JP3679069B2 - 植物栽培用の植え込み材とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として水苔に代わって使用される植物栽培用の植え込み材に関し、特に、洋ランや観葉植物、花卉、果菜類等の培地として、鉢やプランターなどの容器に入れて栽培する鉢物栽培に最適な植え込み材に関する。
【0002】
【従来の技術】
水苔は、洋ランや観葉植物等の植物栽培用の植え込み材として好んで使用されている。水苔が、植物の植え込み材として極めて優れた物性を有するからである。にもかかわらず、近年、水苔に代わって、軽石やピートモス等の植え込み材が使用される割合が増加している。それは、水苔の採集に手間がかかるために、そのコストが著しく高騰していることが原因である。ただ、水苔は、水分を多量に保持する保水性に優れており、しかも多くの隙間があって優れた通気性もあり、他の植え込み材では実現できない極めて優れた特性があるので、植え込み材として水苔に代わって軽石やピートモスなどを使用すると、植物の根にとって必要量の酸素や水を含む培地の環境を保持することが水苔に比べ非常に困難となり、最適な水管理を行うのに手間がかかることになる。水管理を誤ると、過湿害による根腐れや水不足によって葉先が枯れるなどの症状を引き起こし収量が減少する。いくら最適とされる水管理を行ったとしても植え込み材の物性が悪いと、植物の根や葉にとって充分な生育環境を保持できない。例えば、植え込み材の通気性や排水性が悪いと、水管理では対処できずに、根が酸素欠乏状態になり過湿害などを引き起こすことになる。このことにより、水苔は洋ラン等の植物以外の植物、例えば観葉植物や花卉等の栽培の培地として好ましい植え込み材である。ところが、他の培地に比較して高価であるので使用されない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
水苔は、以上のように、種々の植物の生育環境を良くすることからすれば、極めて優れた特性を示す。ただ、植え込み材として全ての条件を満足するのではなく、欠点もある。それは、水苔は酸性が強く、しかも酸性が経時的に次第に強くなる傾向があるのと腐食が速いために、1〜2年に一度の割合で新しい水苔に植え替えする必要があるからである。高価な水苔を短い期間で植え替えすることは、栽培に手間がかかるばかりでなく、植え込み材のランニングコストをさらに高騰させる。
【0004】
さらに、水苔の欠点としては、完全に乾燥した状態で水やりすると吸水性が悪い。一度乾燥した水苔は、もう一度時間をかけて吸水できる湿潤な状態にする必要がある。この状態でさらに散水して充分に吸水させる必要がある。このため、散水に時間がかかり、短時間の散水では、吸水できない欠点がある。
【0005】
これに対して、軽石は多孔質な無機質材であるから、酸性が強くなることがなく、また散水すると速やかに吸水する。しかしながら、軽石は前述したように、植え込み材として最も大切な、保水性等の物性が水苔に劣る欠点がある。
【0006】
本発明は、従来の植え込み材が有するこのような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、水苔に勝るとも劣らない優れた物性を有するにもかかわらず、安価に多量生産でき、しかも安定供給が可能である植物栽培用の植え込み材とその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の大切な目的は、水やりを簡単にできると共に、植物の生産性にも優れ、さらに使用できる期間を長くして、ランニングコストを著しく低減できる植物栽培用の植え込み材とその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の植物栽培用の植え込み材は、合成繊維を含む繊維で編み組みされた織布の廃棄屑を開繊してなる繊維屑を立体的に集合すると共に、集合された繊維間に無数の空隙が存在する状態にプレスして、プレス状態で繊維の交点をバインダーで結合してなる繊維マットを、所定の大きさであって一定の定まった形状ではない不特定なランダム形状の繊維粒に破砕している。
【0008】
繊維粒の平均粒径は、3〜30mm、好ましくは5〜20mmとすることができる。バインダーは、低融点の合成繊維とすることができる。さらに、繊維屑をポリエステル系合成繊維として、バインダーを低融点のポリエステル系繊維とすることができる。繊維屑は、80重量%以上のポリエステル系合成繊維を含むことができる。
【0009】
さらに、本発明の請求項7の植物栽培用の植え込み材の製造方法は、合成繊維を含む繊維で編み組みされた織布の廃棄屑を開繊してなる繊維屑に加工する工程と、繊維屑を立体的に集合すると共に、集合された繊維間に無数の空隙が存在する状態にプレスして、プレス状態で繊維の交点をバインダーで結合してなる繊維マットとする工程と、繊維マットを所定の大きさであって一定の定まった形状ではない不特定なランダム形状の繊維粒に破砕する工程とからなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための植物栽培用の植え込み材とその製造方法を例示するものであって、本発明は植え込み材とその製造方法を下記のものに特定しない。
【0011】
本発明の植物栽培用の植え込み材は、洋ランや観葉植物、あるいは花卉、果菜類を栽培するための培地として極めて優れた物性を示す。ただ、本発明の植え込み材は、これ等以外の植物の栽培にも使用できるので、栽培する植物を特定しない。
【0012】
植え込み材は、原料コストを低減して安価に多量生産し、安定供給を可能とすると共に、廃棄物を有効に再利用するために、織布の廃棄屑を原料に使用する。ただし、本発明の植え込み材は、織布の廃棄屑に、繊維屑でない新しい繊維を混合することもできるのは言うまでもない。とくに、植え込み材の物性をより向上し、また繊維屑を結合するためのバインダーとして、新しい繊維が添加される。ただ、新しい繊維の添加量が多くなると、植え込み材の原料コストが高くなる。このため、新しい繊維の添加量はできるかぎり少なく、たとえば50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下とする。
【0013】
植え込み材は、合成繊維と天然繊維の繊維屑で製作される。合成繊維は腐食しないので耐久性に優れ、天然繊維は腐食して自然に消失する。このため、合成繊維の混合率の高い植え込み材は、耐久性があって使用期間を長くできる。反対に、天然繊維の混合率の高い植え込み材は、自然に消失できる特長がある。したがって、耐久性が要求される植え込み材は合成繊維の混合率を高くし、自然に消失させる植え込み材は天然繊維の割合を多くする。一般的に使用する場合においては、合成繊維の混合率を高くし、優れた耐久性の植え込み材が便利に使用できる。したがって、植え込み材は、合成繊維の混合率を好ましくは50重量%以上とし、さらに好ましくは60重量%以上とし、最適には70重量%以上とする。とくに、合成繊維を100%とする植え込み材は、極めて優れた耐久性があって、長い年月にわたって優れた特性を失わない。植え込み材の合成繊維として、ポリエステル系合成繊維がとくに優れている。ポリエステル系合成繊維は、強靭で耐久性に富み、しかも耐薬品性に優れているので、極めて長い期間、安定して使用することができる。ただし、合成繊維には、ポリアミド系合成繊維やポリアクリル系合成繊維等の繊維も使用できる。
【0014】
織布の廃棄屑を利用して製造される植え込み材は、以下の工程で製造される。
(1) 廃棄屑の開繊工程
膨大な量の織布の廃棄屑が縫製工場等で発生している。織布の廃棄屑は、合成繊維と天然繊維を含むものであるが、ほとんどの廃棄屑は合成繊維の混合率が高い。合成繊維の混合率の高い廃棄屑は、耐久性のある植え込み材の原料として適している。織布の廃棄屑は、開繊して繊維状の繊維屑に加工できる。開繊は、例えば、織布の廃棄屑を表面から無数の針で引っかいて繊維状に加工する。ただ、本発明は、廃棄屑の開繊方法をこの方法には特定しない。廃棄屑は、他の種々の方法で開繊できるからである。織布の廃棄屑を繊維屑に加工する方法は、現在使用され、あるいはこれから開発される全ての方法を利用できる。
【0015】
(2) 繊維マットに加工する工程
開繊された繊維屑は立体的に集合される。集合された繊維は、繊維の間に無数の空隙が存在する状態にプレスされる。そして、プレス状態で繊維の交点がバインダーで結合されて繊維マットに加工される。繊維屑は、立体的に集合されるとき、繊維の方向が揃わないように方向性なく集合される。繊維は、移動しているベルトの上に落下されて所定の厚さに集合される。集合された繊維屑は、ニードルパンチやウォータージェット等の方法で、繊維を絡ませることができる。この状態で集合された繊維は、繊維間の空隙が多すぎる。植え込み材は、毛細管現象で繊維の微細な空隙に吸水する。繊維の空隙を小さくするために、集合された繊維屑はプレスされる。プレス圧が高すぎると、繊維屑の間の空隙がなくなるので、集合された繊維間に無数の空隙が存在する状態にプレスされる。繊維屑がプレスされる状態で、繊維はその交点を結合してプレス状態に硬化させる。
【0016】
繊維を交点で結合するために、集合する繊維屑にバインダーが添加される。バインダーとして、低融点で溶融するバインダー繊維が使用できる。バインダーにバインダー繊維を使用すると、繊維屑に均一に混合できる。このため、バインダーを繊維屑の内部に均一に分散して、繊維を交点でしっかりと連結できる。バインダー繊維は、低融点のポリエステル系繊維が使用できる。繊維屑にポリエステル系合成繊維を使用し、バインダー繊維に低融点のポリエステル系繊維を使用すると、全体をポリエステル系合成繊維とする植え込み材が製作される。この植え込み材は、繊維屑とバインダー繊維との相性が良く、耐久性があって優れた特性にできる。ただし、バインダー繊維には、ポリエステル系繊維以外の合成繊維であって、低融点で溶融する全ての繊維、たとえば、ポリプロピレン繊維等も使用できる。
【0017】
バインダー繊維は、集合された繊維屑を加圧する状態で加熱されると、溶融して繊維屑を結合する。加圧状態においては、バインダー繊維を溶融し、繊維屑を溶融させない温度に加熱して、繊維屑を結合する。バインダー繊維を加熱するために、加圧状態で、繊維の間に加熱された空気を強制的に送風し、あるいは加圧する前に繊維に加熱空気を送風する。加圧する前に加熱する方法は、コールドプレスで加圧して、バインダー繊維で繊維を結合できる。ただし、ホットプレスの熱板で加熱して加圧するここともできる。この場合、一定の時間は加圧状態に保持して、内部まで充分に加熱する。
【0018】
バインダー繊維の添加量は、例えば全体の5〜30重量%とすることができる。バインダー繊維の添加量が少ないと、繊維を十分に結合させることができなくなるおそれがあり、バインダー繊維の添加量が多すぎると、繊維の間の空隙率が低下するおそれがある。所定の厚さに集合した繊維をプレスして薄くする割合は、用途によって最適値に設定されるが、例えば、集合した状態の厚さに対して10〜50%、好適には約20%とする。集合した繊維を10%以下に圧縮すると、空隙率が低下して、排水性と通気性と保水率が低下する。反対に50%よりも厚く圧縮すると、空隙が大きくなって吸水率が低下する。したがって、繊維の集合体をプレスする度合いは、保水性と排水性と吸水性を考慮して、栽培する植物に最適な値とすることが望ましい。圧縮して繊維を結合してなる繊維マットの厚さは、例えば、0.2〜5cm、好ましくは0.5〜3cmである。
【0019】
繊維屑の結合には、バインダー繊維に代わって、未硬化の状態では液状又はペースト状であるバインダーも使用できる。この場合、例えば、繊維マットを構成する繊維を集合させる際に、その繊維に対し液状又はペースト状のバインダーを噴霧し、その後、繊維の集合体をプレスしてバインダーを硬化させることにより繊維を結合させて繊維マットを得ることができる。
【0020】
また、繊維マットは、繊維の空隙に肥料や保持材を添加することができる。この繊維マットは、繊維の集合体中に、粒状又は粉状の肥料や保持材を分散させた状態で、それを所定の圧力でプレスし、繊維の間に無数の空隙ができる状態で繊維の交点をバインダーで結合させることにより得ることができる。この繊維マットは、植物を生育させる際の肥料及び保持材を予め備えている。保持材は、水に溶出した肥料の一部を一旦保持した後、徐々にその肥料を放出するものである。このような保持材としては、パーライト、セラミック、ゼオライト(塩基置換容量の多いもの)等であって、肥料を保持し得ると共に保持した肥料を徐々に放出するものを用いることができる。パーライトには、例えば、黒曜石パーライト、真珠岩パーライト等が使用できる。セラミックやゼオライトは、粒状又は粉状に粉砕したものを使用する。このような保持材を用いることにより、肥料が栽培植物に対し相当期間にわたり供給されることになる。肥料を保持した保持材は、繊維の隙間から移動しない大きさの粒とすることが望ましい。
【0021】
(3) 繊維マットの破砕工程
繊維マットを、所定の大きさであって、一定の定まった形状ではない不特定なランダム形状の繊維粒に破砕して植え込み材とする。繊維マットは、マット全体を破砕して繊維粒とすることもできるが、繊維マットを他の用途に使用する場合は、繊維マットを裁断するときに発生する耳屑を破砕して繊維粒とすることもできる。繊維マットは、たとえば、所定の形状に裁断して植物の栽培マット等として使用できる。繊維マットを所定の形状に裁断するとき、繊維マットの端部が裁断されて耳屑となる。この裁断屑である耳屑を集めて繊維粒に破砕して植え込み材とすることができる。このように、裁断屑である耳屑を破砕して繊維粒とする方法は、裁断屑を無駄にすることなく繊維マット全体を有効に利用して廃棄屑を皆無にできる。繊維粒である植え込み材は、平均粒径を例えば3〜30、好ましくは5〜20mmとする。さらに、好ましくは、大きな繊維粒と小さい繊維粒を混在したものとする。
【0022】
さらに、植え込み材は、繊維マットを繊維粒に破砕した後、肥料や保持材を混入することもできる。この植え込み材は、破砕工程でランダム形状に破砕された繊維粒に、粒状又は粉状の肥料や保持材を混入してブレンドする。繊維粒に混入される保持材には、前述のパーライト、セラミック、ゼオライト等が使用できる。これらの保持材は、水に溶出した肥料の一部を一旦保持した後、徐々に放出するので、栽培植物に対して肥料を長期間にわたって供給できる。これらの保持材及び肥料は、単独で使用することも、これらを複合した複合材として混入することもできる。このように、植物を生育させる際の肥料及び保持材がブレンドされた植え込み材は、植物をより理想的な状態で栽培できる特長がある。
【0023】
以上の植え込み材は、図1に示すように、植物の栽培容器2に入れられて植物3を栽培する。栽培容器2に充填された植え込み材1は、繊維マットを粒状に破砕しているので、隣接する植え込み材1との間に隙間ができる。この隙間は、空気をスムーズに通過させる。このため、本発明の植え込み材は、各々の粒子が優れた保水性を保持しながら、植え込み材1の間にできる隙間によって、優れた通気性と排水性とを実現する。さらに、粒状に破砕された植え込み材1は、種々の形状と大きさの栽培容器2に、簡単かつ容易に、しかも速やかに充填して植物3を植え付けできる。
【0024】
さらに、植え込み材を栽培容器に充填する密度、いいかえると栽培容器に詰める具合いを調整して、保水性と排水性と通気性を調整できる。植え込み材は、繊維屑を粒状に破砕しているので、弾性的に変形する。このため、密に詰めることも、また粗に詰めることもできる。植え込み材を密に詰めると、排水性と通気性を制限しながら保水性を向上できる。このため、水やり回数を軽減できる。この充填状態は、水分を多量に要求する植物の栽培に適している。反対に、植え込み材を栽培容器に粗に充填すると、保水性を制限しながら排水性と通気性とを向上できる。この充填状態は、洋ラン等のように、過湿に弱く耐乾性に強い植物の栽培に適している。
【0025】
植え込み材は、繊維屑を無数の空隙ができる状態で立体的に集合して、これを紐状に連結してなる繊維紐とすることができる。ただし、この繊維紐は本発明の実施例にかかるものでなく、参考例として記載する。この繊維紐は、水苔と同じように使用できるように、加圧しない状態での平均的な太さを2〜30mmとする。この植え込み材1は、図2に示すように、植物3の根の部分に巻き付けながら、栽培容器2に充填できる。ただ、必ずしも根に巻き付けることなく栽培容器に充填することもできる。
【0026】
この繊維紐には、織物の捨て耳をそのままに、加工することなく、あるいは撚糸して使用できる。捨て耳は、織物の製造工程で多量に発生する廃棄物である。平行に張設された縦糸の間に、横糸を移動させるのに、旧来のシャットルに代わって、ウォータージェットやエアージェットを使用する編組方法は、編組された織物の両側に不揃いな部分ができる。この両側部分を切断してできる廃棄物が、織物の捨て耳である。捨て耳は、連続する紐状であって、引っ張っても切れない程度の強度がある。さらに、この捨て耳は、無数の繊維が集合して互いに絡まるように連結されているので、繊維の間に無数の微細な空隙がある。このため、捨て耳である植え込み材は、それ自体で植物栽培に適した吸水性と保水性がある。さらに、捨て耳は、これを撚糸することにより、繊維の集合を密にして、吸水性と保水性とを向上できる。捨て耳は、織物を製造する工程でできる廃棄物である。したがって、これを植え込み材として使用すると、廃棄物を有効に再利用できると共に、そのコストを著しく低減できる特長がある。
【0027】
この捨て耳である植え込み材も、粒状の植え込み材と同じように、栽培容器に充填する密度を調整して、保水性と排水性と通気性とを調整できる。すなわち、捨て耳である植え込み材を、根に巻き付ける密度、あるいは栽培容器に密に充填する密度を調整して、保水性と排水性と通気性を調整できる。捨て耳である植え込み材も、繊維屑を紐状に集合しているので、表面を弾性的に変形できる。このため、根に密に巻き付けることも、また栽培容器に密に詰めることも、あるいは根に粗に巻き付けたり、栽培容器に粗に詰めることができる。植え込み材を密に巻き付けたり、あるいは栽培容器に密に詰めると、排水性と通気性を制限しながら保水性を向上できる。このため、水やり回数を軽減できる。この充填状態は、水分を多量に要求する植物の栽培に適している。反対に、植え込み材を根に粗に巻き付け、あるいは栽培容器に粗に充填すると、保水性を制限しながら排水性と通気性とを向上できる。この充填状態は、洋ラン等のように、過湿に弱く耐乾性に強い植物の栽培に適している。
【0028】
捨て耳である植え込み材は、繊維マットを破砕する植え込み材よりもさらに安価にできる。それは、加工コストと原料コストの両方を、著しく安価にできるからである。とくに、廃棄物である捨て耳をそのまま使用する植え込み材は、廃棄物をそのまま有効に再利用するので、そのコストを著しく低減できる。さらに、この植え込み材は、前述の繊維マットを破砕して製作する植え込み材のように、バインダーで繊維屑を結合する必要もないので、新しい繊維をバインダーとして添加する必要がなく、また、繊維を結合するバインダーも使用する必要がなく、100%繊維屑で製作できる。
【0029】
捨て耳は、織物をカットしたものであるから、織物の繊維と同じ繊維で構成される。織物は、合成繊維と天然繊維が混在するもの、あるいは合成繊維のみのもの、あるいはまた天然繊維のみのものがある。合成繊維は腐食しないので耐久性に優れ、天然繊維は腐食して自然に消失する。このため、合成繊維の混合率の高い捨て耳と、天然繊維が混在しない捨て耳からなる植え込み材は、耐久性があって使用期間を長くできる。反対に、天然繊維の混合率の高い捨て耳である植え込み材は、自然に消失できる特長がある。したがって、耐久性が要求される植え込み材は、合成繊維の混合率の高い捨て耳を使用し、自然に消失させる植え込み材は天然繊維の割合の多い捨て耳を使用する。一般的に使用する場合においては、合成繊維の混合率を高くし、優れた耐久性の植え込み材が便利に使用できるので、捨て耳には合成繊維の混合率が好ましくは50重量%以上、好ましくは60重量%以上、最適には70重量%以上の捨て耳を使用する。とくに、合成繊維を100%とする捨て耳の植え込み材は、極めて優れた耐久性があって、長い年月にわたって優れた特性を失わない。とくに、ポリエステル系合成繊維の捨て耳は、ポリエステル系合成繊維が、強靭で耐久性に富み、しかも耐薬品性に優れているので、極めて長い期間、安定して使用できる。ただし、捨て耳は、合成繊維として、ポリアミド系合成繊維やポリアクリル系合成繊維等の繊維を含むものも使用できる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の植物栽培用の植え込み材とその製造方法は、水苔に勝るとも劣らない優れた物性を有するにもかかわらず、安価に多量生産できる特長がある。それは、本発明の植物栽培用の植え込み材とその製造方法が、合成繊維を含む繊維で編み組みされた織布の廃棄屑を開繊してなる繊維屑を立体的に集合すると共に、集合された繊維間に無数の空隙が存在する状態にプレスして繊維の交点をバインダーで結合した繊維マットを、所定の大きさであって不特定なランダム形状の繊維粒に破砕しているからである。この構造の植え込み材は、開繊した繊維屑を立体的に無数の空隙が存在する状態に結合しているので、植物栽培に適した吸水性と保水性と通気性とを実現できる。とくに、栽培する植物に応じて保水性や通気性等を調整することもでき、水やりを極めて簡単にできる。しかも、この植え込み材は、水苔のように経時的に酸性が強くなったり腐食しないので、頻繁に植え替えする必要がなく、使用できる期間を長くしてランニングコストを著しく低減できる。さらに、この植え込み材は、廃棄物である織布の廃棄屑を有効に再利用できるので、原料コストを低減して安価に多量生産できると共に、水苔のように生産量や生産期間に制約を受けることなく安定供給できる特長もある。以上のように、本発明は、植物栽培に適した物性を有する植え込み材として極めて理想的な特長を実現できる。
【0031】
さらに、参考例として記載している植物栽培用の植え込み材は、繊維屑を無数の空隙ができる状態で立体的に集合すると共に、紐状に連結する状態として繊維紐としている。このため、廃棄物である廃棄屑を有効に再利用して安価に多量生産できると共に、植物栽培に適した吸水性と保水性と通気性とを実現して水やりを簡単にしながら、使用できる期間を長くしてランニングコストを低減できることに加えて、繊維紐としている植え込み材を、植物の根等に巻き付ける状態で使用できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例にかかる植え込み材の使用例を示す断面図
【図2】 本発明の参考例の植え込み材の使用例を示す一部断面斜視図
【符号の説明】
1…植え込み材
2…栽培容器
3…植物
Claims (14)
- 合成繊維を含む繊維で編み組みされた織布の廃棄屑を開繊してなる繊維屑を立体的に集合すると共に、集合された繊維間に無数の空隙が存在する状態にプレスして、プレス状態で繊維の交点をバインダーで結合してなる繊維マットを、所定の大きさであって一定の定まった形状ではない不特定なランダム形状であって、平均粒径を3〜30mmとする繊維粒に破砕してなる植物栽培用の植え込み材。
- 繊維粒に肥料又は保持材を混入している請求項1に記載される植物栽培用の植え込み材。
- 繊維粒の平均粒径が5〜20mmである請求項1に記載される植物栽培用の植え込み材。
- バインダーが低融点の合成繊維である請求項1に記載される植物栽培用の植え込み材。
- 繊維屑がポリエステル系合成繊維で、バインダーが低融点のポリエステル系繊維である請求項4に記載される植物栽培用の植え込み材。
- 繊維屑が80重量%以上のポリエステル系合成繊維を含む請求項5に記載される植物栽培用の植え込み材。
- 合成繊維を含む繊維で編み組みされた織布の廃棄屑を開繊してなる繊維屑に加工する工程と、繊維屑を立体的に集合すると共に、集合された繊維間に無数の空隙が存在する状態にプレスして、プレス状態で繊維の交点をバインダーで結合してなる繊維マットとする工程と、繊維マットを所定の大きさであって一定の定まった形状ではない不特定なランダム形状で、平均粒径を3〜30mmとする繊維粒に破砕する工程とからなる植物栽培用の植え込み材の製造方法。
- 繊維マットの繊維の空隙に肥料又は保持材を添加する請求項7に記載される植物栽培用の植え込み材の製造方法。
- 繊維マットを、平均粒径が5〜20mmである繊維粒に破砕する請求項7に記載される植物栽培用の植え込み材の製造方法。
- 繊維屑を、低融点の合成繊維をバインダーとして結合する請求項7に記載される植物栽培用の植え込み材の製造方法。
- 繊維屑をポリエステル系合成繊維とし、バインダーを低融点のポリエステル系繊維とする請求項10に記載される植物栽培用の植え込み材の製造方法。
- 繊維粒に混入する保持材がゼオライトである請求項2に記載される植物栽培用の植え込み材。
- 繊維粒に混入する保持材がパーライトである請求項2に記載される植物栽培用の植え込み材。
- 繊維粒に混入する保持材がセラミックである請求項2に記載される植物栽培用の植え込み材。
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