JP3680968B2 - 水処理用濾材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲用水や殺菌消毒に使用する水を製造したり、浴湯や排水を浄化したりするために使用する、新規な水処理用濾材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、飲用水の浄化やミネラル分の追加等の目的で、或いは排水の浄化等の目的で、鉱物の破砕品や成型品からなる濾材を、処理容器や処理槽に充填して水を処理することが広く行われている。これは、鉱物が持つ吸着能やミネラル溶出能を利用したものである。また、排水の浄化の場合には、バクテリアの担体としての働きが大きい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、飲用水の場合でも、手入れが悪いと鉱物の表面や空隙にバクテリアが付着して繁殖し、非衛生的になる。特に、バクテリアが大腸菌や葡萄状球菌、黄色葡萄状球菌、鞭毛菌等の腐敗菌の場合は、極めて危険である。また、排水処理の場合でも、これらの腐敗菌が繁殖すると、十分な排水処理が行われないばかりか、アンモニア、メタン、メチルメルカプタン、硫化水素等の激しい悪臭ガスを発生し、作業環境の悪化や近隣への悪臭公害をもたらしていた。更に、これらの鉱物濾材は、浴場の循環濾過筒の充填材としても使用されているが、従来品の多くは腐敗菌が繁殖しやすく、また十分な浄化能力も有していない。
【0004】
そのため、浴湯循環処理装置に、紫外線やオゾン発生手段を組み込んだものも存在する。しかし、これでは浴湯を浄化する微生物を殺すことになり、本末転倒である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は、これらの腐敗菌が繁殖しない水処理用濾材を提供するべく鋭意研究した結果、本発明を完成させたものである。即ち本発明は、好気性で芽胞を形成する細菌の代謝物が、腐敗菌類を溶菌する作用を有していることに着目してなされたものである。また、好気性で芽胞を形成する細菌は、栄養成分とミネラル特にシリカとマグネシウムの存在下で、増殖して優先化し、しかも極めて高濃度に存在させることができる。そこで、これらの好気性で芽胞を形成する細菌の芽胞を、鉱物特にクリストバル石の破砕品や成型品に着床させたり或いは混合一体成型して担支させ、この鉱物製品を水処理用濾材として使用するものである。以下、詳細に説明する。また、本発明では、好気性で芽胞(胞子)を形成する細菌を「有用細菌」とし、該有用細菌の菌体や芽胞或いはその分泌物を含む水を「有用細菌処理水」と定義する。そして、本発明は、水処理用濾材の製造方法において、クリストバル石の破砕品、またはクリストバル石粉砕品を成型して乾燥した成型物を、好気性で芽胞を形成するバチルス属の細菌の芽胞を含む汚泥を溶かした水に投入し、散気を行ないながら撹拌しつつ浸漬したのち、乾燥させて、前記細菌の芽胞を着床させることを特徴とする。また、本発明は、水処理用濾材の製造方法において、クリストバル石の粉砕品と、好気性で芽胞を形成するバチルス属の細菌の芽胞を含む汚泥と、水ガラスと、硫酸に、水を加えて混練し、整粒して乾燥させることを特徴とする。また、本発明は、水処理用濾材の製造方法において、クリストバル石の粉砕品と、好気性で芽胞を形成するバチルス属の細菌の芽胞を含む汚泥と、フェノール系樹脂粉末と、シリカ系凝集液に、水を加えて混練し、整粒して乾燥させることを特徴とする。
【0006】
具体的には、まず破砕品の場合、クリストバル石を適当な粒径(5〜50mm)に破砕し、十分に洗浄して泥分、粉鉱等を洗い流した後、乾燥させる。次いで、このクリストバル石破砕品を、有用細菌の芽胞を高濃度に培養した培養地に浸漬して、クリストバル石の微細な空隙に細菌の芽胞を吸着固定(着床)させる。この操作を複数回繰り返して、細菌の芽胞をクリストバル石空隙に充分に着床させる。その後これを121℃以下の温度で乾燥させて、水処理用濾材を得る。クリストバル石の破砕品に代えて、クリストバル石粉砕品を粒状や球状に成型して乾燥したものを用い、同様に細菌の芽胞を吸着固定(着床)させることもできる。この場合には、後述の成型品と異なり、成型時に数百℃の熱を加えても支障がないので、より硬度が高く耐水性に優れたものを得ることができる。
【0007】
次に成型品の場合、クリストバル石を粉砕(5〜400メッシュ)し、これに有用細菌の芽胞を加えて混練したものを、成型・乾燥させて得る。成型品(粒状や球状)の乾燥は、121℃以下で行なうことが望ましい。有用細菌の温度別培養試験では、たんぱく質分解有用細菌は70℃まで増殖生存した。ただ、有用細菌の芽胞は煮沸しても死滅せず、本発明の実験によると、121℃の殺菌箱に3日間保持した後でも、32℃培養箱内におくと3日後には発芽増殖した。従って、本発明では、有用細菌の芽胞を着床させたクリストバル石や、有用細菌の芽胞を混練した成型品の乾燥温度は、121℃までは安全である。
【0008】
尚、成型品は、水に浸漬した場合でも崩壊しにくいように、バインダーを用いる。バインダーとしては、水ガラス等の無機系のものや、フエノール系樹脂やPVAなど121℃程度では変質しない樹脂粉末等の有機系のものが用いられる。その使用割合は、全体量に対して1〜20%程度である。バインダーの量が少なければ崩壊防止効果が少なく、多くなり過ぎれば成型品が硬くなりすぎてシリカ溶出が妨げられるし有効成分が少なくなる。好ましくは、5〜10%程度である。
【0009】
ここで、クリストバル石を有用細菌の芽胞の担体に使用するのは、以下の理由による。即ち、クリストバル石は、準安定型シリカと呼ばれるクリストバライトが、90〜95%含有されている多孔質鉱物であり、水中においては、散気による流動や水流により、水中濃度2〜50ppm のシリカを溶出することを本発明者が確認している(JIS溶出試験法)。シリカは、有用細菌の細胞や芽胞の構成成分であり、その存在により有用細菌の増殖や芽胞化が促進される。クリストバル石以外には、硅藻土、ゼオライト、安山岩、火山性軽石等の可溶性シリカ含有材も使用可能であるが、溶出能等を勘案して、最も好ましいのはクリストバル石である。
【0010】
尚、有用細菌の増殖や芽胞化に必要なシリカ濃度は1〜100ppm 程度である。1ppm 程度以下だと有用細菌の増殖効果が劣る。より好ましくは1〜20ppm 、特に10〜15ppm 程度が最も好適な範囲である。破砕品(5/8mm粒)の場合、その500gを500mlの蒸留水とともに1リットルビーカーに入れ、散気管(0.2リットル/分)で24時間散気すると、溶解シリカ(SiO2 )51ppm を含有する処理水が得られた。これは、上記有用細菌の増殖に十分な量である。
【0011】
成型品の場合は、破砕品以上にシリカが溶解する。更に、溶解シリカ量を増大させようとすれば、混練時に、少量のシリカ系凝集液を加えてもよい。このシリカ系凝集液は、酸性液中に安定的に溶解するモノマーシリカを主成分とし、例えば、鉱滓を酸溶解することにより得られるものである。モノマーシリカは、経時的に重合−ゲル化してバインダーの役目を果たすとともに、水に出会うとゾル−ゲル状となり、有用細菌に摂取されて細胞や芽胞の構成成分となり、芽胞化を促進して高濃度化に資する。
【0012】
また、クリストバル石及び上記シリカ系凝集液には、有用細菌の芽胞の発芽から成長、再芽胞化のサイクル(世代交代時間)を短縮して高濃度化を促進するマグネシウムも豊富に含まれている。マグネシウムによる世代交代時間の短縮効果は目を見張るものがあり、好適な濃度の下では、通常10〜16時間のものが15〜40分程度に短縮できるほどである。もし不足する場合には、ドロマイトのような鉱物の粉砕品や多孔質溶融ドロマイト・タブレット(商品名アクドリット:アクドリット・ケミカル社製)、硫酸マグネシウム、珪酸マグネシウム等を、別途添加して成型すればよい。クリストバル石が破砕品の場合には、珪酸マグネシウム、ドロマイト破砕品やドロマイト溶融処理品を混合して使用すればよい。尚、生物活性平衡を越えて添加の必要なマグネシウムイオン濃度は、0.1〜50ppm であり、これより少ないと有用細菌の世代交代時間の短縮効果が少なく、多過ぎるとモノマーシリカの重合を促進する。
【0013】
一方、本発明の有用細菌は所謂バチルス属に属する細菌群のことを言う。有用細菌には、(a)澱粉を選択的に可溶化・分解資化する菌株、
(b)蛋白質・脂肪を選択的に可溶化・分解資化する菌株、
(c)澱粉・蛋白質・脂肪を選択的に可溶化・分解資化する菌株、
(d)澱粉・蛋白質・脂肪の何れも分解しない菌株、
がある。これは、有用細菌を単離培養し各菌株(32種、変種2種)について、それぞれ効能を調査した結果により確認したものである。この32種の内訳は、バチルス・チューリンゲンシス( Bacillus thuringiensis )が13種、バチルス・プミルス( Bacillus pumilus )が17種、バチルス・ズブチルス( Bacillus subtilis )が2種であった。脂質については、これら殆ど全ての菌株により分解される。また尿素は、処理の過程で容易にアンモニア2分子となり、アンモニアはトリカルボン酸回路により蛋白質合成にその大部分が消費される。尚、このアンモニアを直接分解資化する菌株も複数存在が確認されており、直接アンモニアを分解資化することもできる。他の悪臭成分である硫化水素は殆ど全ての菌株により分解されるし、メチルメルカプタンについても、分解する菌株が多く認められる。
【0014】
排水や浴湯中には、尿素や脂質分、難溶解性たんぱく質分、糖質分などの有機成分が含まれている。殊に、屎尿排水では、これらが主成分となる。従って、有用細菌の芽胞を着床或いは混練したクリストバル石製濾材で排水処理すると、排水中の有機物は完全に分解処理されるとともに、悪臭成分も分解される結果となる。尚、クリストバル石を無菌培地で培養すると、高濃度(108 個/gr)の有用細菌が認められた。このことは、本発明者によって初めて知得されたものであり、クリストバル石空隙に元々有用細菌の芽胞が保存されており、それが発芽したものと考えられる(電子顕微鏡5千倍、及び培養試験により確認済)。但し、この有用細菌の殆どは、培養機能検査の結果、その大部分が澱粉を選択的に可溶化・分解する菌株であることが判明している。従って、別途着床或いは混練する菌株は、これら以外のものに限ることもできる。
【0015】
ただ、クリストバル石空隙に元々保存されている有用細菌の芽胞は、クリストバル石の粉砕時にキルン温度が数百℃で処理されると、死滅してしまう。従って、キルン温度を121℃以下にして粉砕するか、或いは高温で粉砕された場合には有用細菌の芽胞は存在しないものとして、着床や混練する芽胞の種類や量を決定するとよい。
【0016】
一方、この有用細菌を用いた屎尿処理場において、何等の殺菌処理も行なっていないにもかかわらず、消化槽出口水やその汚泥中に、大腸菌やブドウ状球菌が不検出であることが明らかになった。他方、シヤーレ実験においても、寒天培地に大腸菌を植え、本処理汚泥をすり潰した液を塗布したものと、塗布しないものとを比較培養したところ、寒天培地のみの場合は大腸菌の大増殖があり、汚泥を塗布した水準では、大腸菌は完全に死滅していた。これは、有用細菌乃至は有用細菌の分泌物がこれらの腐敗菌を殺菌する効果を有しているの証明となる。また、これら芽胞形成菌及びその分泌物は、動植物の生体に対して無害である。例えば、有用細菌処理水により、岩魚の稚魚(1.5cm)100匹を試験養殖(0.3m3 槽)したが、2匹の死亡のみで、98匹は極めて順調な生育を示し、7ケ月で20〜25cm、1年経過時点で30cm以上の成魚に成長した。通常、この程度の水温と密度で飼育すると、歩留りは0になる。従って、本処理水が生体に対して無害であるばかりでなく、極めて有益なものであることが判る。また、ナットウ菌も本発明で言う有用細菌の1種である。このナットウ菌は、成長期の稲にも付着・生息しているが、稲の成長に何らの害も及ぼさない。そして、刈り取りののち藁を栄養として利用し増殖することから、生体への無害性は明らかである。
【0017】
更に、有用細菌の芽胞で構成する汚泥を、白菜、キャベツ、トマトの栽培畑地(根瘤病発生地域内)に、60t/1000m2 で鋤込んだ後、植苗したが、根瘤病の発生もなく、連作障害(青枯病)も発生せず、逆に1.5倍〜2.0倍の増収となった。また、試験圃場で水稲の栽培を行い、本処理場所放流水を引用して用いたが、960kg/1000m2 の結果を得ている。尚、本試験圃場では、施肥、消毒、殺虫は全く行なわず、除草のみを行なった。また、本引用水中には、25〜30ppm のT.N(トータル窒素)を含有していたが、稲作への影響は無かった。これは、有用細菌或いはその芽胞化に消費されたものと考えられる。
【0018】
従って、本発明の水処理用濾材は、上記した排水や浴湯の処理ばかりでなく、飲用水や殺菌消毒用の水を製造する場合にも極めて有効である。但しこの場合、被処理水が水道水など有機物が少ない清浄な水の場合、有用細菌の増殖に必要な栄養分として、少量のグルコースや砂糖、蛋白溶解物等を、被処理水に加える必要がある。
【0019】
尚、本発明に使用する有用細菌の芽胞は、芽胞を高濃度に含む乾燥汚泥や発酵汚泥コンポストの形で提供される。ここに 乾燥汚泥とは、有用細菌の芽胞を高濃度に含む汚泥を脱水し、更に貯蔵や搬送に便利なように乾燥したものである。また発酵汚泥とは、脱水後に発酵させたもので、脱水汚泥の状態で発酵させて負荷(原生動物死骸)の分解と無臭化を行なったものである。また、コンポストについては、完熟コンポスト(芽胞の固まり)を用いた。そして、クリストバル石破砕品に着床させる場合には、例えば、汚泥を水に溶かした液に破砕品を投入し、攪拌、曝気して処理する。成型品の場合には、クリストバル粉末に汚泥粉末を混合して処理する。
【0020】
【実施例】
(実施例1:破砕品)
クリストバル石を適当な粒径(5〜50mm)に破砕し、十分に洗浄して泥分、粉鉱等を洗い流した後、乾燥させる。この破砕品を、3kg準備する。これを、有用細菌の芽胞を109 個/ml以上含む発酵汚泥1kgを水10リットルに溶かしたものに投入し、散気を行ないながら20分間攪拌しつつ浸漬する。この操作を複数回繰り返す。次いで、引き揚げたのち121℃以下の温度で乾燥させる。かくして、図1に示すように、クリストバル石破砕品1の表面や破れ目に存在する微細空間に無数の有用細菌の芽胞2が着床した水処理用濾材3が得られる。
【0021】
得られた水処理用濾材3を、図2に示す家庭風呂用の恒温浄化装置等に組み込まれる小型濾過器に充填して、風呂水の循環浄化を行なった。この小型濾過器4は、底部に浴湯導入口5、蓋部に浴湯排出口6を備えた筒型容器7(容量3.1リットル)の内部に網容器8を収納したものである。そして、この網容器8内に上記水処理用濾材3を1.0kg、ドロマイト破砕品9を0.2kg、その他の濾材として、麦飯石、ゼオライト等を1.5kg、及び不織布フイルター10を順次下方から充填したものである。尚、循環水量は1リットル/分、濾過筒内滞留時間は約3分である。
【0022】
この小型濾過器(循環濾過装置)を組み込んだ恒温浄化装置を、容量250リットル槽(家庭用2人用風呂)に設置して平成5年3月1日より連続運転テストを行った(平成7年4月末まで)ところ、浴湯の清浄度、透明度に変化もなく、悪臭の発生も全くなかった(もっとも、洗い湯分は追加した)。更に濾過器内部の点検を行ったところ、水処理用濾材表面は有用細菌及びその芽胞のコロニーが85%を占める優先化が進行していた。また、繊維フィルターには、担体を離脱したバクテリアが引っ掛かっており、生物処理が充分に行われたことを示した。尚、風呂水中のシリカ(SiO2 )濃度は44ppm 、マグネシウム(MgO)濃度は17.5ppm であり、また、T・Nは3.7ppm 、T・Pは2.6ppm 、N−ヘキサン抽出物は1ppm 以下、透視度は50cm以上であった。
【0023】
(実施例2:成型品その1)
クリストバル石を適当な粒径に破砕し、十分に洗浄して泥分、粉鉱等を洗い流した後、乾燥させる。このクリストバル石破砕品を粉砕(5〜400メッシュ)する。この粉砕品1kgに、有用細菌の芽胞を109 個/ml以上含む発酵汚泥を粉砕したもの100gと、水ガラス30g、硫酸9g、及び適量の水を加え十分に混練したものを、整粒し、121℃以下の温度で、乾燥させる。かくして、図3(a)に示すように、クリストバル石粉砕品11と有用細菌を含む発酵汚泥粉砕品12が混合成型された水処理用濾材14Aが得られる。
【0024】
(実施例3:成型品その2)
クリストバル石を適当な粒径に破砕し、十分に洗浄して泥分、粉鉱等を洗い流した後、乾燥させる。このクリストバル石破砕品を粉砕(5〜400メッシュ)する。この粉砕品1kgに、有用細菌の芽胞を109 個/ml以上含む発酵汚泥を粉砕したもの100gと、フエノール系樹脂粉末(商品名ベルパール:鐘紡製)100gと、シリカ系凝集液100ml、及び適量の水を加え十分に混練したものを、整粒し、121℃以下の温度で・乾燥させて水処理用濾材を得る。
【0025】
(実施例4:成型品その3)
有用細菌の芽胞を109 個/g以上を含有する生汚泥100gに、シリカ系凝集液(鉱滓の酸溶解物:モノマーシリカ1,000〜30,000ppm 含有)の適量(1〜5V/V%)を加えて脱水成型したのち、121℃以下の温度で乾燥させて、水処理用濾材を得る。
【0026】
実施例2及び実施例3で得られた水処理用濾材の各1.5kgを図4に示すコンデンサー15に入れ、浴湯をポンプPで循環した(流速1リットル/分)。図中符号16はステンレス網、17は吸引管、18は送出管、19は浴槽である。この状態で、1ケ月連続運転しながら入浴を続けた。次いで、濾材表面に発生した汚泥を培養試験した結果、1×109 /grの有用細菌が認められた。また、1×105 /grの大腸菌が認められ、有用細菌の優先化が認められた。
【0027】
(実施例5:成型品その4)
クリストバル石粉砕品(5〜400メッシュ)800gとドロマイトの粉砕品(5〜400メッシュ)200gを使用し、他は実施例3と同様に処理した。かくして、図3(b)に示すように、クリストバル石粉砕品11と有用細菌を含む発酵汚泥粉砕品12、及びドロマイト粉砕品13が混合成型された水処理用濾材14Bが得られる。得られた水処理用濾材14Bを、図5に示す簡易形給水装置に充填して、消毒や殺菌に使用する水を製造した。この簡易形給水装置20は、有底有蓋の筒型容器21の下部に給水管22、中頃位置に送出管23を備え、その内部に、ステンレス製網かご24を収納している。この網かご24には、上記水処理用濾材14Bを下部に充填し、上部には麦飯石破砕品(5〜20mm)25を充填した。符号26は散気管、27はヒーターである。
【0028】
この簡易形給水装置20に、水道水W1を注水し、同時に少量のペプチン、牛肉エキス、グルコース、砂糖、食塩等を添加投入し、加温(45℃)と曝気を約12時間行なった。この処理水W2で嗽したところ、口内炎、歯周炎は1日で完治した例が多い。また、院内感染で問題になっている黄色葡萄状球菌も、この処理水を入れた寒天培地では完全に死滅することが確認されている。
【0029】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の製造方法によって製造された水処理用濾材は、クリストバル石の破砕品に好気性で芽胞を形成するバチルス属の細菌の芽胞を着床させたり、クリストバル石の粉砕品に好気性で芽胞を形成するバチルス属の細菌の芽胞を加えて成型したものである。従って、以下に述べるように種々優れた利点を有する。
(1)好気性で芽胞を形成するバチルス属の細菌(有用細菌)の芽胞と、その増殖や再芽胞化に必要なミネラル分が一体化されしかも乾燥状態にあるため、保存や取扱に極めて便利である。
(2)特に成型品の場合、角張りが少なくて流体抵抗が少ないうえ、有用細菌の芽胞の濃度が調整でき、高濃度のものが容易に得られる。
(3)また、破砕品、成型品とも、そのまま水処理装置に充填して使用すれば、発芽後栄養分を分解し増増殖し、有用細菌から産出される分泌物に由来する殺菌能により有用細菌の優先化が容易に進行する。
(4)従って、各種排水の処理において、栄養分解に関わる有用細菌濃度を常に高濃度に保持できるため、負荷変動、流入量の変動に対しても常に安定した処理が、悪臭の発散もなく容易確実に行なわれる。
(5)また浴湯処理に用いた場合、有用細菌の活発な栄養活動により浴湯中の老廃物が完全に除去されるとともに、有用細菌の優先化が起こって大腸菌その他の病原菌の繁殖が抑えられ極めて衛生的であり、循環使用する浴湯の清浄化が、長期に渡って維持される。
(6)更に、清浄水あるいは排水を処理すれば、大腸菌その他の病原菌が除去され且つ殺菌能のある処理水が得られるので、飲用水や殺菌・消毒に適した水が容易に製造できる。
【0030】
また、本発明方法は、有用細菌の芽胞を高濃度に含む液にクリストバル石破砕品を浸漬したり、クリストバル石粉砕品に有用細菌の芽胞含有物粉砕品を混練して成型した後、有用細菌の芽胞が耐えうる温度(121℃)以下の温度で乾燥するものである。従って、特別な技術も必要なく、有用細菌の芽胞を高濃度に含む水処理用濾材を容易且つ安価に得ることができる。また、大量生産に向く利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水処理用濾材の一部を拡大した、一例を示す斜視図である。
【図2】本発明方法に用いる、小型濾過器の一例を示す概略断面図である。
【図3(a)】本発明の水処理用濾材の一部を拡大した、他の例を示す断面図である。
【図3(b)】本発明の水処理用濾材の一部を拡大した、更に異なる他の例を示す断面図である。
【図4】本発明方法に用いる、コンデンサーの一例を示す断面図である。
【図5】本発明方法に用いる、簡易形給水装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 クリストバル石破砕品
2 有用細菌の芽胞
3 水処理用濾材
4 小型濾過器
9 ドロマイト破砕品
10 不織布フイルター
11 クリストバル石粉砕品
12 発酵汚泥粉砕品
13 ドロマイト粉砕品
14 水処理用濾材
20 簡易形給水装置
25 麦飯石破砕品
W1 水道水
W2 処理水
Claims (3)
- クリストバル石の破砕品、またはクリストバル石粉砕品を成型して乾燥した成型物を、好気性で芽胞を形成するバチルス属の細菌の芽胞を含む汚泥を溶かした水に投入し、散気を行ないながら撹拌しつつ浸漬したのち、乾燥させて、前記細菌の芽胞を着床させることを特徴とする水処理用濾材の製造方法。
- クリストバル石の粉砕品と、好気性で芽胞を形成するバチルス属の細菌の芽胞を含む汚泥と、水ガラスと、硫酸に、水を加えて混練し、整粒して乾燥させることを特徴とする水処理用濾材の製造方法。
- クリストバル石の粉砕品と、好気性で芽胞を形成するバチルス属の細菌の芽胞を含む汚泥と、フェノール系樹脂粉末と、シリカ系凝集液に、水を加えて混練し、整粒して乾燥させることを特徴とする水処理用濾材の製造方法。
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