JP3690675B2 - スローアウェイチップおよびそれを用いた切削工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、略棒状をなすスローアウェイチップに関し、特に、切刃の位置精度が高く、かつ拘束力の高いスローアウェイチップおよびそれを用いた切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、溝入れ加工やねじ切り加工に用いられる切削工具として、図9に示すように一端または両端に切刃を有する略棒状(バー状)のスローアウェイチップ21をホルダ22の孔内21aに挿入し、ボルト23等で締めこんで固定したものが知られている。
【0003】
また、特開2001−71204号公報には、両端に切刃を有するバー状のスローアウェイチップを固定する方法として、収納される方の切刃をホルダの後端側からはめ込んだボルトに当接して固定する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記図9に示す従来のバー状のスローアウェイチップでは、バーの突出し長さが可変であるために、チップ21の交換時に突出し長さがばらつき易く切刃の位置ずれを生じるという問題があり、また、バーの側面をボルト23で押圧して固定するために特にチップ21の回転方向に対する拘束力が弱く、切削中にチップ21が回転して切刃位置がずれたり、チップ21が緩みやすいという問題があった。
【0005】
また、特開2001−71204号公報に記載される切削工具では、ボルトに当接される切刃が装着時または切削中の振動により欠損する恐れがあり、また、反対側の切刃を使用する際には切刃の欠損や摩耗の度合いがその都度異なるために切刃の位置精度がずれてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的は、切刃の取り付け位置精度を高めるとともに、強固に拘束できるスローアウェイチップとそれを用いた切削工具を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以下の構成を採用することにより、チップ交換時においても切刃の取り付け位置精度が高くできるとともに、特にチップの回転方向に対する拘束力を向上させることができ、安定した加工が可能となることを発明した。
【0008】
すなわち、本発明のスローアウェイチップは、ホルダ拘束部の断面が円形の略棒状をなし、長手方向の一端に切刃を有するとともに、他端に長手方向における長さの短い部分があり、回転方向に対して拘束するためのカット面を有することを特徴とするものである。
【0009】
ここで、前記カット面が連続的または段階的に長手方向における長さが短くなるように、特に前記長手方向に対して斜めにカットされていること、さらに、前記長手方向に対して垂直な仮想端面に対する前記カット面のカット角度が30〜60°であることが望ましい。
【0010】
また、前記カット面に連続する側面が丸棒からなることが望ましい。
【0011】
さらに、本発明の切削工具は、ホルダの先端に設けられた孔内に上記のスローアウェイチップを挿入するとともに、前記ホルダに取りつけられた固定部材と前記カット面とを当接して前記スローアウェイチップを固定することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のスローアウェイチップについてその一実施態様をホルダ内に装着した一例である内径加工用の切削工具についての平面図である図1、図1の切削工具をA方向から見た図である図2、および図1の切削工具をB方向からみた図である図3に基づいて説明する。
【0013】
図1によれば、切削工具(以下、単に工具と略す。)1はホルダ2の先端に孔3が形成され、この孔3内にスローアウェイチップ(以下、単にチップと略す。)5を装着してなる。
【0014】
本発明によれば、チップ5は、ホルダ拘束部の断面が円形の略棒状をなし、長手方向の一端に切刃6を有するとともに、他端に長手方向に対する長さが短い部分のあるカット面9を有する形状からなり、このカット面9を回転方向に対して拘束するために機能させてホルダ2に取り付けられた円柱状の固定部材10に当接して固定することにより、チップ5を交換する際にも切刃6を精度よく位置決めして装着することができるとともに、チップ5を強固に拘束できることから切削中にチップ5が回転して切刃6の位置がずれたりチップ5が緩んだりすることを防止できる。
【0015】
なお、図1によれば、チップ5のカット面9は棒状体の長手方向に対して斜めにカットされており、製造上寸法精度が高く、製造が容易であるというメリットがある。カット面9のカット角度θ(棒状体の長手方向に対して垂直な仮想端面に対するカット面の角度)は30〜60°、特に40〜50°であることがチップの拘束力向上およびカット面9の欠損防止、製造の容易性の点で望ましい。
【0016】
また、本発明においてカット面の形状は上記構成に限定されるものではなく、図4に示すように、(a)段階的に長手方向に対する長さが短くなる構成、(b)カット面9が曲面をなすように連続的に長さが短くなる構成等カット面9が連続的または段階的に長さが変化するようにカットされているものであってもよく、または(c)断面方向の中央部に長手方向の長さが短くなる凹部18を設ける構成、またはこれらの組み合わせ等いずれの構成であってもよいが、寸法精度、製造の容易性および局所的に応力が集中して局所的な摩耗や破損を防止する点で、連続的または段階的に長さが短くなる構成、中でも斜めにカットされた構造が最良である。
【0017】
ここで、本発明によれば、チップ5を製造時の切刃加工工程においても上記固定部材10を備えたホルダ2と同じ冶具を用いてチップ5の切刃6等の加工を施すことによって寸法精度の高いチップの加工が可能となる。
【0018】
さらに、図1乃至3においては、ホルダ2の先端には長手方向にチップ5を固定する孔5に連通する第1のスリット溝11が設けられ、また、第1のスリット溝11の終端は図3に示すように略棒状孔と直交する方向に配設される第2のスリット溝14と連通し、第2のスリット溝14よりも先端側においては溝11が開口したコの字状をなしている。そして、ホルダ2の第1のスリット溝11間(コの字状の開口部)を繋ぐようにホルダ2にボルト12が螺合されることによってチップ5のホルダ拘束部15に孔3の壁面が押圧されチップ5の側面がホルダ2に拘束される。
【0019】
なお、ホルダ2のチップの拘束方法は図1乃至3の方法に限られるものではなく、例えば図5(a)(b)に示すように略棒状孔5の壁面の一部を具備する押え板13をホルダ2と別体にて設け、押え板13をボルト留めにてホルダ2に固定するものであってもよい。なお、図5(a)(b)は図1のA方向からみた変形例を示す図である。
【0020】
また、図1のチップ5についての拡大図である図6によれば、チップ5はホルダ2の孔3内に固定されるホルダ拘束部15とホルダ2から突出する突出部16とからなり、ホルダ拘束部15の径r1よりも突出部16の径r2が小さくなるように形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ホルダ拘束部15の径r1と突出部16の径r2が同じであってもよい。なお、小径の内径加工が可能である点、ホルダの拘束力を向上できる点でr2/r1の比は0.15〜1、特に0.3〜0.8であることが望ましい。さらに、チップ5を強固に拘束できるとともにチップ5を小型化する点では、チップ5の全長Lに対する突出部16の長さL2の比L2/Lは、0.4〜3、特に0.5〜2であることが望ましい。また、チップ5は用途に応じて突出部16の直径、長さを変えることができ、かつホルダ拘束部15は同じ直径、長さとすることによって突出部16のサイズが異なるチップ5であっても同じホルダ2を用いて取り付けることができる。
【0021】
なお、図6および図6のチップ5をA方向から見た投影図である図7(a)に示すように、切刃6は突出部16の横切刃に続く側面からわずかs=0.1〜1.0mmに断面方向の外側に形成され、突出部16が被削材に干渉することを防止する。切刃6の先端はシャープエッジであってもよいがR=0.2mm以下のR面であってもよい。ここで、切刃6を形成する方法としては、棒状の突出部16を作製した後、突出部16の切刃6より後端の部分を研磨して作製してもよいし、予め切刃6が棒状の突出部16よりも大きくなるように棒状体を作製してもよい。
【0022】
また、切刃6の上面にはすくい面7が形成されており、すくい面7はブレーカとして機能するように凹曲面をなしている。一方、切刃6の先端面側には前切刃6aが、切刃6の側面側には横切刃6bがそれぞれ形成されている。さらに、すくい面7と突出部16との間には切屑を効率よく排出するための切り欠き部8が形成されている。
【0023】
さらに、図6のチップ5に示すようにチップ5の突出部16は基本的には断面が円形にて形成されるが、内径加工の際に切屑の排出性をよくし、かつ加工後の被削材壁面との干渉を防止するために、図6のチップのB−B断面図である図7(b)に示すように、突出部16の断面が楕円形状、または円や楕円の一部を切り欠いた形状からなるものであってもよい。
【0024】
さらにまた、ホルダ拘束部15は加工の容易性、製造工程の短縮化、チップ5の取付精度向上、拘束力向上の点で断面が円形をなす、すなわちホルダ拘束部15が丸棒であることが望ましい。
【0025】
また、本発明によれば、図8に示すように、チップ5の拘束力を高めるために、チップ側面に凹状の切欠き20を設け、切欠き20にホルダ2に固定されるネジ部材21を挿設することも可能である。
【0026】
一方、チップ5は超硬合金やサーメットからなり、固定部材10は鋼であってもよいが、耐摩耗性、耐塑性変形性の点で超硬合金、サーメットまたはセラミックスから構成されてもよい。また、固定部材10はチップ5と当接する部分を精度よく合わせられるとともに加工が容易な円柱形状に形成されることが望ましいが、側面が長手方向に一部切り欠かれてチップ5と当接する部分が平面をなす形状や多角柱形状であってもよい。
【0027】
他方、本発明のチップおよび工具は旋削加工用として用いることができるが、特に直径が4mm以下、特に3mm以下の極小径の内径加工用として最適であり、かかる極小内径加工においても安定して高精度で滑らかな仕上げ面を有する品質の高い加工を達成することができるものである。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、チップおよび切刃が他端に設けられたカット面を固定部材に当接して固定することによって常に規定の位置に装着することができ、切刃の位置決めが容易にかつ高精度にできるとともに、チップの回転方向への拘束力を高めて切刃の位置ずれ、チップのゆるみを防止することができる。さらに、切刃の加工時においても加工の位置決めが容易にできることから寸法精度の高いチップを作製することができる。
【0029】
また、カット面を斜めにすることによって、容易に、高い寸法精度で、かつ局所的に応力集中が発生することなくチップを作製することができる。
【0030】
さらに、本発明のチップおよび工具は、特に直径が4mm以下の極小径の内径加工用として最適であり、かかる極小内径加工においても高精度で品質の高い加工を安定して達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスローアウェイチップをホルダに装着した切削工具の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1の切削工具のA方向から見た図である。
【図3】図1の切削工具のB方向から見た図である。
【図4】本発明のスローアウェイチップのカット面の他の実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明のスローアウェイチップの他の実施態様を示す断面図である。
【図6】図1のスローアウェイチップの要部拡大図である。
【図7】(a)は図6のスローアウェイチップをA方向から見た図、(b)は図6のB−B断面図である。
【図8】本発明のスローアウェイチップの他の実施態様を示す平面図である。
【図9】従来のバー形状のスローアウェイチップをホルダに装着した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
1 切削工具(工具)
2 ホルダ
3 孔
5 スローアウェイチップ(チップ)
6 切刃
6a 前切刃
6b 横切刃
7 すくい面
8 切り欠き部
9 カット面
10 固定部材
11 第1のスリット溝
12 ボルト
13 押え板
14 第2のスリット溝
15 ホルダ拘束部
16 突出部
18 凹部
19 切欠き
20 ネジ部材
Claims (6)
- ホルダ拘束部の断面が円形の略棒状をなし、長手方向の一端に切刃を有するとともに、他端に長手方向における長さの短い部分があり、回転方向に対して拘束するためのカット面を有することを特徴とするスローアウェイチップ。
- 前記カット面が連続的または段階的に前記長手方向における長さが短くなるようにカットされていることを特徴とする請求項1記載のスローアウェイチップ。
- 前記カット面が前記長手方向に対して斜めにカットされていることを特徴とする請求項2記載のスローアウェイチップ。
- 前記長手方向に対して垂直な仮想端面に対する前記カット面のカット角度が30〜60°であることを特徴とする請求項3記載のスローアウェイチップ。
- 前記カット面に連続する側面が丸棒からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のスローアウェイチップ。
- ホルダの先端に設けられた孔内に請求項1乃至5のいずれか記載のスローアウェイチップを挿入するとともに、前記ホルダに取りつけられた固定部材と前記回転方向に対して拘束するためのカット面とを当接して前記スローアウェイチップを固定することを特徴とする切削工具。
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