JP3678876B2 - スクロール部材の高加工度精密鍛造方法および装置 - Google Patents

スクロール部材の高加工度精密鍛造方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクロール部材の鍛造方法および鍛造装置に関し、特に、薄幅高リブを有するスクロール部材のプレスによる鍛造方法および鍛造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニューム合金又は鋼製のスクロール部材はエアコン等の空気機械を構成する圧縮機等に用いられており、その形状を図4に示す。スクロール部材11は渦巻のリブ12と鏡板13および回転取り付け部14から構成されている。そして、スクロール部材は、鋳造、機械加工あるいは鍛造等により製造されている。
鍛造法では、スクロール部材の一体成形により、スクロール部材の疲労強度を向上でき(特開昭59−159241号公報参照)、スクロール部材の寿命向上が図れることも知られている。鍛造法はニアネットシェイプ成形が可能で、寸法精度が比較的良好となる利点もある。スクロール部材の製造に、鍛造法が多く用いられるようになってきた。
【0003】
最近、軽量化、圧縮機の高効率化のため、リブ12は薄幅で、高さが高いスクロール部材、すなわち、薄幅高リブを有するスクロール部材の要求が強くなっている。
ところが、薄幅高リブを有するスクロール部材の一体鍛造によって、円盤素材から鍛造成形する場合、図3(図a)に示すように渦巻状の薄幅高リブの高さhが不揃いとなり易やすく、薄幅高リブ先端部が凸形になる不具合も生じる問題がある。この問題は再鍛造を行うことにより可能であるが、新たな鍛造設備の増加を伴うだけでなく、スクロール部材の製造コストが著しく上昇することとなる。
このため、既存の鍛造設備を用いる方法として、通常より大きな鍛造力を加え、その高さの不揃いや凸形の不揃いの低減を図る方法が提案されている。
【0004】
しかし、この方法でも、リブの高さの不揃いやリブ先端部の凸形となる不具合を低減できるものの限界がある。すなわち、金型に加える鍛造力に限界があり、金型の実用寿命を考慮して容認できる鍛造力の限界内では、リブの高さの不揃いはmm単位で残るとともに、リブ先端部の凸形となる不具合を改善できないという問題がある。
このため、リブの高さの不揃いやリブ先端部の凸形となる不具合を是正するために、サイジング加工の目的で2回目の鍛造を実施することは可能であるが、鍛造装置、金型、搬送装置等をさらに必要とするとともに、ハンドリングも複雑となる問題がある。
【0005】
このため、リブの不揃いを防止するための種々の対策が提案されてきた。これらを以下に示す。
(イ)スクロールの成形金型において鏡板成形部の外周一部分や渦巻成形部のリブ壁部に逃げを設ける方法が提案されている(特開平4−136491号公報、特開平4−342887号公報参照)。逃げを設けることにより、薄幅高リブの高さの不揃いの解消を図るものである。
また、(ロ)スクロールの薄幅高リブを加圧によって成長させる過程において、成形加圧動力源と別の駆動源を有する加圧装置(特開昭60−102243号公報、特開昭60−102244号公報参照)が提案されている。別の駆動源を有する加圧装置によって、成型時又は成型後さらに、リブ先端部を加圧成形することにより、リブ先端部の不揃いを矯正して、薄幅高リブの高さの均一化を図っている。
【0006】
さらに、(ハ)スクロールを成形した後、渦巻形押出金型により、リブ先端部を加圧しながらスクロール鍛造品を金型から取り出す方法(特開平8−57572号公報参照)が提案されている。スクロール鍛造品と金型との間の摩擦力を利用してスクロール鍛造品を金型からの抜き出し時にリブ先端部を加圧することにより、リブ先端部の平坦化を図るものである。
他に、(ニ)リブ先端部の割れ問題の解決を図るものであるが、凹部への鍛造素材の挿入速度を、渦巻形押出金型により挿入する素材の先端に圧力を加えることにより、挿入速度を抑制する方法(特開平5−337586号公報参照)が提案されている。リブ先端部の抑制に付加駆動源だけではなく、バネやエアースプリングの採用も開示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(イ)の逃げを設ける方法では、薄幅高リブの高さの不揃いが部分的に改善できるものの、余肉を削り取るための後加工量が増え、歩留まりが低減する。さらに、リブ壁に逃げを設ける場合、金型からスクロールが抜けない問題も生じる。
また、(ロ)のリブ先端部にも加圧する装置を設ける場合は、リブ先端高さを比較的に均一できるものの、成形加圧動力源の他に別の駆動源が必要となり、装置が複雑化してコストアップとなるとともに、制御も困難になる問題がある。
【0008】
(ハ)のリブ先端部を加圧しながらスクロール鍛造品を金型から取り出す方法では、リブ先端部の不揃いを矯正して、薄幅高リブの高さの均一化が可能であるが、スクロール部材のリブ側面部の表面性状を悪化させる問題がある。
すなわち、リブ先端部を加圧は、スクロール鍛造品を金型からの抜き出すときに行うので、スクロール鍛造品と金型との間の摩擦力を利用することとなる。このため、成形後のスクロール鍛造品と金型との摩擦力がリブ先端部の変形に必要な加圧力より大きくする必要がある。このため、リブの金型からの離型時における摩擦力が大きくなり、リブ側面部の表面性状を悪化させるものである。
【0009】
(ニ)の凹部への鍛造素材の進入速度を、渦巻形押出金型により進入する素材の先端に圧力を加えることにより、抑制する方法では、リブ先端部の割れを防止できるが、(ロ)と同様に、成形加圧動力源の他に別の駆動源を用いるために、装置が複雑化してコストアップとなるとともに、制御も複雑になる問題がある。また、バネやエアースプリングを採用する場合には、リブ先端部加圧装置の均衡を保ちにくく、特にメカニカルプレスのような高速鍛造の場合には、リブ先端部への加圧応答が追随できなくなる問題がある。
【0010】
そこで本発明は、スクロールの薄幅高リブの高さの不揃いやリブ先端の凸形の不揃いを低減するために、上記従来技術の問題点を解消すべくなされたものである。すなわち、新たな駆動装置を設けることなく、リブ側面部の表面性状を悪化させることなく、スクロールの薄幅高リブの高さの不揃いや凸形の不揃いを防止して成型後のスクロールの仕上切削代を低減できるスクロールの製造装置の提供を目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の発明は、被成形素材を抜き勾配の略ゼロの渦巻き状のリブ成形部を有する成形型に充填し、成形パンチで加圧する、スクロール部材の高加工度精密鍛造方法において、
前記成形パンチの加圧過程の下死点直前より、ノックアウトパンチを成形パンチの作動方向の対向方向に作動させてスクロール部材のリブ先端部塑性変形させるともに、成形パンチが下死点から離れていくのを追ってノックアウトパンチを成形パンチの上昇速度よりも速い速度で作動させて、さらにスクロール部材のリブ先端部を加圧することにより、前記リブ先端部を塑性変形させ、その後、スクロール部材を金型から離型させることを特徴とするものである。
【0012】
成形パンチの加圧過程の下死点直前より、ノックアウトパンチを成形パンチの作動方向の対向方向に作動させてスクロール部材のリブ先端部を塑性変形させると共に、成形パンチが下死点から離れていくのを追ってノックアウトパンチを作動させて、成形パンチが下死点から離れていくのを追ってノックアウトパンチを成形パンチの上昇速度よりも速い速度で作動させて、さらにスクロール部材のリブ先端部を加圧して塑性変形させることによって、薄幅高リブを有するスクロール部材のリブ先端部を塑性変形させるものである。この結果、寸法精度の優れたリブを得ることができる。このとき、スクロールのリブ先端部をノックアウトパンチで矯正する程度の低い加圧力により平坦化させることができるため、スクロール部材の成形パンチの荷重を低減でき、金型寿命を向上できる。また、リブと金型との間に大きな摩擦力が生ずることがないので、リブ側面部の表面性状を悪化させることがない。さらに成形パンチが下死点から離れていくのを追ってノックアウトパンチを成形パンチの上昇速度よりも速い速度で作動させるので、スクロール部材を金型から比較的に簡単に離型できる。
【0013】
また請求項2記載の発明は、抜き勾配の略ゼロの渦巻き状のリブ成形部を有する成形型と成形パンチとノックアウトパンチからなるスクロール部材の高加工度精密鍛造装置において、ノックアウトパンチには、成形パンチの加圧過程の下死点直前より成形パンチの作動方向の対向方向に作動して被成形素材を加圧する機構と、さらに成形パンチが下死点から離れていくのを追ってノックアウトパンチを成形パンチの上昇速度よりも速い速度で作動させて、さらに被成形素材を加圧する機構と、その後、スクロール部材を金型から離型させる機構と併せ持つ制御機構を有することを特徴とするものである。請求項2記載の発明のスクロール部材の高加工度精密加工装置は、単純形状の素材から1回の鍛造によって、寸法精度の優れたスクロール部材を製造でき、さらに、金型寿命を向上できる。
【0014】
また請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の制御機構が成形パンチの加圧過程に連動したカム機構によりノックアウトパンチを作動させる構成であることを特徴とするものである。制御機構を成形パンチの加圧過程に連動したカム機構によりノックアウトパンチを作動させる構成にすることによって、単動プレスの機能により、寸法精度の優れたスクロール部材を製造でき、さらに、金型寿命を向上できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図示例とともに説明する。
図1は、本発明の実施の形態の鍛造装置の成形パンチとノックアウトパンチの作動状態を示す図であり、図2は、本発明の実施の形態の鍛造装置の成形型およびその周囲の断面図を示すものであり、図aから図fまでは被成形素材からスクロール部材へ鍛造される状態を示すものであり、図3は、スクロール部材のリブ先端部の加工状況を示す図である。
【0016】
まず、本発明の実施の形態の鍛造装置の構成について、図2(図a)により説明する。本発明の鍛造装置は、渦巻状のリブ成形部3を有する成形用金型2と、成形パンチ4と、ノックアウトパンチ5から構成されている。成形用金型2の渦巻成形部3は、被成形素材1をスクロール部材11の渦巻状のリブに成形するために、渦巻き溝形状として形成されており、その渦巻状のリブ成形部3の深さ方向において勾配は略ゼロとしている。すなわち、抜き勾配は0°(略0°を含む。)とした。
前記ノックアウトパンチ5は前記成形用金型2の渦巻状のリブ成形部3内を上下方向に移動できる構造であって、成形されるスクロール部材と同じ渦巻形状となっている。また、ノックアウトパンチ5の渦巻形状の厚さは、成形用金型2のリブ成形部3の幅より小さい構造になっている。さらに、前記ノックアウトパンチ5はノックアウトパンチ用ガイド部6に取付けられており、このノックアウトパンチ用ガイド部6はカム連動機構7により駆動される。
【0017】
ここで、本発明の実施の形態の鍛造方法の概要について図1により説明する。図1の上部の曲線は成形パンチの行程を示す曲線で、下部の曲線はノックアウトパンチの行程を示す曲線である。
鍛造開始時Taから、成形パンチは下降して被成形素材を加圧成形する。そして、下死点(時間Tc)に達すると、成形パンチは上昇する。一方、ノックアウトパンチは成形パンチの加圧過程の下死点直前の時間Tbより、ノックアウトパンチは上昇する。そして、成形パンチの下死点近傍でノックアウトパンチは、被成形素材、すなわち、スクロール部材のリブ先端部に達する。この状況を図3(図a)に示す。
【0018】
図3(図a)に示すように、成形用金型のリブ成形部中の加工中のスクロール部材のリブは、高さが不揃いで、高さのバラツキ△Hは数mm単位となっている。これは、鍛造時に成形用金型のリブ成形部内へ、被成形素材を均一に塑性流動させることが困難なためである。
また、このリブ先端部は凸状であり、このリブ先端部の凸状の高さ△hは0.1mmのオーダーになっている。
【0019】
本発明では、図3(図b)に示すように、リブ先端部をノックアウトパンチにより、加圧してリブ先端部を塑性変形させて、リブ先端部の凸状を平坦に成形する。さらに、成形用金型のリブ成形部中のリブ先端部の塑性流動をこのノックアウトパンチにより、所定のリブ高さになるように制御するものである。
この場合、リブ先端部のみ矯正する程度の成形で良いので、ノックアウトパンチの係る荷重は、成形パンチに比べてはるかに小さいものとなる。
【0020】
このため、図1に示すように、時間Tc(成形パンチの下死点)より、成形パンチの上昇速度より、ノックアウトパンチの上昇速度を速くする。すなわち、時間Tc(成形パンチの下死点)から、時間Tdまでの成形パンチの上昇行程距離△L1より、ノックアウトパンチの上昇行程距離△L2を大きく設定する(△L1<△L2)。この結果、(△L2−△L1)の距離分、スクロール部材のリブ先端部を塑性変形させるものである。
【0021】
時間Td以降は、成形パンチの上昇速度がノックアウトパンチの上昇速度より速くなり、成形されたスクロール部材は成形用金型から離型される
この一連の成形パンチとノックアウトパンチの行程の制御は、例えば、カム機構のパンチ行程制御によってできる。
【0022】
次に、本発明の鍛造装置での薄幅高リブ(例えば、リブ幅:3.5mm、リブ高さ:30mm)を有するスクロール部材の高加工度精密鍛造方法を図2および図3により、さらに説明する。
【0023】
図2(図a)に示すように、鍛造に適した温度に加熱された被成形素材1を成形用金型2にセットする。この被成形素材1は、スクロール部材成形サポート8により拘束される構造になっている。このとき、成形パンチ4は下降開始直前の状態である。
【0024】
図2(図a)から図2(図b)の過程において、成形パンチ4が下降して、成形パンチ4は被成形素材1と接する。さらに成形パンチ4が下降すると、被成形素材1は加圧され塑性変形をして、被成形素材1は成形パンチ4の鏡板成形部9および成形用金型2のリブ成形部3に、塑性流動により押し込まれるていく。そして、図2(図b)の成形パンチ4は下死点直前に下降した状態になる。
この図2(図a)から図2(図b)の過程で、成形パンチ4の鏡板成形部9でスクロール部材の回転取り付け部が成形される。一方、成形用金型2のリブ成形部3では、スクロール部材のリブが形成されつつある。このリブの形成状態について、前述したように図3(図a)に示す状態である。
【0025】
次に、図2(図b)から図2(図c)の過程では、カム連動機構7によってノックアウトパンチ5の上昇を開始させる。このとき成形パンチ4は引き続き下降し続けており、ノックアウトパンチ5はそれに対向して上昇して、成形用金型2のリブ成形部3内の被成形素材1、すなわち、リブ先端部に達する。そして、成形パンチ4が下死点に達するまでの間、ノックアウトパンチ5によりリブ先端部を加圧して、リブ先端部の局部成形を行う。そして、図2(図c)の成形パンチが下死点に到達した状態になる。このとき、ノックアウトパンチ5とリブ先端部はすべて接触させることが好ましい。このため、スクロール部材のリブの高さのバラツキ△Hを考慮して、成形パンチの下死点でのノックアウトパンチの位置を予め調節しておく。
【0026】
次に、成形パンチ4が上昇に転じて、ノックアウトパンチ5と成形パンチ4は連動して上昇する。このとき、成形されたスクロール部材を成形用金型2のリブ成形部3より離型を開始するまでのノックアウトパンチの上昇行程距離△L2と成形パンチの上昇行程距離△L1との差(△L2−△L1)を予め測定したリブ先端部の凸状の高さ△hより決定する。このとき、図3(図d)に示すように、リブ先端部をノックアウトパンチ5により加圧して、リブ先端部を塑性変形させて、リブ先端部の凸状を平坦に成形するとともに、リブ高さを所定のリブ高さになるように制御する。
なお、(△L2−△L1)を小さくすることにより、ノックアウトパンチの所要成形荷重を小さくできる。
【0027】
工程が進んで、成形パンチ4の上昇速度が、ノックアウトパンチ5の上昇速度より速くなり、成形パンチ4が被成形材1から離れる。この状態が図2(図e)である。
さらに、工程が進んでノックアウトパンチ5が上昇して、被成形材1が成形用金型2からノックアウトする。この状態を図2(図f)に示す。
【0028】
以上説明したように、本発明の鍛造装置および鍛造方法は、被成形材が通常荷重において成形金型のリブ成形部に略充満状態に到達してた後、成形パンチの加圧過程の下死点直前より成形パンチが被成形材から離れるまで間において、被成形素材を成形パンチとノックアウトパンチとの両方で加圧成形するものである。特に、ノックアウトパンチの加圧成形によって薄幅高リブ被成形材の高さのバラツキを抑制するとともに、リブ先端部を平坦にするものである。このとき、リブ先端部を矯正しえる程度の局部的な成形でよいため、全体の最大荷重が小さくてすむ。このため、大型プレスによる鍛造を避けることができ、金型の負荷を大幅に低減できる。
【0029】
本発明の実施の形態は、ノックアウトパンチのカム連動機構を利用してその制御によって、リブの高さのバラツキを抑制するとともに、リブ先端部を平坦化するものである。既存の設備、特に単動プレスのカム機構を改造することにより、リブ高さのバラツキの抑制とともに、リブ先端部を平坦化ができる。
また、ノックアウトパンチの作動の制御は、カム連動機構だけでなく、ノックアウトパンチを油圧又は機械装置等で作動させる場合にも適用できるもので、これらも、本発明の技術的範囲に属するものである。
【0030】
【実施例】
アルミニューム合金(材質:高Si含有アルミニューム合金)の薄幅高リブ(リブ幅:3.5mm、リブ高さ:30mm)を有するスクロール部材の鍛造(鍛造温度:400〜500℃)を、成形パンチの加圧過程に連動した単動プレスのカム機構によりノックアウトパンチを作動させる単動プレスにより行った。このときの、単動プレスのカム機構は、図1に示す様な、成形パンチおよびノックアウトパンチの動作となるような、形状に加工したカムを使用した。
【0031】
カム機構に用いるカムの形状は、本発明の実施例に用いた薄幅高リブを有するスクロール部材の従来のリブの高さのバラツキ△H:2mmと、リブ先端部の凸状の高さ△h:0.5mm、特に、リブ先端部の凸状の高さを考慮して決定した。成形パンチの下死点から成形パンチの上昇行程距離△L1と、ノックアウトパンチの上昇行程距離△L2との差(△L2−△L1)は△h/2+αとした。αはリブ先端部の凸状の形状のバラツキを考慮したものである。本実施例ではαを0.1mmとし、(△L2−△L1)を0.15mmとした。
【0032】
上述の成形パンチの加圧過程に連動したカム機構によりノックアウトパンチを作動させる単動プレスにより、薄幅高リブを有するスクロール部材の鍛造を行った。
この結果、リブの高さのバラツキ△Hは0.1mm程度となり、リブ先端部の凸状の高さ△hも0.2mm程度になり、寸法精度の優れたスクロール部材を製造できた。このときの金型寿命は、従来の金型寿命と同等以上であった。
【0033】
従来の方法では、成形パンチの成形荷重を限界近くまで大きく(例えば、成形パンチの成形荷重を従来の1.7倍)した場合、リブの高さのバラツキ△Hは0.2mm程度まで改善できるが、リブ先端部の凸状の高さ△hは0.5mmと変わらず、薄幅高リブを有するスクロール部材の寸法精度の向上はできなかった。
【0034】
なお、本実施例では高Si含有アルミニューム合金を用いたが、これに限定されることなく、他のアルミニューム合金、さらに他の金属材料(鉄鋼材料、銅合金等)も用いることができる。
さらに、本実施例ではリブの高さのバラツキ△Hを成形パンチの下死点の直前から下死点の間でリブの先端部を塑性変形することにより、リブの高さのバラツキ△Hを抑制したが、成形パンチの下死点の前後の工程において、リブの先端部を塑性変形することにより、リブの高さのバラツキ△Hを抑制することもできる。これらも本発明の技術的範囲である。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明したように、本発明のスクロール部材の高加工度精密鍛造装置又は方法を用いることにより、寸法精度の優れたリブを得ることができる。この結果、成型後のスクロールの仕上切削代を低減できる効果を有する。特に、従来法では困難であった、リブ先端部の凸状の高さ△hの抑制を可能とものである。
さらに、リブと金型との間に大きな摩擦力を必要とせず、良好な表面性状のリブが得られる効果を有する。
【0036】
また、本発明のスクロール部材の高加工度精密鍛造装置は、制御機構を成形パンチの加圧過程に連動したカム機構によりノックアウトパンチを作動させる構成にすることによって、別の駆動源を必要とせず、単動プレスの機能により、寸法精度の優れたスクロール部材を製造できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の鍛造装置の成形パンチとノックアウトパンチの作動状態を示す図でる。
【図2】本発明の実施の形態の鍛造装置の金型およびその周囲の断面図を示すものであって、
図aは、被成形素材を成形用金型に設置し、成形パンチが下降開始時の状態を示す図であり、
図bは、成形パンチが下死点直前に下降した状態であってノックアウトパンチが上昇開始する状態を示す図であり、
図cは、成形パンチが下死点に到達した状態あってノックアウトパンチが上昇し続ける状態を示す図であり、
図dは、成形パンチが上昇して被成形材から離れるともにノックアウトパンチが依然に上昇し続ける状態を示す図であり、
図eは、成形パンチが被成形材から完全に離れ、さらにノックアウトパンチ5が上昇して被成形材を成形用金型からノックアウトする途中の状態を示す図であり、
図fは、被成形材1が成形用金型から完全にノックアウトされた状態を示す図である。
【図3】スクロール部材のリブ先端部の加工状況を示す図であって、
図aは、成形パンチが下死点近傍に下降した成形状態でのリブ先端部の加工状況を示す図であり、
図bは、成形パンチが下死点に到達してノックアウトパンチが上昇し続ける状態を示す図である。
【図4】スクロール部材の形状を示す図であって、図aは、スクロール部材を上から見た平面図であり、図bはX−Xでのスクロール部材の断面図である。
【符号の説明】
1 被成形素材
2 成形用金型
3 成形用金型のリブ成形部
4 成形パンチ
5 ノックアウトパンチ
6 ノックアウトパンチ用ガイド部
7 カム連動機構
8 スクロール部材成形サポート
9 成形パンチの鏡板成形部
11 スクロール部材
12 リブ
13 鏡板
14 回転取り付け部
H リブの高さ
△h リブ先端部の凸状の高さ
△L1 成形パンチ4の上昇行程距離
△L2 ノックアウトパンチの上昇行程距離

Claims (3)

  1. 被成形素材を抜き勾配の略ゼロの渦巻き状のリブ成形部を有する成形型に充填し、成形パンチで加圧する、スクロール部材の高加工度精密鍛造方法において、
    前記成形パンチの加圧過程の下死点直前より、ノックアウトパンチを成形パンチの作動方向の対向方向に作動させてスクロール部材のリブ先端部を塑性変形させるとともに、
    成形パンチが下死点から離れていくのを追ってノックアウトパンチを成形パンチの上昇速度よりも速い速度で作動させて、さらにスクロール部材のリブ先端部を加圧することにより、前記リブ先端部を塑性変形させ、
    その後、スクロール部材を金型から離型させることを特徴とするスクロール部材の高加工度精密鍛造方法。
  2. 抜き勾配の略ゼロの渦巻き状のリブ成形部を有する成形型と成形パンチとノックアウトパンチからなるスクロール部材の高加工度精密鍛造装置において、
    ノックアウトパンチには、成形パンチの加圧過程の下死点直前より成形パンチの作動方向の対向方向に作動して被成形素材を加圧する機構と、さらに成形パンチが下死点から離れていくのを追ってノックアウトパンチを成形パンチの上昇速度よりも速い速度で作動させて、さらに被成形素材を加圧する機構と、その後、スクロール部材を金型から離型させる機構と併せ持つ制御機構を有することを特徴とするスクロール部材の高加工度精密鍛造装置。
  3. 前記制御機構が、成形パンチの加圧過程に連動したカム機構によりノックアウトパンチを作動させるものである請求項2記載のスクロール部材の高加工度精密鍛造装置。
JP14190997A 1997-05-30 1997-05-30 スクロール部材の高加工度精密鍛造方法および装置 Expired - Lifetime JP3678876B2 (ja)

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