JP3686405B2 - 繊維強化プラスチックの製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化プラスチックの製造装置に関し、含浸抵抗の大きい繊維基材に対しても、短時間で良好な樹脂注入ができるように工夫したものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、繊維強化プラスチック(以下「FRP」と称する)の製造方法として、真空バッグ法が知られている。この真空バッグ法では、基台の上に繊維基材を載置し、この繊維基材をバッグフィルムで覆い、バッグフィルムの周縁部分と基台との間をシールする。そして、バッグフィルムと基台との間の繊維基材が存在する空間を真空引きしつつ、この空間内に液体樹脂を注入する。この場合、液体樹脂を加圧して注入することもある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
強化繊維基材は、含浸抵抗が大きいため、これに樹脂含浸をする場合には、液体樹脂に圧力を掛けて注入する必要がある。
【0004】
繊維基材に液体樹脂が含浸していく含浸速度は、含浸中の液体樹脂の圧力勾配(液体樹脂の注入圧力と真空負圧との差)に依存し、圧力勾配が大きいほど含浸速度は速くなる。
【0005】
【特許文献1】
特開昭60-83826号公報(2頁の右上欄16行目〜右下欄1行目、
3頁の左上欄16行目〜左上欄19行目)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、強化繊維基材への液体樹脂の含浸速度を速くしようとして、液体樹脂の注入圧力をより高くした場合には、強化繊維基材への含浸速度はそれほど上がらず、強化繊維基材とこれを覆っているバッグフィルムとの間に液体樹脂が溜まってしまう現象が発生する(この現象は、後述する[発明の実施の形態]の中で再度説明する)。つまり、強化繊維基材を覆っているバッグフィルムが、高圧の液体樹脂で押され強化繊維基材から離れて膨らみ、この膨らんだ空間に液体樹脂が溜まってしまうことがある。
【0007】
このような現象が発生すると、バッグフィルムが膨らんだ部分で、強化繊維基材も膨らみ(樹脂の体積率が高くなり)、硬化後において、膨らんだ部分での繊維含有率が低下してしまったり、樹脂溜まりが発生して、FRPの品質低下を招いてしまう。したがって、強化繊維基材への樹脂注入をする場合であっても、注入する液体樹脂の注入圧力は制限されており、この結果、強化繊維基材の樹脂含浸時間は長くなっていた。この傾向は、大型厚肉FRPにおいて、顕著になっていた。
【0008】
なお強化繊維基材を用いた大型厚肉FRP製品としては、次のようなものがある。
(1) FRPブレード(風車、各種タービン動翼)
(2) 航空機用FRP構造体(機体、ドア、翼)
(3) 橋梁
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み、大型肉厚のFRP製品であっても高品質に製造することができ、しかも、含浸時間を短くすることができる(含浸速度を速くすることができる)繊維強化プラスチックの製造装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の構成は、繊維基材が載置される基台と、基台上に載置された繊維基材を覆うバッグフィルムと、バッグフィルムの周縁部分と基台との間をシールするシール手段と、バッグフィルムと基台との間の繊維基材が存在する空間を真空引きする真空引き手段と、前記空間内に液体樹脂を加圧して注入する樹脂注入手段とを有する繊維強化プラスチックの製造装置において、
前記バッグフィルムの上で、且つ、前記繊維基材の周囲を囲む状態で配置されたダムと、
バッグフィルムとダムで形成された空間内に充填される加圧媒体とを備えていることを特徴とする。
【0014】
また本発明の構成は、前記加圧媒体は砂であること、または、前記加圧媒体はシリコンオイルであること、または、前記加圧媒体は、充填時には液状であり時間が経過すると硬化する石膏であること、または、前記加圧媒体は、充填時には液状であり時間が経過すると硬化する液状樹脂であることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係るFRP製造装置1を示す。このFRP製造装置1の構成を、FRPの製造手順と併せて説明する。
【0018】
図1に示すように、基台2の上に強化繊維基材3を載置し、この強化繊維基材3をバッグフィルム4で覆う。そして、バッグフィルム4の周縁部分(バッグフィルム4のうち強化繊維基材3を覆っていない周縁の部分)と、基台2との間を、シーラント(シール手段)5によりシールする。
このとき、バッグフィルム4と基台2との間の強化繊維基材3が存在する空間A1に、配管H1,H2をシール状態を保持しつつ挿入しておく。
【0019】
配管H1には、樹脂加圧ポンプP1が介装されるとともに、樹脂タンク6が接続されている。樹脂タンク6内には、FRP用の液体樹脂Rが貯留されている。そして、これら、配管H1,樹脂加圧ポンプP1,樹脂タンク6により、樹脂注入手段が形成されている。
【0020】
配管H2には、樹脂トラップ7が接続されており、この樹脂トラップ7には、真空ポンプP3が介装された配管H3が接続されている。そして、これら配管H2,H3,樹脂トラップ7,真空ポンプP3により、真空引き手段が形成されている。
【0021】
加圧チャンバー8は、空間A2を介在した状態でバッグフィルム7を覆って設置される。このとき、シーラント9を用いて、加圧チャンバー8とバッグフィルム4との間をシールしている。加圧チャンバー8には、気体加圧ポンプP2が介装された配管H4が接続されており、加圧チャンバー8とバッグフィルム4との間の空間A2に圧縮空気を供給することができるようになっている。そして、これら加圧チャンバー8,配管H4,気体加圧ポンプP2により圧縮流体供給手段が形成されている。
【0022】
このFRP製造装置1では、まず真空ポンプP3を駆動して、空間A1内を真空引きする。このときの真空圧は、例えば−1気圧とする(大気を0気圧とした場合)。
【0023】
真空引きを継続しつつ、気体加圧ポンプP2を駆動して、圧縮空気を空間A2に供給する。これにより、バッグフィルム4は、圧縮空気に押されて強化繊維基材3に向けて押し付けられる。なお、圧縮空気の圧力は、例えば2.0気圧とする。
【0024】
真空引き、及び、バッグフィルム4の気体加圧を継続しつつ、樹脂加圧ポンプP1を駆動して、液体樹脂Rを空間A1内に注入する。このとき、液体樹脂Rの圧力を、例えば、1.5気圧とする。このように、液体樹脂Rの圧力が例えば1.5気圧であり、真空引きの圧力が例えば−1気圧であるので、含浸圧力は2.5気圧となる。このように含浸圧力が大きいので、注入された液体樹脂Rは、真空引きされた強化繊維基材3に短時間で確実に含浸していく。
【0025】
このとき、空間A2の圧縮空気の圧力を、空間A1に注入される液体樹脂Rの注入圧力よりも大きく設定しているので、バッグフィルム4は、空間A2に供給された圧縮空気により押されており膨らむことはない。つまり、バッグフィルム4は強化繊維基材3の外面に密着する状態で均等に強化繊維基材3に押し付けられる。このため、バッグフィルム4と強化繊維基材3との間に大きな隙間が形成されることはなく、樹脂溜まりの発生はなく、また、強化繊維基材3が膨らんで繊維含有率が低下することはない。
【0026】
なお、樹脂含浸している際に真空引きすると、空間A1内から液体樹脂Rが配管H2を通って外部に排出されるが、この排出された液体樹脂Rは樹脂トラップ7にて捕捉され、真空ポンプP3に吸い込まれることはない。
【0027】
このようにして、強化繊維基材3に対して高圧で液体樹脂Rを含浸できるので、短時間で樹脂含浸ができる。樹脂含浸後に液体樹脂Rを硬化させることにより、高品質のFRP製品を製造することができた。
【0028】
なお、液体樹脂Rが強化繊維基材3の全体に均等に充填された後は、液体樹脂Rの注入は停止するが、この液体樹脂Rの注入停止後において、空間A2に供給する圧縮空気の圧力を更に高めると、余分な液体樹脂Rを強化繊維基材3から排出することができ、高繊維含有率(Vf(Volume fraction :体積率)55%〜65%)で、かつ、高強度の高品質FRP製品を製造することができた。
【0029】
ところで、仮に、バッグフィルム4を圧縮空気により加圧しない場合には、バッグフィルム4は、図1において点線で示すように膨らみ、この膨らみ部分に液体樹脂Rが溜まって樹脂溜まりが発生してしまうと共に、バッグフィルム4が膨らんだ部分で樹脂の体積率が高くなり、繊維含有率が低下してしまう。本実施の形態では、バッグフィルム4の膨らみを、圧縮空気の押し付けにより防止しているため、かかる不具合が発生することはない。
【0030】
<第2の実施の形態>
次に本発明の第2の実施の形態にかかるFRP製造装置1Aを、図2を参照しつつ説明する。なお、図1に示すFRP製造装置1と同一機能を果たす部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0031】
図2に示すように、第2の実施の形態に係るFRP製造装置1Aでは、シーラント9によりシール性を確保しつつ、バッグフィルム4の上にダム10が配置されている。このダム10は、バッグフィルム4で覆われた強化繊維基材3の周囲を囲んでいる。
【0032】
更に、バッグフィルム4を底面としダム10を周面として形成された空間A3内に加圧媒体としての砂11を充填する。この砂11としては、セラミックス粉末や、鋳物砂等を使用することができ、堆積量を場所により変えることにより、圧力分布を制御することができる。例えば、図1におけるバッグフィルム4を点線で示した部分では、バッグフィルム4を強化繊維基材3から離して上方に膨らませる力が大きくなるので、この部分に多量の砂11を堆積するようにしてもよい。
【0033】
本実施の形態では、砂11によりバッグフィルム4を強化繊維基材3に押し付けるため、高圧で液体樹脂Rを注入・充填しても、バッグフィルム4が膨らむことはなく、樹脂溜まりなく迅速・均等に液体樹脂Rの含浸をすることができる。
【0034】
なお、図2に示す実施の形態では、加圧媒体として砂11を採用したが、砂11の代わりに、
(1)シリコンオイルや、
(2)石膏や、
(3)液状樹脂
を採用することもできる。
【0035】
<第3の実施の形態>
加圧媒体としてシリコンオイルを採用する場合には、ダム10の一部(なるべく下部)に排出弁を設置しておく。このようにすれば、含浸処理が終了したときに、排出弁を開放することにより簡単にシリコンオイルの排出をすることができる。
【0036】
<第4の実施の形態>
加圧媒体として石膏を用いる場合について説明する。バッグフィルム4の加圧をするために、バッグフィルム4を底面としダム10を周面として形成された空間A3内に液体状の石膏を注入する。この石膏は一定時間が経過すると硬化する。石膏が硬化してから、空間A1内への樹脂注入を開始する。そうすると、硬化した石膏により、バッグフィルム4は強化繊維基材3側に押され、バッグフィルム4が膨らむことが防止される。さらに、硬化した石膏により、強化繊維基材3の外面が支えられるため、強化繊維基材3の形状保持を行うことができる。特に、載置された強化繊維基材3の形状が複雑な場合(例えばリブを有している場合)には、この複雑な形状となった強化繊維基材3の外面に、バッグフィルム4を介して、硬化した石膏が存在して形状保持をするため、高圧で樹脂含浸をしても、形状が乱れることなく元の形状を保持したまま樹脂含浸ができる。
【0037】
<第5の実施の形態>
加圧媒体として液状樹脂を用いる場合について説明する。バッグフィルム4を加圧するために、バッグフィルム4を底面としダム10を周面として形成された空間A3内に液体状の液状樹脂を注入する。この液状樹脂は一定時間が経過すると硬化する。液状樹脂が硬化してから、空間A1内への樹脂注入を開始する。そうすると、硬化した液状樹脂により、バッグフィルム4は強化繊維基材3側に押され、バッグフィルム4が膨らむことが防止される。さらに、硬化した液状樹脂により、強化繊維基材3の外面が支えられるため、強化繊維基材3の形状保持を行うことができる。特に、載置された強化繊維基材3の形状が複雑な場合(例えばリブを有している場合)には、この複雑な形状となった強化繊維基材3の外面に、バッグフィルム4を介して、硬化した液状樹脂が存在して形状保持をするため、高圧で樹脂含浸をしても、形状が乱れることなく元の形状を保持したまま樹脂含浸ができる。
【0038】
<第6の実施の形態>
第6の実施の形態では、バッグフィルム4の上面(バッグフィルム4のうち強化繊維基材3の上面を覆う部分)に、金属製の板材を置く。この板材の広さは、バッグフィルム4の上面の全面を覆う広さであってもよく、または、図1におけるバッグフィルム4を点線で示した部分のみを覆う広さであってもよい。
このようにすると、板材により、バッグフィルム4は強化繊維基材3側に押され、バッグフィルム4が膨らむことが防止される。
【0039】
<第7の実施の形態>
第7の実施の形態では、強化繊維基材3の外面と同様な形状となっている型材を、バッグフィルム4を介して、強化繊維基材3に被せる。このようにすると、バッグフィルム4は強化繊維基材3側に押され、バッグフィルム4が膨らむことが防止される。さらに、型材により、強化繊維基材3の外面が支えられるため、強化繊維基材3の形状保持を行うことができる。特に、載置された強化繊維基材3の形状が複雑な場合(例えばリブを有している場合)には、この複雑な形状となった強化繊維基材3の外面に、バッグフィルム4を介して、型材が存在して形状保持をするため、高圧で樹脂含浸をしても、形状が乱れることなく元の形状を保持したまま樹脂含浸ができる。
【0042】
【発明の効果】
以上、実施の形態と共に具体的に説明したように、本発明では、繊維基材が載置される基台と、基台上に載置された繊維基材を覆うバッグフィルムと、バッグフィルムの周縁部分と基台との間をシールするシール手段と、バッグフィルムと基台との間の繊維基材が存在する空間を真空引きする真空引き手段と、前記空間内に液体樹脂を加圧して注入する樹脂注入手段とを有する繊維強化プラスチックの製造装置において、前記バッグフィルムの上で、且つ、前記繊維基材の周囲を囲む状態で配置されたダムと、バッグフィルムとダムで形成された空間内に充填される加圧媒体とを備えた構成とした。
このとき、前記加圧媒体は砂、または、シリコンオイル、または、充填時には液状であり時間が経過すると硬化する石膏、または、充填時には液状であり時間が経過すると硬化する液状樹脂とした。
このため、簡単な手段で均一にバッグフィルムを押さえることができ、これによりバッグフィルムの膨らみを防止できる。このため、樹脂溜まりが発生することなく、繊維含有率が低下することもなくなり、FRPの製品品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るFRP製造装置を示す構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るFRP製造装置を示す構成図。
【符号の説明】
1,1A FRP製造装置
2 基台
3 強化繊維基材
4 バッグフィルム
5 シーラント
6 樹脂タンク
7 樹脂トラップ
8 加圧チャンバー
9 シーラント
10 ダム
11 砂
P1 樹脂加圧ポンプ
P2 気体加圧ポンプ
P3 真空ポンプ
H1〜H4 配管
A1〜A3 空間
R 液体樹脂
Claims (5)
- 繊維基材が載置される基台と、基台上に載置された繊維基材を覆うバッグフィルムと、バッグフィルムの周縁部分と基台との間をシールするシール手段と、バッグフィルムと基台との間の繊維基材が存在する空間を真空引きする真空引き手段と、前記空間内に液体樹脂を加圧して注入する樹脂注入手段とを有する繊維強化プラスチックの製造装置において、
前記バッグフィルムの上で、且つ、前記繊維基材の周囲を囲む状態で配置されたダムと、
バッグフィルムとダムで形成された空間内に充填される加圧媒体とを備えていることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造装置。 - 請求項1において、前記加圧媒体は砂であることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造装置。
- 請求項1において、前記加圧媒体はシリコンオイルであることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造装置。
- 請求項1において、前記加圧媒体は、充填時には液状であり時間が経過すると硬化する石膏であることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造装置。
- 請求項1において、前記加圧媒体は、充填時には液状であり時間が経過すると硬化する液状樹脂であることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造装置。
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