JP3685954B2 - ペール缶内面樹脂フィルム補修方法及びペール缶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、JIS(日本工業規格)Z1620に規定されるペール缶の内面に貼付された樹脂フィルムの補修方法、及び該補修方法にて補修されたペール缶に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記JIS、Z1620に規定されるペール缶において、収納する内容物による上記ペール缶内面の腐食等を防止するため、上記内面に樹脂フィルムを貼付することが考えられる。このようなフィルム貼付ペール缶の製造方法としては、上記樹脂フィルムが予め貼付された平板状の鋼板を円筒状に成形し、該円筒の軸方向に延在するいわゆるシーム部となる接合部分を溶接することで缶胴部を形成し、さらに樹脂フィルムを貼付した少なくとも地板を上記缶胴部と巻締めして、製缶する方法が考えられる。
【0003】
又、上記ペール缶には、図5に示すように吊り手2を設けたタイプや、図6に示すように取っ手7を設けたタイプがある。上記吊り手2を設けたペール缶1の場合、吊り手2を支持するため、イヤーと呼ばれる取り付け用金具3が当該ペール缶胴部4の外面に点溶接により取り付けられる。又、上記取っ手7を設けたペール缶6の場合、取っ手7を支持するための取り付け用金具8が当該ペール缶の天板9の外面に点溶接により取り付けられる。
【0004】
よって上述のような製造方法により製缶した上記フィルム貼付ペール缶に対して、取り付け用金具3、8をペール缶胴部4や天板9に溶接する場合も生じる。この場合、取り付け用金具3、8をペール缶胴部4や天板9に溶接するときには、上述のように溶接方法が点溶接であり缶内面まで溶融しないことから、上記取り付け箇所に対応した、当該ペール缶胴部4及び天板9の内面部分の上記樹脂フィルムは除去しない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、取り付け用金具3、8は点溶接にて取り付けられるとは言え、取り付け用金具3、8の取り付け箇所に対応した上記内面部分の上記樹脂フィルムは、溶接の熱により溶融し穴があいてしまい、取り付け用金具3、8の取り付け箇所において耐腐食性等に問題が生じる。このように溶融した部分に対する補修方法としては、例えば液体塗料や粉体塗料を上記溶融部分に塗布する方法が考えられるが、作業能率が悪く製品のコストアップにつながるという問題がある。したがって、上記フィルム貼付ペール缶に対して上記取り付け用金具を溶接したときの、当該取り付け用金具に対応するペール缶内面の樹脂フィルムの補修方法は、現在のところ確立していない。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、取り付け用金具に対応する缶内面において腐食性等に問題が生じずかつ安価な、ペール缶内面の樹脂フィルムの補修方法、及び該補修方法にて補修されたペール缶を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1態様のペール缶内面樹脂フィルム補修方法は、缶内面に樹脂フィルムを貼付したペール缶の缶外面に上記缶内面樹脂フィルムを除去することなく取付用金具を溶接にて固定したとき、該溶接の熱により損傷した上記缶内面樹脂フィルムの補修方法において、
損傷した上記缶内面樹脂フィルムの損傷領域を覆うサイズの補修用樹脂フィルムを用意し、
上記損傷領域の上記缶内面樹脂フィルムを仮接着温度に加熱して軟化させ、
上記仮接着温度に加熱された上記損傷領域を覆って上記補修用樹脂フィルムを貼り付けて上記損傷領域の上記缶内面樹脂フィルムに上記補修用樹脂フィルムを仮融着し、
仮融着した補修用樹脂フィルムを上記仮接着温度よりも高い本接着温度に加熱して融かし上記缶内面樹脂フィルムに本融着する、
ことを特徴とする。
【0007】
本発明の第2態様のペール缶は、上記第1態様の補修方法にて缶内面樹脂フィルムが補修されたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態である、ペール缶内面樹脂フィルム補修方法、及び該補修方法にて缶内面樹脂フィルムが補修されたペール缶について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において同じ構成部分については同じ符号を付している。又、上記ペール缶内面の樹脂フィルム補修方法が適用されるペール缶は、上述したように、又、図2に示すように、缶内面に樹脂フィルムが予め貼付されたペール缶であり、ここでは図5に示す吊り手2を取り付けるための取り付け用金具3が缶外面に点溶接された上記ペール缶1に相当するペール缶10を例に採る。しかしながら、勿論、図6に示す取り付け用金具8が天板9に点溶接された上記ペール缶6に相当するペール缶であって缶内面及び天板9の内面に樹脂フィルムが予め貼付されたペール缶にも適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0009】
当該ペール缶10の内面に貼付されている缶内面樹脂フィルム21において、上記取り付け用金具3の取り付け部分に対応した部分には、上述したように、又、図2に示すように、取り付け用金具3を固定したときの点溶接の熱により溶融した溶融部分22が本実施形態では5点、取り付け用金具3の外形に対応した円周上に存在する。尚、本実施形態では、上記5点の溶融部分22が存在する円の直径は、約32mmである。このような溶融部分22を有するペール缶10に対して、本実施形態では、上記5点の溶融部分22をすべて含んだ損傷領域23に1枚の補修用樹脂フィルム25を補修装置にて融着することで缶内面樹脂フィルム21の補修を行う。以下に詳しく説明する。
【0010】
図3及び図4を参照して、まず上記補修装置について説明する。
該補修装置51は、補修用樹脂フィルムの供給ロール55と、補修用樹脂フィルム供給用の駆動装置56と、切断装置57と、貼付装置58と、押圧装置59と、昇降装置60と、加熱装置62と、搬送用駆動装置63と、制御装置65とを有する。
上記供給ロール55には補修用樹脂フィルムが巻回されており、例えばモータを有する上記駆動装置56により供給ロール55から上記補修用樹脂フィルムが引き出される。引き出された補修用樹脂フィルムは、上記切断装置57にて上記損傷領域23に相当するサイズに切断され補修用樹脂フィルム25となる。本実施形態では、上述のように上記5点の溶融部分22が存在する円の直径が約32mmであることから、切断された1枚の補修用樹脂フィルム25のサイズは、一辺が50mmの正方形である。上記貼付装置58は、切断された補修用樹脂フィルム25を吸着して保持するとともに、例えばエアーシリンダを有する上記昇降装置60にて上記損傷領域23に対応する位置まで移動され、例えばエアーシリンダを有する上記押圧装置59と協働して補修用樹脂フィルム25を損傷領域23に貼付する。
【0011】
上記加熱装置62は、当該補修装置51では予備加熱用装置621と、仮接着加熱用装置622と、本接着加熱用装置623とを有する。各加熱装置621〜623は、最終的に上記缶内面樹脂フィルム21と上記補修用樹脂フィルム25とを融着させるため、ペール缶10の内面側より、少なくとも上記損傷領域23の加熱を行う。尚、当該補修装置51では、いずれの加熱装置も温風による加熱を行うが、これに限定されず、例えば直火や、ヒータや、高周波加熱等による加熱を行っても良い。又、当該補修装置51では、いずれの加熱装置もペール缶10の内面側より加熱を行うが、これに限定されずに、上記損傷領域23に対応するペール缶外面部分、つまり上記取り付け用金具3及びその近傍部分を加熱したり、又はペール缶の内、外面の両方から加熱したりしてもよい。
【0012】
予備加熱用装置621は上記加熱範囲を約100℃程度に加熱し、仮接着加熱用装置622は損傷領域23が実質約150℃程度の仮接着温度になるように約140〜180℃程度の範囲で加熱を行い、本接着加熱用装置623は、損傷領域23における少なくとも補修用樹脂フィルム25、好ましくは損傷領域23における補修用樹脂フィルム25及び缶内面樹脂フィルム21が実質約200℃程度の本加熱温度になるように約180〜210℃程度の範囲で加熱する。尚、加熱温度が220℃を超えると、ペール缶外面に施した印刷に変色等が生じやすくなるため、220℃未満の加熱に止める。
上記予備加熱用装置621による予備加熱温度、上記仮接着温度、及び上記本接着温度の測定は、ペール缶10の外面に熱電対を用いた温度センサを設けて測定したが、該方法に限定されず、例えば輻射温度計を用いて上記損傷領域23の温度を測定するようにしてもよい。
例えばモータを有する上記搬送用駆動装置63は、ペール缶10の搬送を行う。上記制御装置65は、上述の各構成部分の動作制御を行い、本実施形態におけるペール缶内面樹脂フィルム補修方法を実行する。
【0013】
上記補修用樹脂フィルム25は、上記缶内面樹脂フィルム21と同種の樹脂フィルムを使用でき、片面側つまり缶内面樹脂フィルム21に接する面が粘着性を有するように低密度ポリエチレンにてなるベースフィルムと、該ベースフィルムに直鎖状ポリエチレンにてなるフィルムとをラミネートした、厚みが約80μm程度のもの、より好ましくは100〜150μm程度のものがよい。
【0014】
このように構成される補修装置51にて実行される補修動作、つまりペール缶内面樹脂フィルム補修方法について、図1も参照しながら以下に説明する。
図1に示すステップ(図内では「S」にて示す)1では、上記搬送用駆動装置63にて搬送されてきたペール缶10に対して、上記予備加熱用装置621にて上記損傷領域23の予備加熱を行う。
ステップ2では、補修用樹脂フィルム供給用駆動装置56を動作させて、供給ロール55から補修用樹脂フィルムを引き出し、切断装置57にて上述の所定サイズに切断する。切断された補修用樹脂フィルム25は、貼付装置58にて吸着され保持される。
【0015】
ステップ3では、予備加熱されたペール缶10が上記仮接着加熱用装置622の設置箇所に搬送され、上述のように損傷領域23が目標150℃の仮接着温度になるように仮接着加熱用装置622にて損傷領域23が1次加熱される。このように損傷領域23は、以下の理由により、まず上記仮接着温度に加熱される。つまり、上述したように、上記缶内面樹脂フィルム21と上記補修用樹脂フィルム25とを融着させて上記損傷領域23の補修を行うことから、一気に上記本接着温度まで損傷領域23を加熱し、補修用樹脂フィルム25を貼付させる方法も考えられるが、該方法を採った場合、缶内面樹脂フィルム21の損傷領域23が溶融してしまい、溶融状態にある缶内面樹脂フィルム21に補修用樹脂フィルム25を貼付しても所望の接着強度を得ることが困難だからである。尚、缶内面樹脂フィルム21及び補修用樹脂フィルム25の融点は、130℃である。上記150℃程度の仮接着温度であれば、缶内面樹脂フィルム21の損傷領域23が溶融することはなく軟化する程度である。
又、上記ステップ2の動作は、上記ステップ1の動作と並行して行っても良いし、上記ステップ3の動作と並行して行うこともできる。
【0016】
ステップ4では、昇降装置60が動作して上記貼付装置58が移動し、上記仮接着温度に加熱された上記缶内面樹脂フィルム21の損傷領域23に対して、貼付装置58に保持されている上記補修用樹脂フィルム25が貼付される。このとき、押圧装置59も動作し当該ペール缶10の外面側を支えることで、貼付装置58と押圧装置59とにより補修用樹脂フィルム25の損傷領域23への押圧が行なわれ仮接着が行われる。該押圧動作は、損傷領域23に補修用樹脂フィルム25を貼付するときに、缶内面樹脂フィルム21と補修用樹脂フィルム25との間に空気が封じこめられるのを排除する程度にて行われ、時間的には1秒にも満たないものである。
【0017】
ステップ5では、上述のように補修用樹脂フィルム25が仮接着されたペール缶10が上記本接着加熱用装置623の設置箇所に搬送され、上述のように損傷領域23における少なくとも補修用樹脂フィルム25、好ましくは補修用樹脂フィルム25及び缶内面樹脂フィルム21が目標200℃の本接着温度になるように、補修用樹脂フィルム25が貼付された少なくとも損傷領域23が本接着加熱用装置623にて2次加熱される。該2次加熱により、損傷領域23における補修用樹脂フィルム25及び缶内面樹脂フィルム21が共に溶融し、融合する。よって、缶内面樹脂フィルム21に対して補修用樹脂フィルム25は所望の接着強度にて接着され、又、ピンホール等の欠陥が存在する場合であってもこれらは全て補修される。尚、上記2次加熱を行う時間は、補修用樹脂フィルム25及び缶内面樹脂フィルム21が共に溶融し融合するのに必要な時間であり、上記溶融、融合後、直ちに加熱を停止すればよい。
【0018】
ステップ6では、補修後のペール缶10が、自然冷却又は強制冷却により冷却される。
このように本実施形態のペール缶内面樹脂フィルム補修方法によれば、取り付け用金具に対応するペール缶内面の樹脂フィルムの補修技術を確立し、損傷領域23における補修用樹脂フィルム25及び缶内面樹脂フィルム21をともに溶融し融合させることから、高品質で補修性能が安定した、樹脂フィルム貼付ペール缶を提供可能となる。又、補修用樹脂フィルムは安価であり、上記補修方法はコスト的にも優れた補修方法といえる。
【0019】
尚、上述のペール缶内面樹脂フィルム補修方法では、巻回された補修用樹脂フィルムを所定寸法に切断して使用したが、予め、所定寸法に切断された補修用樹脂フィルム25を用意しておき、これを使用するようにしてもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の第1態様のペール缶内面樹脂フィルム補修方法、及び第2態様の該補修方法にて補修されたペール缶によれば、損傷領域を仮接着温度に加熱して補修用樹脂フィルムを上記損傷領域に貼付した後、上記損傷領域における補修用樹脂フィルムを本接着温度に加熱するようにした。よって、損傷した缶内面樹脂フィルムに対して上記補修用樹脂フィルムが溶融して接着し、高品質で安定した補修を行うことができ、取り付け用金具に対応する缶内面において腐食性等に問題が生じず、かつ上記補修用樹脂フィルム自体、安価であるので安価な補修方法、及び該補修方法にて補修されたペール缶を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態におけるペール缶内面樹脂フィルム補修方法の動作を示すフローチャートである。
【図2】 図1に示す補修方法の動作を説明する斜視図である。
【図3】 図1に示す補修方法を実行する補修装置の正面図である。
【図4】 図3に示す補修装置の側面図である。
【図5】 吊り手タイプのペール缶を示す斜視図である。
【図6】 取っ手タイプのペール缶を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…ペール缶、3、8…取り付け用金具、
21…缶内面樹脂フィルム、23…損傷領域、25…補修用樹脂フィルム。
Claims (3)
- 缶内面に樹脂フィルム(21)を貼付したペール缶の缶外面に上記缶内面樹脂フィルムを除去することなく取付用金具(3、8)を溶接にて固定したとき、該溶接の熱により損傷した上記缶内面樹脂フィルムの補修方法において、
損傷した上記缶内面樹脂フィルムの損傷領域(23)を覆うサイズの補修用樹脂フィルム(25)を用意し、
上記損傷領域の上記缶内面樹脂フィルムを仮接着温度に加熱して軟化させ、
上記仮接着温度に加熱された上記損傷領域を覆って上記補修用樹脂フィルムを貼り付けて上記損傷領域の上記缶内面樹脂フィルムに上記補修用樹脂フィルムを仮融着し、
仮融着した補修用樹脂フィルムを上記仮接着温度よりも高い本接着温度に加熱して融かし上記缶内面樹脂フィルムに本融着する、
ことを特徴とするペール缶内面樹脂フィルム補修方法。 - 上記仮接着温度は上記補修用樹脂フィルムの融点よりも10〜50℃高い温度であり、上記本接着温度は上記仮接着温度よりもさらに高温で180〜200℃程度の温度である、請求項1記載のペール缶内面樹脂フィルム補修方法。
- 請求項1又は2記載のペール缶内面樹脂フィルム補修方法にて缶内面樹脂フィルムが補修されたことを特徴とするペール缶。
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