JP3685145B2 - 加熱調理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品等の被加熱物を加熱する加熱調理装置と加熱調理方法に関し、特に自動炊飯に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平2001−304562公報に記載の電子レンジには炊飯を行う構成が示されている。この炊飯は被加熱物の分量を加熱開始当初の温度検知情報に基づいて判断し、判断した分量に比例した比例定数を有する加熱条件に基づいて加熱を行うものであり、沸騰開始点を直接検知するものではない。判断した分量の誤差により充分に沸騰していない状態で第2段階の加熱に進む場合があった。そのため、でんぷんのα化を充分にするには第2段階で十数分の時間をとる必要があった。また第1段階のマイクロ波出力を500〜600Wとしているため0.5合の炊飯で沸騰するのに約3分かかり、全加熱時間で約18分かかっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような課題を解決するものであり、短時間で良好な状態に加熱調理ができる加熱装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明の加熱調理装置は、被加熱物を収納する加熱室と、前記被加熱物をマイクロ波で加熱する加熱手段と、前記被加熱物の温度を直接もしくは間接的に検出する温度検出手段と、前記加熱手段を制御する制御手段を備え、被加熱物を炊飯物とし、加熱工程は初期温度から沸騰開始まで急速加熱する第1段階と、でんぷんのα化をはかるために沸騰状態を維持して加熱する第2段階と、余分の水分を蒸発させ炊飯を仕上げる第3段階からなり、前記第2段階は、前記第1段階で沸騰開始を検知した直後に徐々に出力を下げ、沸騰を維持する行程と、沸騰を維持しながら出力を増す行程とを有するものである。
【0005】
これにより、短時間ででんぷんのα化を促進し、余分な水分も蒸発するので膨らみのよい炊飯ができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、被加熱物を炊飯物とし、加熱工程は初期温度から沸騰温度まで急速加熱する第1段階と、でんぷんのα化をはかるために沸騰状態を維持して加熱する第2段階と、余分の水分を蒸発させ炊飯を仕上げる第3段階からなり、前記第2段階は、前記第1段階で沸騰開始を検知した直後に徐々に出力を下げ、沸騰を維持する行程と、沸騰を維持しながら出力を増す行程とを有し、かつ、第1段階で沸騰開始を検知するまでは循環手段により加熱室内空気を循環させて検知性能を高め、沸騰開始検知後は循環手段を停止する加熱調理装置である。これにより、でんぷんが最もα化しやすい沸騰状態を常に維持しできるので短時間で良好な状態に炊飯ができるとともに、第1段階で沸騰開始を検知するまでは循環手段により加熱室内空気を循環させて検知性能を高め、沸騰開始検知後は循環手段を停止する構成とするので沸騰開始を確実に検知でき、検知後は循環手段を停止して加熱室の風の流れをなくすことで被加熱物の放熱を防ぎ、より効率の良い加熱調理を行うことができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、特に、請求項1に記載の加熱調理方法において第1段階の沸騰に達するのに要した時間の長さにかかわらず第2、3段階の加熱時間を一定とする構成とした調理装置なので被加熱物の開始温度により沸騰開始の時間が変わっても第2段階において一定の時間沸騰維持ができる。これにより、開始温度が変わり、沸騰開始までの時間が変わってもでんぷんのα化が十分に行える最低必要な第2段階の加熱時間を確保でき、短時間で良好な状態に加熱できる。
【0008】
請求項に記載の発明は、特に、請求項1、2記載の電波放射手段は加熱室底面からマイクロ波を放射する構成とした物であり被加熱物の直下に給電口が位置するので放射したマイクロ波は被加熱物に効率よく吸収される。これにより被加熱物を高速に温度上昇でき効率よく短時間で加熱調理ができる。
【0009】
請求項に記載の発明は、特に、請求項1、2記載の電波放射手段は加熱室底面からマイクロ波を放射する構成とし、前記電波放射手段を回転駆動する駆動手段と、前記電波放射手段の回転動作を制御する回転制御手段とを備えたものであり、電波放射手段の回転動作を制御することにより加熱室内に収納した被加熱物に対して被加熱物を移動させることなく、加熱の均一化ができ、良好な状態に調理ができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0011】
(実施例1)
図1は本発明の加熱調理装置の断面図である。図1において、1は被加熱物2を加熱する加熱室であり、高周波発生手段3から発生した電力は導波管4に導かれ加熱室底面に設けた電波放射手段(給電口)5より加熱室1へ導入される。6は被加熱物1を載置する載置台である。また7は温度検出手段である赤外線センサである。8は高周波発生手段を駆動するインバータ駆動電源部、9は制御手段であり、温度検出手段7によって検出した温度情報に基づいて被加熱物の温度分布を把握しその温度分布情報に基づいて被加熱物2の沸騰開始を判断し、その後はあらかじめ定めた加熱条件に基づいて高周波発生手段3を制御する。
【0012】
本発明の特徴は加熱の初期段階(第1段階)において、被加熱物の温度分布情報に基づいて被加熱物の沸騰開始を検知することである。
【0013】
また、本発明の加熱調理装置の電波放射手段は加熱室底面からマイクロ波を放射する構成(下方給電方式)とした物であり被加熱物の直下に給電口が位置するので放射したマイクロ波は、まず被加熱物の底面から入射し、特に誘電率の高い水を発熱させる。そのため加熱効率が良く急速に被加熱物を温度上昇させることができる。さらに、下方給電方式は被加熱物の底部から先に温度上昇することにより、水の対流が盛んに起こり調理物の底部から上部に向かって水の泡が勢い良く湧き上がりるので加熱に伴い水の量が減少しても泡が米全体を覆うので米粒は加熱の最後まで水を充分に吸収し、全体に膨らみの良いご飯が炊ける。
【0014】
さらに電波放射手段は回転導波管で回転しながらマイクロ波を放射するので加熱室内に収納した被加熱物に対して被加熱物を移動させることなく、加熱の均一化ができ、良好な状態に炊飯ができる。
【0015】
図2は直径13cm耐熱ガラス製の専用容器を用いて0.5合〜1合の米を炊飯した実験により得られた結果の抜粋を示す。赤外線センサは前後方向に8眼を有しており、左右方向に8段階角度を変えて往復して加熱室全体の64点の温度情報を検出する。一往復に要する時間は約7秒であり、検出温度は7秒周期で徐々に温度上昇する。被加熱物の存在するポイントは存在しないポイント(1g,7a)に比べて温度上昇幅が大きく、その中でも最も温度が高いポイントを被加熱物の沸騰ポイント(5e)とする。被加熱物が小さな泡をたてて沸騰し始めた時間をt1とする。その時点から7秒間の赤外線センサの検出した沸騰ポイントの温度は約70℃〜75℃である。検出温度に約5℃の温度幅があるのは同一ポイントが7秒ごとに温度検出されるために生じるものである。上記実験結果より沸騰開始検知温度temp1を約70℃と決定した。なお、加熱の第一段階の出力や機種固有の加熱むら、専用容器の種類など条件の変動により沸騰開始検知温度temp1の値も前後することは言うまでもない。
【0016】
第一段階で沸騰開始後も高出力のまま加熱を続けると約20秒後には激しくあわ立ち吹きこぼれてしまうので沸騰開始を検知したら直ちに出力を下げなければならない。
【0017】
図3は従来の炊飯方法でS1において沸騰開始の後S2で低出力に切り替えた場合の被加熱物の温度変化を示す。600W程度の高出力から急に100〜150W程度の低出力に切り替えると沸騰し始めていた被加熱物は供給されるエネルギーの低下に伴い、わずかに温度降下し沸騰が中断してしまう場合がある。再び沸騰するまでには数分かかることが実験結果からわかる。加熱開始時には米全体が水に浸かっているがS1の加熱中に米が吸水するため水位は米よりも低くなる。S2において沸騰が中断するとこの間、水面から上に出た米粒は吸水が充分にできずでんぷんのα化も十分できない。S2において低出力で少しずつ沸騰状態に復帰し、おねばを含んだ水が泡となり米の上まで覆い全体が炊き上がるのに十数分以上かかる。
【0018】
図4は本実施例の炊飯の加熱特性図である。図4において炊飯は加熱段階が三段階からなっている。S1は第1段階で沸騰状態まで速やかに温度を上げるため高出力で加熱する段階であり、S2は第2段階で吹きこぼれないようにしながら沸騰を維持するよう出力を増減してでんぷんのα化と米粒の膨潤とを促進する段階である。加熱後の試食評価でS2は最低でも約500秒は必要である。S3は第3段階で炊飯後の余分な水分を蒸発させると共に一層のα化をはかるため高出力で加熱する段階である。特にS2において出力を徐々に下げてゆくこと(図中のa,b,c)で沸騰時の温度を保ち沸騰状態を維持することができる。さらにS2の後半は米粒が大半の水を吸収して吹きこぼれしにくくなるので出力を増すこと(図中のe)で沸騰状態を維持しながら水分の蒸発を促進する。S2において米は水を吸収して急激に膨らみ水面は米よりも低くなる。沸騰状態を維持することでおねばを含んだ水が泡となり米の上まで全体を覆うことができるので底から表面まで米全体が同じように水を吸水してふっくらと膨らむ。よって短時間ででんぷんのα化を促進し、余分な水分も蒸発するので膨らみのよい炊飯ができる。
【0019】
以上のようにして最適な加熱条件を実験によりあらかじめ求め製造段階において製品に記憶させておき沸騰開始検知後加熱手段を制御するものである。
【0020】
また第2段階の沸騰維持のための出力制御方法に基づけば、沸騰開始検知時間t1の長短にかかわらず必要最低限の加熱時間で短時間にでんぷんのα化ができ吹きこぼれることなく良好な炊飯ができる。このことは、たとえば加熱開始時の被加熱物は冷蔵庫に収納されていたり、夏場の高温の環境に放置されていたり開始温度は使用状況によって大きく変動するため、開始温度が変われば沸騰開始時間も変わる。しかし、いったん沸騰すれば第2段階の加熱時間は沸騰開始時間に左右されることなくあらかじめ定めた最小必要限の加熱時間で加熱するので良好な炊飯が実現できるものである。
【0021】
ご飯が約10分で炊き上がるためにはS1にかける時間が概ね100秒以下となるように出力を制御する。よって当実施例においてS1の出力は1000W以上を用いた。
【0022】
(実施例2)
図5は本実施例の炊飯の加熱特性図であり、実施例1と異なる点は加熱室に循環手段である循環ファン(図示せず)を設け庫内の空気を循環させるようにした点である。なお実施例1と同様の条件については説明を省略する。
【0023】
専用の容器に米と水を調合して炊飯を始める。S1は沸騰状態に速やかに立ち上げるために高出力で加熱する。同時に赤外線センサで温度分布情報を検出し沸騰開始を検知する。連続使用などにより加熱室内に前回の調理によって生じた蒸気やガスが残留しているあるいは壁面温度が高い場合は赤外線センサが被加熱物の温度分布を正確に検出できない場合がある。そこで第一段階(S1)において循環ファンを回転して加熱室の空気の流れを作り加熱室の環境をリフレッシュすることで赤外線センサの検知性能を高める。沸騰開始検知した後は被加熱物の温度を低下させないため循環ファンは停止して第2、第3段階の加熱を継続する。
【0024】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば以下の効果を奏する。
【0025】
また、被加熱物の沸騰開始を検知し、その後あらかじめ定めた加熱条件に基づいて前記加熱手段を制御することにより、被加熱物をふきこぼれることなく短時間で良好な状態に加熱調理ができる。
【0026】
また、被加熱物を炊飯物とした場合、でんぷんが最もα化しやすい沸騰状態を常に維持できるので短時間で良好な状態に炊飯ができる。また、第1段階で沸騰開始を検知するまでは循環手段により加熱室内空気を循環させて検知性能を高め、沸騰開始検知後は循環手段を停止する構成とするので沸騰開始を確実に検知でき、検知後は循環手段を停止して加熱室の風の流れをなくすことで被加熱物の放熱を防ぎ、より効率の良い加熱調理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例の加熱調理装置の断面図
【図2】 同加熱調理装置の温度分布情報検出図
【図3】 従来加熱調理装置の加熱調理装置の炊飯の加熱特性を示す図
【図4】 本発明の第1の実施例の加熱調理装置の炊飯の加熱特性を示す図
【図5】 本発明の第2の実施例の加熱調理装置の炊飯の加熱特性を示す図
【符号の説明】
1 加熱室
2 被加熱物
3 高周波発生手段(加熱手段)
5 電波放射手段(給電口)
7 赤外線センサ(温度検出手段)
9 制御手段

Claims (4)

  1. 被加熱物を収納する加熱室と、前記被加熱物をマイクロ波で加熱する加熱手段と、前記被加熱物の温度を直接もしくは間接的に検出する温度検出手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、加熱室の空気を循環する循環手段を備え、被加熱物を炊飯物とし、加熱工程は初期温度から沸騰開始まで急速加熱する第1段階と、でんぷんのα化をはかるために沸騰状態を維持して加熱する第2段階と、余分の水分を蒸発させ炊飯を仕上げる第3段階からなり、前記第2段階は、前記第1段階で沸騰開始を検知した直後に徐々に出力を下げ、沸騰を維持する行程と、沸騰を維持しながら出力を増す行程とを有し、かつ、第1段階で沸騰開始を検知するまでは循環手段により加熱室内空気を循環させて検知性能を高め、沸騰開始検知後は循環手段を停止する加熱調理装置。
  2. 第1段階において沸騰開始を検知するまでに要した時間にかかわらず、第2段階、第3段階の加熱時間を一定とする構成とした請求項1記載の加熱調理装置。
  3. 加熱室底面からマイクロ波を放射する構成とした請求項1または2に記載の加熱調理装置。
  4. 加熱室底面からマイクロ波を放射する電波放射手段と、前記電波放射手段を回転駆動する駆動手段と、前記電波放射手段の回転動作を制御する回転制御手段とを備えた請求項1またはに記載の加熱調理装置。
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