路41が接続されている。減衰演算回路41は、減算回路24から出力されたSカーブ信号の傾斜が所定の傾きになるようにSカーブ信号のレベルを減衰させるものである。すなわち、一方の入力端子40bには、相対的に傾斜の緩やかなSカーブ信号が入力することになる。他方の入力端子40aには、減算回路24から出力されたSカーブ信号がそのまま入力される。すなわち、他方の入力端子40aには、相対的に傾斜の急峻なSカーブ信号が入力することになる。切替回路40は、この2つの入力端子40a、40bを選択的に出力端子40cに接続させる。
【0039】
切替回路40における切替処理は、相関値に基づいて制御される。すなわち、切替回路40は、相関値の大小に応じて2つの入力端子40a、40bのうちいずれを出力端子40cに接続させるかを決定する。より具体的には、切替回路40は、相関値が相対的に大きい値の場合には、相対的に傾斜の緩やかなSカーブ信号が入力される入力端子40bを出力端子40cに接続させる。これに対して、切替回路40は、相関値が相対的に小さい値の場合には、相対的に傾斜の急峻なSカーブ信号がそのまま入力される入力端子40aを出力端子40cに接続させる。したがって、制御回路26からは、相関値の大小に応じた2段階の傾斜のSカーブ信号が出力されることになる。
【0040】
以上のようにこの実施の形態2によれば、相関値の大小に応じた傾斜のSカーブ信号が得られるから、実施の形態1の場合と同様に、C/Nの高低に依存することなくSカーブ信号の傾斜をほぼ一定にすることができる。しかも、相関値の大小に応じてSカーブ信号の傾斜を連続的に制御しないから、処理の簡素化を図ることができる。
【0041】
なお、上記の説明では、Sカーブ信号の傾斜を2段階で制御する場合を例にとっている。しかし、Sカーブ信号の傾斜を3段階以上で制御するようにしてもよいことはもちろんである。
【0042】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、C/Nに等価な相関値に応じてSカーブ信号の傾斜を制御するから、C/Nの高低にかかわらずSカーブ信号の傾斜をほぼ一定のものとすることができる。特に、C/Nが高い場合に、雑音成分をスペクトル拡散信号の中にわざわざ混入してC/Nを意図的に低くしなくても、Sカーブ信号の傾斜を緩やかなものにすることができる。そのため、C/Nの高低に依存することなく復調処理を良好に行うことができる。ゆえに、復調安定性が向上されたスペクトル拡散通信用復調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係るスペクトル拡散通信用復調装置が適用される衛星移動通信システムの構成を示す概念図である。
【図2】 スペクトル拡散受信機の構成を示すブロック図である。
【図3】 DLL回路の内部構成を示すブロック図である。
【図4】 制御回路の内部構成を示すブロック図である。
【図5】 Sカーブ信号の傾斜制御について説明するための図である。
【図6】 この発明の実施の形態2に係る制御回路の構成を示すブロック図である。
【図7】 従来のスペクトル拡散受信機の構成を示すブロック図である。
【図8】 Late codeに基づく相関レベル信号、Early codeに基づく相関レベル信号およびSカーブ信号について説明するための図である。
【図9】 Sカーブ信号の傾斜変動について説明するための図である。
【符号の説明】
4、5 スペクトル拡散受信機、11 復調装置、15 復調回路、16 相関検出回路、17 DLL回路、20 Sカーブ信号作成回路、26 制御回路、26a レベル制御演算回路、27 位相制御回路、40 切替回路、41 減衰演算回路。
Claims (2)
- スペクトル拡散信号を受信する受信回路と、その受信したスペクトル拡散信号が供給され、擬似雑音符号により逆拡散をして元の通信信号を復元する復調回路と、前記受信回路により受信したスペクトル拡散信号が供給され、そのスペクトル拡散信号と擬似雑音符号とに基いて各相関レベル信号を生成し、その各相関レベル信号を合成してSカーブ信号を作成するSカーブ信号作成回路と、このSカーブ信号作成回路により作成されたSカーブ信号の傾斜部における傾斜が一定となるように、その作成されたSカーブ信号の頂点におけるレベルを前記受信回路により受信したスペクトル拡散信号と前記擬似雑音符号との間の相関値に応じて制御するレベル制御回路と、その制御されたSカーブ信号の同期点において擬似雑音符号を発生させるようにその擬似雑音符号の位相を制御し、その位相の制御された擬似雑音符号を前記復調回路に供給する位相制御回路とを備えたことを特徴とするスペクトル拡散通信用復調装置。
- スペクトル拡散信号を受信する受信回路と、その受信したスペクトル拡散信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路と、その変換されたデジタル信号を擬似雑音符号により逆拡散をして元の通信信号を復元する復調回路と、前記A/D変換回路により変換されたデジタル信号が供給され、そのデジタル信号と既知符号列との間の相関値を検出し、その相関値が検出されたときにタイミング信号を発生する相関検出回路と、前記タイミング信号に基いてSカーブ信号を作成するSカーブ信号作成回路と、前記相関値に応じてその作成されたSカーブ信号の傾斜部における傾斜を変化させて一定となるようにして、その一定の傾斜になったSカーブ信号を出力する制御演算回路と、この制御演算回路の出力をアナログ信号に変換するD/A変換回路と、そのアナログ信号に基いて擬似雑音符号の位相を制御し、その位相の制御された擬似雑音符号を前記復調回路に供給する擬似雑音符号発生回路とを備えたことを特徴とするスペクトル拡散通信用復調装置。
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