JP3683480B2 - 電動工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば電気ドリル等の電動工具であって、電動モータの回転を遊星歯車装置により減速して出力する電動工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の電動工具に内蔵される遊星歯車装置としては、例えば特開昭61−90812号公報に開示された構成のものがあった。この従来の遊星歯車装置を、同公報の第2図を援用した図5に示した。図示するように、この従来の遊星歯車装置100は、電動モータ101を駆動源とする電動工具140に内蔵されており、電動モータ101側から出力軸102側に順次直列に連結された3つの遊星歯車列110,120,130を有している。以下、電動モータ101側から第1段遊星歯車列110、第2段遊星歯車列120、第3段遊星歯車列130という。
電動モータ101の出力軸101aに第1段遊星歯車列110の第1段サンギヤ111が取り付けられている。この第1段サンギヤ111は、第1段キャリア112に取り付けた第1段プラネタリギヤ113〜113に噛み合わされている。この第1段プラネタリギヤ113〜113は第1段インターナルギヤ114に噛み合わされている。この第1段インターナルギヤ114は、当該電動工具140のハウジング141の内周側に取り付けたギヤケース142に一体に形成されている。従って、この第1段インターナルギヤ114は回転せず、かつ軸方向にも移動ないよう固定されている。
【0003】
上記第1段キャリア112には、第2段遊星歯車列120の第2段サンギヤ121が形成されている。この第2段サンギヤ121は、第2段キャリア123に取り付けた第2段プラネタリギヤ122〜122に噛み合わされている。この第2段プラネタリギヤ122〜122は第2段インターナルギア124に噛み合わされている。この第2段インターナルギヤ124は、ギヤケース142の内周側に回転可能かつ軸方向(機長方向)に移動可能に組み込まれている。
一方、ハウジング141の側部にはスライダ150が軸方向に移動可能に取り付けられており、このスライダ150にはブラケット151が取り付けられている。このブラケット151の先端側は、上記第2段インターナルギヤ124の外周面に全周にわたって形成した係合溝124aに挿入されている。このため、第2段インターナルギヤ124は、軸方向についてはブラケット151を介してスライダ150と一体化されているため、スライダ150の移動操作により軸方向に前進または後退するが、回転方向については規制を受けないため、スライダ150の位置とは無関係に回転可能な状態となっている。
【0004】
図示するようにスライダ150を後退操作すると、第2段インターナルギヤ124は後退してギヤケース142に形成した噛み合いギヤ部142aに噛み合うため回転不能な状態となる。
一方、スライダ150の前進操作により第2段インターナルギヤ124を前進させると、この第2段インターナルギヤ124は噛み合いギヤ部142aから外れるとともに、第2段キャリア123に形成した噛み合いギヤ部123aに噛み合う。このため、第2段インターナルギヤ124は、ギヤケース142に対して回転可能となり、かつキャリア123と一体で回転可能な状態となる。
第2段キャリア123には、第3段遊星歯車列130の第3段サンギヤ131が形成されている。この第3段サンギヤ131は、第3段キャリア132に取り付けた第3段プラネタリギヤ133〜133に噛み合わされている。この第3段プラネタリギヤ133〜133は、ギヤケース142に固定した第3段インターナルギヤ134に噛み合わされている。第3段キャリア132の中心に、当該電動工具140の出力軸102が固定されている。
【0005】
以上のように構成された従来の電動工具140の遊星歯車装置100によれば、スライダ150を図示するように後退させて第2段インターナルギヤ124をギヤケース142の噛み合いギヤ部142aに噛み合わせた状態では、該第2段インターナルギヤ124が回転しないため、第2段プラネタリギヤ122〜122はそれぞれ自転しつつ第2段インターナルギヤ124の内周側に沿って公転し、これにより電動モータ101側の回転数が一定の減速比により減速されて、第3段遊星歯車列130に伝達される。従って、スライダ150を後退させると、当該遊星歯車装置100は低速側に切り換わる。
これに対して、スライダ150を前進させると、第2段インターナルギヤ124が噛み合いギヤ部142aから外れるとともに、第2段キャリア123側の噛み合いギヤ部123aに噛み合う。このため、第2段インターナルギヤ124は第2段キャリア123と一体で回転する状態となる。第2段インターナルギヤ124が第2段キャリア123と一体化されるため、第2段プラネタリギヤ122〜122は自転も公転もせず、従って第2段サンギヤ131と第2段キャリア123は一体で回転して、第1段遊星歯車列110から出力された回転数は、減速されることなくそのまま第3段遊星歯車列130に伝達される。このことから、スライダ150を前進させると、当該遊星歯車装置100は高速側に切り換わる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の遊星歯車装置100は、第2段インターナルギヤ124を軸方向に移動させることによりその減速比を切り換えて当該電動工具140を変速する構成となっており、高速側に切り換えた状態では、第2段サンギヤ121、第2段インターナルギヤ124および第2段キャリア123が一体となって回転する構成となっていた。このため、特に径の大きな第2段インターナルギヤ124が回転することにより大きな慣性が発生し、その結果遊星歯車列全体の振動および発熱が大きくなる問題があった。この問題は、例えば13mmのドリルを装着するような比較的大型の電気ドリル等において顕著であり、この種の電動工具では特に大きな問題となっていた。
本発明は、この問題に鑑みなされたもので、従来よりも振動および発熱の少ない遊星歯車装置を内蔵した電動工具を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明は前記各請求項に記載した構成の電動工具とした。
請求項1記載の電動工具によれば、変速部材を低速側に移動させると該変速部材を介して第2段遊星歯車列のサンギヤが第1段遊星歯車列のキャリアに回転について一体化される。この状態では、第1段遊星歯車列のキャリアの回転がサンギヤを経て第2段遊星歯車列に入力されるため、第2段遊星歯車列においてプラネタリギヤは自転しつつインターナルギヤの内周側を公転し、これにより第1段遊星歯車列により減速された回転がこの第2段遊星歯車列によりさらに減速されて出力されるため、当該遊星歯車装置の出力回転数は低くなる(低速モード)。
【0008】
これに対して、変速部材を高速側に移動させると該変速部材を介して第1段遊星歯車列のキャリアと第2段遊星歯車列のキャリアが回転について直結されるとともに、第2段遊星歯車列のサンギヤが第1段遊星歯車列のキャリアから回転について切り離される。この状態では、第1段遊星歯車列のキャリアと第2段遊星歯車列のキャリアが同じ回転数で回転し、第2段遊星歯車列のキャリアの回転数は該第2段遊星歯車列の出力する回転数であるので、この第2段遊星歯車列では減速はなされず、第1段遊星歯車列の出力する回転数はそのまま第2遊星歯車列の回転数として出力されるため、当該遊星歯車装置の出力回転数は高くなる(高速モード)。
このように請求項1記載の電動工具によれば、従来のようにインターナルギヤをキャリアと一体で回転させるのではなく、インターナルギヤは回転させることなく固定したままで高速モードを実現する構成であるので、従来よりも当該遊星歯車装置の振動および発熱を抑制することができる。
【0009】
請求項2記載の電動工具によれば、変速部材を支持する支持軸を別途設けた構成に比して部品点数を少なくすることができる。
請求項3記載の電動工具によれば、変速ダイヤルの回転操作により高速モードと低速モードの切り換えを行うことができるので、操作性のよい変速機構を提供することができる。
請求項4記載の電動工具によれば、低速モードおよび高速モードの状態を確実にロックすることができ、また変速ダイヤルのロック状態を指先ひとつで解除することができ、これらの点でさらに操作性のよい変速機構を提供することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。本実施形態では、電動工具の一例として電気ドリル1を例示する。図1は、本実施形態の電気ドリル1の先端側の内部構造を示している。例示する電気ドリル1は、例えば直径13mmのドリル(先端工具)を装着可能な比較的大型の電気ドリルであり、またドリルを機長方向(図において左右方向)に対して直角に装着するいわゆるアングル形式の電気ドリルである。この電気ドリル1は駆動源としての電動モータ3の回転を減速して出力するための遊星歯車装置10を内蔵している。この遊星歯車装置10の詳細が図2に示されている。
図1中、符号2は電気ドリル1のハウジングを示している。このハウジング2は概ね円筒形状を有しており、その機長方向の中程に上記電動モータ3が内蔵されている。電動モータ3の出力軸3aに、以下説明する遊星歯車装置10が接続されている。この遊星歯車装置10の出力はかさ歯車4,5によりさらに減速される。以下の説明において、かさ歯車4,5による減速を第3段階の減速という。
【0011】
さて、本実施形態の遊星歯車装置10は、第1段遊星歯車列20と第2段遊星歯車列40との間に、変速部材60を介在させた構成を有している。以下、図2に基づいて各部の構成を詳細に説明する。
第1段遊星歯車列20の第1段サンギヤ21は前記電動モータ3の出力軸3aに形成されている。この第1段サンギヤ21には3個のプラネタリギヤ22〜22が噛み合わされている。各プラネタリギヤ22は、それぞれ支軸23を介して第1段キャリア24に回転可能に支持されている。この3個のプラネタリギヤ22〜22は、インターナルギヤ25の内周側に噛み合わされている。このインターナルギヤ25は、ボルト25a〜25aによりハウジング2に固定されている。
【0012】
3本の支軸23〜23は、キャリア24の側面(プラネタリギヤ22とは反対側の側面)に突き出されている。この3本の支軸23〜23の突き出した部分を介して変速部材60が機長方向に平行移動可能に取り付けられている。以下の説明において、変速部材60の移動方向に関して機長方向先端側(図1,2において右側)を高速側といい、機長方向後端側(図1,2において左側)を低速側という。図では、低速側に移動した変速部材60が実線で示され、高速側に移動した変速部材60が二点鎖線で示されている。
変速部材60は概ね円環形状を有しており、第1段キャリア24と一体で回転する。図3に示すようにこの変速部材60の先端面には、3個の噛み合い突部60b〜60bが周方向3等分位置に形成されている。また、この変速部材60の周面には、その全周にわたって係合溝60cが形成されている。この噛み合い突部60b〜60bおよび係合溝60cの機能については後述する。
この変速部材60の内周側には噛み合い歯60aが形成されており、この噛み合い歯60aには、第1中間軸70に形成したギヤ部70aが噛み合わされる。変速部材60が低速側に移動した状態では、その噛み合い歯60aがギヤ部70aに噛み合い、高速側に移動した状態では両者の噛み合いは外れる。
【0013】
第1中間軸70の後端部70bは、第1段キャリア24の中心に取り付けたニードル軸受け26を介して該第1段キャリア24と同軸かつ相対回転可能に支持されている。また、この第1中間軸70の前端には、支持ピン79が前方へ突き出す状態で取り付けられている。この支持ピン79は、当該第1中間軸70の軸心に沿って挿入されている。この支持ピン79の突き出した部分は、後述する第2中間軸95の後端面にその軸心に沿って形成した支持孔95bに回転可能に挿入されている。この支持ピン79および上記ニードル軸受け26によりこの第1中間軸70が両持ち状態で回転可能に支持されている。
【0014】
また、第1中間軸70の先端部には、第2段遊星歯車列40の第2段サンギヤ71が形成されている。この第2段サンギヤ71には、3個の第2段プラネタリギヤ72〜72が噛み合わされている。この3個の第2段プラネタリギヤ72〜72は第2段インターナルギヤ73に噛み合わされている。この第2段インターナルギヤ73は、ハウジング2の先端部に取り付けたギヤケース6に対して回転可能に支持されている。この第2段インターナルギヤ73の先端側の側面には周方向適宜間隔をおいて断面V字形をなすロック孔73a〜73aが形成されている。各ロック孔73a〜73aには、鋼球75が嵌り込んでいる。各鋼球75は、ギヤケース6の保持孔6aに収容した圧縮ばね76によりロック孔73aに嵌り込む方向に付勢されている。このため、第2段インターナルギヤ73は、鋼球75〜75の付勢力により、ギヤケース6の後端に取り付けた固定板7に押し付けられ、これにより該第2段インターナルギヤ73には一定の回転抵抗が付与されている。当該電気ドリル1の通常の使用状態では、この第2段インターナルギヤ73に上記回転抵抗以上の外力が付加されることはないので、該第2段インターナルギヤ73はギヤケース6に対して回転しない。これに対して、電気ドリル1の使用時において、装着したドリルを経て外部から一定以上の大きな回転抵抗(過負荷)が付加されると、第2段インターナルギヤ73は圧縮ばね76に抗して鋼球75を保持孔6a内に押し込みつつ回転し、これにより大きな外部抵抗が第1中間軸70を経て電動モータ3に戻されることを防止している。この点で、この第2段遊星歯車列40は、いわゆるトルクリミッタの機能を有している。
【0015】
次に、3個の第2段プラネタリギヤ72〜72は、それぞれ支軸74を介して第2段キャリア77に回転可能に支持されている。各支軸74は、前記第1段遊星歯車列20とは逆に第2段プラネタリギヤ72の後端面からさらに後方(図2において左方)に突き出されている。この突き出し部分を介して第2段プラネタリギヤ72〜72の後方には受け部材78が取り付けられている。この受け部材78は、前記変速部材60と同様概ね円環形状を有しているが、変速部材60とは異なって機長方向に移動しない。但し、支軸74〜74を介してこの受け部材78は第2段キャリア77と一体で回転する。
受け部材78は、その後方に位置する変速部材60に対向して配置されている。この受け部材78の後面には、変速部材60の噛み合い突部60b〜60bに噛み合う噛み合い凹部78a〜78aが形成されている。変速部材60が高速側に移動すると、その噛み合い突部60b〜60bが受け部材78の噛み合い凹部78a〜78aに噛み合わされ、これにより変速部材60と受け部材78が一体で回転する状態となる。変速部材60が低速側に移動すると、噛み合い突部60b〜60bの噛み合い凹部78a〜78aに対する噛み合い状態は解除される。
【0016】
次に、変速部材60を位置を切り換えるための切り換え機構について説明する。前記したようにこの変速部材60の周面にはその全周にわたって係合溝60cが形成されている。この係合溝60cには、変速ブラケット80の二股部80aがそのほぼ半周の範囲にわたって嵌り込んでいる。これにより、変速ブラケット80の二股部80aは、変速部材60の回転を許容しつつ、機長方向の移動のついて係合している。このため、変速ブラケット80が機長方向に移動することにより変速部材60が高速側または低速側に移動する。
この変速ブラケット80は、ハウジング2に取り付けた支軸81,81を介して機長方向に平行移動可能に支持されている。また、図1に示すようにこの変速ブラケット80の下部はU字形に折り曲げられており、この折り曲げ部分の底板部80cには、機長方向に直交する方向(当該電気ドリル1の幅方向)に長いガイド溝80bが形成されている。このガイド溝80bには、変速ダイヤル90に取り付けた偏心ピン91が挿入されている。
【0017】
変速ダイヤル90は、その上面側に形成したボス部90aを介してハウジング2の下面側に回転可能に支持されている。このボス部90aの中心が当該変速ダイヤル90の回転中心となっている。ボス部90aの上面であって、この回転中心に対して一定寸法偏心した位置に上記偏心ピン91が上方へ突き出すように取り付けられている。変速ダイヤル90を回転させると、この偏心ピン91は、変速ダイヤル90の回転中心回りに公転する。この偏心ピン91が挿入されたガイド溝80bは上記したように機長方向に直交する方向に長く形成されているので、偏心ピン91の同方向の変位は逃がされ、機長方向の変位のみが変速ブラケット80に伝達され、これにより該変速ブラケット80が機長方向に移動する。
【0018】
変速ダイヤル90には、その径方向に移動可能にロックボタン92が設けられている。このロックボタン92は、圧縮ばね93により径方向外方に付勢されている。このロックボタン92の上面には突起92aが形成されている。一方、図4に示すようにハウジング2には、変速ダイヤル90の回転中心を中心とする円形溝2aが形成されている。また、この円形溝2aの対向する2位置にはロック溝2b,2cが径方向外方へ切り込み状に形成されている。ロックボタン92を圧縮ばね93に抗して押し込むと、突起92aが径方向内方へ変位してロック溝2b,2c内から円形溝2a内に移動し、これにより変速ダイヤル90を回転操作可能な状態となる。
これに対して、ロックボタン92の押し込み操作を止めると、このロックボタン92は圧縮ばね93により径方向外方へ付勢されているため、変速ダイヤル90を周方向の2位置(高速位置、低速位置)に回転させると、突起92aが円形溝2aからロック溝2b,2c内に移動して該変速ダイヤル90の回転操作が禁止される。変速ダイヤル90の回転操作が禁止された状態では、変速ブラケット80が移動不能にロックされ、従って変速部材60が高速側または低速側にロックされる。
【0019】
次に、第2段遊星歯車列40の第2段キャリア77の内周側に噛み合い歯77aが形成されており、この噛み合い歯77aには第2中間軸95に形成した噛み合い歯95aが常時噛み合わされている。従って、第2中間軸95は第2段キャリア77と一体で回転する。この第2中間軸95は軸受け96とニードル形式の軸受け98を介して回転可能に支持されている。なお、この第2中間軸95の後端面には支持孔95bが形成され、この支持孔95bには第1中間軸70に取り付けた支持ピン79の突き出し部分が回転可能に挿入されている。前記したようにこの支持ピン79により第1中間軸70が両持ち状態で支持されている。
第2中間軸95の先端側に前記したかさ歯車4が一体に形成されており、このかさ歯車4はより大径のかさ歯車5に噛み合わされている。かさ歯車5は、スピンドル8に固定されている。スピンドル8は、軸受け8a,8bにより機長方向に直交する方向に沿って回転可能に支持されている。スピンドル8の先端側には、ドリルを装着するためのチャック装置9が取り付けられている。
【0020】
以上のように構成した遊星歯車装置10を内蔵した電気ドリル1によれば、ロックボタン92を圧縮ばね93に抗して押し込み、この押し込み状態で変速ダイヤル90を回転することにより、当該遊星歯車装置10を高速側または低速側に変速することができる。
ロックボタン92に形成した突起92aが、図4において左側のロック溝2b内に位置する状態(図1に示す状態)では、偏心ピン91が機長方向後ろ側に位置するので、変速ブラケット80が機長方向後ろ側に位置し、従って変速部材60が低速側に位置する。以下、この状態を低速モードという。
低速モードでは、電動モータ3の起動により第1段サンギヤ21が回転すると、第1段プラネタリギヤ22〜22がそれぞれ自転する。第1段プラネタリギヤ22〜22は、回転しない第1段インターナルギヤ25に噛み合わされているため、該第1段インターナルギヤ25の内周側を公転しながら自転し、これにより第1段キャリア24および変速部材60が回転する。この段階で第1遊星歯車列20による減速が行われる(第1段階の減速)。
【0021】
低速モードでは、変速部材60の噛み合い歯60aに第1中間軸70のギヤ部70aが噛み合わされているため、変速部材60の回転によりこの第1中間軸70が回転する。第1中間軸70が回転すると、これに一体に形成した第2段サンギヤ71が回転し、これにより第2段プラネタリギヤ72〜72が自転する。第2段プラネタリギヤ72〜72は、通常使用状態では回転しない第2段インターナルギヤ73に噛み合わされているため、該第2段インターナルギヤ73の内周側を公転しながら自転し、これにより第2段キャリア77および第2中間軸95が回転する。この段階で第2遊星歯車列40による減速がなされる(第2段階の減速)。
第2中間軸95の回転は、かさ歯車4とかさ歯車5の噛み合いによりさらに減速されてスピンドル8に伝達される(第3段階の減速)。このように、遊星歯車装置10を低速モードに切り換えた状態では、第1〜第3段階の減速がなされる。
【0022】
これに対して、ロックボタン92を圧縮ばね93に抗して押し込み、該押し込み状態のまま変速ダイヤル90を約180゜回転操作し、これにより突起92aを図4において右側のロック溝2c内に位置させると、偏心ピン91が図2において二点鎖線で示したように機長方向前側に変位するので、変速ブラケット80が同じく機長方向前側に変位し、これにより変速部材60が高速側に変位する。以下、この状態を高速モードという。
【0023】
変速部材60が図2において右側の高速側に変位して当該遊星歯車装置10が高速モードになると、変速部材60の噛み合い突部60b〜60bが第2段遊星歯車列40の受け部材78の噛み合い凹部78a〜78aに噛み合い、かつ変速部材60の噛み合い歯60aが第1中間軸70のギヤ部70aから外れて、該変速部材60の回転が第1中間軸70に伝達されないため、該変速部材60を介して第1段キャリア24と受け部材78が一体で回転する。受け部材78は第2段キャリア77と一体で回転し、第2段キャリア77は噛み合い歯77aと噛み合い歯95aとの噛み合いを経て第2中間軸95と一体で回転するので、第1段遊星歯車列20から出力された回転は、第2段遊星歯車列40によっては減速されることなく第3段減速歯車列に入力される。従って、高速モードでは、低速モードよりもスピンドル8の回転数は高くなる。
【0024】
このように、低速モードでは第1〜3段階の減速が全てなされるが、高速モードでは、第2段階の減速がなされないため、スピンドル8の回転数を2段階に切り換えることができる。しかも、本実施形態の遊星歯車装置10によれば、従来のようにインターナルギヤをその軸方向に変位させて変速を行う構成ではなく、インターナルギヤ73はそのままの固定状態で変速を行う構成であるので、当該遊星歯車装置10の振動および発熱を従来よりも大幅に低減させることができる。
また、例示した遊星歯車装置10によれば、当該電気ドリル1の使用時において、装着したドリルを経て外部から一定以上の回転抵抗(過負荷)が付加されると、第2段インターナルギヤ73が圧縮ばね76〜76に抗して鋼球75〜75を保持孔6a内に押し込みつつ回転するため、このような大きな外部抵抗が電動モータ3に戻されることが防止される(トルクリミッタ機能)。
【0025】
以上説明した実施形態には、種々変更を加えることができる。例えば、変速ブラケット80を移動させるための手段として回転式の変速ダイヤル90に偏心ピン91を取り付け、この偏心ピン91の変位を利用する構成を例示したが、機長方向にスライド可能に変速ボタンを設け、この変速ボタンをスライドさせて変速ブラケットを直接的に機長方向に変位させる構成としてもよい。
また、電動工具の一例としてアングル形式の電気ドリル1を例示したが、本発明に係る遊星歯車装置は、ストレート形式の電気ドリル、あるいはインパクトドライバ等その他の電動工具の減速装置として広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】例示した実施形態に係る遊星歯車装置を内蔵したアングル形式の電気ドリルの内部構造を示す側面図である。
【図2】遊星歯車装置の拡大図である。
【図3】図1の(3)−(3)線断面矢視図であって、変速部材を前面側から見た図である。
【図4】図1の(4)−(4)線断面矢視図であって、円形溝およびロック溝の平面図である。
【図5】従来の遊星歯車装置の変速機構を示す図であって、特開昭61−90812号公報の第2図を援用した図である。
【符号の説明】
1…電気ドリル(アングル式)
2…ハウジング
2a…円形溝、2b…ロック溝(低速側)、2c…ロック溝(高速側)
10…遊星歯車装置
20…第1段遊星歯車列
21…第1段サンギヤ
22…第1段プラネタリギヤ
24…第1段キャリア
25…第1段インターナルギヤ
40…第2段遊星歯車列
60…変速部材
70…第1中間軸
71…第2段サンギヤ
72…第2段プラネタリギヤ
73…第2段インターナルギヤ
77…第2段キャリア
78…受け部材
80…変速ブラケット
90…変速ダイヤル
91…偏心ピン
92…ロックボタン
95…第2中間軸
100…遊星歯車装置(従来)
124…第2段インターナルギヤ
Claims (4)
- 電動モータの回転を遊星歯車装置により減速して出力する電動工具であって、
前記遊星歯車装置は、第1段遊星歯車列と第2段遊星歯車列との間に変速装置を備え、該変速装置は、前記第1段遊星歯車列のキャリアに対して一体で回転し、かつ軸方向に相対移動可能に取り付けた変速部材を有し、該変速部材を前記第2段遊星歯車列のキャリアから離間する低速側に移動させると、該変速部材を介して前記第2段遊星歯車列のサンギヤが前記第1段遊星歯車列のキャリアに回転について一体化され、前記変速部材を前記第2段遊星歯車列のキャリアに接近する高速側に移動させると、該変速部材を介して前記第1段遊星歯車列のキャリアと前記第2段遊星歯車列のキャリアが回転について一体化されるとともに、前記第2段遊星歯車列のサンギヤが前記第1段遊星歯車列のキャリアから回転について切り離される構成とした電動工具。 - 請求項1記載の電動工具であって、第1段遊星歯車列において、プラネタリギヤをキャリアに回転可能に支持する支持軸を利用して、変速部材を前記キャリアに対して回転不能かつ軸方向移動可能に支持する構成とした電動工具。
- 請求項1記載の電動工具であって、ハウジングに変速ダイヤルを回転可能に設け、該変速ダイヤルの、該変速ダイヤルの回転中心から偏心した位置に偏心ピンを設ける一方、前記ハウジングにブラケットを変速部材の移動方向と同じ方向に移動可能に設け、該ブラケットに前記変速部材の移動方向に直交する方向に長い係合溝を設け、該係合溝に前記偏心ピンを挿入して、前記変速ダイヤルの回転に伴う前記偏心ピンの変位により前記ブラケットの移動させて前記変速部材を高速側または低速側に移動させる構成とした電動工具。
- 請求項3記載の電動工具であって、変速ダイヤルにロックボタンをその径方向に移動可能かつ径方向外方にばね付勢して設け、該ロックボタンにハウジング側面に向けて突き出す突起を設ける一方、前記ハウジング側面に円形溝と該円形溝の対向する2位置にロック溝を径方向外方に切り込み形成し、前記突起を前記ロック溝に位置させた状態では前記変速ダイヤルを回転操作不能であり、前記ロックボタンをばね付勢力に抗して移動させて前記突起を前記円形溝に位置させて前記変速ダイヤルを回転操作可能な構成とした電動工具。
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