JP3692135B2 - 異種金属のレーザロール接合方法およびレーザロール接合装置 - Google Patents
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Description
また、それぞれの金属間化合物の機械的性質を測定し、その結果としてアルミリッチのFeAl3 やFe2Al5などの化合物は脆いが、FeAlやFe3Al の化合物は比較的延性があることがわかった(非特許文献2)。それゆえ鉄−アルミの接合において従来から主に問題となってきたのは、接合界面の脆性な金属間化合物の存在であった。これは機械的特性を悪化させ、引張強さの脆弱化を導くからである。
一方、鉄とアルミニウムとの接合にレーザを使用することは、近年ドイツのSepoldらの調査でかなり明らかにされている(非特許文献4)。すなわちレーザの照射によって材料は急熱急冷の熱サイクルをもち、平衡状態とは異なった状態になる。故に脆性な金属間化合物の形成は上昇した温度の時間が短いため抑制される。
ロール圧接は主にアルミクラッド鋼板の製造に利用されている。この接合はアルミ表面の塑性変形により鉄表面との接触により生ずる新生面によって行なわれる。相対すべりにより鉄とアルミとの圧下率により高い接合強さを得る。低い圧下率での真空ロール圧接は迎、西尾らにより行なわれた(非特許文献5)。圧下率が5%を超えた時、軟鋼と5083アルミニウムの接合でせん断強度は60MPaとなった。しかし、後熱処理により界面層が増加すると、せん断強さは減少した。
先ず、図15からは次のことが分かった。送り速度の増加により平均界面厚さは反対に減少し、それに伴い脆性な化合物(FeAl3 +Fe2Al5)の厚さの割合も減少していった。具体的には、1.2m/minで界面層厚さが12μmあったものが最も速い2.0m/minでは2μmまで減少し、脆性な化合物層は77%から49%にまで減少した。従って、送り速度が増加するのに伴って延性のある化合物層の割合が脆性な化合物層を抑えて増加することが分かった。
また、本発明に係る異種金属のレーザロール接合装置は、前記圧接ローラによる接合した接合部の温度を検出する温度センサを有し、その温度センサから得られる温度データに基づいて前記冷却手段をフィードバック制御するようにしたものであることが望ましい。
前記冷却手段は、前記圧接ローラによって前記第1金属板と前記第2金属板とを押圧した位置で、前記第2金属板を非接合面側から冷却するように設けられたものであることが望ましい。
また、前記冷却手段は、前記圧接ローラ及び前記第1金属板を冷却するように設けられたものであることが望ましい。
よって、本発明によれば、加熱のために金属板に入った熱は効果的に内部拡散して接合部分の温度が緊急に低下することになる。そのため、脆性な化合物が生成される温度を極めて短時間に通過するので、延性のある金属間化合物の生成量を多くして継手の接合強度を向上させることができる。
また、前記制御手段は、前記照射スポットを重ねることにより前記第1金属板の接合面側に生じる加熱スポットが連続するように、前記レーザ照射手段の駆動を制御するよう設定されたものであることが望ましい。
また、前記制御手段は、前記加熱スポットが連続するように、パルス照射と第1及び第2金属板の送り速度とを同期させるようにしたものであってもよい。
よって、本発明によれば、レーザ光を連続して照射することのないようにパルスレーザとして入熱を抑えたので、加熱後の冷却効果を高めることができる。その際、接合部分が連続するようにした方がせん断強度が高くなるため、加熱スポットを連続させることが望ましい。
更に、本発明に係る異種金属のレーザロール接合装置は、前記第1金属板を鋼板とし、前記第2金属板をアルミ板又はアルミ合金板として接合を行うものであることが望ましい。
更に、本発明は、レーザロール接合装置は制御手段を有し、その制御手段による駆動制御により、レーザ照射手段がパルス状に出力されるレーザ光の照射スポットを第1金属板の非接合面において接合線方向に重ねて照射するようにしたので、金属板への入熱量を抑えて冷却効果を高めることで、延性のある金属間化合物の生成量を多くして継手の接合強度を向上させる異種金属のレーザロール接合方法およびレーザロール接合装置を提供することが可能になった。
(1)これまで、脆性な金属間化合物の生成により困難であった異種金属継手の接合を可能にするとともに、その継手の信頼性を高めることが可能となる。
例: Fe-Al系、 Co−Al系 , Cr-Al系など
(2)アルミニウム合金のような軽金属と高強度金属の接合や より耐食性のよい金属との接合を加工にすることにより、軽量パネルや軽量耐食パネル(メインテナンスフリー)の製造を可能にする。
(3)軽量の耐火パネルの製造も可能となる。
(4)次のような軽量構造体または部品を製造する方法を提供する。
a. 軽量ハイブリッド構造体 (サンドウイッチパネルその1)
b. 軽量ハイブリッド構造体 (サンドウイッチパネルその2)
c. テーラードブランク材(アルミー鋼突合せ継手)
d. T継手(すみ肉継手)部材
(5)輸送機器などの軽量化に大いに役立つ。
(6)省エネルギー、低ひずみの接合技術として期待できる。
(7)半溶融接合法として信頼性の高い金属接合継手としても期待できる。
方法および、それを実行するためのレーザロール接合装置は、非特許文献6,7に記載されている本願発明者が提案したレーザロール圧接を基本にして構成されたものである。接合する異種金属板は、炭素鋼板とアルミニウム合金板であり、より具体的には、自動車で用いられる構造材のSPCC鋼(低炭素鋼の冷間圧延材)と、展伸用アルミニウム合金であるA5O52-O合金(2.5 wt% Mg)であり、SPCC鋼板3の板厚は0.5mmであり、アルミ合金
板4の板厚は1mmである。
加熱されていないため熱の内部拡散によって急速に冷却されるものの、アルミニウム中の鉄の拡散が起きる450〜600℃を通過して温度が下がる際、その通過時間が1〜2秒程度で接合界面に脆性なアルミリッチの金属化合物が生成されてしまう。つまり、接合界面の冷却スピードが、レーザロール接合において接合強度を左右する重要な要因となるものであった。図15に示すように脆性の金属間化合物の割合が多くなっているのも、送り速度が遅いため入熱量が多く、その分、冷却スピードも遅いためであると考えられる。
分布のレーザ光Bが出力され、図1に示すように平面反射ミラー12で反射して、送り方向にある圧接ローラ15の手前位置でSPCC鋼板3の上面が照射される。SPCC鋼板3とアルミ合金板4は直線的に送られるため、レーザ照射によって加熱された部分がそのまま圧接ローラ15に沿って移動して接合線となる。圧接ローラ15によって加圧されたSPCC鋼板3は、支持ローラ28よって下から支えられたアルミ合金板4に押し付けられる。このとき、SPCC鋼板3は上方の照射面3aが加熱されているが(以下、図3参照)、反対の接合面3bは共析温度(Fe−Al系では約1170℃)に達しているため、押し付けられたアルミ合金板4は接合面4aが急速に加熱され、アルミの融点である650℃を超えて表面のみが溶融する。そして、接合面4aが溶融したアルミ合金板32は、SPCC鋼板3の接合面3bをいわゆる濡れた状態とするので、その濡れた接合面3bにSPCC鋼板3の鉄の分子が拡散し、その接合界面に金属間化合物が生成される。
ルミ合金板4を反らせるようにして圧接ローラ15へ送られるようになっている。
ウによってエアが吹き付けられた後、続いて行われる接合動作によってできる接合線に沿って予めフラックスFが塗布される。フラックスFの塗布量は厚さ2μm程度が適当である。そして、これによりSPCC鋼板3とアルミ合金板4との接合部に酸化物ができるのを防ぎ、確実な接合を助けることになる。
また、SPCC鋼板3とアルミ合金板4との高温酸化を防止するためには、こうしたフラックスFを塗布する他に不活性ガスを両板3,4に吹き付けることも有効である。更に、フラックスFの塗布は、ディスペンサ43の他にもスプレーやスクリーン印刷で行うようにしてもよい。
また、レーザ光Bをパルス照射にしたり、接合面へ直接照射することにより、金属板への入熱量を抑えて冷却効果を高めることで、やはり脆性な化合物が生成される温度を極めて短時間に通過させることができ、延性のある金属間化合物の生成量を多くして継手の接合強度を向上させることが可能になった。
例えば、本実施の形態では、SPCC鋼板とアルミ合金板とを接合しているが、材質の異なる他の金属の組み合わせである、例えば、チタン/鋼、アルミニウム/銅、鋼/鉄、鋼/複合材の組み合わせにも適用可能である。
3 SPCC鋼板
4 アルミ合金板
11 CO2レーザ
12 平面反射ミラー
13 ローラ加圧装置
15 圧接ローラ
16 加圧スプリング
17 テーブル
21 制御装置
22 温度モニタ
23 冷却装置
25,26,27 温度センサ
28 支持ローラ
Claims (20)
- 非接触状態で保持された材質の異なる第1金属板と第2金属板とに対し、第1金属板のみをレーザ照射によって加熱した後、その第1金属板の加熱部を圧接ローラによって第2金属板に押圧して密着させ、塑性変形を与えることによって当該両金属板を接合する異種金属のレーザロール接合方法において、
前記第1金属板と前記第2金属板との接合部を、温度変化が相互拡散係数の高い温度帯を0.1秒程度の時間で通過するように冷却させることを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 請求項1に記載する異種金属のレーザロール接合方法において、
前記圧接ローラによって接合した接合部の温度を検出し、その温度データに基づいて冷却能力をフィードバック制御するようにしたことを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 請求項1又は請求項2に記載する異種金属のレーザロール接合方法において、
前記圧接ローラによって前記第1金属板と前記第2金属板とを押圧した位置で、前記第2金属板を非接合面側から冷却するようにしたことを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する異種金属のレーザロール接合方法において、
前記圧接ローラ及び前記第1金属板を冷却するようにしたことを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載する異種金属のレーザロール接合方法において、
前記第1金属板にパルス状のレーザ光を照射する場合に、当該レーザ光の照射スポットを前記第1金属板の非接合面に対して接合線方向に重なるように照射するようにしたことを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 請求項5に記載する異種金属のレーザロール接合方法において、
前記照射スポットの重なりを、当該レーザ照射によって前記第1金属板の接合面側に生じる加熱スポットが連続するように決定して、前記パルス状のレーザ光を照射するようにしたことを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 請求項5又は請求項6に記載する異種金属のレーザロール接合方法において、
前記加熱スポットが連続するように、パルス照射と第1及び第2金属板の送り速度とを同期させるようにしたことを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載する異種金属のレーザロール接合方法において、
接合される両金属板の高温酸化を防止すべく、不活性ガスを両板の接合部に吹付けること、またはアルミニウムのように強固な酸化被膜をもつ材料側にフラックスを塗布するようにしたことを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 請求項8に記載する異種金属のレーザロール接合方法において、
前記フラックスの塗布量が2μm以下であることを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 請求項1乃至請求項9のいずれかに記載する異種金属のレーザロール接合方法において、
前記第1金属板を鋼板とし、前記第2金属板をアルミ板又はアルミ合金板として接合を行うことを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 非接触状態で保持された材質の異なる第1金属板と第2金属板とに対し、第1金属板のみをレーザ照射によって加熱するレーザ照射手段と、そのレーザ照射手段によるレーザ光を照射して加熱した第1金属板の加熱部を圧接ローラによって第2金属板に押圧して密着させるローラ押圧手段とを有し、加熱した第1金属板を第2金属板に押圧して塑性変形を与えることによって当該両金属板を接合させるようにした異種金属のレーザロール接合装置において、
前記第1金属板と前記第2金属板との接合部の温度変化が相互拡散係数の高い温度帯を0.1秒程度の時間で通過するように冷却させる冷却手段を有することを特徴とする異種金属のレーザロール接合装置。 - 請求項11に記載する異種金属のレーザロール接合方法において、
前記圧接ローラによる接合した接合部の温度を検出する温度センサを有し、その温度センサから得られる温度データに基づいて前記冷却手段をフィードバック制御するようにしたものであることを特徴とする異種金属のレーザロール接合方法。 - 請求項11又は請求項12に記載する異種金属のレーザロール接合装置において、
前記冷却手段は、前記圧接ローラによって前記第1金属板と前記第2金属板とを押圧した位置で、前記第2金属板を非接合面側から冷却するように設けられたものであることを特徴とする異種金属のレーザロール接合装置。 - 請求項11乃至請求項13のいずれかに記載する異種金属のレーザロール接合装置において、
前記冷却手段は、前記圧接ローラ及び前記第1金属板を冷却するように設けられたものであることを特徴とする異種金属のレーザロール接合装置。 - 請求項11乃至請求項14のいずれかに記載する異種金属のレーザロール接合装置において、
前記レーザ照射手段は、制御手段による駆動制御により、パルス状に出力されるレーザ光の照射スポットが前記第1金属板の非接合面において接合線方向に重ねて照射されるようにしたものであることを特徴とする異種金属のレーザロール接合装置。 - 請求項15に記載する異種金属のレーザロール接合装置において、
前記制御手段は、前記照射スポットを重ねることにより前記第1金属板の接合面側に生じる加熱スポットが連続するように、前記レーザ照射手段の駆動を制御するよう設定されたものであることを特徴とする異種金属のレーザロール接合装置。 - 請求項15又は請求項16に記載する異種金属のレーザロール接合装置において、
前記制御手段は、前記加熱スポットが連続するように、パルス照射と第1及び第2金属板の送り速度とを同期させるようにしたものであることを特徴とする異種金属のレーザロール接合装置。 - 請求項11乃至請求項17のいずれかに記載する異種金属のレーザロール接合装置において、
接合される両金属板の高温酸化を防止すべく、不活性ガスを両板の接合部に吹付け、またはアルミニウムのように強固な酸化被膜をもつ材料側にフラックスを塗布する、酸化防止手段を有することを特徴とする異種金属のレーザロール接合装置。 - 請求項18に記載する異種金属のレーザロール接合装置において、
前記酸化防止手段は、フラックス塗布をスプレー、スクリーン印刷またはディスペンサによって行うものであることを特徴とする異種金属のレーザロール接合装置。 - 請求項11乃至請求項19のいずれかに記載する異種金属のレーザロール接合装置において、
前記第1金属板を鋼板とし、前記第2金属板をアルミ板又はアルミ合金板として接合を行うものであることを特徴とする異種金属のレーザロール接合装置。
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