JP3684463B2 - ゼオライト粉材マスターバッチ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は安価で成形加工性に優れるポリエチレンやポリプロピレン樹脂素材からなるフィルム材や包装容器等の成形品に、ゼオライト素材が保持する吸湿性やガス吸着性或いはイオン交換性を付与せしめるための、ゼオライト粉材マスターバッチ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂は、軽量で強靭なうえ耐水性や耐化学薬品性に優れるばかりか成形加工性も極めて優れ而も安価であることから、各種のフィルム材や包装容器等の成形品には極めて膨大量が消費されている。
即ちポリエチレンやポリプロピレン樹脂を用いてなるフィルム材や包装容器等は、専らその強靭性を始め軽量性、耐水性、防気性等を活用して魚介類や青果類、水菓子等含水食品類を初め、各種粒形状或いは粉状製品の包装若しくは収納用として使用されているものである。
【0003】
然るに近年においては市場競争の激化に伴い、これらフィルム材や包装容器等においても、単に防水性や防気性或いは防塵性の保持のみならず含水食品類の包装や収納に際しては鮮度保持性や発生する臭気に対しての消臭性、或いは粉状製品類の包装や収納に際しても吸湿性並びに防黴性等の新たな機能を保持せしめることが強く求められるに至っている。
【0004】
他方含水珪酸塩鉱物として微細な孔を多数有し吸湿性やガス吸着性に優れ、且イオン交換性の高い性能を保持するゼオライトが安価に産出されることも古くから知られている。
これがため該ゼオライトを微細に破砕のうえ、これをポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂に適宜割合で配合しフィルム材や包装容器等として成形してなるものの上市が試みられているが、ゼオライトは仮令微粉状に破砕させてもその微細な多数の孔内には多量の水分が含水されており、且破砕された形状もその微細な多孔と相俟って複雑多形状を呈し、而もその見掛比重も略1、9乃至2、0程度のものであるため、ポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂の如くその比重が略0、91乃至0、95程度の軽量なものとの配合では均質な混合が図れず、而もその形状も複雑多形状のためフィルム材や包装容器等の成形加工に際して分散性が極めて悪く、これがため成形品に色斑の発生はもとよりその成形品の表面に分散不良に伴う成形斑が現出したり、更には成形機のダイス部分への付着による成形傷の発生や成形時におけるゼオライトの多数の孔内に含有される水分の蒸散に伴う気泡や裂傷の発生が頻発すること等により、未だゼオライトの性能を十分に発揮しえるフィルム材や包装容器を安定して製造することは実現されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる実情に鑑みなされたものであって、本発明は含水率が高く且複雑多形に破砕され而も比重差も大きく異るゼオライト粉材でも、ポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂と高い配合割合を以って且均質に分散混合させることにより、フィルム材や包装容器等を均等な品質で而も効率良く熔融成形加工しえる、ゼオライト粉材マスターバッチ及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために本発明が採用した技術的手段は、その粒径が10μm以下に破砕してなるゼオライト粉材を予め200乃至350℃の温度で仮焼し、含有水分や揮発分を揮散除去したうえ該仮焼させたゼオライト粉材をポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂に対して20乃至60%重量割合で配合し、且該仮焼ゼオライト粉材の分散を促進させる分散剤として、微細な多数の孔を有し且複雑多形状の仮焼ゼオライト粉材の外表面を包着させて滑性を高めるための流動パラフィンを1乃至3%重量と、その融点が40乃至80℃の低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンを2乃至6%重量割合で配合し、予め低速混合により流動パラフィンをポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂外表面や仮焼ゼオライト粉材の外表面或いは低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレン外表面に包着させ、而してその温度が40乃至80℃に加温され且撹拌速度が500乃至1000回転/分の高速混合を施すことにより、低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンを熔融させその熔融粘性を以ってポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂と仮焼ゼオライトとを均質に分散付着させたうえ、適宜の押出成形機を用いて熔融混練し所要の形状及び大きさのマスターバッチとなす、ゼオライト粉材マスターバッチ及びその製造方法に存する。
【0007】
【作 用】
上述の如き技術的手段を用いてなる本発明は、以下のような作用を有する。即ちその粒径が10μm以下に破砕してなるゼオライト粉材を、200乃至350℃の温度で所要時間仮焼することにより、該ゼオライト粉材の保持するイオン交換性を損うことなく、その微細で多数の孔内に含水されてなる水分や揮発分等が蒸散或いは揮散されるとともに粘土質分が硬化し、強硬なゼオライト粉材となる。
そしてポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂に対して、この仮焼されたゼオライト粉材を20乃至60%重量割合まで配合し、且その融点が40乃至80℃の低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンを2乃至6%重量割合及び流動パラフィンを1乃至3%重量割合で配合し低速で混合させることにより、流動パラフィンがポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂や低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレン、及び仮焼されたゼオライト粉材の外表面に包着し特には微細で多数の孔を有し且複雑多形状のゼオライト粉材が球形化されて滑性が著るしく高められて、而も該流動パラフィンの包着によりその見掛比重も一段と低下するため分散性が極めて高められる。
【0008】
而してその温度が40乃至80℃に加熱されてなり且その撹拌混合速度が500乃至1000回転/分の高速混合機で高速撹拌混合を施すため、低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンが熔化しその熔融粘性によりポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂とゼオライト粉材とが融着されつつ高いせん断力が付加されて混合されるため、均質な分散混合がなされることとなる。
かくして均質に分散混合がなされた配合原料を、更に押出成形機により熔融混練させたうえ所要の形状及び大きさに成形させるものであるから、ポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂に対して最大60%重量ものゼオライト粉材が配合しえ且均質に分散されたマスターバッチが形成しえることとなる。
【0009】
【実施例】
以下に本発明実施例を詳細に説明すれば、本発明はフィルム材や包装容器等の素材として多量に使用されてなるポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂に配合させてゼオライトの特性を発揮せしめるものであるから、使用素材としてはポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂が用いられる。無論かかる場合における使用素材としては、フィルム材や包装容器を成形するために用いるポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂と同様のグレードの樹脂素材が好適であるが、一般的にはメルトインデックスで2、5乃至3、5程度の樹脂グレードを用いればよい。
そしてかかるポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂に配合されるゼオライト粉材は、具体的使用途により種々選択されるが吸湿性やガス吸着性を主たる目的とする場合においては、微細な多数の孔の総表面積所謂細孔表面積が少なくとも6、5m2/g以上のものが望ましく、更に消臭性を目的とする場合ではイオン交換性所謂塩基置換容量(meq/100g)が少なくとも100以上のものが望まれる。
更にこのゼオライト粉材は、その使用に際して最も薄肉なフィルム材として使用される場合においては、通常包装用フィルム材として最底30μm程度の物も使用されるため、かかるフィルム材の成形性に支障を及ぼさぬうえからも最大でも10μm以下好ましくは5乃至1μmの粒径のものが要望される。
【0010】
加える重要なことは、かかる粒径に破砕されたゼオライト粉材でもその微細で且多数の孔内には可成りの水分が含水されてなり、更にはその他の揮発分等も含有しておりこれらを除去しておかないとマスターバッチの成形時はもとより、該マスターバッチを使用してフィルム材や包装容器等の成形時に気泡の発生や成形不良が招来される危険があること、及びゼオライト自体は比較的脆弱であるため配合時や成形加工時に崩壊する危険もある。
これがため該ゼオライト粉材を配合する場合に先立って仮焼する必要があるもので、この仮焼は微細な多数の孔内の水分や付着する揮発分を蒸散並びに揮散させるとともに、ゼオライトを形成する粘土質分の硬化を図る反面、イオン交換性を損わぬことも望まれることから、仮焼のための温度は200℃から最高でも350℃以下でなすことが肝要である。仮焼の時間はゼオライト粉材の粒径や含水率或いは粘土質の割合等で具体的に決定されるが、一般的には粒径10μmのもので仮焼温度が200℃の場合では略3時間が目途となる。
【0011】
かくして仮焼されたゼオライト粉材は、ポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂に対して20%重量から最大60%重量割合までの範囲で配合される。そしてこの配合されるゼオライト粉材は、微細な多数の孔を有するとともに複雑多形状のものであるばかりかその比重も比較的高く、従ってかかるゼオライト粉材をポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂と均質に分散混合させるには格段の技術が要求される。
【0012】
そこで本発明においては、該ゼオライト粉材の分散性を高めるためにポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂と相溶性を有する流動パラフィンを、該ポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂に対して1乃至3%重量割合で配合し、更にその融点が40乃至80℃の低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンを2乃至6%重量割合配合し、相互を低速で予め混合させる手段を用いる。即ちかかる手段を用いることにより、流動パラフィンがポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂を始め、低分子量のポリエチレン若しくはポリプロピレン、及びゼオライト粉材の外表面を包着することとなり且特にゼオライト粉材は該流動パラフィンの包着により外表面が平滑化されるとともに見掛比重も一段と低くなり分散混合性が高められることとなる。
【0013】
かくして予備的に混合させた配合原料を、その温度が40乃至80℃に加熱され且撹拌速度が500乃至1000回転/分の高速混合機を用いて高速混合させることにより、低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンが熔融しその熔融粘性によりポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂とゼオライト粉材とが融着され且高速混合に伴うせん断力が働き、ポリプロピレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂とゼオライト粉材とが均質に分散混合されることとなる。
【0014】
かかる場合において流動パラフィンについては特段の制限はなく一般的なものの使用で十分対処しえる。更に低分子量のポリエチレン若しくはポリプロピレンは、実質的にその温度が40乃至80℃程度で熔融特性を有するものであれば使用可能であって、当然にポリエチレン樹脂が用いられる場合においては低分子量ポリエチレンが使用されることは言うまでもない。かかる場合に低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンの融点が80℃以下に限定される理由は、基礎素材となるポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂の物性に影響を及ぼさないことによる。
そして予備的混合の如く低速度での混合に際しては例えばリボンブレンダー等の使用が好適であるが、高速混合の場合においてはヘンシェルミキサー等の使用が望まれる。
【0015】
ポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂に対するゼオライト粉材の配合割合は最大60%重量割合が限度であって、これ以上の配合割合となると成形されるマスターバッチの保形性が損われるばかりか、具体的なフィルム材や包装容器等の成形時における分散不良の危険が伴うことによるもので、反面その配合割合がが20%重量割合以下では経済的面でメリットが薄れることによる。
【0016】
そしてゼオライト粉材の配合割合の増加に伴って流動パラフィンや低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンの配合割合も増加させる必要があるが、流動パラフィンの配合割合が過剰となるとゼオライト粉材の外表面への包着量が増大し、成形品におけるゼオライトの吸湿性やガス吸着性或いはイオン交換性が損われる結果となることから、最大でもポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂に対して3%重量割合以下に抑えることが望まれる。
更にその融着性を以って均質な分散混合を図るための低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンの配合割合も、ゼオライト粉材の配合量の増加に伴って増加することが望まれるが、過剰な配合は融着性が著るしく増大化し混合された配合原料にブロッキングが発生するため、その配合割合は最大でも6%重量割合以下に留めるべきである。
【0017】
かくして配合された配合原料は押出成形機を用いて熔融混練のうえ所要の大きさ形状のマスターバッチを形成するものであって、フィルム材や包装容器等の成形に際しての分散性を良好ならしめるうえから十分に熔融混練を図ることが望まれる。
これがためには好ましくは二軸スクリュー押出機例えばコニーダーやZSK二軸スクリュー押出機の使用が挙げられ、且マスターバッチの成型方法としてはこれら押出成形機の先端に適宜口径及び数が穿孔されたダイス部より熔融混練させた配合原料を吐出させ、水槽で冷却後引取りながらペレット状に切断する所謂コールドカット法や、吐出させた後即時に切断して水冷にするか若しくは空気とともに移送させながら空冷する所謂ホットカット法、或いはダイスを水中に置き水中で吐出させた直後切断する所謂アンダーウォーターカット法等を用いることにより、本発明ゼオライト粉材マスターバッチが形成される。
【0018】
【発明の効果】
本発明は上述したように、吸湿性を初めガス吸着性或いはイオン交換性に優れたゼオライトをその粒径が10μm以下に破砕のうえ、予め200乃至350℃の温度で仮焼させることにより、微細且多数の孔内に含水された水分並びに付着揮発分が蒸散、揮散されて除去されるとともに、ゼオライトを形成する粘土質成分が硬化されるため、強硬なゼオライト粉材となる。
そしてこのゼオライト粉材とポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂との均質な分散混合を図るうえから、流動パラフィンを1乃至3%重量割合及びその融点が40乃至80℃の低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンを2乃至6%重量割合で配合し低速混合させるため、流動パラフィンの特性によりポリエチレンやポリプロピレン樹脂やゼオライト粉材或いは低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンの外表面が該流動パラフィンにより包着されるとともに、特に微細で多数の孔を有し且複雑多形状のゼオライト粉材個々が球形化され而もその見掛比重も一段と小さくなり分散し易くなる。
そして引続きその温度が40乃至80℃に加熱され且500乃至1000回転/分の高速混合機で高速混合をなすことにより、低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンが溶融しその融着性によって、ポリエチレン若しくはポリプロピレン樹脂とゼオライト粉材とが融着されつつ高いせん断力で撹拌混合される結果、最大60%重量割合までのゼオライト粉材が均質に分散混合された配合原料が作成される。
而してこの配合原料を用いて押出成形機で更に熔融混練のうえ所要の形状大きさに成形させるものであるから、極めて分散性に優れたゼオライト粉材マスターバッチが作成され、且ゼオライト粉材が60%重量割合まで配合分散されてなるから、フィルム材や包装容器等の成形に際しての僅かな添加で作業がなしえ経済的であり而もゼオライト粉材の外表面に包着される流動パラフィンは極めて微量であるため、
フィルム材や包装容器の成形品においてゼオライト粉材の保持する吸湿性やガス吸着性或いはイオン交換性も十分発揮させることが可能である等、極めて特長の多いゼオライト粉材マスターバッチ及びその製造方法である。
Claims (2)
- 融点が40乃至80℃の低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレン2乃至6%重量割合及び流動パラフィン1乃至3%重量割合からなる分散剤により、その粒径が10μm以下のゼオライト粉材がポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂に対して20乃至60%重量割合で配合され、且押出成形機により熔融混練されたうえ所要の形状及び大きさに形成されてなることを特徴とする、ゼオライト粉材マスターバッチ。
- 粒径が10μm以下のゼオライト粉材を200乃至350℃の温度で所要時間仮焼したうえ、ポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂に該仮焼したゼオライト粉材を20乃至60%重量、及び分散剤としてその融点が40乃至80℃の低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンを2乃至6%重量割合並びに流動パラフィン1乃至3%重量割合を配合し、而して低速混合機で予備混合をなしたるうえ、更にその温度が40乃至80℃に加温され且500乃至1000回転/分の高速混合機により高速混合し均質に分散混合させたうえ、押出成形機により熔融混練のうえ所要の形状及び大きさに成形させることを特徴とするゼオライト粉材マスターバッチの製造方法。
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