JP3679986B2 - フライアッシュの有効活用方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として石炭火力発電所で発生するフライアッシュの有効活用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製鉄所では、構内に設置される石炭火力発電所からフライアッシュが発生するが、このフライアッシュは1〜10μm程度の大きさの微粉であって、取扱が不便なうえに複雑な工程と多大な労力、経費をかけて処分せねばならない。また、製鉄所では、鉄の酸化スケール、溶断屑、スカーフィング屑等が発生するが、これら鉄の酸化スケール、溶断屑、スカーフィング屑、ダスト等は酸化鉄等の鉄分を含有するにもかかわらず品位が低いために、利用価値のない鉄分含有廃棄物として経費をかけて処分していた。
【0003】
また、一般廃棄物、産業廃棄物として処分されていた廃プラスチックおよび製紙スラッジはは、600〜800℃程度で燃焼させるとダイオキシンを発生して環境を著しく悪化させるし、埋め立て処分する場合においてもその量が大量であるので処分場の確保が困難であり、さらに、鋳型の造形に使用される珪砂などの鋳物砂は篩をかけてある程度の大きさ以上の粒径を有するもののみは選別再使用されているが、その粒径より小さい鋳物砂は廃砂として処分されており、また、コピー印刷に使用済みの微粒炭素を主体とする廃トナーも殆ど利用価値のないものとして廃棄処分されている現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとするところは上記した従来の問題点を解決し、従来処分に苦慮していたフライアッシュを、これまで利用価値の低かった鉄分含有廃棄物、廃プラスチック、廃砂、廃トナーとともに資源として有効に活用できるようにしたフライアッシュの有効活用方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、フライアッシュに、鉄分含有廃棄物、廃砂、廃プラスチック、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を混合したうえ造粒してペレットとし、このペレットを溶銑予備処理されて転炉に搬送される溶銑移送鍋中の溶銑上に投入することにより溶銑表面を覆って溶銑を保温するとともに、溶融スラグの塩基度を調整することを特徴フライアッシュの有効活用方法と、同じくフライアッシュに、鉄分含有廃棄物、廃砂、廃プラスチック、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を混合したうえ造粒してペレットとし、このペレットを、溶銑予備処理された転炉内の溶銑上または電気炉内の溶鋼上に溶銑または溶鋼表面を覆うように投入し、このペレット中のCの燃焼熱を熱源として溶銑または溶鋼を加熱するとともに、溶融スラグの塩基度を調整することを特徴とするフライアッシュの有効活用方法とよりなるものである。
【0006】
本発明のフライアッシュの有効活用方法は、製鉄所構内に設置される石炭火力発電所から多量に発生して処分に困っていたフライアッシュを主材としてこれに、同じく製鉄所などで発生する鉄分含有廃棄物や、一般処理場で回収される廃砂、廃プラスチック、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を混合したうえ造粒してペレットとする。そして、このペレットを溶銑予備処理されて転炉にまで搬送される溶銑移送鍋中の溶銑上に投入し、これにより溶銑の表面を覆って温度の低下を小さく抑えるとともに、フライアッシュのSiO2 を溶融スラグ中に溶融させることにより溶融スラグの塩基度を調整することができるようにするか、前記したペレットを溶銑予備処理された転炉内の溶銑上または電気炉内の溶鋼上に投入、または、出鋼後の溶湯上に保温材として投入して、ペレット中のCを燃焼して発生させた熱エネルギーを利用して溶銑または溶鋼を加熱するとともに、溶融スラグの塩基度を調整するようにしたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では 先ず、製鉄所構内などに設置される石炭火力発電所から多量に発生したフライアッシュに、同じく製鉄所構内で発生した鉄の酸化スケール、溶断屑、スカーフィング屑等の鉄分含有廃棄物と、廃プラスチック、廃砂、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を混合し、これに水を添加してフライアッシュに粘結性を付与したうえ造粒機により粒径3〜20mm程度のペレットに造粒する。
【0008】
図1は、造粒機の1種である造粒パン(パンペレタイザー)によるペレット製造工程を示す図であって、原料投入路1を介してフライアッシュに、鉄分含有廃棄物、廃プラスチック、廃砂、廃トナーのうちの少なくとも一種を添加混合し、この混合原料を造粒パン2に投入し、必要に応じ水を追加して、造粒パン2を回転させることによって粒径3〜20mm程度のペレット3を造粒することができる。ペレット3はその後、乾燥炉4中を通過して乾燥される。なお、本発明におけるペレット3は溶銑上に浮かぶことさえできればその目的は達せられるので、溶銑上に浮くことのできる比重であればよく、その比重に何ら制限はないものであるが、保温効果上は熱伝導性を低く抑えるために気孔率の高いものが望ましい。気孔率向上の目的で製紙スラッジとフライアッシュを混合したうえで、前記のごとく造粒して、溶鋼の熱でスラッジを燃焼させることで、燃焼後完成した気孔が熱伝達を阻害し、保温効果を高める。
【0009】
ところで、製鋼の一貫製造工程として、溶銑予備処理炉→溶鋼移送鍋→転炉→連続鋳造の工程により鋼を製造する工程がある。このような一貫製造工程においては、先ず溶銑予備処理炉において、溶銑の温度、約1350℃で、溶融スラグの塩基度(CaO/SiO2 )を2.1程度として、脱硫、脱珪、脱燐処理が施されるが、この溶銑予備処理によって溶銑中の硫黄、燐を所定の含有量にまで低下させることができるが、溶銑中の炭素量は初期4.3%(質量%、以下同じ)から3%程度にまで低下するとともに、0.3〜0.5%含有されていた珪素は殆ど脱珪されて溶銑中の珪素濃度は殆どゼロになってしまうので、その後SiO2 分を添加しないかぎり溶融スラグの塩基度を調整することはできない。
【0010】
また、溶銑予備処理された溶銑は、溶銑移送鍋に注入されてディーゼルカー等により牽引輸送されて転炉にまで運搬されるが、その輸送には約30分ほどを要し、その間に約1350℃であった溶銑は0.5℃/分程度で降温し、約15℃も温度が低下することになる。溶銑は200〜400トンにも及ぶものであるので、その温度降下による熱エネルギーのロスは多大なものである。
【0011】
そこで、本発明においては前記した工程で造粒、乾燥されたペレットを溶銑移送鍋中の溶銑上に保温剤として投入する。投入されたペレットは保温剤として溶銑の温度低下を約半分に抑えることができるとともに、殆ど脱珪されてSiO2 を製造することが困難な溶銑上に浮かんで下層部分が溶融して初期溶融スラグを形成し、溶融スラグにSiO2 分を供給することができる。フライアッシュに廃砂を添加した場合には、この廃砂からもSiO2 分を供給することができる。また、フライアッシュに廃プラスチックを添加した場合には、十分高温で廃プラスチックを完全燃焼させることができ、600〜800℃程度で不完全燃焼させた場合のようにダイオキシンを発生させることなく、その燃焼熱により溶銑を効果的に保温することができる。製紙スラッジを添加すると気孔率が高まり、保温性が向上する。
【0012】
溶銑移送鍋により転炉にまで運搬された溶銑は、転炉で酸素吹錬することにより脱炭され、その後、さらに脱硫、脱燐等の成分の微調整、鉄歩留り、Mn歩留り向上のために、スラグの塩基度を調整する必要があるが、上述したとおり溶銑中には珪素は殆ど含まれていないため、溶融スラグの塩基度調整にはCaOとともにSiO2 を外部より添加する必要がある。従来は珪石を蛍石やアルミ灰等の滓化促進剤とともに転炉中の約1300〜1650℃の溶銑に投入して溶融スラグの塩基度を3.5〜4に調整していた。
【0013】
上記したような従来の溶融スラグの塩基度調整方法に対して、本発明においてはフライアッシュに、鉄分含有廃棄物、廃プラスチック、廃砂、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を添加して造粒したペレットを、溶銑移送鍋中の溶銑上に投入して初期溶融スラグを形成し、溶融スラグにSiO2 分を供給することができる。その後転炉にてCaOを投入したり、さらに上記ペレットを投入することにより溶融スラグの塩基度を調整することができる。
【0014】
また、ペレットを溶銑移送鍋に投入することなく、直接溶銑予備処理された転炉内の溶銑上にCaOとともに添加することもできる。フライアッシュは、SiO2 60〜80%、Al2 3 30〜15%、C 20〜5%を含有するものであるから、フライアッシュをSiO2 やAl2 3 の供給源として有効に活用することにより、珪石やアルミ灰の使用量を削減することができる。また、蛍石のような有害なフッ素を発生するような鉱石を用いる必要もない。また、フライアッシュは、上記したようなSiO2 とAl2 3 の混合物であるからSiO2 、Al2 3 単体よりも融点が低く滓化性が良好である。また、フライアッシュ中のCは熱源として有効に溶銑を加熱することができ、従って、フライアッシュを構成する全成分を無駄なく有効に活用することができる。
【0015】
さらに、電気炉においても溶鋼にSiが存在しない場合に、本発明のペレットを投入することにより、経済的に溶鋼を加熱して、溶融スラグの塩基度を調整することができる。以上のようにして成分調整された溶鋼は連続鋳造工程に搬送されて、連続鋳造機により連続的にスラブやブルーム等の鋳片に鋳造される。
【0016】
なお、ペレットに鉄の酸化スケール、溶断屑、スカーフィング屑、ダスト等の鉄分含有廃棄物が混合されている場合には、ペレット中の酸化鉄が鉄に還元されて、鉄の歩留りを向上させることができる。酸化鉄の還元は、例えば次のような反応式により進行する。
【化1】
Figure 0003679986
上記反応式は吸熱反応であるから、外部から熱エネルギーを供給することにより反応を促進させることができる。従って、フライアッシュ中のC、製紙スラッジ中のC:廃トナーにおけるC,廃プラスチックを燃焼させることによって、上記反応に反応熱を供給することができて、酸化鉄の反応を促進することができ、鉄の歩留りを向上させることができる、なお、発生したCOガスは、未燃焼のLDG(転炉ガス)として回収し焼鈍炉において燃焼させることにより、省エネルギーにて有効に鋼板を加熱することができる。
【0017】
【実験例】
【表1】
Figure 0003679986
なお、前記実験例における副材料欄のAは鉄分含有廃棄物、Bは廃砂、Cは廃プラスチック、Dは廃トナーである。
【0018】
【発明の効果】
本発明は前記説明から明らかなように、火力発電所で多量に発生するフライアッシュに、鉄分含有廃棄物、廃砂、廃プラスチック、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を混合したうえ造粒してペレットとし、このペレットを溶銑予備処理されて転炉にまで搬送される溶銑移送鍋中の溶銑上に投入することにより、溶銑を保温することができるとともに、溶融スラグの塩基度を調整することができ、こたれにより珪石、アルミ灰の使用量を削減することができる。
また、前記したペレットを、溶銑溶銑予備処理された転炉内の溶銑上または電気炉内の溶鋼上に投入して、ペレット中のC、廃プラスチックを燃焼して発生させた熱エネルギーを利用して溶銑または溶鋼を加熱するとともに、スラグの塩基度を調整することができるうえに、上記熱エネルギ−により酸化鉄の還元反応を促進して、鉄分含有廃棄物中の酸化鉄から鉄を回収して、鉄の歩留りを向上させることができる。また、酸化鉄の還元により発生したCOガスを、未燃焼のLDGとして回収し焼鈍炉において燃焼させることにより、省エネルギーにて有効に鋼板を加熱することができることとなる。
従って本発明は工業的価値大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】造粒パンによる造粒工程を示す図である。
【符号の説明】
1 原料投入路
2 造粒パン
3 ペレット
4 乾燥炉

Claims (2)

  1. フライアッシュに、鉄分含有廃棄物、廃砂、廃プラスチック、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を混合したうえ造粒してペレットとし、このペレットを溶銑予備処理されて転炉に搬送される溶銑移送鍋中の溶銑上に投入することにより溶銑表面を覆って溶銑を保温するとともに、溶融スラグの塩基度を調整することを特徴とするフライアッシュの有効活用方法。
  2. フライアッシュに、鉄分含有廃棄物、廃砂、廃プラスチック、製紙スラッジ、廃トナーのうちの少なくとも一種を混合したうえ造粒してペレットとし、このペレットを、溶銑予備処理された転炉内の溶銑上または電気炉内の溶鋼上に溶銑または溶鋼表面を覆うように投入し、このペレット中のCの燃焼熱を熱源として溶銑または溶鋼を加熱するとともに、溶融スラグの塩基度を調整することを特徴とするフライアッシュの有効活用方法。
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