JP3682955B2 - 自走体による競走ゲーム装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、競走ゲーム装置、殊に、その自走体の走行制御に関するものであり、極めてスムーズで自然な競走模様を実現できるものであり、競馬ゲーム装置、自動車レース装置、オートレースなどのゲーム装置に適用することによって、実際のレースに極めて近似した競走を行わせることができるものである。
【0002】
【従来の技術】
様々の遊戯を楽しめる各種の競走ゲーム装置には、そのゲームの態様(どのようなことをもってゲームとするか)、レースの態様(どのようなレースを実行させるかなど)において様々なものがあるが、模型体の形態によって大別すると画像模型を競走させるもの、実物模型を競走させるものがある。また、画像模型によるものか、実物模型によるものかに関わらず、また、どのような「競走」を楽しむものかに関わらず、これらの競走ゲーム装置は、模型体による競走の有様のリアル性を追及しながら発展してきたものである。これらの競走ゲーム装置は模型体による競走が基本であり、競走ゲーム装置は、模型体によるものを中心に発達してきた。
他方、画像模型による競走ゲーム装置における模型体の走行制御、レース制御(様々に用意されたレースパターンから所定の法則にしたがって一つを順次選択し、選択したレースパターンにより個々の模型の走行経路、走行速度を定めることなど)をマイクロコンピュータを使って行うのは比較的容易である。このため、模型体の組み合わせの多様化、実行されるレース模様の多様化、レース制御のリアル化などのゲーム制御技術については、画像模型によるものが先行してきた (例えば実開昭57−123191号公報)。
【0003】
他方、模型体走行面の下方の自走体走行面を走行する自走体によって、模型体を磁力を介して個別に誘導して競走させるもの、いわば、2階建ての競走ゲーム装置においては、当初、走行制御技術上の制約から自走体をレールに沿って走行させざるを得ず、自走体の走行速度だけを制御することによって競走させるものであった(例えば、米国特許第2188619号明細書)。しかし、マイクロコンピュータの演算処理速度の飛躍的向上、メモリ容量の飛躍的増大、これらの価格の低廉化を背景として、模型体の組み合わせの多様化、レースの多様化、レース制御のリアル化を図れる上記画像模型による競走ゲーム装置におけるレ−ス制御技術を実物模型体によるゲーム装置で実現することが様々に試みられ、その実現が図られてきた。軌道による誘導方式では遊戯者の興味が半減するとの認識から、自走体の走行を制御プログラムに基づくフィードバック制御による無軌道走行にしたものがその一例である(例えば、特許第2650643号明細書)。この場合の主な技術的課題は、実物模型体をゲームプログラム(個々の自走体の走行経路、逐次の走行速度、着順など)どおりに確実に走行させるための模型体の走行制御技術の開発であり、自走体の小形化であり、さらに自走体をいかに滑らかに直線又は曲線に沿って走行させるかの制御プログラムの開発等々である。
【0004】
他方、コンピュータ技術の発達に伴って、物理的な軌道(レール、溝など)による誘導に換えて、誘導ラインによって自走体を誘導し、走行路を規制しながらその走行を制御する走行制御技術が公知である。これは走行コースを誘導ラインによって規制するものであるから、走行制御が簡便であるという利点を有し、また、レールによる場合と違って、任意のポイントで誘導ラインから離脱できるという利点を有する。この誘導ラインによる誘導走行制御技術として、例えば、特開昭59−22106号公報に記載されているものがある。この誘導走行制御技術、誘導ラインを電磁的、磁気的、光学的に検出しながらこれを追跡走行させるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許第2650643号明細書に記載されているもの等、自走体の走行を、経路、走行速度、着順などを予め定めた制御プログラムに基づき、2次元平面上の位置を逐一検出して当該位置データによりフィードバック制御するものがあるが、このものには次のような実際上の問題がある。すなわち、実際の競走ゲームにおける自走体の走行が車輪のスリップなどのために必ずしも安定せず、予定どおりに行かず、またフィードバック制御に対する自走体の応答性が迅速でないこと等のために、自走体の走行が滑らかさを欠き、不自然になることは避けられず、見た目に自然な走行による競走を実現することは容易でない。
他方、実際の競馬においても、競走馬はほとんど直線と緩やかな曲線とを組み合わせた比較的滑らかな経路を走行するのであって、頻繁にコース変更を行うものではないから、競走ゲーム装置の模型体についても、直線と緩やかな曲線との組み合わせによる比較的滑らかな経路を走行させる方が、むしろ自然であり、その方が実際の競馬における競走模様に近く、リアルであると見ることができる。
また、自走体の走行についていえば、軌道によって誘導させる方がよりスムーズかつ安定的であり、自然であり、制御も容易であるというメリットがある。
さらに、実際の競馬においては、個々の競走馬の方向の変更は、予定されたプログラムに従って行われるものではなく、コーナーでの位置取りや馬群状況に応じた、騎手の瞬時瞬時の状況判断によってなされるものであるから、走行経路(コース変更を含む)を予めプログラムされた競走は、実際にはそのプログラムどおりには必ずしもいかないことも相俟って、現実味に乏しく、作られたレースであるとの感が強く、如何に走行制御プログラムを工夫してもその感から完全に抜け出すことはできない。
また、単一の誘導ラインを終始追跡する走行制御によるものでは、走行経路が単調であり、競走が単純、不自然であって、競走模様がリアルさを欠くことは否めない。
【0006】
そこで、この発明は、従来周知の軌道走行による競走ゲーム装置を基礎として、従来周知の誘導式走行制御技術の利点を活用することにより、個々の自走体の走行を一層実際的でかつスムーズなものとしつつ、走行コースの変更、位置取りを、時々刻々の馬群状況に応じたものにすることで、実際の競馬における競走模様が実現されるようにすること、及び、自走体の走行制御を誘導式走行制御を基本とすると、自走体の進度を正確に検出することが重要であるので、自走体が後退するなどの走行トラブルを生じた場合でも、自走体の進度を正確に検出できる進度検出機構を工夫することをその課題とするものである。
【0007】
【課題解決のために講じた手段】
(請求項1に対応)
上記課題の解決手段は、上段の模型体走行面を走行する模型体を、下段の自走体走行面を走行する自走体により磁力を介して誘導して競走させるものであって、上記自走体が自走体走行面の誘導ラインを追跡走行し、その走行を中央制御装置からの制御信号に基づいて制御され、自走体の左右の駆動輪間の回転速度差によって自走体の操向操作が行われる競走ゲーム装置を前提として、次の(イ)〜(ト)によって構成されるものである。
(イ)上記自走体走行面に一定間隔で磁気誘導ラインを設け、自走体下面に磁気センサーを設けてあって、当該磁気センサーによって上記誘導ラインを検出すること、
(ロ)上記自走体走行面に上記誘導ラインに対して直角方向に3色の光ラインを一定の法則で密に並べて光進度線を設け、自走体の下面に光進度線に対向する光センサーを設け、自走体が進度線を通過したことを上記光センサーで検出すること、
(ハ)自走体の制御装置によって、上記のライン検出信号によりフィードバック制御して上記誘導ラインを追跡走行させること、
(ニ)光進度線を横切ることによる光センサーからの3色の光ラインパルス信号をカウントして進度を検出すること、
(ホ)上記3色の光ラインパルスの順が上記3色の光ラインの配列順と一致するときこのパルスを「正」として加算して自走体の進度データとし、上記3色の光ラインパルスの順が上記3色の光ラインの配列順と逆順のときこのパルスを「負」としてこれを減算して自走体の進度データとし、これらの自走体の進度データを中央制御装置に送信し、
(ヘ)個々の模型体の特性に応じた走行速度特性を中央制御装置から自走体に与え、この走行速度特性に従って上記制御装置によって個々の自走体の走行速度を制御し、中央制御装置からの減速信号によって減速制御を行うこと、
(ト)中央制御装置からの乗換え信号により、上記制御装置が自走体の左右の駆動車輪間に所定の回転速度差を与えて誘導ラインの乗換えを行わせること、
(チ)上記中央制御装置が上記進度データに基づいて模型体相互の位置関係である馬群状況を逐次把握し、所定の条件に基づく判断により、誘導ライン乗換え信号、減速信号を発信すること。
なお、上記の馬群状況は、競馬ゲーム装置を想定した馬群の状況を意味するものであるが、しかし、自動車レース、オートレースの場合は、それぞれの模型体の模型体群の状況が上記馬群状況に当たる。
【0008】
【作用】
個々の模型体は、個々の誘導ラインを追跡しながらスームズにかつ安定的に走行し、その走行速度は、逃げ切り型、追い込み型、短距離型、長距離型等の個々の模型体の特性に応じた走行速度プログラムを基本として走行する。そして、進度線を横切った数のカウント値による個々の自走体の進度(スタートしてからの進行度)データから模型体相互の位置関係である馬群状況が逐次把握され、この馬群状況について所定条件の当否をチェックして、これらの条件を満たす場合、乗換え信号が中央制御装置から発信され、この乗換え信号により乗換え制御がなされ、さらに、馬群状況について所定条件の当否をチェックして、条件を満たす場合、減速信号が発信されて、減速制御がなされる。上記馬群状況についての所定条件による乗換え信号、減速信号によって、逐次の馬群状況を基礎とした最も実際的な競走が展開される。
また、この走行制御は基本的には、誘導ラインによる誘導走行であり、さらに、走行速度は、自走体の制御装置に与えられた模型体の特性に応じた走行速度プログラムを基本としつつ、減速指令で制御されるから、自走体の走行制御は、ほとんど、自走体に搭載した制御装置による制御であり、スムーズかつ安定的で自然な走行状況が実現され、しかも、その制御装置及びそれによる制御は極めて簡単、単純である。
また、誘導ラインの検知センサーと進度線の検知センサーとを物理特性が違う磁気センサー、光センサーにしているので、誘導ライン検知と進度線検知とが干渉することはなく、したがって、上記干渉によって誘導ライン、進度線の検知エラーが生じることはない。
また、上記自走体走行面に上記誘導ラインに対して直角方向に設けた進度線が、3色の光ラインを一定の法則に従って密に配列して構成されたものであり、これを自走体が横切るとき、これが3色の光ラインパルスとして検出される。この3色の光ラインパルスの順が上記3色に配列順と一致するとき、このパルス信号を「正」として加算し、自走体の進度データとする。
自走体が後退すると、3色の光ラインを反対方向に横切るから、3色の光ラインパルスが検出されるが、その3色の光ラインパルスの順が逆になる。そこでこの逆順の3色の光ラインパルスを「負」として、これを減算して進度データとする。また、自走体が逆走するときも同様に、3色の光ラインパルスの順が逆になるので、これを減算する。また例えば、同じ場所で一つの円を描いて走行すると、その間に3色の光ラインパルスの減算と加算が同じだけなされるので、一つの円を描いたときの走行進度の加算はない。このように、自走体から発信される進度データは後退、逆走に関わらず、常に正しい進度を検出する。
殊に、進度線のカウントエラーはただちに進度カウント値(進度情報)のエラーとなるので、馬群状況の把握を不正確にし、馬群状況を基礎とする走行制御を混乱させることになるが、この解決手段によれば、進度線の検知精度が高いから、馬群状況に基づく走行制御を確実に行うことができる。
なお、上記要件(ホ)(ト)は、競走模様を高度化するために走行速度制御、乗換え制御をどのように行うかに関する事項であるから、誘導ラインによる走行制御精度向上の観点からすれば、不可欠の要件ではない。
【0009】
また、上記解決手段は、上記前提事項の下で、自走体走行面に設けた誘導ラインを磁気センサーによって検知しながら、自走体の制御装置によって、上記誘導ラインを追跡走行させるようにフィードバック制御し、中央制御装置が、進度情報により馬群状況を逐次把握し、馬群状況に応じて、誘導ラインの乗換え信号、速度変更(減速)信号を自走体に送信し、この乗換え信号、速度信号に従って、自走体の制御装置が誘導ラインの乗換え制御、速度制御を行うことを基本思想とするものであり、この基本思想の範囲内で、乗換え制御、速度制御等の条件をどのようにするかは、競走ゲーム装置の種類、仕様等に応じて適宜選択し得ることである。
【0010】
【実施態様1】
(請求項2に対応)
実施態様1は、上段の模型体走行面が細長のほぼ楕円形状であり、スタート前に、1着と2着の模型体を中央制御装置において予め決定し、第3コーナーからゴールまでの走行制御を、1着、2着を予定された模型体が予定どおりに1着、2着でゴールするように、これらの自走体の走行制御を優先し、これとの関連においてその他の模型体の自走体の走行速度、誘導ライン乗換え制御を行う競馬ゲーム装置であることである。
なお、上記の「第3コーナー」は、実際の競馬におけるいわゆる「第3コーナー」であり、具体的には、正面の直線コースからスタートし、同直線コースでゴールするときの、スタートから第3番目のコーナーのことを意味する。
【作用】
1着、2着の模型体をスタート前に定めることによって、当たり投票に対してコイン配当をする競走ゲーム機にこの発明を適用することが実際上可能になる。
因みに、スタート時に1着、2着の模型体が決定され、その決定どおりにゴールすることが、当たり投票に対してコイン配当をする競走ゲーム機において必須条件であり、このことはゲーム機業界における常識である。
【0011】
【実施態様2】
(請求項3に対応)
実施態様2は、上記解決手段における3つのホールセンサーを自走体の前後方向に対して横方向に一列に配置して上記磁気センサーを構成したことである。
【作用】
横一列に配置した3つのホールセンサーのうちの中央のものが誘導ラインの中心に位置するとき、誘導ラインに対する自走体のずれはゼロである。そして、2つが誘導ラインを検知し、他の一つが誘導ラインを検知しないとき、これらの信号から、自走体は誘導ラインに対して一方にずれたことが判別される。このように、ずれの方向及びずれの量を検知できるので、誘導ラインの中央を追跡走行させるためのフィードバック制御を高精度で行うことができ、したがって、左右への振れの小さい、誘導ラインの追跡走行がなされる。
【0012】
【実施態様3】
(請求項4に対応)
実施態様3は、実施態様2について、その誘導ラインがS極、N極の磁気ラインを交互に配置した磁気ラインの印刷線であることである。
【作用】
印刷することにより、磁気誘導ラインを比較的簡便に走行面に形成することができ、軌道を外れた場合の磁気信号のコントラストがはっきりするから、誘導ラインの追跡走行制御を高精度で行うことができる。
【0013】
【実施態様4】
(請求項5に対応)
実施態様4は、上記進度データに基づいて中央制御装置が模型体相互の位置関係である馬群状況を逐次把握し、条件1:同一誘導ライン上の後続自走体が先行自走体より高速で、その速度差が所定値以上であり、かつ条件2:前後の自走体間の車間距離が所定以下であるときに減速信号を後続自走体の制御装置に送信することである。
【作用】
誘導ラインの乗換え(走行コースの変更)、減速の是非を、馬群状況に基づき、上記条件によって判断するものであるから、個々の自走体の走行状況の如何に関わらず、最も実際的な競走模様が展開され、また、馬群状況、騎手の技能、癖、模型体の特性等に応じた、様々な競走模様を実現させることができる。
なお、上記乗換え条件、減速条件は、乗換え時、減速時の追突回避等のための最小限の条件であり、他の条件を加えることもできるし、また、上記条件を他の条件に変えることも可能である。要するに、基本的には、実際の競馬を模擬する上で最適な乗換え条件、減速条件を設定すればよい。
【0014】
【実施例】
この発明を競馬ゲーム装置に適用した例を図面を参照して説明する。
この実施例の全体構造は、従来の競馬ゲーム装置と変わりはなく、幅約2.5m、長さ約4mの大型のゲーム装置であり、模型体が競走するトラックを取り囲むように多数のサテライトが配置されている。そして、個々のサテライトに、コインの投入及び払い出しのためにコイン取扱い機構、投票操作キーなどの操作パネル、各種情報を表示する表示器が設けられている。
上段の模型体走行トラック(模型体走行面)1の下方の自走体走行トラック(自走体走行面)2を走行する自走体3が、自走体上部、模型体下部に設けた磁石4,4の磁力を介して模型体5を牽引して競走させる。
以上の基本構造は、例えば上記米国特許第2188619号明細書に記載されているように従来周知の構造である。上記米国特許明細書に記載されたものは、レールに沿って自走体を走行させて、その走行方向をレールで規制するものであるから、競走のための走行制御は速度制御だけであり、したがって極めて簡便なものである。そして、この実施例は、上記米国特許明細書のもののレールによる誘導手段を磁気的誘導手段に置換したものをその基本としている。
【0015】
自走体走行トラック2に、走行方向に沿った6mm幅のS極磁気線(誘導ライン)11と、6mm幅のN極磁気線12とを交互に配置して印刷している。
N極磁気線12を誘導ラインにすることもできるが、S極磁気線11、N極磁気線12のいずれを誘導ライン10とする場合においても、誘導ライン10の幅は、当該誘導ライン10に対する磁気センサー(ホールセンサー)9の配置とも関係するが、誘導ライン10の両側の線の幅は誘導ライン間の間隔をどの程度とするかによって適宜選択されることである。この実施例では、誘導ライン10間のピッチは12mmであり、自走体3の幅33mmの約37%である。この誘導ライン10のピッチは後述の誘導ライン乗換え幅に当たる。乗換え幅が大きすぎると、乗換え走行がスムーズでなくなる(見た目に目立つようになる)ので、乗換えをスムーズに行える範囲に止めることが望ましい。上記ピッチが小さすぎると誘導ラインが密になりすぎ、乗換えによる走行コースの変更幅が小さくなる。この場合は、2以上の誘導ラインを飛び越えて乗換えることも必要になり、乗換え本数を指定した乗換え制御を行うなどの特別な乗換え制御が必要になる。また、上記ピッチが小さすぎると、誘導ライン10の幅が狭くなるので、3以上の磁気センサー(ホールセンサー)9で検知することが困難になる。したがって、この場合は、2つの磁気センサーで誘導ライン10の両側部をそれぞれ検知する検知システムにする必要がある。
【0016】
この実施例では、誘導ラインの検知センサーとして、3つのホールセンサー9を自走体の下面にその幅方向に並べて配置して、誘導ライン検知センサーを構成している。3つのホールセンサー9による検知幅は12mmで、S極磁気線(誘導ライン)11の幅の2倍になり、隣接するホールセンサー9,9間の間隔は6mmであるから、左右いずれかのホールセンサー9と中央のホールセンサー9でS極磁気線を検知し、他の一つがN極磁気線12を検知したとき、N極磁気線12を検知するホールセンサー9の方へ自走体がずれていることになる。このことは、自走体の制御装置16によって判別され、フィードバック制御されて、軌道修正がなされる。このように小さいずれを確実に検出して誘導ラインを正確に追跡しながら滑らかに走行する。
上記のように、比較的幅が広い一つの磁気誘導ラインに3つのホールセンサーを対向させて追跡させることによって、横への振れが小さい追跡走行を可能にするが、他方、S極、N極の磁気線の幅を小さくし、S極に中央のホールセンサーを対向させ、左右のN極磁気線に左右のホールセンサーを対向させて、この状態での磁気線検知信号を基準として追跡走行させることもできる。この場合は、磁気線の幅が狭くなるので、幅の狭いS極、N極の磁気線を密に配置すると、誘導ラインの乗換え幅が小さくなる。
また、自走体の前部に3つのホールセンサーを配置し、後部に2つ又は3つのホールセンサーを配置することによって、誘導ラインに対する自走体の斜行をも検知することができるので、誘導ライン、殊に曲線状の誘導ラインの追跡制御精度を高くすることができる。
【0017】
ところで、競走ゲーム装置においては、配当率との関係から競走の成り行きで着順を決定するわけにはいかない事情がある。このために、少なくとも1着、2着の模型体をスタート前の段階で決定しておくことが必要であり、このため、予定通りの着順で1着、2着がゴールするように制御することが最低限必要である。
他方、馬群状況を逐次把握するために、個々の模型体のスタート地点からの進度を検知することが重要であるが、しかし、トラブルによる接触事故などで、自走体が後退し、あるいは逆走すると、検出した進度が「真」でなくなる。このように進度情報が不正確になると、走行中の逐次の馬群状況を基礎にした的確な乗換え、速度制御に支障を生じる。したがって、仮に自走体の後退、逆走があっても、自走体の進度データは常に「真」でなければならない。
【0018】
次いで、この実施例の進度検出システムについて説明する。
誘導ラインに対して直角に交わる光進度線15を密に設けて、これを自走体3の下面に設けた3色光センサー6によって検知し、その通過本数を積算(カウント)して進度を検出するようにしている。光進度線15は、幅6mmの3色の進度線(R(赤)、G(緑)、B(青))15a,15b,15cを一定の法則に従って繰り返し配列したものであり、自走体3がこれを横切りながら走行するとき、3色光センサー6(この実施例では、R(赤)、G(緑)、B(青)に対してそれぞれ感度が高い3つのフォトダイオードで構成したものを採用)によって、図5(a)に示すような検知信号として検出される。この検出信号をA/D変換することで、光進度線の通過本数を積算することができる。このようにして検出された進度情報が各自走体から中央制御装置に送信される。
自走体が順方向に3色の進度線15a,15b,15cを横切るとき、3色光センサー6によってRGBの順で3色光パルス信号を検出する。後退、逆走すると、この3色光パルス信号がBGRの順になる。
進度線検知信号が順方向(RGBの順)に検知されるとき、これを正として進度データに加算し、逆方向(BGRの順)に検知されるとき、これを負として進度データから減算する。この減算によって後退した位置での進度が正確に検出されることになる。
【0019】
中央制御装置は全ての自走体から進度情報を取り込んで、模型体相互の位置関係(実際には自走体相互の位置関係)から馬群状況を把握する。
個々の自走体には、模型体の特性(逃げ切り型、追い込み型、短距離型、長距離型等)、騎手の得意、不得意、癖などに応じて、スタート前に自走体の制御装置16に与えられた速度制御プログラム(1着、2着に指定されたものについては、ほぼ第3コーナ−通過後は特別な速度制御プログラム)に基づいて、基本走行速度が制御される。そして、逐次の馬群状況において、コース内側、あるいはコース外側への方向付けの有無、隣接する自走体と干渉する可能性の有無等を判断条件として、中央制御装置で誘導ラインの乗換えを行うかどうかが判断され、上記条件に当たる自走体について、内側、外側への誘導ライン乗換え信号が発信される。この例では、乗換えを優先して、コース内側、またはコース外側への方向付けがなされているものについては、干渉する可能性がない場合は、ただちにコース内側またはコース外側への乗換え指令が発信される。
【0020】
また、上記基本走行速度を基本としながら、同一誘導ライン上の速度差を確認し、また、自走体間の車間が所定以下の場合は、後続自走車の制御装置に対して減速信号が発信される。もっとも、上記減速は速度変更を意味し、減速された速度信号として発信してもよく、減速分を指示する信号として発信してもよい。また、この中央制御装置から自走体の制御装置に送信される基本走行速度信号は、一括して送信してもよく、上記区分毎に複数回に分けて送信してもよい。
実際の乗換え制御、減速制御は、上記の他の様々な条件をも考慮した逐次の判断に基づいてなされるが、基本的、概略的には上記の条件に基づく乗換え制御、減速制御を行って1レースの競走がなされる。
自走体の制御装置16と中央制御装置との役割分担は上記のとおりであるが、中央制御装置から自走体の制御装置に送信される信号は、スタート前に送信される個々の模型体の特性に応じた基本速度データ、スタート時のコース取りの信号、競走中の乗換え信号、減速信号である。そして、上記の1レース中の基本速度データは、複数の走行区間に区分して各区分における基本走行速度として与えられる。この例においては、1レースの全走行区間を、スタートから第1コーナーまでの直線区間、第1コーナー、第2コーナー、第2コーナーと第3コーナーの間の直線区間、第3コーナー、第4コーナー、第4コーナーからゴールまでの7区間に分割している。各区間毎に走行基本速度が異なるわけでは必ずしもないが、個々の模型体の特性はこの程度の区間区分で十分表現され、また、実際の競馬のレース模様を模倣する上でも、この程度の区分で十分である。
基本走行速度は個々の自走体に対して単一であってもよい。しかし、この場合は、模型体の特性に応じた速度調整を上記区分について別途に行うことになる。
【0021】
他方、自走体の制御装置から中央制御装置に送信される情報は、進度情報である。
自走体の走行制御装置は上記基本走行速度で、また、誘導ラインを追跡しながら走行するように、左右の車輪駆動モータの回転速度を制御するとともに、中央制御装置からの乗換え指令、減速指令に応答して、車輪駆動モータの回転速度を加減させる。仮に、乗換え指令、減速指令がなければ、スタートからゴールまで、模型体の特性による走行基本速度で、一つの誘導ラインを追跡しながらこれに規制されて走行することになる。
この制御装置16は、追跡制御プログラム、中央制御装置からの情報等を記憶するメモリ16a、演算部16b、走行モータを駆動制御する駆動部16cを有し、さらに、進度演算部16d、3色の光パルス信号の配列の「順」、「逆」を判別する処理装置16eを有する。そして、中央制御装置からの信号を受信器17で受信して、必要なデータをメモリ16aに保存する。
制御装置16は、自走体3の3つのホールセンサー(磁気センサー)9による誘導ライン検知信号を受けて、これにより誘導ラインからの左右へのずれを検出し、フィードバック制御して誘導ラインからのずれを修正しながら誘導ラインを追跡走行させる。また、3色光センサー6からの進度線検知信号により進度演算部16dで進度を演算し、その進度情報を送信器18から中央制御装置に送信する。
中央制御装置は個々の自走体から送信される進度情報に基づいて、馬群状況を逐次把握し、予め定められた上記の判断条件によって誘導ラインの乗換え、減速の要否を判断して、個々の自走体に乗換え、減速の信号を逐次発信する。
以上のような走行制御による走行は、例えば図7に模式的に示すように、誘導ラインに沿った走行を基本としながら、適宜の乗換えを繰り返しながら行われることになる。
【0022】
【発明の効果】
以上のとおり、この発明は走行経路を誘導ラインによって規制することにより、自走体の走行方向の振れを小さくして安定的に走行させ、また、誘導ラインの乗換えによる走行コースの変更(コース取り)を行わせ、実際の競馬の競走模様をできるだけ忠実に模擬するために必要な限度において上記乗換えを行わせるものであるから、極めて自然で安定した模型体の競走を実現することができ、また、競走中の逐次の馬群状況を基にして、例えば、実際の競馬における騎手の判断条件を模擬するなどの所定条件でコース変更、減速を馬群状況に応じて判断して、その判断に基づいてコース変更、減速を行うものであるから、模型体による競走模様を、実際の競馬における競走模様に可及的に近似させることができる。
【0023】
従来技術におけるように、個々の自走体の走行経路及び走行速度をプログラムして、このプログラムが実現されるように、自走体の走行を、競走中の2次元座標上の逐次の位置情報によりフィードバック制御する場合は、車輪のスリップのために大きく予定コースを外れて一時的にフィードバック制御が不能になって暴走するなどの様々なトラブルを生じ、所定の競走がなされなくなることもあるが、この発明は、誘導式のものであるから、走行コースを外れて制御不能になることはなく、したがって、極めてスムーズで安定した走行によって、整然とした競走が確実に実行され、また、極めてリアルな競走模様が実現される。
【0024】
また、S極磁気線とN極磁気線とを交互に配置して誘導ラインを構成し、これを磁気センサーによって検知しながら追跡し、他方、光進度線を光センサーで検知することによって進度情報を得るものであるから、追跡走行のための誘導ラインの検知と、進度検知のための光進度線の検知とが干渉することはなく、また、2次元的な位置検知手段が不要であり、さらに、自走体の走行は誘導ラインによる誘導制御であり、また、個々の模型体に予め与えられた走行速度プログラムによって速度制御が行われるから、自走体の走行制御がハード、ソフトの両面において極めて単純であり、その制御精度が極めて高く、したがって、走行制御が確実になされる。
【0025】
また、3色の進度線を所定の順番で配列して光進度線とし、これを3色光センサーで3色の光パルス信号として検知することによって進度情報を得るものであるから、この3色の光パルス信号による自走体の順方向走行、後退走行、逆方向走行を明確に区別して、後退走行、逆方向走行による進度カウントミスを確実に回避することができ、これにより、後退、逆走があっても、常に真の進度を確実に検出することができる。したがって、個々の自走体の進度を基礎データとするレース制御を正確、確実に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は実施例の競馬ゲーム装置の全体斜視図である。
【図2】は実施例の模型体と自走体との概念的な側面図である。
【図3】は実施例の自走体走行トラックの斜視図である。
【図4】は実施例における誘導ラインと誘導ライン検知センサーとの関係を示す、要部拡大図である。
【図5】(a)は、実施例における光進度線と進度検知センサーとの関係を示す、要部拡大図であり、(b)は進度検知センサーから出力される進度検知信号の模式図である。
【図6】は実施例の走行制御装置のブロック図である。
【図7】は実施例における乗換え走行の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1:模型体走行トラック(模型体走行面)
2:自走体走行トラック(自走体走行面)
3:自走体
4:磁石
5:模型体
6:3色光センサー
9:磁気センサー(ホールセンサー)
10:誘導ライン
11:S極磁気線
12:N極磁気線
15:光進度線
16:制御装置
16a:メモリ
16b:演算部(CPU)
16c:駆動部
16d:進度演算部
16e:処理装置
17:受信器
18:送信器

Claims (5)

  1. 上段の模型体走行面を走行する模型体を、下段の自走体走行面を走行する自走体により磁力を介して誘導して競走させるものであって、上記自走体が自走体走行面の誘導ラインを追跡走行し、その走行を中央制御装置からの制御信号に基づいて制御され、自走体の左右の駆動輪間の回転速度差によって自走体の操向操作が行われる競走ゲーム装置において、
    上記自走体走行面に一定間隔で磁気誘導ラインを設け、自走体下面に磁気センサーを設けてあって、当該磁気センサーによって上記誘導ラインを検出し、
    上記自走体走行面に上記誘導ラインに対して直角方向の3色の光ラインを一定の法則で密に並べて光進度線を設け、
    自走体の下面に光進度線に対向する光センサーを設け、自走体が進度線を通過したことを上記光センサーで検出し、
    自走体の制御装置によって、上記のライン検出信号によりフィードバック制御して上記誘導ラインを追跡走行させ、
    光進度線を横切ることによる光センサーからの3色の光ラインパルス信号をカウントして進度を検出し、
    上記3色の光ラインパルスの順が上記3色の光ラインの配列順と一致するときこのパルスを「正」として加算して自走体の進度データとし、上記3色の光ラインパルスの順が上記3色の光ラインの配列順と逆順のときこのパルスを「負」としてこれを減算して自走体の進度データとし、これらの自走体の進度データを中央制御装置に送信し、
    個々の模型体の特性に応じた走行速度特性を中央制御装置から自走体に与え、この走行速度特性に従って上記制御装置によって個々の自走体の走行速度を制御し、中央制御装置からの減速信号によって減速制御を行い、
    中央制御装置からの乗換え信号により、上記制御装置が自走体の左右の駆動車輪間に所定の回転速度差を与えて誘導ラインの乗換えを行ない、
    上記中央制御装置が上記進度データに基づいて模型体相互の位置関係である馬群状況を逐次把握し、所定の条件に基づく判断に従って誘導ライン乗換え信号、減速信号を発信する競走ゲーム装置。
  2. 上段の模型体走行面が細長のほぼ楕円形状であり、スタート前に、1着と2着の模型体を中央制御装置において予め決定し、第3コーナーからゴールまでの走行制御を、1着、2着を予定された模型体が予定どおりに1着、2着でゴールするように、これらの自走体の走行制御を優先し、これとの関連においてその他の模型体を誘導する自走体の走行速度制御、誘導ライン乗換え制御を行う請求項1の競走ゲーム装置による競馬ゲーム装置。
  3. 3つのホールセンサーを自走体の前後方向に対して横方向に一列に配置して上記磁気センサーを構成した請求項1の競走ゲーム装置。
  4. 上記磁気誘導ラインがS極、N極の磁気ラインを密に配置した印刷線である請求項3の競走ゲーム装置。
  5. 上記進度データに基づいて上記中央制御装置が模型体相互の位置関係である馬群状況を逐次把握し、条件1:同一誘導ライン上の後続自走体が先行自走体より高速で、その速度差が所定値以上であり、かつ条件2:前後の自走体間の車間距離が所定以下であるとき減速信号を後続自走体の制御装置に送信する請求項1の競走ゲーム装置。
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