JP3686999B2 - 機能性膜の製造方法および機能性膜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分子認識能、センサー機能、分離機能、化学反応触媒機能、光学機能、電子的機能等の各機能を有し、化学センサー、バイオセンサー、光学部品、分離膜、電子部品、ミクロ化学反応容器等として用いられる機能性膜の製造方法および機能性膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリマーフィルムを延伸させた多孔質膜、ポリマーブレンドフィルムを部分溶解して作製した多孔質膜、円筒状の細孔を機械的に形成した膜をそれぞれ担体とした機能性膜が知られている。また、特異な分子認識能を持たせた機能性膜としては、シクロデキストリンやカリックスアレンを用いた膜(「分子認識化学」築部 浩、45-64頁、三共出版)、ゲルクロマトグラフィーとして用いられるシリカゲルやセファデックス(「分析化学」、Pecsok et.al、62-88頁、東京化学同人、「入門機器分析化学」、庄野利之、186-212頁、三共出版、「ペプチド合成の基礎と実験」、泉屋信夫、143-193頁、丸善)等がある。
【0003】
しかしながら、上記の機能性膜およびその製造方法は、以下の課題を有していた。
ポリマーフィルムを延伸させた多孔質膜を担体とした機能性膜は、その細孔径がランダムな連続孔を有し、その連続孔の連結にも規則性がなく、均一な細孔径を有し且つその細孔が規則的に連結されていないため、機能性物質を設計通りに担持させることができないという問題点を有していた。
細孔径のそろった円筒状の細孔を有する機能性膜は、対象となる分子や微粒子のサイズ及びその形状に対応した細孔径を人工的に形成しなければならず、技術的に極めて困難であるとともに、細孔径や細孔形状の特異性から機能性物質を担持し難いという問題点を有していた。
【0004】
分子認識能を有する分子膜として用いるシクロデキストリンやカリックアレンは、van der waals力や、疎水相互作用を利用して分離能やセンシング機能を付与するものであるが、これらに機能性物質を担持させることは困難であり、汎用性に乏しいという問題点を有していた。
ゲルクロマトグラフィーを用いた分離方法は、セファデックスへの浸透圧の違いや、シリカゲルでの吸着速度の違いにより物質を分離することが可能であるが、その分離能はゲル内部の細孔のばらつき等に起因し、分離能が変化するばかりか、分離の際、多量の溶媒が必要であり経済性に欠けるという問題点を有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、予め精密に設計できる細孔径を有する連続した細孔に、機能性物質を閉じ込めることにより、化学センサー、バイオセンサー、分離膜、光学部品、電子部品、ミクロ化学反応容器等として用いられる機能性膜を精密且つ簡易に作製できる機能性膜の製造方法を提供すること、および分子認識能、センサー機能、分離機能、化学反応触媒機能、光学機能、電子的機能等の機能が厳密に制御可能であり、各種性能に優れる機能性膜を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、微小体の粒径を設計するだけで予め細孔径を設計できる連続細孔に機能性物質を一乃至複数個閉じ込めることにより、分子認識能、センサー機能、分離機能、化学反応触媒機能、光学機能、電子的機能等の各機能を精密に制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]に記載した事項により特定される。
【0007】
〔1〕保持基材の上面に、球状の微小体を充填し内部に連続した空隙を有する構造体を形成する構造体形成工程と、該構造体形成工程で得られた構造体の空隙にポリマーを充填するポリマー充填工程と、該ポリマー充填工程後、保持基材及び微小体を脱離する脱離工程と、該脱離工程で微小体を脱離して形成したポリマー多孔体の細孔に機能性物質を閉じ込める工程と、を有することを特徴とする機能性膜の製造方法。
【0008】
これにより、分子認識能、特異吸着機能、化学反応性、特異な電気特性や光学特性等の機能が厳密に制御可能な機能性膜を精密且つ簡易に製造することができる。
また、微小体の粒子径を変化させることにより、略完全に均一な細孔径を有し連続細孔を備える機能性膜を適宜製造することができ汎用性に優れる。
【0009】
〔2〕該脱離工程で得られたポリマー多孔体を伸張して細孔径を拡径し、拡径した細孔に機能性物質を閉じ込め、次いで、ポリマー多孔体を収縮して細孔径を復元することを特徴とする〔1〕に記載の機能性膜の製造方法。
【0010】
これにより、外部より力を加えることにより空隙を連結する細孔径を大きくした状態で機能性物質を導入し、その後、外部からの力を取り除くことにより細孔径を元の状態に戻し、容易に機能性物質を閉じ込めることが可能となる。
【0011】
〔3〕保持基材の上面に、機能性物質を内包する球状の微小体を充填し内部に連続した空隙を有する構造体を形成する構造体形成工程と、該構造体形成工程で得られた構造体の空隙にポリマーを充填するポリマー充填工程と、該ポリマー充填工程後、保持基材及び微小体を脱離する脱離工程と、を有することを特徴とする機能性膜の製造方法。
【0012】
これにより、脱離工程で微小体を脱離して形成した細孔に機能性物質を閉じ込める工程を省略することができ、その結果、機能性膜の製造工程を簡易化することにより、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0013】
〔4〕機能性物質が主鎖又は側鎖に機能基を付与したデンドリマーもしくはポリマー鎖、酸化物微粒子、金属微粒子、ポリマー微粒子、コロイド粒子、タンパク質粒子、酵素、ウィルスから選択される少なくとも1種であることを特徴とする〔1〕乃至〔3〕の内いずれか1項に記載の機能性膜の製造方法。
【0014】
これにより、分子認識能、センサー機能、分離機能、化学反応触媒機能、光学機能、電子的機能等の機能等が厳密に制御可能となり、化学センサー、バイオセンサー、分離膜、光学部品、電子部品、ミクロ化学反応容器等として用いられる機能性膜を精密且つ簡易に得ることができる。
また、デンドリマーもしくはポリマー鎖の主鎖又は側鎖に付与する機能基を組み合わせることによって、発色部位やフォトクロミック部位、分子認識部位等を付与することができる。
【0015】
〔5〕脱離可能な保持基材と、該保持基材の上面に形成した、脱離可能な、球状の微小体を充填し内部に連続した空隙を有する構造体と、該構造体の空隙に充填したポリマーとからなる膜形成材から、保持基材及び微小体を脱離して形成した細孔を有するポリマー多孔体であって、該ポリマー多孔体の細孔に機能性物質を閉じ込めたことを特徴とする機能性膜。
【0016】
これにより、分子認識能、特異吸着機能、化学反応性、特異な電気特性や光学特性等の機能が厳密に制御可能な機能性膜を得ることができる。
また、機能性膜の細孔径による分子認識に加え、機能性物質による化学吸着あるいは物理吸着によって分子認識能を向上させることができる。
更に、ガス、溶媒分子あるいは細孔径より小さい溶質分子は機能性膜を出入りできるが、細孔内部に閉じ込められた機能性物質は流出しない。
【0017】
〔6〕脱離可能な保持基材と、該保持基材の上面に形成した、機能性物質を内包した脱離可能な、球状の微小体を充填し内部に連続した空隙を有する構造体と、該構造体の空隙に充填したポリマーとからなる膜形成材から、保持基材及び微小体を脱離して形成したことを特徴とする機能性膜。
【0018】
これにより、連続した細孔に機能性物質を閉じ込める手間を省くことができるとともに、機能性膜の精度を向上させることが可能となる。
【0019】
〔7〕機能性物質が主鎖又は側鎖に機能基を付与したデンドリマーもしくはポリマー鎖、酸化物微粒子、金属微粒子、ポリマー微粒子、コロイド粒子、タンパク質粒子、酵素、ウィルスから選択される少なくとも1種であることを特徴とする〔5〕又は〔6〕に記載の機能性膜。
【0020】
これにより、分子認識能、センサー機能、分離機能、化学反応触媒機能、光学機能、電子的機能等の機能等が厳密に制御可能となり、化学センサー、バイオセンサー、分離膜、光学部品、電子部品、ミクロ化学反応容器等として用いられる機能性膜を精密且つ簡易に得ることができる。
また、デンドリマーもしくはポリマー鎖の主鎖又は側鎖に付与する機能基を組み合わせることによって、発色部位やフォトクロミック部位、分子認識部位等を付与することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る機能性膜は、保持基材の上面に、微小体を充填し内部に連続した空隙を有する構造体を形成し、該構造体の空隙にポリマーを充填して膜形成材を製造した後、保持基材及び微小体を脱離し、形成されたポリマー多孔体の細孔に機能性物質を閉じ込めることにより製造できる。
また、本発明に係る機能性膜は、保持基材の上面に、機能性物質を内包する微小体を充填し、内部に連続した空隙を有する構造体を形成し、該構造体の空隙にポリマーを充填して膜形成材を製造した後、保持基材及び微小体を脱離することによっても製造できる。
【0022】
本発明に係る保持基材は、その上面に微小体の周期的な構造体を作製するため、構造体とポリマーを保持できる強度を有するとともに表面平滑度が高く、また構造体の空隙にポリマーを充填した後、保持基材を除去する必要があるため、エッチングが可能であればいずれであってもよい。具体的な保持基材としては、シリカガラス等のガラス、酸化チタン、シリコン等の無機材料、アルミニウム、チタン等の金属、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン等のポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、保持基材と微小体を同時にしかも容易にエッチングできる、厚さが薄いスライドガラスが好ましい。
保持基材にポリマー基板を用いる場合、保持基材に用いるポリマーの種類は、ポリマー充填工程で充填するポリマーと異なる溶解性を有するポリマーを使用する必要がある。例えば、保持基板としてポリメタクリル酸メチルを用い、ポリマー充填工程でもポリメタクリル酸メチルを使用する場合は、充填するポリマーに架橋剤を入れ硬化する必要がある。
【0023】
保持基材の厚みは100μm〜1mmが好ましい。厚みが100μmより薄くなるにつれ、取り扱いが困難になるという傾向が見られ、厚みが1mmより厚くなるにつれ、エッチング時間が長くなり、エッチング溶剤が多量に必要になり経済性に欠けるという傾向が見られる。
本発明に係る保持基材の表面粗度は、0〜1μm、好ましくは0〜100nmが好ましい。表面租度は、用いられる微小体の粒径以下が望ましいため、微小体の粒径によって適宜変更される。ここで、表面粗度が100nmより大きいと、構造体を十分形成することができるが、規則性の乱れの要因となり、細孔密度の減少をもたらすという傾向がみられる。特に、1μmより大きいとこれらの傾向が著しくなる。
【0024】
本発明に係る構造体を形成する工程において、保持基材上に枠部を立設することも可能であるが、枠部を用いないで保持基材上に微小球の分散溶液を静置するだけでも構造体を形成することができる。
本発明に係る枠部を保持基材上に立設する方法としては、圧着、シリコーングリース等で目止めをする方法、接着剤等で固定化する方法等が用いられるが、枠部を容易に保持基材から取り除くことができる点から、圧着方法が好適に用いられる。ここで、用いられる接着剤の種類は問わない。また、枠部を保持基材から取り除く方法は、圧着については、上から負荷をかけることによって枠部を固定化しているので、負荷を取り除くことにより容易に取り外すことができる。また、シリコーングリース等で目止めをする方法についても、枠部を保持基材から引き離すことにより容易に取り外すことができる。更に、接着剤等で固定化する方法については、加熱したり、あるいは枠部を破壊等して取り除くことができる。
本発明に係る枠部の形状は、円筒状、角柱状等、構造体が形成できればいずれであってもよい。
本発明に係る枠部の材質は、シリコーンゴム、ガラス、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本発明に係る微小体の粒径が揃っていると、細孔径の分布が最小となり、また細孔密度の最大値が得られる。具体的には微小体の粒径は、50nm〜100μm、好ましくは100nm〜20μmである。ここで、粒径が100nmより小さくなるにつれ、微小体の沈降速度が非常に遅くなることによって、微小体が充填し難くなり、細密充填構造を有する周期的な構造体が形成されにくくなる傾向がみられ、粒径が20μmより大きくなるにつれ、微小体の作製が困難になる傾向がみられる。特に、粒径が50nmより小さいか、100μmより大きいと、これらの傾向が著しくなる。
【0026】
本発明に係る微小体の形状は、保持基材上に微小体が多数充填でき内部に空隙を有する構造体が形成できればいずれであってもよい。具体的な形状としては、球状、楕円状、円柱状、中空状、ゴルフボール状等が挙げられるが、特に、球状微小体を用いることによって最密になるため、多孔体形成後の細孔径が最も制御され、かつ最大になるので好ましい。
本発明に係る微小体の材質は、シリカの他、有機、無機溶媒でエッチングが可能であればポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等のポリマー等を用いることができる。特にシリカを用いると、沈降速度が速いため、微小体間の接点を容易に得ることが可能であり、また導入したポリマーと溶解する溶媒が異なるため、選択的にシリカのみをエッチングをすることができるので好ましい。例えば、100nm〜10μmのサイズのシリカ微小球は、容易に最密充填構造を有する周期的な微小球構造体(シリカオパール)を形成する。この微小球構造体には、微小球の隙間に約26%の連続充填が存在する。この空隙にポリマーを充填すれば、約26%の充填率でポリマーを充填した、シリカとポリマーの複合構造体ができる。この複合体をフッ化水素酸水溶液で処理し、シリカ微小球部分を取り去ると、充填率26%のポリマーと74%の空隙とからなるポリマー多孔体(ポリマー逆オパール)が得られる。このポリマー多孔体の均一なサイズの球状の微小な細孔に機能性物質を収納することにより機能性膜が得られる。
【0027】
シリカからなる微小体が多数充填される構造体は、例えば、水中にシリカ微小球を懸濁した溶液から、自然沈降法ないしは遠心力による強制沈降法により調製される。このようにして得られた周期構造を有するシリカ微小球からなる構造体は、水を除去し乾燥させるのが好ましい。乾燥後、構造体は、そのまま用いても、保持基材に用いられるポリマーの種類によっては、温度400〜800℃で焼結してから用いてもよい。尚、保持基板にポリカーボネートを用いる場合は焼結を行なうことができない。ここで、焼結温度が400℃より低くなるにつれ、構造体が固定化できにくくなる傾向がみられ、800℃を超えるにつれ、構造体が変形する傾向がみられる。
【0028】
一方、機能性物質を内包する微小体を用いる場合も同様に、シリカの他、有機、無機溶媒でエッチングが可能であればポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等のポリマー等を用いることができる。ここで、機能性物質を微小体に内包する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、金微粒子表面にシランカップリング剤を吸着させ、その後オルトケイ酸エチルの加水分解をこの表面で起こすことによってシリカ微小球内部に金微粒子を内包できる。
本発明に係る微小体は、構造体の空隙にポリマーを充填した後、除去する必要があるため、微小体間の接点が必要である。
【0029】
本発明に係るポリマーは、機能性物質を内包する微小体を用いる場合においては、保持基板及び微小体に用いるエッチング剤に耐性があり、且つポリマー多孔体からなる規則構造を維持できるだけの強度を有するとともに、機能性膜が分離膜として使用される場合には、分離する物質の溶媒に対する耐性があればいずれであってもよい。具体的なポリマーとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ヒドキシエチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ブチル、エポキシ樹脂、UV硬化樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一方、ポリマー多孔体を可逆的に変形して機能性物質を収納する場合においては、上述した条件を具備する他、変形の際、内部の構造がつぶれない程度の強度が必要となる。このような具体的なポリマーとしては、ポリメタクリル酸ヒドキシエチル、ポリウレタン、ポリアクリル酸ブチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリメタクリル酸メチルを用いる場合には、可逆変形が行えないので、架橋したポリメタクリル酸メチルを用い膨潤変形によって導入することが可能である。本明細書中、「可逆的」とは、完全な可逆的変形を意味するものではなく、ポリマー多孔体が伸縮自在に形成され、その細孔径又は細孔形状が外力等により変化し、外力を取り除くと、ポリマー多孔体が復元し元の細孔径又は細孔形状に戻る状態を意味する。
【0030】
本発明に係るポリマー充填工程において、ポリマーを構造体内部の空隙に充填する方法は、ポリアクリルアミドの場合は光(ラジカル)重合、熱溶融、ポリアクリル酸ブチルの場合は光(ラジカル)重合、熱溶融、ポリメタクリル酸メチルの場合は光(ラジカル)重合、熱溶融、ポリメタクリル酸ヒドキシエチルの場合は光(ラジカル)重合、熱溶融、ポリスチレンの場合は光(ラジカル)重合、熱溶融、ポリカーボネートの場合は熱溶融、エポキシ樹脂の場合は熱重合、UV硬化樹脂の場合は光重合、ポリウレタンの場合は熱重合等がそれぞれ用いられる。例えば、ポリマーとしてポリメタクリル酸メチルを用いる場合、増粘度剤(ポリメタクリル酸メチル)としての重量分率で25%のポリマー(ポリメタクリル酸メチル)を含むモノマー(メタクリル酸メチル)を導入し、このモノマーを紫外線光源(水銀ランプ)を用いて重合する。また、エポキシ樹脂を用いる場合、硬硬化剤(ポリアミドアミン)を導入し、このポリマーを熱重合により重合する。
【0031】
本発明に係るポリマーを充填する際に用いる増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ヒドキシエチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられるが、モノマーに溶解するポリマーであればこれらに限定されるものではない。
本発明に係るポリマーを充填する際に用いる硬化剤(反応開始剤)としては、ter−ブチルヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンゾイルジスルフィド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係るポリマーを充填する際に用いる架橋剤としては、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、無水フタル酸、ジエチレントリアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
尚、ポリマーを充填する箇所は構造体の空隙の他、構造体の側面部を包囲する形でポリマーを充填させることができる。
【0032】
保持基材及び微小体を脱離する脱離工程として行うエッチングに用いるエッチング剤としては、シリカガラスの場合はフッ化水素酸、フッ硝酸、酸化チタンの場合は熱濃硫酸、水酸化ナトリウム、シリコンの場合は王水、水酸化アルカリ、アルミニウムの場合は塩酸、希硫酸、硝酸、チタンの場合はフッ化水素酸、ポリメタクリル酸メチルの場合はトルエン、クロロホルム、ポリカーボネートの場合はクロロホルム、アセトン、DMF、ポリスチレンの場合はトルエン、クロロホルム等がそれぞれ用いられる。
【0033】
本発明に係る機能性物質は、脱離工程で微小体を脱離して形成したポリマー多孔体の細孔に閉じ込めることができるものであればいずれであってもよい。具体的な機能性物質としては、デンドリマー、主鎖又は側鎖に機能基を付与したデンドリマーもしくはポリマー鎖、色素分子等の単一分子を閉じ込めたデンドリマー、シリカあるいはチタニア等の酸化物微粒子、酸化物半導体微粒子、金、銀、白金、パラジウム等の金属微粒子、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル等を用いたポリマー微粒子、ポリマー微粒子の表面を修飾した数μm以下の微粒子、金コロイド等のコロイド粒子、タンパク質粒子、酵素、ウィルス、微生物、抗体、核酸、糖類等から選択される少なくとも1種が好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。ここで、ポリマー鎖には、オリゴマー、ポリマー、コポリマー等を含有する。
【0034】
デンドリマーの種類は、機能性物質として用いることができれば、いずれであってもよい。ここで、デントリマーとは、中心部(コア)から樹枝状に繰り返し構造(デンドロン)を有する単分散高分子をいう。
ポリマー鎖あるいはポリマー微粒子に用いられるポリマーの種類は、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、シリコン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド等、機能性物質として用いることができれば、これらに限定されるものではない。
【0035】
酸化物微粒子、酸化物半導体微粒子に用いられる酸化物は、チタニア、シリカ、窒素酸化物、硫黄酸化物等、機能性物質として用いることができれば、これらに限定されるものではない。
タンパク質粒子に用いられるタンパク質は、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸等の重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酵素としては、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、分裂(脱離)酵素、異性化酵素等が挙げられるが、いずれであってもよい。また、酵素は補酵素も含む。
【0036】
ウィルスとしては、動物ウィルス、植物ウィルス、バクテリオファージ等の細菌ウィルス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
デンドリマーもしくはポリマー鎖の主鎖又は側鎖に付与する機能基としては、アルキル基、アリール基、エステル基、水酸基、アシル基、アルデヒド基、ケトン基、アミド基、イミド基、エポキシ基、エピジオキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、チオール基、スルフィド基、ポリスルフィド基、スルフヒドリル基、二トリル基、ニトロ基、ハロゲン基、ハロゲン化アシル基、ヒドロキシ基、フェニル基、複素環、ホスホン酸基、ペルオキシ基、リン酸基等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの機能基を組み合わせることによって、発色部位やフォトクロミック部位、分子認識部位などを付与することが可能である。
【0037】
本発明に係る機能性物質の形状は、脱離工程で微小体を脱離して形成したポリマー多孔体の細孔に閉じ込めることができるものであればいずれであってもよく、また形状が同じである必要もない。具体的な形状としては、球状、楕円状、円柱状、中空状、ゴルフボール状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、細孔に閉じ込め易く各種性能を高めるためには、球形状の機能性物質を1乃至複数個収納するのが好ましい。
本発明に係る機能性物質の大きさは、ポリマー多孔体を可逆的に変形して作製する場合には、拡径前後の空隙連結部の細孔径との中間の大きさである。また、機能性物質を内包する微小体を用いる場合には、細孔径より大きいことが必要である。具体的に機能性物質の粒径は、10nm〜10μmが好ましい。ここで、粒径が10nmより小さくなるにつれ、多孔体内部に導入後、閉じこめるために必要な細孔径を小さくする必要があり、そのようなポリマー多孔体を作製することが困難になるという傾向がみられ、10μmより大きくなるにつれ、多孔体内部に導入する際の細孔径を大きくする必要があり、そのようなポリマー多孔体を作製することが困難になるという傾向がみられる。主鎖又は側鎖に機能基を付与したデンドリマーもしくはポリマー鎖については、粒径が約10nm程度が好適である。
【0038】
機能性物質を細孔に閉じ込める方法としてはいずれであってもよい。例えば、ポリマー多孔体に一軸延伸、二軸延伸、圧縮、ねじりひずみ等の外力を加えることにより伸張して変形を与え空隙を連結する細孔径を拡大させる。この状態で1乃至複数個の機能性物質を閉じ込め、その後、外力を取り除くことによりポリマー多孔体を収縮して細孔径の変形を元の状態に戻し、細孔間の空隙に機能性物質を閉じ込める必要がある。特に、架橋剤を加えて作製したポリマー多孔体を用いると、良溶媒中では膨潤することによって細孔径が増大し、機能物質導入後、貧溶媒に戻すことで細孔径を元に戻し機能物質を閉じこめることが可能である。ここで、ポリマー多孔体を収縮して細孔径を「復元する」とは、細孔径の変形を元の状態に略戻すことを意味し、完全な復元を要求するものではない。
【0039】
本発明のポリマーに、本発明の目的を損なわない範囲において、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、ブルーイング剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の添加剤等をブレンドしてもよい。
【0040】
本発明に係る機能性膜は、分子認識能、センサー機能、分離機能、化学反応触媒機能、光学機能、電子的機能等の各種機能を有し、化学センサー、バイオセンサー、分離膜、光学部品、電子部品、ミクロ化学反応容器等として広く用いられる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
図1は本発明の一実施例におけるポリマー多孔体の製造工程図である。
図1に示すように、保持基板であるカバーガラス(シリカガラス)2上に、枠部である円筒状のシリコーンゴム7を圧着した。このシリコーンゴム7内に、水中に粒径285nmの球状のシリカ製微小体(以下、シリカ微小球という。)3を懸濁させた溶液8を入れ、静置し、自然沈降法によりシリカ微小球3を沈降させ、シリカ微小球3が周期的に多数充填した構造体(以下、シリカ微小球周期構造体という。)4を調製した(図1(1))。その後、水を取り除き乾燥させ、シリコーンゴム7を取り外した(図1(2))。
次いで、上記のシリカ微小球周期構造体内4の空隙に、ポリエチレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートを予め混合し、85℃で24時間加熱しプレポリマーを調製した。得られたプレポリマーと架橋剤である1,1,1,-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(別名トリメリロールプロパン)を導入し、プレポリマーを80℃で24時間熱重合し、架橋させた(図1(3))。これにより、図2に示すような、膜形成材1が形成された。
図2は本発明の一実施例における膜形成材の拡大断面図である。
その後、保持基板およびシリカ微小球をエッチング剤である8%フッ化水素酸水溶液で溶かし、図3及び図4に示すような、ポリマー多孔体である多孔質ポリウレタンを作製した(図1(4))。
図3は本発明の一実施例におけるポリマー多孔体の拡大断面図であり、図4は本発明の一実施例におけるポリマー多孔体の拡大平面図である。
得られた多孔質ポリウレタンを機能性物質溶液中で延伸器(東亜商会製)を用いて、可逆的に二軸方向に変形させ、細孔間の空隙に機能性物質であるチタニア微粒子を導入した。
次に、多孔質ポリウレタンの変形を元に戻すことにより、チタニア微粒子を細孔間の空隙に閉じ込め、機能性膜を作製した。
【0042】
実施例2
保持基板であるカバーガラス(シリカガラス)上に、円筒状のシリコーンゴムを圧着した。このシリコーンゴム内に、水中に粒径285nmのシリカ微小球を懸濁させた溶液を入れ、静置し、自然沈降法によりシリカ微小球を沈降させ、シリカ微小球周期構造体を調製した。その後、水を取り除き乾燥させ、シリコーンゴムを取り外した。
次いで、上記のシリカ微小球周期構造体内の空隙に、重量分率で10%のポリマー(ポリメタクリル酸ヒドキシエチル)を含むモノマー(メタクリル酸ヒドキシエチル)を導入し、このモノマーを紫外線光源(水銀ランプ)を用いて重合した。
その後、保持基板およびシリカ微小球を、エッチング剤である8%フッ化水素酸水溶液で溶かし、ポリマー多孔体である多孔質ポリメタクリル酸ヒドキシエチルを作製した。
得られた多孔質ポリメタクリル酸ヒドキシエチルを機能性物質溶液中で延伸器(東亜商会製)を用いて、可逆的に二軸方向に変形させ、細孔間の空隙に機能性物質であるウィルスを導入した。
次に、多孔質ポリメタクリル酸ヒドキシエチルの変形を元に戻すことにより、ウィルスを細孔間の空隙に閉じ込め、機能性膜を作製した。
【0043】
実施例3
水中に粒径285nmのシリカ微小球を懸濁させた溶液の水滴を保持基材であるシリコーン上に静置させ、シリカ微小球周期構造体を調製した。その後、水を取り除き乾燥させた。
次いで、上記のシリカ微小球周期構造体内の空隙に、ポリマー(ポリカーボネート)を220℃に加熱し溶融して導入した。
その後、保持基板をエッチング剤である王水で、シリカ微小球をエッチング剤である8%フッ化水素酸水溶液でそれぞれ溶かし、ポリマー多孔体である多孔質ポリカーボネートを作製した。
得られた多孔質ポリカーボネートを機能性物質溶液中で延伸器(東亜商会製)を用いて、不可逆的に一軸方向に変形させ、細孔間の空隙に機能性物質である銀微粒子を導入した。
次に、多孔質ポリカーボネートを逆方向に圧縮することにより、銀微粒子を細孔間の空隙に閉じ込めた。ポリカーボネートは不可逆変形をするが、この変形を逆方向に圧縮することで、元に戻し機能物質を閉じこめ、機能性膜を作製した。
【0044】
実施例4
保持基板であるカバーガラス(シリカガラス)上に、枠部である円筒状のシリコーンゴムを圧着した。このシリコーンゴム内に、水中に粒径285nmのシリカ微小球を懸濁させた溶液を入れ、静置し、自然沈降法によりシリカ微小球を沈降させ、シリカ微小球周期構造体を調製した。その後、水を取り除き乾燥させ、シリコーンゴムを取り外した。
次いで、上記のシリカ微小球周期構造体内の空隙に、ポリエチレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートを予め混合し、85℃で24時間加熱しプレポリマーを調製した。得られたプレポリマーと架橋剤である1,1,1,-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(別名トリメリロールプロパン)を導入し、プレポリマーを80℃で24時間熱重合し、架橋させた。
その後、保持基板およびシリカ微小球をエッチング剤である8%フッ化水素酸水溶液で溶かし、ポリマー多孔体である多孔質ポリウレタンを作製した。
得られた多孔質ポリウレタンの細孔間の空隙に機能性物質である色素分子の単一分子を閉じ込めたデンドリマーを導入し、機能性膜を作製した。
【0045】
評価例1
実施例1〜3はポリマー多孔体を延伸することにより細孔間の空隙に機能性物質を閉じ込め、機能性膜を製造する方法であり、実施例4はポリマー多孔体を延伸することなく細孔間の空隙に機能性物質を閉じ込め、機能性膜を製造する方法である。また、実施例1〜2及び実施例4は構造体形成工程に枠部を用いて行われた機能性膜の製造方法であり、実施例3は枠部を用いないで行われた機能性膜の製造方法である。
実施例1〜4で得られた機能性膜について、走査電子顕微鏡(FE−SEM JSM−6340型 JEOL(株)製)で確認した。
その結果、実施例1〜4の膜内部の空隙の直径は、シリカ微小球の粒子径285nmと略等しく、また球状の空隙間の細孔は約50nmの細孔径を有していることがわかる。すなわち、実施例1〜4で得られた機能性膜は、用いたポリマーの種類に依存することなく、均一な細孔径および細孔形状を有することがわかる。
更に、実施例1〜4の機能性膜の上面にエタノールを置き、下面側を吸引すると、エタノールが流れることが確認された。その結果、機能性膜内に連続的な細孔を有することがわかる。
【0046】
実施例5
粒子径250nmの金微粒子表面にシランカップリング剤3-アミノプロピルトリエトキシシランを吸着させ、この金微粒子を核とし、オルトケイ酸エチルを表面で加水分解させて、金微粒子を内包するcore−shell型シリカ微小球(粒子径350nm)を作製した。反応は室温にて行い、溶媒としてエタノール、触媒としてアンモニア水を用いた。
保持基板であるシリカガラス(カバーガラス)上に、円筒状のシリコーンゴムを圧着した。このシリコーンゴム内に、水中に上記で作製した金微粒子を内包したシリカ微小球を懸濁させた溶液を入れ、静置し、自然沈降法によりシリカ微小球を沈降させ、シリカ微小球周期構造体を調製した。その後、水を取り除き乾燥させ、シリコーンゴムを取り外した。得られたシリカ微小球周期構造体を温度800℃で焼結し固定化した。
次いで、上記のシリカ微小球周期構造体内の空隙に、増粘度剤(ポリメタクリル酸メチル)としての重量分率で25%のポリマー(ポリメタクリル酸メチル)を含むモノマー(メタクリル酸メチル)を導入し、このモノマーを紫外線光源(水銀ランプ)を用いて重合した。
その後、保持基板およびcore−shell型シリカ微小球の表面にあるシリカ層部分を、エッチング剤である8%フッ化水素酸水溶液で溶かし、多孔質ポリメタクリル酸メチルの細孔間の空隙に金微粒子を閉じこめた機能性膜を作製した。
【0047】
実施例6
粒子径250nmの銀微粒子表面にシランカップリング剤3-アミノプロピルトリエトキシシランを吸着させ、この銀微粒子を核とし、オルトケイ酸エチルを表面で加水分解させて、銀微粒子を内包するcore−shell型シリカ微小球(粒子径350nm)を作製した。反応は室温にて行い、溶媒としてエタノール、触媒としてアンモニア水を用いた。
保持基板であるシリカガラス(カバーガラス)上に、円筒状のシリコーンゴムを圧着した。このシリコーンゴム内に、水中に上記で作製した銀微粒子を内包したシリカ微小球を懸濁させた溶液を入れ、静置し、自然沈降法によりシリカ微小球を沈降させ、シリカ微小球周期構造体を調製した。その後、水を取り除き乾燥させ、シリコーンゴムを取り外した。得られたシリカ微小球周期構造体を温度800℃で焼結し固定化した。
次いで、上記のシリカ微小球周期構造体内の空隙に、増粘度剤(ポリメタクリル酸メチル)としての重量分率で25%のポリマー(ポリメタクリル酸メチル)を含むモノマー(メタクリル酸メチル)を導入し、このモノマーを紫外線光源(水銀ランプ)を用いて重合した。
その後、保持基板およびcore−shell型シリカ微小球の表面にあるシリカ層部分を、エッチング剤である8%フッ化水素酸水溶液で溶かし、多孔質ポリメタクリル酸メチルの細孔間の空隙に銀微粒子を閉じこめた機能性膜を作製した。
【0048】
評価例2
実施例5〜6で得られた機能性膜について、走査電子顕微鏡(FE−SEM JSM−6340型 JEOL(株)製)で確認した。
これにより、実施例5〜6で得られた機能性膜は、空隙の直径が用いたシリカ微小球の粒径350nmと略等しく、また球状の空隙間の細孔は約80nmの細孔径を有していることがわかる。すなわち、実施例5〜6で得られた機能性膜は、用いたポリマーの種類に依存することなく、均一な細孔径および細孔形状を有することがわかる。
また、機能性膜の空隙内部には金微粒子あるいは銀微粒子が存在することを走査電子顕微鏡及び紫外可視吸収スペクトルにより確認した。
更に、分離膜の上面にヘキサンを置き、下面側を吸引すると、ヘキサンが流れることが確認された。その結果、機能性膜内に連続的な細孔を有することがわかる。
【0049】
【発明の効果】
本発明の機能性膜の製造方法によれば、分子認識能、特異吸着機能、化学反応性、特異な電気特性や光学特性等の機能が厳密に制御可能な機能性膜を精密且つ簡易に製造することができる。また、微小体の粒子径を変化させることにより、略完全に均一な細孔径を有し連続細孔を備える機能性膜を適宜製造することができ汎用性に優れる。更に、外部より力を加えることにより空隙を連結する細孔径を大きくした状態で機能性物質を導入し、その後外部からの力を取り除くことにより細孔径を元の状態に戻し、容易に機能性物質を閉じ込めることが可能となる。
【0050】
本発明の機能性膜によれば、略完全に均一な細孔径を有し且つ連続細孔が三次元的に形成され、分子認識能、センサー機能、化学反応触媒機能、光学機能、電子的機能、分離機能等の機能等が厳密に制御可能となり、化学センサー、バイオセンサー、光学部品、電子部品、ミクロ化学反応容器、分離膜等として広く用いられる機能性膜を精密且つ簡易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるポリマー多孔体の製造工程図
【図2】本発明の一実施例における膜形成材の拡大断面図
【図3】本発明の一実施例におけるポリマー多孔体の拡大断面図
【図4】本発明の一実施例におけるポリマー多孔体の拡大平面図
【符号の説明】
1 膜形成材
2 カバーガラス
3 シリカ微小球
4 構造体
5 ポリマー
6 ポリマー多孔体
7 シリコーンゴム
8 シリカ微小球分散水溶液

Claims (7)

  1. 保持基材の上面に、球状の微小体を充填し内部に連続した空隙を有する構造体を形成する構造体形成工程と、該構造体形成工程で得られた構造体の空隙にポリマーを充填するポリマー充填工程と、該ポリマー充填工程後、保持基材及び微小体を脱離する脱離工程と、該脱離工程で微小体を脱離して形成したポリマー多孔体の細孔に機能性物質を閉じ込める工程と、を有することを特徴とする機能性膜の製造方法。
  2. 該脱離工程で得られたポリマー多孔体を伸張して細孔径を拡径し、拡径した細孔に機能性物質を閉じ込め、次いで、ポリマー多孔体を収縮して細孔径を復元することを特徴とする請求項1に記載の機能性膜の製造方法。
  3. 保持基材の上面に、機能性物質を内包する球状の微小体を充填し内部に連続した空隙を有する構造体を形成する構造体形成工程と、該構造体形成工程で得られた構造体の空隙にポリマーを充填するポリマー充填工程と、該ポリマー充填工程後、保持基材及び微小体を脱離する脱離工程と、を有することを特徴とする機能性膜の製造方法。
  4. 機能性物質が主鎖又は側鎖に機能基を付与したデンドリマーもしくはポリマー鎖、酸化物微粒子、金属微粒子、ポリマー微粒子、コロイド粒子、タンパク質粒子、酵素、ウィルスから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の機能性膜の製造方法。
  5. 脱離可能な保持基材と、該保持基材の上面に形成した、脱離可能な、球状の微小体を充填し内部に連続した空隙を有する構造体と、該構造体の空隙に充填したポリマーとからなる膜形成材から、保持基材及び微小体を脱離して形成した細孔を有するポリマー多孔体であって、該ポリマー多孔体の細孔に機能性物質を閉じ込めたことを特徴とする機能性膜。
  6. 脱離可能な保持基材と、該保持基材の上面に形成した、機能性物質を内包した脱離可能な、球状の微小体を充填し内部に連続した空隙を有する構造体と、該構造体の空隙に充填したポリマーとからなる膜形成材から、保持基材及び微小体を脱離して形成したことを特徴とする機能性膜。
  7. 機能性物質が主鎖又は側鎖に機能基を付与したデンドリマーもしくはポリマー鎖、酸化物微粒子、金属微粒子、ポリマー微粒子、コロイド粒子、タンパク質粒子、酵素、ウィルスから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5又は6に記載の機能性膜。
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