JP3681883B2 - 長大切り土のり面縮小化工法 - Google Patents
長大切り土のり面縮小化工法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路等の施工等でのり面を切り崩さねばならない場合の長大切り土のり面縮小化工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在日本道路公団が建設を進めている国土開発幹線自動車道(高速道路)11,250kmのうち、現在の共用延長は6,000km を越えているが、今後建設が予定されている高速道路の多くは、急しゅんな山岳地帯や都市近郊を通過する。
【0003】
このため、橋梁やトンネルなどの構造物比率が高くなり図5に示すように道路土工でも長大な切り土のり面1が多く発生する。例えば、平成9年から建設工事が本格化する第二東名・名神高速道路では急しゅんな山岳地帯を通過する区間に、従来通りの標準的なこう配で切り土を行なうと、のり段2が数十段、のり直高100mを越える区間が発生する。このため、建設残土の削減や環境保全などに有効な工法の検討が必要となる。
【0004】
かかるのり面の切り土量を少なく抑えるものとして、大きく分けて(1)斜面安定化工法、(2)土留め工法、(3)覆道工法の3つの工法が検討されている。
【0005】
このうち、斜面安定化工法は図6、図7に示すように切り土のり面1に鉄筋3を配置する鉄筋補強工やグランドアンカー4を配置するグランドアンカー工法を使った土留めを行い、のり面のこう配を1ランクほど急こう配にする工法である。
【0006】
土留め工法は図8、図9に示すように切り土のり面に地中壁5を構築し、場合によってはグランドアンカー4を併用してのり面のすべり力を抑止する。地中壁5を設けて地山を垂直に切り込むことで、のり面の切り土量の削減を図るものである。この工法には、図8に示すような自立壁型と図9に示すようなアンカー支保壁型の二種類が考えられている。
【0007】
このうち、自立壁型は、独立杭や多段杭を施工することで柱列式の地中連続壁を造り、のり面のすべり力を抑止する。アンカー支保壁型は、深礎杭や大口径鋼管杭、地中連続壁にグランドアンカー4などを併用した工法となる。
【0008】
一方、覆道工法は、図10、図11に示すように開削型と非開削型の二タイプに分かれる。開削型は、グランドアンカー4によるアンカー工や鉄筋3による鉄筋補強土工による仮設土留めを行い、のり面を急こう配で開削し、ボックスカルバートなどの構造物6を築いてから、その上部に盛り土7を行う。非開削型は、まず深礎杭を使って柱8や梁9を築いてから、内部を掘削して本線部分をつくる横坑ルーフなどの工法である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記安定化工法はのり面のこう配を1ランクほど急こう配にすることで、長大切り土のり面の発生防止を行うものであるが、切り土のり面を大幅に無くすことはできず、縮小化の効果は乏しい。
【0010】
土留め工法においても図8、図9に示すように地中壁5の上部には切り土のり面1がまだ発生することになり、縮小化の効果は完全なものとは言えない。
【0011】
覆道工法は、構造物6の上部には植栽をほどこすので、他の工法と比べ自然環境の復元は高いが、コスト高となり、さらに、前記土留め工法と同様に切り土のり面1がまだ発生することになり、縮小化の効果は完全なものとは言えない。
【0012】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、概略設計などの路線計画段階から長大切り土のり面が発生しないような設計を行うことができるので、コストをかけずに、従来と比べて長大切り土のり面の縮小化が大幅に実現でき、その結果、切り土による発生残土の削減が可能となり、また、自然植生の保護も十分なので景観や環境をはじめとした各種問題の解決にも答えることができる長大切り土のり面縮小化工法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するため、曲線ボーリング装置の外管部分を残置して形成する湾曲した鋼管杭を土留め支保工として掘削を行なうべき部分の境界位置に適宜間隔で建て込み、 該間隔を存して並列する鋼管杭相互間は横矢板、コンクリート板その他の壁板で閉塞してアーチ型の土留め壁を構築して、内側を掘削し、トンネルやシェルター等の構造物を施工すること、および、土留め支保工となる湾曲した鋼管杭に地盤アンカーを付設することを要旨とするものである。
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、切り土のり面に地中壁を構築してのり面のすべり力を抑止する土留め工法の発展的形態であり、この地中壁を湾曲した鋼管杭群でアーチ型の土留め壁とすることで、直立の地中壁の場合よりも強度のあるものとすることができ、しかもその上端は直立の地中壁の場合よりも山裾側に近づけることができるのでその上部に長大切り土のり面を発生させることがない。このように長大切り土のり面を発生させることがないので、既存の自然植生を破壊することもなく、切り土による発生残土の削減が可能となる。
【0015】
請求項3記載の本発明によれば、前記作用に加えて、湾曲した鋼管杭の建て込みを簡単かつ安価に行なうことができ、施工の合理化を図ることができる。
【0016】
湾曲した鋼管杭はその根入れ深さで支持力が定まるが、請求項2記載の本発明によれば、根入れ長が十分確保できない場合でも地盤アンカーを付設することで支持力を得ることができる。
【0017】
また、鋼管杭は、曲線ボーリング装置の外管部分を残置して形成する湾曲して簡単かつ安価に行なうことができ、施工の合理化を図ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1、図2は本発明の長大切り土のり面縮小化工法の1実施形態を示す側面図、図3は同上要部の横断平面図である。
【0019】
本発明は、湾曲した鋼管杭10を土留め支保工として掘削を行なうべき部分の境界位置に適宜間隔で建て込み、該間隔を存して並列する鋼管杭群でアーチ型の土留め壁11を構築する。
【0020】
かかる湾曲した鋼管杭10の建て込みとしては、種々考えられるが、曲線ボーリング装置を使用し、その外管部分を残置して形成すると簡単かつ確実に施工することができる。
【0021】
この曲線ボーリング装置はのり面に架台11を組み、その上に外管推進ジャッキ13、内管推進ジャッキ14を有する推進装置12を設置して本発明に係る湾曲した鋼管杭10が外管となる曲管を地中に掘削推進させるものである。
【0022】
図4は曲線ボーリング装置の要部の縦断側面図で、湾曲した鋼管杭10となる外管10aは先端が刃口を有する筒状のシュー10bとなり、この外管10aの内部に挿通する内管15の先端には、油圧モータ16a、減速機および拡縮ビット16bから構成される掘削装置16が取り付けられ、この掘削装置16の拡縮ビット16bの部分はシュー10bの先端より外側に出る。
【0023】
なお、掘削装置としてはこのような油圧駆動のものの代わりにダウンザホールハンマのごときエアー駆動のものを利用してもよい。
【0024】
このようにして拡縮ビット16bで掘削しながら外管10aと内管15とを共に推進装置12で掘進させながら地盤に建立て込み、所定深度まで達したならば拡縮ビット16bを縮めて外管10aを残して掘削装置16および内管15を引き抜く。その結果、残った外管10aが湾曲した鋼管杭10となる。
【0025】
鋼管杭10は適宜間隔で打設するものであり、図3に示すように湾曲した鋼管杭10相互間は横矢板、コンクリート板その他の壁板18で閉塞してアーチ型の土留め壁17を構築する。
【0026】
その後、このアーチ型の土留め壁17の内側を掘削し、図2に示すようにトンネルやシェルター等の構造物19を施工する。
【0027】
また、図2、図3に示すように必要に応じて鋼管杭10に地盤アンカー20を結合するようにしてもよい。この地盤アンカー20は鉄筋等の鋼棒、PCより線等の鋼線によるもので、図示は省略するが先端をグラウトにより固定してもよく、例えば鋼管杭10のみでは十分な支持力が得られない場合に活用できる。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の長大切り土のり面縮小化工法は、アーチ型の土留め壁を構築することで、概略設計などの路線計画段階から長大切り土のり面が発生しないような設計を行うことができ、コストをかけずに、従来と比べて長大切り土のり面の縮小化が大幅に実現できるものである。そして、その結果、切り土による発生残土の削減が可能となり、また、自然植生の保護も十分なので景観や環境をはじめとした各種問題の解決にも答えることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の長大切り土のり面縮小化工法の1実施形態を示す前段工程の側面図である。
【図2】 本発明の長大切り土のり面縮小化工法の1実施形態を示す後段工程の側面図である。
【図3】 本発明の長大切り土のり面縮小化工法の1実施形態を示す要部の横断平面図である。
【図4】 曲線ボーリング装置の要部の縦断側面図である。
【図5】 長大切り土のり面の説明図である。
【図6】 従来例のうち、斜面安定化工法の一例を示す縦断側面図である。
【図7】 従来例のうち、斜面安定化工法の他例を示す縦断側面図である。
【図8】 従来例のうち、土留め工法の一例を示す縦断側面図である。
【図9】 従来例のうち、土留め工法の他例を示す縦断側面図である。
【図10】 従来例のうち、覆道工法の一例を示す縦断側面図である。
【図11】 従来例のうち、覆道工法の他例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
1…切り土のり面 2…のり段
3…鉄筋 4…グランドアンカー
5…地中壁 6…構造物
7…盛り土 8…柱
9…梁 10…湾曲した鋼管杭
10a…外管 10b…シュー
11…架台 12…推進装置
13…外管推進ジャッキ 14…内管推進ジャッキ
15…内管 16…掘削装置
16a…油圧モータ 16b…拡縮ビット
17…土留め壁 18…壁板
19…構造物 20…地盤アンカー
Claims (2)
- 曲線ボーリング装置の外管部分を残置して形成する湾曲した鋼管杭を土留め支保工として掘削を行なうべき部分の境界位置に適宜間隔で建て込み、 該間隔を存して並列する鋼管杭相互間は横矢板、コンクリート板その他の壁板で閉塞してアーチ型の土留め壁を構築して、内側を掘削し、トンネルやシェルター等の構造物を施工することを特徴とした長大切り土のり面縮小化工法。
- 土留め支保工となる湾曲した鋼管杭に地盤アンカーを付設する請求項1記載の長大切り土のり面縮小化工法。
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