JP3686148B2 - トルク用ダンパ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は,オイルのような液体を使用しないトルク用ダンパ,特に高いトルクのダンピング作用を発揮するのに適したトルク用ダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,例えば,ピアノの鍵盤蓋等のような上下開閉式の蓋を操作する場合,急激に閉じるのを防止するために,衝撃緩和装置を設けることが行われる。従来の装置は,例えばオイルダンパのように,オイルを圧縮しようとするとき発生する反発力を利用するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし,このような従来のダンパにあっては,オイルのような粘性流体の粘性抵抗を利用しているため,環境の変化,特に温度の変化により粘性抵抗が変化するので,温度によりトルク値が異なり,ダンピング効果が異なるという欠点があった。また,可動弁により粘性流体の流量を調節しているので,応答性が悪く,蓋の開きが少ない状態で離すと,ダンピング効果の生じる前に,蓋が勢い良く閉じてしまうという欠点があった。また,蓋の閉じる速度によりトルク値が異なり,手でゆっくりと蓋を閉じる場合には,ダンピング効果を期待できないという欠点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は,この課題を解決するため,内輪の外径面に形成されているカム形状部と,外輪に一端が係止され,他端側で前記カム形状部を弾性力で押圧する板ばねとを備えるトルク用ダンパにおいて,前記カム形状部は,切欠部の下端からトルク発生位置までの範囲は中心からの距離がほぼ一定であって,前記トルク発生位置から前記切欠部の上端までは前記内輪の中心からの距離が連続的に増加するように形成されており,前記外輪または内輪の回転に伴い,前記板ばねの前記他端側が前記トルク発生位置から前記切欠部の上端までの範囲にあるときは,前記板ばねの前記他端側が前記カム形状部に与える押圧力が連続的に増加または減少することを特徴とするトルク用ダンパを提供する。
【0005】
第2の発明は,外輪の内径面に形成されているカム形状部と,内輪に一端が係止され,他端側で前記カム形状部を弾性力で押圧する板ばねとを備えるトルク用ダンパにおいて,前記カム形状部は,切欠部の下端からトルク発生位置までの範囲は中心からの距離が略一定であって,トルク発生位置から切欠部の上端までは中心からの距離が連続的に減少するように形成されており,前記外輪または内輪の回転に伴い,前記板ばねの前記他端側が前記トルク発生位置から前記切欠部の上端までの範囲にあるときは,前記板ばねの前記他端側が前記カム形状部に与える押圧力が連続的に増加または減少することを特徴とするトルク用ダンパを提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1乃至図3は本発明の第1の実施の形態を説明するための図である。
【0011】
これらの図において,1は外径面にカム形状部1aが形成された内輪であり,カム形状部1aは,切欠部1bの下端からトルク発生位置1cまでの範囲は中心からの距離がほぼ一定,トルク発生位置1cから切欠部1bの上端までは中心からの距離が連続的に増加するように形成されている。2は内輪1を内部に組み込む外輪,3は一端が開放され,他端に軸の挿通される穴の開いているハウジングであって,開放されている側の内径が,軸の挿通される穴の開いている側の内径よりも大きくなっており,外輪2が開放されている側から組み込まれる。
【0012】
4は内輪1のカム形状部1aをローラ5を介して弾性力で押圧するように,内輪1と外輪2間に配設されるへの字状の板ばねであって,一端4aが外輪の係止用溝2dに係止され,他端4bはローラを脱落しないで回転できるように保持する構造をしている。6は板ばねとローラを配設して内輪1と外輪2とを組み合わせた後,これらが軸方向に脱落するのを防止するためにハウジング3の開放された側からハウジングに圧入されるシールド板,7は軸である。
【0012】
4は板ばねであって,外輪2に一端が係止され,他端が内輪1のカム形状部1aをローラ5を介して弾性力で押圧するように,内輪と外輪間に配設される。6は板ばねとローラを配設して内輪1と外輪2とを組み合わせた後,これらが軸方向に脱落するのを防止するためにハウジング3の開放された側からハウジングに圧入されるシールド板,7は軸である。
【0013】
図1(a)は,ローラ5と内輪のカム形状部1aとが,切欠部1bの下端近傍で接触している状態を示す図であり,同図に示すように,これはこのダンパがピアノ8の鍵盤蓋のような上下開閉式の蓋8aのヒンジ部8bに用いられた場合に,蓋が開いた状態であり,蓋が閉じた状態を0°として,例えば100°開いた状態である。
【0014】
図1(b)は,ローラ5と内輪のカム形状部1aとが,トルク発生位置1cで接触している状態を示す図であり,同図に示すように,これは蓋8が中途に開いた状態,例えば70°開いた状態である。
【0015】
図1(c)は,ローラ5と内輪のカム形状部1aとが,切欠部1bの上端近傍で接触している状態を示す図であり,同図に示すように,これは蓋8が閉じた状態である。
【0016】
次に動作を説明する。
【0017】
先ず,蓋8を開いた状態,例えば図1(a)に示すように100°開いた状態から,中途に開いた状態,例えば図1(b)に示すように70°開いた状態へ移動すると,内輪1が右方向に回転して,ローラ5は,内輪のカム形状部1a上を,切欠部1bの下端近傍からトルク発生位置1cまで回転しながら移動する。
【0018】
この範囲では,内輪1の中心からカム形状部1aまでの距離がほぼ一定であるので,カム形状部1a上を移動しようとする方向に発生するトルクはほぼ零である。従って,蓋8を100°開いた状態から70°開いた状態へ移動する場合には,蓋は殆どトルクの影響を受けない。
【0019】
次に,蓋8を図1(b)に示すように70°開いた状態から,図1(c)に示すように閉じた状態へ移動すると,内輪1が右方向に回転して,ローラ5は,内輪のカム形状部1a上を,トルク発生位置1cから切欠部1bの上端近傍まで回転しながら移動する。
【0020】
この範囲では,内輪1の中心からカム形状部1aまでの距離が連続的に増加するように形成されており,内輪のカム形状部1aの脹らみが連続的に増加しているので,板ばね4も連続的に撓みが増大する。その結果,カム形状部1a上を戻ろうとする方向,即ち内輪1を左方向に回転させる方向にトルクが発生する。従って,蓋8を70°開いた状態から閉じた状態へ移動する場合には,内輪を右方向に回転させて蓋を閉じようとする方向に作用する蓋の自重に対して,発生するトルクは,内輪1を左方向に回転させて蓋を開こうとする方向に作用するので,蓋は徐々に閉じる。
【0021】
次に,蓋8を図1(c)に示すように閉じた状態から,図1(b)に示すように70°開いた状態へ移動すると,内輪1が左方向に回転して,ローラ5は,内輪のカム形状部1a上を,切欠部1bの上端近傍からトルク発生位置1cまで回転しながら移動する。
【0022】
この範囲では,内輪1の中心からカム形状部1aまでの距離が連続的に減少するように形成されており,内輪のカム形状部1aの脹らみが連続的に減少しているので,板ばね4も連続的に撓みが減少する。その結果,カム形状部1a上を先に進もうとする方向,即ち内輪1を左方向に回転させる方向にトルクが発生する。従って,蓋を閉じた状態から70°開いた状態へ移動する場合には,内輪を右方向に回転させて蓋を閉じようとする方向に作用する蓋の自重に対して,発生するトルクは,内輪1を左方向に回転させて蓋を開こうとする方向に作用するので,蓋は僅かの力で軽く持ち上げることができる。
【0023】
次に,蓋8を図1(b)に示すように70°開いた状態から,図1(a)に示すように100°開いた状態へ移動すると,内輪1が左方向に回転して,ローラ5は,内輪のカム形状部1a上を,トルク発生位置1cから切欠部1bの下端近傍まで回転しながら移動する。
【0024】
この範囲では,内輪1の中心からカム形状部1aまでの距離がほぼ一定であるので,カム形状部1a上を移動しようとする方向に発生するトルクはほぼ零である。従って,蓋8を70°開いた状態から100°開いた状態へ移動する場合には,蓋は殆どトルクの影響を受けない。
【0025】
ここで,内輪1のカム形状部1aのトルク発生位置1cから切欠部1bの上端までは,カム形状部1aの脹らみが連続的に増加するように形成されているが,その増加率については,必要に応じて種々のものが形成できるので,この発明の高トルク用ダンパは種々の用途に適用することができる。
【0026】
図4は本発明の第2の実施の形態を説明するための図である。
【0027】
この実施の形態は,ローラ5を介さないで,板ばね4が内輪のカム形状部1a上を滑りながら移動するようにしたものである。また,第1の実施の形態とは内輪のカム形状部1aのカムの形状を逆にしているので,カム形状部1a上を移動しようとする方向に発生するトルクは第1の実施の形態とは逆であり,発生するトルクは内輪を第1の実施の形態の場合とは,逆方向に回転しようとするものである。その他は第1の実施の形態とほぼ同様であり,同様の効果が得られる。
【0028】
図5乃至図7は本発明の第3の実施の形態を説明するための図である。
【0029】
これらの図において,1は外輪の内部に組み込まれる内輪,2は内径面にカム形状部2aが形成された外輪であり,カム形状部2aは,切欠部2bの下端からトルク発生位置2cまでの範囲は中心からの距離がほぼ一定,トルク発生位置2cから切欠部2bの上端までは中心からの距離が連続的に減少するように形成されている。3は一端が開放され,他端に軸の挿通される穴の開いているハウジングであって,開放されている側の内径が,軸の挿通される穴の開いている側の内径よりも大きくなっており,外輪2が開放されている側から組み込まれる。
【0030】
4は外輪2のカム形状部2aをローラ5を介して弾性力で押圧するように,内輪1と外輪2間に配設されるへの字状の板ばねであって,一端4aが内輪の係止用溝1dに係止され,他端4bはローラを脱落しないで回転できるように保持する構造をしている。6は板ばねとローラを配設して内輪1と外輪2とを組み合わせた後,これらが軸方向に脱落するのを防止するためにハウジング3の開放された側からハウジングに圧入されるシールド板,7は軸である。
【0031】
図5(a)は,ローラ5と外輪のカム形状部2aとが,切欠部2bの下端近傍で接触している状態を示す図であり,同図に示すように,これはこのダンパがピアノ8の鍵盤蓋のような上下開閉式の蓋8aのヒンジ部8bに用いられた場合に,蓋が開いた状態であり,蓋が閉じた状態を0°として,例えば100°開いた状態である。
【0032】
図5(b)は,ローラ5と内輪のカム形状部2aとが,トルク発生位置2cで接触している状態を示す図であり,同図に示すように,これは蓋8が中途に開いた状態,例えば70°開いた状態である。
【0033】
図5(c)は,ローラ5と内輪のカム形状部2aとが,切欠部2bの上端近傍で接触している状態を示す図であり,同図に示すように,これは蓋8が閉じた状態である。
【0034】
次に動作を説明する。
【0035】
先ず,蓋8を開いた状態,例えば図5(a)に示すように100°開いた状態から,中途に開いた状態,例えば図5(b)に示すように70°開いた状態へ移動すると,内輪1が左方向に回転して,ローラ5は,外輪のカム形状部2a上を,切欠部2bの下端近傍からトルク発生位置2cまで回転しながら移動する。
【0036】
この範囲では,外輪2の中心からカム形状部2aまでの距離がほぼ一定であるので,カム形状部2a上を移動しようとする方向に発生するトルクはほぼ零である。従って,蓋8を100°開いた状態から70°開いた状態へ移動する場合には,蓋は殆どトルクの影響を受けない。
【0037】
次に,蓋8を図5(b)に示すように70°開いた状態から,図5(c)に示すように閉じた状態へ移動すると,内輪1が左方向に回転して,ローラ5は,外輪のカム形状部2a上を,トルク発生位置2cから切欠部2bの上端近傍まで回転しながら移動する。
【0038】
この範囲では,外輪2の中心からカム形状部2aまでの距離が連続的に減少するように形成されており,外輪のカム形状部2aの脹らみが連続的に増加しているので,板ばね4も連続的に撓みが増大する。その結果,カム形状部2a上を戻ろうとする方向,即ち内輪1を右方向に回転させる方向にトルクが発生する。従って,蓋8を70°開いた状態から閉じた状態へ移動する場合には,内輪を左方向に回転させて蓋を閉じようとする方向に作用する蓋の自重に対して,発生するトルクは,内輪1を右方向に回転させて蓋を開こうとする方向に作用するので,蓋は徐々に閉じる。
【0039】
次に,蓋8を図5(c)に示すように閉じた状態から,図5(b)に示すように70°開いた状態へ移動すると,内輪1が右方向に回転して,ローラ5は,外輪のカム形状部2a上を,切欠部2bの上端近傍からトルク発生位置2cまで回転しながら移動する。
【0040】
この範囲では,外輪2の中心からカム形状部2aまでの距離が連続的に増加するように形成されており,外輪のカム形状部2aの脹らみが連続的に減少しているので,板ばね4も連続的に撓みが減少する。その結果,カム形状部2a上を先に進もうとする方向,即ち内輪1を右方向に回転させる方向にトルクが発生する。従って,蓋を閉じた状態から70°開いた状態へ移動する場合には,内輪を左方向に回転させて蓋を閉じようとする方向に作用する蓋の自重に対して,発生するトルクは,内輪1を右方向に回転させて蓋を開こうとする方向に作用するので,蓋は僅かの力で軽く持ち上げることができる。
【0041】
次に,蓋8を図5(b)に示すように70°開いた状態から,図5(a)に示すように100°開いた状態へ移動すると,内輪1が右方向に回転して,ローラ5は,外輪のカム形状部2a上を,トルク発生位置2cから切欠部2bの下端近傍まで回転しながら移動する。
【0042】
この範囲では,外輪2の中心からカム形状部2aまでの距離がほぼ一定であるので,カム形状部2a上を移動しようとする方向に発生するトルクはほぼ零である。従って,蓋8を70°開いた状態から100°開いた状態へ移動する場合には,蓋は殆どトルクの影響を受けない。
【0043】
ここで,外輪2のカム形状部2aのトルク発生位置2cから切欠部2bの上端までは,カム形状部2aの脹らみが連続的に増加するように形成されているが,その増加率については,必要に応じて種々のものが形成できるので,この発明の高トルク用ダンパは種々の用途に適用することができる。
【0044】
図8は本発明の第4の実施の形態を説明するための図である。
【0045】
この実施の形態は,ローラ5を介さないで,板ばね4が外輪のカム形状部2a上を滑りながら移動するようにしたものである。また,第3の実施の形態とは外輪のカム形状部2aのカムの形状を逆にしているので,カム形状部2a上を移動しようとする方向に発生するトルクは第3の実施の形態とは逆であり,発生するトルクは内輪を第3の実施の形態の場合とは,逆方向に回転しようとするものである。その他は第3の実施の形態とほぼ同様であり,同様の効果が得られる。
【0046】
尚,以上の実施の形態においては,外輪を固定して内輪を回転させる場合について説明したが,必要に応じて,内輪を固定して外輪を回転させる場合についても,同様に実施することができる。また,カム形状部を押圧することのできる弾性体であれば,板ばねに限定されることなく,同様に実施することができる。また,必要に応じて,外輪とハウジング,或いは内輪と軸を一体化することができ,その場合には,それぞれハウジング,軸が不要になる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明は粘性流体の粘性抵抗を利用するものではないので,温度の変化のような環境の変化により,トルク値が影響を受けることもなく,常に所望のトルク値,所望のダンピング効果を得ることができる。また,応答性がよく,ピアノの鍵盤蓋等をいずれの状態で離しても,所望のダンピング効果を得ることができるので,上下開閉式の蓋が勢い良く閉じることがない。また,ピアノの鍵盤蓋のように重い蓋に使用した場合にも,トルクが蓋を持ち上げて開く方向に常に働いているので,蓋を比較的軽い力で持ち上げ,開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を説明するための図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態を説明するための図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を説明するための図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を説明するための図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態を説明するための図である。
【符号の説明】
1…内輪 1a…カム形状部
1b…切欠部 1c…トルク発生位置
1d…係止用溝 2…外輪
2a…カム形状部 2b…切欠部
2c…トルク発生位置 2d…係止用溝
3…ハウジング 4…板ばね
5…ローラ 6…シールド板
7…軸 8…ピアノ
8a…蓋 8b…ヒンジ部
Claims (2)
- 内輪の外径面に形成されているカム形状部と,外輪に一端が係止され,他端側で前記カム形状部を弾性力で押圧する板ばねとを備える高トルク用ダンパにおいて,
前記カム形状部は,切欠部の下端からトルク発生位置までの範囲は中心からの距離が一定であって,前記トルク発生位置から前記切欠部の上端までは前記内輪の中心からの距離が連続的に増加するように形成されており,前記外輪または内輪の回転に伴い,前記板ばねの前記他端側が前記トルク発生位置から前記切欠部の上端までの範囲にあるときは,前記板ばねの前記他端側が前記カム形状部に与える押圧力が連続的に増加または減少することを特徴とするトルク用ダンパ。 - 外輪の内径面に形成されているカム形状部と,内輪に一端が係止され、他端側で前記カム形状部を弾性力で押圧する板ばねとを備える高トルク用ダンパにおいて,
前記カム形状部は,切欠部の下端からトルク発生位置までの範囲は中心からの距離が一定であって,前記トルク発生位置から前記切欠部の上端までは中心からの距離が連続的に減少するように形成されており,前記外輪または内輪の回転に伴い,前記板ばねの前記他端側が前記トルク発生位置から前記切欠部の上端までの範囲にあるときは,前記板ばねの前記他端側が前記カム形状部に与える押圧力が連続的に増加または減少することを特徴とするトルク用ダンパ。
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