JP3692168B2 - 高レジリエンスポリウレタンフォーム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリウレタンフォームに関し、より詳細には、高レジリエンス(HR)ポリウレタンフォームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高密度(すなわち、約60〜100kg/m3 )ラテックスフォームは、硬度、耐力、耐久性、強度のような物理的性質と快適性や許容される表面テクスチャー(感触)といった主観的な性質とが結びついて、多くの用途(特に、クッションや寝具類)で使用するのに適している。高密度ラテックスフォームはこうした分野での好ましいフォームであり、他のフォームを判定する際の標準品となっている。
【0003】
軟質トップパッドラテックスフォームと中硬度フルマットレスラテックスフォームに関して、より重要な性質のいくつかを表1にまとめてある。
【0004】
【表1】
Figure 0003692168
【0005】
快適性は主観的な性質であるが、例えば、ヒストリシス損および垂れ計数(ILD65%/ILD25%)の値はその目安とするために使用される。促進老化状態と全規模有効寿命状態との相関関係を確立するためのアプローチとなる静的疲れは、乾燥および湿潤条件下での圧縮試験により測定される。また、動的疲れ特性も促進老化状態と全規模有効寿命状態との関係に関連しているが、それらはフォームマットレスが長期使用中に軟化する性質を考慮に入れている。静的および動的疲れ特性は耐久力の指標となる。
【0006】
ラテックスフォームの表面テクスチャー(感触)は試験法ISO 4287/1に従って測定することができ、この方法は適当な駆動装置を使って表面に沿って連続移動するピックアップまたは針のトレースを記録することによる表面の二次元測定を含むものである。予め決められた長さの表面上で針を連続移動させて得られたトレースを評価することにより、次の値を得ることができる。
【0007】
粗さのプロフィール(R):平均線(トレースの全体的な波打ちと形状を表す線であって、この線から上および下のプロフィールの面積が等しくなるようにトレースのプロフィールを切断する線)からの全プロフィールのずれを表す;
【0008】
平均粗さ深さ(RZ):5つの連続するサンプル長さから得られた山−谷の値の平均(5つの連続するサンプル長さの合計をlm とする);
【0009】
平均粗さ(RA):長さlm の範囲内の粗さのプロフィールRのすべての値の算術平均;
【0010】
最大粗さ深さ(RT):測定長さlm の範囲内の最高山と最低谷の間の最大垂直距離;
および最大粗さ深さ(Rmax ):測定長さlm の範囲内の5つの山−谷の値のうちの最大値。
【0011】
Perthometer S8P装置を用いて測定した、トップパッドラテックスの代表的な数値は次のとおりである。
【0012】
粗面 平滑面
RZ 62.3μm 42.7μ
RA 11.5μm 9.2μ
RT 117μm 65.7μ
Rmax 82.6μm 65.7μ
【0013】
その他のラテックス製品はこれより高い値をもたらし、例えば、粗面に関しては、140または多分それよりわずかに高いRZ、30または多分それよりわずかに高いRA、250ほどに高いRT、そして230ほどに高いRmax を与えるだろう。
【0014】
一番に指標となる値はRAの値であり、次に指標となる値はRAとRZの組合せであると考えられる。
【0015】
ポリウレタンフォームはラテックスフォームよりも高い固有の燃焼抵抗特性を有し、しかもそれらはリサイクルが可能であることから、ラテックスフォームに代わり得るポリウレタンフォームを製造することが望ましく、多くの試みがなされてきた。しかし、Perthometer S8P装置を用いて測定した通常の高密度高レジリエンスポリウレタンフォームの表面テクスチャーの代表的なRAおよびRZ値は、RA=40μmおよびRZ=190μmであり、ラテックスフォームの一般的な数値範囲よりもかなり高いものである。
【0016】
ラテックス様高レジリエンスポリウレタンフォームを製造する試みの一例は、高分子量の反応性トリオール(すなわち、分子量約6000のトリオール)と改質トルエンジイソシアネート(TDI)を使用することに基づく。これらのフォームはラテックスの物理的性質を達成する方へいくらか近づいたが、それらは依然として高レジリエンスフォームのざらざらする感触を保持しており、それゆえ、当技術分野ではあまり受け入れられていない。さらに、引裂強さや湿潤圧縮永久歪性能の低下を避けるために、比較的高いイソシアネート指数の配合物を使用したために、これらのフォームは中程度から高い硬度を有する。
【0017】
ラテックスに匹敵するフォームを製造する別の試みは、粘性のメチレンジ(フェニルイソシアネート)プレポリマーを用いて行われた。しかし、これらのフォームはいくつかの欠点および不利益を抱えていた。前の段落で述べたフォームと同様に、これらのフォームもラテックスのような感触を持ち合わせず、しかも引裂強さ特性が低かった。さらに、粘性イソシアネートプレポリマーを使用することは特殊な装置の使用を必要とし、このことはフォーム製品のコストを引き上げた。その上、フォーム製品からは不快な臭気が発生し、この臭気は反応プロセスで用いた触媒とメチレンジ(フェニルイソシアネート)プレポリマー含有配合物の両方から発生していた。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特殊な装置を使わずに、ラテックスの表面テクスチャー(きめ)に匹敵する表面テクスチャーを有し、かつラテックスの物理的性質に近似するまたは匹敵する物理的性質を有する高レジリエンスポリウレタンフォームを製造することである。
【0019】
本発明者らは、この目的が新規なポリオールブレンドと改質トルエンジイソシアネートとを組み合わせることにより達成しうることを見いだした。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の実施態様によると、高レジリエンスポリウレタンフォームで用いる種類の反応性ポリマーポリオール、通常のポリウレタンフォームで用いる種類のポリオール、および連鎖延長剤としてのジオールを含有するポリオールブレンドが提供される。
【0021】
本発明の第二の実施態様によると、前記のポリオールブレンドと通常のポリウレタンフォームで用いる種類のシリコーン界面活性剤を含有する組成物が提供される。
【0022】
本発明は、さらに、前記のポリオールブレンドと改質トルエンジイソシアネートとを、高レジリエンスポリウレタンフォームで用いる種類のシリコーン界面活性剤の存在下で反応させることにより得られる高レジリエンスポリウレタンフォームを提供する。高レジリエンスフォームは、特に、ISO 2349に従って測定されるILD65%/ILD25%比が2.5以上となることにより、通常のフォームと区別することができる。
【0023】
本発明を用いると、ラテックスフォームの表面テクスチャーに匹敵する表面テクスチャーを有し、特に、(上で定義した)RA値が35μm以下で、30または25μm以下でさえあり、そして(上で定義した)RZ値が150μm以下で、100μm以下でさえある高レジリエンスポリウレタンフォームを初めて得ることができる。RT値が200μm以下で、150または125μm以下でさえあり、Rmax 値が200μm以下で、150または125μm以下でさえあるものも得られる。
【0024】
「通常のポリウレタンフォーム」とは、高レジリエンスフォームではないポリウレタンフォームを意味する。詳細には、通常のポリウレタンフォームはILD65%/ILD25%比が2.5未満のものであるだろう。
【0025】
ポリマーポリオール
本明細書および特許請求の範囲を通して用いられる「ポリマーポリオール」または「ポリマーポリオール組成物」という用語は、液体のポリオール、ポリオールブレンドまたはポリオール含有ブレンド中の固体ポリマー相の安定な分散体を意味し、この場合の固体ポリマーは液相中の低分子量化合物の現場重合により形成されるものである。好ましくは、ポリマーは1種以上のエチレン性不飽和モノマーの重合または共重合により形成される。
【0026】
高レジリエンスポリウレタンフォームの製造に用いられるポリマーポリオールのポリオール成分は、通常、中程度の官能価と中程度の分子量を有する反応性ポリオールから選ばれる。「中程度の官能価」とは、真の官能価が2.2〜2.5で、理論的官能価が3.0であることを意味する。
【0027】
「中程度の分子量」とは、平均分子量が少なくとも3000であることを意味する。好ましい範囲は4500〜6500である。
【0028】
ポリウレタン分野での最近の進展により、高レジリエンスポリウレタンフォームの製造において、高官能価および高分子量を有する反応性ポリオールが使用されるようになった。
【0029】
「高官能価」とは、真の官能価が少なくとも3.0で、理論的官能価が最大約6であることを意味する。
【0030】
「高分子量」とは、平均分子量が少なくとも7000で、好ましい範囲が9000〜12000である。
【0031】
本発明のポリマーポリオール成分のポリオールは、一般に、理論的官能価3.0またはそれ以上(一般には3〜6)および平均分子量4500〜12000を有するものである。
【0032】
「反応性ポリオール」とは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の第一級ヒドロキシル基を有するポリオールのことである。
【0033】
好ましい実施態様において、ポリマーポリオールのポリオール成分は高官能価ポリオール(以後、「第1成分」という)とポリオキシエチレン含量が高いポリアルキレンオキシド(以後、「第2成分」という)の混合物を含む。高官能価ポリオールはポリマーポリオール中に全組成物の30〜90%の量で存在し、ポリアルキレンオキシドポリオールまたは前記ポリオールのブレンドであって、前記ポリオールと補助ポリオールの組合せが3以上(好ましくは、3.2〜6)の真の官能価を有するような平均官能価を有するポリオールであることが好ましい。好適な実施態様では、第1成分は第一級ヒドロキシル含量が高いポリ(オキシエチレン)で末端キャップされたポリ(オキシプロピレン)ポリオールと主に第二級ヒドロキシルのポリアルキレンオキシドポリオールとのブレンド(50%以上、好ましくは70%以上の第一級ヒドロキシル基を提供するもの)である。
【0034】
実際には、高官能価ポリオールは、約8〜25%のエチレンオキシド含量を有し、かつ約1000〜3000(好ましくは、約1600〜2200)の当量を有する平均呼称官能価約3〜6のポリアルキレンオキシドポリオールまたは前記ポリオールのブレンドでありうる。高官能価ポリオールは、全ブレンドの重量に基づいて、約30〜90%(好ましくは、約40〜90%)の範囲のレベルで使用される。
【0035】
ポリマーポリオール組成物の第2成分である補助ポリアルキレンオキシドは、分子量約450〜30000、呼称官能価約8まで、エチレンオキシド含量約30〜100%でありうる。取扱いの容易さ、最適な処理のためには、エチレンオキシド含量が約70%以上で、比較的低分子量(450〜2000)の液体が好ましい。この第2成分のレベルはポリマーポリオール組成物の約1〜20重量%の範囲で変化し、1〜約10%が好ましい範囲である。
【0036】
ポリマーは標準的なビニルポリマーまたはコポリマーが好ましいが、ポリ尿素型ポリマーまたは多官能性低分子量グリコールまたはグリコールアミンとジイソシアネートとの縮合生成物であってもよい。この成分はモノマーの現場重合によって1種以上のポリオール中の安定な分散体として形成される。安定に分散されたポリマーのレベルは約2〜50重量%の範囲で変化し、約4〜30%が好ましい範囲である。
【0037】
本発明において用いるポリオール組成物は、次の化合物:
(a)ポリヒドロキシアルカンのアルキレンオキシド付加物;
(b)非還元糖および糖誘導体のアルキレンオキシド付加物;および
(c)ポリフェノールのアルキレンオキシド付加物;
を含めて(これらに限らない)さまざまな化合物を含むことができる。
【0038】
ポリヒドロキシアルカンのアルキレンオキシド付加物の例として、中でも、グリセリン、1,2,4−トリヒドロキシブタン、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ポリカプロラクトン、キシリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトールなどのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0039】
使用可能な別のクラスのポリオールは上記の非還元糖のアルキレンオキシド付加物であり、ここでアルキレンオキシドは2〜4個の炭素原子を有する。意図される非還元糖および糖誘導体の中には、スクロース、アルキルグリコシド(例:メチルグルコシド、エチルグルコシドなど)、グリコールグリコシド(例:エチレングリコールグリコシド、プロピレングリコールグリコシド、グリセロールグルコシド、1,2,6−ヘキサントリオールグリコシドなど)、および米国特許第3073788号に記載されるようなアルキルグリコシドのアルキレンオキシド付加物がある。
【0040】
上記(c)に示した、さらに有用なクラスのポリオールはポリフェノールおよび、好ましくはそのアルキレンオキシド付加物であり、ここでアルキレンオキシドは2〜4個の炭素原子を有する。意図されるポリフェノールの中には、例えば、フェノールとホルムアルデヒドの縮合生成物、ノボラック樹脂、種々のフェノール系化合物とアクロレインの縮合生成物があり、このクラスの最も単純なメンバーは1,2,3−トリス(ヒドロキシフェニル)プロパン、種々のフェノール系化合物とグリオキサール、グルタルアルデヒドまたは他のジアルデヒドとの縮合生成物、それに1,1,2,2−テトラキス(ヒドロキシフェノール)エタンなどである。
【0041】
リン酸およびポリリン酸のアルキレンオキシド付加物は別の有用なクラスのポリオールである。エチレンオキシド、1,2−エポキシプロパン、エポキシブタン、2−クロロ−1,2−エポキシプロパンなどが好ましいアルキレンオキシドである。リン酸、亜リン酸、ポリメタリン酸などがこれに関連して用いるのに適している。
【0042】
実際、Zerewitinoff試験で測定したときに活性水素を有する物質はどれもポリオールの成分として利用できる。例えば、アミン末端基を有するポリエーテルポリオールが知られており、所望により使用することができる。
【0043】
本発明で用いるのに最適なポリオールにはポリ(オキシプロピレン−オキシエチレン)グリコールが含まれる。エチレンオキシドは、用いるのであれば、ポリマー鎖に沿って任意の方法で組み込むことができる。言い換えると、エチレンオキシドは内部ブロックまたは末端ブロックとして組み込んでも、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布していてもよい。
【0044】
上記のポリ(アルキレンオキシド)成分に加えて、ポリオール組成物はヒドロキシル末端基を有するポリブタジエンを含むことができる。さらに、反応性の制御および気泡の開放を促進するために、少量のアルケン酸グラフト化ポリアルキレンオキシドポリエーテルを添加してもよい。
【0045】
ポリマーポリオールを作るためのポリオール中に安定に分散されたポリマーの製造は当技術分野で公知である。この分野の基本特許はStambergerの米国特許第3383351号およびRe.No.29118(米国特許第3304273号の再発行)である。このような組成物は、ポリオール中に溶解または分散させた1種以上のエチレン性不飽和モノマーをフリーラジカル触媒の存在下で重合させて、ポリオール中にポリマー粒子が分散している安定な分散体を形成することにより製造できる。これらのポリマーポリオール組成物は、これから製造されたポリウレタンフォームに、対応する非改質ポリオールにより提供されたものよりも高い耐力特性を付与するという有利な特性を備えている。米国特許第3325421号および第4374209号に教示されるようなポリオール類も含まれる。
【0046】
本発明によるポリマーポリオール組成物を製造するにあたって、多種多様なモノマーを使用することができる。以前の特許には多数のエチレン性不飽和モノマーが開示されている。これらのモノマーのどれも適している。ポリ尿素およびポリウレタン懸濁ポリマーも利用されている。
【0047】
用いる1種以上のモノマーの選択は、モノマーの相対コスト、意図する用途に要求されるポリウレタン製品の特性などの考慮すべき事項に依存するだろう。フォームに望ましい耐力を付与するには、ポリマーポリオール製造用のモノマーは、もちろん、室温よりも少なくともわずかに高いガラス転移を有するポリマーを与えるように選択すべきである。こうしたモノマーの例として、スチレンとその誘導体(例:p−メチルスチレン)、アクリレート、メタクリレート(例:メチルメタクリレート)、アクリロニトリルと他のニトリル誘導体(例:メタクリロニトリル)などを挙げることができる。塩化ビニリデンも使用できる。
【0048】
ポリマーポリオール組成物製造用の好ましいモノマー混合物は、アクリロニトリルとスチレン、またはアクリロニトリルとスチレンと塩化ビニリデンの混合物である。
【0049】
モノマーの含量は、一般に、想定される最終用途に要求される所望の固体含量をもたらすように選択されるだろう。代表的なHRフォーム配合物の場合は、約50重量%までの固体含量が適しており、利用可能である。
【0050】
適当なポリマーポリオールの例については、US−A−5011908を参照されたい。
【0051】
本発明のポリオール混合物中の第1成分として使用するのに適しているポリマーポリオールの例はULTRACEL 2000(登録商標)である。ULTRACEL 2000は、その比較的高い官能価が低いイソシアネート指数で高垂れ係数(すなわち、≧2.7)と良好な乾燥および湿潤圧縮特性を有するフォームを製造できることを意味するので、ポリマーポリオールとして特に適している。
【0052】
ポリオール
通常のポリウレタンフォームで用いる種類のポリオールは非反応性ポリオール、すなわち、約3%未満の第一級ヒドロキシル基を有するポリオールであることが好ましい。ポリオールは有利には平均分子量が3500〜6000の範囲で、真の官能価が2.5〜3.0である。一般に、ポリオールは多価アルコールを2〜4個の炭素原子を有する1種以上のアルキレンオキシドでアルコキシル化することにより形成される。その例はエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレン−1,2−オキシドである。アルキレンオキシド類の混合物も使用でき、ポリオールの好ましい例はプロピレンオキシドとエチレンオキシドの混合物から得られたポリオキシアルキレンポリオールで、ポリオキシアルキレン鎖中にエチレンオキシド単位のランダム分布を有するものである。しかし、末端ヒドロキシル基の少なくとも約97%は第二級炭素原子に結合されねばならないことが理解されよう。
【0053】
連鎖延長剤
連鎖延長剤は好ましくは低分子量の脂肪族ジオールであり、約200を超えない分子量、より好ましくは約100を超えない分子量を有するものである。適当な化合物の例として、1,4−ブタンジオール、メチルプロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよびエタンジオールが挙げられ、ブタンジオールとメチルプロパンジオールが特に好ましい。
【0054】
界面活性剤
本発明の組成物を調製するためにポリオールブレンドと併用できる界面活性剤は、通常のポリウレタンフォームの製造に用いられるシリコーン界面活性剤である。これらの界面活性剤は、独立気泡の形成とフォームの収縮を引き起こすことがあるので、普通は高レジリエンスフォームには使用されない。通常のフォームで用いる種類のシリコーン界面活性剤は当技術分野で公知であり、一般に100以上のオキシシリコン反復単位を含むポリシロキサン−ポリオキシアルキレンコポリマーである。適当な界面活性剤の例としては、GOLDSCHMIDT B2370(登録商標)およびB8002(登録商標)がある。
【0055】
ポリマーポリオールは主として非常に重要な物理的性質を付与する目的で用いられ、通常は本発明のポリオールブレンド中に50〜86重量部、好ましくは58〜77重量部の量で存在するだろう。ポリオールはフォームの硬度を低下させるために用いられる。ポリオールは通常10〜46重量部、好ましくは19〜38重量部の量で存在するだろう。連鎖延長剤は引裂強さを高めるために用いられ、通常2〜10重量部、好ましくは2〜8重量部の量で存在するだろう。すべての部はポリオールブレンド100部を基準とする。
【0056】
シリコーン界面活性剤は、ラテックスのような感触を達成すべく、所望の気泡構造の形成を助ける目的で用いられる。それは通常ポリオールブレンド100重量部あたり0.04〜0.20重量部、好ましくは0.06〜0.15重量部の量で本組成物中に存在するだろう。
【0057】
本組成物の諸成分は、慣用の混合装置を使って、任意の適切な順序で混合することができる。その後、この組成物を改質TDIと反応させる。「改質TDI」とは、主にトルエンジイソシアネートから成るが、少量の重合TDIを含む組成物のことである。改質TDIを用いる目的は、気泡の大きさが均一な微細連続気泡構造の形成を助けることにある。これは比較的低いイソシアネート指数値でさえも本発明のフォームにおいて達成されることが判明した。さらに、低イソシアネート指数配合物における標準TDI(例:TDI T80およびTDI T65)の使用に伴って生じるような、低い「生」強度特性が見られない。その上、重合速度が公知の系で観察される速度よりも一般に速い。従って、製造の際に、得られたフォームブロックを取り扱うのが比較的容易である。特に、切断ステーションでのフォームの劣化が減少する。
【0058】
適当な改質TDIとしては、Scuranate BT(Rhone Poulencから販売)、Desmodur MT58(Bayerから販売)およびTedimon 153(Montedisonから販売)として知られているものがある。
【0059】
本発明のHRフォームは、ポリオールブレンドと改質トルエンジイソシアネートとを、シリコーン界面活性剤、発泡剤、場合により、HRポリウレタンフォームの分野で慣用の添加剤、例えば触媒、架橋剤(例:ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ソルビトール、グリセロール、その他の低分子量多官能性ヒドロキシおよび/またはアミン化合物)、難燃剤など、の存在下で反応させることにより製造される。HRフォームの製造において常用される種類のシリコーン界面活性剤を用いることも有利である。この種の界面活性剤は当業界で公知であり、例を挙げると、ポリジメチルシロキサン油および50未満(一般には、20未満)のオキシシリコン単位を含むポリシロキサン−ポリオキシアルキレンコポリマーである。
【0060】
従って、フォームの製造には、通常、2種類の異なるシリコーン界面活性剤(すなわち、通常のフォームの製造に用いる種類のシリコーン界面活性剤とHRフォームの製造に用いる種類のシリコーン界面活性剤)が使用されることを理解すべきである。
【0061】
発泡は任意の慣用発泡剤によって行うことができ、発泡剤は容易に気化する化合物または熱分解して気体を発生する化合物でありうる。しかし、好ましい発泡剤は水であり、通常、水はポリオールブレンド100部あたり1〜5部、より好ましくは1.5〜3.0部の量で使用される。
【0062】
ポリオール対イソシアネートの比は、好ましくはイソシアネート指数80〜100、より好ましくは85〜95をもたらすようなものである。
【0063】
フォームはその性質を改良または改質するための充填剤を含んでいてもよい。適当な充填剤としては、炭酸カルシウム、アルミニウム三水和物および硫酸バリウムが含まれる。さらに、難燃性充填剤を配合してもよい。適当な難燃性充填剤としては、メラミンおよびグラファイトがある。充填剤の濃度はポリオールブレンド中の全ポリオール100部あたり0〜40部とすることが好ましい。その他の難燃剤も難燃性充填剤の代替品として、あるいは難燃性充填剤と組み合わせて配合することができる。
【0064】
本発明の重要な特徴は、装置の変更を必要とすることなく、スラブ材や成形フォームを製造するための標準的なポリウレタンフォーム製造工程に従ってフォームを製造できる点にある。
【0065】
本発明のフォームが得られる発泡プロセスはラテックスフォームで必要とされるものと比べて速く、しかもラテックスフォームの物理的性質に匹敵する性質が比較的低いフォーム密度で得られる。
【0066】
本発明を用いると、約40〜80kg/m3 の密度およびラテックスの表面テクスチャー(感触)に匹敵する表面テクスチャーを有する、ソフトで、高品質、高密度、高レジリエンスのポリウレタンフォームが製造可能である。さらに、ラテックスフォームに近似するまたは匹敵する物理的性質を、ラテックスフォームの密度より15%も低い密度で、成し遂げることができる。
【0067】
どのような特定の理論によっても拘束されることを望まないが、本発明者らは、本発明のフォームのラテックスのような感触は、高レジリエンスポリウレタンフォームに通常伴って見られる圧倒的多数のラフで不規則な気泡ではなく、むしろ滑らかで規則的な気泡がフォーム内に相当高い割合で存在することによる、と考える。特に、本発明のフォーム内の気泡の多くは実質的に回転楕円状である。いずれにしても、本発明を用いると、ラテックスフォームに近いまたは等しいRA値およびRAとRZの組合せを有するHRポリウレタンフォームが得られる。詳細には、本発明を用いると、PERTHOMETER S8P装置を用いてISO 4287/1に従って測定したとき、RA値が35未満、それどころか30であり、RZ値が150未満、それどころか100である、HRポリウレタンフォームが得られる。
【0068】
HRフォームの配合において通常のフォーム用の界面活性剤を使用すると、フォームの収縮が生じて多すぎる独立気泡を形成させることが知られているので、本発明のフォームによって得られるラテックス様特性は驚くべきことである。同様に、HRフォーム配合物中で改質TDIを使用することは、通常、不十分な引裂強度を特に低イソシアネート指数ではもたらす傾向がある。さらに、非反応性ポリオールの効果も予期せざるものである。なぜならば、驚いたことに、それが微細な気泡構造を与えつつ乾燥永久歪値(dry set value)に負の影響を及ぼすことなく柔軟度を向上させるからである。
【0069】
【発明の実施の形態】
本発明を以下の実施例を参照しながら説明することにする。実施例において、
【0070】
ポリオールAは固体含量約10%のポリマーポリオールで、ポリオール成分は平均分子量Mn約9000、理論官能価約5、オキシエチレン単位対オキシプロピレン単位の比約16:84および第一級ヒドロキシル含量約80%を有するポリオール類の混合物からなる。
【0071】
ポリオールBはランダムなオキシエチレン基およびオキシプロピレン基を含み、エチレンオキシド約14%および平均分子量Mn約4000を有する非反応性トリオールである。
【0072】
ポリオールCは平均分子量100の脂肪族ジオールである。
ポリオールDは平均分子量(Mn)6000の反応性トリオールである。
ポリオールEは平均分子量(Mn)4000の反応性ジオールである。
【0073】
界面活性剤B2370およびB8002はGoldschmidtから販売されているポリシロキサン−改質ポリエーテルである。
【0074】
実施例1
次の組成のポリオールブレンドを調製した。
【0075】
ポリオールA 67部
ポリオールB 29部
ポリオールC 4部
界面活性剤B2370 0.15部
【0076】
このポリオールブレンドと37.1部のTDI Scuranate BTとを、2.2部の水、0.15部の界面活性剤B4113(Goldschmidt製のポリジメチルシロキサン油)、0.08部のNiax A1(Union
【0077】
Carbide製の第三級アミン触媒)および0.35部のDabco 33LV(Air Products製の複素環式第三級アミン触媒)の存在下で反応させてポリウレタンを製造した。この生成物はLaader Bergスラブ材製造装置でブロックフォームを形成させた。
【0078】
実施例2
次の組成のポリオールブレンドを調製した。
【0079】
ポリオールA 67部
ポリオールB 29部
ポリオールC 4部
界面活性剤B8002 0.15部
【0080】
このポリオールブレンドと41.0部のTDI Scuranate BTとを、1.9部の水、0.15部の界面活性剤B4113、0.08部のNiaxA1(第三級アミン触媒)、0.35部のDabco 33LV(複素環式第三級アミン触媒)および2.5部のARCOL 1280(ARCO Chemical社製の気泡開放剤(cell opener))の存在下で反応させてポリウレタンを製造した。この生成物はLaader Bergスラブ材製造装置でブロックフォームを形成させた。
【0081】
実施例1および2で製造したフォームの物理的性質を表2に示す。
【0082】
【表2】
Figure 0003692168
【0083】
比較例1〜5
表3に示した組成物からフォームを製造した。これらのフォームの物理的性質を表4に示す。
【0084】
これらの比較例から明らかであるように、フォームの製造に用いたポリオールが高レジリエンスポリウレタンフォームで用いる種類のポリマーポリオールと、通常のポリウレタンフォームで用いる種類のポリオールと、連鎖延長剤と、のブレンドでない場合は、フォームの物理的性質が寝具/家具の業界では受け入れられないものである。さらに、表3に示した組成物から製造されたフォームはラテックスの表面テクスチャー(感触)に匹敵する表面テクスチャーを持ち合わせていなかった。比較例1〜4では、上で定義したRAの値が35より大であった。
【0085】
【表3】
Figure 0003692168
【0086】
【表4】
Figure 0003692168
【0087】
これらすべての比較例はラテックスゴムの品質判定基準の少なくとも1つに合格せず、また、比較例1〜4は表面テクスチャーを最もよく表示する2つの試験(RAおよびRZ)に不合格であることが分かる。
【0088】
実施例3
以下に示した配合物から、Cannon装置でエポキシ樹脂モールドを使って、モールド温度35℃、モールドからの取出し時間6分でもって成形フォームを製造した。
【0089】
ポリオールA 67部
ポリオールB 29部
ポリオールC 4部
ARCOL 1280 3部
水 2.3部
Dabco 33LV 0.35部
(複素環式第三級アミン触媒)
NIAX A1 0.08部
(第三級アミン触媒)
界面活性剤B4113 0.15部
界面活性剤B8002 0.08部
Scuranate BT 38.11部
(イソシアネート指数=90)
【0090】
ARCOL 1280は平均分子量(Mn)4000で、ランダムなオキシエチレン基およびオキシプロピレン基を含み、エチレンオキシド約75%を有する。
【0091】
このフォームの性質を以下の表5に示す。
【0092】
【表5】
Figure 0003692168
【0093】
実施例4〜8および比較例6および7
実施例1の手順に従って、以下に示す配合物からスラブ材製造装置を使ってフォームを製造した。比較例6および7は代表的な高密度HRフォームの配合物である。これらのフォームの配合物を表6に示す。
【0094】
【表6】
Figure 0003692168
【0095】
KOSMOS 29はGoldschmidt製のオクタン酸第一錫であり、界面活性剤L2100はUnion Carbideから販売されている。プロセスの細部および得られたフォームの性質を表7に示す。
【0096】
【表7】
Figure 0003692168
【0097】
実施例8における40%でのILD(N)の値は必要とされる基準値より高いが、実験誤差の範囲内である。
本発明の好ましい態様は以下のとおりである:
A. 高レジリエンスポリウレタンフォームで用いる種類のポリマーポリオールが真の官能価少なくとも3を有する、請求項1に記載のポリオールブレンド。
B. ポリマーポリオールのポリオールのヒドロキシル基の少なくとも70%が第一級である、前項Aに記載のポリオールブレンド。
C. ポリオールが平均分子量3500〜6000および真の官能価2.5〜3.0を有する、請求項1または前項AもしくはBに記載のポリオールブレンド。
D. 連鎖延長剤が200を超えない分子量の脂肪族ジオールである、請求項1または前項A〜Cのいずれか1つに記載のポリオールブレンド。
E. 脂肪族ジオールが1,4−ブタンジオール、メチルプロパンジオール、1,3−プロパンジオールまたはエタンジオールから選ばれる、前項Dに記載のポリオールブレンド。
F. それぞれポリオールブレンド100重量部あたり、ポリマーポリオールが58〜77重量部の量で存在し、ポリオールが19〜38重量部の量で存在し、そして連鎖延長剤が2〜8重量部の量で存在する、請求項1または前項A〜Fのいずれか1つに記載のポリオールブレンド。
G. ポリオールブレンド100重量部あたり、界面活性剤が0.06〜0.15重量部の量で存在する、請求項2に記載の組成物。
H. フォーム生成混合物が高レジリエンスフォームの製造で用いる種類のシリコーン界面活性剤をさらに含む、請求項3に記載の高レジリエンスポリウレタンフォーム。
I. PERTHOMETER S8P装置を用いて測定した、ISO 4287/1に従うRA値およびRZ値がそれぞれ35未満および150未満である、請求項4に記載の高レジリエンスポリウレタンフォーム。

Claims (3)

  1. ポリマーポリオールのポリオール成分が少なくとも7000の平均分子量および少なくとも3.0の理論的官能価を有する、高レジリエンスポリウレタンフォームで用いる種類の反応性ポリマーポリオール;
    平均分子量3500〜6000および真の官能価2.5〜3.0を有し、ヒドロキシル基の3%以下が第一級ヒドロキシル基である、通常のポリウレタンフォームで用いる種類のポリオール;および
    連鎖延長剤としてのジオール
    を含んでなる高レジリエンスポリウレタンフォーム製造用のポリオールブレンド。
  2. 請求項1に記載のポリオールブレンド、および100以上のオキシシリコン反復単位を含むポリシロキサン−ポリオキシアルキレンコポリマーである通常のポリウレタンフォームの製造で用いる種類のシリコーン界面活性剤を含んでなる組成物。
  3. 請求項2に記載の組成物と、トルエンジイソシアネートから主に成るが少量の重合トルエンジイソシアネートを含む組成物である改質トルエンジイソシアネートとの反応生成物を含んでなる高レジリエンスポリウレタンフォーム。
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