JP3684504B2 - 立体装飾体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、主に床材や壁紙などの建材用途等として使用される立体装飾体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、溶融温度近くまで加熱して軟化させた合成樹脂材をエンボスロールに押圧して凹凸模様を付与し立体装飾体を成形する方法があるが、こうして出来た模様は深さが浅いために消滅しやすくまた輪郭が不鮮明であり、更に床材として使用する場合は防滑性に欠け表面の水捌けが悪いなどの欠点があった。
【0003】
一方、発泡抑止剤を配合した印刷インキを用いて凹凸模様を形成する方法もあるが、この方法による立体装飾体は表面に発泡部分が存在するので強度的に弱く、たばこの火などによる熱損傷が甚だしいという欠点があった。
【0004】
これらの欠点に対処するために、プラスチゾルを基材へ転移・融着させて立体装飾体を製造するようにした提案(特公昭60−903号公報)があるが、この提案では選定できる樹脂の範囲が狭く、得られる立体装飾体に大きな制限があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこでこの発明は、選定できる樹脂の範囲が従来よりも広い立体装飾体の製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の立体装飾体の製造方法は、溶融押出しされた熱可塑性樹脂を複数の凹部を有するシリンダーに充填せしめる工程と、前記シリンダーの凹部に充填された樹脂から成る独立した複数の凸模様部を加熱された熱可塑性樹脂の基材シートの表面に転写して融着させる工程を有し、前記基材シートと独立した複数の凸模様部の熱可塑性樹脂は融着可能な材質であり、溶出した熱可塑性樹脂を凹部を有するシリンダーに充填するときはシリンダーを加熱しておくことを特徴とする。
【0007】
この立体装飾体の製造方法によると、基材シートとこれに転写する凸模様部の熱可塑性樹脂は融着可能な材質であるので、オレフィン樹脂等ではできないプラスチゾルを利用しなくても成形が可能である。また、相互を接着するための表面処理や接着剤塗工の塗工工程は必要なく、加熱された基材シートと溶融押出しされた凸模様部の熱で融着可能である。
【0008】
また、溶融押出しされた熱可塑性樹脂を複数の凹部を有する型材に充填せしめて凸模様部を形成する際に押出成形機を導入すると、量産速度の向上を図ることができる。このように押出成形機を導入することにより、熱可塑性樹脂の使用範囲が広くなり、また製造工程中に発生した廃樹脂などを粒状(ペレット状)に加工し、廃樹脂の再利用を可能にすることができる。
【0009】
前記熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、熱可塑性エラストマーなどを例示することができる。
(2)前記複数の凸模様部は透光性を有する熱可塑性樹脂で形成され、前記凸模様部と前記基材シートとの間に熱可塑性樹脂の透光性シートが介在して相互に融着されると共に、前記凸模様部と透光性シートと基材シートは融着可能な材質とされ、前記透光性シートと基材シートとの間に多色印刷層を設けたこととしてもよい。
【0010】
このように構成すると、透光性シートと基材シートとの間に例えば凸模様部に対応(同調)するような多色印刷層を設けたので、多数の異色で形成された多色印刷層が透光性シートと基材シートとの間に介在することになり、印刷層が保護されて長時間の耐色落ち性が達成される。また多数の異色にて印刷層を設けると、よりデザイン性に優れた立体装飾体となる。
(3)前記基材シート中にガラス繊維層を内装させたこととしてもよい。このように構成すると、立体装飾体の強度や寸法安定性を向上させることができる。
(4)前記基材シートの裏面に繊維性基材を接着せしめたこととしてもよい。
【0011】
このように構成すると、立体装飾体を床シートとして設置するとき床との密着性が向上し施工性が向上する。前記繊維性基材の態様として、不織布、織布などを例示できる。前記繊維性基材の材質として、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、綿、麻などを例示できる。
【0012】
ここで、前記基材シートに再生樹脂を利用したこととしてもよい。このように構成すると、製造過程で発生した廃樹脂などを再利用することができ、廃棄処分する樹脂量の低減に貢献でき、ゴミ問題などに代表される環境問題の解決にも寄与することができる。また合成樹脂は環境破壊を引き起こす要因の一つとなっており、製造過程などで発生した合成樹脂を再利用する事はメーカーにとって必要不可欠な姿勢である。更にコストダウンもできる。
【0013】
【発明の実施形態】
以下、この発明の実施形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、この実施形態の立体装飾体1は、熱可塑性樹脂から成る基材シート2の表面に熱可塑性樹脂の複数の凸模様部3を転写して融着させた成形体であって、基材シート2中にはガラス繊維層4を内装させている。
【0014】
前記凸模様部3の熱可塑性樹脂は基材シート2と同種としており、基材シート2と凸模様部3を融着させるための表面処理や接着剤などの塗工工程は必要なく、基材シート2の表面への加熱と凸模様部3の樹脂が押出機から押し出された際に有している熱とで圧着して融着することが可能である。
【0015】
熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、熱可塑性エラストマーなどを用いることができ、基材シート2と凸模様部3は同種又は類似の樹脂が選択される。
【0016】
凸模様部3は、高さ0.5mm〜1mmが望ましくその模様は用途に応じて適宜選択される。また、総厚1.0mm〜2.0mm程度が望ましく、ガラス繊維層4から表面側の領域5のシートの厚みよりも裏面側の領域6のシートの厚みの方を大きくしている。
【0017】
この立体装飾体1は、基材シート2の厚みに対して凸模様部3が顕著に高さを有するために凸模様部3が消滅し難くなり、一の凸模様部3と他の凸模様部3との間、即ち凹部の深さがより深くなるため、防滑性が向上し表面の水捌けが向上し更に凸模様部3の輪郭が鮮明となるという利点がある。
【0018】
(実施形態2)
次に、実施形態2を実施形態1との相違点を中心に説明する。
図2に示すように、この立体装飾体1は、基材シート2の裏面に繊維性基材7を固着させており、立体装飾体1を床シートとして施工するときに床との接着性が向上し、施工性を向上させることができる。
【0019】
前記繊維性基材7の形態としては不織布、織布などが望ましく、その材質としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、綿、麻などが用いられ、基材シート2の樹脂の種類に応じて同種又は類似の樹脂が選択される。繊維性基材7と基材シート2の材質を同種又は類似に選択することより、双方を固着せしめるときに接着剤を塗工する必要がなく、熱圧着により固着が可能となる。なお繊維性基材7の目付は10g/m2〜50g/m2が望ましい。
【0020】
(実施形態3)
次に、実施形態3を実施形態2との相違点を中心に説明する。
この立体装飾体1は、基材シート2の一部に再生樹脂を使用している。すなわち図2に示すように、基材シート2のガラス繊維層4から裏面側の領域6を再生樹脂にて形成している。
【0021】
具体的には、製造の際に発生した廃樹脂を、廃ペレッター機等を用いて再利用することができるような形状(ペレット状)に加工し、基材シート2を製造する工程に戻す。このようにすることにより、廃棄処分する樹脂量の低減が可能となってコストダウンにつながり、またゴミ問題などの環境問題の解決にも寄与することもできる。
【0022】
(実施形態4)
次に、実施形態4を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図3に示すように、この立体装飾体1では、複数の凸模様部3は透光性を有する熱可塑性樹脂で形成され、前記凸模様部3と前記基材シート2との間に熱可塑性樹脂の透光性シート8が介在して相互に融着されている。
【0023】
また、前記凸模様部3と透光性シート8と基材シート2は融着可能な材質とされ、前記透光性シート8と基材シート2との間に凸模様部3に対応するような多色印刷層9を設けている。この多色印刷層9(なお、その厚みは誇張して図示している)は、凸模様部3に同調させて凸模様部3がある箇所に対応した箇所にのみ形成している。
【0024】
このように、多数の異色で形成された多色印刷層9は透光性シート8と基材シート2との間に介在するので、印刷内容が保護され長時間の耐色落ち性に優れる。またデザイン的にも優れるものとすることができる。
【0025】
透光性を有する熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、熱可塑性エラストマーなどを用いることができ、凸模様部3と透光性シート8と基材シート2とは同種又は類似の樹脂が選択される。
【0026】
印刷層の材質としてはポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などを用いることができ、透光性を有する熱可塑性樹脂の種類に応じて選択される。印刷層を設ける方法としては、グラビア印刷、シルク印刷、オフセット印刷等のように直接印刷を行う方法や、或いは先に例示した印刷方法を用いて予め転写紙などに多色印刷を施し、それを転写する方法(転写法)などを用いることができる。
【0027】
(実施形態5)
次に、立体装飾の製造方法についての実施形態を説明する。
図4に示すように、押出成形機10の樹脂吐出部(Tダイ)から溶融した熱可塑性樹脂を押し出す。前記溶融樹脂を、回転しているシリンダー(型材11)の表面に形成された複数の凹部12に充填する。余分の熱可塑性樹脂は、前記Tダイの上部のドクター刃13によって掻き取る。そしてシリンダー11の凹部12に充填せしめた前記樹脂を、ヒーター14により加熱された基材シート2に転写して圧着ロール15との間で圧着し融着する。
【0028】
熱可塑性樹脂をTダイから吐出させるときの樹脂温度は、ポリプロピレン樹脂の場合は約180℃〜220℃が望ましく、その温度は使用する樹脂により適宜選択される。また、溶出した熱可塑性樹脂を凹部12を有するシリンダー11に充填するときはシリンダー11を加熱するようにしており、例えばポリプロピレン樹脂を充填するときは約100℃〜140℃が好ましい。なおその温度は樹脂により適宜選択される。前記ヒーター14により基材シート2の表面を加熱する温度は、基材シート2の材質が例えばポリプロピレン樹脂である基材シート2の場合約160℃〜200℃が望ましく、この温度は材質等により適宜選択される。
【0029】
【実施例】
次に、この発明の構成をより具体的に説明する。
(実施例1)
図1に示すように、基材シート2として、ネット状のガラス繊維層4を内装するものを形成した。基材シート2のガラス繊維層4から表面側の領域5は0.3mm厚のポリプロピレン樹脂にて形成し、裏面側の領域6は1.2mm厚の廃樹脂を再生化したポリプロピレン樹脂にて形成し、相互を加熱状態で圧着して接合した。
【0030】
前記基材シート2の裏面に、目付30g/m2のポリプロピレン樹脂製の不織布を熱圧着した。基材シート2の表面には、高さが0.5mmの青色調の凸模様部3を形成すべく、押出成形機10から押し出された青色調のポリプロピレン樹脂を、複数の凹部12を有するシリンダー11の凹部12内に充填せしめ、基材シート2の表面に転写して融着した。
【0031】
この立体装飾体1は、凸模様部3の輪郭が明確であって防滑性や水捌け性に優れる。また、押出成形機10を用いていて再生樹脂を利用が可能であり、使用するシリンダー11の径も比較的に小さなものでよいのでコストを低減して量産速度を向上させることができた。
【0032】
(実施例2)
図1に示すように、基材シート2として、織布状のガラス繊維層4を内装するものを形成した。基材シート2のガラス繊維層4から表面側の領域5は0.5mm厚のポリプロピレン樹脂にて形成し、裏面側の領域6は1.0mm厚の廃樹脂を再生化したポリプロピレン樹脂にて形成し、相互を加熱状態で圧着して接合した。
【0033】
前記基材シート2の裏面に、目付30g/m2のポリプロピレン樹脂製の不織布を熱圧着した。基材シート2の表面には、高さが1.0mmの赤褐色の凸模様部3を形成すべく、押出成形機10から押し出された赤褐色調のポリプロピレン樹脂を、複数の凹部12を有するシリンダー11の凹部12内に充填せしめ、基材シート2の表面に転写して融着した。前記凹部12の底部には微細な線状や点状の模様を施し、融着される凸模様部3の表面に表現されるようにした。
【0034】
この立体装飾体1は凸模様部3の表面に微細な模様が施されており、更に防滑性が向上し、床シートのデザイン性も向上した。
【0035】
(実施例3)
図3に示すように、厚さ0.1mmのポリプロピレン樹脂製の透光性シート8の表面に、透光性を有する高さが0.5mmの凸模様部3を形成するため、押出成形機10から押し出された透光性を有するポリプロピレン樹脂を、複数の凹部12を有するシリンダー11の凹部12内に充填せしめ、加熱した透光性シート8の表面に転写して融着した。前記透光性シート8の裏面には、多数の異色で形成された多色印刷層9が設けてある。
【0036】
そして、ポリプロピレン樹脂から成る1.5mm厚の基材シート2と前記透光性シート8の裏面の多色印刷層9との間にガラス繊維製のネットを介在させ、前記基材シート2の裏面には目付30g/m2のポリプロピレン樹脂製の不織布を配し、相互間を熱圧着した。
【0037】
この立体装飾体1は、多数の異色で形成された多色印刷層9が透光性シート8と基材シート2の間に介在するので、印刷層が保護され長時間の耐色落ち性に優れる。更にはデザイン的にも優れたものである。
【0038】
【発明の効果】
この発明は上述のような構成であり、次のような効果を有する。
【0039】
オレフィン樹脂等ではできないプラスチゾルを利用しなくても成形が可能であるので、選定できる樹脂の範囲が従来よりも広い立体装飾体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の立体装飾体の実施形態1を説明する要部破断斜視図。
【図2】 この発明の立体装飾体の実施形態2、3を説明する要部破断斜視図。
【図3】 この発明の立体装飾体の実施形態4を説明する要部破断斜視図。
【図4】 この発明の立体装飾体の実施形態5の製造方法を説明する図。
【符号の説明】
2 基材シート
3 凸模様部
4 ガラス繊維層
7 繊維性基材
8 透光性シート
9 多色印刷層
11 型材
12 凹部
Claims (4)
- 溶融押出しされた熱可塑性樹脂を複数の凹部を有するシリンダーに充填せしめる工程と、前記シリンダーの凹部に充填された樹脂から成る独立した複数の凸模様部を加熱された熱可塑性樹脂の基材シートの表面に転写して融着させる工程を有し、前記基材シートと独立した複数の凸模様部の熱可塑性樹脂は融着可能な材質であり、溶出した熱可塑性樹脂を凹部を有するシリンダーに充填するときはシリンダーを加熱しておくことを特徴とする立体装飾体の製造方法。
- 前記複数の凸模様部は透光性を有する熱可塑性樹脂で形成され、前記凸模様部と前記基材シートとの間に熱可塑性樹脂の透光性シートが介在して相互に融着されると共に、前記凸模様部と透光性シートと基材シートは融着可能な材質とされ、前記透光性シートと基材シートとの間に多色印刷層を設けた請求項1記載の立体装飾体の製造方法。
- 前記基材シート中にガラス繊維層を内装させた請求項1又は2記載の立体装飾体の製造方法。
- 前記基材シートの裏面に繊維性基材を接着せしめた請求項1乃至3のいずれかに記載の立体装飾体の製造方法。
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